説明

画像形成装置

【課題】公転歯車および伝達歯車に対して、自動的かつ適度に潤滑剤を塗布することができる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】
固定歯車25と、固定歯車25と噛合しながら固定歯車25の周りを公転する公転歯車26とを備え、固定歯車25を逆回転させることにより、公転歯車26を、加熱ローラ駆動ギヤ27から離間させるとともに、潤滑剤を含浸したスポンジ28に接触させて、公転歯車26に潤滑剤を塗布し、固定歯車25を正回転させることにより、潤滑剤が塗布された公転歯車26を、スポンジ28から離間させるとともに、加熱ローラ駆動ギヤ27に噛合させて、固定歯車25および加熱ローラ駆動ギヤ27に潤滑剤を行き渡らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式のプリンタなどの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のプリンタなどの画像形成装置には、駆動力を伝達または伝達解除するクラッチ機構の一例として、例えば、第1のギヤの回転方向に応じて、第2のギヤと噛み合う噛み合い位置と、第2のギヤと噛み合わない切り離し位置との間で移動する振り子ギヤを備える振り子ギヤ機構が設けられている場合がある(たとえば、特許文献1参照。)。
そして、通常、このようなギヤ機構においては、噛み合いにおける潤滑性付与を目的として、グリースなどの潤滑剤が塗布されており、そのような潤滑剤は、ギヤ機構の駆動に伴って徐々に消耗するので、定期的に塗布しなおす必要がある。
【0003】
そこで、潤滑剤を自動的にギヤ機構に塗布する構成として、例えば、ウォームとウォームホイールとからなるウォームギヤにおいて、潤滑剤を含浸した給油部材を、ウォームと当接するように配置し、そのウォームからウォームギヤに対して常に給油することができるギヤの潤滑構造が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2000−283248号公報
【特許文献2】特開2005−331075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、上記した引用文献2に記載される発明では、給油部材が常にウォームに当接しているので、ウォームギヤが十分に潤滑状態にある場合であっても、潤滑剤がウォームギヤに給油され続ける。
そのため、ウォームギヤに塗布された余分な潤滑剤が飛散してしまうという不具合がある。
【0005】
そこで、本発明では、公転歯車、固定歯車および伝達歯車に対して、自動的かつ適度に潤滑剤を塗布することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、画像形成装置であり、固定歯車と、前記固定歯車と噛合しながら前記固定歯車の周りを公転する公転歯車と、前記公転歯車の公転をガイドするガイド部材と、前記公転歯車と噛合可能であり、前記公転歯車からの駆動力が伝達される伝達歯車と、前記公転歯車に塗布するための潤滑剤が含浸され、前記公転歯車と接触可能である多孔質部材とを備え、前記固定歯車は、正回転または逆回転することができ、前記固定歯車が正回転すると、前記公転歯車は、前記多孔質部材から離間して前記伝達歯車に噛合し、前記固定歯車が逆回転すると、前記公転歯車は、前記伝達歯車から離間して前記多孔質部材に接触することを特徴としている。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記多孔質部材は、前記公転歯車の自転方向における長さを有し、前記公転歯車は、前記多孔質部材の前記長さ方向の途中と接触することを特徴としている。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記公転歯車の軸方向における前記多孔質部材の長さは、前記公転歯車の軸方向における前記伝達歯車の長さ、および、前記公転歯車の軸方向における前記固定歯車の長さの少なくとも一方よりも長いことを特徴としている。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の発明において、前記多孔質部材は、前記公転歯車の自転方向における長さを有し、前記多孔質部材の前記長さ方向と直交する方向の厚みは、前記公転歯車のギヤ歯の全歯たけよりも厚いことを特徴としている。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の発明において、前記ガイド部材は、前記固定歯車、前記公転歯車、前記伝達歯車および前記多孔質部材を収容するフレームであることを特徴としている。
【0009】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の発明において、前記公転歯車の歯数と前記伝達歯車の歯数との関係、または、前記公転歯車の歯数と前記固定歯車の歯数との関係のうち、少なくとも一方の関係が、いずれか一方の歯数で他方の歯数を除したときに、いずれも商が非整数になる関係であるときには、前記公転歯車は、前記多孔質部材に接触した後、1周未満、正回転することを特徴としている。
【0010】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の発明において、前記公転歯車の歯数と前記伝達歯車の歯数との関係、または、前記公転歯車の歯数と前記固定歯車の歯数との関係のうち、少なくとも一方の関係が、いずれか一方の歯数で他方の歯数を除したときに、いずれかの商が整数になる関係であるときには、前記公転歯車は、前記多孔質部材に接触した後、1周以上、正回転することを特徴としている。
【0011】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の発明において、前記固定歯車は、画像が形成される記録媒体が詰まったときに、逆回転することを特徴としている。
また、請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載の発明において、前記固定歯車は、任意に逆回転させることができることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、まず、固定歯車に駆動力が入力され、固定歯車が正回転すると、固定歯車から、固定歯車と噛合する公転歯車に駆動力が伝達され、公転歯車が逆回転する。
すると、公転歯車は、ガイド部材にガイドされ、逆回転しながら固定歯車の周りを公転して、伝達歯車と噛合する。
【0013】
これにより、固定歯車から、公転歯車を介して、伝達歯車に駆動力が伝達され、伝達歯車が正回転する。
次いで、固定歯車に駆動力が入力され、固定歯車が逆回転すると、固定歯車から、固定歯車と噛合する公転歯車に駆動力が伝達され、公転歯車が正回転する。
すると、公転歯車は、ガイド部材にガイドされ、正回転しながら固定歯車の周りを公転して、伝達歯車との噛合が解除される。これにより、固定歯車から伝達歯車への駆動力の伝達が解除される。
【0014】
そして、引き続き、固定歯車が逆回転すると、公転歯車は、ガイド部材にガイドされ、正回転しながら固定歯車の周りを公転して、潤滑剤が含浸される多孔質部材と接触する。これにより、潤滑剤が公転歯車に塗布される。
次いで、再び、固定歯車が正回転すると、潤滑剤が塗布された公転歯車が、逆回転して多孔質部材から離間し、ガイド部材にガイドされて固定歯車の周りを公転し、伝達歯車と噛合する。
【0015】
そして、そのまま固定歯車が正回転し続けると、公転歯車に塗布された潤滑剤が、公転歯車と噛合する固定歯車および伝達歯車に行き渡る。
つまり、この発明によれば、伝達歯車への駆動力の伝達を解除すると、自動的に、公転歯車に潤滑剤が塗布される一方、伝達歯車へ駆動力が伝達されているときには、公転歯車に潤滑剤が塗布されない。
【0016】
その結果、公転歯車に潤滑剤を過度に塗布することなく、公転歯車、固定歯車および伝達歯車に対して、自動的かつ適度に潤滑剤を塗布することができる。よって、余分な潤滑剤の飛散を防止することができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、多孔質部材が、公転歯車の自転方向における長さを有し、公転歯車が多孔質部材の長さ方向の途中と接触する。
【0017】
そのため、多孔質部材の長さ方向の端部が、公転歯車と干渉することを防止することができる。
その結果、干渉による多孔質部材の端部の剥がれを防止することができる。
さらに、公転歯車を、多孔質部材の長さ方向の途中と接触させることにより、一度の接触で、より広範囲の公転歯車のギヤ歯に対して潤滑剤を塗布することができる。
【0018】
そのため、潤滑剤を適度に塗布するための公転歯車の回転数を、減少させることができ、多孔質部材と公転歯車との摺擦を低減することができる。
また、請求項3に記載の発明によれば、公転歯車の軸方向における多孔質部材の長さは、公転歯車の軸方向における伝達歯車の長さ、および、公転歯車の軸方向における固定歯車の長さの少なくとも一方よりも長く形成されている。
【0019】
そのため、公転歯車の軸方向において、伝達歯車および固定歯車の少なくとも一方は、多孔質部材の範囲に含まれる。
その結果、潤滑剤が塗布された公転歯車が噛合したときには、伝達歯車および固定歯車の少なくとも一方の外周面全面にわたって、潤滑剤を塗布することができる。
また、請求項4に記載の発明によれば、多孔質部材の厚みは、公転歯車のギヤ歯の全歯たけよりも厚く形成されている。そのため、公転歯車のギヤ歯の根元まで潤滑剤を塗布することができる。
【0020】
その結果、公転歯車のギヤ歯に対する潤滑剤の十分な塗布を確保することができる。
また、請求項5に記載の発明によれば、ガイド部材は、固定歯車、公転歯車、伝達歯車および多孔質部材を収容するフレームとして形成されている。
固定歯車、公転歯車および伝達歯車がフレームに収容されている場合、外部から固定歯車、公転歯車および伝達歯車に潤滑剤を塗布することが困難である場合がある。
【0021】
しかし、フレームは、固定歯車、公転歯車および伝達歯車に加えて多孔質部材を収容しているので、フレーム内において、多孔質部材から公転歯車を介して、固定歯車および伝達歯車へ、確実に潤滑剤を塗布することができる。
また、請求項6に記載の発明によれば、公転歯車の歯数と伝達歯車の歯数との関係、または、公転歯車の歯数と固定歯車の歯数との関係のうち、少なくとも一方の関係が、いずれか一方の歯数で他方の歯数を除したときに、いずれも商が非整数になる関係である。
【0022】
そのため、公転歯車と伝達歯車とが上記関係にある場合には、公転歯車と伝達歯車とが噛合しているときには、公転歯車のギヤ歯は、公転歯車が1周する毎に、伝達歯車の異なるギヤ歯に対して噛合する。これにより、公転歯車に塗布された潤滑剤は、公転歯車が周回する毎に、伝達歯車の異なる部分に塗布される。
つまり、公転歯車の一部に潤滑剤を塗布すれば、公転歯車が伝達歯車の異なる部分と順次噛合することにより、公転歯車および伝達歯車に、均一に潤滑剤を行き渡らせることができる。
【0023】
そして、この発明によれば、公転歯車の一部に潤滑剤を塗布するために、公転歯車は、多孔質部材に接触した後、1周未満、正回転する。
そのため、公転歯車の一部(1周未満)に塗布された潤滑剤を、上記したように、公転歯車および伝達歯車の全周において、適度に行き渡らせることができる。
なお、公転歯車と固定歯車とが上記関係にある場合においても同様に、公転歯車の一部(1周未満)に塗布された潤滑剤を、公転歯車および固定歯車の全周において、適度に行き渡らせることができる。
【0024】
その結果、公転歯車に潤滑剤を過度に塗布することなく、公転歯車、固定歯車および伝達歯車に対して、自動的、かつ、さらに適度に潤滑剤を塗布することができる。
また、請求項7に記載の発明によれば、公転歯車の歯数と伝達歯車の歯数との関係、または、公転歯車の歯数と固定歯車の歯数との関係のうち、少なくとも一方の関係が、いずれか一方の歯数で他方の歯数を除したときに、いずれかの商が整数になる関係である。
【0025】
そのため、公転歯車と伝達歯車とが上記関係にある場合には、公転歯車と伝達歯車とが噛合しているときには、公転歯車は、伝達歯車に対して、常に同じ部分に噛合する。
しかし、この発明では、公転歯車は、多孔質部材に接触した後、1周以上、正回転する。
そのため、公転歯車の全周に塗布された潤滑剤を、伝達歯車の全周に、適度に行き渡らせることができる。
【0026】
なお、公転歯車と固定歯車とが上記関係にある場合においても同様に、公転歯車の全周に塗布された潤滑剤を、固定歯車の全周に、適度に行き渡らせることができる。
その結果、公転歯車に潤滑剤を過度に塗布することなく、公転歯車、固定歯車および伝達歯車に対して、自動的、かつ、さらに適度に潤滑剤を塗布することができる。
また、請求項8に記載の発明によれば、固定歯車は、記録媒体が詰まったときに、逆回転する。
【0027】
そのため、記録媒体が詰まり、画像形成装置の動作が停止するタイミングを利用して、公転歯車に潤滑剤を塗布することができる。
その結果、別途、公転歯車に潤滑剤を塗布する操作を設けることなく、定期的に、公転歯車に潤滑剤を塗布することができる。
また、請求項9に記載の発明によれば、固定歯車を任意に逆回転させることができる。
【0028】
そのため、任意のタイミングで公転歯車に潤滑剤を塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
1.プリンタの全体構成
図1は、本発明の画像形成装置の一例としてのプリンタの一実施形態を示す側断面図である。なお、プリンタ1および定着器11に関し、方向について言及する場合には、それぞれ水平方向に載置したときの方向を基準とし、具体的には、各図に示した方向矢印を基準とする。
【0030】
プリンタ1は、カラープリンタである。図1に示すように、プリンタ1の本体ケーシング2内には、4つの感光ドラム3が、前後方向に沿って並列配置されている。
各感光ドラム3には、スコロトロン型帯電器4、LED5および現像ローラ6が対向配置されている。
感光ドラム3は、その表面がスコロトロン型帯電器4によって一様に帯電された後、LED5によって露光される。これにより、各感光ドラム3の表面には、画像データに基づく静電潜像が形成される。各静電潜像は、現像ローラ6に担持されるトナーによって可視像化され、感光ドラム3の表面上にトナー像(現像剤像)が形成される。
【0031】
用紙Pは、本体ケーシング2内の給紙カセット7に収容されている。給紙カセット7に収容されている用紙Pは、各種ローラにより、搬送ベルト8に給紙される。
搬送ベルト8は、各感光ドラム3と、それらに対向する転写ローラ9との間に配置されている。各感光ドラム3の表面上のトナー像は、転写ローラ9に印加された転写バイアスによって、搬送ベルト8に搬送された用紙P上に転写され、順次重ね合わされる。
【0032】
4色のトナー像が転写された用紙Pは、定着装置の一例としての定着器11に搬送される。用紙P上に転写されたトナー像は、定着器11で熱定着される。その後、用紙Pは、各種ローラにより、排紙トレイ10に排紙される。
2.定着器の詳細
定着器11は、本体ケーシング2内に設けられており、定着フレーム12、加熱ローラ14および加圧ローラ13を備えている。
【0033】
定着フレーム12は、加熱ローラ14および加圧ローラ13を収容している。
加熱ローラ14は、その長手方向が左右方向に沿って延びる円筒形状に形成されている。すなわち、加熱ローラ14の軸線方向と左右方向とは同一方向である。加熱ローラ14は、アルミニウムなどの金属からなり、その表面がフッ素樹脂によってコーティングされている。加熱ローラ14の内部には、加熱ローラ14の内表面と径方向に間隔を隔てて、ハロゲンランプなどのヒータ15が左右方向に沿って挿通されている。
【0034】
加熱ローラ14の左右方向両端部には、リング形状の軸受部材(図示せず)がそれぞれ外嵌されている。各軸受部材は、加熱ローラ14の両端を回転可能に支持している。また、加熱ローラ14の左側端部には、ギヤ部17(図2参照)が配置されている。加熱ローラ14は、ギヤ部17に入力される駆動力により回転される。
加圧ローラ13は、加熱ローラ14の下方やや後側に配置され、定着フレーム12によって回転自在に支持されている。加圧ローラ13は、下方から加熱ローラ14を圧接している。
【0035】
定着器11において、用紙Pは、加熱ローラ14と加圧ローラ13との間に搬送され、駆動回転している加熱ローラ14と接触されて加熱されるとともに、加熱ローラ14に対して従動回転している加圧ローラ13に加圧され、熱定着される。そして、加熱ローラ14および加圧ローラ13の回転によって、定着器11から搬送される。
(1)定着器の駆動機構の詳細
図2は、定着器のギヤ部の概略側面図であって、(a)は、固定歯車が正回転した場合、(b)は、固定歯車が逆回転した場合を示す。図3は、図2(b)における公転歯車とスポンジとの接触を示す拡大図である。図4は、公転歯車、伝達歯車およびスポンジの左右方向長さを比較する比較図である。
【0036】
ギヤ部17は、図2に示すように、固定歯車25、伝達歯車の一例としての加熱ローラ駆動ギヤ27、および、公転歯車26を備えている。
一方、定着フレーム12は、その右側端部において、ギヤ部17を収容するフレームの一例としての収容部21を備えている。
収容部21は、前後方向に延びる側壁20、側壁20の後端部から左方に向かって延び、ギヤ部17を後側から被覆する後壁22、スポンジ支持板23、および、多孔質部材の一例としてのスポンジ28を備えている。
【0037】
また、側壁20には、公転歯車26の公転をガイドするガイド溝24が形成されている。これにより、収容部21はガイド部材を兼ねる。
後壁22は、左右方向に沿って延び、ギヤ部17を外部から仕切っている。
スポンジ支持板23は、側壁20の下部に配置され、側壁20から左方に突出する平板として形成されている。スポンジ支持板23は、前後方向に延び、前方に向かうにつれ上方に向かって傾斜するように配置されている。
【0038】
ガイド溝24は、スポンジ支持板23の上方において、側壁20を左右方向に貫通するように形成されている。ガイド溝24は、公転歯車26の中心軸30の公転軌道に沿うように、上下方向に延びる円弧形状の長穴として形成されている。また、ガイド溝24の溝幅は、公転歯車26の中心軸30を受け入れ可能な幅に形成されている。
スポンジ28は、公転歯車26の自転方向における長さ(前後方向長さ)を有する右側面視矩形のシート形状に形成されており、固定歯車25の前方において、公転歯車26と接触可能な位置において、スポンジ支持板23の上面に貼り付けられている。また、スポンジ28には、公転歯車26に塗布するための潤滑剤が含浸されている。
【0039】
また、スポンジ28の厚み(スポンジ28の長さ方向に直交する方向の長さ)Tは、図3に示すように、公転歯車26のギヤ歯の全歯たけlよりも厚く形成されている。
また、左右方向(公転歯車26の軸方向)におけるスポンジ28の長さWは、図4に示されるように、左右方向における加熱ローラ駆動ギヤ27の長さt1よりも長く形成されている。
【0040】
固定歯車25は、スポンジ支持板23の後方斜め上方であってガイド溝24の後方において、側壁20に回転自在に位置固定されており、図示しないモータからの駆動力が入力されることにより、正回転(右側面視反時計回り)または逆回転(右側面視時計回り)される。
加熱ローラ駆動ギヤ27は、固定歯車25の前側上方に配置され、加熱ローラ14の右側軸端部に相対回転不能に連結されている。
【0041】
公転歯車26は、固定歯車25および加熱ローラ駆動ギヤ27の間に進退可能に配置されている。公転歯車26は、その回転中心において左右方向に延びる揺動軸30を備えており、揺動軸30は、ガイド溝24に、回転自在かつスライド自在に嵌合されている。そして、公転歯車26は、常時、固定歯車25と噛合し、固定歯車25の周りを、揺動軸30がガイド溝24によってスライドを許容される範囲において、公転する。
【0042】
また、公転歯車26の歯数と加熱ローラ駆動ギヤ27の歯数との関係、および、公転歯車26の歯数と固定歯車25の歯数との関係は、いずれか一方の歯数で他方の歯数を除したときに、いずれも商が非整数になる関係である。具体的には、固定歯車25の歯数が39、公転歯車26の歯数が35、加熱ローラ駆動ギヤ27の歯数が44である。
(2)定着器の動作
定着器11が定着動作をするときには、図2(a)に示されるように、固定歯車25に、図示しないモータから駆動力を入力し、固定歯車25を正回転させる。
【0043】
すると、固定歯車25から、固定歯車25と噛合する公転歯車26に駆動力が伝達され、公転歯車26が逆回転する。
すると、公転歯車26は、収容部21のガイド溝24にガイドされ、逆回転しながら固定歯車25の周りを公転して、加熱ローラ駆動ギヤ27と噛合する。
これにより、固定歯車25から公転歯車26へ、そして、公転歯車26から加熱ローラ駆動ギヤ27へ駆動力が伝達され、加熱ローラ駆動ギヤ27が正回転する。
【0044】
次いで、定着動作中に、定着器11に用紙Pが詰まったときには、本体ケーシング2に設けられるCPU(図示せず)がその詰まりを検知して、ジャム処理の1つとして、定着動作を中止し、加熱ローラ駆動ギヤ27への駆動伝達を解除する。
加熱ローラ駆動ギヤ27への駆動伝達を解除するには、固定歯車25に駆動力を入力し、固定歯車25を逆回転させる。
【0045】
すると、固定歯車25から、固定歯車25と噛合する公転歯車26に駆動力が伝達され、公転歯車26が正回転する。
すると、公転歯車26は、収容部21のガイド溝24にガイドされ、正回転しながら固定歯車25の周りを下方へ公転して、加熱ローラ駆動ギヤ27との噛合が解除される。これにより、固定歯車25から加熱ローラ駆動ギヤ27への駆動力の伝達が解除される。
【0046】
そして、用紙Pが詰まり、加熱ローラ駆動ギヤ27への駆動伝達を解除するタイミングを利用して、公転歯車26に潤滑剤を塗布する。
具体的には、公転歯車26は、図2(b)に示すように、収容部21のガイド溝24にガイドされ、正回転しながら固定歯車25の周りを下方へ公転して、スポンジ28の両端部間の途中と接触する。この間、公転歯車26は、約5回転しており、公転歯車26とスポンジ28とが接触しているときに、スポンジ28に含浸されている潤滑剤が、公転歯車26に塗布される。
【0047】
なお、用紙Pが詰まった時には、公転歯車が約5回転正回転した後に、プリンタ1の動作が一時停止され、ユーザによって詰まった用紙Pが取り除かれる。
次いで、詰まった用紙Pが取り除かれ、紙詰まりが解除されると、再び、固定歯車25が正回転する。すると、潤滑剤が一部塗布された公転歯車26が逆回転してスポンジ28から離間し、収容部21のガイド溝24にガイドされて固定歯車25の周りを上方へ公転し、加熱ローラ駆動ギヤ27と噛合する。
【0048】
そして、そのまま固定歯車25が正回転し続けると、公転歯車26に一部塗布された潤滑剤が、公転歯車26と噛合する固定歯車25および加熱ローラ駆動ギヤ27に行き渡る
3.作用効果
(1)このプリンタ1によれば、上記したように、加熱ローラ駆動ギヤ27への駆動力の伝達を解除すると、自動的に、公転歯車26に潤滑剤が塗布される一方、加熱ローラ駆動ギヤ27へ駆動力が伝達されているときには、公転歯車26に潤滑剤が塗布されない。
【0049】
その結果、公転歯車26に潤滑剤を過度に塗布することなく、固定歯車25および加熱ローラ駆動ギヤ27に対して、自動的かつ適度に潤滑剤を塗布することができる。よって、余分な潤滑剤の飛散を防止することができる。
(2)また、このプリンタ1によれば、スポンジ28が公転歯車26の自転方向における長さを有するように、前後方向に延びるシート形状に形成されており、公転歯車26がスポンジ28の両端部間の途中と接触する。
【0050】
そのため、スポンジ28の端部が、公転歯車26と干渉することを防止することができる。
その結果、干渉によるスポンジ28の端部の剥がれを防止することができる。
さらに、公転歯車26を、スポンジ28の両端部間の途中と接触させることにより、一度の接触で、より広範囲の公転歯車26のギヤ歯に対して潤滑剤を塗布することができる。
【0051】
そのため、潤滑剤を適度に塗布するための公転歯車26の回転数を、減少させることができ、スポンジ28と公転歯車26との摺擦を低減することができる。
(3)また、このプリンタ1によれば、左右方向におけるスポンジ28の長さは、左右方向における加熱ローラ駆動ギヤ27の長さよりも長く形成されている。
そのため、左右方向において、加熱ローラ駆動ギヤ27は、スポンジ28の範囲に含まれる。
【0052】
その結果、潤滑剤が塗布された公転歯車26が、加熱ローラ駆動ギヤ27に噛合したときには、加熱ローラ駆動ギヤ27の外周面全面にわたって、潤滑剤を塗布することができる。
(4)また、このプリンタ1によれば、スポンジ28の厚みは、公転歯車26のギヤ歯の全歯たけよりも厚く形成されている。そのため、公転歯車26のギヤ歯の根元まで潤滑剤を塗布することができる。
【0053】
その結果、潤滑剤のギヤ歯に対する十分な塗布を確保することができる。
(5)また、このプリンタ1によれば、収容部21が、固定歯車25、公転歯車26、加熱ローラ駆動ギヤ27およびスポンジ28を収容し、ユニット化している。
固定歯車25、公転歯車26および加熱ローラ駆動ギヤ27が収容部21に収容されている場合、ユニットとして取り扱うことができ、取り扱いが簡便である反面、後壁22によって、外部から固定歯車25、公転歯車26および加熱ローラ駆動ギヤ27に潤滑剤を塗布することが困難である。
【0054】
しかし、収容部21は、固定歯車25、公転歯車26および加熱ローラ駆動ギヤ27に加えてスポンジ28を収容しているので、収容部21内において、スポンジ28から公転歯車26を介して、固定歯車25および加熱ローラ駆動ギヤ27へ、確実に潤滑剤を塗布することができる。
(6)また、このプリンタ1によれば、公転歯車26の歯数と加熱ローラ駆動ギヤ27の歯数との関係、および、公転歯車26の歯数と固定歯車25の歯数との関係は、いずれか一方で他方を除したときに、いずれも商が非整数になる関係である。
【0055】
そのため、公転歯車26と加熱ローラ駆動ギヤ27とが噛合しているときには、公転歯車26のギヤ歯は、公転歯車26が1周する毎に、固定歯車25および加熱ローラ駆動ギヤ27の異なるギヤ歯に対して噛合する。これにより、公転歯車26に塗布された潤滑剤は、公転歯車26が周回する毎に、固定歯車25および加熱ローラ駆動ギヤ27の異なる部分に塗布される。
【0056】
つまり、公転歯車26の一部に潤滑剤を塗布すれば、公転歯車26が固定歯車25および加熱ローラ駆動ギヤ27の異なる部分と順次噛合することにより、公転歯車26、固定歯車25および加熱ローラ駆動ギヤ27に、均一に潤滑剤を行き渡らせることができる。
より具体的には、公転歯車26は、スポンジ28に接触した後、スポンジ28に対して1周回転しなくても(例えば、1/5周程度回転する場合)、公転歯車26の一部に塗布された潤滑剤を、上記したように、公転歯車26、固定歯車25および加熱ローラ駆動ギヤ27の全周において、適度に行き渡らせることができる。
【0057】
これにより、公転歯車26に塗布したい潤滑剤の量によって、適宜、公転歯車26の回転数を変化させることができる。そして、その回転数が1周未満であっても、上記したように、公転歯車26、固定歯車25および加熱ローラ駆動ギヤ27の全周において、適度に行き渡らせることができる。
その結果、公転歯車26に潤滑剤を過度に塗布することなく、公転歯車26、固定歯車25および加熱ローラ駆動ギヤ27に対して、自動的、かつ、さらに適度に潤滑剤を塗布することができる。
(7)また、このプリンタ1によれば、公転歯車26は、用紙Pが詰まったときに、逆回転する。
【0058】
そのため、用紙Pが詰まり、プリンタ1の動作が停止するタイミングを利用して、公転歯車26に潤滑剤を塗布することができる。
その結果、別途、公転歯車26に潤滑剤を塗布する操作を設けることなく、定期的に、公転歯車26に潤滑剤を塗布することができる。
4.第1変形例
上記した実施形態では、公転歯車26の歯数と加熱ローラ駆動ギヤ27の歯数との関係、および、公転歯車26の歯数と固定歯車25の歯数との関係が、ともに、いずれか一方の歯数で他方の歯数を除したときに、いずれも商が非整数になる関係である。そのため、公転歯車26は、スポンジ28と接触した後、例えば、一周未満、正回転すればよい。
【0059】
しかし、公転歯車26の歯数と加熱ローラ駆動ギヤ27の歯数との関係、および、公転歯車26の歯数と固定歯車25の歯数との関係が、ともに、いずれか一方の歯数で他方の歯数を除したときに、いずれかの商が整数になる関係である場合には、公転歯車26を、スポンジ28に接触させた後、1周以上、正回転させる。
この場合、公転歯車26と加熱ローラ駆動ギヤ27とが噛合しているときには、公転歯車26は、加熱ローラ駆動ギヤ27に対して、常に同じ部分に噛合する。
【0060】
しかし、公転歯車26は、スポンジ28に接触した後、1周以上、正回転する。
そのため、公転歯車26の全周に塗布された潤滑剤を、加熱ローラ駆動ギヤ27の全周に、適度に行き渡らせることができる。
その結果、公転歯車26に潤滑剤を塗布しすぎることなく、公転歯車26および加熱ローラ駆動ギヤ27に対して、自動的、かつ、さらに適度に潤滑剤を塗布することができる。
【0061】
また、公転歯車26の歯数と固定歯車25の歯数との関係、または、公転歯車26の歯数と固定歯車25の歯数との関係のうち、いずれか一方の関係が、いずれか一方の歯数で他方の歯数を除したときに、いずれかの商が整数になる関係である場合にも、公転歯車26を、スポンジ28に接触させた後、1周以上、正回転させる。
この場合も、公転歯車26に潤滑剤を塗布しすぎることなく、公転歯車26および固定歯車25に対して、自動的、かつ、さらに適度に潤滑剤を塗布することができる。
5.第2変形例
図5は、公転歯車、固定歯車およびスポンジの左右方向長さを比較する比較図である。
【0062】
上記した実施形態では、左右方向におけるスポンジ28の長さW1は、左右方向における加熱ローラ駆動ギヤ27の長さt1よりも長く形成されている。
しかし、左右方向におけるスポンジ28の長さW1は、図5に示すように、左右方向における固定歯車25の長さt2よりも長く形成されていてもよい。
この場合、固定歯車25は、左右方向において、スポンジ28の範囲に含まれる。
【0063】
その結果、潤滑剤が塗布された公転歯車26は、噛合している固定歯車25の外周面全面にわたって、潤滑剤を塗布することができる。
6.第3変形例
図6は、第1変形例における定着器のギヤ部の概略側面図であって、(a)は、固定歯車が正回転した場合、(b)は、固定歯車が逆回転した場合を示す。なお、図6において、上記した実施形態と同様の部材には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
上記した実施形態では、スポンジ28は、右側面視矩形のシート形状に形成されているが、スポンジ31は、公転歯車26の円弧と逆方向に湾曲した円弧形状を有するシート形状に形成されていてもよい。
この場合、スポンジ31は、公転歯車26の円弧と逆方向に湾曲しているので、スポンジ31の端部が、公転歯車と干渉することを、より防止することができる。
【0065】
その結果、干渉によるスポンジ31の端部の剥がれを、より防止することができる。
7.第4変形例
また、上記した実施形態では、用紙Pが詰まったときに固定歯車25を逆回転させたが、任意に固定歯車25を逆回転させてもよい。
任意のタイミングで公転歯車26に潤滑剤を塗布するには、本体ケーシング2の図示しない操作パネルに専用のボタンを設けて、そのボタンの押圧により、固定歯車25を逆回転させるように構成する。
【0066】
この場合、公転歯車26を任意に逆回転させることができ、任意のタイミングで公転歯車26に潤滑剤を塗布することができる。
8.第5変形例
また、上記した実施形態では、プリンタ1はカラープリンタであったが、プリンタ1は、モノクロプリンタであってもよい。
【0067】
この場合にも、上記した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
9.第6変形例
また、上記した実施形態では、正回転を右側面視反時計回りとし、逆回転を右側面視時計回りとしたが、正回転を右側面視時計回りとし、逆回転を右側面視反時計回りとしてもよい。
【0068】
この場合にも、上記した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の画像形成装置の一例としてのプリンタの一実施形態を示す側断面図である。
【図2】定着器のギヤ部の概略側面図であって、(a)は、固定歯車が正回転した場合、(b)は、固定歯車が逆回転した場合を示す。
【図3】図2(b)における公転歯車とスポンジとの接触を示す拡大図である。
【図4】公転歯車、伝達歯車およびスポンジの左右方向長さを比較する比較図である。
【図5】公転歯車、固定歯車およびスポンジの左右方向長さを比較する比較図である。
【図6】第1変形例における定着器のギヤ部の概略側面図であって、(a)は、固定歯車が正回転した場合、(b)は、固定歯車が逆回転した場合を示す。
【符号の説明】
【0070】
1 プリンタ
21 収容部
25 固定歯車
26 公転歯車
27 加熱ローラ駆動ギヤ
28 スポンジ
31 スポンジ
P 用紙
T スポンジの厚み
W 左右方向におけるスポンジの長さ
l 公転歯車のギヤ歯の全歯たけ
t1 左右方向における加熱ローラ駆動ギヤの長さ
t2 左右方向における固定歯車の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定歯車と、
前記固定歯車と噛合しながら前記固定歯車の周りを公転する公転歯車と、
前記公転歯車の公転をガイドするガイド部材と、
前記公転歯車と噛合可能であり、前記公転歯車からの駆動力が伝達される伝達歯車と、
前記公転歯車に塗布するための潤滑剤が含浸され、前記公転歯車と接触可能である多孔質部材とを備え、
前記固定歯車は、正回転または逆回転することができ、
前記固定歯車が正回転すると、前記公転歯車は、前記多孔質部材から離間して前記伝達歯車に噛合し、
前記固定歯車が逆回転すると、前記公転歯車は、前記伝達歯車から離間して前記多孔質部材に接触することを特徴とする、画像形成装置。
【請求項2】
前記多孔質部材は、前記公転歯車の自転方向における長さを有し、
前記公転歯車は、前記多孔質部材の前記長さ方向の途中と接触することを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記公転歯車の軸方向における前記多孔質部材の長さは、前記公転歯車の軸方向における前記伝達歯車の長さ、および、前記公転歯車の軸方向における前記固定歯車の長さの少なくとも一方よりも長いことを特徴とする、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記多孔質部材は、前記公転歯車の自転方向における長さを有し、
前記多孔質部材の前記長さ方向と直交する方向の厚みは、前記公転歯車のギヤ歯の全歯たけよりも厚いことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ガイド部材は、前記固定歯車、前記公転歯車、前記伝達歯車および前記多孔質部材を収容するフレームであることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記公転歯車の歯数と前記伝達歯車の歯数との関係、または、前記公転歯車の歯数と前記固定歯車の歯数との関係のうち、少なくとも一方の関係が、いずれか一方の歯数で他方の歯数を除したときに、いずれも商が非整数になる関係であるときには、前記公転歯車は、前記多孔質部材に接触した後、1周未満、正回転することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記公転歯車の歯数と前記伝達歯車の歯数との関係、または、前記公転歯車の歯数と前記固定歯車の歯数との関係のうち、少なくとも一方の関係が、いずれか一方の歯数で他方の歯数を除したときに、いずれかの商が整数になる関係であるときには、前記公転歯車は、前記多孔質部材に接触した後、1周以上、正回転することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記固定歯車は、画像が形成される記録媒体が詰まったときに、逆回転することを特徴とする、請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記固定歯車は、任意に逆回転させることができることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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