説明

画像形成装置

【課題】長期間の使用によっても、ブラシ繊維が繰り返し同じスジ状傷をなぞることにより溝が深くなるスジ状傷による異常画像の発生を防止し、像担持体の長寿命化を可能とする画像形成装置を提供する。
【解決手段】トナー像転写後に像担持体表面に残留したトナーを除去するトナー帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加された第一のクリーニングブラシ71と、トナー帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加された第二のクリーニングブラシ72を備えた画像形成装置において、第一のクリーニングブラシと、第二のクリーニングブラシはブラシ基体71a,72aとブラシ繊維71b,72bを有し、該第一のクリーニングブラシと該第二のクリーニングブラシのいずれか、または両方のクリーニングブラシにおいて、該ブラシ繊維として、太さ、長さ、剛性から選ばれる少なくとも1つが異なる2種以上のブラシ繊維を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体表面に付着した不要なトナーを除去するクリーニング装置を備えた電子写真複写機、ファクシミリ、レーザープリンター等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の画像形成装置では、一般に、像担持体(以下感光体とも称す)上からトナー像を転写した後にその像担持体表面上に残留する不要なトナーをクリーニング装置によって除去する。このクリーニング装置としては、構成が簡単でかつクリーニング性能も優れていることから、クリーニングブレードにより掻き取るブレード方式のものが広く利用されている。ブレード方式は、構成が簡単でかつクリーニング性能も優れている。像担持体表面を機械的に摺擦する力が強いため、画像流れ(画像ボケ)が発生しにくいが、像担持体表面の摩耗や傷を防止することが大きな課題である。
【0003】
そこで、像担持体表面上のトナーを静電作用によりクリーニングする、磁気ブラシやファーブラシを用いた静電ブラシクリーニング方式が検討されている。
ブレードクリーニング方式に対し、静電ブラシクリーニング方式は、クリーニング維持性が高く、特に高速機において有利である。
【0004】
電子写真方式の画像形成装置は、一般に、転写工程において像担持体表面上に付着するトナーの極性(正規極性)とは逆極性のバイアスを印加して像担持体表面上のトナーを記録材等の被転写材上に転写する。そのため、転写後の像担持体表面上に残留した転写残トナーの中には、正規極性のままの正規極性トナーと、正規極性とは逆極性に帯電した逆帯電トナーとが存在する。よって、静電クリーニング方式を採用する場合、両極性のトナーを静電的に回収できる構成が有効である。
このため、1個のクリーニングブラシに正の電圧を印加した領域と負の電圧を印加した領域を設けてクリーニングするクリーニング装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、像担持体表面上に付着するトナーの極性を揃え、そのトナーを互いに異なる位置に配置される導電性起毛と絶縁性起毛を有する1本のクリーニングブラシでクリーニングするクリーニング装置が開示されている(特許文献2参照)。
また、特許文献3では、繊維長の異なる複数の種類のパイルがほぼ均一に静電植毛されているブラシローラを、クリーニングローラ、トナー供給ローラ、又は潤滑剤供給ローラ等として利用することが開示されている。繊維長の異なる複数のパイルを均一に静電植毛することにより、毛倒れが生じにくく耐久性を向上させたものであり、像担持体のクリーニングローラとして用いる場合は、1個のクリーニングブラシを用いている。
【0005】
しかし、近年の画像形成装置では写真画像等の高密度画像が連続して出力されるケースが増えており、このような1個のクリーニングブラシで長期にわたり安定したクリーニングを続けることは難しい。
このため、像担持体表面の負に帯電したトナーを静電的に吸引するため正電荷が印加された第一のクリーニングブラシと、像担持体表面の正に帯電したトナーを静電的に吸引するため負電荷が印加された第二のクリーニングブラシとを備えたクリーニング装置が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
このように、トナー帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加された第一のクリーニングブラシと、トナー帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加された第二のクリーニングブラシを配置した構成により、像担持体表面上に残留する不要なトナーを充分に除去することができる。
従って、クリーニングブラシが1個のみであったり、クリーニングブラシが2個以上であったとしてもいずれのクリーニングブラシも一方の極性のバイアス電圧しか印加されないならば、像担持体表面に残留する不要なトナーのうち、いずれか一方の極性を有するトナーは、実質的に除去することできず画質の劣化を招くが、トナー帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加された第一のクリーニングブラシと、トナー帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加された第二のクリーニングブラシを配置した構成であれば像担持体表面上に残留する不要なトナーを充分に除去することができる。
【0007】
しかし、トナー帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加された第一のクリーニングブラシと、トナー帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加された第二のクリーニングブラシを配置した構成の静電ブラシクリーニング方式においても、ブレードクリーニング方式と比較して像担持体表面の機械的掻き取り力が低く、帯電器から生じる放電生成物を充分に除去できないことによる画像流れ(画像ボケ)が発生しやすいという課題がある。
また、ブラシクリーニング方式は、一度クリーニング対象物(本発明の場合像担持体)に傷がつくとブラシ繊維がその傷を繰り返しなぞる傾向があることが確認されている。これにより像担持体の傷はスジ状の深い溝となり、ハーフトーン画像の白スジ異常画像が発生しやすくなるという課題がある。
【0008】
これらの課題に対して、2個のクリーニングブラシのうち感光体回転方向上流側に位置するクリーニングブラシのブラシ繊維1本あたりの先端力が、感光体回転方向下流側に位置するクリーニングブラシのブラシ繊維1本あたりの先端力よりも大きい先端力で前記感光体に接触するように2個のクリーニングブラシを配置する画像形成装置が開示されている(特許文献5参照)。
また、像担持体の回転方向に沿って2個のクリーニングブラシが配置され、トナーが樹脂粒子中に無機微粒子を分散含有させた複合粒子を含むことを特徴とする画像形成方法が開示されている(特許文献6参照)。
また、2個のクリーニングブラシのうち像担持体回転方向下流側に位置するクリーニングブラシ(ブラシ2)が、像担持体回転方向上流側に位置するクリーニングブラシ(ブラシ1)よりも剛性の高い材料を用い、このブラシ2における機械的掻き取り力をブラシ1における機械的掻き取り力よりも強くしたことを特徴とする画像形成装置が開示されている(特許文献7参照)。
上記文献5〜7により、課題の1つである画像流れは解決されたが、画像ブラシ繊維による像担持体の深いスジ状の傷の発生が抑制されず、ハーフトーン画像の白スジ異常画像が発生しやすくなるという課題は今だ解決されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は長期間の使用によっても、ブラシ繊維が繰り返し同じスジ状傷をなぞることにより溝が深くなるスジ状傷による異常画像の発生を防止し、像担持体の長寿命化を可能とする画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。
(1)トナー像転写後に像担持体表面に残留したトナーを除去するトナー帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加された第一のクリーニングブラシと、
トナー帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加された第二のクリーニングブラシを備えた画像形成装置において、
第一のクリーニングブラシと、第二のクリーニングブラシはブラシ基体とブラシ繊維を有し、
該第一のクリーニングブラシと該第二のクリーニングブラシのいずれか、または両方のクリーニングブラシにおいて、
該ブラシ繊維として、太さ、長さ、剛性から選ばれる少なくとも1つが異なる2種以上のブラシ繊維を有することを特徴とする画像形成装置。
(2)前記第一と第二のクリーニングブラシが回転可能であり、前記2種以上のブラシ繊維がクリーニングブラシの回転方向に対して不均一に存在していることを特徴とする前記(1)記載の画像形成装置。
(3)前記第一と第二のクリーニングブラシが基布に前記ブラシ繊維を植毛したブラシ体を前記ブラシ基体に固定したものであって、
少なくとも、第一のブラシ繊維を有する帯状のブラシ体と、
該第一のブラシ繊維とは太さ、長さ、剛性から選ばれる少なくとも1つが異なる第二のブラシ繊維を有する帯状のブラシ体を、
該ブラシ基体に螺旋状に巻き付け固定したことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の画像形成装置は、第一のクリーニングブラシと第二のクリーニングブラシのいずれか、または両方のクリーニングブラシにおいて、該ブラシ繊維として、太さ、長さ、剛性から選ばれる少なくとも1つが異なる2種以上のブラシ繊維を有することにより、それらのブラシ繊維のなぞることができる傷が異なるため、像担持体上のスジ状傷の成長を抑制することができる。また、前記第一と第二のクリーニングブラシが回転可能であり、前記2種以上のブラシ繊維がクリーニングブラシの回転方向に対して不均一に存在することにより、同じ傷をなぞる確率が低くなる。この結果、深さ3μm以上のスジ状傷が原因となって発生するハーフトーン画像の白スジ画像を抑制することができる。さらに、像担持体がスジ状摩耗ではなくほぼ均一に磨耗するため、像担持体の寿命が長くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の画像形成装置の一例の概略図である。
【図2】本発明の画像形成装置の静電ブラシクリーニング装置と周囲の構成とを示す拡大構成図である。
【図3】ループ状ブラシ体例の概略図である。
【図4】直毛状ブラシ体例の概略図である。
【図5】帯状のブラシ体をブラシ基体に巻きつけることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の画像形成装置は、トナー像転写後に像担持体表面に残留したトナーを除去するトナー帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加された第一のクリーニングブラシと、トナー帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加された第二のクリーニングブラシを備え、第一のクリーニングブラシと、第二のクリーニングブラシはブラシ基体とブラシ繊維を有し、
該第一のクリーニングブラシと該第二のクリーニングブラシのいずれか、または両方のクリーニングブラシにおいて、該ブラシ繊維として、太さ、長さ、剛性から選ばれる少なくとも1つが異なる2種以上のブラシ繊維を有する。
【0014】
トナー帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加された第一のクリーニングブラシと、トナー帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加された第二のクリーニングブラシを配置した構成により、転写後の像担持体表面上に残留した転写残トナー中の、正規極性のままの正規極性トナーと、正規極性とは逆極性に帯電した逆帯電トナーの両方を高速に除去することができる。
トナー帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加された第一のクリーニングブラシと、トナー帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加された第二のクリーニングブラシを配置した構成を満足していれば、さらに第三、第四のクリーニングブラシを追加することができる。この場合、追加されたクリーニングブラシのバイアス電圧の極性はどちらでも良い。
【0015】
図1は本発明の構成を有する画像形成装置の一例を示す。
感光体1はメインモータにより回転駆動されて帯電器2により均一に帯電された後に書き込み装置3により画像露光を受けて静電潜像が形成され、この静電潜像が現像器4で現像されてトナー像となる。この現像器4は現像バイアス電源から現像バイアスが印加され、小粒径のトナーにより感光体1上の静電潜像を現像する。感光体1上のトナー像は給紙装置から送られてきた転写紙へ転写チャージャ5により転写され、この転写紙は分離チャージャ6により感光体1から分離されて定着器によりトナー像が定着される。また、感光体1は転写紙分離後に静電ブラシクリーニング装置7により残留トナーが除去され、除電器8により除電されて再使用可能となる。静電ブラシクリーニング装置7は、2個のクリーニングブラシとして、第一のクリーニングブラシ71及び第二のクリーニングブラシ72を備えている。クリーニング時には、図示しない電源(印加手段)によって第一のクリーニングブラシにはトナー帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加され、第二のクリーニングブラシにはトナー帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加される。図1においては第一のクリーニングブラシが第二のクリーニングブラシよりも感光体回転方向上流側に配置されているが、第二のクリーニングブラシを第一のクリーニングブラシよりも上流側に配置しても良い。
【0016】
図2は、静電ブラシクリーニング装置7と周囲構成とを示す拡大構成図である。同図において、静電ブラシクリーニング装置7は、第一のクリーニングブラシ71及び第二のクリーニングブラシ72を備えている。また、2個のクリーニングブラシそれぞれに当接する第一の回収ローラ73及び第二の回収ローラ74を備え、それぞれ設けられた図示しない電源(印加手段)によって電圧が印加される。また、各回収ローラに当接する第一のスクレーパ75及び第二のスクレーパ76を備え、さらに図示しない搬送コイル等を備えている。
【0017】
第一のクリーニングブラシ71及び第二クリーニングブラシ72は、感光体1の軸線方向と平行な姿勢で延在する第一のブラシ基体71a及び第二のブラシ基体72aと、これの周面に植毛された無数の第一のブラシ繊維71b及び第二のブラシ繊維72bからなる。そして、図示しない軸受(保持手段)によって、回転しながらブラシの先端を感光体1に摺擦せしめることと、ブラシ繊維が保持する電荷の静電的な作用で、転写残トナーを感光体1表面上から掻き取りながら、ブラシ表面に転位させる。よって、第一のクリーニングブラシ71及び第二のクリーニングブラシ72は、感光体1表面に付着しているトナーを自らの表面に転位させて、感光体1表面からトナーを除去するクリーニング部材として機能している。
【0018】
第一の回収ローラ73及び第二の回収ローラ74は、そのローラ基材がステンレスなどの金属、あるいは導電性に優れた樹脂材料からなる。そして、ローラ部の両端面からそれぞれ突出している軸部材がケーシングに設けられた図示しない軸受に受けられることで、第一のクリーニングブラシ71及び第二のクリーニングブラシ72にそれぞれ接触するようになっている。
【0019】
第一の回収ローラ73及び第二の回収ローラ74の下方にそれぞれ配設された第一のスクレーパ75及び第二のスクレーパ76は、その一端側が片持ち支持され、且つ自由端側を第一の回収ローラ73及び第二の回収ローラ74に突き当てている。
第一のクリーニングブラシ71に到達した転写残トナーのうち、正規極性トナーは、第一クリーニングブラシ71の回転の摺擦と、第一のブラシ繊維71bが保持するトナーの極性とは逆極性の電荷の静電的な作用とにより、感光体1表面上から除去され、第一のブラシ繊維71bに転移する。
【0020】
一方、第一のクリーニングブラシ71に到達した転写残トナーのうち、正規極性とは逆極性に帯電した逆帯電トナーは、第一のクリーニングブラシ71で除去されず、第二のクリーニングブラシ72に到達する。
第二のクリーニングブラシ72に到達した逆帯電トナーは、第二のクリーニングブラシ72の回転の摺擦と、第二のブラシ繊維72bが保持するトナーの極性とは逆極性の電荷の静電的な作用とにより、感光体1表面上から除去され、第二のブラシ繊維72bに転移する。
【0021】
ここで、第一のクリーニングブラシと第二のクリーニングブラシのいずれか、または両方が、少なくとも2種以上の異なる太さのブラシ繊維を有することにより、繊維の太さによりなぞることができる傷が異なるため、スジ状傷の成長を抑制することができる。また、前記第一と第二のクリーニングブラシが回転可能であり、前記2種以上のブラシ繊維がクリーニングブラシの回転方向に対して不均一に存在することにより、同じ傷をなぞる確率が低くなる。この結果、深さ3μm以上のスジ状傷が原因となって発生するハーフトーン画像の白スジ画像を抑制することができる。さらに、像担持体がスジ状摩耗ではなくほぼ均一に磨耗するため、像担持体の寿命が長くなる。
2種以上の異なる太さのブラシ繊維を有する場合、最も太い繊維の太さは4〜9デシテックス、最も細い繊維の太さは0.5〜6デシテックスが好ましい。
【0022】
また、第一のクリーニングブラシと第二のクリーニングブラシのいずれか、または両方が、少なくとも2種以上の異なる長さのブラシ繊維を有することにより、直毛状の場合、短い繊維は先端のエッジ部分が像担持体と接触し傷を成長させる可能性がある。このため、短い繊維のみの場合、傷を深い溝に成長させてしまう。長い繊維は中ほどの腹の部分が像担持体と接触するため傷に入り込まない。このため、長い繊維が短い繊維と同じ傷の部分をなぞっても傷を成長させない。また、長い繊維は短い繊維でできた溝の角を欠けさせる。このため、像担持体がスジ状摩耗ではなくほぼ均一に磨耗し、深さ3μm以上のスジ状傷が原因となって発生するハーフトーン画像の白スジ画像を抑制することができる。長い繊維のみの場合、傷を成長させないが掻き取り力が不十分であり、画像流れが発生する。ループ状の場合、短いループは掻き取り力が強く傷を成長させる可能性が高い。このため、短いループのみの場合、深さ3μm以上のスジ状傷が原因となって発生するハーフトーン画像の白スジ画像が発生する。長いループは掻き取り力が弱く、傷を成長させたとしても短いループより遅くなる。長いループのみの場合、傷の成長は著しく遅くなるが掻き取り力が不十分であり、画像流れが発生する。
2種以上の異なる長さのブラシ繊維を有する場合、最も長い繊維の長さは4〜10mm、最も短い繊維の長さは2〜8mmが好ましい。
また、像担自体に最も短いブラシ繊維が少なくとも1mm以上接するように配置することが好ましい。
【0023】
また、第一のクリーニングブラシと第二のクリーニングブラシのいずれか、または両方が、少なくとも2種以上の異なる剛性のブラシ繊維を有することにより、繊維1本あたりの掻き取り力が異なるため、短いループと長いループを用いた場合と同じ作用をする。剛性の高い繊維はヤング率の高いブラシ繊維を選択し、剛性の低い繊維はヤング率の低い繊維を選択することで、剛性の異なる2種類以上のブラシ繊維を用いることができる。
2種以上の異なる剛性のブラシ繊維を有する場合、最も剛性が高い繊維のヤング率は1000〜20000N/mm、最も剛性の低い繊維のヤング率は100〜2000N/mmが好ましい。
【0024】
さらに、前記第一のクリーニングブラシと第二のクリーニングブラシが回転可能であり、前記2種以上のブラシ繊維が回転方向に対して不均一に存在していることが好ましく、特に、剛性の低いブラシ繊維の長さが長く、剛性の高いブラシ繊維の長さが短い繊維が回転方向に不均一に存在している場合、スジ状傷の成長をより抑制することができる。
本発明において2種以上のブラシ繊維がクリーニングブラシの回転方向に対して不均一に存在しているとは、回転方向において、異種のブラシ繊維のそれぞれの領域が境界を以て接している状態を言う。
また、クリーニングブラシが1回転する際の異なるブラシ繊維の感光体への接触割合は任意に設定できるが、30:70〜70:30が好ましい。
【0025】
ブラシ繊維は、例えば、6,66,12等のナイロン繊維、ポリビニルアルコール繊維、塩化ビニル繊維、塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ポリプロピレン繊維、各種ポリエチレン繊維、PTFE,FEP,PFA,ETFE等のフッ素樹脂繊維、PEN,PET等のポリエステル繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維等の合成繊維、レーヨン系繊維やキュプラ繊維等の再生繊維、アセテート繊維、さらに、絹や羊毛の動物繊維、綿や麻等の植物繊維などが用いられる。より好ましくは、アクリル系繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維である。これらを用いることにより、繊維の太さ、長さ、剛性の制御が簡便になるばかりでなく、安価で耐久性にも優れたクリーニングブラシを得ることができる。
【0026】
本発明のクリーニングブラシの製法は、例えば、合成樹脂等からなる基布にブラシ繊維を植毛したブラシ体をシャフト等の基体に固定する。植毛方法は、織り込み、静電植毛等が例示できるが、これに限定されない。織り込みの場合、繊維先端はループ状でも直毛状でも良い(図3と図4)。
上記ブラシ体と基体とを両面接着テープや接着剤等により接着固定し、基体に合わせてブラシ体の端部を切断することにより、クリーニングブラシが得られる。固定方法は接着に限らず基布の一部を溶解させてシャフトに固定(溶着)するなど、なんでも良い。
【0027】
具体的には、例えば(図5)、第一の繊維径からなるブラシ繊維を有するブラシ体104と、第一の繊維径よりも太い第二の繊維径からなるブラシ繊維を有するブラシ体103を用意する。それぞれ帯状にカットし、ブラシ体104とブラシ体103を組み合わせてシャフト等の基体に螺旋状に隙間無く巻き付け固定する。
あるいは、繊維径の異なるブラシ繊維Cとブラシ繊維Dを用意し、交互に基布に編みこみ、ブラシ体Cを得る。これを帯状にカットし、シャフト等の基体に螺旋状に隙間無く巻き付け固定する。
また、直接シャフトに2種以上の異なるブラシ繊維を静電植毛してもよい。この場合、例えば、繊維径の異なるブラシ繊維Eとブラシ繊維Fを用意し、接着層を設けたシャフトに静電植毛する。
前記シャフト等の基体に螺旋状に巻きつける帯状のブラシ体としては、幅が2〜30mmであることが好ましい。
【実施例】
【0028】
(電子写真感光体の作製)
導電性支持体として、外径30mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、および電荷輸送層用塗工液を、浸漬塗布によって順次塗布、乾燥し、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、22μmの電荷輸送層を形成した。
【0029】
[下引き層用塗工液の組成]
・アルキッド樹脂 6質量部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
・メラミン樹脂 4質量部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
・酸化チタン 40質量部
(CR−EL:石原産業)
・メチルエチルケトン 50質量部
【0030】
[電荷発生層用塗工液の組成]
下記処方において、ビスアゾ顔料とメチルエチルケトンの固形分10%溶液をジルコニアボールで10日間ボールミル分散した。この顔料分散液を、残りの材料を混合溶解した溶液に加え、よく攪拌した後、1000メッシュのステンレスメッシュでろ過し、塗工液を作製した。
・下記構造のビスアゾ顔料
【化1】

・ポリビニルブチラール(XYHL、UCC製) 0.5質量部
・シクロヘキサノン 200質量部
・メチルエチルケトン 80質量部
【0031】
[電荷輸送層用塗工液の組成]
・ビスフェノールZポリカーボネート 10質量部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
・下記構造式の低分子電荷輸送物質 7質量部
【化2】

・テトラヒドロフラン 100質量部
・1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 1質量部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
【0032】
(クリーニングブラシの作製)
織り込み法にて、下記繊維からなるループ状ブラシ体を作製した。
ブラシ体1:
繊維太さ6デシテックス、繊維長4mm、ヤング率5000N/mm、ナイロン製
ブラシ体2:
繊維太さ2デシテックス、繊維長4mm、ヤング率5000N/mm、アクリル製
ブラシ体3:
繊維太さ3デシテックス、繊維長6mm、ヤング率5000N/mm、ポリエステル製
ブラシ体4:
繊維太さ3デシテックス、繊維長3mm、ヤング率5000N/mm、ポリエステル製
ブラシ体5:
繊維太さ3デシテックス、繊維長4mm、ヤング率9000N/mm、アクリル製
ブラシ体6:
繊維太さ3デシテックス、繊維長4mm、ヤング率1000N/mm、ナイロン製
ブラシ体7:
繊維太さ3デシテックス、繊維長3mm、ヤング率9000N/mm、アクリル製
ブラシ体8:
繊維太さ3デシテックス、繊維長6mm、ヤング率1000N/mm、ナイロン製
ブラシ体9:
繊維太さ3デシテックス、繊維長4mm、ヤング率5000N/mm、ポリエステル製
【0033】
クリーニングブラシA:
幅10mmの帯状にカットしたブラシ体1とブラシ体2を組み合わせ、φ5mmの真鍮製ロッド棒に図5のごとく巻き付け接着剤を用いて貼り付けて固定し、クリーニングブラシAを作製した。
【0034】
クリーニングブラシB:
幅10mmの帯状にカットしたブラシ体3とブラシ体4を組み合わせ、φ5mmの真鍮製ロッド棒に図5のごとく巻き付け接着剤を用いて貼り付けて固定し、クリーニングブラシBを作製した。
【0035】
クリーニングブラシC:
幅10mmの帯状にカットしたブラシ体5とブラシ体6を組み合わせ、φ5mmの真鍮製ロッド棒に図5のごとく巻き付け接着剤を用いて貼り付けて固定し、クリーニングブラシCを作製した。
【0036】
クリーニングブラシD:
幅10mmの帯状にカットしたブラシ体7とブラシ体8を組み合わせ、φ5mmの真鍮製ロッド棒に図5のごとく巻き付け接着剤を用いて貼り付けて固定し、クリーニングブラシDを作製した。
【0037】
クリーニングブラシE:
幅10mmの帯状にカットしたブラシ体9を、φ5mmの真鍮製ロッド棒に巻き付け接着剤を用いて貼り付けて固定し、クリーニングブラシEを作製した。
【0038】
クリーニングブラシF:
幅10mmの帯状にカットしたブラシ体8を、φ5mmの真鍮製ロッド棒に巻き付け接着剤を用いて貼り付けて固定し、クリーニングブラシFを作製した。
【0039】
(実施例1)
リコー製IPSiO color 8200改造機に、感光体と、第一のクリーニングブラシとして「クリーニングブラシA」、第二のクリーニングブラシとして「クリーニングブラシA」を、第一のクリーニングブラシが感光体の回転方向に対し上流側になるようにセットし、10万枚連続通紙を行った後、画像品質を評価した。
【0040】
(実施例2〜4と、比較例1〜2)
第一のクリーニングブラシと第二のクリーニングブラシを表1に示すように組み合わせてセットした以外は、実施例1と同様に評価をおこなった。
【0041】
【表1】

【0042】
画像品質評価は、作像環境22℃〜24℃/52%〜58%RHにてハーフトーン画像の濃ムラ評価をおこない、ついで29℃〜31℃/87%〜93%RHにて画像流れ評価をおこなった。
評価結果を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
実施例1については、クリーニングブラシが2種の異なる太さのブラシ繊維を有することにより、繊維の太さによりなぞることができる感光体の傷が異なるため、スジ状傷の成長を抑制することができ、ハーフトーン画像の白スジ画像を抑制することができた。
実施例2については、クリーニングブラシが2種の異なる長さのブラシ繊維を有することにより、長い繊維は短い繊維でできた感光体のスジ傷の溝の角を欠けさせることができ、深い溝状のスジ状傷が原因となって発生するハーフトーン画像の白スジ画像を抑制することができた。
実施例3については、クリーニングブラシが2種の異なる剛性のブラシ繊維を有することにより、帯電器から生じる感光体上の放電生成物を充分に除去でき、かつ、感光体の深い溝状のスジ状傷の成長を抑制できるため、ハーフトーン画像の白スジ画像を抑制することができた。
実施例1〜3については、ハーフトーン画像の濃度ムラがわずかに発生したが、画質的には全く問題の無いレベルである。画像流れについては発生しなかった。
【0045】
実施例4については、クリーニングブラシが、剛性が低く繊維長が長いブラシ繊維と、剛性が高く繊維長さが短いブラシ繊維が回転方向に不均一に存在しているため、感光体のスジ状傷の成長をより抑制することができ、ハーフトーン画像の白スジ画像をより抑制することができた。
実施例4については、ハーフトーン画像の濃度ムラと画像流れのいずれについても、発生しなかった。
【0046】
実施例5と実施例6については、1個のクリーニングブラシが2種の異なる太さのブラシ繊維を有することにより、繊維の太さによりなぞることができる感光体の傷が異なるためスジ状傷の成長を抑制することができたが、もう1個のクリーニングブラシが1種のブラシ繊維からなるため、実施例1と比較すると効果が弱い。1種のブラシ繊維からなるクリーニングブラシの繊維の太さや長さや剛性により、さらに長期使用した場合にハーフトーン画像の濃度ムラか、画像流れに影響することが懸念されるが、従来技術(比較例)より改善されている。
実施例5については、ハーフトーン画像にスジ状の濃度ムラがやや発生したが、画質的には問題の無いレベルである。画像流れについては発生しなかった。
実施例6については、ハーフトーン画像の濃度ムラがわずかに発生したが、画質的には全く問題の無いレベルである。画像流れについてはわずかに発生したが、画像的には問題の無いレベルである。
【0047】
比較例1については、帯電器から生じる放電生成物を充分に除去できる1種のブラシ繊維からなる2個のクリーニングブラシにより、画像ボケの発生はないが、ブラシ繊維が同じ傷を何度もなぞるため、ハーフトーン画像に白スジ状の濃度ムラが現れた。
比較例2については、感光体の傷を成長させにくい1種のブラシ繊維からなる2個のクリーニングブラシを用いることで、比較例1と比較して感光体の深い溝状のスジ状傷の成長は抑制できているが、1種の繊維により、一度傷がつくと繰り返しなぞる現象は抑制されていないため、本発明のクリーニングブラシよりハーフトーン画像の濃度ムラが発生したが、画質的には問題の無いレベルである。また、帯電器から生じる放電生成物を充分に除去できないため、画像流れが発生した。
比較例3については、帯電器から生じる放電生成物を充分に除去できる1種のブラシ繊維からなる第一のクリーニングブラシと、感光体の傷を成長させにくい1種のブラシ繊維からなる第二のクリーニングブラシを用いても、それぞれが1種のブラシ繊維で構成されるため、一度傷がつくと繰り返しなぞる現象は抑制されていない。したがって、第一のクリーニングブラシと第二のクリーニングブラシがなぞる傷はそれぞれ別の傷である確率は高くなるが、第一のクリーニングブラシは同じ傷を繰り返しなぞってしまう。第二のクリーニングブラシも同様である。このため、スジ状の傷の成長は抑制できず、ハーフトーン画像に白スジ状の濃度ムラが現れた。また、帯電器から生じる放電生成物を充分に除去できないため、比較例2と比較して画像流れが発生しやすくなった。画像流れについてはわずかに発生したが、画像的には問題の無いレベルである。
【符号の説明】
【0048】
1:感光体
2:帯電器
3:光書き込み装置
4:現像器
5:転写チャージャ
6:分離チャージャ
7:静電クリーニング装置
8:除電器
71:第一のクリーニングブラシ
71a:第一のブラシ基体
71b:第一のブラシ繊維
72:第二のクリーニングブラシ
72a:第二のブラシ基体
72b:第二のブラシ繊維
73:第一の回収ローラー
74:第二の回収ローラー
75:第一のスクレーパー
76:第二のスクレーパー
100:基布
101:ループ状繊維
102:直毛状繊維
103:ブラシ体A
104:ブラシ体B
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】特開昭60−128481号公報
【特許文献2】特開2008−309822号公報
【特許文献3】特開2008−122484号公報
【特許文献4】特開平4−330482号公報
【特許文献5】特開2005−17416号公報
【特許文献6】特開2006−251400号公報
【特許文献7】特開2009−36956号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像転写後に像担持体表面に残留したトナーを除去するトナー帯電極性と逆極性のバイアス電圧が印加された第一のクリーニングブラシと、
トナー帯電極性と同極性のバイアス電圧が印加された第二のクリーニングブラシを備えた画像形成装置において、
第一のクリーニングブラシと、第二のクリーニングブラシはブラシ基体とブラシ繊維を有し、
該第一のクリーニングブラシと該第二のクリーニングブラシのいずれか、または両方のクリーニングブラシにおいて、
該ブラシ繊維として、太さ、長さ、剛性から選ばれる少なくとも1つが異なる2種以上のブラシ繊維を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第一と第二のクリーニングブラシが回転可能であり、前記2種以上のブラシ繊維がクリーニングブラシの回転方向に対して不均一に存在していることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第一と第二のクリーニングブラシが基布に前記ブラシ繊維を植毛したブラシ体を前記ブラシ基体に固定したものであって、
少なくとも、
第一のブラシ繊維を有する帯状のブラシ体と、
該第一のブラシ繊維とは太さ、長さ、剛性から選ばれる少なくとも1つが異なる第二のブラシ繊維を有する帯状のブラシ体を、
該ブラシ基体に螺旋状に巻き付け固定したことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−28012(P2011−28012A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173875(P2009−173875)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】