説明

画像形成装置

【課題】排出する用紙に対して所望の積載品質を満たすのに十分な除電を行う。
【解決手段】排紙台45の上に積むように用紙Pを排出する画像形成装置1は、排紙台に用紙を送り出す排紙ローラー44の下流側に配置された接触式除電器51と、用紙搬送方向における接触式除電器が配置された位置またはそれより下流側の位置に配置された少なくとも一つの非接触式除電器52とを備え、用紙に対して接触式の除電を行いかつ同時または以後に非接触式の除電を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙に画像を印刷する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターおよび複写機のようにシート状の用紙に画像を印刷する画像形成装置は、用紙を排紙台に送り出す排紙ローラーの近傍で用紙の除電を行なう。一般に、この排紙時の除電には自己放電式除電器である除電ブラシが用いられている。除電ブラシはその先端部が用紙の上面と接触するように排紙ローラーの下流側に配置され、排紙以前の搬送過程で用紙に帯電した電荷(静電気)を除去する。
【0003】
排紙時の除電のための除電器の配置に関して、特許文献1では画像読取装置における原稿排出用のローラーの下流側に第1および第2の除電ブラシを配置することが提案されている。ローラーに近い第1の除電ブラシは、ローラーに絡みつくのを防ぐため、ローラー配設部を除いた用紙幅の範囲に設けられ、第1の除電ブラシの下流側の第2の除電ブラシはローラー幅の範囲に設けられる。また、特許文献2では、排紙ローラーの下流側で第1および第2の除電器を順に用紙の上面と接触させて除電し、それに先立って除電効果を高めるために排紙ローラーの上流側で第3の除電器によって用紙の下面を除電することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−302993号公報
【特許文献2】特開2006−44907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
用紙の除電が不十分であると、排紙台における用紙の積載品質が低下する。排紙台の上で電気的反発により用紙が浮き上がったり、複数枚の用紙に連続的に印刷するマルチプリントにおいて順に排出された複数の用紙どうしが反発し合って重なりが乱れたりする。特に、比較的に薄い用紙は軽量で撓み易いので、薄い用紙を使用するマルチプリントでは積載の乱れが顕著となる。上述の先行技術のように接触式の除電器を複数箇所に配置しても積載不良の生じることがあった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑み、排出する用紙に対して所望の積載品質を満たすのに十分な除電を行う画像形成装置の実現を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する画像形成装置は、排紙台の上に積むように用紙を排出する画像形成装置であって、前記排紙台に前記用紙を送り出す排紙ローラーの下流側に配置された接触式除電器と、用紙搬送方向における前記接触式除電器が配置された位置またはそれより下流側の位置に配置された少なくとも一つの非接触式除電器と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、接触式除電器と用紙との接触によってそれ以前に用紙に帯電していた電荷が除去され、残った電荷および接触式除電器と用紙との接触によって新たに帯電した電荷が非接触式除電器によって除去されるので、用紙を十分に除電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体の構成を示す図である。
【図2】画像形成装置における除電に関わる要部の構成を示す図である。
【図3】複数の非接触式除電器を配置する例を示す図である。
【図4】用紙搬送路の幅方向における除電器の配置範囲を示す図である。
【図5】非接触式除電器の取付けの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る画像形成装置はプリンターエンジンとイメージスキャナーを備える。この種の画像形成装置としては、複写機、ファクシミリ装置、および、少なくともコピーかファクシミリ送信かを含む複数の機能を有する複合機がある。図1に例示される画像形成装置1は、多機能の複合機、すなわちMFP(Multi-functional Peripheral)である。
【0011】
図1のように画像形成装置1では、用紙スタッカー15、プリンターエンジン14、イメージスキャナー13およびADF(Auto Document Feeder)12が順に積み重なるように配置されている。画像形成装置1の構造はいわゆる胴内排紙型であり、プリンターエンジン14とイメージスキャナー13との間に胴内排紙空間19が設けられている。胴内排紙型には、プリンターエンジンの側面から排紙トレイが張り出す構造と比べて、画像形成装置の設置に必要な床面積が小さいという利点がある。画像形成装置1のタワー状の胴体は、胴内排紙空間19より下の胴体下部1A、胴内排紙空間19より上の胴体上部1B、およびこれらを連結する支柱部16とで構成される。支柱部16は胴内排紙空間19の右側に存在し、胴内排紙空間19は少なくとも画像形成装置1の前方および左方に開放される。プリンターエンジン14によって印刷された用紙は、支柱部16内から排紙ローラー対44によって胴内排紙空間19へ排出される。排出された用紙は、胴体下部1Aの上面に形成された排紙台としての排紙トレイ45の上に積載される。
【0012】
画像形成装置1は、操作パネル11上の操作または図示しないネットワークを介して接続される外部機器からのアクセスに応じて動作する。例えばコピージョブが与えられると、ADF12が原稿シートをイメージスキャナー13の読み取り位置へ搬送し、イメージスキャナー13が原稿画像を光学的に読み取る。イメージスキャナー13から出力される多値のスキャン画像データを図示しない制御回路がラスター画像データに変換し、電子写真式の作像機構であるプリンターエンジン14がラスター画像データを用紙に印刷する。その際、用紙スタッカー15が所定サイズの用紙をプリンターエンジン14に供給する。プリンターエンジン14は画像を印刷した用紙を排出する。
【0013】
排出された用紙を冷却するためのタッキングファンユニット(冷却ファンユニット)30が、支柱部16から胴内排紙空間19に張り出すように配置されている。タッキングファンユニット30は、排紙された用紙が通過する用紙搬送経路の上方に位置し、下方を通過する用紙に向けて送風する。これにより、排紙トレイ45上の積み重なった用紙どうしが貼り付くタッキングを防ぐことができる。タッキングは、電子写真プロセスにおける定着段階で加熱された複数の用紙が保熱状態のまま積み重なった場合に生じる。本実施形態の画像形成装置1では、タッキングファンユニット30が非接触式除電器52の支持体として利用される。
【0014】
図2のように、画像形成装置1は、接触式除電器51と非接触式除電器52とを備えている。用紙搬送経路に沿う搬送方向M1における接触式除電器51の配置位置は、用紙Pを挟んで互いに逆方向に回転する排紙ローラー対44の近傍でありかつ排紙ローラー対44に対する下流側の位置である。接触式除電器51は、排紙ローラー対44によって部分的に挟まれた送出し途中の用紙Pの上面と接触するように支柱部16の外面における排紙口160の上側部分に固定されている。非接触式除電器52の搬送方向M1における配置位置は、接触式除電器51の配置位置に対する下流側の位置である。非接触式除電器52は、送出し途中の用紙Pの上面と対向するように、タッキングファンユニット30における用紙搬送方向M1の前方側の端部に取り付けられている。
【0015】
接触式除電器51および非接触式除電器52として除電ブラシが好適である。除電ブラシは帯状に並んだ多数の可撓性電極から構成される。例えば、各可撓性電極は、形状保持のために側面が樹脂被覆されたステンレス細線の束、またはカーボンや銅化合物といった導電物質を含有する繊維の束である。
【0016】
接触式除電器51の可撓性電極の先端が用紙Pの片面と接触することによって、通常は、用紙Pの帯電荷がほぼ十分に除去される。除去される電荷には、排紙ローラー対44との摩擦で生じる電荷が含まれる。しかし、用紙Pの剛性、排出方向のばらつき、接触式除電器51の構造や取付け状態のばらつきなど、何らかの原因で可撓性電極の絶縁体部分と用紙Pとが擦れて用紙Pが僅かに帯電することがある。この帯電によって用紙Pの除電が不十分になるのを非接触式除電器53が防ぐ。
【0017】
非接触式除電器53の可撓性電極の先端が用紙Pの片面と対向すると、自己放電(コロナ放電)によって用紙P上の残留電荷が除去される。非接触式除電器53が有効に機能するには、用紙Pが排紙ローラー対44による挟持から開放されて排紙トレイ45に向かって落下する以前に、必ず用紙Pと非接触式除電器53とが自己放電の生じる適度に短い距離を隔てて対向する必要がある。このため、排紙ローラー対44のニップ部から非接触式除電器53の配置位置までの距離D1は、用紙Pとして使用可能なシートについて定められている搬送方向M1の最小用紙長さ以下とされている。
【0018】
また、接触式除電器51によって帯電した電荷を除去するため、搬送方向M1と直交する幅方向において、非接触式除電器53は接触式除電器51と同等かそれ以上の長さをもつ必要がある。非接触式除電器53は使用可能な最大サイズの用紙に対応した用紙搬送路の幅方向の全長にわたる長さを有している。
【0019】
非接触式除電器53の効果を確かめるため、非接触式除電器53を取り付けた画像形成装置1(実施例)と非接触式除電器53を取り外した状態の画像形成装置1(比較例)とについて、マルチプリントにおける排紙の積載品質を比較した。坪量が60g/m2の用紙を用いた場合には、両者の間に積載品質の顕著な差異は認められなかった。坪量が52g/m2の比較的に薄い用紙を用いた場合には、比較例では数十枚程度の積載で静電反発による用紙の浮き上がりが生じたが、実施例では浮き上がりが生じず百枚を超える用紙を良好に積載することができた。
【0020】
図3は複数の非接触式除電器を配置する例を示している。図3に要部が描かれた画像形成装置1bは、接触式除電器51、第1の非接触式除電器53および第2の非接触式除電器54を有している。これら除電器はいずれも除電ブラシである。接触式除電器51は、上述の例示と同様に排紙ローラー対44の下流側でありかつ排紙ローラー対44の近傍に、送出し途中の用紙Pの上面と接触するように配置されている。第1の非接触式除電器52は、送出し途中の用紙Pの上面と対向するように、タッキングファンユニット30における搬送方向M1の前方側の端部に取り付けられている。そして、第2の非接触式除電器53は、用紙搬送路上の接触式除電器51が配置された位置とほぼ同じ位置に、送出し途中の用紙Pの下面と対向するように配置されている。第2の非接触式除電器54は支柱部16の外面に固定されている。非接触式除電器を複数有することにより、除電の信頼性が高まる。
【0021】
図4のように、第1の非接触式除電器53は、用紙搬送路40の幅方向M2の全長にわたる主部53Aと、主部53Aの両端のそれぞれから搬送方向M1に沿って上流側へ延びる副部53Bとを有する。副部53Bは除電器の全長を長くして自己放電の発生確率を高めるとともに、タッキングファンユニット30による用紙搬送路40への送風の流れを最適化する効果を有する。
【0022】
図5は非接触式除電器の取付けの他の例を示している。図5において図1に対応する要素には図1と同一の符号が付されている。図5の画像形成装置2は図1の画像形成装置1と同じく胴内排紙型のMFPである。画像形成装置2では画像形成装置1とは違って胴内排紙空間19bにタッキングファンユニットが配置されていない。画像形成装置2の胴体下部2Aに在る排紙トレイ45bの全体が胴体上部2Bのイメージスキャナー13の下面と対向する。支柱部16bに取り付けられた接触式除電器51の下流側に非接触式除電器62が配置されており、この非接触式除電器62は下方を通過する用紙の上面と対向するようにイメージスキャナー13の下面に取り付けられている。
【0023】
以上の実施形態によれば、接触式の除電の後に非接触式の除電を行うので、接触式の除電で新たに微量の帯電が生じても、その帯電荷を非接触式の除電で取り除くことができる。非接触式の除電では新たな帯電は生じないので、接触式の除電を繰り返すのと比べてより確実に十分な除電を実現することができる。なお、接触式除電器51を非接触となるように取付け位置を変更した場合、接触による新たな帯電は生じないが、元々あった電荷の除去が不十分になり易い。例えば、用紙が帯電し易い低湿度環境において坪量52g/m2の薄紙を使用した場合、5枚程度の用紙を排出した段階で排紙トレイ45,45b上の用紙どうしの静電反発により用紙が浮かび上がってしまい、それ以降の積載は不良となる。接触式の除電を行なえば、上述のとおり数十枚程度までの積載が可能となり、さらに接触式の除電の後に非接触の除電を行なえば、積載の乱れを無くすことができる。
【0024】
薄い用紙の積載品質を良好にすることができるので、画像形成装置1,1b,2の仕様における使用可能な用紙の種類を多様化することができる。
【0025】
本発明の実施において、非接触式除電器の配置数、搬送方向の配置位置、および取付け位置は例示に限定されない。接触式除電器51の下流の一箇所だけでなく、第1の箇所およびそれより下流の第2の箇所のそれぞれに非接触式除電器を配置してもよい。複数個所に非接触式除電器を配置する場合、用紙における接触式除電器と接触する面内のいずれの部位についても接触によって帯電する可能性があるので、少なくとも接触式除電器に最も近い非接触式除電器における用紙搬送路の幅方向の長さを接触式除電器の幅方向の長さと同等以上とする必要がある。
【0026】
排紙トレイの配置が例えばプリントジョブとファクシミリ受信ジョブ用とを区別して排紙可能な2段構成であれば、段ごとに非接触式除電器を配置すればよい。タッキングファンユニット30やイメージスキャナー13に限らず、排紙トレイ45,45bの上方に存在する支持体を利用して非接触式除電器52,53,62を取り付けてもよいし、除電器専用の支持部材を排紙空間に配置してもよい。
【0027】
非接触式除電器52,53,54,62は除電ブラシに限らず、用紙Pと接触しないように選定される対向間隙を隔てて除電が可能であればよい。例えば、ステンレス極細線とポリエステル繊維からなり表面に多数の微小突起をもつ混紡糸を編んだ除電紐を、接触式除電器51の下流位置で用紙搬送路の幅方向に架け渡してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1,1b,2 画像形成装置
45,45b 排紙トレイ(排紙台)
44 排紙ローラー対
51 接触式除電器
40 用紙搬送路
M1 搬送方向(用紙搬送方向)
52,53,54,62 非接触式除電器
P 用紙
D1 距離
1A,2A 胴体下部
1B,2B 胴体上部
30 タッキングファンユニット(冷却ファンユニット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排紙台の上に積むように用紙を排出する画像形成装置であって、
前記排紙台に前記用紙を送り出す排紙ローラーの下流側に配置された接触式除電器と、
用紙搬送方向における前記接触式除電器が配置された位置またはそれより下流側の位置に配置された少なくとも一つの非接触式除電器と、を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記非接触式除電器は、前記用紙搬送方向における前記接触式除電器が配置された位置より下流に配置され、前記用紙における前記接触式除電器と接触する片面と対向する
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
用紙搬送路上の前記排紙ローラーが前記用紙と接する位置から前記非接触式除電器の配置位置までの距離は、前記用紙として使用可能なシートについて定められている用紙搬送方向の最小用紙長さよりも短い
請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
当該画像形成装置は、胴体下部と胴体上部との間に前記排紙台を有する胴内排紙型であり、
前記非接触式除電器が前記排紙台の上方に位置する前記胴体上部の下面に取り付けられている
請求項2または3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記排紙台の上方に配置されて前記排紙台に向けて送風する冷却ファンユニットを有し、
前記非接触式除電器が前記冷却ファンユニットに取り付けられている
請求項2または3記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記非接触式除電器である第1の非接触式除電器と、前記用紙における前記接触式除電器が接触する片面に対する裏面と対向する第2の非接触式除電器とを備える
請求項2ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1の非接触式除電器および前記第2の非接触式除電器は、前記用紙搬送路における搬送方向と直交する幅方向の全長にわたる長さを有した除電ブラシである
請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記非接触式除電器は、前記用紙搬送方向における前記接触式除電器が配置された位置に配置され、前記用紙における前記接触式除電器が接触する片面に対する裏面と対向する
請求項1記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−32213(P2013−32213A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170024(P2011−170024)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】