説明

画像形成装置

【課題】画像形成装置の状態にあった画像形成の間隔を設定し、形成したトナー像の破棄等、用紙未到達による弊害の発生を未然に防ぐ。
【解決手段】画像形成装置は、用紙を収容する収容部と、給紙回転体を含む給紙部と、画像形成部と、画像形成部が形成した画像を用紙に写す転写部と、転写開始タイミングにあわせて転写部に送り出すレジスト部と、給紙部から供給された用紙の到達を検知する給紙検知体と、給紙回転体の回転開始から給紙検知体の用紙検知までの時間である計測時間が理論時間よりも長いとき、記憶している積算値に、計測時間と理論時間との差が大きいほど大きな値を加算して積算値を更新するカウント部とを含み、画像形成部は、カウント部が積算している積算値が大きいほど、各ページの画像形成の開始時点の間隔である開始時点間隔を、予め定められた基準間隔よりも広げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙部と画像形成部を含み、給紙部からの給紙前に画像形成を開始する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には、給紙を開始する前に、画像形成を開始するものがある。一般に、トナー像の形成を開始してからページの最初の部分の転写位置への到達が、給紙開始から転写位置への到達よりも用紙の到達が遅いとき、給紙よりも前に画像形成が開始される。このような給紙前に画像形成を開始する画像形成装置では、トナー像が転写位置に到達して時点でまだ用紙が到達してない場合がある(用紙未到達)。例えば、給紙部での詰まりや、給紙用の回転体の滑り等により、用紙未到達が生ずる。用紙未到達が生ずると、形成されたトナー像は、一旦破棄され(清掃、回収され)、再度、同じ内容(同じページ)の画像形成(トナー像形成)が行われ、時間、トナー等の点で無駄が生じてしまう。
【0003】
このような問題に関し、例えば、特許文献1に記載のような画像形成装置がある。具体的に、特許文献1記載には、1以上の色毎の転写画像を形成する作像手段、作像開始後の所定のタイミングで用紙を給紙する給紙手段とを備え、転写画像を連続して給紙する用紙に転写し、作像手段の所定色による画像の作像終了から次の作像開始までの作像間隔を計測する手段と、計測した作像間隔と予め設定された基準作像間隔とを比較する手段と、計測した作像間隔が基準作像間隔よりも長いときに短いときよりも早いタイミングで給紙を開始させる手段と、を備えた画像形成装置が記載されている。この構成により、計測した作像間隔が基準作像間隔よりも長いときに、短いときよりも長い時間で給紙異常(不給紙ジャム)の有無を判定し、給紙異常と判定されるのを抑制しようとする(特許文献1:請求項1、段落[0035]等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−211119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、形成した画像(トナー像)に対し、用紙の到達が間に合わない用紙未到達は、給紙部での給紙遅れが原因であることが多い。給紙部での給紙遅れは、給紙用の回転体(給紙ローラーやピックアップローラーと呼ばれる)の摩耗や、紙粉の付着や、滑りやすい用紙の表面等によるスリップが主な原因である。
【0006】
用紙未到達が生ずると、形成したトナー像の破棄(廃棄)などの無駄が生ずる。又、画像形成装置の生産性の低下も招く。そのため、用紙未到達の発生をできるだけ抑える必要があるという問題がある。従来、用紙未到達が生ずると、特許文献1記載の画像形成装置のように、給紙用の回転体の回転開始タイミングを早めて対応している。従来の画像形成装置では、1回、又は、複数回連続して、形成したトナー像の破棄を行うと、給紙用の回転体の回転開始タイミングが早められる。しかし、この方法では、1又は複数回、少なからず形成したトナー像の破棄が生じてしまい、用紙未到達が生じて初めて対応が取られ、未然に形成したトナー像の破棄を防ごうとするものではないという問題がある。
【0007】
又、給紙用の回転体の回転開始タイミングを早めると、紙間が狭く(短く)なる。紙間が短くなると、後方の用紙が先行の用紙に追突する連なりジャムが生じやすくなる。連なりジャムが生ずると、適切に印刷を行うことができない。特に、近年では、画像形成装置の印刷速度の高速化が図られている。この高速化のため、紙間は従来よりも狭められつつあるとともに、用紙の搬送速度は従来よりも高められている。そのため、安易に給紙開始タイミングを早めると、連なりジャムが生じやすくなる。従って、用紙未到達を防ぐうえで、連なりジャムを生じないようにすべきであるという問題がある。
【0008】
ここで、特許文献1記載の画像形成装置は、計測した作像間隔が基準作像間隔よりも長いとき、早いタイミングで給紙を開始させる。従って、連なりジャムが生ずる可能性が高くなる。この点に関し、特許文献1記載の画像形成装置は、何ら対処がなされていない。又、特許文献1記載の画像形成装置は、給紙異常(不給紙ジャム)か否かを判断する時間を延ばし、不給紙ジャムの発生検知を減らす。従って、給紙回転体の経年劣化、摩耗等、画像形成装置の状態にあわせ、用紙未到達の発生を防ぐことは考慮されていない。そうすると、画像形成装置の状態にあわせて用紙未到達の発生を防止できず、用紙未到達が頻発する虞がある。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、画像形成装置の状態にあった画像形成の間隔を設定し、形成したトナー像の破棄等、用紙未到達による弊害の発生を未然に防ぐことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る画像形成装置は、複数枚の用紙を収容する収容部と、一定の間隔で回転を開始して給紙を行って連続して用紙の給紙を行う給紙回転体を含む給紙部と、画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部が形成した画像を用紙に写す転写部と、前記給紙部から給紙された用紙を一時的に留め、転写開始タイミングにあわせて転写部に送り出すレジスト部と、前記レジスト部と前記給紙部間の用紙搬送経路に設けられ、前記給紙部から供給された用紙の到達を検知する給紙検知体と、前記給紙回転体の回転開始から前記給紙検知体の用紙検知までの時間である計測時間が、予め定められた理論時間よりも長いとき、記憶している積算値に、前記計測時間と前記理論時間との差が大きいほど大きな値を加算して前記積算値を更新するカウント部とを含み、前記画像形成部は、前記カウント部が積算している積算値が大きいほど、各ページの画像形成の開始時点の間隔である開始時点間隔を、予め定められた基準間隔よりも広げることとした。
【0011】
この構成によれば、画像形成部は、カウント部が積算している積算値が大きいほど、各ページの画像形成の開始時点の間隔である開始時点間隔を、予め定められた基準間隔よりも広げる。従来、1回の用紙未到達の発生、又は、複数回の連続の用紙未到達が発生して初めて用紙未到達を防ぐための処置がとられていたところ、これにより、給紙の遅れの傾向を予め把握し、画像形成装置の速度を遅く(各ページの画像形成の開始時点の間隔を長く)することができる。従って、用紙の転写部(転写位置)への到達時間に余裕を持たせることができ、多少、転写部への用紙の到着が遅れても、適切に転写を行うことができる。そして、転写部への用紙未到達による、形成した画像の破棄や、画像破棄に伴うクリーニングや、同じ画像の再形成等の無駄の発生を防ぐことができる。しかも、画像形成装置での給紙の遅れを把握するため、各給紙での測定時間に基づいて値を積算し、積算値に基づいて、各ページの画像形成の開始時点の間隔を広げるので、画像形成装置の状態にあわせて、用紙未到達の発生を防ぐことができる。又、給紙タイミング自体は一定であり、給紙タイミングを早めることによる連なりジャムは生じない。
【0012】
又、請求項2に係る発明は、請求項1の発明において、前記カウント部は、複数枚分の前記計測時間の平均値と前記理論時間との差が大きいほど大きな値を加算して前記積算値を更新することとした。
【0013】
この構成によれば、カウント部は、複数枚分の計測時間の平均値と理論時間との差が大きいほど大きな値を加算して積算値を更新する。これにより、計測時間の平均値と理論時間との差に基づき、積算値に加算すべき値が定められ、カウント部が積算値を更新する。従って、画像形成装置の給紙の遅れや進みの全体的な傾向を示す計測時間の平均値と理論時間が比較され、画像の破棄や画像の再形成の無駄の発生を防ぐように、画像形成装置に相応しい(最適な)画像形成の開始時点の間隔を定めることができる。又、平均値を用いるので、突発的に計測時間が長くなることによって、画像形成の開始時点の間隔が極端に広げられることもなく、給紙の遅れ、進みの傾向を反映させて画像形成の開始時点の間隔を定めることができる。
【0014】
又、請求項3に係る発明は、請求項1又は2の発明において、前記画像形成部は、前記積算値を予め定められた定数で割って得られた値だけ、1分間あたりの印刷枚数が減るように、前記基準間隔よりも前記開始時点間隔を広げることとした。
【0015】
この構成によれば、画像形成部は、積算値を予め定められた定数で割って得られた値だけ、1分間あたりの印刷枚数が減るように、基準間隔よりも開始時点間隔を広げる。このように、積算値を予め定められた定数で割って得られた値に基づき、各ページの画像形成の開始間隔を広げる量(調整量)を定めることができる。従って、予め定められた定数の大きさを調整することにより、積算値に対する開始時点間隔の調整量の大きさを調整することができる。
【0016】
又、請求項4に係る発明は、請求項1乃至3の発明において、前記カウント部は、予め定められた枚数分連続して、前記計測時間が前記理論時間以下であれば、前記積算値を減らすこととした。
【0017】
この構成によれば、カウント部は、予め定められた枚数分連続して、計測時間が理論時間以下であれば、積算値を減らす。これにより、給紙が遅延無く行われば、積算値は減る。従って、不必要に各ページの画像形成の開始時点の間隔を広げないようにすることができ、画像形成装置の生産性(印刷速度)を確保、維持することができる。
【0018】
又、請求項5に係る発明は、請求項1乃至4の発明において、前記収容部の取り外しと取り付けを検知するための着脱検知体を有し、前記カウント部は、前記着脱検知体によって前記収容部の取り外しと取り付けが検知されたとき、前記積算値をリセットすることとした。
【0019】
収容部(例えば、用紙カセット)の取り外し、取り付けによって、用紙交換や補給によって用紙の状態が変化することがある。又、給紙回転体の清掃、交換等により、給紙する部材の状態も変化することがある。そこで、この構成によれば、カウント部は、着脱検知体によって収容部の取り外しと取り付けが検知されたとき、積算値をリセットする。これにより、用紙状態等の変化にあわせて、積算値をカウントし、各ページの画像形成の開始間隔を定めるようにすることができる。
【0020】
又、請求項6に係る発明は、請求項1乃至5の発明において、前記積算値が予め定められた限度値を越えたとき、前記給紙部の確認を促すメッセージを報知する報知部を含むこととした。
【0021】
この構成によれば、積算値が予め定められた限度値を越えたとき、給紙部の確認を促すメッセージを報知する報知部を含む。これにより、限度値を越えるほど、給紙の遅延がひどくなっていることを使用者に報知することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、画像形成部(転写位置)への用紙未到達をできるだけ発生させないように、画像形成装置での給紙に関する部材の状態にあった画像形成の間隔を設定することができる。これにより、形成した画像の破棄や破棄したページの画像の再形成等の無駄の発生を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】複合機の模型的正面断面図である。
【図2】画像形成部の一部拡大模型的断面図である。
【図3】複合機のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図4】エンジン部による印刷制御を説明するためのブロック図である。
【図5】連続印刷を行うときの流れの概要を示す説明図である。
【図6】開始時点間隔の調整の流れを説明するためのフローチャートである。
【図7】開始時点間隔の調整に用いるデータの一例を示す説明図である。
【図8】給紙遅れの報知を行う注意画面の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図1〜図8を参照しつつ説明する。本説明では、複合機100(画像形成装置に相当)を例に挙げて説明する。但し、各実施の形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
【0025】
(複合機100の構成の概要)
まず、図1、図2を用い、実施形態に係る複合機100の概略を説明する。図1は、複合機100の模型的正面断面図である。図2は、画像形成部4の一部拡大模型的断面図である。
【0026】
図1に示すように、複合機100の上部には原稿の画像を読み取る原稿搬送部1aが配される。又、原稿搬送部1aの下方に画像読取部1bが配される。
【0027】
まず、原稿搬送部1aは、読み取りを行う原稿が載置される。そして、原稿搬送部1aは、1枚ずつ原稿を読み取り位置(画像読取部1b上面の送り読取用コンタクトガラス11)に向けて搬送する。原稿は、送り読取用コンタクトガラス11に接するように自動かつ連続的に搬送される。尚、原稿搬送部1aは、紙面奥側設けられた支点(不図示)により、上方に持ち上げ可能であり、例えば書籍等の原稿を画像読取部1bの上面の載置読取用コンタクトガラス12に載せることもできる。
【0028】
次に、画像読取部1bは、スキャナとしてユニット化されている。又、画像読取部1bは、載置読取用コンタクトガラス12に載置された原稿や、送り読取用コンタクトガラス11上を搬送される原稿を読み取り、原稿の画像データを形成する。又、画像読取部1b内には露光ランプ、ミラー、レンズ、イメージセンサ(例えば、CCD)等の光学系部材(不図示)が設けられる。
【0029】
そして、これらの光学系部材を用い、画像読取部1bは、載置される原稿や搬送される原稿に光を照射し、その原稿の反射光を受けたイメージセンサーの各画素の出力値をA/D変換し、画像データを生成する。複合機100は、読み取りにより得られた画像データに基づき印刷を行うことができる(コピー機能)。又、複合機100は、読み取りにより得られた画像データをコンピューター200等に送信することができる(図3参照、スキャン機能、送信機能)。
【0030】
又、複合機100の正面前方には、複合機100の動作開始を指示するためのスタートキー21や、液晶表示部22を有する操作パネル2(報知部に相当)が設けられる(図1に破線で図示)。液晶表示部22は、複合機100の状態表示を行う他、機能選択用のメニューや設定値設定用のキーなどを表示する。選択されたメニューやキーを認識するため、液晶表示部22はタッチパネル式である。
【0031】
そして、複合機100の内部には、印刷を行うエンジン部30(図3参照)が設けられる。エンジン部30は給紙部3a、搬送路3b、画像形成部4、中間転写部5a(転写部に相当)、定着部5b等を含む。
【0032】
給紙部3aは、記録媒体として用紙(A4、B4等の各サイズ)等の用紙を収納し、画像形成の際、用紙を供給する。図1では、1つの給紙部3aを図示するが、本実施形態の複合機100では、給紙部3aを上下方向に重ねる等により増設できる。複合機100は複数個の給紙部3aを含み得る。
【0033】
そして、給紙部3aは、複数の用紙(例えば、コピー用紙、普通紙、再生紙、厚紙、OHPシート等の各種シート)を収容するカセット31(収容部に相当)を含む。又、給紙部3aには、カセット31から搬送路3bに送り出すため回転駆動する給紙ローラー32(給紙回転体に相当)が設けられる。給紙ローラー32は回転し、用紙を1枚ずつ搬送路3bに送り込む。
【0034】
又、後述のレジストローラー対38と給紙ローラー32の間に給紙センサー3S(給紙検知体に相当)が設けられる。具体的に、給紙センサー3Sは、給紙部3aの出口(給紙ローラー32の用紙搬送方向下流側近傍)に設けられる。そして、給紙センサー3Sは、カセット31内の用紙載置台33から送り出された用紙の到達、通過を検知するためのセンサーである。又、給紙センサー3Sは、例えば、用紙と接すると回転するアクチュエーターを備えた透過型光センサーである。アクチュエーターは、用紙が存在していないとき、発光部と受光部間の光路を遮り、用紙と接して回転すると発光部からの光が受光部に到達し、受光部(センサー)の出力が変化する。尚、給紙センサー3Sは、透過型の光センサーに限られず、用紙からの反射光で用紙の到達、通過を検知する反射型光センサーでもよいし、又、光センサーに限られず、他種のセンサー(例えば、超音波センサー)でもよく、給紙された用紙の到達、通過を検知可能なセンサーであればよい。
【0035】
又、給紙部3aには、カセット31が、取り付けられているか、取り外されているかを検知するため、着脱検知センサー34(着脱検知体に相当)が設けられる。例えば、着脱検知センサー34は、各カセット31の一面と接するインターロック式のスイッチでもよいし、反射式の光センサーでもよく、カセット31の挿脱の状態を検知できればよい。
【0036】
又、搬送路3bは、供給された用紙を排出トレイ35まで搬送する。そのため、搬送路3bには、搬送ローラー対36、37等が設けられる。又、搬送路3bには、画像形成部4での画像形成(トナー像形成)にタイミングをあわせて用紙を中間転写部5aに送り込むレジストローラー対38(レジスト部に相当)も設けられる。
【0037】
又、搬送路3bには、レジストローラー対38への用紙の到達や通過を検知するレジストセンサー4Sが設けられる。レジストセンサー4Sは、上述の給紙センサー3Sと同様の透過型光センサーとすることができる。尚、レジストセンサー4Sは、透過型の光センサーに限られず、用紙からの反射光で用紙の到達、通過を検知する反射型光センサーでもよいし、又、光センサーに限られず、他種のセンサー(例えば、超音波センサー)でもよく、用紙の到達、通過を検知可能なセンサーであればよい。
【0038】
ここで、図2を用いつつ、画像形成部4を説明する。画像形成部4は、画像データに基づき記録媒体に印刷を行うため画像(トナー像)を形成する。そして、画像形成部4は、図1に示すように、4つの画像形成ユニット40Bk(ブラック)、40C(シアン)、40M(マゼンタ)、40Y(イエロー)と、画像データに基づき、光による走査・露光を各感光体ドラム42に対し行って、静電潜像を形成する露光装置41を含む。尚、各画像形成ユニット40は、使用するトナーの色が異なるが、基本的構成は同様であるから以下の説明では特に説明する場合を除き、Bk、Y、C、Mの記号は省略する。
【0039】
そして、図2に示すように、各画像形成ユニット40は、同図中に示す矢印方向に回転可能に支持され、所定の方向に回転駆動される感光体ドラム42を備える。又、感光体ドラム42の周囲には、帯電装置43、現像装置44、清掃装置45が配される。
【0040】
帯電装置43は、感光体ドラム42の表面を所定電位に均一に帯電させる。露光装置41は、帯電後の感光体ドラム42表面を画像データにあわせ走査・露光する。そして、現像装置44は、トナーを担持し、トナーを感光体ドラム42に飛翔させる。現像装置44は、静電潜像に帯電したトナーを供給して現像(可視像化)する。清掃装置45は、感光体ドラム42の表面を清掃する。これらの構成により、トナー像が各感光体ドラム42の周面に形成され、トナー像は、中間転写部5aに1次転写される。
【0041】
中間転写部5aは、画像形成部4の上方に設けられ、画像データに基づき、画像形成部4の各感光体ドラム42の周面に形成されたトナー像の1次転写を受け、用紙にトナー像の2次転写を行う部分である。そして、中間転写ベルト51は、下側の外周面と各感光体ドラム42が当接するように、駆動ローラー52、従動ローラー53、4本の1次転写ローラー54Bk〜54M等に張架される。駆動ローラー52にはモータ、ギア等の駆動手段(不図示)が接続され回転する。中間転写ベルト51は、駆動ローラー52の回転により、図1において時計方向(矢印方向)に周回する。ここで、1次転写ローラー54Bk〜54Mは、各感光体ドラム42に対向して1本ずつ回転可能に配され、1次転写ローラー54Bk〜54Mに所定の大きさの電圧が印加される。電圧印加により、各色のトナー像が、各感光体ドラム42から中間転写ベルト51に1次転写される。この1次転写の際、各色のトナー像はずれなく重ね合わせられる。
【0042】
そして、中間転写ベルト51に当接し、駆動ローラー52に対向し、回転可能に支持される2次転写ローラー55が中間転写部5aに設けられる。レジストローラー対38は、中間転写ベルト51上のトナー像の駆動ローラー52と中間転写ベルト51のニップ(2次転写ニップN)への進入にあわせ、用紙を2次転写ニップNに送り込む。トナー像と用紙が2次転写ニップNに進入しているとき、所定の電圧が2次転写ローラー55に印加されトナー像は用紙に2次転写される。ベルトクリーニング装置56は、残トナー等を中間転写ベルト51から除去し、清掃する。
【0043】
定着部5bは、用紙に転写されたトナー像を定着させる。用紙は定着部5bを通過する際に加圧・加熱され、トナー像が用紙に定着する。その後、用紙は排出トレイ35に排出され、画像形成が完了する。
【0044】
(複合機100のハードウェア構成)
次に、図3に基づき、実施形態に係る複合機100のハードウェア構成を説明する。図3は、複合機100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0045】
図3に示すように、本実施形態に係る複合機100は、内部に制御部6を有する。制御部6は、複合機100全体の制御を司る。例えば、制御部6は、CPU61、記憶部62等を含む。又、制御部6は、各種画像処理を行う画像処理部63と接続される。印刷のとき、画像処理部63が処理した画像データは、露光装置41に送られる。露光装置は、画像処理部63が処理した各ページの画像データに基づき、各感光体ドラム42の走査、露光を行う。
【0046】
CPU61は、中央演算処理装置であって、記憶部62に格納され、展開される制御プログラムに基づき複合機100の各部の制御や演算を行う。記憶部62は、ROM、RAM、HDD、フラッシュROM等の記憶装置で構成される。記憶部62は、複合機100の制御用プログラム、制御用データ、設定データ、画像読取部1bでスキャンした画像データ等を記憶する。
【0047】
そして、制御部6は、原稿搬送部1aや画像読取部1bや、複合機100内のエンジン部30(給紙部3a、搬送路3b、画像形成部4、定着部5bなどの印刷に関する部分)、操作パネル2等と接続され、記憶部62の制御プログラムやデータに基づき、適切に画像形成が行われるように各部の動作を制御する。尚、制御部6は、全体制御や画像処理を行うメイン制御部や、通信を制御する通信制御部等、機能ごとに制御部6を分割し、制御を行う部分が複数種設けられてもよい。
【0048】
そして、エンジン部30には、エンジン部30の動作を実際に制御するエンジン制御部7が設けられる。エンジン制御部7は、制御部6の指示に基づき、印刷での用紙搬送や画像形成や定着などの制御を行う(詳細は後述)。
【0049】
更に、制御部6は、各種コネクタ、ソケット、通信制御用のチップ等を備えた通信部64と接続される。通信部64は、ネットワークやケーブルや公衆回線等によりコンピューター200(例えば、パーソナルコンピューターやサーバー)や、相手方のFAX装置300と複合機100とを通信可能に接続する。例えば、での読み取りにより得られた画像データを外部のコンピューター200やFAX装置300(インターネットFAXでもよい)と送信することができる(スキャナ機能、FAX機能)。又、外部のコンピューター200やFAX装置300からの画像データを記憶部62に蓄積したり、印刷したりすることもできる(プリンタ機能、FAX機能)。
【0050】
(エンジン部30による印刷制御)
次に、図4を用いて、実施形態に係る複合機100での印刷に関する制御の一例を説明する。図4は、エンジン部30による印刷制御を説明するためのブロック図である。
【0051】
まず、エンジン部30には、用紙搬送や画像形成(トナー像形成)を制御するための演算、処理を行うために、エンジン制御部7が設けられる。エンジン制御部7は、エンジン部30に含まれる各部分を制御するためのプログラムやデータを記憶するエンジンメモリー71を含む。又、例えば、エンジン制御部7にはエンジンCPU72が設けられる。エンジンCPU72は、エンジンメモリー71に記憶されたデータやプログラムに基づき、エンジン部30に含まれる部分の動作を制御する。例えば、エンジンCPU72は、給紙や、用紙搬送や、トナー像の形成タイミング等を制御する。
【0052】
例えば、エンジン制御部7は、画像(トナー像)の形成開始にともない、画像形成部4の露光装置41の動作制御を行い、各色の感光体ドラム42の走査、露光を行わせる。又、印刷ジョブ中、エンジン制御部7は、画像形成ユニット40での電圧印加等を制御して帯電、現像等、静電潜像やその現像に関する動作を行わせる。又、例えば、印刷ジョブ中、エンジン制御部7は、各画像形成ユニット40に設けられた回転体を回転させるメインモーター4Mを駆動させる。
【0053】
又、例えば、印刷ジョブ中、エンジン制御部7は、中間転写部5aの中間転写ベルト51を回転させる中間転写モーター57を動作させ、中間転写ベルト51を周回させる。又、印刷ジョブ中、エンジン制御部7は、各転写ローラーへの電圧印加を制御して、トナー像の中間転写ベルト51や用紙への転写を制御する。
【0054】
又、例えば、印刷ジョブ中、エンジン制御部7は、定着部5bに設けられた定着ヒーター5Hにより定着部5bの温度制御を行う。又、印刷ジョブ中、エンジン制御部7は定着部5bでのトナー像が転写された用紙の加熱用や加圧用の回転体を回転させる定着モーター58を駆動させる。
【0055】
又、エンジン制御部7は、給紙部3aから排出トレイ35に向けての複合機100の機内での用紙供給と搬送を制御する。用紙を搬送するために回転する回転体として、給紙ローラー32、レジストローラー対38、搬送ローラー対36、37などが設けられる。そして、これらの給紙や搬送用の回転体を回転させる搬送モーター39が、複合機100内に設けられる。尚、給紙ローラー32用に1個、レジストローラー対38用に1個というように、給紙や用紙搬送に用いるモーターは、複数設けられても良い。
【0056】
エンジン制御部7は、給紙や用紙搬送を行うとき、搬送モーター39を回転させる。搬送モーター39の回転の駆動力は、搬送モーター39の駆動軸に接続されたギア列(不図示)を介して、給紙ローラー32、レジストローラー対38、搬送ローラー対36、37に伝達される。
【0057】
例えば、エンジン制御部7は、紙間を設けつつ給紙するため、給紙ローラー32の回転と停止を繰り返させて、連続的な給紙を行わせる。又、エンジン制御部7は、レジストローラー対38を、用紙到達当初は停止した状態としておき、撓み作成による斜行矯正後、画像形成部4でのトナー像の形成にあわせて回転させる。このように、給紙ローラー32、レジストローラー対38は、印刷ジョブの間(用紙搬送を行う間)、常時回転しない。
【0058】
そこで、給紙ローラー32、レジストローラー対38への駆動力の伝達経路には、給紙ローラー用電磁クラッチC1、レジストローラー用電磁クラッチC2がそれぞれ設けられる。エンジン制御部7は、各電磁クラッチC1、C2の連結、開放を制御する。そして、エンジン制御部7は、適切に用紙を搬送し画像を形成するため、予め定められたタイミングで給紙ローラー32、レジストローラー対38を回転させる。尚、各搬送ローラー対36、37に対しても電磁クラッチを設け、各搬送ローラー対36、37の回転のON/OFF制御ができるようにしてもよい。
【0059】
又、本実施形態の複合機100では、給紙ローラー32から適切に給紙されたことを検知するために、給紙部3aに対し、給紙センサー3Sが設けられる。給紙センサー3Sの出力は、エンジン制御部7に入力される。エンジン制御部7は、給紙ローラー用電磁クラッチC1をONして給紙を開始してから、対応する給紙センサー3Sの出力を確認して、用紙が供給されているかを確認する。予め定められた許容時間内に用紙が供給されていないとき、エンジン制御部7は、無給紙ジャム発生として、給紙、用紙搬送、画像形成(トナー像形成)などの画像形成動作を停止させる。
【0060】
又、レジストローラー対38に用紙が到達したことを検知するために、レジストセンサー4Sが設けられる。レジストセンサー4Sの出力は、エンジン制御部7に入力される。エンジン制御部7は、レジストセンサー4Sの出力変化を確認し、2次転写ローラー55と駆動ローラー52の2次転写ニップNへの画像(トナー像)の到達に間に合うように、レジストローラー対38に用紙が到達したか否か(用紙未到達が生じたか否か)を確認する。
【0061】
2次転写ニップNへのトナー像の到達に間に合うようにレジストローラー対38に用紙が到達しない用紙未到達が生じたとき、エンジン制御部7は、画像形成部4、中間転写部5aに一旦形成したトナー像を破棄させる。このとき、エンジン制御部7は、清掃装置45に感光体ドラム42上のトナー像を回収させ、ベルトクリーニング装置56に中間転写ベルト51に転写済みのトナー像を回収させる。そして、エンジン制御部7は、破棄したページのトナー像と同じトナー像の再形成を画像形成部4に行わせ、同じトナー像を中間転写部5aに転写させる。
【0062】
尚、エンジン制御部7のカウント部74は、エンジン制御部7の演算、処理結果に基づき、各ページの画像形成の開始時点の間隔(開始時点間隔B1)を調整するための値(積算値)を積算する部分である(例えば、カウンタやメモリー。詳細は後述)。計時部73は、制御に関する各種時間を計時する。
【0063】
(連続印刷での基本的な画像形成や給紙の流れ)
次に、図5を用いて、連続印刷(複数ページにわたる印刷)を行うときの給紙や画像形成(トナー像形成)の流れの概要を説明する。図5は、連続印刷を行うときの流れの概要を示す説明図である。
【0064】
本実施形態の複合機100は、各画像形成ユニット40で各色のトナー像を形成し、中間転写ベルト51に各色のトナー像を重畳する。そして、重畳された1ページ分の各色のトナー像を2次転写ニップNで用紙に転写する。このように、本実施形態の複合機100は、いわゆるタンデム型の画像形成装置である。
【0065】
そして、本実施形態では、エンジン制御部7は、給紙よりも先に感光体ドラム42への露光を開始して画像形成(トナー像形成)を開始する。画像形成開始の後、エンジン制御部7は、給紙ローラー32を回転させて、給紙を開始する。これは、画像形成開始からトナー像の転写位置(本実施形態では2次転写ニップN)に到達するまでの時間が、理想的に給紙がなされたときの給紙開始から2次転写ニップNまでに要する時間よりも長いためである。言い換えると、トナー像の形成開始位置から2次転写ニップNまでの距離の方が、給紙開始位置から2次転写ニップNまでの距離よりも長いためである。
【0066】
具体的に、本実施形態の複合機100では、マゼンタの画像形成ユニット40は、2次転写ローラー55まで最も遠い位置にある(図1参照)。そこで、図5の上から1段目から4段目のチャートで示すように、エンジン制御部7は、2次転写ローラー55に最も遠い色から近い色の順番(マゼンタ→シアン→イエローやブラック)で画像形成部4に画像形成(トナー像形成)を開始させる。尚、図5での1段目から4段目のチャートは、感光体ドラム42の帯電、露光、現像が実行されている状態をHighで示し、次のページの露光待ちの状態をLowで示している。
【0067】
そして、本実施形態の複合機100では、各色の画像形成(トナー像形成)の開始時点(露光開始時点、トナー像を作り始める時点)の間隔(以下、「開始時点間隔B1」)が定められる。エンジン制御部7は、定められた開始時点間隔B1に基づき、各色、各ページの画像形成を開始する。例えば、60ppm(page per minute、1分間あたりの印刷枚数)を実現するのであれば、開始時点間隔B1は1秒とされる(1秒に1回印刷を開始)。又、30ppmを実現するのであれば、開始時点間隔B1は2秒とされる(2秒に1回印刷を開始)。例えば、エンジンCPU72やエンジン制御部7内に設けられた計時部73が時間を計時する。尚、本実施形態の複合機100では、基準となる開始時点間隔B1が設定される(以下、「基準間隔」と称する。)。尚、開始時点間隔B1は基準間隔で固定される訳ではなく、給紙の遅れや進みの状態によって変更される(詳細は後述)。
【0068】
そして、レジストローラー対38は、重畳されたトナー像が用紙の適切な位置に印刷されるように、トナー像の2次転写ニップNへの進入にあわせて用紙を送り出す。この適切な位置へのトナー像の印刷のため、図5の最下段のチャートでしめすように、の画像形成開始(トナー像形成開始)から(例えば、マゼンタ、他の色でもよい)、予め定められた時間が経過するとレジストローラー対38は、回転を開始する。
【0069】
ここで、エンジン制御部7は中間転写ベルト51を一定の速度で周回するように、中間転写モーター57の回転速度を制御する。そのため、トナー像の形成を開始してから重畳されたトナー像が2次転写ローラー55と駆動ローラー52のニップ(2次転写ニップN)に到達するまでの時間は、予め決まっている。そのため、レジストローラー対38の回転を開始させるべき時点は、各色のトナー像の形成開始に応じて、固定的に定まる。このように、トナー像の形成開始タイミングに応じてレジストローラー対38の駆動開始タイミングを定めることができる。
【0070】
遅延無く給紙がなされたときのレジストセンサー4Sの出力の一例を図5の下から2段目のチャートで示している。このチャートでは、用紙の存在を検知している状態をHighで示し、用紙の存在を検知していない状態をLowで示している。そして、エンジン制御部7は、レジストローラー対38が回転を開始すべき時点前にレジストセンサー4Sが用紙の到達を検知しても、レジストローラー対38を直ちに回転をさせない。これにより、用紙の後端側が搬送ローラー対36により搬送され、用紙の先端がレジストローラー対38に突き当てられることにより、斜行が矯正される。そして、エンジン制御部7は、レジストローラー対38が回転を開始すべき時点にレジストローラー対38の回転を開始させる。その後、図5に示すように、エンジン制御部7は、レジストセンサー4Sの用紙の後端通過検知に応じて、次の用紙の到達に備えてレジストローラー対38を停止させる。
【0071】
又、図5では、上から5番目に給紙ローラー32の駆動を示すチャートを示している。このチャートでは、エンジン制御部7は、Highのとき給紙ローラー32を回転させ(給紙ローラー用電磁クラッチC1を連結し)、Lowのとき給紙ローラー32を停止させる(給紙ローラー用電磁クラッチC1を開放する)。
【0072】
本実施形態の複合機100では、印刷の1枚目のとき、エンジン制御部7は、例えば、レジストローラー対38の回転を開始させる時点から予め定められた時間さかのぼった時点で給紙ローラー32による給紙動作を開始させる。
【0073】
給紙や用紙搬送での用紙搬送速度(線速)は予め定められており、エンジン制御部7は、予め定められた速度で給紙、搬送がなされるように、給紙ローラー32や搬送ローラー対36、37を回転させる。又、給紙部3aからレジストローラー対38への距離は固定的である。そのため、給紙部3a(給紙の開始位置)からレジストローラー対38への距離を仕様上の搬送速度で割れば、給紙開始からレジストローラー対38に用紙が到達するまでに要する理論的な時間が求められる。そこで、求めた理論的な時間に撓みに要する時間等のマージンを持たせた時間だけ、レジストローラー対38の回転を開始させる時点から遡った時点で給紙ローラー32による給紙動作を開始させることができる。尚、逆説的に、給紙ローラー32を回転させる時点に基づき、画像形成(トナー像形成)を開始すべき時点を求めることもできる。
【0074】
そして、図5に示すように、エンジン制御部7は、用紙サイズ分だけ給紙ローラー32に給紙動作を行わせると、給紙ローラー32の回転を停止させる。これにより、一定の紙間を設けることができる。
【0075】
又、本実施形態では、エンジン制御部7は、仕様上の印刷性能(仕様上のppm)に応じて固定された間隔(給紙間隔B2)で給紙ローラー32を回転させる(給紙ローラー32の回転開始の間隔が一定)。言い換えると、給紙ローラー32は固定の給紙間隔B2で回転を開始し、回転開始から固定の給紙間隔B2が経過する前に回転が停止する(図5参照)。例えば、60ppm(page per minute、1分間あたりの印刷枚数)であれば、給紙間隔B2を1秒とすることができる(1秒の間に1回、給紙ローラー32が回転開始と停止を行う)。又、30ppmであれば、給紙間隔B2を2秒とすることができる(2秒の間に1回、給紙ローラー32が回転と停止を行う)。
【0076】
そして、エンジン制御部7は、給紙センサー3Sの出力を確認して、給紙ローラー32の回転開始から給紙センサー3Sが用紙到達を検知するまでの時間(以下、「計測時間T1」と称する。)を計測する。計時部73が計測時間T1を測ってもよいし、エンジンCPU72が計測時間T1を測っても良い。
【0077】
(開始時点間隔B1の調整)
次に、図6、図7に基づき、本実施形態の複合機100でのページの画像形成(トナー像形成)の開始時点の間隔の調整の一例を説明する。図6は、開始時点間隔B1の調整の流れを説明するためのフローチャートである。図7は、開始時点間隔B1の調整に用いるデータの一例を示す説明図である。
【0078】
まず、2次転写に用紙が間に合わない用紙未到達(レジストローラー対38への用紙到達の遅れ)が生ずると、本実施形態の複合機100では、一旦形成したトナー像を破棄し、再度、同じトナー像を形成することになる。しかし、用紙未到達が生ずると、トナーの無駄な消費、複合機100の生産性の低下、中間転写ベルト51等のクリーニング処理実行など点で問題、不利益がある。
【0079】
給紙ローラー32のスリップによる給紙の遅れが原因で、用紙未到達が生じてしまうことが多い。そして、スリップは、給紙ローラー32の摩耗や、給紙ローラー32への紙粉の付着や、用紙の特性など、様々な要因に基づき生ずる。
【0080】
このような給紙での遅れは、傾向として現れることがある。そこで、本実施形態の複合機100では、エンジン制御部7が給紙センサー3Sの出力に基づき、給紙開始から給紙センサー3SONまでの時間を測定する。そして、エンジン制御部7は、給紙での遅れの有無を確認し、遅れの傾向が見られれば、画像形成(トナー像形成)の開始時点間隔B1を広げ、レジストローラー対38への用紙の到達の遅れの許容量を増やす。
【0081】
次に、図6、図7を用いて、画像形成(トナー像形成)での開始時点間隔B1の調整の流れの一例を説明する。図6のスタートは、複合機100の主電源が投入された時点や複合機100が省電力モードから通常モードへ復帰した場合など、複合機100が印刷可能となった状態となった時点である。
【0082】
そして、エンジン制御部7は、コピーやプリントのため、主制御部6からの印刷の実行指示(印刷ジョブの指示)の有無を確認する(ステップ♯1)。もし、印刷の実行指示がなければ(ステップ♯1のNo)、エンジン制御部7は、着脱検知センサー34の出力に基づき、給紙部3aのカセット31の着脱の有無を確認する(ステップ♯2)。
【0083】
もし、カセット31の着脱があれば(ステップ♯2のYes)、エンジン制御部7は、カウント部74の積算値と、計測時間T1の平均値をリセットする(ステップ♯3、詳細は後述)。尚、計測時間T1の平均値はリセットしないようにしてもよいし、カセット31の着脱以外の時点でリセットしてもよい。一方、カセット31の着脱が無ければ(ステップ♯2のNo)、フローはステップ♯1に戻る。
【0084】
一方、印刷の実行指示があり(ステップ♯1のYes)、主制御部6から印刷内容(印刷枚数等)を示すデータを受け取ると、エンジン制御部7は、給紙ローラー32を回転させ、給紙を開始させる(ステップ♯4)。
【0085】
そして、エンジン制御部7は、給紙開始(給紙ローラー32の駆動開始)から給紙センサー3Sが用紙の到達を検知するまでの時間を計測する(ステップ♯5)。計測時間T1は、例えば、エンジンメモリー71等に記憶され、エンジン制御部7は、計測した時間(計測時間T1)の平均値(平均計測時間)を求める(ステップ♯6)。例えば、カセット31の着脱により、用紙の状態が変化するので、カセット31の着脱があってから次のカセット31の着脱があるまでになされた給紙での平均計測時間が求められる。例えば、エンジン制御部7のエンジンメモリー71などの記憶部が、カセット31の着脱があってからの累計の給紙枚数と、カセット31の着脱があってからの各給紙の計測時間T1を記憶する。そして、エンジン制御部7(エンジンCPU72)は、計測時間T1の総和を累計の給紙枚数で除して平均計測時間を求める。
【0086】
更に、エンジン制御部7は、計測時間T1が理論時間よりも長いか否か(計測時間T1が理論時間以下であるか否か)を確認する(ステップ♯7)。
【0087】
ここで、「理論時間」は、給紙開始から給紙センサー3Sが用紙到達を検知するまでの理想的な時間である。カセット31から給紙センサー3Sまでの距離や、搬送速度や、カセット31内の用紙の先端位置にもよるが、例えば、カセット31内の用紙の理想的な先端位置から給紙センサー3Sまでの距離を仕様上の搬送速度で割って得られる時間を理論時間としてもよい。又、予めの実験で計測された時間の平均の時間を理論時間とし、理論時間は、経験的に得られてもよい。例えば、給紙センサー3Sが給紙ローラー32近傍に設けられるとき、理論時間は数十ミリ秒程度となる。
【0088】
もし、計測時間T1が理論時間よりも長ければ(給紙に遅れがみられれば、ステップ♯7のNo)、エンジン制御部7は、平均計測時間と理論時間の差分に応じて、カウント部74の積算値への加算値を定める(ステップ♯8)。
【0089】
図7には、エンジン制御部7が加算値を定めるうえで用いるデータの一例を示している。例えば、エンジンメモリー71が、加算値を定めるためのデータを記憶する。加算値を定めるためのデータは、例えば、差分に応じた加算値を定めたテーブルである。
【0090】
ここで、図7に示すように、本実施形態の複合機100では、計測時間T1と理論時間の差分ではなく、平均計測時間と理論時間の差分により加算値を定める。例えば、平均計測時間が理論時間よりも小さく、基本的に理論時間に間に合うように給紙部3aの給紙が行われていれば、一時的に計測時間T1が理論時間よりも長くなっても、加算値は0とされる。又、平均計測時間が理論時間よりも長ければ長いほど大きな加算値とする。このように、理論時間に間に対する給紙部3aの給紙での全体的な遅れや進みの傾向を勘案し、カウント部74の積算値に加算する値が定められる。
【0091】
そして、エンジン制御部7は、カウント部74に定めた加算値を積算値に加算させ、積算値を更新させる(ステップ♯9)。次に、エンジン制御部7は、積算値を予め定められた定数で除して調整量を求める(例えば、調整量は、余りを切り捨てた整数。切り上げても良い)(ステップ♯10)。具体的に、調整量を求める式は以下の通りとなる。
(式)調整量=積算値÷定数
但し、本実施形態では、積算値、定数ともに正の値である。
【0092】
予め定められた定数は、適切に開始時点間隔B1の調整を行うための値である。例えば、図7では、最も大きな加算値が「3」であるので、「3」という予め定められた定数をエンジンメモリー71が記憶する例を示している。尚、予め定められた定数は、整数で無くても良い。そして、予め定められた定数は、加算値の定め方や、開始時点間隔B1の調整への影響の程度を勘案して適宜定めることができる。予め定められた定数が大きいほど、積算値に対する開始時点間隔B1の調整量は少なくなる。
【0093】
更に、エンジン制御部7は、求めた調整量に応じて開始時点間隔B1を調整する(ステップ♯11)。尚、調整後の開始時点間隔B1を示すデータは、エンジンメモリー71などに記憶され、調整された開始時点間隔B1で以後の画像形成が行われる。
【0094】
具体的に、エンジン制御部7は、仕様上のppmを求めた調整量だけ減らすように各ページの画像形成(トナー像形成)開始時点の間隔を広げる。例えば、複合機100が60ppmであるとき、理論的には、開始時点間隔B1は1秒となる(1分間に60枚)。そして、求められた調整量が「2」であれば、エンジン制御部7は、58ppmとなるように開始時点間隔B1を広げ、1分あたりの印刷枚数を減らす(開始時点間隔B1を約1.034秒とする)。これにより、給紙が遅れる傾向が現れ、レジストローラー対38への用紙の到達が遅れがちになっても、トナー像の2次転写ニップNへの到達に間に合うように、用紙をレジストローラー対38に到達させることができる。
【0095】
そして、エンジン制御部7は、印刷ジョブに用いる全ての用紙の給紙が完了したかを確認する(ステップ♯12)。もし、完了したのであれば(ステップ♯12のYes)、フローは、ステップ♯1に戻る。一方、未完了であれば(ステップ♯12のNo)、フローはステップ♯4に戻る。
【0096】
又、計測時間T1が理論時間以下であれば(ステップ♯7のYes)、エンジン制御部7は、計測時間T1が理論時間以下となった連続回数が、予め定められた枚数に至ったか否かを確認する(ステップ♯13)。もし、予め定められた枚数に至っていなければ(ステップ♯13のNo)、フローは、ステップ♯12に以降する。
【0097】
一方、予め定められた枚数に至れば(ステップ♯13のYes)、エンジン制御部7は、カウント部74の積算値を減らす(ステップ♯14)。どれだけ積算値を減らすか(減算値の大きさ)は、任意に定めることができるが、例えば、エンジン制御部7は、積算値を1減らす(1以上でもよい)。そして、フローはステップ♯10に移行する。
【0098】
(給紙遅れの報知)
次に、図8を用いて、給紙遅れに関する報知の一例を説明する。図8は、給紙遅れの報知を行う注意画面S1の一例を示す説明図である。
【0099】
本実施形態の複合機100では、計時部73などが計測時間T1を測り、カウント部74は積算値をカウントする。これにより、給紙遅れの傾向、程度を示す値が得られる。本実施形態の複合機100では、開始時点間隔B1を広げることにより、給紙が遅れがちになっても、用紙未到達によるトナー像の破棄などを回避できる。
【0100】
しかし、開始時点間隔B1を広げれば広げるほど、複合機100のppmが低下する。ppmの低下は、生産性の低下といえる。そこで、本実施形態の複合機100では、ppmが一定値よりも小さくなると、給紙遅れか生じがちであることを報知する注意画面S1が表示される。
【0101】
例えば、積算値が予め定められた限度値を越えたとき、エンジン制御部7は操作パネル2の液晶表示部22に、図8に示すような注意画面S1を表示させる。限度値は、適宜定めることができる。例えば、現在のppmが、仕様上のppmよりも4ppm下がると、注意画面S1を表示するようにする場合、仕様上のppmが60枚であれば、ppmが56となるような積算値となれば、エンジン制御部7は、液晶表示部22に注意画面S1を表示させる。この例の場合、予め定められた定数が「3」であれば、積算値が「12」になると(調整量が「4」になってしまう積算値になると)、エンジン制御部7は、液晶表示部22に注意画面S1を表示させる。
【0102】
エンジン制御部7は、生産性低下や、給紙遅れの改善手法を注意画面S1に表示させることができる。又、エンジン制御部7は、現在のppmを液晶表示部22に表示させてもよい。
【0103】
このようにして、本実施形態に係る画像形成装置(例えば、複合機100)は、複数枚の用紙を収容する収容部(カセット31)と、一定の間隔で回転を開始して給紙を行って連続して用紙の給紙を行う給紙回転体(給紙ローラー32)を含む給紙部3aと、画像を形成する画像形成部4と、画像形成部4が形成した画像を用紙に写す転写部(中間転写部5a)と、給紙部3aから給紙された用紙を一時的に留め、転写開始タイミングにあわせて転写部に送り出すレジスト部(レジストローラー対38)と、レジスト部と給紙部3a間の用紙搬送経路に設けられ、給紙部3aから供給された用紙の到達を検知する給紙検知体(給紙センサー3S)と、給紙回転体の回転開始から給紙検知体の用紙検知までの時間である計測時間T1が、予め定められた理論時間よりも長いとき、記憶している積算値に、計測時間T1と理論時間との差が大きいほど大きな値を加算して積算値を更新するカウント部74とを含み、画像形成部4は、カウント部74が積算している積算値が大きいほど、各ページの画像形成の開始時点の間隔である開始時点間隔B1を、予め定められた基準間隔よりも広げる。
【0104】
従来、1回の用紙未到達の発生、又は、複数回の連続の用紙未到達が発生して初めて用紙未到達を防ぐための処置がとられていたところ、これにより、給紙の遅れの傾向を予め把握し、画像形成装置(例えば、複合機100)の速度を遅く(各ページの画像形成の開始時点の間隔を長く)することができる。従って、用紙の転写部(中間転写部5a)(転写位置)への到達時間に余裕を持たせることができ、多少、転写部(中間転写部5a)への用紙の到着が遅れても、適切に転写を行うことができる。そして、転写部(中間転写部5a)への用紙未到達による、形成した画像の破棄や、画像破棄に伴うクリーニングや、同じ画像の再形成等の無駄の発生を防ぐことができる。しかも、画像形成装置(例えば、複合機100)での給紙の遅れを把握するため、各給紙での測定時間に基づいて値を積算し、積算値に基づいて、各ページの画像形成の開始時点の間隔を広げるので、画像形成装置(例えば、複合機100)の状態にあわせて、用紙未到達の発生を防ぐことができる。又、給紙タイミング自体は一定であり、給紙タイミングを早めることによる連なりジャムは生じない。
【0105】
又、カウント部74は、複数枚分の計測時間T1の平均値と理論時間との差が大きいほど大きな値を加算して積算値を更新する。これにより、計測時間T1の平均値と理論時間との差に基づき、積算値に加算すべき値が定められ、カウント部74が積算値を更新する。従って、画像形成装置(例えば、複合機100)の給紙の遅れや進みの全体的な傾向を示す計測時間T1の平均値と理論時間が比較され、画像の破棄や画像の再形成の無駄の発生を防ぐように、画像形成装置(例えば、複合機100)に相応しい(最適な)画像形成の開始時点の間隔を定めることができる。又、平均値を用いるので、突発的に計測時間T1が長くなることによって、画像形成の開始時点の間隔が極端に広げられることもなく、給紙の遅れ、進みの傾向を反映させて画像形成の開始時点の間隔を定めることができる。
【0106】
又、画像形成部4は、積算値を予め定められた定数で割って得られた値だけ、1分間あたりの印刷枚数が減るように、基準間隔よりも開始時点間隔B1を広げる。このように、積算値を予め定められた定数で割って得られた値に基づき、各ページの画像形成の開始間隔を広げる量(調整量)を定めることができる。従って、予め定められた定数の大きさを調整することにより、積算値に対する開始時点間隔B1の調整量の大きさを調整することができる。
【0107】
又、カウント部74は、予め定められた枚数分連続して、計測時間T1が理論時間以下であれば、積算値を減らす。これにより、給紙が遅延無く行われば、積算値は減る。従って、不必要に各ページの画像形成の開始時点の間隔を広げないようにすることができ、画像形成装置(例えば、複合機100)の生産性(印刷速度)を確保、維持することができる。
【0108】
収容部(カセット31)の取り外し、取り付けによって、用紙交換や補給によって用紙の状態が変化することがある。又、給紙回転体(給紙ローラー32)の清掃、交換等により、給紙する部材の状態も変化することがある。そこで、又、本実施形態の画像形成装置(例えば、複合機100)は、収容部の取り外しと取り付けを検知するための着脱検知体(着脱検知センサー34)を有し、カウント部74は、着脱検知体によって収容部の取り外しと取り付けが検知されたとき、積算値をリセットする。これにより、用紙状態等の変化にあわせて、積算値をカウントし、各ページの画像形成の開始間隔を定めるようにすることができる。
【0109】
又、本実施形態の画像形成装置(例えば、複合機100)は、積算値が予め定められた限度値を越えたとき、給紙部3aの確認を促すメッセージを報知する報知部(操作パネル2)を含む。これにより、限度値を越えるほど、給紙の遅延がひどくなっていることを使用者に報知することができる。
【0110】
ここで、他の実施形態を説明する。上記の実施形態では、給紙部3aを1つ設ける例を説明したが、給紙部3aは複数個設けられても良い。そして、エンジン制御部7は、給紙部3aごとに計測時間T1を測定し、給紙部3aごとに平均計測時間を求め、給紙部3aごとにカウント部74が積算値の積算、更新を行わせ、給紙部3aごとに開始時点間隔B1を調整してもよい。
【0111】
又、上記の実施形態では、給紙部3aの給紙遅れに関するメッセージを表示により報知する例を説明したが、音声等、他の形態で報知するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、印刷のため、給紙を行う画像形成装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0113】
100 複合機(画像形成装置) 2 操作パネル(報知部)
3a 給紙部 31 カセット(収容部)
32 給紙ローラー(給紙回転体) 34 着脱検知センサー(着脱検知体)
38 レジストローラー対(レジスト部)
3S 給紙センサー(給紙検知体) 4 画像形成部
5a 中間転写部(転写部) 7 エンジン制御部
74 カウント部 B1 開始時点間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の用紙を収容する収容部と、一定の間隔で回転を開始して給紙を行って連続して用紙の給紙を行う給紙回転体を含む給紙部と、
画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部が形成した画像を用紙に写す転写部と、
前記給紙部から給紙された用紙を一時的に留め、転写開始タイミングにあわせて転写部に送り出すレジスト部と、
前記レジスト部と前記給紙部間の用紙搬送経路に設けられ、前記給紙部から供給された用紙の到達を検知する給紙検知体と、
前記給紙回転体の回転開始から前記給紙検知体の用紙検知までの時間である計測時間が、予め定められた理論時間よりも長いとき、記憶している積算値に、前記計測時間と前記理論時間との差が大きいほど大きな値を加算して前記積算値を更新するカウント部とを含み、
前記画像形成部は、前記カウント部が積算している積算値が大きいほど、各ページの画像形成の開始時点の間隔である開始時点間隔を、予め定められた基準間隔よりも広げることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記カウント部は、複数枚分の前記計測時間の平均値と前記理論時間との差が大きいほど大きな値を加算して前記積算値を更新することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成部は、前記積算値を予め定められた定数で割って得られた値だけ、1分間あたりの印刷枚数が減るように、前記基準間隔よりも前記開始時点間隔を広げることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記カウント部は、予め定められた枚数分連続して、前記計測時間が前記理論時間以下であれば、前記積算値を減らすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記収容部の取り外しと取り付けを検知するための着脱検知体を有し、
前記カウント部は、前記着脱検知体によって前記収容部の取り外しと取り付けが検知されたとき、前記積算値をリセットすることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記積算値が予め定められた限度値を越えたとき、前記給紙部の確認を促すメッセージを報知する報知部を含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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