説明

画像表示装置およびその製造方法

【課題】 プラズマディスプレイパネル(PDP)において、蛍光体の内部は励起源である真空紫外線が到達しないために蛍光体が発光せず、発光効率が悪いが、蛍光体の発光する光を効率よく表示面側に反射させることにより輝度の高いPDPを提供する。
【解決手段】 真空紫外線12が浸入できる蛍光体11の表面部分の発光センター13から放射状に生じる発光で、本来は画像の輝度に寄与しない表示面方向以外に放射された光14においても、蛍光体11の内部に設けられた細孔15もしくは反射体16の界面で反射するため、画像の輝度が向上する。とりわけ、反射体として選択的な光を反射する反射体17を用いた場合は、蛍光体が発光する光は反射し、外部から入射する光が吸収するため、輝度の向上のみならずコントラストを向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像表示装置、特に反射型のプラズマディスプレイ(PDP)において高輝度、高コントラストな蛍光膜を形成する蛍光体材料および製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、画像表示装置においてCRTに代わる薄型の平面ディスプレイの研究開発が盛んに行われている。なかでもPDPは、33型のフルカラーパネルが発表されるに至っている。PDPは、表示面ガラスパネルと背面ガラスパネルの間の空間に封入されたNe+Xe(4%)ペニング混合ガスに電圧をかけることでペニング混合ガスの気体放電に伴いXeから放射される波長が147nmの紫外線により蛍光体膜が励起され発光する。
【0003】PDPに用いられる蛍光体は、発光色や残光時間が適切になるように母体結晶およびその中に分散される発光センターである付活剤が選ばれる。たとえば、酸化物系の蛍光体では一般的に、母体となる金属の酸化物と付活剤となる金属の酸化物あるいは炭酸塩の粉体を混合し、1200℃以上の高温で焼成するような固相法と呼ばれる方法で得られる。蛍光体は緻密であり、内部に蛍光体自体以外の組成のものを含まない結晶である。
【0004】また、今日におけるPDPの主流は、紫外光により励起され発光している蛍光体を表示ガラスパネル側から観測する反射型と呼ばれる方式である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、蛍光体結晶は可視光に対しては透明であるが、147nmの真空紫外線に対しては不透明であり、真空紫外線が蛍光体に浸入する深さは非常に浅く、発光は蛍光体の表面部分でしか起こらない。発光した光は放射状にあらゆる方向に放射するが、上記従来の緻密で内部に蛍光体自体以外の組成のものを含まない蛍光体では、観測される蛍光は、観測方向に放射された光が主であり、その他の方向へ放射された光は蛍光体粒子の表面で観測方向に反射される光以外は、吸収などにより減衰して輝度に寄与しない。蛍光体表面の反射を増加させる方法として蛍光体粒子を積み重ねて蛍光体膜を形成することで蛍光体表面反射を増加させることができるが、蛍光体膜の膜厚が厚くなると放電空間が狭くなり真空紫外線の発生効率が低下し、かえって輝度が低下するという問題があった。
【0006】そこで、本発明者らは、紫外線が到達せず発光しない蛍光体の内部に反射体を設けることで、蛍光体表面において発光する光を効率よく表示面側に反射させることにより輝度の向上を目指した。
【0007】本発明の目的は、PDPのような反射型画像装置において、高輝度な、また、高コントラストな蛍光膜を形成できる蛍光体および高輝度、高コントラストな画像表示装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の蛍光体は、蛍光体結晶の内部に細孔もしくは反射体を有している。真空紫外線が浸入する表面部分で起こった発光は可視光に変換されているので蛍光体結晶内部を透過するが、表示面方向以外に放射された蛍光は、蛍光体内部に存在している細孔もしくは反射体界面で反射するので輝度が向上する。細孔や反射体は蛍光体の内部で真空紫外線の到達しない部分に存在しているので、発光の妨げになることがない。
【0009】内部に細孔を有している場合、屈折率の高い蛍光体結晶と屈折率の低い細孔の屈折率の差により反射し、さらに臨界角以上の角度で細孔に入射する光は全反射する。内部に金属微粒子などの反射体を有している場合は、反射体の表面で反射する。これらの反射光により表示面方向に向かう光が増加して輝度が向上する。
【0010】また、蛍光体内部に無機顔料のような選択的な色に対して反射する反射体を設けた場合は、蛍光体の発光色と同じ色の光は反射して輝度が向上し、日光や照明光など外部から蛍光面に入射する光の発光色以外の色の光は吸収されるので、外部入射光に対する蛍光面の反射が抑えられてコントラストが向上する。
【0011】蛍光体は従来のスクリーン印刷法などで塗布し、蛍光体膜を形成することができるので、PDPの製造において新たな工程や装置などを必要とせず生産コストが増大することがない。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例について図面を用いて具体的に説明する。図1により、本発明に係わる蛍光体膜を具備したPDPの構成図を用いて画像表示の要点について説明する。図1にPDPの全体構成の1例を構造図に示すように、PDPを構成するパネルは、表示面側のガラス基板1に透明表示電極2と抵抗を下げるためのバス電極3がストライプ状に形成され、これらの電極の上に誘電体層4、さらにその上に保護膜5が形成されている。一方、対向の裏面ガラス基板6上にストライプ状のアドレス電極7と放電空間を保ち光学的クロストークを防ぐためのストライプ状の隔壁8が透明表示電極2のストライプの方向と直交するように形成されている。さらにアドレス電極7上と隔壁の側面に赤、緑、青色の蛍光体から成る蛍光体膜9が交互に塗り分けられ形成されている。また、表示面側ガラス基板1と裏面ガラス基板6の間の空間はNe+Xe(4%)ペニング混合ガス10が封入されている。前記構成において、透明表示電極1とアドレス電極7間に電圧がかかるとペニング混合ガス10の気体放電に伴いXeから波長が147nmの紫外線が放射される。この紫外線により蛍光体膜9が励起され発光する。
【0013】蛍光体膜9の表面で発光した光を観測する反射型と呼ばれる方式のPDPでは、蛍光体の発光のうち背面方向への発光は他の蛍光体の表面で表示面方向に反射するが、蛍光体膜9の膜厚が薄いと反射する機会が少なくなるために膜厚が厚い場合に比べて、輝度が低くなり、一方、膜厚が厚すぎると放電空間が狭くなるために気体放電による紫外線の発光効率が低下するため輝度が低下するが、本発明の蛍光体を用いて形成された蛍光体膜9は蛍光体内部の細孔もしくは反射体により効率良く発光した光を反射するために、膜厚を必要以上に厚くする必要がない。
【0014】[実施の形態1]図2は、本発明の細孔を内部に有する蛍光体の一例の概略を示す断面拡大図である。蛍光体11が真空紫外線12を受けた際、蛍光体中の発光センター13から放射状に発光するが、蛍光体の内部へ向かう光は、本来は画像の輝度に寄与しないが、この表示面方向以外に放射された光14においても細孔15の表面で表示面側に向かって反射するので、画像の輝度が向上する。
【0015】蛍光体材料は特に限定はされないが、紫外線励起蛍光体として、赤色に発光する蛍光体としては(Y,Gd)BO:Eu、Y:EUやYVO:Euであり、緑色に発光する蛍光体としてはZnSiO:Mn、BaO・6Al:Mn、YSiO:TbやLaPO:Ce,Tbであり、青色に発光する蛍光体としてはBaMgAl1423:Euや(Ca,Sr,Ba)10(PO4)Cl:Euである。これらの蛍光体の屈折率は1.5から2.0であり、屈折率が1.5の場合、臨界角は41.8゜であるので、41.8゜以上の入射角で細孔に入射した光は全反射し、屈折率が2.0の場合、臨界角は30゜であるので、30゜以上の入射角で細孔に入射した光は全反射する。
【0016】内部に細孔を有する蛍光体を作成する方法として、母体および付活剤の構成元素を含有する金属アルコキシド、有機酸金属化合物、もしくは金属塩等の蛍光体構成原料をアルコールなどの溶媒中で加水分解、重合させることで得られるゾルに細孔を構成するためにポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコールやポリビニルアルコールなどの有機高分子を加えて、さらに重合をすすめることで蛍光体のゲル体と有機高分子との間で相分離現象がおこり、有機高分子を内包する蛍光体のゲル粒子が得られる。これを加熱、焼成することで有機物が燃焼して内部に細孔を有する蛍光体が得られる。また、蛍光体の母体および付活剤の構成元素を含有する金属化合物として金属とアセチルアセトン、ジエタノールアミンやトリエタノールアミンなどの配位子との金属錯体を用いたゾル溶液を重合をすすめてゲル粒子とした後に加熱、焼成することでも内部に細孔を有する蛍光体が得られる。上述の有機物を含むゾル溶液を高温雰囲気中に噴霧することでも、有機物が蒸発もしくは燃焼して細孔を有する蛍光体が形成される。これらの焼成温度は、従来の固相法に比べて低くすることができ、800℃から1200℃で蛍光体の形成が可能である。
【0017】を溶媒とし、酢酸亜鉛二水和物88.2gを28%アンモニア水60gを加えて溶解した溶液に酢酸マンガン二水和物1.87gのエタノール溶液およびテトラエトキシシラン41.7gのエタノール溶液を加え、さらにポリビニルアルコール5gを加えて撹拌した。撹拌を続けるとゲル粒子が生じるのでこれを乾燥した後、1200℃で焼成して細孔を有する蛍光体粒子を形成した。
【0018】[実施の形態2]本発明の反射体を内部に有する蛍光体について説明する。図3は本発明の反射体を内部に有する蛍光体の一例の概略を示す断面拡大図である。蛍光体11が紫外線などの励起刺激12を受けた際、蛍光体中の発光センター13から放射状に発光するが、本来は画像の輝度に寄与しない表示面方向以外に放射された光14においても反射体16の表面で表示面側に向かって反射するので、画像の輝度が向上する。
【0019】反射体を母体および付活剤の構成元素を含有する金属アルコキシド、有機酸金属化合物、金属錯体もしくは金属塩等をアルコールなどの溶媒中で加水分解、重合させることで得られるゾルに金属微粒子などの反射体を分散させた後、さらに重合をすすめて反射体を含有する蛍光体のゲル粒子を形成し、これを加熱、焼成することで内部に反射体を有する蛍光体が得られる。反射体の金属微粒子としては、可視光の反射率が高く、蛍光体母体との反応性の低い金属が選ばれる。特に限定はされないが、例えばAl、Ag、Ti、Mo、Wなどである。
【0020】[実施の形態3]選択的な色を反射する反射体を内部に有する蛍光体について説明する。図4は本発明の選択的な色を反射する反射体内部にを有する蛍光体の一例の概略を示す断面拡大図である。選択的な色を反射する反射体として、青色発光の蛍光体は青色反射体17を含有し、蛍光体が発光する青色の光18を反射して画像の輝度を向上させ、一方、外部から入射する光19のうち青色以外の色を吸収する。同様に緑色発光の蛍光体は緑色反射体、赤色発光の蛍光体は赤色反射体を含有しているのでそれぞれ蛍光体が発光した光は反射し、その他の色の光は吸収する。そのため、画像表示装置においてこれらの蛍光体を用いて青、緑、赤の蛍光体膜を設けた場合、照明光などの外部からの光の反射を抑えることができるので輝度の向上とともにコントラストが向上する。
【0021】反射体を母体および付活剤の構成元素を含有する金属アルコキシド、有機酸金属化合物、金属錯体もしくは金属塩等をアルコールなどの溶媒中で加水分解、重合させることで得られるゾルに無機顔料などの反射体を分散させた後、さらに重合をすすめて反射体を含有する蛍光体のゲル粒子を形成し、これを加熱、焼成することで内部に反射体を有する蛍光体が得られる。
【0022】反射体の無機顔料としては、特に限定はされないが、青色は、CoAl(コバルトアルミブルー)、(Co,Zn)Al(コバルト亜鉛アルミブルー)、Co(Al,Cr)(コバルトアルミクロムブルー)、COSnO(セリアンブルー)、CoSiO(コバルトシリカブルー)や(Co,Zn)SiO(コバルト亜鉛シリカブルー)などを主成分とする顔料であり、緑色は、CoTiO・nNiTiO・mZnTiO(チタンコバルトグリーン)、CoO・nZnO(コバルトグリーン)、CoCr(コバルトクロムグリーン)や3CaO・Cr・3SiO(ビクトリアグリーン)などを主成分とする顔料であり、赤色は、α−Fe(べんがら)やCdS・CdSe(カドミュウムレッド)などを主成分とする顔料である。
【0023】
【発明の効果】本発明によれば、上述のように、高輝度なPDPを形成することができる。とりわけ、反射体として無機顔料のような選択的な光を反射する反射体を用いた場合は、蛍光体が発光する光は反射し、外部から入射する光が吸収するため、高輝度かつ高コントラストなPDPを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる蛍光体膜を具備したPDPの全体構成図である。
【図2】本発明の細孔を内部に有する蛍光体の一例の概略を示す断面拡大図である。
【図3】本発明の反射体を内部に有する蛍光体の一例の概略を示す断面拡大図である。
【図4】本発明の選択的な色を反射する反射体を内部に有する蛍光体の一例の概略を示す断面拡大図である。
【符号の説明】
9 蛍光体膜
11 蛍光体
12 真空紫外線
13 発光センター
14 蛍光体の内部に向かう光
15 細孔
16 反射体
17 選択的な色を反射する反射体
18 蛍光体の発光する光
19 外部から入射する光

【特許請求の範囲】
【請求項1】 細孔もしくは反射体を内部に有することを特徴とする蛍光体。
【請求項2】 反射体が金属微粒子であることを特徴とする請求項1記載の蛍光体。
【請求項3】 反射体が選択的な色を反射する無機顔料であることを特徴とする請求項1記載の蛍光体。
【請求項4】 蛍光体の母体および付活剤の構成元素を含有する金属アルコキシド、有機酸金属化合物、金属錯体もしくは金属塩等を加水分解、重合させることで得られるゾルに有機物を分散させ、加熱、焼成して得られる内部に細孔を有することを特徴とする請求項1記載の蛍光体の製造方法。
【請求項5】 蛍光体の母体および付活剤の構成元素を含有する金属アルコキシド、有機酸金属化合物、金属錯体もしくは金属塩等を加水分解、重合させることで得られるゾルに反射体を分散させ、加熱、焼成して得られる内部に反射体を有することを特徴とする請求項1記載の蛍光体の製造方法。
【請求項6】 請求項1に記載の蛍光体を具備した画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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