説明

画像形成装置及び画像形成装置の画像形成方法

【課題】画像データの画質を維持しながら消費電力を低減させることができる画像形成装置及び画像形成装置の画像形成方法を提供する。
【解決手段】記録媒体を搬送する搬送機構と、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、記憶装置であるRAMと、書き換え可能な不揮発性記憶装置であるフラッシュROMと、最小印字単位のデューティー比が閾値を超えたとき、この最小印字単位の印字データに対して消費電力を低減させるための低減処理を行う制御部と、を備える。この低減処理は、印字ドットの間引き処理又は画像形成部への通電時間短縮処理を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プリンタなどの画像形成装置及び画像形成装置の画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタなどの画像形成装置は消費電力が規定されている。例えば、画像形成装置が情報処理端末に組み込まれる場合、画像形成装置に割り当てられる消費電力は限られたものとなる。
【0003】
従って、ホストコンピュータからの印字データをそのまま画像形成すると、印字密度が高い場合などには画像形成装置は規定された消費電力以上の電力を消費する。画像形成装置が規定された消費電力以上の電力を消費すると、情報処理端末の電源電圧の低下を招き、最悪の場合システムがダウンすることもある。
【0004】
この点に関し、両面印字の場合、サーマルヘッドの通電時間を表面と裏面において重ならないようにずらす技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−320086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この技術によっては写真などのグラフィック画像を印字する場合に、画像の一部に欠落部分が生じてしまう。
【0007】
従って、画像印字の場合も印字可能な、消費電力を抑える画像形成装置及び画像形成装置の画像形成方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態は記録媒体を搬送する搬送機構と、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、最小印字単位のデューティー比が閾値を超えたとき、この最小印字単位の印字データに対して消費電力を低減させるための低減処理を行う制御部と、を備える画像形成装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】画像形成装置の構成を表す図である。
【図2】画像形成装置の動作を示す図である。
【図3】間引く前のドットの状態を示す図である。
【図4】間引マスクパターンの例を示す図である。
【図5】間引きマスクパターンの他の例を示す図である。
【図6】通電時間を短縮した場合の印字パターン例を示す図である。
【図7】通電時間を短縮した場合の印字パターン例を示す図である。
【図8】通電時間を短縮した場合の印字パターン例を示す図である。
【図9】間引きマスクパターンの通電時間を短縮した場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明による画像形成装置及び画像形成装置の画像形成方法の一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
本実施形態の画像形成装置は、記録媒体を搬送する搬送機構と、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、記憶装置であるRAMと、書き換え可能な不揮発性記憶装置であるフラッシュROMと、最小印字単位のデューティー比が閾値を超えたとき、この最小印字単位の印字データに対して消費電力を低減させるための低減処理を行う制御部と、を備える。
【0012】
(画像形成装置の構成)
図1は、本実施形態の画像形成装置の構成を表す図である。ここで、画像形成装置には、レーザープリンタのような電子式画像形成装置、インクジェットプリンタ、ドットプリンタ、サーマルプリンタなどが含まれる。ここでは、サーマルプリンタを例にとって説明する。
【0013】
図1に示すように、画像形成装置は、制御部であるCPU101と、書き換え可能な不揮発性記憶装置であるフラッシュROM102と、記憶装置であるRAM103と、書き換え可能な記憶装置であるEEPROM104と、を備える。
【0014】
さらに、画像形成装置は、記録媒体の有無を検出する用紙検出センサ105と、上位機種との通信インターフェースである入出力I/F106と、アナログデータをディジタルデータに変換するA/Dコンバータ107と、を備える。
【0015】
また、画像形成装置は、記録媒体を搬送する搬送機構を有する。画像形成装置は、記録媒体を搬送するための駆動力を記録媒体搬送機構に供給する搬送モータ109と、この搬送モータ109を制御する搬送モータドライバ108と、記録媒体に画像を形成する画像形成部であるサーマルヘッド111と、このサーマルヘッド111を制御するサーマルヘッドドライバ110と、記録媒体を切断するカッターに駆動力を供給するカッターモータ113と、このカッターモータ113を制御するカッターモータドライバ112と、を備える。
【0016】
(画像形成装置の動作)
図2は、画像形成装置の動作を示す図である。図2に示すように、ステップ201において、画像形成装置はパソコンなどの上位機種118から印字データを受信し、RAM103などの記憶装置の受信バッファ114に格納する。
【0017】
ステップ202において、画像形成装置は受信バッファ114から印字データを順次読み出し、コマンドを解析し、解析結果をRAM103などの記憶装置の編集バッファ115に出力する。
【0018】
ステップ203において、画像形成装置は編集バッファ115のデータを読み込み、受信データがコマンドであるかを判定する。画像形成装置は、受信データがコマンドであった場合はステップ204においてそのコマンドを実行し、ステップ201に戻る。画像形成装置は、受信データがコマンドでなかった場合はステップ205に進む。
【0019】
ステップ205において、画像形成装置は印字データを作成し、イメージデータをRAM103などの記憶装置のイメージバッファ116に、用紙送り指示などのメカ制御データをRAM103などの記憶装置のメカ制御用バッファ117に格納する。
【0020】
ステップ206において、画像形成装置はイメージバッファ116から最小印字単位の印字データを読み込む。ここで最小印字単位は、ページ単位にて印字する画像形成装置においては1ページ分の印字データであり、1ページの一部分を単位として印字する場合この印字単位である。例えば、水平方向の最小印字列である1ラスタが80byteの場合、最小印字単位が100ラスタのとき、8000byteを読み込む。
【0021】
ステップ207において、画像形成装置は読み込んだ最小印字データのデューティー比を算出し、このデューティー比が閾値を超えたかを判定する。
【0022】
デューティー比は次の(1)式にて算出する。
【0023】
(デューティー比)=(印字ドット数)/(最小印字単位の全ドット数)・・・(1)
ここで、「印字ドット数」はサーマルヘッドに通電して印字するドット数を指し、例えば白黒印刷の場合は黒色にて印字するドット数を指す。
【0024】
また、画像形成装置は記憶装置に格納されている閾値を予め読み出す。画像形成装置はデューティー比が閾値を超えている場合ステップ208に進み、超えていない場合ステップ209に進む。
【0025】
ステップ208において、画像形成装置は画像データに対して後述する低減処理を行い、イメージバッファ116に格納する。
【0026】
ステップ209において、画像形成装置はメカ制御用バッファ117からメカ制御データを読み出し、機械部分を動作させるメカ制御を行う。
【0027】
ステップ210において、画像形成装置はイメージバッファ116からイメージデータを読み出し、印字を行い、ステップ201に戻る。
【0028】
なお、ステップ210において低減処理を行った場合には、画像形成装置は上位機種に低減処理を行った旨を通知してもよい。
【0029】
(低減処理)
(低減処理の第1の実施形態)
画像形成装置は、印字するドットを間引くことによりデューティー比を低減させる。印字するドットの間引きは1ドット単位にて間引いても、ドットを間引いたマスクパターンにより印字データを置き換えてもよい。また、画像形成装置は最小印字単位のデューティー比に応じて印字ドットの間引き率を変化させる。
【0030】
図3は、間引く前のドットの状態を示す図である。図3に示すように、最小印字単位301はデューティー比が低いのに対し、最小印字単位302はデューティー比が高い。ここで、最小印字単位302のデューティー比が閾値を超えているとする。
【0031】
最小印字単位302の中の黒くベタ印字されている部分303を拡大すると、印字ドットは拡大図304のように印字ドットが隙間なく密集している。
【0032】
図4は、間引マスクパターンの例を示す図である。図4に示すように、画像形成装置は印字ドットを間引いて生成したマスクパターンである間引きマスクパターン401を生成する。
【0033】
画像形成装置は、印字ドットを一つ置きに白に置き換えることにより間引く。または、画像形成装置はマスクパターン0xAA(●○●○●○●○)を奇数行に、マスクパターン0x55(○●○●○●○●)を偶数行に配列して間引きマスクパターン401を生成する。
【0034】
間引きマスクパターン401は間引き率が50%である。従って、印字に使用する消費電力の50%を低減することが可能となる。
【0035】
図5は、間引きマスクパターンの他の例を示す図である。図5に示すように、画像形成装置は、間引きマスクパターン401を採用してもデューティー比が閾値を超えている場合、間引きマスクパターン401からさらに印字ドットを間引いた間引きマスクパターン501を生成する。
【0036】
画像形成装置は、間引きマスクパターンを印字データのうちの該当部分と置き換えて置き換え後の印字データをイメージバッファ116に格納する。
【0037】
(低減処理の第2の実施形態)
画像形成装置は、画像形成部であるサーマルヘッドの通電時間を短縮することにより消費電力を低減する。画像形成装置は、通電時間がPWM制御されている場合は、PWMのデューティーを低減することにより通電時間を短縮することもできる。
【0038】
図6乃至図8は、通電時間を短縮した場合の印字パターン例を示す図である。図6乃至図8の各図において(A)は短縮率を示すグラフであり、(B)は印字パターンの例を示す図である。画像形成装置は短縮した通電時間に見合った分だけ印字に要する消費電力を低減させることができる。
【0039】
図6は通電時間を70%にした場合を示す図である。図6(A)のグラフ601に示すように、通電時間を通常印字の70%にした場合、図6(B)に示す印字パターン全体が通常印字に比べてやや薄くなる。
【0040】
画像形成装置はデューティー比がやや高い場合、例えばデューティー比が60%以上70%未満の場合に通電時間を70%に制御することができる。
【0041】
図7は通電時間を50%にした場合を示す図である。図7(A)のグラフ701に示すように、通電時間を通常印字の50%にした場合、図7(B)に示す印字パターン全体が通常印字に比べて薄くなる。
【0042】
画像形成装置はデューティー比が高い場合、例えばデューティー比が70%以上90%未満の場合に通電時間を50%に制御することができる。
【0043】
図8は通電時間を30%にした場合を示す図である。図8(A)のグラフ801に示すように、通電時間を通常印字の30%にした場合、図8(B)に示す印字パターン全体が通常印字にかなり比べて薄くなる。
【0044】
画像形成装置はデューティー比がかなり高い場合、例えばデューティー比が90%以上の場合に通電時間を30%に制御することができる。
【0045】
画像形成装置は、通電時間を予め設定した短縮率により短縮することも、デューティー比に応じて、デューティー比が高くなるに従って短縮率を大きくするように制御することもできる。
【0046】
(低減処理の第3の実施形態)
画像形成装置は、間引きマスクパターンを生成し、この間引きマスクパターンの印字の際のサーマルヘッドの通電時間を短縮することにより消費電力を低減する。画像形成装置は、通電時間がPWM制御されている場合は、PWMのデューティーを低減することにより通電時間を短縮することもできる。
【0047】
図9は、間引きマスクパターンの通電時間を短縮した場合の例を示す図である。図9(A)のグラフ901に示すように、通電短縮率は通常の通電時間の70%である。さらに、間引きマスクパターンの間引き率は50%である。
【0048】
従って、印字に要する消費電力を通常の35%に低減することが可能となる。
【0049】
以上述べたように、本実施形態の画像形成装置は、記録媒体を搬送する搬送機構と、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、記憶装置であるRAM103と、書き換え可能な不揮発性記憶装置であるフラッシュROM102と、最小印字単位のデューティー比が閾値を超えたとき、この最小印字単位の印字データに対して消費電力を低減させるための低減処理を行う制御部と、を備える。
【0050】
従って、画像形成装置は画像データの画質を維持しながら消費電力を低減させることができるという効果がある。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
101:CPU、
102:フラッシュROM、
111:サーマルヘッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送機構と、
前記記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
最小印字単位のデューティー比が閾値を超えたとき、この最小印字単位の印字データに対して消費電力を低減させるための低減処理を行う制御部と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記最小印字単位のデューティー比が閾値を超えたとき、この最小印字単位の印字データに対して印字ドットを間引いた間引きマスクパターンを生成し、前記最小印字単位の印字データと前記間引きマスクパターンとを置き換えて印字する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記最小印字単位のデューティー比に応じて印字ドットの間引き率を変化させる請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記最小印字単位のデューティー比が閾値を超えたとき、この最小印字単位の印字データに対して印字に要する通電時間を通常の通電時間より短縮して印字する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記最小印字単位のデューティー比に応じて前記最小印字単位の印字に要する通電時間を変化させる請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記最小印字単位のデューティー比が閾値を超えたとき、この最小印字単位の印字データに対して印字ドットを間引いた間引きマスクパターンを生成し、前記最小印字単位の印字データと前記間引きマスクパターンとを置き換え、この最小印字単位の印字データに対して印字に要する通電時間を通常の通電時間より短縮して印字する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記最小印字単位のデューティー比に応じて印字ドットの間引き率を変化させるとともに、前記最小印字単位のデューティー比に応じて前記最小印字単位の印字に要する通電時間を変化させる請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
制御部が、
最小印字単位のデューティー比が閾値を超えたとき、この最小印字単位の印字データに対して印字ドットを間引いた間引きマスクパターンを生成し、前記最小印字単位の印字データと前記間引きマスクパターンとを置き換えて印字する画像形成装置の画像形成方法。
【請求項9】
制御部が、
最小印字単位のデューティー比が閾値を超えたとき、この最小印字単位の印字データに対して印字に要する通電時間を通常の通電時間より短縮して印字する画像形成装置の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−51346(P2012−51346A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197939(P2010−197939)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】