説明

画像形成装置

【課題】簡単な構成で記録メディアの全体に均一なテンションを与えることにより画像の形成精度を向上させることが可能なダンサー機構を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】インクジェットプリンタ100は、プラテン101に搬送される記録メディアWKおよび記録メディアロールWRから引き出される記録メディアWKにテンションを与えるダンサー機構200を備えている。ダンサー機構200は、中実の丸棒状に形成された支持軸211と中空の円筒状に形成された筒体212とから構成されるダンサーシャフト210を備えている。支持軸211は、記録メディアWKにテンションを与えるとともに、記録メディアロールWRのブロッキングを解消するために必要な重さで構成されている。筒体212は、内径が支持軸211の外径より大きく形成されており、筒体212の内周面が軸体211の外周面上を滑りながら回転するように支持軸211に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望する画像を記録メディアの表面に形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロール紙などの長尺の記録メディアに印刷または切り抜き加工によって所望する画像を形成する画像形成装置がある。一般に、画像形成装置は、プラテン上に保持した記録メディアと画像を印刷するための記録ヘッドまたは画像を切断するためのカッティングヘッドとを相対的に変位させることにより画像の印刷または切断を行う。
【0003】
このような画像形成装置においては、長尺の記録メディアをシワや弛みなく適切にプラテン上に搬送するため、記録メディアに所定のテンション(張力)を与えるダンサー機構を備えたものがある。例えば、下記特許文献1に示された画像形成装置は、中空状の内側固定ローラの外側に中空状の外側回転ローラを同軸上に配置して構成された緩衝ローラ(ダンサー機構)を備えている。
【特許文献1】特開2001−302063号公報
【0004】
しかしながら、このようなダンサー機構においては、記録メディアに接する外側回転ローラの回転中心が一定であるため、外側回転ローラの偏心や曲がり、外径の不均一などより記録メディアに与えるテンションの大きさにムラが生じることがある。このため、プラテン上に搬送される記録メディアに送り量のズレや歪み(シワや弛みなど)が生じ、記録メディアに対する画像の形成精度が低下するという問題がある。また、ダンサー機構を構成する部品点数が多く構成が複雑であるため、ダンサー機構の製作が煩雑であるという問題もある。特に、記録メディアに接する外側回転ローラは長尺であるため、その製作および組み立ては煩雑となっている。
【発明の開示】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、記録メディアに接するローラの偏心、曲がりまたは外径の不均一などによる影響を抑えつつ簡単な構成で記録メディアの全体に均一なテンションを与えることにより記録メディアに対する画像の形成精度を向上させることが可能なダンサー機構を備えた画像形成装置を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、長尺状の記録メディアを保持するための記録メディア保持部と、前記長尺状の記録メディアの一部を載置するためのプラテンと、記録メディア保持部に保持された記録メディアをプラテン上に搬送するための記録メディア搬送手段と、記録メディアの搬送路上に設けられ、プラテン上に載置される記録メディアにテンションを与えるダンサー機構と、プラテン上に載置された記録メディアに画像を形成する記録ヘッドとを備えた画像形成装置において、ダンサー機構は、記録メディアの幅方向に対応する長さの円筒状に形成され、記録メディア保持部から供給される記録メディアが接触する筒体と、筒体の内径より小さい外径の軸状に形成され、筒体の内周面に接触しつつ同筒体を回転自在に支持する支持軸とを備えたことにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、支持軸の外側に同支持軸の外径より大きい内径の筒体を配置して、記録メディアが接触する筒体が支持軸の外周面に接触しながら回転するように構成している。すなわち、筒体は支持軸に対して回転中心を変化させながら回転する。したがって、搬送される記録メディアの幅方向に対して支持軸を平行に配置すれば、プラテンに搬送される記録メディアに与えられるテンションの大きさの変化は回転する筒体の厚さ(肉厚)の変化に応じたものとなる。この場合、回転する筒体の厚さの変化による記録メディアの位置の変化量は、従来例におけるローラの偏心、曲がりまたは外径の不均一による記録メディアの位置の変化量の略半分である。すなわち、本発明における記録メディアに対するテンションの大きさの変化は、従来例におけるテンションの大きさの変化より遥かに小さい。
【0008】
また、本発明に係るダンサー機構は、主として支持軸および筒体によって構成されている。この場合、筒体の厚さを略均一に製作すれば支持軸および筒体の製作精度および組み立て精度は、従来例のように厳密にする必要はない。これらの結果、記録メディアに接するローラの偏心、曲がりまたは外径の不均一などによる影響を抑えつつ簡単な構成で記録メディアの全体に均一なテンションを与えることができ、記録メディアに対する画像の形成精度を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の他の特徴は、前記画像形成装置において、筒体は、記録メディアに与えられるテンションによって撓む可撓性を有することにある。
【0010】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、筒体は記録メディアに与えられるテンションによって撓むように構成されている。このため、筒体が曲がって形成されている場合には、同筒体は記録メディアに与えられるテンションによって撓み支持軸に密着する。すなわち、筒体の曲がりが矯正される。この結果、筒体が曲がって形成されている場合であっても、精度よく記録メディアの全体に均一なテンションを与えることができ、記録メディアに対する画像の形成精度を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、前記画像形成装置において、記録メディア保持部は、ロール状に形成された記録メディアを保持し、ダンサー機構は、支持軸を上下方向に変位可能な状態で支持する案内支持部を備え、支持軸を、ロール状の記録メディアに生じるブロッキングを解消可能な重さで形成したことにある。
【0012】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、支持軸を上下方向に変位可能な状態で支持して、同支持軸の重さをロール状の記録メディアに生じるブロッキングを解消可能な重さとしている。ここで、ブロッキングとは、ロール状に巻かれた記録メディアを引き出す際、重なり合った記録メディア同士が貼り付いて円滑に記録メディアが引き出せない現象である。すなわち、支持軸の重さを貼り付いた記録メディアを剥がすのに必要な重さとしている。これにより、ロール状に形成された記録メディアにおけるブロッキングによる搬送不良を防止することができ、記録メディアに対する画像の形成精度をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る画像形成装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1(A),(B)は、本発明に係るダンサー機構200を備えたインクジェットプリンタ100の全体を概略的に示す斜視図である。図1(A)は、インクジェットプリンタ100を前方から見た斜視図であり、図1(B)は、同インクジェットプリンタ100を後方から見た斜視図である。また、図2は、図1(A)に示したA−A線におけるインクジェットプリンタ100の概略断面図である。このインクジェットプリンタ100は、インクの液滴を長尺の紙からなる記録メディアWKの表面に付着させて所望する文字、記号または図形などの画像を記録メディアWK上に印刷する印刷装置である。
【0014】
インクジェットプリンタ100は、平面部を有するとともに同平面部がインクジェットプリンタ100の後側に向かって湾曲した形状のプラテン101を備えている。プラテン101は、前記平面部上に記録メディアWKの一部を載置する載置台であり、図示左右方向に延びて形成されている。このプラテン101における平面部には、図示左右方向に沿って円筒状のグリッドローラ102がその上面部を露出させた状態で設けられている。グリッドローラ102は、図示しないX軸方向フィードモータによって回転駆動される。また、プラテン101の平面部におけるインクジェットプリンタ100の前側には、プラテン101の平面部と面一の状態から下方に向かって湾曲して形成されたドライヤ103が設けられている。ドライヤ103は、画像が印刷された記録メディアWKを温めて乾燥させるための発熱体であり、内部に図示しない電気ヒータを備えている。
【0015】
プラテン101の上方には、プラテン101と平行な状態で長尺状のガイドレール104が設けられている。このガイドレール104の下部には、グリッドローラ102に対向した状態の円筒部を有する17個のピンチローラ105が略等間隔にそれぞれ設けられている。これらのグリッドローラ102およびピンチローラ105は、シート状の記録メディアWKを図示上下方向から挟持しながら図示前後方向に搬送する。すなわち、これらグリッドローラ102およびピンチローラ105は、本発明に係る記録メディア搬送手段に相当する。ここで、記録メディアWKを搬送する図示前後方向をX軸方向、同X軸方向に直交する図示左右方向をY軸方向とする。
【0016】
ガイドレール104は、図示しない直動レールおよび直動ブロックを介して記録ヘッドユニット105を支持する。直動レールは、Y軸方向に沿ってガイドレール104に固定された1本のレールである。また、直動ブロックは、直動レールに沿って摺動する移動体であり、記録ヘッドユニット106の背面に固定されている。すなわち、記録ヘッドユニット106は、直動レール(ガイドレール104)に沿ってY軸方向に案内される。記録ヘッドユニット106は、互い異なる6つの色のインクを貯留した図示しないインクタンクから各インクをそれぞれ導入して、同各インクの液滴を記録メディアWKに向けて出射する図示しない記録ヘッドを内蔵している。
【0017】
記録ヘッドユニット106の背面上部には、Y軸方向に沿って架設された駆動ベルト107の一部が固定されている。駆動ベルト107は、図示しないY軸方向スキャンモータの回転駆動によってY軸方向に変位する。すなわち、記録ヘッドユニット106は、駆動ベルト107を介してY軸方向スキャンモータにより直動レール上をY軸方向に変位する。記録ヘッドユニット106の上方には、インクジェットプリンタ100の上側の筐体を構成する長尺状の上カバー108が設けられている。また、プラテン101および上カバー108の両側には、インクジェットプリンタ100の両側の筐体を構成するサイドカバー109R,109Lがそれぞれ設けられている。これらのうち、サイドカバー109Rの前面には、インクジェットプリンタ100に指示を与えるとともに、インクジェットプリンタ100からの情報を表示するための操作パネル110が設けられている。
【0018】
プラテン101の下方には、インクジェットプリンタ100を支持するとともに、同インクジェットプリンタ100を作業者の所望する位置に移動させることができるスタンド111が設けられている。スタンド111は、インクジェットプリンタ100の左右端側において前後方向にそれぞれ延びる脚部111a,111bと、同脚部111a,111bの略中央部に起立した状態で設けられ、インクジェットプリンタ100が載置され固定される支持柱111c,111dとから構成されている。スタンド111の脚部111a,111bにおけるインクジェットプリンタ100の前側には、前後一対のシャフト112,113がY軸方向に沿ってそれぞれ架設されている。
【0019】
これらのシャフト112,113のうち、後方に配置されたシャフト112は、記録メディアWKがロール状に巻かれた記録メディアロールWRを回転自在に保持する軸体であり、本発明に係る記録メディア保持部に相当する。このシャフト112の後方に位置する支持柱111c,111dの上部には、記録メディアロールWRから引き出された記録メディアWKを後述するダンサー機構200に導くための送り案内シャフト114がY軸方向に沿って架設されている。また、シャフト112の前方に配置されたシャフト113は、記録メディアロールWRから引き出され、記録ヘッドにて画像が印刷された記録メディアWKを巻き取って回収するための軸体である。このシャフト113の前方には、記録ヘッドにて画像が印刷された記録メディアWKをシャフト113に導くための回収案内シャフト115がY軸方向に沿って架設されている。これらのシャフト112,113の一端には、同各シャフト112,113を回転駆動するための駆動モータ112a,113aがそれぞれ設けられている。
【0020】
スタンド111の脚部111a,111bにおけるインクジェットプリンタ100の後側には、ダンサー機構200が設けられている。ダンサー機構200は、詳しくは図3に示すように、Y軸方向に沿って架設されたダンサーシャフト210と、スタンド111の脚部111a,111b上にそれぞれ起立した状態で設けられた案内支持部220,230とから構成されている。これらのうち、ダンサーシャフト210は、図4に示すように、中実の丸棒状に形成された支持軸211の外側に、中空の円筒状に形成された筒体212が配置されて構成されている。
【0021】
支持軸211は、プラテン101上に導かれる記録メディアWKにテンション(張力)を与えるとともに、記録メディアロールWRのブロッキングを解消するためのステンレス材からなる部材であり同ブロッキングを解消するために必要な重さで構成されている。本実施形態においては、支持軸211の重さを3kgとしている。ここで、ブロッキングとは、記録メディアロールWRから記録メディアWKを引き出す際、重なり合った記録メディアWK同士が貼り付いて円滑に記録メディアWKが引き出せない現象である。このブロッキングは、特に、塩ビ製の記録メディアWKで生じ易い。
【0022】
筒体212は、支持軸211の外側に配置されて記録メディアロールWRから引き出された記録メディアWKが掛けられてプラテン101に導く部材である。より具体的には、筒体212は、図5(A)に示すように、その内径が支持軸211の外径より大きく形成されており、筒体212の内周面が軸体211の外周面上を滑りながら回転するように支持軸211に支持されている。本実施形態においては、支持軸211の外径を15mmとし、筒体212の内径を22mmとしている。また、この筒体212は、記録メディアWKに与えられるテンションによって撓む材料、例えば、アルミニウム材で構成されている。
【0023】
このダンサーシャフト210における支持軸211の両端部は、それぞれ案内支持部220,230によって支持されている。案内支持部220,230は、上下方向に延びる箱状に形成されており互いに対称に構成されている。案内支持部220,230における互いに対向する側面には、上下方向に沿って案内溝221(図示せず),231がそれぞれ形成されており、同案内溝221,231に支持軸211の各端部が摺動可能な状態でそれぞれ嵌め込まれている。すなわち、ダンサーシャフト210は、案内溝211,231に沿って上下方向に沿って変位可能な状態で支持されている。案内溝221,231の上部には、支持軸211の抜けを防止するためのストッパー222(図示せず),232がそれぞれ設けられている。また、案内溝221,231の下部には、支持軸211を受けるためのゴム製の受け部223(図示せず),233がそれぞれ設けられている。
【0024】
このインクジェットプリンタ100は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成された図示しない2つのコントローラA,Bをそれぞれ内蔵している。これらのうち、一方のコントローラAは、作業者の指示に従ってROMなどの記憶装置に予め記憶されたプログラムを実行することにより、インクジェットプリンタ100の各種作動を制御する。具体的には、このコントローラAは、図示しないインターフェースを介して接続される図示しない外部コンピュータ装置からの指示に従って、X軸方向フィードモータ、Y軸方向スキャンモータおよび印刷ヘッドなどの各作動をそれぞれ制御する。また、他方のコントローラBは、前記コントローラAと同期しながら、回収案内シャフト115の位置を検出する図示しないセンサからの検出信号を用いて駆動モータ113aの作動を制御するとともに、ダンサーシャフト210の位置を検出する図示しないセンサからの検出信号を用いて駆動モータ112aの作動を制御する。外部コンピュータ装置は、図示しないキーボードおよびマウスからなる入力装置、および図示しない液晶ディスプレイからなる表示装置を備えるパーソナルコンピュータ(所謂パソコン)である。
【0025】
次に、上記のように構成したインクジェットプリンタ100の作動について説明する。まず、作業者は、記録メディアロールWRをシャフト112にセットするとともに、記録メディアWKをインクジェットプリンタ100にセットする。具体的には、作業者は、記録メディアロールWRから引き出した記録メディアWKを、送り案内シャフト114を介して筒体212に略U字状に掛けた後、プラテン101上のグリッドローラ102とピンチローラ105とで記録メディアWKを挟んだ状態で支持させる。そして、記録メディアWKを更に引き出して回収案内シャフト115を介してシャフト113に巻き付ける。
【0026】
この場合、作業者は、ダンサーシャフト210が案内溝211,231における変位可能下限位置より上方に位置するように記録メディアWKの引き出し量を調整する。これにより、プラテン101上に載置される記録メディアWKおよび記録メディアロールWRから引き出される記録メディアWKに対してダンサーシャフト210の重さに応じたテンションが与えられる。また、この場合、ダンサーシャフト210における筒体212は、図5(B)に示すように、その内周面が支持軸211の外周面における底部に押し当てられた状態となる。
【0027】
次に、作業者は外部コンピュータ装置とインクジェットプリンタ100とをインターフェースを介して接続し、外部コンピュータ装置およびインクジェットプリンタ100の電源をそれぞれ投入する。これにより、外部コンピュータ装置は、図示しない所定のプログラムを実行することにより作業者からの指令の入力を待つ待機状態となる。また、インクジェットプリンタ100は、コントローラA内のROMに予め記憶されている図示しない所定のプログラムを実行することにより、記録ヘッドユニット106を原点復帰させた後、外部コンピュータ装置からの指示を待つ待機状態となる。
【0028】
次に、作業者は、外部コンピュータ装置を操作して、インクジェットプリンタ100に画像データの出力を指示し、インクジェットプリンタ100に画像の印刷を開始させる。これにより、インクジェットプリンタ100、具体的には、インクジェットプリンタ100に内蔵されるコントローラAは、外部コンピュータ装置から出力される画像データに基づいて記録ヘッドユニット105と記録メディアWKの相対的な位置関係を変化させながら、記録ヘッドの作動を制御して同記録メディアWKに向けてインクの液滴を出射する。
【0029】
この記録メディアWKに対する画像の印刷過程においては、プラテン101上に載置された記録メディアWKはインクジェットプリンタ100の後側から前側に向かって搬送される。具体的には、インクジェットプリンタ100のコントローラAは、X軸方向フィードモータの作動を制御することにより記録メディアWKをインクジェットプリンタ100の後側から前側に向かって断続的に搬送する。また、コントローラBは、駆動モータ113aの作動を制御して画像が印刷された記録メディアWKを巻き取るとともに、駆動モータ112aの作動を制御して、ダンサーシャフト210の位置が案内溝221,231における変位可能範囲内に位置するように記録メディアロールWRの回転を制御する。
【0030】
この場合、ダンサーシャフト210は、ダンサーシャフト210の重さに対応するテンションを記録メディアロールWRから引き出される記録メディアWKに与える。このため、記録メディアロールWRにおける記録メディアWKのブロッキングを解消しながら記録メディアWKを引き出すことができる。また、ダンサーシャフト210における筒体212は、その内周面が支持軸211の外周面の底部を滑りながら回転して記録メディアWKをプラテン101に導く。すなわち、筒体212は、支持軸211に押し当てられた状態で回転することにより、その回転中心を変化させながら回転する。これにより、支持軸211および筒体212の曲がりや外径の不均一などによるテンションの大きさの変化が防止されて記録メディアWKの全体に均一なテンションが与えられる。このため、記録ヘッドは、送り量のズレや歪み(シワや弛みなど)のない記録メディアWKに対して印刷を行うことができる。
【0031】
また、筒体212が曲がって形成されている場合には、記録メディアWKに与えられているテンションによって筒体212が撓むため、筒体212が支持軸211に密着する。このため、筒体212が曲がって形成されている場合であっても、記録メディアWKの全体に均一なテンションが与えられる。このようにしてプラテン101上に記録メディアWKが搬送されるとともに、同搬送された記録メディアWKに画像の印刷が行われる。そして、記録メディアWKに対してすべての画像の印刷が終了した場合には、作業者は、プラテン101上から記録メディアWKを取り外して加工作業を終了する。
【0032】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、支持軸211の外側に同支持軸211の外径より大きい内径の筒体212を配置して、記録メディアWKが接触する筒体212が支持軸211の外周面に接触しながら回転するように構成している。すなわち、筒体212は支持軸211に対して回転中心を変化させながら回転する。したがって、プラテン102に搬送される記録メディアWKに与えられるテンションの大きさの変化は回転する筒体212の厚さ(肉厚)の変化に応じたものとなる。この場合、回転する筒体212の厚さの変化による記録メディアWKの位置の変化量は、従来例におけるローラの偏心、曲がりまたは外径の不均一による記録メディアWKの位置の変化量の略半分である。すなわち、本発明における記録メディアWKに対するテンションの大きさの変化は、従来例におけるテンションの大きさの変化より遥かに小さい。
【0033】
また、上記実施携帯におけるダンサー機構210は、主として支持軸211および筒体212によって構成されている。この場合、筒体212の厚さを略均一に製作すれば支持軸211および筒体212の製作精度および組み立て精度は、従来例のように厳密にする必要はない。これらの結果、簡単な構成で記録メディアの全体に均一なテンションを与えることができ、記録メディアに対する画像の形成精度を向上させることができる。
【0034】
また、上記実施形態によれば、筒体212は記録メディアWKに与えられるテンションによって撓むように構成されている。このため、筒体212が曲がって形成されている場合には、筒体212は記録メディアに与えられるテンションによって撓み支持軸211に密着する。すなわち、筒体212の曲がりが矯正される。この結果、筒体212が曲がって形成されている場合であっても、精度よく記録メディアWKの全体に均一なテンションを与えることができ、記録メディアWKに対する画像の形成精度を向上させることができる。
【0035】
また、上記実施形態によれば、支持軸211を上下方向に変位可能な状態で支持して、同支持軸211の重さをロール状の記録メディアWKに生じるブロッキングを解消可能な重さとしている。すなわち、支持軸212の重さを貼り付いた記録メディアWKを剥がすのに必要な重さとしている。これにより、ロール状に形成された記録メディアWKにおけるブロッキングによる搬送不良を防止することができ、記録メディアに対する画像の形成精度をより向上させることができる。
【0036】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0037】
上記実施形態においては、筒体212を記録メディアWKに与えられるテンションによって撓むように構成した。しかし、筒体212を曲がりなく形成すれば、必ずしも筒体212を撓むように構成する必要はない。これによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0038】
また、上記実施形態においては、支持軸211の重さによってプラテン101に搬送される記録メディアWKおよび記録メディアロールWRから引き出される記録メディアWKにテンションを与えるように構成した。しかし、記録メディアWKに必要なテンションを与えることができれば、これに限定されるものではない。例えば、スプリングなどを用いて支持軸211を下方に押すまたは引くように構成してもよい。この場合、支持軸211を押すまたは引く方向も下方に限定されるものではなく、記録メディアWKにテンションを与えることができる方向であればよい。また、この場合、支持軸211を中空の筒体で構成することもできるし、筒体212の両端部を支持する2つの短軸体によって支持軸211を構成することもできる。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0039】
また、上記実施形態においては、記録メディアロールWRから引き出される記録メディアWKにもテンションを与えるように構成した。しかし、ブロッキングが生じない記録メディアWKを用いる場合には、敢えて記録メディアロールWRから引き出される記録メディアWKにテンションを与える必要はない。これによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0040】
また、上記実施形態においては、記録メディアロールWRから引き出される記録メディアWKにもテンションを与えるために、支持軸211の重さを3kgとした。しかし、支持軸211の重さは、記録メディアWKに与えるテンションの大きさや種類、グリッドローラ102を駆動するY軸方向フィードモータの仕様などによって適宜設定されるものであり、これに限定されるものではない。
【0041】
また、上記実施形態においては、本発明をインクジェットプリンタ100に適用したが、これに限定されるものではない。例えば、記録メディアWKの表面を切り抜いて所望する画像を形成するカッティング装置に本発明を適用してもよい。また、画像の形成対象である記録メディアWKも、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、ビニールシートや布地などを記録メディアWKとして用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(A),(B)は本発明の一実施形態に係るダンサー機構を備えたインクジェットプリンタの全体を概略的に示す斜視図であり、(A)はインクジェットプリンタを前方から見た斜視図であり、(B)はインクジェットプリンタを後方から見た斜視図である。
【図2】図1(A)に示すA−A線におけるインクジェットプリンタの断面を概略的に示す断面図である。
【図3】図1(B)に示すインクジェットプリンタに設けられたダンサー機構を示す斜視図である。
【図4】図3に示すダンサー機構の一部を拡大して示した斜視図である。
【図5】(A)はダンサーシャフトに記録メディアが掛けられていない状態を示すダンサーシャフトの断面図であり、(B)はダンサーシャフトに記録メディアが掛けられた状態を示すダンサーシャフトの断面図である。
【符号の説明】
【0043】
WK…記録メディア、WR…記録メディアロール、100…インクジェットプリンタ、101…プラテン、102…グリッドローラ、103…ドライヤ、104…ガイドレール、105…ピンチローラ、106…記録ヘッドユニット、107…駆動ベルト、110…操作パネル、111…スタンド、112,113…シャフト、114…送り案内シャフト、115…回収案内シャフト、200…ダンサー機構、210…ダンサーシャフト、211…支持軸、212…筒体、220,230…案内支持部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の記録メディアを保持するための記録メディア保持部と、
前記長尺状の記録メディアの一部を載置するためのプラテンと、
前記記録メディア保持部に保持された前記記録メディアを前記プラテン上に搬送するための記録メディア搬送手段と、
前記記録メディアの搬送路上に設けられ、前記プラテン上に載置される前記記録メディアにテンションを与えるダンサー機構と、
前記プラテン上に載置された前記記録メディアに画像を形成する記録ヘッドとを備えた画像形成装置において、
前記ダンサー機構は、
前記記録メディアの幅方向に対応する長さの円筒状に形成され、前記記録メディア保持部から供給される前記記録メディアが接触する筒体と、
前記筒体の内径より小さい外径の軸状に形成され、前記筒体の内周面に接触しつつ同筒体を回転自在に支持する支持軸とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載した画像形成装置において、
前記筒体は、前記記録メディアに与えられるテンションによって撓む可撓性を有する画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した画像形成装置において、
前記記録メディア保持部は、ロール状に形成された記録メディアを保持し、
前記ダンサー機構は、
前記支持軸を上下方向に変位可能な状態で支持する案内支持部を備え、
前記支持軸は、前記ロール状の記録メディアに生じるブロッキングを解消可能な重さで形成された画像形成装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−279621(P2008−279621A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124127(P2007−124127)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000116057)ローランドディー.ジー.株式会社 (163)
【Fターム(参考)】