説明

画像形成装置

【課題】先行用紙への画像形成完了後、迅速に後続用紙を頭出し可能な技術を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、搬送/排紙ローラを回転させて用紙を副走査方向に所定距離D1搬送しては、記録ユニットを搭載したキャリッジを主走査方向に搬送すると共に記録ユニットにインク液滴を吐出させて用紙に一連の画像を形成する。更に、搬送ローラにより用紙を距離D1搬送するに際には、給紙ローラを回転させて後続用紙を連れ回し搬送する。そして、先行用紙後端が搬送ローラと給紙ローラとの間に位置する用紙センサ及び中間ローラを通過する回では、先行用紙のみを距離D1搬送して、後続用紙の連れ回し搬送を禁止する(時刻T2)。そして、先行用紙後端が用紙センサ位置を通過した時点で後続用紙を中間ローラ位置まで高速搬送し、先行用紙への画像形成完了後、後続用紙を搬送ローラに供給する(時刻T3)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに画像を形成する画像形成装置としては、インクジェットプリンタ等の画像形成装置が知られている。この種の画像形成装置では、シートを副走査方向に所定距離ずつ搬送する一方、この搬送毎に記録ユニットを主走査方向に搬送してシートに画像を形成する。また、この種の画像形成装置としては、センサが先行シートの後端を検出すると、後続シートの搬送を開始するものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−155038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者らは、先行シートを副走査方向に所定距離ずつ搬送しては記録ユニットを主走査方向に搬送して先行シートに画像を形成する過程において、先行シートの各回の搬送動作に合わせて、後続シートを間欠搬送することを考えている。この搬送方法によれば、先行シートの後端を追跡するように後続シートを搬送することができ、先行シートへの画像形成完了後、後続シートを迅速に画像形成位置に搬送することができる。
【0005】
但し、先行シートを副走査方向に所定距離搬送する上記動作に合わせて後続シートを間欠搬送するにしても、先行シートと同距離ずつ後続シートを搬送しようとすると、搬送精度の問題から後続シートが先行シート後端と重なってしまう可能性が高くなる。このため、後続シートを先行シートよりも低速で搬送することで、後続シートを先行シートよりも少ない距離ずつ搬送することを考えている。
【0006】
しかしながら、間欠搬送時に後続シートを先行シートよりもゆっくりと搬送すると次第に先行シート後端と後続シート先端との距離が開くため、そのことを原因として後続シートの供給動作に遅れが生じる。
【0007】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、先行シートを副走査方向に所定距離搬送する上記動作に合わせて後続シートを間欠搬送して、後続シートを画像形成位置に搬送する画像形成装置において、迅速に後続シートを画像形成位置に搬送可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明の画像形成装置は、シートに画像を形成する画像形成手段と、画像形成手段による画像形成位置よりもシート搬送路の上流に設けられたシート搬送機構を駆動し、画像形成位置に向けて、シートを間欠的に第一の距離ずつ搬送する搬送制御手段と、シート搬送機構よりもシート搬送路の上流に設けられたシート供給機構を駆動し、シートをシート搬送機構に供給する供給制御手段と、搬送制御手段により搬送されている先行シートの後端が、シート搬送路におけるシート搬送機構及びシート供給機構の間において予め定められた基準地点を通過したか否かを判定する通過判定手段と、を備え、更に上記供給制御手段が次のように構成されたものである。
【0009】
本発明の画像形成装置における上記供給制御手段は、第一制御手段及び第二制御手段及び予測手段を備える。第一制御手段は、第一の距離ずつシートを搬送する上記搬送制御手段の当該搬送動作に合わせて、上記シート供給機構を駆動し、先行シートに続いて上記シート搬送機構に供給するシートである後続シートを搬送する。第一制御手段は、後続シートを搬送制御手段によるシートの搬送速度よりも遅い速度で搬送することにより、先行シートの搬送動作に合わせて、間欠的に後続シートを第一の距離より短い第二の距離ずつ搬送する。
【0010】
一方、予測手段は、間欠的に行われる各回の上記第一制御手段による後続シートの搬送動作の内、この搬送動作に合わせて実行される上記搬送制御手段の搬送動作により先行シートの後端が基準地点を通過する回を予測する。第二制御手段は、この予測手段の予測結果に従って、先行シートの後端が基準地点を通過すると予測された回の第一制御手段による後続シートの搬送動作を禁止する。更に、第二制御手段は、通過判定手段により先行シートの後端が基準地点を通過したと判定された時点から、後続シートの先端が、送出地点として予め定められた「基準地点」又は「基準地点よりもシート搬送路下流における先行シートの後端に接触しない地点」に到達するまで、後続シートを搬送する。この際、第二制御手段は、第一制御手段によるシートの搬送速度よりも速い搬送速度で搬送する。
【0011】
このように構成された本発明の画像形成装置では、上述したように、先行シートの間欠的な搬送動作に合わせて、第一制御手段により後続シートの間欠的な搬送動作を行い、先行シートの後端が基準地点を通過すると、第二制御手段によって後続シートをそれまでよりも速い搬送速度で搬送する。更に、先行シートの後端が基準地点を超えると予測される先行シートの搬送時には、第一制御手段による後続シートの搬送動作を禁止する。従って、第二制御手段による後続シートの搬送動作を迅速に行うことができ、結果として、後続シートを迅速にシート搬送機構に供給することができる。
【0012】
即ち、第一制御手段は、後続シートが先行シートに追いつかないようにして低速で間欠的に後続シートを搬送するものであり、第二制御手段は、先行シート後端が基準地点を越えたことを条件に後続シートを第一制御手段より高速で搬送し、後続シートの搬送位置を調整するものであるが、仮に第一制御手段による後続シートの搬送動作を禁止しない場合には、先行シート後端が基準地点を越える期間に、搬送制御手段の動作に連動して第一制御手段による後続シートの搬送動作が行われることになる。従って、この場合には、先行シート後端が基準地点を越えたことを契機に第二制御手段によって後続シートを高速に搬送しようとしても、第一制御手段の動作に影響されて第二制御手段による搬送動作に瞬時に移行することができない。
【0013】
このため、第一制御手段による後続シートの搬送動作を禁止しない場合には、先行シート後端が基準地点を越えると後続シートの少なくとも基準地点までの搬送が可能になる画像形成装置においても、第一制御手段による搬送動作が終了するのを待つ対応となり、後続シートの供給動作に遅れが生じる。
【0014】
本発明では、このような理由から上述の条件で第一制御手段による搬送動作を禁止するようにしている。本発明によれば、上述の条件で第一制御手段による搬送動作を禁止するので、先行シート後端が基準地点を越えた時点から第二制御手段による搬送動作を迅速に開始することができ、結果として、後続シートを迅速に供給できる。
【0015】
ところで、本発明は、上記基準地点を通過するシート端部を検出可能なセンサを備えた画像形成装置に適用することができる。この場合、通過判定手段は、センサの検出信号に基づき、先行シートの後端が基準地点を通過したか否かを判定する構成にすることができる(請求項2)。センサにより基準地点の通過を高精度に判定できるようにすれば、先行シートと後続シートとの距離を詰めることができ、後続シートを迅速に供給することができる。
【0016】
また、予測手段は、搬送制御手段が搬送する先行シートのシート搬送路における位置を特定し、搬送制御手段による搬送動作の開始時点での先行シート後端と基準地点との距離が搬送制御手段による搬送動作によって搬送されるシートの搬送距離よりも短い回を、先行シートの後端が基準地点を通過する回であると予測する構成にすることができる(請求項3)。具体的に、予測手段は、上記センサの検出信号に基づき、先行シート先端が基準地点を通過してからの先行シートの搬送量を特定し、この搬送量とシートサイズとに基づき、搬送制御手段による搬送動作の開始時点での先行シート後端と基準地点との距離を特定する構成にすることができる。更に言えば、予測手段は、高精度に予測を行うために、搬送制御手段による各回の搬送動作の実行前に、先行シートの後端が基準地点を通過する回であるか否かを予測する構成にされるのが好ましい。
【0017】
また、上記送出地点は、シート搬送機構の設置地点に定めることができる。この場合には、第二制御手段による上記送出地点への後続シートの搬送動作により、後続シートを最終的にシート搬送機構に供給することができる(請求項4)。
【0018】
この他、画像形成装置の種類によっては、上記送出地点をシート搬送機構の設置地点に定めることが適切でない場合がある。従って、このような種類の画像形成装置に対しては、シート搬送機構の設置地点よりもシート搬送路上流側の地点に上記送出地点を定めることができる(請求項5)。
【0019】
尚、先行シートの後端が基準地点を超える契機となった搬送動作の完了後に、搬送制御手段が、シート搬送機構を駆動して先行シートを排出し後続シートを画像形成位置へと頭出しする次頁配置動作を実行し、その後、第一の距離ずつシートを搬送する間欠的な搬送動作を再開する構成の画像形成装置において、上記送出地点を、シート搬送機構の設置地点よりもシート搬送路上流側の地点に定める場合には、第二制御手段により送出地点まで後続シートが搬送された後、搬送制御手段による上記次頁配置動作の開始に合わせて、シート供給機構を駆動し、後続シートをシート搬送機構に供給する第三制御手段を供給制御手段に設けて、第三制御手段により、最終的に後続シートをシート搬送機構に供給するように画像形成装置を構成することができる(請求項6)。
【0020】
また、シート供給機構が、シートに動力を伝達する動力伝達機構をシート搬送路に沿う複数の地点に有し、複数の動力伝達機構を通じてシート搬送機構までシートを搬送する構成にされた画像形成装置では、シート供給機構が備える複数の動力伝達機構の内、最もシート搬送機構寄りに設置された最終段の動力伝達機構の設置地点に、上記送出地点を設定することができる(請求項7)。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一実施例の画像形成装置1の構成を表す断面図である。
【図2】第一実施例の画像形成装置1の電気的構成を表すブロック図である。
【図3】主制御部10が実行する印刷制御処理を表すフローチャートである。
【図4】第一実施例でのキャリッジ31及び各ローラの駆動態様を示す図である。
【図5】第一実施例での先行用紙及び後続用紙の搬送態様を示す図である。
【図6】第二実施例の印刷制御処理を表すフローチャートである。
【図7】第二実施例でのキャリッジ31及び各ローラの駆動態様を示す図である。
【図8】第二実施例での先行用紙及び後続用紙の搬送態様を示す図である。
【図9】第一実施例の変形例における各ローラの駆動態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施例について、図面と共に説明する。
[第一実施例]
本実施例の画像形成装置1は、インクジェットプリンタとして構成されたものであり、図1に示すように、記録ユニット21と、記録ユニット21を用紙Pの搬送方向(副走査方向)とは垂直な主走査方向に搬送するためのキャリッジ31と、給紙トレイ101と、給紙トレイ101に積層された用紙Pを一枚ずつ分離して用紙搬送路に送出する給紙ローラ111と、給紙ローラ111の回転により用紙搬送路に送出された用紙Pを用紙搬送路下流に搬送する中間ローラ121と、中間ローラ121の回転により搬送されてくる用紙Pを記録ユニット21下のインク吐出地点に搬送する搬送ローラ131と、搬送ローラ131から搬送されてきた用紙Pを用紙搬送路下流に排出する排紙ローラ141と、給紙モータM1と、搬送モータM2と、CR(キャリッジ)モータM3と、用紙センサSN1と、レジセンサSN2と、を備える。
【0023】
給紙ローラ111は、DC(直流)モータで構成される給紙モータM1を駆動源として回転し、給紙トレイ101に載置された最上部の用紙Pを分離して用紙搬送路に送出するものである。用紙搬送路は、給紙ローラ111により送出される用紙Pの移動を規制して給紙トレイ101から送出された用紙Pを、中間ローラ121を介して用紙搬送路下流に位置する搬送ローラ131とピンチローラ133との間に誘導可能な構成にされている。
【0024】
中間ローラ121は、用紙搬送路において給紙ローラ111と搬送ローラ131との間に設置され、給紙ローラ111から搬送されてきた用紙Pを、ピンチローラ123と共に挟持し、回転動作により用紙搬送路下流に搬送する。この中間ローラ121は、給紙ローラ111と同じ給紙モータM1を駆動源として回転し、給紙ローラ111から搬送されてきた用紙Pを、搬送ローラ131に供給する。
【0025】
また、搬送ローラ131は、DCモータで構成される搬送モータM2を駆動源として回転するものであり、記録ユニット21によるインク吐出地点よりも用紙搬送路上流に設けられている。この搬送ローラ131は、中間ローラ121の回転動作により中間ローラ121から搬送されてくる用紙Pを、ピンチローラ133と共に挟持して自己の回転動作により用紙Pをインク吐出地点に搬送する。
【0026】
この他、排紙ローラ141は、記録ユニット21によるインク吐出地点よりも用紙搬送路下流に設けられて、搬送ローラ131の設置地点からインク吐出地点を経由して搬送されてくる用紙Pをピンチローラ143と共に挟持し、回転動作により当該用紙Pを図示しない排紙トレイ側に搬送するものである。この排紙ローラ141は、搬送モータM2を駆動源として搬送ローラ131と連動するように回転する。図1では、排紙ローラ141及びピンチローラ143の組を一つのみ図示するが、排紙ローラ141及びピンチローラ143は、排紙トレイを終端とする用紙搬送路に沿って複数組設けることができる。
【0027】
本実施例の画像形成装置1は、このように給紙ローラ111を通じて給紙トレイ101に載置された用紙Pを用紙搬送路に搬送し、この用紙Pを用紙搬送路に設けられた中間ローラ121を通じて搬送ローラ131に供給し、搬送ローラ131の回転により用紙Pをインク吐出地点に搬送して、画像形成済の用紙Pを排紙ローラ141の回転により排出する。そして、この用紙搬送路には、用紙端を検知可能なセンサとして、用紙センサSN1及びレジセンサSN2が設けられている。
【0028】
具体的に、用紙センサSN1は、中間ローラ121の設置地点(中間ローラ121とピンチローラ123とのニップ部)を通過する用紙端を検出可能な位置に設けられている。一方、レジセンサSN2は、用紙搬送路における搬送ローラ131の上流地点であって、搬送ローラ131の設置地点近傍に設けられている。この用紙センサSN1及びレジセンサSN2は、用紙搬送路において用紙位置を特定するために使用される。
【0029】
その他、記録ユニット21は、インク液滴を吐出するためのノズルが底面に設けられたものであり、ノズルは、搬送ローラ131と排紙ローラ141との間に設けられた用紙搬送路を構成するプラテン150に対向するように配置されている。この記録ユニット21は、主走査方向に移動可能なキャリッジ31に搭載され、キャリッジ31は、DCモータで構成されるCRモータM3を駆動源として主走査方向に搬送される。尚、主走査方向は、図1の紙面に対して垂直な方向に対応する。
【0030】
ここでは、キャリッジ搬送機構の詳細構成の図示を省略するが、キャリッジ搬送機構は、無端ベルトに連結されたキャリッジ31が、主走査方向に延びる図示しないガイド軸に沿って移動可能に設けられた構成にされている。無端ベルトは、CRモータM3の駆動力を受けて回転するが、キャリッジ31は、このCRモータM3の駆動力を受けて回転する無端ベルトに従動して、ガイド軸に沿って主走査方向に移動する。
【0031】
続いて、図2を用いて画像形成装置1の電気的構成について説明する。本実施例の画像形成装置1は、記録ユニット21、キャリッジ31及び各種ローラ111,121,131,141を駆動するための構成として、主制御部10と、記録制御部20と、キャリッジ制御部40と、用紙搬送制御部60と、給紙制御部80と、駆動回路23,43,63,83と、エンコーダ45,65,85と、信号処理部47,67,87と、を備える。
【0032】
記録制御部20は、記録ユニット21によるインク液滴の吐出動作を制御するものであり、主制御部10から入力される指令に従い、駆動回路23を通じて記録ユニット21を駆動し、記録ユニット21によるインク液滴の吐出動作を制御する。この動作によって記録制御部20は、記録ユニット21に、主制御部10から入力された印刷画像データに基づく画像を用紙Pに形成させる。
【0033】
また、キャリッジ制御部40は、駆動回路43を介してCRモータM3を駆動し、キャリッジ31の搬送制御を行うものである。例えば、用紙Pに画像を形成する際には、インク液滴を目的の地点に着弾させるために、キャリッジ31を主走査方向に定速搬送する。キャリッジ制御部40は、このようなキャリッジ31の搬送制御を、主制御部10からの指令に従って実行する。尚、キャリッジ制御部40には、上記搬送制御のために信号処理部47からキャリッジ31の位置及び速度の情報が入力される。信号処理部47は、エンコーダ45から入力されるエンコーダ信号(A相信号及びB相信号)を処理して、キャリッジ31の位置及び速度を検出するものである。エンコーダ信号を用いた位置及び速度の検出方法については周知なので、ここでは説明を省略する。例えば、エンコーダ45は、主走査方向に延びるエンコーダスケールと、エンコーダスケールに設けられたスリットを読み取るためにキャリッジ31に設置されたセンサ素子とからなるリニアエンコーダにより構成される。
【0034】
また、用紙搬送制御部60は、主制御部10からの指令に従い、駆動回路63を介して搬送モータM2を制御することにより、用紙Pの搬送を制御するものである。搬送モータM2によって発生する駆動力は、伝達機構R2を通じて搬送ローラ131及び排紙ローラ141に伝達される。これによって搬送ローラ131及び排紙ローラ141は同期動作する。尚、用紙搬送制御部60には、信号処理部67から、用紙Pの搬送量及び速度の情報が入力される。信号処理部67は、エンコーダ65から入力されるエンコーダ信号に基づき、用紙Pの搬送量及び速度を検出し、この情報を用紙搬送制御部60に入力するものである。エンコーダ65は、例えば、搬送モータM2の回転軸に設けられたロータリエンコーダにより構成される。用紙搬送制御部60は、この信号処理部67から入力される用紙Pの搬送量及び速度の情報に基づいて用紙Pの搬送制御を行う。
【0035】
また、給紙制御部80は、主制御部10からの指令に従い、駆動回路83を介して給紙モータM1を制御することにより、給紙トレイ101から搬送ローラ131へ用紙Pを供給するものである。給紙モータM1によって発生する駆動力は、伝達機構R1を通じて給紙ローラ111又は中間ローラ121又はその両者に伝達される。尚、給紙制御部80には、信号処理部87から用紙Pの搬送量及び速度の情報が入力される。信号処理部87は、エンコーダ85から入力されるエンコーダ信号に基づき、用紙Pの搬送量及び速度を検出し、この情報を給紙制御部80に入力するものである。エンコーダ85は、例えば、給紙モータM1の回転軸に設けられたロータリエンコーダにより構成される。給紙制御部80は、この信号処理部87から入力される用紙Pの搬送量及び速度の情報に基づいて用紙Pの搬送制御を行う。
【0036】
一方、主制御部10は、図示しないCPU、ROM、RAM、EEPROM及び通信インタフェース等を内蔵するものであり、ROMに記憶されたプログラムをCPUにて実行することにより、装置各部を統括制御して、画像形成装置1としての各種機能を実現する。この主制御部10は、例えば外部のパーソナルコンピュータから印刷指示と共に印刷画像データを受信すると、記録制御部20、キャリッジ制御部40、用紙搬送制御部60及び給紙制御部80に対して指令入力することにより、主走査方向への画像形成動作、及び、主走査方向とは直交する副走査方向への用紙Pの搬送動作を統括的に制御し、用紙Pに外部のパーソナルコンピュータから入力された印刷画像データに基づく画像を形成する。
【0037】
尚、主制御部10は、用紙P一枚分の印刷画像データを記憶保持できるだけの記憶エリアを有さないため、パーソナルコンピュータから印刷指示を受信した際には、パーソナルコンピュータからの印刷画像データの受信動作と並行して印刷制御処理を実行する。
【0038】
また、主制御部10は、信号処理部67を通じて搬送ローラ131及び排紙ローラ141による用紙搬送量の情報を取得し、信号処理部87を通じて給紙ローラ111及び中間ローラ121による用紙搬送量の情報を取得し、これらの情報と、用紙センサSN1及びレジセンサSN2による用紙端の検出信号に基づき、用紙搬送路における用紙位置Xを特定する。即ち、主制御部10は、用紙搬送量に基づき用紙位置Xを特定するが、用紙センサSN1又はレジセンサSN2にて用紙端が検知された場合には、その時点で特定している用紙位置Xをセンサ位置に補正して、用紙搬送路における用紙位置Xを特定する。用紙位置Xとしては、用紙Pの搬送方向先端の位置を特定することができる。以下では、用紙Pの搬送方向先端(用紙Pにおける用紙搬送路下流側の端部)の位置を用紙Pの「先端」と表現し、用紙Pにおける用紙搬送路上流側の端部を、用紙Pの「後端」と表現する。
【0039】
続いて、主制御部10が外部のパーソナルコンピュータから印刷指示を受信すると実行する印刷制御処理の詳細を、図3を用いて説明する。印刷制御処理を開始すると、主制御部10は、まず、給紙制御部80及び用紙搬送制御部60を通じて第一頁の用紙Pを頭出しする処理を開始する(S110)。具体的には「給紙制御部80を通じて給紙ローラ111及び中間ローラ121を回転させて第一頁となる用紙Pを給紙トレイ101から搬送ローラ131に供給し、更に、用紙搬送制御部60を通じて搬送ローラ131及び排紙ローラ141を回転させて、用紙Pの頭出しを行う処理」を開始する。
【0040】
その後、主制御部10は、用紙Pの頭出しが完了するのを待って(S120)、S130に移行し、1パス分の画像形成処理を開始する(S130)。周知のインクジェットプリンタと同様、本実施例の画像形成装置1は、用紙Pの間欠搬送を伴いながらキャリッジ31を主走査方向に往復動させて、用紙Pに印刷画像データに基づく一連の画像を形成するが、S130では、そのプロセスとして「キャリッジ制御部40を通じてキャリッジ31を主走査方向に片道分(即ち1パス分)定速搬送すると共に、キャリッジ31の搬送時に記録制御部20を通じてインク液滴を記録ユニット21から吐出することにより、用紙Pにおいて、記録ユニット21の能力によって定まる所定ライン数分の画像を主走査方向に形成する処理」を開始する。用紙Pに対する一連の画像形成は、このような1パス分の画像形成処理の繰返しにより実現される。尚、S120,S130では、用紙Pの搬送が完了する前に先行して、1パス分の画像形成処理の内、キャリッジ31が定速状態に移行するまでの加速制御を行うことができる(図4参照)。
【0041】
また、S130で画像形成処理を開始すると、主制御部10は、今回S130で開始した画像形成処理によってパーソナルコンピュータから印刷指示された印刷画像データ終端までの画像形成が完了するか否かを判断し(S140)、終端までの画像形成が完了する場合には(S140でYes)、S150に移行する。そして、S150では、印刷画像データに基づく用紙Pへの画像形成完了後、用紙搬送制御部60を通じて搬送ローラ131及び排紙ローラ141を回転させて、画像形成済の用紙Pを排出する。その後、当該印刷制御処理を終了する。
【0042】
一方、印刷画像データ終端までの画像形成が完了しない場合には(S140でNo)、今回の画像形成処理に供されたデータに続く後続データが、その手前で改頁の必要な次頁のデータであるか否かを判断する(S160)。そして、次頁のデータである場合には(S160でYes)、S170に移行して、S130で開始した画像形成処理に基づく用紙Pへの画像形成完了後、次の処理を開始する。即ち、「用紙搬送制御部60を通じて搬送ローラ131及び排紙ローラ141を回転させて、画像形成済の用紙Pを排出すると共に、この用紙Pの後端が用紙センサSN1により検知されると、給紙制御部80を通じて後続用紙の搬送を開始して、後続用紙を搬送ローラ131に供給し、後続用紙が搬送ローラ131に供給された後には、用紙搬送制御部60を通じて、先行用紙の排紙及び後続用紙の頭出しをする処理」を開始する。そして、後続用紙の頭出しが完了するのを待って(S120)、S130に移行し、上述した1パス分の画像形成処理を開始する。
【0043】
この他、後続データが次頁のデータでない場合(S160でNo)、主制御部10は、今回S130での処理により画像形成に供されている先行用紙の後端位置X1から、基準地点である用紙センサSN1による用紙端の検出地点(中間ローラ121の設置地点)までの用紙搬送路に沿う距離Dsを算出する(S180)。具体的には、用紙搬送量から特定される先行用紙の先端位置X0と、印刷指示の入力時に外部のパーソナルコンピュータから通知された給紙トレイ101に載置されている用紙Pのサイズ情報とに基づき、先行用紙の後端位置X1を特定し、この後端位置X1と用紙センサSN1による用紙端の検出地点Xmとの用紙搬送路に沿う距離Ds=Xm−X1を算出する。
【0044】
そして、距離Dsが、1パス分の用紙搬送距離D1よりも短いか否かを判断することにより、次回、先行用紙を1パス分(即ち距離D1分)搬送した際に、先行用紙の後端が基準地点を通過するか否かを判断する(S190)。ここで、距離D1は、1パス分の画像形成処理により用紙Pに形成される画像の副走査方向の幅に対応するものである。上述したように、インクジェットプリンタである本実施例の画像形成装置1では、1パス分の画像形成処理を実行する度に用紙Pを副走査方向に搬送して用紙Pにライン画像群からなる一連の画像を形成するが、距離D1は、このように、1パス分の画像形成処理の実行毎に用紙P(先行用紙)を搬送する量に対応する。
【0045】
S190で、距離Dsが距離D1以上であると判断すると(S190でNo)、主制御部10は、S200に移行し、S130で開始した画像形成処理に基づく先行用紙への画像形成が完了次第「用紙搬送制御部60を通じて搬送ローラ131及び排紙ローラ141を回転させて、搬送ローラ131が搬送する先行用紙を距離D1だけ送出すると同時に、給紙制御部80を通じて給紙ローラ111を回転させて、後続用紙を距離D1よりも短い距離D2だけ送出する処理」を開始する。このとき、先行用紙の後端が給紙ローラ111を抜けていない場合は、先行用紙が搬送ローラ131と給紙ローラ111とによって挟持されて搬送されるが、搬送ローラの搬送力(搬送ローラ131とピンチローラ133との間のニップ力や摩擦力)が給紙ローラ111よりも勝るため、先行用紙が距離D1搬送される。そして、先行用紙の後端が給紙ローラ111を抜けた後は、S200の動作によって、先行用紙に続いて、後続用紙が送りだされる。以下では、搬送ローラ131の回転に合わせて給紙ローラ111を回転させて後続用紙を搬送することを「連れ回し搬送」と表現する。
【0046】
図4には、キャリッジ31及び各ローラ111,121,131の駆動態様を示すが、S200で開始する処理では、図4時刻T2よりも前の時間帯に示すように、搬送ローラ131の回転と同時に給紙ローラ111を回転させ、給紙ローラ111を搬送ローラ131と同一時間回転させる。但し、給紙ローラ111については搬送ローラ131よりも遅い速度で回転させることにより、給紙ローラ111により搬送される後続用紙を搬送ローラ131により搬送される先行用紙よりも遅い速度で搬送する。給紙ローラ111と搬送ローラ131とで搬送時間は同じであるので、後続用紙は、搬送ローラ131により搬送される先行用紙の搬送距離D1よりも短い距離D2搬送される。
【0047】
尚、このように後続用紙を連れ回し搬送するのは、先行用紙の画像形成が完了した後、後続用紙の頭出しを迅速に行うためである。但し、用紙搬送には誤差が生じ、特に給紙トレイ101から用紙Pを送出する際には、負荷変動等から用紙搬送量についての誤差が大きいので、本実施例では、後続用紙の先端が、先行用紙の後端に接触しないように、給紙ローラ111をゆっくり回転させることで控えめに後続用紙を連れ回し搬送する。
【0048】
主制御部10は、このように先行用紙を距離D1搬送し、同時に後続用紙を連れ回し搬送する処理を開始すると、先行用紙の1パス分(距離D1)の搬送及び後続用紙の連れ回し搬送が完了するのを待って(S120)、S130に移行し、1パス分の画像形成処理を開始する。これにより、距離D1だけ搬送されてインク吐出地点に配置された先行用紙の領域に新たな画像を形成する。その後、S140以降の処理を実行する。尚、上述したようにインク吐出開始時に先行用紙の搬送が完了していればよく、先行用紙の搬送中にキャリッジ31の搬送を開始しても良い。
【0049】
本実施例の印刷制御処理では、このようにして画像形成処理と、先行用紙及び後続用紙の間欠的な搬送動作と、を繰返し行うのであるが、このような繰返しのプロセスが進むと、先行用紙の後端が用紙センサSN1による用紙端の検出地点を通過する時期が到来する。本実施例では、この時期を上述したS180,S190での処理により予測する。
【0050】
即ち、距離Ds=Xm−X1を算出し(S180)、距離Dsが1パス分の用紙搬送距離D1よりも短いか否かを判断し(S190)、距離Dsが距離D1よりも短い場合には(S190でYes)、次回における先行用紙の1パス分の搬送動作により先行用紙の後端が用紙センサSN1による用紙端の検出地点を通過すると予測し、S210に移行する。そして、S210では、S130で開始した画像形成処理に基づく先行用紙への画像形成が完了次第、給紙ローラ111を駆動せずに、用紙搬送制御部60を通じて搬送ローラ131及び排紙ローラ141のみを駆動して、連れ回し搬送をせずに先行用紙を1パス分搬送する処理を開始する。
【0051】
即ち、S210では、図4時刻T2に示すように、搬送ローラ131及び排紙ローラ141を回転させて、搬送ローラ131及び排紙ローラ141が搬送する先行用紙を距離D1だけ送出する処理を開始する。一方、給紙制御部80に対する指令入力を行わずに、給紙ローラ111が搬送ローラ131の動作に合わせて回転する動作を禁止する。
【0052】
このような用紙搬送制御部60による搬送動作の開始後には、上記印刷指示された印刷画像データにおいて現在の頁に画像形成しきれず次頁への画像形成が必要なデータが存在するか否かを判断し(S220)、次頁への画像形成が必要なデータがない場合には(S220でNo)、S210で開始された用紙Pの1パス分の搬送動作が完了するのを待って(S120)、S130に移行し、1パス分の画像形成処理を開始する。
【0053】
一方、次頁への画像形成が必要なデータがある場合には(S220でYes)、S210での処理を契機に先行用紙後端が用紙センサSN1による用紙端の検出地点を通過することで用紙センサSN1により先行用紙後端が検出されるか、S210で開始した先行用紙の1パス分の搬送動作が完了するまで待機し(S230,S240)、用紙センサSN1により先行用紙後端が検出されずに(S230でNo)、1パス分の搬送動作が完了した場合には(S240でYes)、上記予測が間違っていたことになるため、S130に移行する。
【0054】
一方、用紙センサSN1により先行用紙後端が検出された場合には(S230でYes)、その検出時点でS250に移行し、図4における時刻T2と時刻T3との間の時間帯に示すように、「給紙制御部80を通じて給紙ローラ111を回転させて、これまで連れ回し搬送してきた後続用紙を、中間ローラ121の設置地点まで一気に、連れ回し搬送時の搬送速度及び搬送ローラ131による先行用紙の搬送速度よりも速い速度で搬送する処理」を開始する。
【0055】
また、S210で開始された先行用紙の搬送動作が完了次第、S250で開始した後続用紙の搬送動作が完了するのを待つことなく、先行用紙に対する1パス分の画像形成処理をS130での処理と同様に開始する(S260)。尚、本実施例の画像形成装置1は、S260での画像形成処理を最後に、先行用紙への画像形成を止めて、後続用紙への画像形成を開始する構成にされている。
【0056】
また、S260で開始した1パス分の画像形成処理に基づく先行用紙への画像形成完了後、主制御部10は、「給紙制御部80を通じて中間ローラ121を回転させて、中間ローラ121の設置地点で待機している後続用紙を搬送ローラ131の設置地点まで搬送すると共に、用紙搬送制御部60を通じて搬送ローラ131及び排紙ローラ141を回転させて、先行用紙を排紙し後続用紙を頭出しする処理」を開始する(S270)。但し、本実施例の画像形成装置1は、この1パス分の画像形成処理による用紙Pの画像形成が完了するまでの期間に、S250で開始した中間ローラ121までの後続用紙の搬送動作が完了するように構成されているものとする(図4参照)。S270の処理によって開始される中間ローラ121及び搬送ローラ131の回転動作は、図4において時刻T3を起点とする中間ローラ121及び搬送ローラ131の回転動作に対応する。
【0057】
また、S270における上記処理の開始後、主制御部10は、後続用紙の頭出しが完了するのを待って(S120)、S130に移行して、頭出しされたこの用紙Pに対し1パス分の画像形成処理を開始する。ここでの画像形成処理によって用紙Pに行われるインク吐出動作は、図4において時刻T4から開始されるインク吐出動作に対応する。
【0058】
以上、印刷制御処理における一連の手順について説明したが、このような手順で印刷制御処理を実行することにより、用紙Pは、図5に示すように搬送される。図5(a)は、後続用紙の連れ回し搬送初期の状態での先行用紙及び後続用紙の配置を示す図であり、図5(b)は、図4における時刻T2での先行用紙及び後続用紙の配置を示す図である。また、図5(c)は、図4における時刻T3での先行用紙及び後続用紙の配置を示す図であり、図5(d)は、図4における時刻T4での先行用紙及び後続用紙の配置を示す図である。
【0059】
本実施例の画像形成装置1によれば、S200の処理で先行用紙の1パス分の搬送動作に合わせて後続用紙を連れ回し搬送し、先行用紙の後端が用紙センサSN1による用紙端の検出地点を通過すると(S230でYes)、後続用紙をそれまでよりも速い搬送速度で中間ローラ121の設置地点まで搬送する。更に、先行用紙の後端が用紙センサSN1による用紙端の検出地点を通過すると予測される先行用紙の1パス分の搬送動作時には、後続用紙の連れ回し搬送を行わないようにする。従って、後続用紙の搬送動作を迅速に行うことができ、結果として、後続用紙を迅速に搬送ローラ131に供給して頭出しを行うことができる。
【0060】
図4に示す点線は、先行用紙の後端が用紙センサSN1による用紙端の検出地点を通過する先行用紙の1パス分の搬送動作時でも、後続用紙の連れ回し搬送を行う場合の各ローラ111,121,131の駆動態様を示すものである。図4に示すように、先行用紙の後端が用紙センサSN1による用紙端の検出地点を通過する先行用紙の1パス分の搬送動作時でも、後続用紙の連れ回し搬送を行う場合には、用紙センサSN1により先行用紙の後端が検出されて先行用紙が中間ローラ121を抜けるような状態となっても、連れ回し搬送が完了するまで、後続用紙を高速に中間ローラ121の設置地点にまで搬送する処理(S250)を開始することができないことから、先行用紙に対する画像形成が完了するまでの期間に、後続用紙を中間ローラ121の設置地点まで搬送することができない。従って、後続用紙を迅速に搬送ローラ131に供給して頭出しを行うことができない。
【0061】
一方、本実施例の画像形成装置1によれば、上述したように連れ回し搬送を禁止することにより、迅速に後続用紙を搬送ローラ131に供給して頭出しできるので、複数枚に及ぶ画像形成時に、迅速に次頁への画像形成動作に移行することができ、スループットが向上する。
【0062】
ところで、本実施例では、中間ローラ121を備える画像形成装置1に本発明を適用した例を説明したが、本発明は、中間ローラ121及びピンチローラ123を備えない画像形成装置2(図8)にも適用することができる。
【0063】
[第二実施例]
第二実施例の画像形成装置2は、図8に示すように、給紙ローラ111と搬送ローラ131との間の用紙搬送路において中間ローラ121及びピンチローラ123及び用紙センサSN1が設置されていない形態の画像形成装置である。即ち、本実施例の画像形成装置2は、給紙モータM1により給紙ローラ111のみを駆動するものであり、給紙制御部80は、この給紙モータM1を通じて給紙ローラ111を回転させて、給紙トレイ101に載置された用紙Pを、搬送ローラ131の設置地点まで搬送する。この画像形成装置2における他のハードウェア構成については、第一実施例の画像形成装置1と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0064】
本実施例の画像形成装置2が備える主制御部10は、外部のパーソナルコンピュータから印刷指示が入力されると、印刷指示された印刷画像データに基づく画像を用紙Pに形成するために、図6に示す印刷制御処理を実行する。図6において、図4に示す印刷制御処理と同一ステップ番号を示すステップは、第一実施例と同様の処理を実行するステップである。従って、以下では、同一ステップ番号を示すステップの説明を省略又は適宜簡略化する。
【0065】
図6に示す印刷制御処理を開始すると、主制御部10は、給紙制御部80及び用紙搬送制御部60を通じて用紙Pを頭出しする処理を開始し(S110)、その後1パス分の画像形成処理を開始する(S130)。更に、S130で開始した画像形成処理によって印刷画像データ終端までの画像形成処理が完了するか否かを判断し(S140)、終端までの画像形成処理が完了する場合には(S140でYes)、印刷画像データに基づく用紙Pへの画像形成完了後、用紙搬送制御部60を通じて画像形成済の用紙Pを排出し(S150)、印刷制御処理を終了する。
【0066】
一方、印刷画像データ終端までの画像形成処理が完了しない場合には(S140でNo)、後続データが次頁のデータであるか否かを判断し(S160)、次頁のデータである場合には(S160でYes)、S130で開始した用紙Pへの画像形成完了後「用紙搬送制御部60を通じて画像形成済の用紙Pを排出すると共に、この用紙Pの後端がレジセンサSN2により検知されると、給紙制御部80を通じて後続用紙の搬送を開始して、後続用紙を搬送ローラ131に供給し、後続用紙が搬送ローラ131に供給された後には、用紙搬送制御部60を通じて先行用紙の排紙及び後続用紙の頭出しをする処理」を開始する(S171)。そして、後続用紙の頭出しが完了するタイミングで新たな1パス分の画像形成動作を開始する(S130)。
【0067】
この他、後続データが次頁のデータでない場合(S160でNo)、主制御部10は、S130での処理により画像形成に供されている先行用紙の後端位置X1から、基準地点であるレジセンサSN2による用紙端の検出地点までの用紙搬送路に沿う距離Dpを算出する(S181)。距離Dpの算出は、第一実施例と同様の思想で実現できる。
【0068】
そして、距離Dpが、1パス分の用紙搬送距離D1よりも短いか否かを判断することにより、次回、先行用紙を1パス分搬送した際に、先行用紙の後端が基準地点を通過するか否かを判断する(S191)。そして、距離Dpが距離D1以上であると判断すると(S191でNo)、主制御部10は、S200に移行し、S130で開始した画像形成処理に基づく先行用紙への画像形成が完了次第、搬送ローラ131及び給紙ローラ111を回転させて、搬送ローラ131が搬送する先行用紙を1パス分搬送すると共に、後続用紙を連れ回し搬送する。このとき、先行用紙の後端が給紙ローラ111を抜けていない場合は、先行用紙が搬送ローラ131と給紙ローラ111とによって挟持されて搬送されるが、搬送ローラの搬送力(搬送ローラ131とピンチローラ133との間のニップ力や摩擦力)が給紙ローラ111よりも勝るため、先行用紙が距離D1搬送される。そして、先行用紙の後端が給紙ローラ111を抜けた後は、S200の動作によって、先行用紙に続いて、後続用紙が送りだされる。
【0069】
主制御部10は、このように先行用紙を距離D1搬送し、同時に後続用紙を距離D1より短い距離D2分連れ回し搬送する処理を開始すると、先行用紙の1パス分(距離D1)の搬送及び後続用紙の連れ回し搬送が完了するのを待って(S120)、新たな1パス分の画像形成処理を開始する。
【0070】
また、このようにして画像形成処理と、先行用紙及び後続用紙の間欠的な搬送動作とを繰返し行うと、先行用紙の後端がレジセンサSN2による用紙端の検出地点を通過する時期が到来し、距離Dpが距離D1よりも短くなる。このように、距離Dpが距離D1よりも短くなると(S191でYes)、主制御部10は、次回における先行用紙の1パス分の搬送動作により先行用紙の後端がレジセンサSN2による用紙端の検出地点を通過すると予測し、S210に移行する。そして、S210では、S130で開始した画像形成処理に基づく先行用紙への画像形成が完了次第、連れ回し搬送はせずに、搬送ローラ131及び排紙ローラ141のみを駆動して、先行用紙を1パス分搬送する処理を開始する。
【0071】
また、この搬送動作の開始後には、上記印刷画像データにおいて現在頁に画像形成しきれず次頁への画像形成が必要なデータが存在するか否かを判断し(S220)、次頁への画像形成が必要なデータがない場合には(S220でNo)、用紙Pの1パス分の搬送動作が完了するのを待って、S130に移行し、1パス分の画像形成処理を開始する。
【0072】
一方、次頁への画像形成が必要なデータがある場合には(S220でYes)、先行用紙の後端がレジセンサSN2による用紙端の検出地点を通過することでレジセンサSN2により先行用紙後端が検出されるか、S210で開始した1パス分の搬送動作が完了するまで待機し(S231,S240)、レジセンサSN2により先行用紙後端が検出されずに(S231でNo)、1パス分の搬送動作が完了した場合には(S240でYes)、S130に移行する。
【0073】
一方、レジセンサSN2により先行用紙後端が検出された場合には(S231でYes)、その検出時点でS251に移行して、図7における時刻T2と時刻T3との間の時間帯に示すように、「給紙制御部80を通じて給紙ローラ111を回転させて、これまで連れ回し搬送された後続用紙を、搬送ローラ131の設置地点まで、連れ回し搬送時の搬送速度よりも速い速度で搬送する処理」を開始する。また、S210で開始された先行用紙の搬送動作が完了次第、S251で開始した後続用紙の搬送動作が完了するのを待つことなく、先行用紙に対する1パス分の画像形成処理を開始する(S260)。この画像形成処理に基づく先行用紙への画像形成完了後には、S251での処理により搬送される後続用紙先端が先行用紙後端に到達する前に、用紙搬送制御部60を通じて搬送ローラ131及び排紙ローラ141の回転動作を開始させて、先行用紙を排紙し後続用紙を頭出しする処理を開始する(S271)。尚、S271の処理によって開始される搬送ローラ131の回転動作は、図4において時刻T3を起点とする搬送ローラ131の回転動作に対応する。
【0074】
また、S271における上記処理の開始後、主制御部10は、後続用紙の頭出しが完了するのを待って(S120)、S130に移行して、頭出しされたこの用紙に対し1パス分の画像形成処理を開始する。ここでの画像形成処理によって用紙Pに行われるインク吐出動作は、図7において時刻T4から開始されるインク吐出動作に対応する。
【0075】
以上、第二実施例の印刷制御処理における一連の手順について説明したが、このような手順で印刷制御処理を実行することにより、用紙Pは、図8に示すように搬送される。図8(a)は、画像形成装置2において後続用紙の連れ回し搬送初期の状態での先行用紙及び後続用紙の配置を示す図であり、図8(b)は、図7における時刻T2での先行用紙及び後続用紙の配置を示す図である。また、図8(c)は、図7における時刻T3での先行用紙及び後続用紙の配置を示す図であり、図8(d)は、図7における時刻T4での先行用紙及び後続用紙の配置を示す図である。
【0076】
本実施例の画像形成装置2によれば、第一実施例と同様、S200の処理で先行用紙の1パス分の搬送動作に合わせて後続用紙を連れ回し搬送し、先行用紙の後端がレジセンサSN2による用紙端の検出地点を通過すると(S231でYes)、後続用紙をそれまでよりも速い搬送速度で搬送ローラ131の設置地点まで搬送する。更に、先行用紙の後端がレジセンサSN2による用紙端の検出地点を通過すると予測される先行用紙の1パス分の搬送動作時には、後続用紙の連れ回し搬送を行わないようにする。従って、先行用紙の後端がレジセンサSN2による用紙端の検出地点を通過した後の後続用紙の搬送動作を迅速に行うことができ、後続用紙を迅速に搬送ローラ131に供給して頭出しを行うことができる。尚、図7に示す点線は、先行用紙の後端がレジセンサSN2による用紙端の検出地点を通過する回でも後続用紙の連れ回し搬送を行う場合の各ローラ111,131の駆動態様を示すものである。
[対応関係]
以上に、本発明の実施例について説明したが、「特許請求の範囲」記載の画像形成手段は、記録ユニット21、記録制御部20及びキャリッジ制御部40等により実現され、シート搬送機構は、搬送ローラ131及びピンチローラ133を構成要素とするローラ機構により実現されている。また、シート供給機構は、給紙ローラ111を構成要素とするローラ機構(第一の動力伝達機構)、並びに、中間ローラ121及びピンチローラ123を構成要素とするローラ機構(第二の動力伝達機構)により実現されている。
【0077】
また、搬送制御手段は、用紙搬送制御部60や主制御部10が実行するS200,S210の処理(先行用紙を距離D1ずつ搬送する処理)及びS270,S271の処理(次頁配置動作)により実現され、通過判定手段は、主制御部10が実行するS230,S231の処理により実現されている。
【0078】
また、供給制御手段が備える第一制御手段は、給紙制御部80や主制御部10が実行するS200の処理(後続用紙を先行用紙の搬送動作に合わせて距離D2ずつ搬送する処理)により実現され、予測手段は、S180,S190,S181,S191の処理により実現され、第二制御手段は、S190,S191での判断結果に従って、S210に移行して、連れ回し搬送を禁止し、その後、S230,S231でYesと判断した時点から、S250,S251で後続用紙を基準地点まで高速搬送する処理にて実現され、第三制御手段は、S270で中間ローラ121を回転させて、後続用紙を搬送ローラ131の設置地点まで供給する動作により実現されている。
【0079】
また、送出地点がシート搬送機構の設置地点に定められた画像形成装置は、送出地点が搬送ローラ131の設置地点に定められた第二実施例の画像形成装置2に対応し、送出地点がシート搬送機構の設置地点よりもシート搬送路上流側の地点に定められた画像形成装置は、基準地点及び送出地点が中間ローラ121の設置地点に定められた第一実施例の画像形成装置1に対応する。
【0080】
また、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。例えば、第一実施例では、用紙後端が用紙センサSN1による用紙端の検出地点を通過した回の用紙搬送動作によりインク吐出地点に配置された用紙領域への画像形成動作を最後に、この用紙Pに対する画像形成動作を止めて、後続用紙に画像形成動作を行う画像形成装置1を紹介したが、本発明は、用紙後端が用紙センサSN1による用紙端の検出地点を通過した回の用紙搬送動作の後にも、この用紙Pを間欠搬送しては画像形成動作を繰返す画像形成装置にも適用することができる。この場合のキャリッジ31及び各ローラ111,121,131の駆動態様は、例えば、図9に示すようになる。図9に示す例では、後続用紙を中間ローラ121の設置地点まで搬送した後には、後続用紙の連れ回し搬送をせずに待機させ、その後先行用紙の排紙動作に合わせて後続用紙を搬送ローラ131に供給するが、例えば、一点鎖線で示す円の領域では、先行用紙の搬送動作に合わせて、直前に中間ローラ121まで搬送した後続用紙を連れ回し搬送してもよい。このように、中間ローラ121まで後続用紙を搬送した後も、先行用紙の1パス分の搬送動作が繰返される際には、後続用紙を連れ回し搬送するように画像形成装置1を構成すれば、一層迅速に後続用紙を頭出しすることができる。
【0081】
尚、本実施例では当てはまらなかったが、連れ回し搬送中の給紙ローラ111による搬送速度と、連れ回し搬送を禁止した後中間ローラ121又は搬送ローラ131まで送るときの給紙ローラ111による搬送速度と、先行用紙の後端から用紙センサSN1又はレジセンサSN2までの距離と、の関係によっては、連れ回し搬送を行う方が早く搬送が完了する場合がある。特に、先行用紙の後端からセンサ位置までの距離が長い場合、給紙ローラ111が回転せず待機する時間が長くなってしまうため、その時間分連れ回し給紙する方が、搬送ローラ131に到達する時間が短くなる。従って、予め連れ回し給紙を禁止することで搬送が早く完了する先行用紙の後端からセンサ位置までの距離の閾値を設定しておき、S190又はS191の判断の後に、先行用紙の後端からセンサ位置までの距離と閾値との比較を行い、連れ回し給紙を禁止するか否かを判断するよう構成しても良い。
【0082】
その他、S230及びS231にて実行される用紙の後端がセンサ位置を通過したかの判断は、センサの検知に依らず判断しても良い。即ち、搬送ローラ131の回転量及び用紙サイズに基づいて用紙の後端位置を管理し、基準位置と比較することで、先行シートの後端通過を判断しても良い。
【0083】
また、S190及びS191のように、用紙後端位置からセンサ位置までの距離と1回の搬送ローラ131による搬送量との比較によって、先行用紙の後端がセンサ位置を通過するかを予測する構成でなくても良い。すなわち、用紙後端位置からセンサ位置まで搬送されるのにかかる時間と1回の搬送にかかる時間との比較によって予測しても良い。また、搬送回毎に予測せず、用紙サイズと各回の搬送量に基づいて、先行用紙の搬送開始時点で予め予測していても良い。
【符号の説明】
【0084】
1,2…画像形成装置、10…主制御部、20…記録制御部、21…記録ユニット、23,43,63,83…駆動回路、31…キャリッジ、40…キャリッジ制御部、45,65,85…エンコーダ、47,67,87…信号処理部、60…用紙搬送制御部、80…給紙制御部、101…給紙トレイ、111…給紙ローラ、121…中間ローラ、123,133,143…ピンチローラ、131…搬送ローラ、141…排紙ローラ、M1…給紙モータ、M2…搬送モータ、M3…CRモータ、P…用紙、R1,R2…伝達機構、SN1…用紙センサ、SN2…レジセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段による画像形成位置よりもシート搬送路の上流に設けられたシート搬送機構を駆動して、前記画像形成位置に向けて、シートを間欠的に第一の距離ずつ搬送する搬送制御手段と、
前記シート搬送機構よりも前記シート搬送路の上流に設けられたシート供給機構を駆動して、シートを前記シート搬送機構に供給する供給制御手段と、
前記搬送制御手段により搬送されている先行シートの後端が、前記シート搬送路における前記シート搬送機構及び前記シート供給機構の間において予め定められた基準地点を通過したか否かを判定する通過判定手段と、
を備え、
前記供給制御手段は、
前記第一の距離ずつシートを搬送する前記搬送制御手段の搬送動作に合わせて、前記シート供給機構を駆動し、前記先行シートに続いて前記シート搬送機構に供給するシートである後続シートを前記搬送制御手段によるシートの搬送速度よりも遅い速度で搬送することで、間欠的に前記後続シートを前記第一の距離より短い第二の距離ずつ搬送する第一制御手段と、
前記間欠的に行われる各回の前記第一制御手段による前記後続シートの搬送動作の内、合わせて実行される前記搬送制御手段の搬送動作により前記先行シートの後端が前記基準地点を通過する回を予測する予測手段と、
前記予測手段の予測結果に従って、前記先行シートの後端が前記基準地点を通過すると予測された回の前記第一制御手段による前記後続シートの搬送動作を禁止し、前記通過判定手段により前記先行シートの後端が前記基準地点を通過したと判定された時点から、前記後続シートの先端が、送出地点として予め定められた前記基準地点又は前記基準地点よりも前記シート搬送路下流における前記先行シートの後端に接触しない地点に到達するまで、前記シート供給機構を駆動し、前記後続シートを前記第一制御手段によるシートの搬送速度よりも速い搬送速度で搬送する第二制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記基準地点を通過するシート端部を検出可能なセンサが設けられ、
前記通過判定手段は、前記センサの検出信号に基づき、前記先行シートの後端が前記基準地点を通過したか否かを判定すること
を特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記予測手段は、前記搬送制御手段が搬送する前記先行シートの前記シート搬送路における位置を特定し、前記搬送制御手段による搬送動作の開始時点での前記先行シートの後端と前記基準地点との距離が前記搬送制御手段による前記搬送動作によって搬送されるシートの搬送距離よりも短い回を、前記先行シートの後端が前記基準地点を通過する回であると予測する構成にされていること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記送出地点は、前記シート搬送機構の設置地点に定められ、
前記供給制御手段は、前記第二制御手段による前記送出地点への前記後続シートの搬送動作により、前記後続シートを前記シート搬送機構に供給する構成にされていること
を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記送出地点は、前記シート搬送機構の設置地点よりも前記シート搬送路上流側の地点に定められていること
を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記搬送制御手段は、前記先行シートの後端が前記基準地点を超える契機となった搬送動作の完了後、前記シート搬送機構を駆動して前記先行シートを排出し前記後続シートを前記画像形成位置へと頭出しする次頁配置動作を実行し、その後、前記第一の距離ずつシートを搬送する前記間欠的な搬送動作を再開する構成にされ、
前記供給制御手段は、
前記第二制御手段により前記送出地点まで前記後続シートが搬送された後前記搬送制御手段による前記次頁配置動作の開始に合わせて、前記シート供給機構を駆動し、前記後続シートを前記シート搬送機構に供給する第三制御手段
を備えること
を特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記シート供給機構は、シートに動力を伝達する動力伝達機構を前記シート搬送路に沿う複数の地点に有し、複数の前記動力伝達機構を通じて前記シート搬送機構までシートを搬送する構成にされ、
前記送出地点は、前記複数の動力伝達機構の内、最も前記シート搬送機構寄りに設置された最終段の前記動力伝達機構の設置地点に設定されていること
を特徴とする請求項5又は請求項6記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−20399(P2012−20399A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139496(P2010−139496)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】