説明

画像形成装置

【課題】外装カバーの装着先となる複数の構造体同士が、高精度な位置決めを必要とすることなく、装着される隣接した外装カバー同士の隙間や段差を一定以下として、容易に精度管理を行える構造とする。
【解決手段】複数の個別な構造体1,2に複数の外装カバー4,5が装着された画像形成装置では、個別な構造体に装着される外装カバーのうち、互いに隣接する一方の外装カバー4における他方の外装カバー5との接合面5A近傍に係合部9a、9bを形成し、当該係合部と対向する構造体側に、係合部が嵌合する位置決め穴8a、8bを形成し、外装カバーの少なくとも接合面近傍を弾性変形可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ、これらの複合機能を備えた複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取部を持つ画像形成装置では、オプション構成による画像読取部の移動や、画像読取部の位置調整機構を備えるものがある。このような構成を有する画像形成装置では、それら装置自体の形状変更に対し、如何に外観に違和感を持たせずに外装カバーによって対応するかが課題とされている。このような課題を解決するため、特許文献1には、オプションの組み合わせによる装置形状変更の場合には、外観カバーのつなぎ部のカットをカットすることや、形状変更に対応したカバーを追加することで対応する構成が開示されている。具体的には、装置の高さ調整に対応させてハーネスをカバーする目的で、樹脂材で非可撓性を持たせて形成した筒状のハーネスカバーを有している。このハーネスカバーは、切断可能なつなぎ部を介して連結された上カバー部と下カバー部とで全体を一体成形されている。そして、画像読取部を一段低い位置に取り付けたときは、つなぎ部をカットし、下カバー部を切り離して一段低くしたハーネスカバーを用いてハーネスを被っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
オプション構成による装置構成要素の大きな移動であれば外観カバーのカットや追加で対応できるが、装置構成要素となる画像読取部の調整機構は、昨今の高画質対応により、その調整量は数mmもしくは1mm以下であるため、外観カバーのカットや追加では対応が困難という課題がある。また、隣接した外装カバーの隙間や段差を一定以下にするためには、外装カバーの精度はだけではなく、各々外装カバーが取り付けられる隣接した装着先となる構造体同士を、高精度に位置決めする必要がある。
本発明は、外装カバーの装着先となる複数の構造体同士が、高精度な位置決めを必要とすることなく、装着される隣接した外装カバー同士の隙間や段差を一定以下として、容易に精度管理を行える構造とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明にかかる、複数の個別な構造体に複数の外装カバーが装着された画像形成装置では、個別な構造体に装着される外装カバーのうち、互いに隣接する一方の外装カバーにおける他方の外装カバーとの接合面近傍に係合部を形成し、当該係合部と対向する構造体側に、係合部が嵌合する位置決め穴が形成し、外装カバーの少なくとも接合面近傍を弾性変形可能に構成したことを特徴としている。
本発明に係る画像形成装置において、一方の外装カバーは、互いに隣接された構造体に跨る形状であり、他方の外装カバーとの接合面が、他方の外装カバーが装着される一方の構造体と対向し、他方の構造体側に締結されることを特徴としている。
する請求項1記載の画像形成装置。
本発明に係る画像形成装置において、一方の外装カバーの接合面の剛性よりも、同外装カバーの他の面の剛性が相対的に弱く形成されていることを特徴としている。
本発明に係る画像形成装置において、係合部と、この係合部が形成される一方の外装カバーとが異なる材質で形成され、係合部の剛性が、一方の外装カバーの剛性よりも高く形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、個別な構造体に装着される外装カバーのうち、互いに隣接する一方の外装カバーにおける他方の外装カバーとの接合面近傍に係合部を形成し、当該係合部と対向する構造体側に、係合部が嵌合する位置決め穴が形成し、外装カバーの少なくとも接合面近傍を弾性変形可能に構成したので、係合部と位置決め穴との嵌合により、両者の嵌合部を基点として外装カバーが弾性変形して矯正されるので,調整機構の有無によらず、複数の別体の構造体が互いに十分な位置精度を達成しなくとも、隣接する外装カバー同士の隙間や段差を一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】個別な構造体の一形態を示す斜視図である。
【図2】個別な構造体の組み付け工程を説明する斜視図である。
【図3】個別な構造体に外装カバーを装着した状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の主要部を構成する位置決め穴の構成を示す拡大斜視図である。
【図5】外装カバーと位置決め穴に嵌合する係合部の構成を示す斜視図である。
【図6】係合部を有する外装カバーの内部構造を示す図である。
【図7】係合部の別な形態が適用された外装カバーの構成を示す斜視図である。
【図8】外装カバーが構造体に固定された状態を示す斜視図である。
【図9】本発明が適用された画像形成装置の一例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の特徴は、外装カバーが取り付けられる構造体に位置決め用の穴を形成し、この穴に外装カバーに設けた係合部となるボス部を挿入して嵌合する。このとき、外装カバーが意図的に矯正しやすい形状・材質である、例えば弾性体である樹脂で成型されていると、位置決め穴とボス部の嵌合により、弾性体であるカバーが矯正されるので,隣接するカバー同士の隙間や段差を一定にすることができるものである。
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図9は、本発明の実施対象とする画像形成装置の一例の模式図であり、図中、符号100は、画像形成装置を示し、符号101は画像形成部(以下、プロッタ部)、102は画像読取部(以下、スキャナ部)、103は操作部である。プロッタ部101とスキャナ102部の間には排紙用の空間が設けられ、スキャナ部102の一部は中空に浮いている。本発明は、スキャナ部102への操作部103の取り付け部位104に適用するものとする。
【0009】
図1は、図9に示した画像形成装置の複数の個別な構造体のうち、互いに隣接する構造体1,2を示す。構造体1,2は、後述する外装カバーの装着先となる。これら構造体1,2としては、画像形成装置のフレームが該当する。図1において、構造体1と構造体2は、互いに直接ネジ等で締結されていない状態を示している。
【0010】
図2は、構造体1と構造体2が、双方の構造体に隣接する別の構造体3を介して締結される状態を示している。図2において、構造体1と構造体3は、図示しないネジなどの締結部材で互いに締結されている。これに対し、構造体2と構造体3は互いに締結されておらず,図示しないさらに別の構造体を介して締結される。このため、構造体1と構造体3は互いの位置関係が一義的に定められる。これに対し、構造体2と構造体3は、別な構造体を介して一体化されるため、その位置関係にずれが生じやすい。よって、構造体1と構造体2との互いの位置関係にもずれが生じ易い。
【0011】
図3は構造体1に外装カバー4が、構造体2に外装カバー5がそれぞれ直接装着された状態を示す。本形態において、外装カバー4と外装カバー5は、構造体1,2への装着時に互いに隣接する外装カバーであり、外装カバー5を一方の外装カバーとすると、外装カバー4は他方の外装カバーとなる。
【0012】
このため、外装カバー4は構造体1に対して精度よく位置を出せ、外装カバー5は構造体2に対して精度よく位置を出せる。しかし、構造体1と構造体2との互いの位置関係は、構造体2と構造体3とが別な構造体を介して一体化されているので、公差が積み上がるため、結果として隣接する外装カバー4と外装カバー5との位置関係の精度は出し難くなる。
【0013】
図4は、構造体1に対して構造体3が位置調整可能な構造を説明する図である。図4において、構造体1と構造体6は、図示しないネジで締結されて一体化されている。また構造体6と構造体3は図示しないネジ締結されて一体化されている。構造体6には、紙面において上下方向に延びる長穴7a,7bが同一線上に形成されている。構造体1は、この長穴7a,7bを介して構造体6と図示しないネジで締結される。長穴7a,7bは、ネジの径よりも長く形成されているため、構造体6と一体化された構造体3は、構造体1に対して長穴7a,7bによって上下方向に微調整可能となっている。よって、外装カバー4と外装カバー5は、紙面上下方向への位置調整は可能であるが、外装カバー4の長手方向への位置調整はできないため、互いの位置が精度良く出ない場合があり得る。
【0014】
一般的に、カバー同士の位置合わせをする上で図3、図4に示す一体化構造は好ましくない。しかしながら図3,図4に示す構成を避けると、構造体の設計自由度が減少する。単なる外装カバーであれば意匠面、安全面において機能を有すれば良いが、特に画像形成装置などの構造体によって各モジュールの位置を精密に出さなくてはならない場合、機械内部の設計を優先することが装置の機能を達成するには重要であるので、各モジュールを装着固定する構造体同士の位置決め精度が優先される。
【0015】
そこで本発明は、構造体同士の位置決め精度によらず,また微調整などによる構造体同士の位置変動によらず,カバー同士の隙間や段差が一定となるような構造とした。
この構造は、図4に示すように、構造体1に、同構造体を構造体2方向に貫通する位置決め用の穴となる嵌合穴8a,8bを紙面上下方向に直線状に形成した。また本形態において、外装カバー5は、互いに隣接された構造体1,2に跨るように構造体2の長手方向に長く形成されている。このため、構造体1と構造体2へ外装カバー5の装着する際に、構造体1と対向し、構造体1への接合面となる外装カバー5の内壁面5Aに、図5,図6に示すように、外装カバー5の内側に突出した係合部となるボス部9a,9bを形成した。このボス部9a,9bは、外装カバー5の装着時に嵌合穴8a,8bと対向する位置に形成されていて、各嵌合穴8a,8bに対して挿入する方向に突出している。ボス部9a,9bと嵌合穴8a,8bは、矢印aで示すその幅方向への長さがほぼ同じ長さで形成されている。そのため、嵌合穴8a,8bにボス部9a,9bが挿入されると、両者は嵌合することになり、外装カバー5の幅a方向への位置決めが成されて構造体1に固定される。また、外装カバー5は構造体2に対して、ボス部9a,9bが形成されていない上面5Bがネジ締結により位置決めされる。
【0016】
外装カバー5は弾性を有する材質で成形されていて、弾性変形可能とされている。弾性変形としては、少なくとも内壁面5A近傍が弾性変形であればよい。このため、外装カバー5はボス部9a,9bを有している内壁面5Aがボス部9a,9bと嵌合穴8a,8bとの嵌合部を中心に変形するとこで位置ずれが矯正され、外装カバー4とフレーム1,2に対する位置決めを両立することができる。
【0017】
すなわち、一方の外装カバー5は、互いに隣接された構造体1,2に跨る形状であり、他方の外装カバー4との接合面5Aが、他方の外装カバー4が装着される一方の構造体1と対向し、ボス部9a,9bと嵌合穴8a,8bとの嵌合し、他方の構造体2側に上面5Bが締結されることになる。
【0018】
さらに、より矯正され易いように、図5に示すように、外装カバー5の例えばボス部が形成された内壁面5Aと異なる面である上面5Bには、部分的に薄肉部12を形成してもよい。つまり,ボス部9a,9bが形成された内壁面5Aやネジ止め部周辺の面を主位置決め面としたとき、これと比較して、上面5B(従位置決め面)を相対的に低剛性とすることで、より矯正され易くなり、外装カバー4とフレーム1,2の位置決めを向上することができる。またボス部9a,9bの周囲の内壁面5Aに例えばリブを設けることで、内壁面5Aの剛性を高め、相対的に上面5Bが低剛性となる構成としても、弾性変形しやすくなることで矯正されやすくなるので好ましい。
【0019】
つまり,外装カバー5を弾性変形可能とすることで、構造体2に対してネジ締結により十分精度を保ちながら、構造体1に対しても矯正効果により外装カバー4との隣接箇所となるカバー端部5C側の幅方向aへの位置を精度良く達成することができる。よって図6に示すように、カバー5とカバー4の隙間寸法bの精度を向上させることができる。
【0020】
図7は、ボス部9a,9bに相当するボス部10a,10bを外装カバー5と異なる材質とした形態を示す。例えば、外装カバー5に相当する外装カバー50をゴム製とし、係合部となる矯正用のボス部10a,10bを鉄芯で構成する場合、ボス部10a,10bとなる鉄芯を支持する支持部51a,51bを外装カバー50の内壁50Aに一体成形し、成形後に鉄芯を支持部51a,51bに挿入してボス部10a,10bとする。無論鉄芯の直径は嵌合穴8a,8bに嵌合すべく幅方向aの寸法とほぼ同寸法とする。実用上は、主位置決め面となるボス部10a,10bが形成される内壁面50Aは高剛性とする必要があるため、内壁面50Aは平面とし、内壁面50Aに装着可能な大きさの鉄板にボス部10a,10bをインサート形成し、その鉄板52を高剛性としたいカバー面(内壁面50A)に貼りつけてもよい。つまり外装カバー50の一部が相対的に低剛性となればよいので、ボス部10a,10bとカバー材質は構造により適宜選択すればよい。このように構成しても、外装カバー50を弾性変形可能とすることで、構造体2に対してネジ締結により十分精度を保ちながら、構造体1に対しても矯正効果により外装カバー4との隣接箇所となるカバー端部50C側の幅方向aへの位置を精度良く達成することができ、カバー50とカバー4の隙間寸法bの精度を向上させることができる。
【0021】
図8は、外装カバー4,5のカバー割を示す図である。上記の説明では、外装カバー4と外装カバー5は別体であり、構造体2には、外装カバー5以外に外装カバー5と別体の外装カバー11も装着される。しかし、外装カバー4と外装カバー5、または外装カバー5と外装カバー11を一体として成形してもよい。ただし,外装カバーにエンクロージャとしても機能を十分持たせる場合、一般的に硬くなる傾向にあることから(十分な肉厚,リブ形状などで)、サイズの大きい外装カバー(4,11)は通常通り筐体(エンクロージャ)機能を意識して設計・成型し、カバー合わせの調整が必要な箇所となる、例えばコーナー部分や接合部近傍に使用される外装カバーには、外装カバー5のような、変形の容易な材質や構造をもつ外装カバーを配置するのが好ましい。
【0022】
本発明に係る画像形成装置には、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの単体、あるいはこれら幾つかの機能を備えた複合機が含まれる。また、本発明の内容である外装カバーの取付け構造の適用範囲は、画像形成装置に限定されるものではなく、構成部品の位置を適宜変更して使用する装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1,2 複数の個別な構造体
4 他方の外装カバー
5,50 一方の外装カバー
5A,50A 一方の外装カバーの接合面
8a,8b 位置決め穴
9a,9b 係合部
10a,10b係合部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開平10‐136133号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個別な構造体に複数の外装カバーが装着された画像形成装置において、
前記個別な構造体に装着される外装カバーのうち、互いに隣接する一方の外装カバーにおける他方の外装カバーとの接合面近傍に係合部を形成し、当該係合部と対向する構造体側に、前記係合部が嵌合する位置決め穴が形成するとともに、
前記外装カバーの少なくとも接合面近傍を弾性変形可能に構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記一方の外装カバーは、互いに隣接された構造体に跨る形状であり、他方の外装カバーとの接合面が、他方の外装カバーが装着される一方の構造体と対向し、他方の構造体側に締結されることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記一方の外装カバーの接合面の剛性よりも、同外装カバーの他の面の剛性が相対的に弱く形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記係合部と、この係合部が形成される一方の外装カバーとが異なる材質で形成され、前記係合部の剛性が、一方の外装カバーの剛性よりも高く形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−53283(P2012−53283A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195913(P2010−195913)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】