説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】特定のオキソチタニルフタロシアニン結晶を用いた電子写真感光体を搭載することにより、高品質な画像を効率よく形成することができる画像形成装置及びそれを用いた画像形成方法を提供する。
【解決手段】電子写真感光体の周囲に、帯電手段等が配置された画像形成装置及びそれを用いた画像形成方法であって、電荷発生剤として、所定の特性を有するとともに、下記工程(a)〜(d)を含む製造方法によって得られてなるオキソチタニルフタロシアニン結晶を用いる。
(a)粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、オキソチタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)オキソチタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(d)洗浄後のウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得る工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び画像形成方法に関し、特に高品質な画像を効率よく形成することができる画像形成装置及びそれを用いた画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機やレーザープリンター等の電子写真機器において使用される電子写真感光体には、近年、低価格や低環境汚染性等の要求から、有機感光体が多く用いられている。このような有機感光体において使用される電荷発生剤としては、半導体レーザーや赤外線LEDなどから照射される赤外ないし近赤外の波長の光に感応するフタロシアニン系顔料が広く使用されている。
また、かかるフタロシアニン系顔料には、その化学構造によって、無金属フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン化合物、チタニルフタロシアニン化合物等が存在するとともに、それぞれのフタロシアニン化合物が、その製造条件の違いによって種々の結晶型をとり得ることが知られている。
このように結晶型が異なる多数種のフタロシアニン化合物結晶が存在する中で、電荷発生剤として、Y型結晶構造を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶を使用した電子写真感光体を製造した場合、他の結晶型のオキソチタニルフタロシアニン結晶を使用した場合と比較して、電子写真感光体における電気特性が向上することが知られている。
このようなY型オキソチタニルフタロシアニン結晶に関しては、例えば、X線回折スペクトルにおいてCu−Kα線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)=27.3゜に最大回折ピークを有するオキソチタニルフタロシアニン結晶であって、フタロシアニン環を形成し得る有機化合物と、チタン化合物と、を尿素又はアンモニアを添加したジアルキルアミノアルコール中で、130℃、4時間程度の条件で反応させてなるオキソチタニルフタロシアニン結晶の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、o−フタロニトリルと、チタンテトラブトキシドとを、尿素化合物を用いずに直接的に反応させて、215℃、2時間程度の条件で反応させてなるオキソチタニルフタロシアニン結晶の製造方法が開示されている(例えば、特許文献2及び3)。
より具体的には、CuKα特性X線回折スペクトルにおけるピークを所定の範囲に有し、示差走査熱量分析において50〜400℃の範囲内における温度変化のピークを有しないオキソチタニルフタロシアニン結晶の製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開平8−176456(実施例)
【特許文献2】特許第3463032 (特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2004−145284(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の場合、フタロシアニン環を形成し得る有機化合物に対するチタン化合物の添加割合が少ない一方、フタロシアニン環を形成し得る有機化合物に対する尿素等の添加割合が過剰であり、さらに、反応温度が低いため、製造されたY型オキソチタニルフタロシアニン結晶が、感光層用塗布液中で、β型もしくはα型結晶に結晶転移を起こしやすいという問題が見られた。そのため、感光層用塗布液の貯蔵安定性が乏しくなり、結果として、良好な電気特性を有する感光層を安定して形成することができないという問題が見られた。
【0005】
一方、特許文献2や特許文献3に記載のオキソチタニルフタロシアニン結晶を用いた場合には、感光層用塗布液中での結晶転移については、ある程度抑制することができるものの、感光層中における分散性が低いという問題が見られた。その結果、かかるオキソチタニルフタロシアニン結晶を電荷発生剤として使用した電子写真感光体においては、感度の低下や、露光メモリの発生といった問題が見られた。
【0006】
そこで、本発明者らは、上述した問題に鑑み鋭意検討したところ、所定の光学特性及び熱特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶を製造する過程において、中間生成物としてのウェットケーキを所定のアルコールによって洗浄することにより、結晶が安定であるとともに感光層中における分散性に優れたオキソチタニルフタロシアニン結晶を得ることができることを見出した。
そして、このような特定のオキソチタニルフタロシアニン結晶を電荷発生剤として用いた場合には、電子写真感光体の感度を効果的に向上させることができるとともに、露光メモリの発生についても効果的に抑制することができることを見出した。
すなわち、本発明の目的は、特定のオキソチタニルフタロシアニン結晶を用いた電子写真感光体を搭載することにより、高品質な画像を効率よく形成することができる画像形成装置及びそれを用いた画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、基体上に少なくとも電荷発生剤、電荷輸送剤及び結着樹脂からなる感光層を備えた電子写真感光体を有し、当該電子写真感光体の周囲に、少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段が順次配置された画像形成装置であって、電荷発生剤として、Cukα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有し、かつ、下記工程(a)〜(d)を含む製造方法によって得られてなるオキソチタニルフタロシアニン結晶を用いることを特徴とする画像形成装置が提供され、上述した問題を解決することができる。
(a)粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、オキソチタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)オキソチタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(d)洗浄後のウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得る工程
すなわち、所定の光学特性及び熱特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶であれば、有機溶媒中に、例えば、7日以上の長期に渡って浸漬した場合であっても、α型結晶及びβ型結晶への結晶転移を有効に抑制することができる。
また、所定の工程を経て製造されたオキソチタニルフタロシアニン結晶であれば、感光層中における分散性を効果的に向上させることができる。
かかる分散性を向上させる効果は、特に、工程(c)において、ウェットケーキを所定のアルコールを用いて洗浄することによって、オキソチタニルフタロシアニン結晶の表面特性が改質されることによって得られるものと考えられる。
いずれにしても、本発明におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶であれば、結晶が安定であるとともに感光層中における分散性に優れることから、電荷発生剤として電子写真感光体に対して含有させた場合には、かかる電子写真感光体の感度を効果的に向上させることができるとともに、露光メモリの発生についても効果的に抑制することができる。
したがって、本発明の画像形成装置であれば、高品質な画像を効率よく形成することができる。
なお、ウェットケーキとは、比較的少量の、例えば、水等の溶媒中にオキソチタニルフタロシアニンが分散し塊状になっている状態を示す。
【0008】
また、本発明の画像形成装置を構成するにあたり、工程(d)の後に、下記検査工程(e)〜(g)を含むことが好ましい。
(e)メタノール及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる混合溶媒(メタノール:N,N−ジメチルホルムアミド=1:1(重量比))100重量部に対して、オキソチタニルフタロシアニン結晶1.25重量部を加えて懸濁液とする工程
(f)懸濁液をフィルタにてろ過し、ろ液を得る工程
(g)ろ液における波長400nmの光に対する吸光度が0.01〜0.08の範囲内の値であることを確認する工程
このように構成することにより、ろ液における吸光度を測定することで、オキソチタニルフタロシアニン結晶の感光層中における分散性を、容易かつ定量的に評価することができる。
なお、分散性の指標として波長400nmの光に対する吸光度を測定する理由は、かかる波長の光に対する吸光度と、オキソチタニルフタロシアニン結晶における分散性及びそれに起因した電子写真感光体の電気特性と、の相関が、経験的に見出されているためである。
また、かかる相関は、オキソチタニルフタロシアニン結晶における表面特性の改質具合が、波長400nmの光に対する吸光度に反映されるために生じるものと考えられる。
【0009】
また、本発明の画像形成装置を構成するにあたり、工程(a)において使用する酸が、濃硫酸、トリフルオロ酢酸及びスルホン酸からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
このように構成することにより、かかる酸によって、不純物を効果的に分解することができる一方、オキソチタニルフタロシアニン化合物の分解については、効果的に抑制することができる。
【0010】
また、本発明の画像形成装置を構成するにあたり、工程(b)において使用する貧溶媒が、水であることが好ましい。
このように構成することにより、得られるウェットケーキにおける表面積を増加させることができるため、後の洗浄工程において、より効果的にオキソチタニルフタロシアニン結晶の感光層中における分散性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の画像形成装置を構成するにあたり、工程(c)において使用する炭素数1〜4のアルコールが、メタノール、エタノール及び1−プロパノールからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
このように構成することにより、さらに効果的にオキソチタニルフタロシアニン結晶の感光層中における分散性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の画像形成装置を構成するにあたり、工程(c)において、ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄をした後、さらに水で洗浄することが好ましい。
このように構成することにより、オキソチタニルフタロシアニン結晶が結晶転移することをより効果的に抑制して、さらに安定したオキソチタニルフタロシアニン結晶を得ることができる。
【0013】
また、本発明の画像形成装置を構成するにあたり、オキソチタニルフタロシアニン結晶が、有機溶媒中に24時間浸漬した後に測定されるCuKα特性X線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、26.2°にピークを有しないことが好ましい。
このように構成することにより、感光層用塗布液中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の安定性を、さらに向上させることができる。
【0014】
また、本発明の画像形成装置を構成するにあたり、感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A/−)と、感光層における膜厚(d/m)と、感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)と、が下記関係式(1)を満足することが好ましい。
A・C-1・d-1 > 1.75×104 (1)
このように構成することにより、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を、容易に確認することができる。
【0015】
また、本発明の画像形成装置を構成するにあたり、画像形成装置が、除電手段を省略した除電レスタイプであることが好ましい。
このように構成することにより、画像形成装置を小型化することができるとともに、部品点数を減らしてコストダウンを図ることができる。
なお、本発明の画像形成装置によれば、搭載される電子写真感光体が、優れた感度特性を有するとともに、露光メモリの発生についても効果的に抑制することができることから、除電レスタイプを容易に構成することができる。
【0016】
また、本発明の画像形成装置を構成するにあたり、電子写真感光体におけるプロセススピードを100〜250mm/secの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、画像形成を高速で行うことができ、画像形成効率を向上させることができる。
【0017】
また、本発明の別の態様は、基体上に少なくとも電荷発生剤、電荷輸送剤及び結着樹脂からなる感光層を備えた電子写真感光体を有し、当該電子写真感光体の周囲に、少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段が順次配置された画像形成装置を用いた画像形成方法であって、電荷発生剤として、Cukα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外に270〜400℃の範囲内に1つのピークを有し、かつ、下記工程(a)〜(d)を含む製造方法によって得られてなるオキソチタニルフタロシアニン結晶を用いることを特徴とする画像形成方法である。
(a)粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、オキソチタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)オキソチタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(d)洗浄後のウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得る工程
すなわち、電荷発生剤として、結晶が安定であるとともに感光層中における分散性に優れた所定のオキソチタニルフタロシアニン結晶を含むことから、電子写真感光体の感度を効果的に向上させることができるとともに、露光メモリの発生についても効果的に抑制することができる。
その結果、除電手段を省略、もしくは簡略化したり、画像形成速度を高速化することが可能となるため、高品質な画像を効率的かつ低コストで提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、基体上に少なくとも電荷発生剤、電荷輸送剤及び結着樹脂からなる感光層を備えた電子写真感光体を有し、当該電子写真感光体の周囲に、少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段が順次配置された画像形成装置であって、電荷発生剤として、Cukα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有し、かつ、下記工程(a)〜(d)を含む製造方法によって得られてなるオキソチタニルフタロシアニン結晶を用いることを特徴とする画像形成装置である。
(a)粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、オキソチタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)オキソチタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(d)洗浄後のウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得る工程
以下、本発明の画像形成装置について、主に本発明の特徴である電子写真感光体を中心に説明する。
【0019】
1.基本的構成
本発明としての画像形成装置の基本的構成として、図1に示すような複写機30を挙げることができる。かかる複写機30は、画像形成ユニット31、排紙ユニット32、画像読取ユニット33、及び原稿給送ユニット34を備えている。また、画像形成ユニット31には、画像形成部31a及び給紙部31bがさらに備えられている。
また、感光体ドラム41は、矢印の方向に一定速度で回転しており、感光体ドラム41の表面で、次の順に電子写真プロセスが行われることになる。より詳細には、帯電器42により、感光体ドラム41が全面的に帯電され、次いで、露光源43によって、印字パターンが露光される。
次いで、現像器44によって、印字パターンに対応して、トナー現像され、さらに、転写ローラ45によって、記録用紙Sへのトナーの転写が行われ、所望の画像が記録用紙S上に形成されることとなる。
【0020】
2.電子写真感光体
本発明において使用される電子写真感光体は、単層型電子写真感光体であることが好ましい。
この理由は、単層型電子写真感光体であれば、正負いずれの帯電型であっても採用することができるとともに、感光体の層構成が簡易となり、生産性を向上させることができるためである。さらに、層間の界面が少ないことから、光学的特性を向上させることができるためである。
したがって、以下においては、主に単層型電子写真感光体を例にとって説明する。
【0021】
(1)基本的構成
図2(a)に示すように、本発明における単層型電子写真感光体10の基本的構成としては、基体12上に、電荷発生剤と、電荷輸送剤と、結着樹脂と、からなる単一の感光層14を設けたものであることが好ましい。
また、図2(b)に例示するように、この感光層14と、基体12と、の間に、中間層16を形成した単層型電子写真感光体10´とすることもできる。
【0022】
(2)基体
また、図2に例示する基体12としては、導電性を有する種々の材料を使用することができる。例えば、鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属や、上述した金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料、アルマイト、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス等があげられる。
また、基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、ドラム状等のいずれであってもよく、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、基体は、使用に際して十分な機械的強度を有するものが好ましい。ドラム状の場合は、基体の直径が10〜60mm、より好ましくは10〜35mmの範囲内の値とすることが装置の小型化の面で好ましい。
【0023】
また、干渉縞の発生防止のためには、エッチング、陽極酸化、ウエットブラスティング法、サンドブラスティング法、粗切削、センタレス切削等の方法を用いて、支持基体の表面に粗面化処理を行っても良い。
なお、基体に対して陽極酸化等を実施した場合、非導電性や半導体特性となる場合があるが、そのような場合であっても所定の効果が得られる限り、基体として用いることができる。
【0024】
(3)中間層
また、図2(b)に示すように、基体12上に、所定の結着樹脂を含有する中間層16を設けてもよい。
この理由は、基体と感光層との密着性を向上させるとともに、この中間層内に所定の微粉末を添加することで、入射光を散乱させて、干渉縞の発生を抑制するとともに、カブリや黒点の原因となる非露光時における基体から感光層への電荷注入を抑制することができるためである。この微粉末としては、光散乱性、分散性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料や、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料やフッ素樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等を用いることができる。
【0025】
また、この中間層の膜厚を0.1〜50μmの範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、中間層厚が厚くなりすぎると、感光体表面に残留電位が生じやすくなり、電気特性を低下させる要因となる場合があるためである。その一方で、中間層厚が薄くなりすぎると、基体表面の凹凸を十分緩和させることができなくなり、基体と感光層との密着性を得ることができなくなるためである。
したがって、中間層の膜厚としては、0.1〜50μmの範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜30μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0026】
(4)感光層
(4)−1 結着樹脂
本発明における電子写真感光体に使用する結着樹脂の種類は特に制限されるものではないが、例えば、ポリカーボネート樹脂をはじめ、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂、エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
【0027】
(4)−2 電荷発生剤
本発明において使用される電荷発生剤は、Cukα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2=27.2°に最大ピークを有するとともに、示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有するオキソチタニルフタロシアニン結晶であって、下記工程(a)〜(d)を含む製造方法によって得られてなるオキソチタニルフタロシアニン結晶であることを特徴とする。
(a)粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、オキソチタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)オキソチタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(d)洗浄後のウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得る工程
以下、オキソチタニルフタロシアニン結晶について、具体的に説明するが、工程(a)〜(d)については、後の項において説明し、ここでは、オキソチタニルフタロシアニン結晶自体の特性等について説明する。
【0028】
(i)オキソチタニルフタロシアニン化合物
本発明におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶を構成するオキソチタニルフタロシアニン化合物としては、下記一般式(1)であらわされる化合物であることが好ましい。
この理由は、このような構造のオキソチタニルフタロシアニン化合物であれば、オキソチタニルフタロシアニン結晶の安定性をさらに向上させることができるばかりでなく、かかるオキソチタニルフタロシアニン結晶を安定して製造することができるためである。
また、特に、オキソチタニルフタロシアニン化合物の構造が、下記一般式(2)で表されることが好ましい。その中でも特に、下記式(3)で表される無置換のオキソチタニルフタロシアニン化合物(CGM−1)であることが好ましい。
この理由は、このような構造のオキソチタニルフタロシアニン化合物を用いることによって、より安定した性質を備えたオキソチタニルフタロシアニン結晶をさらに容易に製造することができるためである。
【0029】
【化1】

【0030】
(一般式(1)中、X1、X2、X3、及びX4はそれぞれ同一または異なっても良い置換基であり、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、またはニトロ基を示し、繰り返し数a、b、c及びdはそれぞれ1〜4の整数を示し、それぞれ同一または異なっても良い。)
【0031】
【化2】

【0032】
(一般式(2)中、Xは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、またはニトロ基を示しており、繰り返し数eは1〜4の整数を示す。)
【0033】
【化3】

【0034】
(ii)オキソチタニルフタロシアニン結晶
(ii)−1 光学特性
本発明におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶は、光学特性として、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大のピークを有することを特徴とする(第1の光学特性)。
また、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=26.2°にピークを有さないことが好ましい(第2の光学特性)。
さらに、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=7.2°にピークを有さないことが好ましい(第3の光学特性)。
この理由は、かかる第1の光学特性を備えない場合には、このような光学特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶と比較して、有機溶媒中における結晶安定性及び電荷発生能が著しく低下する傾向にあるためである。逆に言えば、第1の光学特性、より好ましくは、第2の光学特性及び第3の光学特性を備えることにより、有機溶媒中における結晶安定性及び電荷発生能を向上させることができるためである。
【0035】
また、オキソチタニルフタロシアニン結晶が、有機溶媒中に24時間浸漬した後に測定されるCuKα特性X線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、26.2°にピークを有しないことが好ましい。
この理由は、オキソチタニルフタロシアニン結晶がかかる特性を有することによって、感光層用塗布液中におけるその経時安定性や分散性を、さらに向上させることができるためである。
すなわち、オキソチタニルフタロシアニン結晶を、実際にテトラヒドロフラン等の有機溶媒中に24時間浸漬させた場合であっても、結晶型がαまたはβ型へ転移せず、所定の結晶型を保持していることを確認できるため、有機溶媒中における結晶転移を確実に制御することができるためである。
なお、オキソチタニルフタロシアニン結晶の貯蔵安定性を評価する基準となる有機溶媒への浸漬実験評価は、例えば、電子写真用感光体を作成するための感光層用塗布液(以下、感光層用塗布液)を実際に保管する条件と、同一条件で実施することが好ましい。したがって、例えば、温度23±1℃、相対湿度50〜60%RHの条件下で、密閉系中において、オキソチタニルフタロシアニン結晶の貯蔵安定性を評価することが好ましい。
【0036】
また、オキソチタニルフタロシアニン結晶の貯蔵安定性を評価する際の有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、1,4−ジオキサン、及び1−メトキシ−2−プロパノールからなる群の少なくとも1種であることが好ましい。
この理由は、かかる有機溶媒を感光層用塗布液における有機溶剤として用いた場合に、オキソチタニルフタロシアニン結晶の安定性をより確実に判断することができるとともに、オキソチタニルフタロシアニン結晶、電荷輸送剤、及び結着樹脂等における相溶性が良好となるためである。したがって、オキソチタニルフタロシアニン結晶及び電荷輸送剤等の特性を、より有効に発揮させる感光体を形成することができ、さらに電気特性及び画像特性に優れた電子写真感光体を、安定して製造することができるためである。
【0037】
(ii)−2 熱特性
また、本発明におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶は、熱特性として、示差走査熱量分析において、吸着水の気化に伴なうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有することを特徴とする。
この理由は、かかる光学特性及び熱特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶であれば、有機溶媒中に添加して長時間放置した場合であっても、結晶構造が、α型結晶及びβ型結晶へと結晶転移することを有効に抑制することができるためである。したがって、このようなオキソチタニルフタロシアニン結晶を用いることによって、貯蔵安定性に優れた感光層用塗布液を得るこができ、その結果、電気特性や画像特性に優れた電子写真感光体を安定して製造することができる。
なお、吸着水の気化に伴うピーク以外のピークであって、270〜400℃の範囲内に現れる1つのピークは、290〜400℃の範囲内に現れることがより好ましく、300〜400℃の範囲内に現れることがさらに好ましい。
また、CuKα特性X線回折スペクトルにおけるブラッグ角の具体的な測定方法、及び、示差走査熱量分析の具体的な方法については、後述する実施例において詳述する。
【0038】
(iii)添加量
また、電荷発生剤としてのオキソチタニルフタロシアニン結晶の添加量としては、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜50重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、電荷発生剤の添加量をかかる範囲内の値とすることによって、電子写真感光体への露光をした際に、当該電荷発生剤が効率的に電荷を発生することができるためである。すなわち、かかる電荷発生剤の添加量が、結着樹脂100重量部に対して0.1重量部未満の値となると、電荷発生量が感光体上に静電潜像を形成するのに不十分となる場合があるためである。一方、かかる電荷発生剤の添加量が、結着樹脂100重量部に対して50重量部を超えた値となると、感光層用塗布液中に均一に分散させることが困難となる場合があるためである。
よって、結着樹脂100重量部に対する電荷発生剤の添加量を0.5〜30重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0039】
(4)−3 正孔輸送剤
(i)種類
また、本発明において使用される正孔輸送剤としては、特に制限されるものではなく、従来公知の種々の正孔輸送性化合物がいずれも使用可能である。特にベンジジン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ナフチレンジアミン系化合物、フェナントリレンジアミン系化合物、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなど)、スチリル系化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンなど)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾールなど)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンなど)、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物、ブタジエン系化合物、ピレン−ヒドラゾン系化合物、アクロレイン系化合物、カルバゾール−ヒドラゾン系化合物、キノリン−ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、スチルベン−ヒドラゾン系化合物、及びジフェニレンジアミン系化合物などが好適に使用される。これらはそれぞれ単独で使用される他、2種以上を併用することもできる。
【0040】
(ii)添加量
また、正孔輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、1〜120重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる正孔輸送剤の添加量が1重量部未満の値となると、感光層の正孔輸送能が極端に低下し、画像特性に悪影響を与える場合があるためである。
また、添加量が120重量部を超える値となると、分散性が低下し、結晶化しやすくなるという問題が生じるためである。
したがって、正孔輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、5〜100重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜90重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0041】
(4)−4 電子輸送剤
(i)種類
また、本発明に用いられる電子輸送剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンゾキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ジフェノキノン系化合物、ジナフトキノン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド系化合物、フルオレノン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、ニトロアントアラキノン系化合物、ジニトロアントラキノン系化合物などが好適に使用される。これらは、それぞれ単独で使用されるほか、2種以上を併用することもできる。
【0042】
(ii)添加量
また、電子輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、1〜120重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる電子輸送剤の添加量が1重量部未満の値となると、感光層の電子輸送能が極端に低下し、画像特性に悪影響を与える場合があるためである。
また、添加量が120重量部を超える値となると、分散性が低下し、結晶化しやすくなるという問題が生じるためである。
したがって、電子輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、5〜100重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜90重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0043】
(4)−5 厚さ
また、感光層の膜厚を5.0〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる感光層の厚さが5.0μm未満の値となると、電子写真感光体としての機械的強度が不十分となる場合があるためである。一方、かかる感光層の厚さが100μmを超えた値となると、基体から剥離しやすくなったり、均一に形成することが困難となる場合があるためである。したがって、かかる感光層の厚さを10〜80μmの範囲内の値とすることがより好ましく、20〜40μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0044】
(5)製造方法
単層型電子写真感光体の製造方法としては、特に制限されるものではないが、以下のような手順で実施することができる。
まず、溶剤に特定の電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂、添加剤等を含有させて塗布液を作成する。このようにして得られた塗布液を、例えば、ディップコート法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラ塗布法等の塗布法を用いて導電性基材(アルミニウム素管)上に塗布する。
その後、例えば、100℃、30分間の条件で熱風乾燥して、所定膜厚の感光層を有する単層型電子写真感光体を得ることができる。
なお、分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジオキソラン、1,4-ジオキサン、等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。このとき、さらに、電荷発生剤の分散性、感光体層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤等を含有させてもよい。
【0045】
また、この感光層を形成する前に、基体上に中間層を形成しておくことも好ましい。
この中間層を形成するにあたり、結着樹脂、必要に応じて添加剤(有機微粉末または無機微粉末)を適当な分散媒とともに、公知の方法、例えば、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合して塗布液を調整し、これを公知の手段、例えばブレード法、浸漬法、スプレー法により塗布して、熱処理を施し中間層を形成する。
また、添加剤は製造時の沈降等が問題とならない範囲であって、光散乱を生じさせて干渉縞の発生を防止する等の目的のために、各種添加剤(有機微粉末または無機微粉末)を少量添加することができる。
次いで、得られた塗布液を、公知の製造方法に準じて、例えば、支持基体(アルミニウム素管)上に、ディップコート法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラ塗布法等の塗布法を用いて塗布することができる。
その後、基体上の塗布液を乾燥する工程は、20〜200℃の温度で5分〜2時間の範囲で行うことが好ましい。
【0046】
なお、かかる塗布液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0047】
(6)積層型電子写真感光体
また、本発明における電子写真感光体を構成するにあたり、感光層が、図3に示すように、特定の電荷発生剤を含む電荷発生層24と、電荷輸送剤及び結着樹脂を含む電荷輸送層22と、からなる積層型の感光層20であることも好ましい。
かかる積層型の感光層を採用した場合、電荷発生剤や、電荷輸送剤の感光性材料の選択肢が広がり、構造設計上の自由度を向上させることができるという利点がある。
この積層型電子写真感光体20は、基体12上に、蒸着または塗布等の手段によって、特定の電荷発生剤を含有する電荷発生層24を形成し、次いでこの電荷発生層24上に、電荷輸送剤と結着樹脂とを含む塗布液を塗布し、それを乾燥させて電荷輸送層22を形成することによって作製することができる。
また、上述した構造とは逆に、図3(b)に示すように、基体12上に電荷輸送層22を形成し、その上に電荷発生層24を形成してもよい。ただし、電荷発生層24は、電荷輸送層22に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには、図3(a)に示すように、電荷発生層24の上に電荷輸送層22を形成することがより好ましい。
また、単層型電子写真感光体の場合と同様に、基体上に中間層25を形成することも好ましい。
【0048】
また、電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、結着剤等としては、単層型電子写真感光体と同様のものが挙げられる。
また、電荷発生層における電荷発生剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して5〜1000重量部が好ましく、30〜500重量部がより好ましい。
【0049】
また、電荷輸送剤(正孔輸送剤及び電子輸送剤)の含有量を、感光体層に含まれる電荷輸送層の結着樹脂100重量部に対して10〜500重量部が好ましい。
この理由は、電荷輸送剤の含有量をかかる範囲内の値とすることによって、電荷輸送剤の電荷輸送層内における分散性をより向上させて、さらに優れた感度を有する電子写真感光体を得ることができるためである。
したがって、電荷輸送剤の含有量を25〜200重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0050】
また、電荷発生層形成用塗布液及び電荷輸送層形成用塗布液は、例えば、電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂などの所定の成分を、分散媒とともに、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機などを用いて分散混合することによって、調製することができる。
この積層型感光層20において、感光層(電荷発生層及び電荷輸送層)の厚さは、特に限定されないが、電荷発生層については、好ましくは0.01〜5μm、より好ましくは0.1〜3μmの厚さであり、電荷輸送層については、好ましくは2〜100μm、より好ましくは5〜50μmの厚さである。
【0051】
(7)オキソチタニルフタロシアニン結晶の製造方法
また、本発明におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の製造方法は、下記工程(a)〜(c)を含むことを特徴とする。
(a)粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対し、溶解してオキソチタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)オキソチタニルフタロシアニン溶液を、貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄し、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得る工程
(d)洗浄後のウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得る工程
以下、かかるオキソチタニルフタロシアニン結晶の製造方法について説明する。
【0052】
(7)−1 オキソチタニルフタロシアニン化合物の製造
オキソチタニルフタロシアニン化合物の製造方法としては、かかる分子の製造材料としてのo−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体と、チタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、を尿素化合物の存在下において反応させて、オキソチタニルフタロシアニン化合物を製造することが好ましい。
すなわち、下記反応式(1)または下記反応式(2)に準じて実施することが好ましい。なお、反応式(1)及び反応式(2)においては、チタンアルコキシドとして、一例ではあるが、式(5)で表されるチタンテトラブトキシドを用いている。
【0053】
(i)反応式
したがって、反応式(1)に示すように、式(4)で表されるo−フタロニトリルと、式(5)で表されるチタンアルコキシドとしてのチタンテトラブトキシドとを反応させるか、反応式(2)において示すように、式(6)で表される1,3−ジイミノイソインドリンと、式(5)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドとを反応させて、式(3)で表されるオキソチタニルフタロシアニン化合物(CGM−1)を製造することが好ましい。
なお、式(5)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドの替わりに、四塩化チタンを用いてもよい。
【0054】
【化4】

【0055】
【化5】

【0056】
(ii)添加量
また、式(5)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドまたは四塩化チタンの添加量を、式(4)で表されるo−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは式(6)で表される1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体1モルに対して、0.40〜0.53モルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、式(5)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドまたは四塩化チタンの添加量を、式(4)で表されるo−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは式(6)で表される1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体に対して、1/4モル当量を超えた過剰量を添加することにより、後述する尿素化合物との相互作用が効果的に発揮されるためである。なお、かかる相互作用については、尿素化合物の項で詳述する。
したがって、式(5)で表されるチタンテトラブトキシド等のチタンアルコキシドまたは四塩化チタンの添加量を、式(4)で表されるo−フタロニトリルまたは式(6)で表される1,3−ジイミノイソインドリン等1モルに対して、0.42〜0.50モルの範囲内の値とすることがより好ましく、0.45〜0.47モルの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0057】
(iii)尿素化合物
また、上述した反応式(1)及び(2)で表される反応を、尿素化合物の存在下において行うことが好ましい。この理由は、尿素化合物の存在下において製造されたオキソチタニルフタロシアニン化合物を用いることにより、尿素化合物とチタンアルコキシドまたは四塩化チタンにおける相互作用が発揮されるため、特定のオキソチタニルフタロシアニン結晶を効率的に得ることができるためである。
すなわち、かかる相互作用とは、尿素化合物とチタンアルコキシドまたは四塩化チタンとの反応によって生成するアンモニアが、さらにチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと錯体を形成し、かかる物質が反応式(1)及び(2)で表される反応をより促進させる作用である。そして、このような促進作用のもとに、原料物質を反応させることにより、有機溶媒中であっても、結晶転移しにくいオキソチタニルフタロシアニン結晶を効率的に製造することができる。
【0058】
(iii)−1 種類
また、反応式(1)及び(2)で使用される尿素化合物が、尿素、チオ尿素、O−メチルイソ尿素硫酸塩、O−メチルイソ尿素炭酸塩、及びO−メチルイソ尿素塩酸塩からなる群の少なくとも1種であることが好ましい。
この理由は、かかる尿素化合物を、反応式(1)及び(2)中の尿素化合物として用いることにより、反応の過程で生成するアンモニアが、より効率的にチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと錯体を形成し、かかる物質が反応式(1)及び(2)で表される反応をさらに促進させるためである。
すなわち、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応して生成するアンモニアが、さらに効率的にチタンアルコキシド等と錯体化合物を形成するためである。したがって、かかる錯体化合物が反応式(1)及び(2)で表される反応をさらに促進させるためである。
なお、かかる錯体化合物は、180℃以上の高温条件で反応させた場合に、特異的に生成しやすいことが判明している。そのため、沸点が180℃以上の含窒素化合物中、例えば、キノリン(沸点::237.1℃)やイソキノリン(沸点:242.5℃)、あるいはこれらの混合物(重量比10:90〜90:10)中で実施することがより有効である。
また、反応促進剤としてのアンモニアや、それに起因した錯体化合物がさらに生成しやすいことから、上述した尿素化合物の中でも、尿素を用いることがより好ましい。
【0059】
(iii)−2 添加量
また、反応式(1)及び(2)で使用する尿素化合物の添加量を、o−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体1モルに対して、0.1〜0.95モルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、尿素化合物の添加量をかかる範囲内の値とすることにより、上述した尿素化合物の作用をより効率的に発揮させることができるためである。
したがって、かかる尿素化合物の添加量を、o−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体1モルに対して、0.2〜0.8モルの範囲内の値とすることがより好ましく、0.3〜0.7モルの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0060】
(iv)溶媒
また、反応式(1)及び(2)で使用する溶媒としては、例えば、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレン、テトラリン、及びニトロベンゼン等の炭化水素系溶剤、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ジブロモベンゼン、及びクロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、及びジエチレングリコール等のアルコール系溶剤、シクロヘキサノン、アセトフェノン、1−メチル−2−ピロリドン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のケトン系溶剤、ホルムアミド、及びアセトアミド等のアミド系溶剤、ピコリン、キノリン、及びイソキノリン等の窒素含有溶剤からなる群の1種または2種以上の任意の組み合わせが挙げられる。
特に、沸点が180℃以上の含窒素化合物、例えば、キノリンやイソキノリンであれば、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応して生成するアンモニアが、さらに効率的にチタンアルコキシド等と錯体化合物を形成しやすくなることから好適な溶媒である。
【0061】
(v)反応温度
また、反応式(1)及び(2)における反応温度を150℃以上の高温とすることが好ましい。この理由は、かかる反応温度が150℃未満、特に135℃以下となると、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応して、錯体化合物を形成しにくくなるためである。したがって、かかる錯体化合物が反応式(1)及び(2)で表される反応をさらに促進させることが困難となって、有機溶媒中であっても、結晶転移しにくいオキソチタニルフタロシアニン結晶を効率的に製造することが困難となるためである。
したがって、反応式(1)及び(2)における反応温度を180〜250℃の範囲内の値とすることがより好ましく、200〜240℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0062】
(vi)反応時間
また、反応式(1)及び(2)における反応時間は、反応温度にもよるが、0.5〜10時間の範囲とすることが好ましい。この理由は、かかる反応時間が0.5時間未満となると、原料物質としてのチタンアルコキシドまたは四塩化チタンと、尿素化合物とが反応して、錯体化合物を形成しにくくなるためである。したがって、かかる錯体化合物が反応式(1)及び(2)で表される反応をさらに促進させることが困難となって、有機溶媒中であっても結晶転移しにくいオキソチタニルフタロシアニン結晶を効率的に製造することが困難となるためである。一方、かかる反応時間が10時間を越えると、経済的に不利となったり、あるいは生成した錯体化合物が減少したりする場合があるためである。
したがって、反応式(1)及び(2)における反応時間を0.6〜3.5時間の範囲内の値とすることがより好ましく、0.8〜3時間の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0063】
(7)−2 オキソチタニルフタロシアニン結晶の製造方法
(i)酸処理前工程
次いで、上述した工程またはその他の工程によって製造されたオキソチタニルフタロシアニン化合物に対して酸処理を実施する前段階として、かかるオキソチタニルフタロシアニン化合物を水溶性有機溶媒中に加え、加熱下で一定時間、攪拌処理し、ついで当該攪拌処理よりも低温の温度条件下で一定時間、液を静置して安定化処理する酸処理前工程を行うことが好ましい。
また、酸処理前工程に使用する水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールなどのアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオン酸、酢酸、N−メチルピロリドン、及びエチレングリコール等の1種または2種以上が挙げられる。なお水溶性有機溶媒には、少量であれば、非水溶性の有機溶媒を添加してもよい。
【0064】
また、酸処理前工程のうち攪拌処理の条件は特に限定されないが、およそ70〜200℃程度の温度範囲の一定温度条件下で、1〜3時間程度の攪拌処理を行うのが好ましい。
さらにまた、攪拌処理後の安定化処理の条件も特に限定されないが、およそ10〜50℃程度、特に好ましくは23±1℃前後の温度範囲の一定温度条件下で、5〜15時間程度、液を静置して安定化させるのが好ましい。このように酸処理前工程を行うことによって、粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を得ることができる。
【0065】
(ii)酸処理工程
次いで、酸処理工程として、粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、オキソチタニルフタロシアニン溶液を得ることを特徴とする。
この理由は、酸に対して粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を溶解することによって、オキソチタニルフタロシアニン化合物を製造する際に残留した材料物質等に由来する不純物を、十分に分解することができるためである。
また、使用する酸としては、濃硫酸、トリフルオロ酢酸及びスルホン酸からなる群から選択される少なくとも一種のであることが好ましい。
この理由は、このような酸であれば、上述した不純物をより効果的に分解することができる一方、オキソチタニルフタロシアニン化合物の分解については、効果的に抑制することができるためである。
また、かかる酸処理後においては、これらの酸に由来する成分を、後述する洗浄によって容易に除去することができるためである。
なお、酸処理工程は、使用する酸によっても異なるが、一般に0〜10℃、0.5〜3.0時間の条件で行うことが好ましい。
【0066】
(iii)滴下工程
次いで、酸処理工程において得られたオキソチタニルフタロシアニン溶液を、貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得ることを特徴とする。
この理由は、オキソチタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下することによって、後の洗浄工程における洗浄効果を、有効に発揮させることができるためである。
すなわち、滴下によって、析出したオキソチタニルフタロシアニン化合物のウェットケーキが、表面積が大きな不定形となるため、後の洗浄工程における洗浄効果を、有効に発揮させることができるためである。
また、使用する貧溶媒が、水であることが好ましい。
この理由は、水であれば、極性や温度調節の点から、さらに容易にオキソチタニルフタロシアニン化合物を析出させることができるためである。
したがって、析出したオキソチタニルフタロシアニン化合物のウェットケーキにおける表面積を増加させて、より効果的に洗浄工程を実施することができるためである。
また、その他の貧溶媒としては、メタノール、エタノール、メタノールと水の混合溶媒、エタノールと水の混合溶媒等を用いることもできる。
なお、貧溶媒の温度は、使用する貧溶媒の種類によっても異なるが、一般に0〜20℃範囲内とすることが好ましい。
【0067】
(iv)洗浄工程
次いで、滴下工程において得られたオキソチタニルフタロシアニン化合物のウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄することを特徴とする。
この理由は、炭素数1〜4のアルコールを用いて洗浄することによって、後の結晶型変換工程において得られるオキソチタニルフタロシアニン結晶の、感光層中における分散性を効果的に向上させることができるためである。かかる分散性を向上させる効果は、オキソチタニルフタロシアニン結晶の表面特性が改質されることによって得られるものと考えられる。
いずれにしても、所定のアルコールを用いて洗浄することによって、感光層中における分散性に優れ、電荷発生剤として電子写真感光体に対して含有させた場合には、かかる電子写真感光体の感度を効果的に向上させることができるとともに、露光メモリの発生についても効果的に抑制することができるオキソチタニルフタロシアニン結晶を安定的に得ることができる。
なお、炭素数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール及び1−プロパノールからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
この理由は、これらのアルコールであれば、さらに効果的にオキソチタニルフタロシアニン結晶の感光層中における分散性を向上させることができるためである。
【0068】
また、ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄した後、さらに水で洗浄することが好ましい。
この理由は、所定のアルコールによって洗浄した後に、さらに水で洗浄することによって、オキソチタニルフタロシアニン結晶が結晶転移することを抑制して、より安定したオキソチタニルフタロシアニン結晶を得ることができるためである。
また、炭素数1〜4のアルコール及び水による洗浄は、それぞれ複数回繰り返すことも好ましい。
なお、具体的な洗浄方法としては、例えば、10g程度のウェットケーキを、500ml程度の所定のアルコールや水等に浸漬した後、撹拌等によって懸濁させて行うことができる。
また、かかる洗浄に用いる所定のアルコール及び水等の温度については、例えば、0〜50℃の範囲内の値とすることが好ましく、10〜40℃の範囲内の値とすることがより好ましい。洗浄時間については、例えば、5分〜10時間の範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜8時間の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0069】
(v)結晶型変換工程
次いで、洗浄工程において得られた洗浄後のウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得ることを特徴とする。
この理由は、オキソチタニル二ロシアニンのウェットケーキを、非水系溶媒中で加熱撹拌することによって、結晶型を第1の実施形態において説明した光学特性及び熱特性を有する所定の結晶型に変換することができるためである。
なお、上述した加熱撹拌は、水が存在した状態で非水系溶媒中に分散させて、30〜70℃で5〜40時間攪拌することが好ましい。
また、非水系溶媒としては、例えば、クロロベンゼン、及びジクロロメタン等のハロゲン系溶媒が挙げられる。
【0070】
(vi)検査工程
また、工程(d)、すなわち、上述した結晶型変換工程の後に、下記検査工程(e)〜(g)を含むことが好ましい。
(e)メタノール及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる混合溶媒(メタノール:N,N−ジメチルホルムアミド=1:1(重量比))100重量部に対して、オキソチタニルフタロシアニン結晶1.25重量部を加えて懸濁液とする工程
(f)懸濁液をフィルタにてろ過し、ろ液を得る工程
(g)ろ液における波長400nmの光に対する吸光度が0.01〜0.08の範囲内の値であることを確認する工程
この理由は、上述した工程を経て得られた所定のろ液における吸光度を測定することで、オキソチタニルフタロシアニン結晶の感光層中における分散性を、容易かつ定量的に評価することができるためである。
したがって、結晶が安定であるとともに、感光層中における分散性に優れたオキソチタニルフタロシアニン結晶を、より安定的に製造することができるためである。
すなわち、上述したろ液における波長400nmの光に対する吸光度が、0.01未満の値となると、オキソチタニルフタロシアニン結晶における結晶形成自体に問題がある場合があるためである。一方、上述したろ液における400nmの光に対する吸光度が0.08を超えた値となると、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性が低下しやすくなって、電子写真感光体における感度が低下しやすくなったり、露光メモリが発生しやすくなったりする場合があるためである。
したがって、上述したろ液における400nmの光に対する吸光度を0.012〜0.07の範囲内の値とすることがより好ましく、0.012〜0.05の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、分散性の指標として波長400nmの光に対する吸光度を測定する理由は、かかる波長の光に対する吸光度と、オキソチタニルフタロシアニン結晶における分散性及びそれに起因した電子写真感光体の電気特性と、の相関が、経験的に見出されているためである。
また、かかる相関は、オキソチタニルフタロシアニン結晶における表面特性の改質具合が、波長400nmの光に対する吸光度に反映されるために生じるものと考えられる。
また、所定のろ液における吸光度の測定方法については、後の実施例において記載する。
【0071】
また、(e)工程において懸濁液を得る際の条件としては、温度23±3℃、回転速度100rpmの撹拌条件にて、1時間撹拌したものを用いるものとする。
また、オキソチタニルフタロシアニン結晶を懸濁させるために使用する混合溶媒の量としては、メタノール4g及びN,N−ジメチルホルムアミド4gを混合して、合計8gとする。
また、懸濁させるオキソチタニルフタロシアニン結晶の量を0.1gとする。
また、(f)工程において懸濁液をろ過するためのフィルタとしては、PTFEタイプの0.1μmメンブランフィルタを用いるものとする。
さらに、工程(g)において吸光度を測定する際の吸収層(ろ液)の厚さは、10mm(セル長)とする。
【0072】
次いで、図4を用いて、メタノール及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる混合溶媒(メタノール:N,N−ジメチルホルムアミド=1:1(重量比))100重量部に対して、所定のオキソチタニルフタロシアニン結晶1.25重量部を加えて懸濁液とした後、当該懸濁液をフィルタにてろ過してろ液を得た場合における、当該ろ液における波長400nmの光に対する吸光度と、そのオキソチタニルフタロシアニン結晶を電荷発生剤として含む電子写真感光体における感度と、の関係を説明する。
すなわち、図4においては、横軸に上述した所定のろ液における400nmの光に対する吸光度(−)を採り、縦軸に電子写真感光体における感度(V)を採った特性曲線を示している。なお、かかる電子写真感光体の構成や、感度の測定方法等については、実施例において記載する。
かかる特性曲線から理解されるように、所定のろ液における吸光度(−)の値が増加するにしたがって、感度(V)の値が増加している。なお、感度(V)の値が小さい値である程、優れた感度特性を備えることを意味する。
より具体的には、所定のろ液における吸光度(−)の値が0から0.08へと増加するのにともなって、感度(V)の値は、約40Vから急激に増加しつつも、約70V以下の範囲内の値をとっていることがわかる。
一方、所定のろ液における吸光度(−)の値が0.08を超えた値となると、感度(V)の値の増加は緩やかになるものの、約70V以上の高い値となってしまうことが分かる。
したがって、感度(V)の値を約70V以下に抑制して優れた感度特性を得るためには、所定のろ液における吸光度(−)の値を0.08以下の値とすることが有効であることが理解される。
【0073】
次いで、図5を用いて、メタノール及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる混合溶媒(メタノール:N,N−ジメチルホルムアミド=1:1(重量比))100重量部に対して、所定のオキソチタニルフタロシアニン結晶1.25重量部を加えて懸濁液とした後、当該懸濁液をフィルタにてろ過してろ液を得た場合における、当該ろ液における波長400nmの光に対する吸光度と、そのオキソチタニルフタロシアニン結晶を電荷発生剤として含む電子写真感光体における露光メモリと、の関係を説明する。
すなわち、図5においては、横軸に上述した所定のろ液における400nmの光に対する吸光度(−)を採り、縦軸に電子写真感光体における露光メモリ電位(V)を採った特性曲線を示している。なお、かかる電子写真感光体の構成や、露光メモリ電位の測定方法等については、実施例において記載する。
かかる特性曲線から理解されるように、所定のろ液における吸光度(−)の値が増加するにしたがって、露光メモリ電位(V)の値が増加している。なお、露光メモリ電位(V)の値が小さい値である程、効果的に露光メモリの発生を抑制できることを意味する。
より具体的には、所定のろ液における吸光度(−)の値が0から0.08へと増加するのにともなって、露光メモリ電位(V)の値は、約20Vから増加しつつも、約30V以下の範囲内の値とをとっていることがわかる。
一方、所定のろ液における吸光度(−)の値が0.08を超えた値となると、露光メモリ電位(V)の値の増加は緩やかになるものの、約30V以上の高い値となってしまうことが分かる。
したがって、感度の絶対値(V)を約30V以下に抑制して優れた感度特性を得るためには、所定のろ液における吸光度(−)の値を0.08以下の値とすることが有効であることが理解される。
【0074】
次いで、図6を用いて、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性と、電子写真感光体における露光メモリと、の関係を説明する。
ここで、分散性の指標としては、オキソチタニルフタロシアニン結晶を含んだ感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A/−)と、感光層における膜厚(d/m)と、感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)と、からなるパラメータ(A・C-1・d-1)(単位:1/(重量%・m)、以下同様である。)を用いることとする。かかるパラメータ及び感光層における反射吸光度の測定方法等については後述するが、基本的にランベルト・ベールの法則に準じて感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を評価したパラメータである。
すなわち、図6においては、横軸に(A・C-1・d-1)を採り、左縦軸に電子写真感光体における露光メモリ電位(V)を採った特性曲線Aを、右縦軸に感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性(相対評価)を採った特性曲線Bを、それぞれ示している。
また、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性の相対評価は、感光層を顕微鏡で観察した結果に基づく評価である。
特性曲線Bから理解されるように、(A・C-1・d-1)の値が増加する程、オキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性(相対評価)が向上している。
すなわち、(A・C-1・d-1)の値が大きい程、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性が高いことを示している。
したがって、(A・C-1・d-1)によって、オキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を明確に評価できると言える。
また、特性曲線Aから理解されるように、(A・C-1・d-1)の値が増加するのにしたがって、露光メモリ電位の値が減少している。
したがって、特性曲線A及びBの結果を総合的に評価すると、オキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性が向上するほど、電子写真感光体における露光メモリの発生を抑制することができると言える。
よって、本発明における分散性に優れたオキソチタニルフタロシアニン結晶を用いることで、電子写真感光体における露光メモリの発生を効果的に抑制することができると言える。
なお、電子写真感光体における感度についても露光メモリと同様に、オキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性との間に明確な相関があることが、別途確認されている。
なお、電子写真感光体が積層型である場合には、その電荷発生層を対象として用いることで、オキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を評価することができる。
【0075】
(8)関係式(1)
また、上述した感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A/−)と、感光層における膜厚(d/m)と、感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)と、が下記関係式(1)を満足することが好ましい。
A・C-1・d-1 > 1.75×104 (1)
この理由は、関係式(1)を満足する感光層であれば、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を、容易に確認することができるためである。
すなわち、図6を用いて説明したように、関係式(1)の左辺である(A・C-1・d-1)(1/(重量%・m))の値は、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性との間に、明確な相関を有する。したがって、(A・C-1・d-1)の値が所定の範囲であるか否かによって、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性及びそれに起因した電子写真感光体の電気特性を、容易に確認することができるためである。
【0076】
なお、関係式(1)における左辺(A・C-1・d-1)は、ランベルト・ベールの法則に準じて、言わば、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を表すパラメータと見なすことができる。
すなわち、感光層における膜厚(d/m)及びオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)が一定の場合、オキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性が不十分であると、入射光が吸収されにくく、波長700nmの光に対する反射吸光度(A)が小さい値となりやすいためである。一方、感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性が良好であれば、入射光が吸収されやすく、感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A)が大きい値となるためである。
よって、かかる理由から、関係式(1)における左辺(A・C-1・d-1)の値より、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を評価できることがわかる。
なお、電子写真感光体が積層型である場合には、その電荷発生層を対象として用いることで、オキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を評価することができる。
【0077】
また、図6を参照して、関係式(1)における左辺A・C-1・d-1の数値(単位:1/(重量%・m)、以下同様である。)と、電子写真感光体における露光メモリと、の関係を説明する。
すなわち、図6においては、横軸に(A・C-1・d-1)を採り、縦軸(左軸)に電子写真感光体における露光メモリ電位(V)を採った特性曲線Aを示している。
かかる特性曲線Aから理解されるように、(A・C-1・d-1)の値が0に近づく程露光メモリ電位(V)の値は大きく、(A・C-1・d-1)の値がより大きな値となるにしたがって、露光メモリ電位(V)の値は小さくなっている。より具体的には、(A・C-1・d-1)の値が0〜1.75×104の範囲においては、かかる値が大きくなるにしたがって急激に露光メモリ電位(V)の値が低下していることがわかる。一方、(A・C-1・d-1)の値が1.75×104以上の範囲においては、かかる値が増加するにともなって、露光メモリ電位(V)の値が緩やかに減少し、30V以下の範囲内の値をとっていることがわかる。
したがって、(A・C-1・d-1)の値を1.9×104以上の値とすることがより好ましく、2.0×104以上の値とすることがさらに好ましい。
【0078】
なお、感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A/−)の測定は、例えば、以下のようにして行うことができる。
まず、感光層(基準厚さ2.5×10-5m)を積層した支持基体における、波長700nmの光に対する反射吸光度(A1)を、色差計(ミノルタ(株)製、色差計CM1000)を用いて測定する。次に、感光層を積層していない支持基体における、波長700nmの光に対する反射吸光度(A2)を、同様に測定する。
より具体的に、図7(a)及び(b)を用いて説明すると、図7(a)は、支持基体12上に感光層14が積層してある状態を示しており、図7(b)は、支持基体12のみの状態を示している。そして、図7(a)及び(b)中のI0は、それぞれの支持基体に対して照射された光(入射光)の強度を表しており、I1及びI2はそれぞれの支持基体に対して照射された入射光における反射光の強度を表している。したがって、支持基体の影響を排除して、感光層における反射吸光度を求めるためには、感光層と支持基体の反射吸光度が混在しているA1から、支持基体の反射吸光度であるA2を差し引けばよい。
よって、得られた反射吸光度の値(A1、A2)をもとに、下記数式(1)から、中間層の反射吸光度(A)を算出すればよい。
なお、図7(a)における反射吸光度(A1)は、下記数式(2)から算出され、同様に、図7(b)における反射吸光度(A2)は、下記数式(3)から算出される。
【0079】
【数1】

【0080】
【数2】

【0081】
【数3】

【0082】
(9)プロセススピード
また、電子写真感光体におけるプロセススピードを100〜250mm/secの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、電子写真感光体におけるプロセススピードをかかる範囲内の値とすることによって、画像形成を高速で行うことができ、画像形成効率を向上させることができるためである。
すなわち、かかる感光体におけるプロセススピードを100mm/sec以上の値とすることによって、感光体において前周回において露光された部分において発生した電荷を、より速やかに輸送する必要が生じる。
この点、本発明においては、感光層における電荷発生剤として、所定のオキソチタニルフタロシアニン結晶を使用していることから、電荷の発生及び輸送が効率的となる。
よって、発生した電荷を速やかに輸送することができるため、感光体におけるプロセススピードが100mm/sec以上であっても十分に対応することができる。
一方、かかる感光体におけるプロセススピードを250mm/secを超えた値とすると、電荷の輸送が間に合わなかったり、ドラム回転数が過度に大きいために画像形成装置の寿命を短縮させたりする場合がある。
したがって、かかる感光体におけるプロセススピードを120〜180mm/secの範囲内の値とすることがより好ましく、140〜160mm/secの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0083】
3.除電手段
本発明としての画像形成装置を構成する除電手段としては、従来公知の除電手段を用いることができる。例えば、除電ランプ、除電チャージャ等が用いられ、それぞれ露光手段、帯電手段等で使用されるものが利用できる。
一方で、本発明の画像形成装置を構成するにあたり、上述したような除電手段を省略した除電レスタイプであることも好ましい。
この理由は、除電手段を省略した除電レスタイプを採用することにより、画像形成装置を小型化することができるとともに、部品点数を減らしてコストダウンを図ることができるためである。その一方で、本発明においては、所定のオキソチタニルフタロシアニン結晶を使用していることから、露光メモリの発生を効果的に抑制することができるためである。
さらに、除電手段を省略した除電レスタイプを採用することの利点として、電子写真感光体における帯電電位や明電位の繰り返し特性が向上することが挙げられる。
すなわち、除電手段として除電ランプを用いた場合、除電工程によっても、感光層において電位の減衰が生じるため、感光層部に空間電荷が生じ、帯電電位や明電位における繰り返し特性が変化して一定の画像を形成することが困難となる場合があるが、除電レスタイプを採用することにより、かかる問題を解決できるためである。
【0084】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、基体上に少なくとも電荷発生剤、電荷輸送剤及び結着樹脂からなる感光層を備えた電子写真感光体を有し、当該電子写真感光体の周囲に、少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段が順次配置された画像形成装置を用いた画像形成方法であって、電荷発生剤として、Cukα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外に270〜400℃の範囲内に1つのピークを有し、かつ、下記工程(a)〜(d)を含む製造方法によって得られてなるオキソチタニルフタロシアニン結晶を用いることを特徴とする画像形成方法である。
(a)粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、オキソチタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)オキソチタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(d)洗浄後のウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得る工程
以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0085】
本発明としての画像形成装置の基本的構成として、図1に示すような複写機30を挙げることができる。
したがって、かかる複写機30を例にとって、本発明の画像形成方法を具体的に説明する。
まず、原稿給送ユニット34は、原稿載置トレイ34a、原稿給送機構34b、及び原稿排出トレイ34cを有しており、原稿載置トレイ34a上に載置された原稿は、原稿給送機構34bによって画像読取位置Pに送られた後、原稿排出トレイ34cに排出される。
そして、原稿が原稿読取位置Pに送られた段階で、画像読取ユニット33において、光源33aからの光を利用して、原稿上の画像が読み取られる。すなわち、CCD等の光学素子33bを用いて、原稿上の画像に対応した画像信号が形成される。
一方、給紙部31bに積載された記録用紙(以下、単に用紙と呼ぶ。)Sは、一枚ずつ画像形成部31aに送られる。この画像形成部31aには、像担持体である感光体ドラム41が備えられており、さらに、この感光体ドラム41の周囲には、帯電器42、露光器43、現像器44、及び転写ローラ45が、感光体ドラム41の回転方向に沿って配置されている。
また、これらの構成部品のうち、感光体ドラム41は、図中、実線矢印で示す方向に回転駆動されて、帯電器42により、その表面が均一に帯電される。その後、上述した画像信号に基づいて、露光器43により感光体ドラム41に対して露光プロセスが実施され、この感光体ドラム41の表面において静電潜像が形成される。
次いで、かかる静電潜像に対して、現像器44によりトナーを付着させて現像し、感光体ドラム41の表面にトナー像を形成する。そして、このトナー像は、感光体ドラム41と転写ローラ45とのニップ部に搬送される用紙Sに転写像として転写される。次いで、転写像が転写された用紙Sは、定着ユニット47に搬送されて、定着プロセスが行われる。
また、定着後の用紙Sは、排紙ユニット32に送られることになるが、後処理(例えば、ステイプル処理等)を行う際には、用紙Sは中間トレイ32aに送られた後、後処理が行われる。その後、用紙Sは、画像形成装置の側面に設けられた排出トレイ部(図示せず)に排出される。一方、後処理を行わない場合には、用紙Sは中間トレイ32aの下側に設けられた排紙トレイ32bに排紙される。なお、中間トレイ32a及び排紙トレイ32bは、いわゆる胴内排紙部として構成されている。
なお、本発明においては、電荷発生剤として、結晶が安定であるとともに感光層中における分散性に優れた所定のオキソチタニルフタロシアニン結晶を含むことから、電子写真感光体の感度を効果的に向上させることができるとともに、露光メモリの発生についても効果的に抑制することができる。
その結果、除電手段を省略、もしくは簡略化したり、画像形成速度を高速化することが可能となるため、高品質な画像を効率的かつ低コストで提供することができる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。
【0087】
[実施例1]
1.オキソチタニルフタロシアニン化合物の製造
アルゴン置換したフラスコ中に、o−フタロニトリル22g(0.17mol)と、チタンテトラブトキシド25g(0.073mol)と、キノリン300gと、尿素2.28g(0.038mol)を加え、撹拌しつつ150℃まで昇温した。
次いで、反応系から発生する蒸気を系外へ留去しながら215℃まで昇温したのち、この温度を維持しつつさらに2時間、撹拌して反応させた。
次いで、反応終了後、150℃まで冷却した時点で反応混合物をフラスコから取り出し、ガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をN,N−ジメチルホルムアミド、およびメタノールで順次洗浄したのち真空乾燥して、青紫色の固体24gを得た。
【0088】
2.オキソチタニルフタロシアニン結晶の製造
(1)顔料化前処理
上述したオキソチタニルフタロシアニン化合物の製造で得られた青紫色の固体12gを、N,N−ジメチルホルムアミド100ミリリットル中に加え、撹拌しつつ130℃に加熱して2時間、撹拌処理を行った。
次いで、2時間経過した時点で加熱を停止し、さらに、23±1℃まで冷却した時点で撹拌も停止し、この状態で12時間、液を静置して安定化処理を行った。そして安定化された後の上澄みをガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をメタノールで洗浄したのち真空乾燥して、オキソチタニルフタロシアニン化合物の粗結晶11.8gを得た。
【0089】
(2)顔料化処理
上述した顔料化前処理で得られたオキソチタニルフタロシアニンの粗結晶10gを、97%の濃硫酸100gに加えて溶解した。なお、かかる酸処理は、5℃で1時間行った。
次いで、この溶液を、氷冷下の純水5リットル中に毎分10mlにて滴下したのち15±3℃付近で30分間、攪拌し、その後30分静置した。次いで溶液をガラスフィルターでろ過し、ウェットケーキを得た。
次いで、得られたウェットケーキをメタノール500mlに懸濁して洗浄し、洗浄後のメタノールをガラスフィルターによってろ別した。そして、かかる洗浄を4回行った。次に得られたウェットケーキを20℃の純水500mlで懸濁して洗浄し、洗浄後の水をガラスフィルターでろ過した。
次いで、洗浄後のウェットケーキ5gを、水0.75g、クロロベンゼン100g中に加えて、50℃にて24時間加熱撹拌を行った。
そして上澄みをガラスフィルターによってろ別して得られた結晶を、100mlのメタノールで漏斗上にて洗浄したのち、50℃で5時間、真空乾燥させて、式(3)で表される無置換のオキソチタニルフタロシアニン(CGM−1)の結晶(TiOPc−A)(青色粉末)4.5gを得た。
【0090】
3.オキソチタニルフタロシアニン結晶の評価
(1)CuKα特性X線回折スペクトル測定
得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶(TiOPc−A)0.3gを、テトラヒドロフラン5g中に分散させ、温度23±1℃、相対湿度50〜60%の条件下、密閉系中で24時間、保管したのちテトラヒドロフランを除去して、X線回折装置(理学電機(株)製のRINT1100)のサンプルホルダーに充填して測定を行った。得られたスペクトルチャートを、図8に示す。また、かかるスペクトルチャートは、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、26.2°にピークを有しない特徴を有していることから、得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶が、安定した所定の結晶型を有していることが確認できた。この理由は、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°におけるピークは、上述した所定の結晶型に特有のピークであり、26.2°におけるピークは、β型結晶に特有のピークであるためである。
なお、測定の条件は、下記の通りとした。
X線管球:Cu
管電圧:40kV
管電流:30mA
スタート角度:3.0°
ストップ角度:40.0°
走査速度:10°/分
【0091】
(2)示差走査熱量分析
また、示差走査熱量計(理学電機(株)製のTAS−200型、DSC8230D)を用いて、得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶(TiOPc−A)の示差走査熱量分析を行った。得られた示差走査分析チャートを、図9に示す。また、かかるチャートにおいては、吸着水の気化にともなうピーク以外に、296℃において1つのピークが確認された。
なお、測定条件は下記の通りとした。
サンプルパン:アルミニウム製
昇温速度:20℃/分
【0092】
(3)吸光度の測定
また、得られたオキソチタニル二ロシアニン結晶0.1g(1.25重量部)を、メタノール及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる混合溶媒(メタノール:N,N−ジメチルホルムアミド=1:1(重量比))8g(100重量部)に対して加えて、液の温度を23℃に保ちながら、回転速度100rpmにて1時間撹拌して懸濁液とした。次いで、得られた懸濁液を、PTFEタイプの0.1μmメンプランフィルタ(アドバンテスト(株)製)を用いてろ過し、ろ液を得た。次いで、得られたろ液をセル長10mmのセルに収容した後、かかるろ液における波長400nmの光に対する吸光度を吸光度計(HITACHI(株)製、分光光度計U3000)で測定した。得られた結果を表1に示す。
【0093】
4.電子写真感光体の製造
容器内に、電荷発生剤として、オキソチタニルフタロシアニン結晶(TiOPc−A)を4重量部と、正孔輸送剤として下記式(7)で表される化合物(HTM−1)を50重量部と、電子輸送剤として式(8)で表される化合物(ETM−1)を30重量部と、結着樹脂として粘度平均分子量がポZ型ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製、TS2020)を100重量部と、溶媒としてテトラヒドロフランを800重量部と、を収容した。
次いで、ボールミルにて50時間混合分散して、単層型感光層用の塗布液を作成した。次いで、得られた塗布液を、長さ254mm、直径30mmの基体(アルミニウム素管)上に、ディップコート法にて塗布し、130℃、30分間の条件で熱風乾燥して、膜厚30μmの単層型感光層を有する単層型電子写真感光体を得た。
【0094】
【化6】

【0095】
【化7】

【0096】
5.画像形成装置の製造
得られた単層型電子写真感光体を、除電手段を取り除いたマルチファンクションプリンタ(京セラミタ(株)製、Antico40)に搭載し、画像形成装置を得た。
【0097】
6.評価
(1)感度の測定
得られた電子写真感光体における感度を測定した。
すなわち、ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用いて、表面電位が+850Vになるように帯電させ、次いで、白色光からバンドパルスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅:20nm、光強度:1.0μJ/cm2)を電子写真感光体表面に対して露光した(照射時間50msec)。次いで、露光後350msec経過後の電位を測定して感度とし、下記基準に準じて評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:感度が60V未満の値である。
○:感度が60V以上、70V未満の値である。
△:感度が70V以上、80V未満の値である。
×:感度が80V以上の値である。
【0098】
(2)露光メモリ電位の測定
また、得られた電子写真感光体における露光メモリ電位を測定した。
すなわち、得られた画像形成装置において、電子写真感光体を、表面電位が+850Vとなるように帯電させて、このときの表面電位V1(V)、及び露光部分の帯電工程実施後における表面電位V2(V)を測定し、その差V1−V2(V)を露光メモリ電位とし、下記基準に準じて評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:メモリ電位が20V未満の値である。
○:メモリ電位が20V以上、30V未満の値である。
△:メモリ電位が30V以上、40V未満の値である。
×:メモリ電位が40V以上の値である。
【0099】
(3)メモリ画像の評価
また、メモリ画像の評価を行った。
すなわち、得られた画像形成装置を用いて、図10に示すメモリ画像評価用原稿を、A4紙、1万枚の条件で連続印刷を行い、メモリ画像が発生しているか否かを目視により判断し、下記基準に準じて評価した。なお、メモリ画像とは、図10に示す画像評価用原稿における強い露光部分(黒ベタ部)の感光体表面電位(絶対値)が低下することにより、露光部分のゴースト画像がグレー部に発生している画像を示す。得られた結果を表1に示す。
◎:グレー部に露光メモリの発生が目視にて全く観察されない。
○:グレー部に露光メモリの発生が目視にてほとんど観察されない。
△:グレー部に露光メモリの発生が目視にて少々観察される。
×:グレー部に露光メモリの顕著な発生が目視にて観察される。
【0100】
(4)総合評価
また、上述した各評価を総合して、総合評価を行った。
すなわち、上述した各評価結果を、下記基準に沿って総合した。
○:全ての評価結果が、◎または○である。
×:×または△の評価結果が含まれる。
【0101】
[実施例2]
実施例2では、電子写真感光体を製造する際に、正孔輸送剤として下記式(9)で表される化合物(HTM−2)を用いたほかは、実施例1と同様に画像形成装置を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0102】
【化8】

【0103】
[実施例3]
実施例3では、電子写真感光体を製造する際に、正孔輸送剤として下記式(10)で表される化合物(HTM−3)を用いたほかは、実施例1と同様に画像形成装置を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0104】
【化9】

【0105】
[実施例4]
実施例4では、電子写真感光体を製造する際に、正孔輸送剤として式(7)で表される化合物(HTM−1)を用いるとともに、電子輸送剤として下記式(11)で表される化合物(ETM−2)を用いたほかは、実施例1と同様に画像形成装置を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0106】
【化10】

【0107】
[実施例5]
実施例5では、オキソチタニルフタロシアニン結晶の製造における顔料化処理の際に、ウェットケーキをメタノールで洗浄する回数を3回とし、その後の水で洗浄する回数を2回としたほかは、実施例1と同様に画像形成装置を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。なお、このとき得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶をTiOPc−Bと表記する。また、TiOPc−BにおけるCuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析の結果は、TiOPc−Aと同様であった。
【0108】
[実施例6]
実施例6では、オキソチタニルフタロシアニン結晶の製造における顔料化処理の際に、ウェットケーキをメタノールで洗浄する回数を2回とし、その後の水で洗浄する回数を3回としたほかは、実施例1と同様に画像形成装置を製造し、評価した。
得られた結果を表1に示す。なお、このとき得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶をTiOPc−Cと表記する。また、TiOPc−CにおけるCuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析の結果は、TiOPc−Aと同様であった。
【0109】
[実施例7]
実施例7では、オキソチタニルフタロシアニン結晶の製造における顔料化処理の際に、ウェットケーキをメタノールで洗浄する回数を1回とし、その後の水で洗浄する回数を4回としたほかは、実施例1と同様に画像形成装置を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。なお、このとき得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶をTiOPc−Dと表記する。また、TiOPc−DにおけるCuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析の結果は、TiOPc−Aと同様であった。
【0110】
[比較例1]
比較例1では、オキソチタニルフタロシアニン結晶の製造における顔料化処理の際に、ウェットケーキをメタノールで洗浄せず、60℃の水で5回洗浄したほかは、実施例1と同様に画像形成装置を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。なお、このとき得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶をTiOPc−Eと表記する。また、TiOPc−EにおけるCuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析の結果は、TiOPc−Aと同様であった。
【0111】
[比較例2]
比較例2では、電子写真感光体を製造する際に、正孔輸送剤として式(9)で表される化合物(HTM−2)を用いたほかは、比較例1と同様に画像形成装置を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0112】
[比較例3]
比較例3では、オキソチタニルフタロシアニン結晶の製造における顔料化処理の際に、ウェットケーキをメタノールで洗浄せず、60℃の水で3回洗浄したほかは、実施例1と同様に画像形成装置を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。なお、このとき得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶をTiOPc−Fと表記する。また、TiOPc−FにおけるCuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析の結果は、TiOPc−Aと同様であった。
【0113】
[比較例4]
比較例4では、電子写真感光体を製造する際に、正孔輸送剤として式(9)で表される化合物(HTM−2)を用いたほかは、比較例3と同様に画像形成装置を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0114】
[比較例5]
比較例5では、オキソチタニルフタロシアニン結晶の製造における顔料化処理の際に、ウェットケーキをメタノールで洗浄せず、20℃の水で3回洗浄したほかは、実施例1と同様に画像形成装置を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。なお、このとき得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶をTiOPc−Gと表記する。また、TiOPc−GにおけるCuKα特性X線回折スペクトル及び示差走査熱量分析の結果は、TiOPc−Aと同様であった。
【0115】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0116】
以上詳述してきたように、本発明にかかる画像形成装置及び画像形成方法によれば、所定の光学特性及び熱特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶を製造する過程において、中間生成物としてのウェットケーキを所定のアルコールによって洗浄することにより、結晶が安定であるとともに、感光層中における分散性に優れたオキソチタニルフタロシアニン結晶を得ることができるようになった。
また、このような特定のオキソチタニルフタロシアニン結晶を電荷発生剤として用いることによって、電子写真感光体の感度を効果的に向上させることができるとともに、露光メモリの発生についても効果的に抑制することができるようになった。
したがって、本発明の画像形成装置及び画像形成方法は、複写機やプリンタ等の各種画像形成装置における低コスト化、高速化、高性能化等に寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の構成を説明するために供する図である。
【図2】(a)〜(b)は、単層型電子写真感光体の構成を説明するために供する図である。
【図3】(a)〜(b)は、積層型電子写真感光体の構成を説明するために供する図である。
【図4】吸光度と感度との関係を説明するために供する図である。
【図5】吸光度と露光メモリとの関係を説明するために供する図である。
【図6】分散性と露光メモリとの関係を説明するために供する図である。
【図7】感光層における反射吸光度の測定方法を説明するために供する図である。
【図8】実施例で用いたオキソチタニルフタロシアニン結晶におけるCuKα特性X線回折スペクトルである。
【図9】実施例で用いたオキソチタニルフタロシアニン結晶における示差走査分析チャートである。
【図10】メモリ画像の発生を評価するための画像評価用原稿を説明するために供する図である。
【符号の説明】
【0118】
10:単層型感光体
12:基体
14:感光層
16:中間層
20:積層型感光体
22:電荷輸送層
24:電荷発生層
25:中間層
30:複写機
31:画像形成ユニット
31a:画像形成部
31b:給紙部
32:排紙ユニット
33:画像読取ユニット
33a:光源
33b:光学素子
34:原稿給送ユニット
34a:原稿載置トレイ
34b:原稿給送機構
34c:原稿排出トレイ
41:感光体ドラム
42:帯電器
43:露光源
44:現像器
45:転写ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に少なくとも電荷発生剤、電荷輸送剤及び結着樹脂からなる感光層を備えた電子写真感光体を有し、当該電子写真感光体の周囲に、少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段が順次配置された画像形成装置であって、
前記電荷発生剤として、Cukα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有し、かつ、
下記工程(a)〜(d)を含む製造方法によって得られてなるオキソチタニルフタロシアニン結晶を用いることを特徴とする画像形成装置。
(a)粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、オキソチタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)前記オキソチタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)前記ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(d)洗浄後の前記ウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得る工程
【請求項2】
前記工程(d)の後に、下記検査工程(e)〜(g)を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
(e)メタノール及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる混合溶媒(メタノール:N,N−ジメチルホルムアミド=1:1(重量比))100重量部に対して、前記オキソチタニルフタロシアニン結晶1.25重量部を加えて懸濁液とする工程
(f)前記懸濁液をフィルタにてろ過し、ろ液を得る工程
(g)前記ろ液における波長400nmの光に対する吸光度が0.01〜0.08の範囲内の値であることを確認する工程
【請求項3】
前記工程(a)において使用する酸が、濃硫酸、トリフルオロ酢酸及びスルホン酸からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記工程(b)において使用する貧溶媒が、水であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記工程(c)において使用する炭素数1〜4のアルコールが、メタノール、エタノール及び1−プロパノールからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記工程(c)において、前記ウェットケーキを前記炭素数1〜4のアルコールによって洗浄をした後、さらに水で洗浄することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記オキソチタニルフタロシアニン結晶が、有機溶媒中に24時間浸漬した後に測定されるCuKα特性X線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、26.2°にピークを有しないことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A/−)と、前記感光層における膜厚(d/m)と、前記感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)と、が下記関係式(1)を満足することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
A・C-1・d-1 > 1.75×104 (1)
【請求項9】
前記画像形成装置が、除電手段を省略した除電レスタイプであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記電子写真感光体におけるプロセススピードを100〜250mm/secの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
基体上に少なくとも電荷発生剤、電荷輸送剤及び結着樹脂からなる感光層を備えた電子写真感光体を有し、当該電子写真感光体の周囲に、少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段が順次配置された画像形成装置を用いた画像形成方法であって、
前記電荷発生剤として、Cukα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外に270〜400℃の範囲内に1つのピークを有し、かつ、
下記工程(a)〜(d)を含む製造方法によって得られてなるオキソチタニルフタロシアニン結晶を用いることを特徴とする画像形成方法。
(a)粗オキソチタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、オキソチタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)前記オキソチタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)前記ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(d)洗浄後の前記ウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、オキソチタニルフタロシアニン結晶を得る工程

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−281916(P2008−281916A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127829(P2007−127829)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】