説明

画像形成装置

【課題】画像形成装置の不用意な移動を確実に防止でき、しかも移動させ易い。
【解決手段】本画像形成装置としての複写機1は、本体2の下面4に移動用のキャスタ3を取り付けられ、本体2の側面5には、移動用の可動式の把手12が設けられている。把手12は、使用状態と非使用状態とに切り換え可能である。キャスタ3に常時制動力を与える制動手段15が設けられる。制動手段15と把手12とが、リンク機構16を介して連結される。把手12を使用状態にしている間、キャスタ3へ制動力が作用せず、キャスタ3により複写機1を移動できるようになる。把手12を非使用状態にすると、キャスタ3に常時制動力が付与され、移動を防止できる。また、本体2を振動し難くでき、振動に起因する画像品質の低下を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複写機には、その下面に移動用のキャスタを有するものがある(例えば、特許文献1参照。)。また、このようなキャスタを有する複写機には、キャスタの車輪をロックするためのロック機構が設けられているものがある。作業者は、複写機を所定の設置場所へ移動した後に、ロック機構を操作し、複写機の移動を防止するようにしている。
【特許文献1】特開2003−218544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、複写機を移動させた後に、作業者がキャスタのロック操作をし忘れることがある。キャスタがロックされない場合には、複写機が不用意に移動する虞がある。
そこで、この発明の目的は、不用意な移動を確実に防止できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の画像形成装置は、本体の下面に取り付けられた移動用のキャスタが備えられた画像形成装置において、上記本体を移動させるときに把持される把手であって使用状態と非使用状態とに切り換え可能な可動式の把手と、上記キャスタに常時制動力を与える制動手段と、上記把手が使用状態にある間だけ、制動手段の制動力がキャスタへ与えられないようにする制動力回避手段とを含むことを特徴とする。
【0005】
本発明によれば、把手を使用状態にしている間、キャスタへ制動力が作用せず、キャスタにより本体を移動できるようになる。また、把手を非使用状態に戻すと、キャスタに制動力が常時付与されるようになる。その結果、不用意に本体が移動することを防止でき、また、本体を振動し難くでき、振動に起因する画像品質の低下を防止できる。
また、可動式の把手は、通例、本体を移動しようとするときにのみ使用状態とするので、把手の操作に連動して、制動力をキャスタに作用させるか、または回避させるかを確実に切換えることができる。
【0006】
また、上記把手は、本体に収納される非使用状態と、本体から突出する使用状態とに切換え可能であり、上記制動力回避手段は、上記把手が使用状態にされることに連動して制動手段の制動力を回避させるリンク機構を含む場合がある。この場合、把手は非使用状態で邪魔にならず、しかも使用状態で使い易い。リンク機構により、把手の運動に連動させて制動手段の制動力を回避させる機能を、機械的な構成で実用的に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態では、画像形成装置が複写機である場合に則して説明するが、本発明はこれに限らず、例えば、画像形成装置は、プリンタ、ファクシミリ等であってもよい。図1Aは、本発明の一実施形態の画像形成装置としての複写機の外観斜視図である。
複写機1の本体2は、箱状の外形を有し、下面4と、下面4の周縁部から上方に延びる複数、例えば4つの側面5と、複数の側面5の上端縁同士を互いに接続する上面6とを有している。本体2の下面4に、キャスタ3が取り付けられている。
【0008】
本体2内には、原稿画像を読み取るためのスキャナ部7と、このスキャナ部7により得られる原稿画像に応じた画像データに基づき所定の用紙に画像を形成する画像形成部8と、この画像形成部8に用紙を供給する用紙供給部9等が備えられている。
本体2の一つの側面5には、凹部11が形成されている。この凹部11内には、複写機1を移動させるときに把持される把手12を収納できるようになっている。この把手12は、使用状態(図1B参照)と非使用状態(図1A参照)とに切り換え可能な可動式の把手である。
【0009】
把手12は、一対のレバー13と、一対のレバー13の一方の端部同士を接続する接続部としての握り部14とを有する。一対のレバー13は、根本側にある他方の端部を、本体2に回動自在にそれぞれ支持されていて、回動中心軸線C1の回りに所定の角度範囲で回動させることができる。
図1Aを参照して、把手12を使わないときには、把手12を非使用状態とする。非使用状態では、把手12の全体が凹部11内に収容される。
【0010】
非使用状態にある把手の握り部14を、引き出すようにして持ち上げて、レバー13を上端部の近傍にある回動中心軸線C1の回りに回動させると、把手12を使用状態にすることができる。
図1Bを参照して、移動のための使用状態では、把手12の根本部分以外の把手12の大部分が本体2の側面5から凹部11外へ側方に向けて突出している。
【0011】
使用状態にある把手12の握り部14を押し下げて、レバー13を側面5寄りの端部近傍にある回動中心軸線C1の回りに回動させると、把手12を非使用状態にすることができる。
複数のキャスタ3は、下面4の四隅にそれぞれ配置されている。キャスタ3は、転動可能な車輪3aと、この車輪3aを上下方向に延びる旋回軸の回りに旋回可能に保持する保持部(図示せず)とを有している。車輪3aは、押される方向に車輪3aの転動の向きを変化させることができるようになっている。
【0012】
本実施形態では、各キャスタ3の車輪3aには、制動手段15(図2参照)により、常時制動力が付与されている。よって、通常は、制動力により車輪3aがロックされる。また、制動力回避手段であり且つ連動手段としての後述するリンク機構16(図2参照)により、把手12が使用状態にある間、制動手段15の制動力がキャスタ3へ与えられないように、把手12が使用状態にされたことに連動して制動手段15にキャスタ3への制動力を回避させてロックを解除できるようにしてあり(図3参照)、その一方で、把手12が非使用状態にある間、制動手段15がキャスタ3をロックできるようにしてある。
【0013】
図2を参照して、制動手段15は、少なくとも2つのキャスタ3にそれぞれ設けられている。
制動手段15は、キャスタ3の車輪3aと当接または離間できるように変位可能に支持されるブレーキ部材17と、ブレーキ部材17を車輪3aに向けて押圧するばね18とを有している。ばね18の付勢力を受けながらブレーキ部材17が車輪3aと当接し摩擦係合することにより、車輪3aの転動を阻止する。
【0014】
また、複写機1は、把手12の非使用状態および使用状態の切換え操作と、制動手段15からの制動力の付与および付与の回避の動作とを連動させる連動手段としての機械的なリンク機構16を有している。
リンク機構16は、把手12と制動手段15とを連結する。リンク機構16は、把手12のレバー13ごとに同様に設けられていて、把手12の操作により、2つのキャスタ3についての制動手段15の制動力の付与と回避とを切換えることができるようになっている。なお、以下の説明では、リンク機構16を、一方のレバー13と一つのキャスタ3についての制動手段15との連動に則して説明する。
【0015】
リンク機構16は、レバー13の他方の端部13bと回動自在に連結される第1の連結棒19と、この第1の連結棒19と回動自在に連結される第2の連結棒20とを有している。
レバー13の他方の端部13bは、第1の連結ピン21を介して回動自在に支持されている。第1の連結ピン21の中心軸線が、上述の回動中心軸線C1に相当する。レバー13の他方の端部13bは、第1の連結ピン21と離間した第2の連結ピン22を介して、第1の連結棒19の一方の端部19aに、回動自在に連結されている。第1の連結棒19の他方の端部19bは、第2の連結棒20の一方の端部20aに、第3の連結ピン23を介して回動自在に連結されている。第2の連結棒20の長手方向の中間部は、第4の連結ピン24および支持部材25を介して本体2の下面4に回動自在に支持されている。第2の連結棒20の他方の端部20bには、ブレーキ部材17が固定されている。
【0016】
把手12が非使用状態にあるときには、ばね18がブレーキ部材17を車輪3aに押し付けていて、車輪3aの転動が阻止される。また、複写機1の画像を複写する機能は、把手12の状態にかかわらず実行可能であるが、把手12が非使用状態にあるときが、複写する機能にとって好ましい。
把手12を使用状態に引き出そうとすると、把手12のレバー13が時計回りM1に回動するのに伴って、第1の連結棒19を介して第2の連結棒20が反時計回りM2に回動する。これにより、第2の連結棒20の他方の端部が、ばね18を押し縮めて、ブレーキ部材17が車輪3aから離れて、制動力が車輪3aに作用しなくなる。そして、把手12が使用状態に切り替わる(図3参照)。
【0017】
図3を参照して、把手12の使用状態では、制動力は作用せず、車輪3aにより複写機1を自在に移動させることができる。
把手12を非使用状態に押し戻そうとすると、把手12のレバー13が反時計回りM3に回動するのに伴って、第1の連結棒19を介して第2の連結棒20が時計回りM4に回動する。これにより、第2の連結棒20の他方の端部がばね18の弾力を受けつつ、ブレーキ部材17が車輪3aに当接して、制動力が車輪3aに作用するようになる。そして、把手12が非使用状態に切り替わる(図2参照)。
【0018】
このように本実施形態によれば、リンク機構16により、可動式の把手12の操作に連動して、制動手段15の制動力をキャスタ3に付与したり、付与を回避したりできるようにしている。これにより、把手12を使用状態にしている間、キャスタ3へ制動力が作用せず、キャスタ3により本体2を自在に移動できるようになる。また、把手12を非使用状態に戻すと、キャスタ3に制動力が常時付与されるようになる。その結果、不用意に本体2が移動することを防止でき、また、画像形成部8の動作時に、本体2を振動し難くでき、振動に起因する画像品質の低下を防止できる。
【0019】
また、可動式の把手12は、通例、本体2を移動しようとするときにのみ使用状態とするので、把手12の操作に連動して、制動力をキャスタ3に作用させるか、または回避させるかを確実に切換えることができる。従って、キャスタ3のロック忘れが生じることもない。
また、把手12に連動する機械的なリンク機構16を採用している。この場合、把手12の運動に連動させて制動手段15の制動力を回避させる機能を、機械的な構成で実用的に実現できる。
【0020】
また、把手12は非使用状態で凹部11内に収容されていて、邪魔にならず、しかも使用状態で本体2の側面5から突出して使い易い。
また、本実施形態について、以下のような変形例を考えることができる。以下の説明では、上述の実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の構成については説明を省略する。例えば、図示しないが、制動力回避手段かつ連動手段として、把手12の使用状態から非使用状態への切換え操作に応答して信号を出力するスイッチと、このスイッチの出力信号に応答してブレーキ部材17を車輪3aに押し付けるように駆動する駆動機構としてのソレノイドを設けてもよい。
【0021】
また、把手12を、非使用状態で凹部11に収容しないで、本体2の側面5に沿わせるようにしてもよい。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態の画像形成装置の斜視図であり、図1Aに把手の非使用状態を、図1Bに把手の使用状態を示す。
【図2】図1の画像形成装置のリンク機構等の一部断面正面図であり、把手が非使用状態にある場合を示す。
【図3】図2のリンク機構等の一部断面正面図であり、把手が使用状態にある場合を示す。
【符号の説明】
【0023】
1 複写機(画像形成装置)
2 本体
3 キャスタ
4 下面
12 把手
15 制動手段
16 リンク機構(制動力回避手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の下面に取り付けられた移動用のキャスタが備えられた画像形成装置において、
上記本体を移動させるときに把持される把手であって使用状態と非使用状態とに切り換え可能な可動式の把手と、
上記キャスタに常時制動力を与える制動手段と、
上記把手が使用状態にある間だけ、制動手段の制動力がキャスタへ与えられないようにする制動力回避手段とを含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
上記把手は、本体に収納される非使用状態と、本体から突出する使用状態とに切換え可能であり、
上記制動力回避手段は、上記把手が使用状態にされることに連動して制動手段の制動力を回避させるリンク機構を含むことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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