説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】画像形成処理時の異音の発生を予測し、その発生を未然に防ぐ画像形成装置および画像形成方法を提供すること。
【解決手段】像坦持体101と、前記像担持体101の線速度を変更可能に回転駆動する駆動機構と、前記像担持体101を用いて電子写真方式の画像形成処理を行い、該像坦持体101上のトナー像を記録媒体Pに転写する画像処理プロセス手段と、前記像坦持体101と摺接する摺接部材107aと、該摺接部材107aの振動を検知する振動検知手段108と、該振動検知手段108が検知した振動に基づき前記画像形成処理のときの異音発生を予測する異音予測手段109と、を備え、前記振動検知手段108は、前記画像形成処理における線速度とは異なる線速度で前記像坦持体101を回転駆動させた際に生じる振動を検知し、前記振動検知手段108の検知のタイミングは、前記画像形成処理とは異なるタイミングであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニングブレード等の電子写真感光体と摺接する摺接部材を有する画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の画像形成装置においては高画質化に加え、長寿命化が求められ、最近ではさらに環境配慮の観点から、高画質を維持したままこれまで以上のサプライ品を含む長寿命化が求められている。そこで、これに対応して、耐摩耗性に優れた高耐久で高安定な電子写真感光体(以下、感光体、像坦持体ともいう)を用いることなどにより高画質を維持しつつ長寿命化を目的とした電子写真方式の画像形成装置が既に提供されている。
【0003】
このような画像形成装置においては、感光体の耐摩耗性が著しく向上し感光体が長期に渡って使用されることから、該感光体の表面性が変化することなどによって、感光体とクリーニング装置の部材との間の摺擦による不快な音(異音)が発生する。
【0004】
特許文献1(特開平8−171315号公報)では、クリーニング部材の振動を検出し、その検出振動の振幅が所定振幅以上のとき、感光体ドラムへクリーニング部材の振動抑制用の特定パターンを露光し振動抑制制御を行うことにより、異常音の発生を防止する発明が提案されている。
【0005】
しかしながら感光体とクリーニング部材との間で発生する異音は、使用履歴による感光体の表面性、画像形成中の環境などにより、突然発生してしまうという問題がある。特に軽印刷分野での使用の様な一度に大量部数を印刷中にそのような状況になった場合には、印刷が終了するまでの間、その異音が発生し続けて、操作者等は不快な音を聞き続けることになるが、これを未然に防ぐことは困難であった。
【0006】
劣化した像担持体表面を装置内で研磨再生する手段として、特許文献2(特開平02−191980号公報)が上げられる。しかし像担持体表面の劣化度を測定し、劣化の進行を予測して表面状態の回復を行うというものは、これまでになかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、画像形成処理時の異音の発生を予測し、その発生を未然に防ぐ画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る画像形成装置は、像坦持体と、前記像担持体の線速度を変更可能に回転駆動する駆動機構と、前記像担持体を用いて電子写真方式の画像形成処理を行い、該像坦持体上のトナー像を記録媒体に転写する画像処理プロセス手段と、前記像坦持体と摺接する摺接部材と、該摺接部材の振動を検知する振動検知手段と、該振動検知手段が検知した振動に基づき前記画像形成処理のときの異音発生を予測する異音予測手段と、を備え、前記振動検知手段は、前記画像形成処理における線速度とは異なる線速度で前記像坦持体を回転駆動させた際に生じる振動を検知し、前記振動検知手段の検知のタイミングは、前記画像形成処理とは異なるタイミングであることを特徴とする。
また、上記課題を解決するために本発明に係る画像形成方法は、像担持体を線速度が変更可能に回転駆動する駆動工程と、前記像担持体を用いて電子写真方式の画像形成処理を行い、該像坦持体上のトナー像を記録媒体に転写する画像処理プロセス工程と、前記像坦持体と摺接する摺接部材の振動を検知する振動検知工程と、該振動検知工程で検知した振動に基づき前記画像形成処理のときの異音発生を予測する異音予測工程と、を備え、前記振動検知工程は、前記画像処理プロセス工程における線速度とは異なる線速度で前記像坦持体を回転駆動させた際に生じる振動を検知し、前記振動検知工程の検知のタイミングは、前記画像処理プロセス工程とは異なるタイミングであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像形成処理時の異音の発生を予測し、その発生を未然に防ぐ画像形成装置および画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る画像形成装置の要部構成(1)を示す断面概略図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の要部構成(2)を示す断面概略図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置の要部構成(3)を示す断面概略図である。
【図4】本発明に係る画像形成装置の要部構成(4)を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る画像形成装置は、像坦持体101と、前記像担持体101の線速度を変更可能に回転駆動する駆動機構と、前記像担持体101を用いて電子写真方式の画像形成処理を行い、該像坦持体101上のトナー像を記録媒体Pに転写する画像処理プロセス手段と、前記像坦持体101と摺接する摺接部材107aと、該摺接部材107aの振動を検知する振動検知手段108と、該振動検知手段108が検知した振動に基づき前記画像形成処理のときの異音発生を予測する異音予測手段109と、を備え、前記振動検知手段108は、前記画像形成処理における線速度とは異なる線速度で前記像坦持体101を回転駆動させた際に生じる振動を検知し、前記振動検知手段108の検知のタイミングは、前記画像形成処理とは異なるタイミングであることを特徴とする。
【0012】
次に、本発明に係る画像形成装置および画像形成方法についてさらに詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0013】
以下に、本発明に係る画像形成装置の構成について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る画像形成装置の要部構成(1)を示す断面概略図である。
図1に示すように、画像形成装置は、回転体からなる像担持体の一例である円筒形状の電子写真感光体(以降、単に感光体と記載する)101を内蔵し、感光体101の周りに、図1中に矢印で示す向きの回転方向順に、帯電ローラからなる帯電手段102、露光手段103、現像ローラを備えた現像手段104、記録媒体(用紙、シートともいう)Pに現像画像(トナー像)を転写する転写手段106、感光体101の周面に摺接する摺接部材であるクリーニングブレード(以下、ブレード)107aを備えたクリーニング手段107を具備している。また、感光体101は、帯電手段102と現像ローラとの間で露光手段103によりレーザ光で走査されて露光される。
【0014】
転写手段106は感光体101の下面と対向させて設けてある。この感光体101上の転写手段106と対向する部位が転写部である。この転写部の記録媒体P搬送方向の上流側には、一対のレジストローラ105が設けてある。図示しない給紙トレイに収納された記録媒体Pは給紙コロ(不図示)により給紙されて搬送ガイド(不図示)によりレジストローラ105に向けて搬送案内される。また、転写部より記録媒体P搬送方向の下流側には、定着装置112が配置してある。
【0015】
図1に例示される画像形成装置における画像形成プロセスとしては次のようにして行われる。感光体101が図示しない駆動部(駆動機構)により図1中時計回り方向に回転駆動されて回転を始め、この回転中に感光体101が暗中において帯電手段102により均一に帯電され、露光手段103により所定のレーザ光で露光部が走査される。このとき、図示しない画像読取部で原稿から読み取られた原画像信号、或いは外部の図示しないコンピュータ等で作成された原画像信号が図示しない画像処理部に入力され、適切な画像処理が行われて得られた入力画像信号が露光手段103に入力され、該入力画像信号に基づいて前記レーザ光が変調されており、作成すべき画像に対応した静電潜像が感光体101に形成される。この感光体101上の静電潜像は、感光体101の回転により現像手段104に移動し、ここで現像手段104により現像されてトナー像が形成される。
【0016】
一方、給紙トレイから記録媒体Pが給紙され、この記録媒体Pは所定の搬送経路を経て一対のレジストローラ105の位置で一旦停止し、感光体101上のトナー像と転写部で合致するような送り出しのタイミングを待つ。そして、そのタイミングでレジストローラ105が回転して記録媒体Pを送り出し、この記録媒体Pは転写部に向けて搬送される。感光体101上のトナー像と記録媒体Pとが転写部で合致し、転写手段106による電界によって感光体101上のトナー像が記録媒体P上に転写される。
【0017】
こうしてトナー像が転写されてこれを担持する記録媒体Pは、次いで、定着装置に向けて送り出される。記録媒体P上のトナー像は定着装置を通過する間にその記録媒体P上に定着され、このトナー像が定着された記録媒体Pは図示しない排紙部へ排紙される。一方、転写部で転写されずに感光体101上に残った残留トナーは、感光体101の回転と共にクリーニング手段107に至り、クリーニング手段107を通過する間にブレード107aの摺擦により清掃除去されて、感光体101は次の画像形成に備える状態となる。
【0018】
ここで、前述したような画像形成処理を何十万回、何百万回と繰り返す中で、感光体101は様々なダメージを受けて劣化する。劣化の要因としては、前述の帯電の過程で発生するオゾンや窒素酸化物ガスなどが感光体101表面を酸化させること、またはクリーニングの過程で除去しきれなかったトナー、もしくはトナーに含まれる添加物、記録媒体Pなどから発生する紙粉が感光体101表面に除々に固着し堆積したりすることなどが挙げられ、これらにより、本来の感光体101とは異なる表面物性となってしまう場合がある。このように繰り返し使用によって感光体101には何らかの表面性の変化が、程度の差こそあれ発生してしまうことは避けられない現象であり、このような表面物性の変化、例えば表面の動摩擦係数などが変化などにより、感光体101に摺接するクリーニング手段107のブレード107aなどと不快なこすれ音(摺擦音)などの異音を発生する場合がある。
【0019】
感光体の寿命が短かった頃は、このような異音が発生する前に感光体が摩耗により減耗、消失して寿命となり交換されていたため問題視されることがなかった。ところが、最近では感光体101の耐摩耗性が著しく向上し感光体101が飛躍的に長寿命化されたことにより、前述のような要因で発生する異音の問題が重要視されるようになってきた。これらの異音は感光体101表面の劣化による物性変化が、ある閾値を超えた段階で急激に大きな音を発生する場合が多い。
【0020】
本発明者らは、この問題を解決すべく調査を行ったところ、このような異音は感光体101の線速度(円筒状の感光体の場合は回転速度に相当)により変化し、その速度が小さい場合、円筒状の感光体の場合は感光体の回転数が低い場合に異音が大きくなるという知見が得られ、この知見を基に鋭意検討を行い、本発明を成すに至った。
【0021】
すなわち、図1に示す画像形成装置において、感光体101の線速度を変更可能に駆動する駆動機構(不図示)と、感光体と摺接する摺接部材としてのブレード107aの振動を検知する振動検知手段108と、駆動機構により画像形成処理における線速度とは異なる線速度で感光体101を駆動させ、その際に振動検知手段108により検知される振動に基づいて画像形成処理のときの異音発生を予測する異音予測手段109と、を備え、振動検知手段108の検知のタイミングは、画像形成処理とは異なるタイミングであることを特徴とするものである。
【0022】
ここで、駆動機構における感光体101の線速度変更は、画像形成装置全体の制御部により、感光体101に動力を伝達する駆動部分のモータの回転数を変更することで行うとよい。このとき、制御するモータ回転数については、通常の画像形成処理時に行う場合と比較し1/4〜3/4程度にすることが好ましく、さらに好ましくは1/3〜1/2程度である。なお、感光体101の線速度変更は、駆動部から感光体101へ動力を伝達する過程において介在するギヤを歯数の異なるものに入れ替える機構によってもよい。
【0023】
振動検知手段108は、一般的な振動センサを用いることができるが、圧電素子を用いた場合、その厚みや大きさの自由度が高く、設置場所の制限が少ないため好ましい。
【0024】
なお、振動検知手段108を設置する位置は特に制限されるものではなく、ブレード107aの振動を検知できて画像形成処理に支障をきたさない位置であればどこに設けてもよく、図1に示す位置には限られない。
【0025】
異音予測手段109は、例えば画像形成装置の制御部に振動検知手段108からの電気信号を受信可能に設けられる。そして、異音予測手段109は、受信した振動情報全体に基づき画像形成処理のときの異音発生を予測する。また異音予測手段109は、受信した振動情報の中で所定の周波数に対応する振動及び/または所定振幅以上の振動が含まれる時に、異音に関わる感光体の表面性変化として検知し、画像形成処理のときの異音発生を予測することが好ましい。
【0026】
また、ここでいう画像形成処理とは異なるタイミングとは、通常の画像形成時以外のタイミングであり、例えば画像形成処理終了後、もしくは画像形成処理終了から一定期間経過後の画像形成処理開始前などである。また、画像形成処理における線速度とは異なる線速度とは、意図的に画像形成処理時よりも感光体101の線速度を小さくしたものであることが好ましい。
【0027】
これにより、画像形成処理とは異なるタイミングで駆動機構により該画像形成処理における線速度とは異なる線速度(小さな線速度)で感光体101を駆動させた際に発生する振動が画像形成処理時よりも大きくなることから、異音予測手段109は、振動検知手段108で検知される振動に所定の周波数に対応する振動及び/または所定振幅以上の振動が含まれる場合に、それが異音発生の予兆を示すものであるとして、画像形成処理時における異音発生前に異音発生を予測することが可能となる。
【0028】
(第2実施形態)
図2は、本発明に係る画像形成装置の要部構成(2)を示す断面概略図である。
図2において、感光体101、帯電手段102、露光手段103、現像手段104、転写手段106、クリーニング手段107、振動検知手段108、異音予測手段109は、機能として、第1実施形態(図1に示すもの)と同じであり、画像形成処理における動作、異音予測処理における動作も同じである。
【0029】
ここで、本実施形態の画像形成装置は、異音予測手段109と信号の受信可能に接続され、該異音予測手段109の異音発生の予測結果を報知する異音予測報知手段110を備える。
この異音予測報知手段110は、異音予測手段109からの異音発生を予測することを示す電気信号を受けると、発光ダイオードの発光による光情報、ビープ音、音声などで操作者等のユーザやサービスマンに異音発生予測を報知する機能を有する。これにより、異音予測手段109が予測した異音発生情報をユーザやサービスマンに確実に認識させ、感光体101やブレード107aの交換等の必要な異音防止処置をとることが可能となる。
【0030】
(第3実施形態)
図3は、本発明に係る画像形成装置の要部構成(3)を示す断面概略図である。
図3において、感光体101、帯電手段102、露光手段103、現像手段104、転写手段106、クリーニング手段107、振動検知手段108、異音予測報知手段110は、第2実施形態(図2に示すもの)と同じであり、画像形成処理における動作も同じである。
【0031】
本実施形態の画像形成装置において、異音予測手段109は、振動検知手段108の振動検知結果を振動情報として記録する振動記録手段109aと、振動記録手段109aに蓄積された振動情報を解析し画像形成処理のときの異音発生を予測する蓄積情報解析手段109bと、を有する。
【0032】
ここで、振動記録手段109aには、一般に用いられる各種の公知の記憶手段が適用可能であるが、一例としては半導体メモリに記録させる手段が挙げられる。ここで記録される振動情報は、前述のように感光体101の線速度を変化させたとき(低下させたとき)に予兆として発生する振動を振動検知手段108がピックアップした情報を電子化したものである。また、予め寿命となった感光体101にブレード107aが摺接して発生する振動を寿命時振動情報として記憶させておくことで、後述する蓄積情報解析手段109bにおける解析において活用することも可能である。
【0033】
蓄積情報解析手段109bは、振動記録手段109aに蓄積された振動情報を有意な情報に変換する機能を有する。すなわち、蓄積情報解析手段109bは、音記録手段109aに蓄積された、感光体101の線速度を変更させたときに振動検知手段108により検知された振動に関する振動情報、例えば振幅、周波数などから、その振動が画像形成処理時においても異音を発する程度の感光体101表面の変化をあらわすものかどうかを判断する機能を有する。
【0034】
以上の構成により、つぎの手順で異音予測処理が行われる。
まず画像形成処理とは異なるタイミングで駆動機構により該画像形成処理における線速度とは異なる線速度(小さな線速度)で感光体101を駆動させる。
振動記録手段109aは、その際に振動検知手段108により検知された振動を振動情報として記録する。
蓄積情報解析手段109bは、今回、振動検知手段108により検知された振動(振動情報)を前回までの感光体101の線速度を変更させたときに振動検知手段108により検知された振動に関する振動情報と比較し、その振動情報が画像形成処理時においても異音を発する程度の感光体101表面の変化をあらわすものかどうかを判断する。あるいは、今回、振動検知手段108により検知された振動(振動情報)を、前述の寿命時振動情報と比較してその振動が画像形成処理時においても異音を発する程度の感光体101表面の変化をあらわすものかどうかを判断する。すなわち、今回の振動検知手段108により検知された振動に基づいて画像形成処理のときの異音発生を予測する。
蓄積情報解析手段109bが画像形成処理のときの異音発生を予測すると、異音予測報知手段110は、異音予測手段109(蓄積情報解析手段109b)の予測結果を報知する。
【0035】
このように、意図的に画像形成処理時(通常使用時)よりも感光体101の線速度を小さくして、その際に発生する振動を振動検知手段108で検知した振動情報を記録し、蓄積し、それを解析することにより、異音発生前に異音発生を予測することが可能となる。
【0036】
また、このように突然の異音発生を予測した際に、これまで蓄積された情報と比較検証することにより事前の対策の方式選択を的確に行うことが可能となる。例えば、異音予測手段109は、蓄積情報解析手段109bの解析結果に基づいて、感光体101及び/又は感光体101に摺接する部材であるブレード107aの故障を判断する、あるいは寿命を予測する故障診断機能を有することが好ましい。
【0037】
これは、感光体101の線速度を変更させたときに振動検知手段108により検知される振動に関する振動情報から感光体101表面の物性変化を把握することにより故障診断に応用展開するものである。具体的には蓄積情報解析手段109bを用いて、予め求めた感光体101及びそれに接触する部材(ブレード107a)が寿命を迎える際に発生する振動情報と、振動記録手段109aに蓄積された振動情報や感光体101の線速度を変更させたときに振動検知手段108により検知される振動に関する振動情報を用いて、それらの差異から現在の画像形成装置内で使用している感光体101及びブレード107aがそれぞれの寿命までどれくらいの使用時間が残っているかを判別することにより故障診断を行うものである。また、この故障診断機能は、蓄積情報解析手段109bが通常の画像形成処理時以外のタイミングで行われる感光体101の線速度を変化させたときに発生する振動情報と、予め振動記録手段109aによって記録された同じ線速度の条件で、寿命を迎えた感光体101で発生する振動情報とを比較し、各振動情報と合致すると判断された場合に、画像形成装置としては正常ではない状態、即ち故障と判断する。
【0038】
一般に、画像形成装置は使われ方の違いで感光体101表面の変化、即ち堆積した放電生成物などの異物や酸化物の蓄積状況が大幅に異なる。例えば、画像濃度が非常に高くトナーを多く使う印刷を連続して大量におこなった場合と、白紙に近い画像でトナーがほとんど消費されない画像を同じ枚数印刷する場合とでは、印刷枚数のカウンタのデータが同じ数値でも感光体101表面に堆積した異物や酸化物の程度が著しく異なる。ところが、本発明における故障診断機能によれば、このような使われ方の違いによる感光体101表面の変化を、感光体101の線速度を変更させたときに振動検知手段108により検知される振動に関する振動情報を用いて予め故障状態となる時期を前もって正確に把握することが可能となる。
【0039】
(第4実施形態)
図4は、本発明に係る画像形成装置の要部構成(4)を示す断面概略図である。
図4において、感光体101、帯電手段102、露光手段103、現像手段104、転写手段106、クリーニング手段107、振動検知手段108、異音予測手段109、振動記録手段109a、蓄積情報解析手段109b、異音予測報知手段110は、第3実施形態(図3に示すもの)と同じであり、画像形成処理における動作、異音予測処理における動作も同じである。
【0040】
本実施形態の画像形成装置は、異音予測手段109(すなわち、蓄積情報解析手段109b)の予測結果に基づいて感光体101表面のクリーニング条件を制御するクリーニング制御手段111を備える。具体的には、図4に示すように、クリーニング手段107とは別個に設けられ、感光体101表面のクリーニングを行うクリーニング手段107’と、蓄積情報解析手段109bからの情報(異音予測結果)を基に、通常の画像形成処理時以外のタイミングで感光体101表面に堆積した異物や酸化物を除去するようにクリーニング手段107’を制御するクリーニング制御手段111と、を備える。なお、クリーニング手段107’はクリーニング制御手段111から発信された信号を受け取るためケーブル等の電気回線で結ばれている。
【0041】
ここで、クリーニング手段107’は、通常の画像形成処理の過程で発生した転写残トナーなどを除去するために設けられた摺接部材(ブレード107aやブラシなど)を用いたクリーニング手段107とは別個に独立して設けられるもので、通常の画像形成処理の過程では動作せず、前述した異音予測処理の結果、画像形成処理のときに突然の異音発生の可能性があり、感光体101表面に堆積した異物や酸化物の強制除去が必要と判断された場合にのみ動作するものである。
【0042】
このようなクリーニング手段107’の形態としては、任意のものを用いることができるが、異音の要因となる放電生成物などが感光体101に徐々に堆積したことにより強固に付着している場合が多いことから、通常の画像形成処理の過程で用いられるクリーニング条件よりも強い条件(例えば、高いブレード当接圧、感光体の軸方向でのブレードの揺動)で摺接部材を感光体101表面に接触、摺擦させて除去することが好ましい。またさらには、化学的な変化により前述のような機械的な接触による除去(摺接部材による除去)が困難な場合はアルコールなどの溶剤を含浸させた部材を当接させて微量塗布することにより感光体101表面の堆積物を除去するなどの方法も採用可能である。
【0043】
なお、クリーニング手段107’に替えて既設のクリーニング手段107を用い、クリーニング制御手段111が通常の画像形成処理の過程で用いられるクリーニング条件よりも強い条件(当接圧)でブレード107aを感光体101表面に接触、摺擦させるよう制御してもよい。
【0044】
このように、前述のような異音予測処理により異音発生が予測されると、そのときの異音予測情報を基に的確なクリーニング条件を選択することができ、感光体101表面を回復・再生し、異音発生を抑制することが可能となる。
【0045】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0046】
例えば、本実施形態では、感光体101とブレード107aとの摺擦により異音が発生する例を示したが、本発明はこれに限らず、画像形成処理時に感光体101と接触して異音が発生する可能性がある部材を対象に適用可能である。
【0047】
また、本発明を適用可能な電子写真方式を用いた画像形成装置の一例としては、複写装置、ファクシミリ、プリンタ及びこれらを包括したデジタル複合機が挙げられる。このとき、感光体、クリーニング手段とともに振動検知手段を装置内に固定して組み込んでいてもよく、あるいはこれらの画像形成装置の構成の一形態であるプロセスカートリッジとして搭載してもよい。
また、本発明はタンデムフルカラーの画像形成装置にも適用することが可能である。この場合、複数の感光体を用いているため、それぞれの感光体における摺接部材に独立して前述の振動検知手段及び必要に応じて設けられる一連の装置を設ける必要があるが、それぞれの機構は前述のとおりで、用いられる感光体の個数に応じで具備すればよい。
以上のように本発明の適用可能な範囲はこれまでに公知の電子写真方式を適用した電子写真感光体を用いることによって成立している画像形成装置においてほとんど全てであり、帯電方式や用いられるトナーを含む現像方式、転写方式などは公知のいずれの方式にも適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
101 感光体(像担持体)
102 帯電手段
103 露光手段
104 現像手段
105 レジストローラ
106 転写手段
107,107’ クリーニング手段
107a ブレード
108 振動検知手段
109 異音予測手段
109a 振動記録手段
109b 蓄積情報解析手段
110 異音予測報知手段
111 クリーニング制御手段
P 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】特開平8−171315号公報
【特許文献2】特開平02−191980号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像坦持体と、
前記像担持体の線速度を変更可能に回転駆動する駆動機構と、
前記像担持体を用いて電子写真方式の画像形成処理を行い、該像坦持体上のトナー像を記録媒体に転写する画像処理プロセス手段と、
前記像坦持体と摺接する摺接部材と、
該摺接部材の振動を検知する振動検知手段と、
該振動検知手段が検知した振動に基づき前記画像形成処理のときの異音発生を予測する異音予測手段と、を備え、
前記振動検知手段は、前記画像形成処理における線速度とは異なる線速度で前記像坦持体を回転駆動させた際に生じる振動を検知し、
前記振動検知手段の検知のタイミングは、前記画像形成処理とは異なるタイミングであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記摺接部材は、クリーニングブレードであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記振動検知手段は、前記画像形成処理における線速度より小さい線速度で前記像坦持体を回転駆動させた際に生じる振動を検知し、
前記異音予測手段は、前記振動検知手段が検知した振動の中で、所定の周波数に対応する振動及び/または所定振幅以上の振動が含まれていたときに、前記画像形成処理のときの異音発生を予測することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記振動検知手段は、検知した振動を振動情報として記録し、
前記異音予測手段は、前記振動情報を解析して、前記画像形成処理のときの異音発生を予測することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記異音予測手段は、前記振動情報を解析して、前記像坦持体及び/又は前記摺接部材の故障を判断することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記異音予測手段の異音発生の予測結果に基づいて前記像担持体表面のクリーニング条件を制御するクリーニング制御手段を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記異音予測手段の異音発生の予測結果を報知する異音予測報知手段を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
像担持体を線速度が変更可能に回転駆動する駆動工程と、
前記像担持体を用いて電子写真方式の画像形成処理を行い、該像坦持体上のトナー像を記録媒体に転写する画像処理プロセス工程と、
前記像坦持体と摺接する摺接部材の振動を検知する振動検知工程と、
該振動検知工程で検知した振動に基づき前記画像形成処理のときの異音発生を予測する異音予測工程と、を備え、
前記振動検知工程は、前記画像処理プロセス工程における線速度とは異なる線速度で前記像坦持体を回転駆動させた際に生じる振動を検知し、
前記振動検知工程の検知のタイミングは、前記画像処理プロセス工程とは異なるタイミングであることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−105137(P2013−105137A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250566(P2011−250566)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】