説明

画像形成装置および情報端末

【課題】近接無線インターフェースを介して、ノートパソコン等の情報端末に保存したファイルの中で予め指定したファイルデータを情報端末のデータ転送操作を行うことなく画像形成装置内に取り込んで自動的に印刷できる画像形成装置の提供。
【解決手段】近接無線通信機能を備えた情報端末と近接無線通信を行える第1近接無線通信部と、前記第1近接無線通信部を介して前記情報端末から連続して転送される複数ファイルを一括印刷するために読み込むメモリ部と、前記メモリ部に読み込まれた複数のファイルデータに基づいてシートに画像を形成する画像形成部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に記載の実施形態は、近接無線通信インターフェースを介して情報端末の印刷データを画像形成装置に転送して印刷する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコン等の情報端末と、プリンタおよび複合機であるMFP(Multi Function Peripheral)等の画像形成装置を近接無線通信インターフェースにより接続を行う技術が提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、近接無線インターフェースとして、トランスファージェット(Transfer jet(登録商標))と称される通信規格がある(特許文献2)。
【0004】
このトランスファージェットの通信規格に準拠したインターフェースを利用して、例えばノートパソコンに保存する文書データや画像データ等のデータを画像形成装置に送信してプリントする場合、ノートパソコンを画像形成装置の所定の通信位置に載置し、ノートパソコンのキー操作により選択したファイルの印刷データを画像形成装置に送信する。
【0005】
ところで、トランスファージェットの通信インターフェースは、通信距離が3cm以内と短く、送受信アンテナも非常に小さいため、ノートパソコンのキー操作等でノートパソコンが僅かに動くと、送受信アンテナの位置がズレ、通信が途絶えることが想定され、再度印刷データをノートパソコンから画像形成装置に送信する操作を行う必要が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−095084号公報
【特許文献2】特開2010−147922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、近接無線インターフェースを介して、ノートパソコン等の情報端末に保存したファイルの中で予め指定したファイルデータを情報端末のデータ転送操作を行うことなく画像形成装置内に取り込んで自動的に印刷できる画像形成装置および情報端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載の実施形態に係る画像形成装置は、近接無線通信機能を備えた情報端末と近接無線通信を行える第1近接無線通信部と、前記第1近接無線通信部を介して前記情報端末から連続して転送される複数ファイルを一括印刷するために読み込むメモリ部と、前記メモリ部に読み込まれた複数のファイルデータに基づいてシートに画像を形成する画像形成部と、を有する。
【0009】
本明細書に記載の実施形態に係る情報端末は、近接無線通信機能を備えた画像形成装置と近接無線通信を行える第2近接無線通信部と、第2近接無線通信部によるデータ転送を行う送信フォルダが設定され、印刷を行うファイルが前記送信フォルダに選択的に入れたデータ転送のためのデータを読み取るメモリと、前記第2近接無線通信部が前記画像形成装置と近接無線通信による接続が確認されると、前記メモリに読み取ったファイルデータの転送を開始させる制御部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態の画像形成装置の概略構成を示す図。
【図2】実施形態に係る画像形成装置が近接無線インターフェースを利用して取得した印刷データを印刷するための制御ブロック図。
【図3】実施形態に係る情報端末が一括印刷データを近接無線インターフェースを利用して転送するための制御ブロック図。
【図4】情報端末のモニターに表示する送信フォルダを示す図。
【図5】(a)〜(c)は、図4に示す送信フォルダ中の一括印刷データの転送開始から転送終了までの表示状態を示す図。
【図6】図5に示す送信フォルダ中に一括印刷データを取り込む処理から転送終了までの処理の流れを示すフローチャート。
【図7】情報端末と近接無線通信を介してファイルデータの転送を受けるMFPのデータ転送の受け付けから一括印刷の終了までの処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態の画像形成装置を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は本実施形態による画像形成装置の概略構成を示す図、図2は実施形態に係る画像形成装置が近接無線インターフェースを利用して取得した印刷データを印刷するための制御ブロック図、図3は実施形態に係る情報端末が一括印刷データを近接無線インターフェースを利用して転送するための制御ブロック図である。
【0013】
図1において、画像形成装置である複合機(MFP)1は、装置本体2に、カラーの画像形成部3と、複数の給紙カセット4を有する給紙部5と、給紙カセット4内のシートを画像形成部3の印字部に向けて搬送するシート搬送部6と、画像読取部7と、自動原稿給送部8と、モニター9を有する操作部10を有する。また、装置本体2には、情報端末載置部11を設け、情報端末30を載置できるようにしている。
【0014】
MFP1には、図2に示すように、MFP全体の制御を行うCPU20により制御される第1近接無線インターフェース(第1I/Fと略す)21が設けられており、第1I/F21の送受信アンテナである第1アンテナ部22が情報端末載置部11に取り付けられている。第1I/F21で受信した印刷データは、記憶部23に保存され、さらに記憶部23から印刷実行のためにメモリ24に読み込まれ、画像形成部3に送信される。画像形成部3において、給紙カセット4からシート搬送部6を経て搬送されたシート上に画像を印刷する。
【0015】
本実施形態において、第1I/F21で受信したデータは一括印刷としているので、複数のファイルが一括して情報端末30から転送されると、メモリ24には全てのファイルのデータが読み込まれ、連続して印刷を行う一括印刷が実行される。また、MFP1のモニター9には、近接無線通信が情報端末と接続されると、データの転送状態や印刷中等のメッセージ91を表示する。
【0016】
情報端末30には、第1I/F22と無線通信を行う第2近接無線インターフェース(第2I/F)33が設けられ、第2I/F33の送受信アンテナである第2アンテナ部34が第1アンテナ部22とできるだけ近い位置で対向するように取り付けられている。
【0017】
本実施形態の近接無線インターフェースは、トランスファージェット(Transfer jet(登録商標))と称される通信規格に準拠した通信インターフェースで、トランスファージェットの仕様は、中心周波数が4.48GHz,転送レートが560Mbps(MAX)/実行レート375Mbps、通信距離が3cm以内を想定、したものである。第1アンテナ部22に対して第2アンテナ部34が通信距離範囲内に近づくと、第1I/F21と第2I/F33は、第1I/F21と第2I/F33のどちら側からの送信であるかを判断する。本実施形態において、情報端末30側に後述する送信フォルダを起動している場合には、第1I/F21は受信側であることを認識する。
【0018】
本実施形態において、情報端末30としては、例えばノートパソコン、タブレット型パソコン、携帯電話、PHS,スマートフォン、スマートブック、スレート型端末等を例示することができ、本実施形態ではノートパソコンを例にして説明する。
【0019】
ノートパソコン30は、CPU31によりパソコン全体の制御が行われ種々のデータが記憶部37に保存される。操作部35により、モニター36に表示される近接無線通信によるデータ転送モードが選択されると、近接無線通信によるデータ転送モードが起動し、メモリ32に送信フォルダ40が生成され、図4に示すように、モニター36のデスクトップに送信フォルダ40が表示される。本実施形態では、送信フォルダ40をデスクトップに表示しているが、ディレクトリ表示時にそのディレクトリに表示してもよい。
【0020】
モニター36に表示された送信フォルダ40には、操作者が印刷を行うためのデータをドラッグ&ドロップにより投入することにより、メモリ32に送信するデータが順次読み込まれる。図4では、既に、記憶部37に保存されている3つのファイル(41、42、43)が送信フォルダ40に投入され、さらに、例えばファイル(JPG)44、ファイル(JPG)45、ファイル(BMP)46がさらに投入される。送信フォルダ40に複数のファイルが投入された場合には、一括印刷を行うことが定義づけられる。なお、1つのファイルのみを送信ファイルに投入してMFP1にこのファイルのデータを転送することもできる。
【0021】
近接無線通信によるデータ転送モードにより、送信フォルダ40内にファイルを投入した状態でデータ転送の待機状態となり、第1I/F21との接続が行われると、第1I/F21からデータ転送指令が第2I/F33に送信され、データ転送が開始される。また、ノートパソコン30のモニター36には、MFP1とのデータ転送の待機状態、転送中、転送終了等のメッセージ47が表示される。
【0022】
データ転送にエラーが発生した場合、あるいは近接無線通信の接続が途中で切れた場合には、第1I/F21からデータ転送指令が再度送信され、転送が終了していないファイルのデータから再転送が開始される。
【0023】
また、MFP1へデータが転送されると、MFP1のCPU20から第1I/F21と第2I/F33を介して転送終了信号がノートパソコン30のCPU31に送信され、当該転送の終了したファイルが送信フォルダ40から順次削除される。
【0024】
次に、ノートパソコン30におけるCPU31の送信フォルダ中に一括印刷データを取り込む処理から転送終了までの処理の流れを図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0025】
ACT1において、パソコン30を操作して近接無線通信による転送モードを選択すると、図4に示すように、モニター36のデスクトップに送信フォルダ40を表示する(ACT2)。
【0026】
ACT3において、ノートパソコン30の操作者は、印刷するファイルを選択して送信フォルダ40にドラッグ&ドロップ操作で投入する。このドラッグ&ドロップイン操作は、一つのフォルダでも、複数のフォルダでもよい。なお、転送順序は印刷順序としているが、これに限定されることはなく、例えば最後に投入したファイルから転送し、複数ファイルの印刷データを最終ページから一括して逆に印刷するようにしてもよい。
【0027】
ACT4において、送信フォルダ40に投入されたファイルデータがメモリ32に読み込まれる。
【0028】
ACT5では、送信フォルダ40に投入した印刷するための1または複数のファイルが転送待機状態となっている。そして、ノートパソコン30をMFP1の情報端末載置部11に載置し、MFP1の第1I/F21と、ノートパソコン30の第2I/F33との接続が確認されると、ACT6に進み、送信フォルダ40内の全てのファイルのデータの転送を開始する。
【0029】
ACT7では、図5(a)に示すように、モニター36のメッセージ領域47に「転送開始」を表示する。
【0030】
ACT8では、複数ファイルのデータを順次転送する。
【0031】
ACT9では、図5(b)に示すように、モニター36のメッセージ領域47に「転送中です」を表示する。
【0032】
ACT10では、転送終了のファイルを順次送信フォルダ40から削除し、図5(c)に示すように、全てのファイルの転送が終了し、送信フォルダ40から最後のファイルの転送が終了すると、ACT11においてモニター36のメッセージ領域47に全ファイルの転送終了を示す「転送が終了しました」を表示し、本処理を終了する。
【0033】
一方、ノートパソコン30と近接無線通信を行うMFP1のデータ転送の受け付けから一括印刷の流れを図7に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0034】
ACT21は、MFP1がノートパソコン30との近接無線通信の待機状態にあり、ノートパソコン30が情報端末載置部11に載置し、MFP1の第1I/F21と、ノートパソコン30の第2I/F33との接続が確認されると、転送開始指令をノートパソコン30側に送信し、ACT22に進む。
【0035】
ACT22では、送信フォルダ40内のファイルデータの受け付けを開始する。
【0036】
ACT23では、受け付けたファイルデータを順次記憶部23に保存する。
【0037】
ACT24では、転送される全てのファイルデータが記憶部23に保存されると、転送された全ファイルデータをメモリ24に送信し、読み込ませる。
【0038】
ACT25では、全ファイルデータの一括印刷を開始する。
【0039】
ACT26では、モニター9のメッセージ領域91に、「印刷中」を表示する。
【0040】
ACT27では、全ファイルの一括印刷が終了すると、モニター9のメッセージ領域91に、「印刷終了」を表示し、本処理を終了する。
【0041】
本実施形態によれば、情報端末を近接無線通信のために所定位置に置くだけで、ノートパソコン等の情報端末からのファイルデータが何等の操作を行うことなく自動的にMFP等の画像形成装置に転送され、印刷される。転送されるファイルデータが複数ファイルであっても、情報端末側では何等の操作も不要とし、単に情報端末を所定位置に置くだけで、自動的に複数ファイルのデータが転送され、一括印刷することが可能となる。
【0042】
一方、ノートパソコン等の情報端末側では、送信フォルダにドラッグ・アンド・ドロップ操作で投入することで、印刷したいファイルのデータ転送の準備ができ、そのまま画像形成装置の所定位置に置くだけで1つのファイルまたは複数ファイルを自動的に印刷可能となる。
【0043】
また、データ転送中でも、情報端末にデータ転送状況、印刷状況などが表示され、実際にデータが転送され、印刷されていることを確認することができる。また、データ転送が終了したファイルは送信フォルダから自動的に削除されるので、データ転送が終了後に手入力によるファイル削除の作業が不要となる。
【0044】
上記した実施形態は一例を示すもので、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。特許請求の範囲によって示す技術的事項の解釈は明細書本文になんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0045】
1 MFP 9、36 モニター 21 第1I/F
22 第1アンテナ部 23、37 記憶部 24、32 メモリ
30 情報端末(ノートパソコン) 33 第2I/F
34 第2アンテナ部 40 送信フォルダ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接無線通信機能を備えた情報端末と近接無線通信を行える第1近接無線通信部と、
前記第1近接無線通信部を介して前記情報端末から連続して転送される複数ファイルを一括印刷するために読み込むメモリ部と、
前記メモリ部に読み込まれた複数のファイルデータに基づいてシートに画像を形成する画像形成部と、
を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記情報端末と近接無線接続を行うために、前記情報端末を載置する情報端末載置部を有し、前記情報端末載置部に第1近接無線通信部の第1アンテナ部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
近接無線通信機能を備えた画像形成装置と近接無線通信を行える第2近接無線通信部と、
第2近接無線通信部によるデータ転送を行う送信フォルダが設定され、印刷を行うファイルが前記送信フォルダに選択的に入れたデータ転送のためのデータを読み取るメモリと、
前記第2近接無線通信部が前記画像形成装置と近接無線通信による接続が確認されると、前記メモリに読み取ったファイルデータの転送を開始させる制御部と、
を有する情報端末。
【請求項4】
前記送信フォルダに複数のファイル入れられている場合には、複数のファイルデータを一括印刷のために連続して転送することを特徴とする請求項3に記載の情報端末。
【請求項5】
前記送信フォルダへはドラッグ・アンド・ドロップ操作でファイルを投入することを特徴とする請求項3または4に記載の情報端末。
【請求項6】
前記送信フォルダ内のファイルデータの転送が終了すると、当該ファイルが前記送信フォルダから削除されることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の情報端末。
【請求項7】
情報端末のモニターを有し、前記モニターにファイルデータの転送状態に応じたメッセージを表示させることを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の情報端末。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−35287(P2013−35287A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171657(P2012−171657)
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】