説明

画像形成装置

【課題】閉じたときに手差し用給紙口を塞ぐカバーとして機能し、開いたときに長距離にわたって被記録媒体を搬送方向へ案内可能なカバー部材を備えた画像形成装置の提供。
【解決手段】カバー部材21は、一方向についての寸法が、一方向に直交する方向の寸法よりも長い部材からなる。カバー部材21が閉じられた際には、手差し用給紙口12の長手方向に沿って延びる方向と前記一方向が一致する位置へと移動することで、手差し用給紙口12を覆う状態になる(図1(a)参照)。一方、カバー部材21が開かれた際には、手差し用給紙口12への被記録媒体の差し込み方向と前記一方向が一致する位置へと移動することで、前記一方向に沿って被記録媒体を手差し用給紙口12へと案内可能なガイド部として機能する状態になる(図1(b)参照)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装置本体に内蔵される給紙カセットとは別に、手差し用の給紙口を備えた画像形成装置は既に提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この画像形成装置の場合、手差し用給紙口はプリンタ装置の正面(前面)に設けられ、その手差し用給紙口には、給紙口下端側にある水平な軸線を回転中心にして開閉可能なトレイ(特許文献1:図1〜図10中の符号(30)参照。)が設けられている。
【0003】
このようなトレイを利用すれば、手差し用給紙口を使用して給紙を行う際に、トレイで被記録媒体の背面を支持することができるので、このようなトレイが設けられていない場合に比べ、被記録媒体を装置内へスムーズに導入することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−297054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のトレイは、給紙口(開口)を塞ぐカバーとしての役割も兼ね備えていることから、トレイとして機能させる場合、その被記録媒体搬送方向の長さを、給紙口の高さ方向寸法と同程度にせざるを得ず、さらに長くすることは難しい。
【0006】
そのため、このようなトレイでは、被記録媒体の側端を搬送方向へと案内するガイドとして機能させようとしても、案内可能な距離を十分に長くすることができないので、被記録媒体の斜行を精度良く矯正することは困難であった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、閉じたときには手差し用給紙口を塞ぐカバーとして機能する一方、開いたときには従来よりも長距離にわたって被記録媒体を手差し用給紙口に対する搬送方向へ案内可能なカバー部材を備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
本発明の画像形成装置は、被記録媒体に対して画像を形成する画像形成手段と、手差し用給紙口に差し込まれた被記録媒体を、前記手差し用給紙口から前記画像形成手段へと搬送する際に利用される搬送経路と、開閉可能な構造になっていて、閉じられた際には前記手差し用給紙口を覆うカバー部材とを備えており、前記カバー部材は、一方向についての寸法が、前記一方向に直交する方向の寸法よりも長い部材からなり、閉じられた際には、前記手差し用給紙口に沿って延びる方向と前記一方向が一致する位置へと移動することで、前記手差し用給紙口を覆う状態になる一方、開かれた際には、前記手差し用給紙口への被記録媒体の差し込み方向と前記一方向が一致する位置へと移動することで、前記一方向に沿って前記被記録媒体を前記手差し用給紙口へと案内可能なガイド部として機能する状態になることを特徴とする。
【0009】
このように構成された画像形成装置によれば、手差し用給紙口を覆うカバー部材を開くことにより、被記録媒体を手差し用給紙口へと案内するガイド部として利用することができる。しかも、カバー部材を開いた際には、カバー部材の長手方向が被記録媒体の差し込み方向と一致するので、被記録媒体を案内可能な距離を十分に確保できる。
【0010】
したがって、被記録媒体の斜行を防止または抑制することができ、ひいては被記録媒体の斜行に起因する紙詰まりの発生や被記録媒体における皺の発生などを抑制できる。また、利用者が手差し用給紙口からの給紙作業を行う際に、ガイド部により被記録媒体を真っ直ぐに差し込むことが容易になるので、被記録媒体を案内可能な距離が短い場合に比べ、差し込み方向の微妙な調整が不要となり、給紙作業をスムーズに実施することができる。
【0011】
ところで、本発明の画像形成装置において、前記カバー部材は、閉じられた際に前記手差し用給紙口の一部を覆う第一カバー部材と、閉じられた際に前記手差し用給紙口の残りの一部を覆う第二カバー部材によって構成されていて、開かれた際には、前記被記録媒体の両端のうち、いずれか一方の端部に前記第一カバー部材が当接するとともに、他方の端部に前記第二カバー部材が当接して、前記被記録媒体を前記手差し用給紙口へと案内可能な状態になるものであると好ましい。
【0012】
このように構成された画像形成装置によれば、カバー部材が二つの部材から構成されることで、開いたときには、被記録媒体の両端をガイドすることができるので、手差し用給紙口に差し込まれる被記録媒体を、より正確に真っ直ぐに差し込むことができ、斜行を防止または抑制する効果を高めることができる。
【0013】
また、本発明の画像形成装置において、前記カバー部材は、閉じられた際に、前記手差し用給紙口への被記録媒体の差し込み方向から見て、前記第一カバー部材の一部と前記第二カバー部材の一部が重なる状態になるものであると好ましい。
【0014】
このように構成された画像形成装置によれば、カバー部材が閉じられると、第一カバー部材の一部と第二カバー部材の一部が重なる状態になるので、手差し用給紙口への被記録媒体の差し込み方向から見て、第一カバー部材と第二カバー部材との間には空隙ができなくなる。
【0015】
したがって、そのような空隙ができるものに比べ、装置内部へ塵埃が入り込むのを防止または抑制する効果が高く、また、装置内部から発生する音が装置外へ漏れるのを防止または抑制する効果も高くなる。
【0016】
また、本発明の画像形成装置において、前記カバー部材は、開かれた際に、前記第一カバー部材および前記第二カバー部材が、前記手差し用給紙口の長手方向へ変位可能な構造となっており、前記第一カバー部材および前記第二カバー部材のうち、いずれか一方を前記手差し用給紙口の長手方向へ変位させた際に、その変位方向とは逆方向へ他方を変位させる連動機構が設けられることにより、前記第一カバー部材および前記第二カバー部材は、互いに接近する方向または互いに離間する方向へ連動して変位する構造になっていると好ましい。
【0017】
このように構成された画像形成装置によれば、第一カバー部材および第二カバー部材が、互いに接近する方向または互いに離間する方向へ連動して変位するので、手差し給紙を行う被記録媒体のサイズ(幅)に応じて、被記録媒体の両端をガイド可能な位置へ第一カバー部材および第二カバー部材を変位させることができる。したがって、いわゆるセンターレジで画像を形成する際に、被記録媒体の位置を簡単かつ確実に最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)はカバー部材が閉じられた状態にある画像形成装置の外観を示す斜視図、(b)はカバー部材が開かれた状態にある画像形成装置の外観を示す斜視図、(c)は画像形成装置の内部構造を示す縦断面図。
【図2】カバー部材付近の構造を示す図であり、(a)はその上面図、(b)はその正面図、(c)はその側面図、(d)はその底面図、(e)はその一部を拡大した上面図。
【図3】カバー部材の動きを示した説明図。
【図4】第一カバー部材の第一ガイド軸と第一ガイド溝との関係、および第二ガイド軸と第二ガイド溝との関係を示す図であり、(a)は各ガイド軸が各ガイド溝に嵌め込まれた状態を示す斜視図、(b)は各ガイド軸が各ガイド溝から外された分解状態を示す斜視図。
【図5】各ガイド軸が各ガイド溝内で移動する様子を示した説明図。
【図6】別形態のカバー部材を示す説明図。
【図7】別形態の連動機構を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。
[画像形成装置の構造]
本実施形態の画像形成装置1は、被記録媒体上に電子写真方式で画像を形成する装置で、図1(c)に示すように、第一給紙部3、第二給紙部5、画像形成部7、排紙部9などを備えている。
【0020】
これらのうち、第一給紙部3では、給紙カセット11に収納された被記録媒体が、給紙カセット11から画像形成部7へと搬送される。また、第二給紙部5では、手差し用給紙口12に差し込まれた被記録媒体が、手差し用給紙口12から画像形成部7へと搬送される。
【0021】
第一給紙部3または第二給紙部5から被記録媒体が搬送されてくると、画像形成部7では、感光体13上に形成された静電潜像を現像ローラ14に担持されたトナーで現像し、その現像された画像が被記録媒体に転写される。
【0022】
そして、その被記録媒体を定着器15で加熱することによって画像を被記録媒体に定着させてから、その被記録媒体を排紙部9へと送り出す。排紙部9では、被記録媒体が排紙トレイ16へと排出される。
【0023】
また、この画像形成装置1において、第二給紙部5には、図1(a)および同図(b)に示すように、カバー部材21が設けられている。本実施形態において、カバー部材21は、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rによって構成される。
【0024】
これら第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rは、装置前面において、いわゆる観音開きで開閉可能な構造になっている。より具体的に説明すると、第一カバー部材21Lは、装置前面から見て左端側にある鉛直な軸線を回転中心にして水平に回動可能、第二カバー部材21Rは、装置前面から見て右端側にある鉛直な軸線を回転中心にして水平に回動可能となっている。
【0025】
また、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rは、双方とも一方向についての寸法が、その一方向に直交する方向の寸法よりも長い部材となっている(以下、この一方向を、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rの長手方向ともいう。)。
【0026】
そして、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rは、図1(a)に示すように、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rの長手方向と手差し用給紙口12の長手方向が一致する位置(以下、閉位置ともいう。)へ回動すると、手差し用給紙口12を覆う蓋として機能する状態になる。
【0027】
一方、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rは、図1(b)に示すように、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rの長手方向と手差し用給紙口12への被記録媒体の差し込み方向とが一致する位置(以下、開位置ともいう。)へ回動すると、被記録媒体を手差し用給紙口12へと案内するガイド部として機能する状態になる。
【0028】
[カバー部材の構造の詳細]
次に、上記カバー部材21の構造について、さらに詳細に説明する。
図2(a)〜同図(c)において、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rは、閉位置にあり、この場合、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rの前面は、装置本体の前面1Aと同一面内に収まる位置にある。
【0029】
第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rは、図2(a)〜同図(c)に示すように、第一ガイド軸23L,23R、および第二ガイド軸24L,24Rを備えている。また、これら第一ガイド軸23L,23R、および第二ガイド軸24L,24Rは、装置本体側に形成された第一ガイド溝25L,25R、および第二ガイド溝26L,26Rに嵌め込まれている。
【0030】
これらのうち、第一ガイド軸23L,23Rは、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rを開閉させる際に、回動中心となる部分である。より具体的には、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rは、第一ガイド軸23L,23Rを中心に回動することで、図2(a)に示した閉位置から、図3(a)に示す矢印S1方向へと移動して図3(a)に示す開位置に至る。このとき、第二ガイド軸24L,24Rは、第二ガイド溝26L,26Rに沿って第一ガイド軸23L,23Rの周囲を旋回する。
【0031】
すなわち、第二ガイド溝26Lは、図4(a)、図4(b)、図5(a)、図5(b)、および図5(c)に示す通り、一部が第一ガイド溝25Lの一端を中心とする円弧を描く溝になっている。そのため、上記第一ガイド溝25Lの一端に第一ガイド軸23Lがある場合、第二ガイド軸24Lは、第一ガイド溝25Lの一端を中心とする円弧に沿って移動可能で、この場合、第一カバー部材21Lは、開位置と閉位置との間を回動可能となる。
【0032】
また、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rは、図3(a)に示す開位置に至る開位置に至ると、さらに図3(b)に示す矢印S2方向へと移動可能となる。すなわち、第一ガイド溝25Lは、図5(a)〜同図(c)に示す通り、一方向に直線的に延びる形態となっていて、第二ガイド溝26Lは、上述の円弧を描く部分以外に、第一ガイド溝25Lと同一方向に延びる部分を備えている。そのため、第一カバー部材21Lが開位置にある場合、第一ガイド軸23Lおよび第二ガイド軸24Lは、第一ガイド溝25Lおよび第二ガイド溝26Lに沿って直線的に移動でき、そのような方向へ第一カバー部材21Lを移動させることで、第一カバー部材21Lと第二カバー部材21Rとの間隔を任意に変更することができる。
【0033】
しかも、第一カバー部材21Lと第二カバー部材21Rとの間の間隔を縮めた場合、第二ガイド軸24Lは、第二ガイド溝26Lの円弧状部分から外れるため、この時点で第一カバー部材21Lは、第一ガイド軸23Lを中心とする回動ができない状態になる。したがって、第一カバー部材21Lは、回動することなく、第一ガイド溝25Lが延びる方向へのみ移動可能となり、予期しない位置で第一カバー部材21Lが閉じられてしまうことはない。
【0034】
また、第一カバー部材21Lが図2(a)に示したが閉位置にある場合、図5(a)に示すように、第二ガイド軸24Lは、トルクばね27Lによって移動が軽く規制された状態にある。このような構成を採用すると、第一カバー部材21Lが閉位置にある場合に、予期しない軽微な力を受けて第一カバー部材21Lが開いてしまうのを防止することができる。
【0035】
ちなみに、第一カバー部材21Lを閉位置から開位置へ移動させる際には、第一カバー部材21Lにある程度以上の強い力を加えると、第二ガイド軸24Lは、トルクばね27Lの一部を図5(b)中に示した矢印S3方向に押し退けることができる。したがって、第二ガイド軸24Lは、図5(b)中に示した矢印S1方向へと移動することができ、第一カバー部材21Lを開位置へ移動させることができる。
【0036】
なお、第二カバー部材21Rは、図2(a)から明らかなように、第一カバー部材21Lと左右対称にはなるものの、同様な仕組みによって開位置と閉位置との間を回動可能となる。また、開位置へ移動した場合は、第一ガイド溝25Rが延びる方向へ移動可能となり、その移動中は、第一ガイド軸23Rを中心とする回動ができない状態になる。
【0037】
さらに、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rの下面側には、図2(d)に示すように、長手方向にスライド可能なスライドラック31L,31Rと、これらと噛み合うピニオンギア33が配設されている。第一カバー部材21Lと第二カバー部材21Rは、スライドラック31L,31Rに対して、回動軸35L,35Rを中心に回動可能な状態で連結されている。
【0038】
このような構成を採用すると、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rが開位置にある場合に、図3(c)に示すように、いずれか一方を第一ガイド軸23Lおよび第二ガイド軸24Lの延びる方向(図3(c)中の矢印S2方向)へ移動させると、それに連動してスライドラック31L,31Rの一方がスライドし、それに伴ってピニオンギア33が回動し、スライドラック31L,31Rの他方が、一方とは反対方向にスライドする。
【0039】
したがって、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rのいずれか一方を移動させるだけで、他方が連動して移動し、双方間の中間点を変位させることなく、第一カバー部材21Lと第二カバー部材21Rとの間隔を変更することができる。
【0040】
加えて、第一カバー部材21Lには、図2(e)に示すように、第二カバー部材21R側に向かって突出する凸部37が設けられ、第二カバー部材21Rには、凸部37が嵌り込む凹部39が設けられている。
【0041】
このような構造を採用することで、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rが閉じられた際には、手差し用給紙口12への被記録媒体の差し込み方向(すなわち、画像形成装置1の前面側)から見て、第一カバー部材21Lの一部と第二カバー部材21Rの一部が重なる状態になる。
【0042】
したがって、手差し用給紙口12への被記録媒体の差し込み方向から見て、第一カバー部材21Lの一部と第二カバー部材21Rの間に空隙ができないので、装置内部へ塵埃が入り込むのを防止または抑制する効果が高なる。また、画像形成装置1の内部から発生する音が装置外へ漏れるのを防止または抑制する効果も高くなる。
【0043】
[効果]
以上説明した通り、上記画像形成装置1によれば、手差し用給紙口12を覆うカバー部材21(第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21R)を開くことにより、被記録媒体を手差し用給紙口12へと案内するガイド部として利用することができる。
【0044】
しかも、カバー部材21を開いた際には、カバー部材21の長手方向が被記録媒体の差し込み方向と一致するので、高さ方向寸法の小さいカバーが下端を軸に手前に傾いてガイド部となるものとは異なり、被記録媒体を案内可能な距離を十分に確保できる。
【0045】
したがって、被記録媒体の斜行を防止または抑制することができ、ひいては被記録媒体の斜行に起因する紙詰まりの発生や被記録媒体における皺の発生などを抑制できる。また、利用者が手差し用給紙口12からの給紙作業を行う際に、被記録媒体を真っ直ぐに差し込むことが容易になるので、被記録媒体を案内可能な距離が短い場合に比べ、差し込み方向の微妙な調整が不要となり、給紙作業をスムーズに実施することができる。
【0046】
また、上記画像形成装置1によれば、カバー部材21が二つの部材(第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21R)から構成されることで、開いたときには、被記録媒体の両端をガイドすることができるので、手差し用給紙口12に差し込まれる被記録媒体を、より正確に真っ直ぐに差し込むことができ、斜行を防止または抑制する効果を高めることができる。
【0047】
また、上記画像形成装置1によれば、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rが、互いに接近する方向または互いに離間する方向へ連動して変位するので、手差し給紙を行う被記録媒体のサイズ(幅)に応じて、被記録媒体の両端をガイド可能な位置へ第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rを変位させることができる。したがって、いわゆるセンターレジで画像を形成する際に、被記録媒体の位置を簡単かつ確実に最適化することができる。
【0048】
さらに、上記画像形成装置1において、カバー部材21は、手差し用給紙口12の長手方向へ変位させた際、特定の位置へ変位したときには開閉可能となる一方、前記特定の位置以外の位置へ変位したときには開かれた状態を維持する構造になっている。すなわち、本実施形態の場合であれば、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rが開位置にある場合、いくらかスライドさせると回動ができない状態になることで、上記開位置にある状態が維持される構造になっている。
【0049】
したがって、このような構造を採用すれば、前記特定の位置以外の位置へ変位させる際に、カバー部材21が想定外の位置で閉じられてしまうのを防止でき、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rを変位させる作業を容易に実施できる。
【0050】
また、カバー部材21をいくらか変位させた後は、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rが確実に開いた状態を維持できるので、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rカバー部材の手差し用給紙口12に対する傾きを最適な状態で維持でき、被記録媒体の斜行を防止または抑制する効果を高めることができる。
【0051】
[変形例等]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0052】
例えば、上記実施形態では、カバー部材21として、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rを設ける例を示したが、カバー部材は単一の部材で構成されていてもよい。
【0053】
具体例を挙げると、例えば、図6(a)および同図(b)に示すカバー部材41のように、上記実施形態と同様の第一ガイド軸43、第二ガイド軸44、第一ガイド溝45、第二ガイド溝46、トルクばね47などを1組だけ設けてもよい。
【0054】
この場合、カバー部材41の長手方向寸法は、手差し用給紙口12全体を覆うことができる寸法にまで長くされる。このようにすれば、より長距離にわたって被記録媒体を案内することができるので、被記録媒体の斜行を防止する効果を高めることができる。
【0055】
また、上記実施形態では言及しなかったが、カバー部材41がスライドする位置には、被記録媒体のサイズを示すマーク48A,48B,48Cなどを設けておいてもよい。
このように構成すれば、カバー部材41の端部41Aとマーク48A,48B,48Cとの位置合わせを行うことで、手差し用給紙口12の側端12Aとカバー部材41の内壁41Bとの距離を、マーク48A,48B,48Cが示すサイズにすることができる。
【0056】
したがって、利用者が利用したい記録媒体のサイズに応じて、カバー部材41を容易に所望の位置へ移動させることができるようになる。
また、上記実施形態では、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rを連動させるため、スライドラック31L,31Rとピニオンギア33で連動機構を構成したが、他の仕組みによって二つのカバー部材を連動させてもよい。
【0057】
例えば、図7(a)および同図(b)に示すカバー部材51(第一カバー部材51Lおよび第二カバー部材51R)は、第一ガイド軸53L,53R、第二ガイド軸54L,54Rなどを備える点で、上記実施形態と同様のものであるが、スライドラック31L,31Rに代えて、ラックが設けられていないスライド部材61L,61Rを備えている。
【0058】
そして、これらスライド部材61L,61Rに対し、第一カバー部材51Lおよび第二カバー部材51Rは、回動軸65L,65Rを中心に回動可能に連結されている。また、二つのプーリー71L,71Rと、それら二つのプーリー71L,71Rに架け渡されたベルト73を備え、スライド部材61L,61Rは、固定部材75L,75Rを介してベルト73に固定されている。
【0059】
このような構成を採用しても、上記実施形態同様、第一カバー部材51Lおよび第二カバー部材51Rを連動させることができ、双方間の中間位置を維持したまま、双方間の間隔を変更することができる。
【0060】
さらに、上記実施形態では、第一カバー部材21Lおよび第二カバー部材21Rに凸部37および凹部39を設けることで、画像形成装置1の前面側から見て、第一カバー部材21Lの一部と第二カバー部材21Rの一部が重なる状態にしてあったが、このような重なり部分を設けるか否かは任意である。
【0061】
加えて、上記実施形態では、被記録媒体上に電子写真方式で画像を形成する画像形成装置1を例示したが、本発明は、他の記録方式(例えば、インクジェット方式)で画像を形成する画像形成装置において採用することもできる。
【符号の説明】
【0062】
1・・・画像形成装置、1A・・・前面、3・・・第一給紙部、5・・・第二給紙部、7・・・画像形成部、9・・・排紙部、11・・・給紙カセット、12・・・手差し用給紙口、12A・・・側端、13・・・感光体、14・・・現像ローラ、15・・・定着器、16・・・排紙トレイ、21,41,51・・・カバー部材、21L,51L・・・第一カバー部材、21R,51R・・・第二カバー部材、23L,23R,43,53L,53R・・・第一ガイド軸、24L,24R,44,54L,54R・・・第二ガイド軸、25L,25R,45・・・第一ガイド溝、26L,26R,46・・・第二ガイド溝、31L,31R・・・スライドラック、33・・・ピニオンギア、35L,35R,65L,65R・・・回動軸、37・・・凸部、39・・・凹部、41A・・・端部、41B・・・内壁、48A,48B,48C・・・マーク、61L,61R・・・スライド部材、71L,71R・・・プーリー、73・・・ベルト、75L,75R・・・固定部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体に対して画像を形成する画像形成手段と、
手差し用給紙口に差し込まれた被記録媒体を、前記手差し用給紙口から前記画像形成手段へと搬送する際に利用される搬送経路と、
開閉可能な構造になっていて、閉じられた際には前記手差し用給紙口を覆うカバー部材と
を備えており、
前記カバー部材は、一方向についての寸法が、前記一方向に直交する方向の寸法よりも長い部材からなり、閉じられた際には、前記手差し用給紙口に沿って延びる方向と前記一方向が一致する位置へと移動することで、前記手差し用給紙口を覆う状態になる一方、開かれた際には、前記手差し用給紙口への被記録媒体の差し込み方向と前記一方向が一致する位置へと移動することで、前記一方向に沿って前記被記録媒体を前記手差し用給紙口へと案内可能なガイド部として機能する状態になる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記カバー部材は、閉じられた際に前記手差し用給紙口の一部を覆う第一カバー部材と、閉じられた際に前記手差し用給紙口の残りの一部を覆う第二カバー部材によって構成されていて、開かれた際には、前記被記録媒体の両端のうち、いずれか一方の端部に前記第一カバー部材が当接するとともに、他方の端部に前記第二カバー部材が当接して、前記被記録媒体を前記手差し用給紙口へと案内可能な状態になる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、閉じられた際に、前記手差し用給紙口への被記録媒体の差し込み方向から見て、前記第一カバー部材の一部と前記第二カバー部材の一部が重なる状態になる
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記カバー部材は、開かれた際に、前記第一カバー部材および前記第二カバー部材が、前記手差し用給紙口の長手方向へ変位可能な構造となっており、
前記第一カバー部材および前記第二カバー部材のうち、いずれか一方を前記手差し用給紙口の長手方向へ変位させた際に、その変位方向とは逆方向へ他方を変位させる連動機構が設けられることにより、前記第一カバー部材および前記第二カバー部材は、互いに接近する方向または互いに離間する方向へ連動して変位する構造になっている
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−6247(P2011−6247A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153727(P2009−153727)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】