説明

画像形成装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、画像形成に関与する像担持体やその他の部材をカートリッジ化して装置本体に着脱自在に構成したプリンタ装置や複写機等の画像形成装置に係り、特には上記カートリッジの装着部をカートリッジの着脱時等に開閉するための開閉機構の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、電子写真方式を採用した画像形成装置では、現像器内のトナーを用いて、像担持体である感光体上の静電潜像をトナー像化し、このトナー像を用紙に転写して画像を形成する処理が行われている。そして、感光体の劣化やトナーの消耗等による、部品交換、消耗品の補給等の保守点検作業を簡略化し、かつ画像形成装置自体を小型化する等の目的で、画像形成に関与する部材を一体化してカートリッジとし、これを装置本体に着脱自在に構成したものが、従来から知られている。
【0003】この種のカートリッジの中には、画像形成関与部材の中の各部材の寿命がそれぞれ異なることに鑑み、各部材を有効に使用すること等を目的として、例えば図8に示すように、1つのカートリッジCを、感光体ドラム4及びその周囲に配設される画像形成関与部材の一部(例えば帯電器5やクリーナ9等)を含む第1のカートリッジC1 と、上記画像形成関与部材の中の1つである現像器7を含む第2のカートリッジC2 とに2分割し、そのそれぞれを画像形成装置本体に対し着脱自在に構成したものがある(なお、画像形成装置の全体構成は図1を参照)。
【0004】そして、このように着脱自在に構成されたカートリッジC1 、C2 を装置本体の所定の装着部に確実に位置決めするために、何らかの押圧手段を設けているものがある。例えば図8に示すような非磁性一成分現像方式を採用するものでは、第1のカートリッジC1 の感光体ドラム4に対して第2のカートリッジC2 の現像ロール7bを所定の圧力で圧接する必要があるため、予め第1のカートリッジC1 の装着された上記装着部に対して第2のカートリッジC2 を装着する際、カートリッジC2 の側部に突出して設けられた軸7aを上記装着部の不図示の係合部に係合させ、その状態でカートリッジC2 を矢印A方向に押圧するようにしている。そのような押圧手段としては、例えば図8に示すように、カートリッジC1 、C2 の着脱や保守点検等のために装置本体に対し矢印B方向に開閉自在に設けられた開閉部材としてのルーフRに、カートリッジC2 の上端と当接する位置にバネ部材Sを設け、カートリッジC1 、C2 の装着後にルーフRを閉じることで、カートリッジC2 をバネ部材Sで矢印A方向へ自動的に押圧できるようにしたものがある。
【0005】一方、開閉部材としてのルーフRの機構としては種々のものがあるが、一般にはロック機構によりルーフRが閉位置にロックされるようになっており、通常、ロックを解除するとルーフRが若干持ち上がって操作者がルーフRを開成しやすくなるように工夫してあり、そのためのバネ機構等を別途設けてある。例えば、上記図8に示したような押圧手段としてのバネ部材Sを、上記ルーフRの持ち上げ手段として兼用することも考えられている。これは、ルーフRのロック機構を解除するとバネ部材Sの圧力が解放されることによって、カートリッジC2 が土台となってルーフRが上方へ持ち上げられるようになる。これによれば、一般にルーフRの持ち上げ手段として使用されているトーションバーと比べて構造も簡単で、しかも安価であるという利点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】図8に示したようにカートリッジの位置決め用のバネ部材SをルーフRの持ち上げ手段として兼用するものでは、上述したようにトーションバーを用いるものと比べて大きな利点が得られるが、その反面、バネ部材Sのバネ圧の調整が困難になると共に、カートリッジC2 が未装着のままでルーフRを閉じてしまうと、その後にロック機構を解除したとしてもルーフRが持ち上がらなくなってしまうという不具合が生じた。
【0007】本発明は、上記の点に鑑み、カートリッジの位置決めのための押圧手段と開閉部材(ルーフ)の持ち上げ手段とを簡単な構造で兼用でき、しかもカートリッジの装着の有無に係わらず開閉部材の円滑な持ち上げを可能にする画像形成装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するため、画像形成関与部材を有するカートリッジを着脱自在な装置本体と、該装置本体に移動自在に設けられ前記カートリッジの装着部を開閉自在な開閉部材と、該開閉部材を閉位置に保持するロック機構とを備える画像形成装置において、前記開閉部材に設けられ該開閉部材が閉位置に位置した際に前記装着部に装着されている前記カートリッジと当接して該カートリッジを位置決めすべく押圧する弾性部材と、前記装着部に設けられ前記カートリッジが未装着の際に前記弾性部材と当接する当接部材とを備え、前記弾性部材の弾性力を前記当接部材との当接時に前記開閉部材を前記閉位置から所定距離開方向へ回動させる弾性力に設定したことを特徴とする。
【0009】
【作用】装置本体にカートリッジが装着された状態で開閉部材を閉じた場合、この開閉部材に設けられた弾性部材がカートリッジと当接するので、その押圧力によりカートリッジが所定位置に位置決めされた状態で開閉部材がロックされる。そして、この状態でロックを解除すれば、弾性部材の弾性力がカートリッジを土台として開閉部材を所定距離だけ持ち上げることになる。
【0010】一方、装置本体にカートリッジが装着されていない状態で開閉部材を閉じた場合は、この開閉部材に設けられた弾性部材が装置本体側の当接部材と当接した状態で開閉部材がロックされる。この状態でロックを解除すれば、弾性部材の弾性力が当接部材を土台として開閉部材を所定距離だけ持ち上げることになる。
【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施例の画像形成装置(一例としてプリンタ装置を示す)の全体図であり、図2、図3はそれぞれ本実施例における押さえ部材15とカートリッジC2 及び棚台17との位置関係を示す正面図と平面図である。
【0012】本実施例の画像形成装置は、図1に示すように、装置本体Mに対し着脱自在な給紙カセット1、この給紙カセット1内に積載収納された用紙を順次給送する給紙ロール2、給送されてきた用紙を一旦待機させ所定のタイミングで画像形成部へ送り出す待機ロール対3、給送されてきた用紙にトナー像を形成する画像形成部G(感光体ドラム4、帯電器5、印字ヘッド6、現像器7、転写器8、クリーナ9及びトナー回収機構10等)、トナー像を用紙上に定着させる定着器11、定着済みの用紙を装置外へ排出する排紙ロール対12(駆動ロール12a、従動ロール12b)等を含んで構成される。
【0013】また、開閉部材としてのルーフRが装置本体Mに対し装置端部のヒンジ部13を中心に矢印B方向へ開閉自在に設けられ、装置本体M側に設けられた爪部14aと、ルーフR側に設けられ上記爪部14aと係合する係合部14bとで、ルーフRを閉位置に保持するロック機構14を構成している。上記の印字ヘッド6や排紙ロール対12の従動ロール12bはルーフR側に取り付けられている。そして、画像形成部Gの大部分は、図8R>8にも示したように、装置本体Mに対し着脱自在なカートリッジCを構成し、これは感光体ドラム4及びクリーナ9等が一体化されてなる第1のカートリッジC1 と、現像器7等が一体化されてなる第2のカートリッジC2 とに分割及び合体が可能であり、これらカートリッジC1 、C2はルーフRを開いた状態で装置本体Mの所定の装着部に対し着脱自在となる。
【0014】更に、本実施例では、現像器7の現像ロール7bが感光体ドラム4に所定の圧力で圧接されるよう上記第2のカートリッジC2 を位置決めすべく上方から押圧する弾性部材としての押さえ部材15、16をルーフRに設けてあり、ルーフRが閉位置(図1に実線で示す位置)に位置した際、上記押さえ部材15、16がカートリッジC2 をその側部の軸7a(図8参照)を支点として矢印A方向に押圧するよう構成されている。押さえ部材15は、例えば図2に詳しく示すように、圧縮バネ15aにケース15bを被せ、ケース15bがバネ15aの付勢方向(矢印D方向)に所定範囲内で移動自在なようにルーフRにビス15cで取り付けたものであり、もう一方の押さえ部材16も同様な構成である。
【0015】また、装置本体M側であって第2のカートリッジC2 の上端近傍には、押さえ部材15との当接面よりも一段低く横方向に並ぶ当接部材としての棚台17が設けられている。ここで、上記押さえ部材15は、図3R>3に示すように、上方から見た場合に第2のカートリッジC2 の上端面と上記棚台17の両者に重なるよう配置されており、カートリッジC2 の装着時にはこのカートリッジC2 の上端面と当接するが、カートリッジC2 の未装着時には棚台17と当接するようになっている。そして、押さえ部材15の弾性力は、棚台17との当接時に、ロック解除後のルーフRを閉位置から所定距離だけ開方向へ回動させることができる程度の弾性力に設定されている。
【0016】以上の構成からなる画像形成装置では、カートリッジC1 、C2 の装着時においてルーフRを閉じてロックすると、図4(a)に示すように2つの押さえ部材15、16がカートリッジC2 の上端部を押圧することで、装置本体Mに対するカートリッジC1 、C2 の位置決め及びカートリッジC1 、C2 間の位置決めが確実に行われる。この状態でルーフRのロックを解除すれば、図4(b)に示すように、押さえ部材15、16の弾性力が上記カートリッジC2 の上端部を土台としてルーフRを所定距離だけ持ち上げる。従って、例えば操作者が指を入れられるぐらいのスペースがルーフRと装置本体Mとの間にできることになり、操作者によるルーフRの開放操作が容易になる。
【0017】一方、カートリッジC1 、C2 の未装着時(あるいはカートリッジC2 のみが未装着時)においてルーフRを閉じてロックすると、図5(a)に示すように一方の押さえ部材15が装置本体M側の棚台17と当接した状態となる。この状態でルーフRのロックを解除すれば、図5(b)に示すように、押さえ部材15の弾性力が棚台17を土台としてルーフRを所定距離だけ持ち上げる。従って、カートリッジC1 、C2 の装着時と同様、操作者によるルーフRの開放操作が容易になる。
【0018】従って、本実施例によれば、カートリッジC1 、C2 の位置決めのための押圧手段とルーフRの持ち上げ手段とを簡単な構造の押さえ部材15で兼用でき、しかもカートリッジC1 、C2 の装着の有無に係わらずルーフRを極めて円滑に持ち上げることが可能になる。
【0019】なお、本実施例においては、排紙ロール対12の従動ロール12bがルーフRに対しワンタッチで装着可能に構成されている。すなわち、例えば図6(a)、(b)に示すように、従動ロール12bを略L字形の支持部材12cで支持すると共に、この支持部材12cに穿設された孔12dを、ルーフRに設けられたピン12eに嵌め込むことで、従動ロール12bをルーフRにワンタッチで装着できる構成である。更に、支持部材12cの先端部には側方への付勢力を有する押さえバネ12fを一体的に設けてあり、上記装着時に押さえバネ12fとルーフRの側面部とで除電ブラシ18を挟み込むことで、除電ブラシ18の取り付けも同時に行うようにしている。あるいは、図7(a)、(b)に示すように、支持部材12cの先端に上方への付勢力を有する押さえバネ12f′を設け、この押さえバネ12f′とルーフRの上面部とで除電ブラシ18′を取り付けるようにすることも可能である。
【0020】このように従動ロール12bをワンタッチ装着可能に構成することで、組み立てが極めて容易になると共に、装置全体のコストダウンを実現することも可能になり、長期使用による除電ブラシの汚れを解消すべく交換部品とすることもでき、しかもこれらのことをユーザが容易に行うことが可能である。また、この例の場合、除電ブラシ18、18′の固定は支持部材12cと兼用された押さえバネ12f、12f′のみによるため、孔あけ等の作業が不要で毛抜け等の不具合も生じないという利点もある。更に、誰が組み立てても、駆動ロール12aと従動ロール12bの圧接力が同じになり、ネジ締めやビス止め等の従来の方法と比べて格段の利点がある。
【0021】なお、上記実施例では2個の押さえ部材15、16を設けたが、単に1個の押さえ部材15だけであってもよく、あるいはこの押さえ部材15を含む3個以上の押さえ部材を設けてもよい。
【0022】また、本発明は、上記実施例のようにカートリッジCが2分割されるものに限定されるものではなく、画像形成関与部材を有し装置本体に着脱自在なカートリッジを押圧により位置決め可能な構成のものであれば、その他の装置にも適用可能である。
【0023】更に、図1にはプリンタ装置の構成を示したが、本発明はプリンタ装置のみならず、複写機、ファクシミリ装置等の各種画像形成装置に適用可能である。
【0024】
【発明の効果】本発明によれば、カートリッジの位置決めのための押圧手段と開閉部材の持ち上げ手段とを、非常に簡単かつ安価な構造の弾性部材で兼用することができる。しかも、上記弾性部材はカートリッジの装着時にはカートリッジと当接し、カートリッジの未装着時には装置本体側の当接部材と当接するので、開閉部材のロック解除時にはカートリッジの装着の有無に係わらず開閉部材を極めて円滑に持ち上げることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の画像形成装置の全体図である。
【図2】押さえ部材15とカートリッジC2 及び棚台17との位置関係を示す正面図である。
【図3】押さえ部材15とカートリッジC2 及び棚台17との位置関係を示す平面図である。
【図4】カートリッジ装着時におけるルーフの動きを説明するための図であり、(a)はルーフのロック時の状態を示す図、(b)はルーフのロック解除時の状態を示す図である。
【図5】カートリッジ未装着時におけるルーフの動きを説明するための図であり、(a)はルーフのロック時の状態を示す図、(b)はルーフのロック解除時の状態を示す図である。
【図6】排紙ロール12の従動ロール12bの組み立て例を示す図であり、(a)は従動ロール12b及びその近傍を示す図、(b)は従動ロール12b及びその取り付け部材並びに除電ブラシ18を拡大して示す斜視図である。
【図7】排紙ロール12の従動ロール12bの他の組み立て例を示す図であり、(a)は従動ロール12b及びその近傍を示す図、(b)は従動ロール12b及びその取り付け部材並びに除電ブラシ18′を拡大して示す斜視図である。
【図8】従来の画像形成装置におけるカートリッジC1 、C2 とその位置決めのための押圧手段を示す要部断面図である。
【符号の説明】
4 感光体ドラム
7 現像器
14 ロック機構
15、16 押さえ部材
17 棚台
M 装置本体
R ルーフ
C カートリッジ
1 第1のカートリッジ
2 第2のカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】画像形成関与部材を有するカートリッジを着脱自在な装置本体と、該装置本体に移動自在に設けられ前記カートリッジの装着部を開閉自在な開閉部材と、該開閉部材を閉位置に保持するロック機構とを備える画像形成装置において、前記開閉部材に設けられ、該開閉部材が閉位置に位置した際に前記装着部に装着されている前記カートリッジと当接して該カートリッジを位置決めすべく押圧する弾性部材と、前記装着部に設けられ、前記カートリッジが未装着の際に前記弾性部材と当接する当接部材とを備え、前記弾性部材の弾性力を、前記当接部材との当接時に前記開閉部材を前記閉位置から所定距離開方向へ回動させる弾性力に設定したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【特許番号】特許第3275405号(P3275405)
【登録日】平成14年2月8日(2002.2.8)
【発行日】平成14年4月15日(2002.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−334365
【出願日】平成4年12月15日(1992.12.15)
【公開番号】特開平6−180516
【公開日】平成6年6月28日(1994.6.28)
【審査請求日】平成11年11月29日(1999.11.29)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【参考文献】
【文献】特開 平3−252667(JP,A)