説明

画像表示装置の製造方法

【課題】遮光部を備えた保護部と画像表示部との間に樹脂を介在させた薄型の画像表示装置を製造するにあたり、画像表示部の変形に起因する表示不良を生じさせることなく、高輝度及び高コントラストな表示を可能とし、かつ、遮光部の形成領域の樹脂も十分に硬化させる。
【解決手段】画像表示部を有する基部と、遮光部を有する透光性の保護部との間に光硬化型樹脂組成物を介在させ、光硬化させて樹脂硬化物層を形成する工程を有する画像表示装置の製造方法において、光硬化型樹脂組成物として、硬化収縮率が5%以下、硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下、樹脂硬化物層の可視光領域の光透過率を90%以上とする樹脂組成物を使用し、かつ、光硬化を、少なくとも遮光部の形成面の外方側面側から光硬化型樹脂組成物に光照射することにより行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話等に用いられる液晶表示装置(LCD)等の画像表示装置の製造方法、特に、画像表示部上に透明な保護部を設けた画像表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像表示装置としては、例えば図4に示すようなものが知られている。
【0003】
この液晶表示装置101は、液晶表示パネル102上に、例えば、ガラスやプラスチックスからなる透明な保護部103を有している。
【0004】
この場合、液晶表示パネル102表面及び偏光板(図示せず)を保護するため、保護部103との間にスペーサ104を介在させることによって液晶表示パネル102と保護部103との間に空隙105が設けられている。
【0005】
しかし、液晶表示パネル102と保護部103との間の空隙105の存在により、光の散乱がおき、それに起因してコントラストや輝度が低下し、また空隙105の存在はパネルの薄型化の妨げとなっている。
【0006】
このような問題に鑑み、液晶表示パネルと保護部との間の空隙に樹脂を充填することも提案されているが(例えば特許文献1)、樹脂硬化物の硬化収縮の際の応力によって液晶表示パネルの液晶を挟持する光学ガラス板に変形が生じ、液晶材料の配向乱れ等の表示不良の原因となっている。
【0007】
また、この種の液晶表示装置101には、表示画像の輝度やコントラストを向上させるため、液晶表示パネル102の周囲の保護部103に所謂ブラックマトリクスと呼ばれる黒色枠状の遮光部(図示せず)が形成される。
【0008】
しかし、このような構成において、液晶表示パネル102と保護部103との間の空隙105に光硬化型樹脂組成物を充填して光硬化させようとすると、遮光部の形成領域にある光硬化型樹脂組成物は、光が十分に到達しないことにより未硬化となるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−55641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような従来の技術の課題を考慮してなされたもので、その目的とするところは、遮光部を備えた保護部と画像表示部との間に樹脂を介在させた薄型の画像表示装置を製造するにあたり、画像表示部の変形に起因する表示不良を生じさせることなく、高輝度及び高コントラストの画像表示を可能とし、かつ、遮光部の形成領域の樹脂も十分に硬化させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、画像表示部を有する基部と、遮光部を有する透光性の保護部との間に光硬化型樹脂組成物を介在させ、光硬化させて樹脂硬化物層を形成する工程を有する画像表示装置の製造方法であって、
光硬化型樹脂組成物として、硬化収縮率が5%以下、硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下、樹脂硬化物層の可視光領域の光透過率を90%以上とする樹脂組成物を使用し、光硬化を、少なくとも遮光部の形成面の外方側面側から光硬化型樹脂組成物に光照射することにより行う画像表示装置の製造方法を提供する。
【0012】
本発明では、画像表示部を、液晶表示パネルとすることもできる。
【0013】
本発明では、保護部を、アクリル樹脂からなるものとすることもできる。
【0014】
本発明では、保護部を、光学ガラスからなるものとすることもできる。
【発明の効果】
【0015】
樹脂が硬化する際に蓄積される内部応力は、硬化後の貯蔵弾性率と硬化収縮率の積で近似できるところ、本発明によれば、硬化型樹脂組成物として、硬化収縮率が5%以下、硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下のものを使用するので、画像表示部と保護部との間の空隙に充填する樹脂が弾性率と硬化収縮率の好適な関係を有し、画像表示部及び保護部に対し、樹脂の硬化収縮時の応力の影響を最小限に抑えることができる。したがって、画像表示部及び保護部に歪みがほとんど生じない。その結果、表示不良のない高輝度及び高コントラストの画像表示が可能になる。
【0016】
特に、画像表示部が液晶表示パネルである場合には、液晶材料の配向乱れ等の表示不良を確実に防止して高品位の画像表示を行うことができる。
【0017】
また、本発明によれば、画像表示部と保護部との間に樹脂硬化物が介在するので、衝撃に強くなる。
【0018】
加えて、画像表示部と保護部との間に空隙を設けていた従来例に比して薄型の画像表示装置を提供することが可能となる。
【0019】
さらに、本発明によれば、画像表示部と保護部との間に介在させる硬化型樹脂組成物として光硬化型のものを使用し、その光硬化型樹脂組成物に対する光照射を、少なくとも遮光部の形成面の外方側面側から行うので、遮光部の形成領域にある光硬化型樹脂組成物が確実に光照射され、十分に硬化する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態の製造方法の要部を示す断面工程図である。
【図2】同実施形態における製造工程の要部を示す平面図である。
【図3】他の実施形態の製造方法の要部を示す断面工程図である。
【図4】従来技術に係る画像表示装置の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0022】
図1(a)〜(c)は、本発明に係る画像表示装置の製造方法の一つの実施形態の要部を示す断面工程図、図2は、同実施形態における画像表示装置の製造工程の要部を示す平面図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態では、図示しない駆動回路に接続され所定の画像表示を行う画像表示部を有する基部2と、保護部3とを樹脂硬化物層14により貼り合わせる。
【0024】
ここで、画像表示装置としては、特に限定されるものではなく、種々のものに適用することができ、例えば、携帯電話、携帯ゲーム機器等の液晶表示装置があげられる。以下、液晶表示装置に適用する場合を例にとって本発明を説明する。
【0025】
保護部3は、基部2と同程度の大きさの例えば矩形平板状の透光性部材4から形成されている。この透光性部材4としては、例えば、光学ガラスやプラスチック(アクリル樹脂等)を好適に用いることができる。
【0026】
透光性部材4の一面側(基部2側)の液晶表示パネルの周縁に対応する領域には、例えば黒色枠状の遮光部5が設けられている。この遮光部5は、例えば印刷法によって形成することができる。
【0027】
一方、基部2は、例えば枠状のフレーム6を有し、このフレーム6の内側の領域に液晶表示パネル(画像表示部)8が取り付けられ、さらに、この液晶表示パネル8の装置背面側の部位にバックライト7が取り付けられている。
【0028】
また、図2に示すように、基部2のフレーム6の液晶表示パネル8側の面の周縁部には、複数のスペーサ9が所定の間隔をおいて断続的に設けられている。このスペーサ9の厚さは0.05〜1.5mm程度であり、これにより液晶表示パネル8と保護部3との表面間距離が1mm程度に保持される。
【0029】
また、本実施の形態では、特に基部2のフレーム6の貼り合わせ面6aと保護部3の遮光部5の貼り合わせ面5aとが平行になっている。
【0030】
このような構成において、本実施の形態では、まず、図1(a)に示すように、保護部3の遮光部5側に光硬化型樹脂組成物11を所定量滴下して、次いで保護部3を反転させて、保護部3と画像表示部8とを対向させる。次に、保護部3を基部2のスペーサ9上に配置し、図1(b)に示すように、樹脂組成物充填部12を形成する。
【0031】
ここで、光硬化型樹脂組成物11の滴下量は、樹脂組成物充填部12を硬化させた樹脂硬化物層14の厚みが50〜200μmとなるようにすることが好ましい。
【0032】
光硬化型樹脂組成物11としては、その樹脂硬化物の貯蔵弾性率(25℃)を1×10Pa以下、好ましくは1×10〜1×10Paとし、樹脂硬化物の屈折率を好ましくは1.45以上1.55以下、より好ましくは1.51以上1.52以下とし、さらに、樹脂硬化物の厚さが100μmの場合の可視光領域の透過率を90%以上とするように調製したものを用いる。
【0033】
一般に、硬化型樹脂組成物を構成する主要な樹脂成分としては共通でも、共に配合する樹脂成分あるいはモノマー成分等が異なると、それを硬化させた樹脂硬化物の貯蔵弾性率(25℃)が1×10Paを超える場合があるが、そのような樹脂硬化物を形成する樹脂組成物は、光硬化型樹脂組成物11としては用いない。
【0034】
また、この光硬化型樹脂組成物11は、硬化収縮率が、好ましくは5.0%以下、より好ましくは4.5%以下、特に好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは0〜2%となるように調製したものとする。これにより、光硬化型樹脂組成物11が硬化する際に樹脂硬化物に蓄積される内部応力を低減させることができ、樹脂硬化物層14と液晶表示パネル8又は保護部3との界面に歪みができることを防止できる。したがって、光硬化型樹脂組成物11を液晶表示パネル8と保護部3との間に介在させ、その光硬化型樹脂組成物11を硬化させた場合に、樹脂硬化物層14と液晶表示パネル8又は保護部3との界面で生じる光の散乱を低減させることができ、表示画像の輝度を高めると共に、視認性を向上させることができる。
【0035】
なお、樹脂組成物が硬化する際に樹脂硬化物に蓄積される内部応力の程度は、樹脂組成物を平板上に滴下し、それを硬化させて得られる樹脂硬化物の平均表面粗度によって評価することができる。例えば、樹脂組成物2mgをガラス板上又はアクリル板上に滴下し、それをUV照射により90%以上の硬化率で硬化させて得られる樹脂硬化物の平均表面粗度が6.0nm以下であれば、液晶表示パネル8と保護部3との間に硬化型樹脂組成物を介在させ、それを硬化させた場合にそれらの界面に生じる歪みが実用上無視できる。これに関し、本実施の態様で使用する光硬化型樹脂組成物11によれば、この平均表面粗度を6.0nm以下、好ましくは5.0nm以下、より好ましくは1〜3nmにすることができる。したがって、樹脂硬化物の界面に生じる歪みを実用上無視することができる。
【0036】
ここで、ガラス板としては、液晶セルの液晶を挟持するガラス板や液晶セルの保護板として使用されているものを好ましく使用できる。また、アクリル板としては、液晶セルの保護板として使用されているものを好ましく使用できる。これらのガラス板やアクリル板の平均表面粗度は、通常、1.0nm以下である。
【0037】
このような樹脂組成物としては、例えば、ポリウレタンアクリレート、ポリイソプレン系アクリレート又はそのエステル化物、テルペン系水素添加樹脂、ブタジエン重合体等の1種以上のポリマーと、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート等の1種以上のアクリレート系モノマーと、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等の光重合開始剤とを含有する樹脂組成物を好適に用いることができる。
【0038】
なお、保護部3には、画像表示部8に対する紫外線保護の観点から紫外線領域をカットする機能が付与されていることが多い。そのため、光重合開始剤としては、可視光領域でも硬化できる光重合開始剤(例えば、商品名SpeedCureTPO、日本シイベルヘグナー(株)製等)を用いることが好ましい。
【0039】
その後、図1(b)に示すように、透光性部材4を介して紫外線33を照射する。紫外線33の照射方向は、特に限定されることはないが、画像表示領域にある光硬化型樹脂組成物11のより均一な硬化を達成する観点からは、透光性部材4の表面に対して直交する方向とすることが好ましい。
【0040】
また、本発明では上述の紫外線33の照射に加えて、例えば光ファイバー等からなる微細な照射部30を有するUV光照射装置31を用い、遮光部5の形成領域にある光硬化型樹脂組成物11、より具体的には遮光部5と基部2との間の光硬化型樹脂組成物11に対し、遮光部5の貼り合わせ面5a(即ち、遮光部の形成面)の外方側面側から、スペーサ9の間を通して紫外線32を直接照射する。
【0041】
紫外線32の照射方向は、特に限定されることはなく、水平方向に対して0°以上90°未満とすることができるが、遮光部5の形成領域にある光硬化型樹脂組成物11のより均一な硬化を達成する観点からは、基部2のフレーム6の貼り合わせ面6aと保護部3の遮光部5の貼り合わせ面5aに対し、ほぼ平行に紫外線32を照射することが好ましい。
【0042】
このような紫外線の照射を行うことにより、図1(c)に示すように、樹脂組成物充填部12を硬化させて樹脂硬化物層14とし、目的とする画像表示装置1を得る。
【0043】
こうして得られる画像表示装置1は、特定の光硬化型樹脂組成物11を使用することにより、画像表示部8および保護部3に対し、樹脂硬化収縮時の応力の影響を最小限に抑えることができるので、画像表示部8及び保護部3において歪みがほとんど発生せず、その結果、画像表示部8に変形が発生しないので、表示不良のない高輝度及び高コントラストの画像表示が可能になる。
【0044】
さらに、光硬化型樹脂組成物11を硬化させた樹脂硬化物層14により、衝撃に強く、また、画像表示部と保護部との間に空隙を設けていた従来例に比して薄型の画像表示装置1を得ることができる。
【0045】
加えて、基部2のフレーム6と遮光部5との間に配置した光硬化型樹脂組成物11に対して遮光部5の貼り合わせ面5aの外方側面側からも光を照射するようにしたことから、遮光部5の形成領域の光硬化型樹脂組成物11も確実に光が照射され、十分に硬化する。
【0046】
本発明は種々の態様をとることができる。例えば、図3に示すように、スペーサ9を省略して画像表示装置1を製造してもよい。この場合には、基部2上に、上述の光硬化型樹脂組成物11を塗布し、その上に保護部3を重ね、前述と同様に光硬化を行う。
【0047】
また、本発明は、上述した液晶表示装置のみならず、例えば、有機EL、プラズマディスプレイ装置等の種々のパネルディスプレイに適用することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
次の実施例樹脂組成物1〜4、比較例樹脂組成物1〜3を調製した。
【0050】
<実施例樹脂組成物1>
ポリウレタンアクリレート(商品名UV−3000B、日本合成化学工業(株)製)50重量部、イソボルニルアクリレート(商品名IBXA、大阪有機化学工業(株)製)30重量部、光重合開始剤(商品名IRGACURE184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)3重量部、光重合開始剤(商品名SpeedCureTPO、日本シイベルヘグナー(株)製)1重量部を、混練機にて混練して実施例樹脂組成物1を調製した。
【0051】
<実施例樹脂組成物2>
ポリイソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物70重量部、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート30重量部、2−ヒドロキシブチルメタクリレート10重量部、テルペン系水素添加樹脂30重量部、ブタジエン重合体140重量部、光重合開始剤4重量部、可視光領域用光重合開始剤0.5重量部を混練機にて混練して実施例樹脂組成物2を調製した。
【0052】
<実施例樹脂組成物3>
ポリイソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物100重量部、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート30重量部、2−ヒドロキシブチルメタクリレート10重量部、テルペン系水素添加樹脂30重量部、ブタジエン重合体210重量部、光重合開始剤7重量部、可視光領域用光重合開始剤1.5重量部を混練機にて混練して実施例樹脂組成物3を調製した。
【0053】
<実施例樹脂組成物4>
ポリイソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物(商品名UC−203、(株)クラレ製)70重量部、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(商品名FA512M、日立化成工業(株)製)30重量部、2−ヒドロキシブチルメタクリレート(商品名ライトエステルHOB、共栄社化学(株)製)10重量部、テルペン系水素添加樹脂(商品名クリアロンP−85、ヤスハラケミカル(株)製)30重量部、ブタジエン重合体(商品名Polyoil110、日本ゼオン(株)製)35重量部、光重合開始剤(商品名IRGACURE184D、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)5重量部、光重合開始剤(商品名SpeedCure TPO、日本シイベルヘグナー(株)製)2重量部を混練機にて混練して実施例樹脂組成物4を調製した。
【0054】
<比較例樹脂組成物1>
ポリブタジエンアクリレート(商品名TE−2000、日本曹達(株)製)50重量部、ヒドロキシルエチルメタクリレート(商品名ライトエステルHO、共栄社化学(株)製)20重量部、光重合開始剤(IRGACURE184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)3重量部、光重合開始剤(商品名SpeedCureTPO、日本シイベルヘグナー(株)製)1重量部を混練機にて混練して比較例樹脂組成物1を調製した。
【0055】
<比較例樹脂組成物2>
ポリウレタンアクリレート(商品名UV−3000B、日本合成化学工業(株)製)50重量部、トリシクロデカンジメタノールアクリレート(商品名NKエステルLC2、新中村化学工業(株)製)30重量部、光重合開始剤(IRGACURE184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)3重量部、光重合開始剤(商品名SpeedCureTPO、日本シイベルヘグナー(株)製)1重量部を混練機にて混練して比較例樹脂組成物2を調製した。
【0056】
<比較例樹脂組成物3>
ポリブタジエンアクリレート(商品名TE−2000、日本曹達(株)製)50重量部、イソボルニルアクリレート(商品名IBXA、大阪有機化学工業(株)製)20重量部、光重合開始剤(IRGACURE184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)3重量部、光重合開始剤(商品名SpeedCureTPO、日本シイベルヘグナー(株)製)1重量部を混練機にて混練して比較例樹脂組成物3を調製した。
【0057】
実験例1
実施例樹脂組成物1〜4、比較例樹脂組成物1〜3を、厚さ100μmの白色のガラス板上に、所定の膜厚となるように滴下してUVコンベアにて搬送し、所定の厚さの樹脂硬化物を得、これを試料とした。
【0058】
各試料について、「光透過率」、「貯蔵弾性率」、「硬化収縮率」、「表面粗度の測定」を以下の通り測定した。これらの結果を表1に示す。
【0059】
〔光透過率〕
各試料(樹脂硬化物の厚さ100μm)について、紫外可視分光光度計(日本分光(株)製V−560)によって可視光領域の透過率(%)を測定したところ、全て90%以上であった。
【0060】
〔貯蔵弾性率〕
各試料について、粘弾性測定装置(セイコーインスツルメンツ(株)製DMS6100)を用い、測定周波数1Hzで貯蔵弾性率(Pa)(25℃)を測定した。
【0061】
〔硬化収縮率〕
硬化収縮率(%)については、硬化前の樹脂液と硬化後の固体の比重を電子比重計(MIRAGE社製SD−120L)を用いて測定し、両者の比重差から次式により算出した。
【0062】
【数1】

【0063】
〔表面粗度〕
各樹脂組成物について、それぞれ2mgを液晶セル用ガラス板に滴下し、UV硬化の際に生ずる内部応力により発生するガラス板表面の所定領域(2.93mm×2.20mm)の歪み(Ra:平均表面粗度)を、Zygo社製3次元非接触表面粗度測定計にて測定した。
【0064】
【表1】

【0065】
表1から明らかなように、実施例樹脂組成物1〜4では貯蔵弾性率が4×10〜1×10Paであり、硬化収縮率が1.0〜4.5%であり、そのため、平均表面粗度Ra=1.5〜5.5nmで歪みがほとんどなく、良好な結果が得られた。これに対し、比較例樹脂組成物1(Ra=12.4nm)、比較例樹脂組成物2(Ra=36.5nm)、比較例樹脂組成物3(Ra=64.2nm)は、Raが大きく、樹脂が硬化する際の内部応力により、樹脂とガラス板との界面が歪んでいることが理解される。
【0066】
実験例2:硬化率の測定
図1(a)で保護部3となるアクリル板に、実験例1で調製した実施例樹脂組成物1を0.2gほど滴下し、次いで、基部2となる液晶表示パネルと対向配置させて、液晶表示パネルとアクリル板との間に実施例樹脂組成物1を充填したものを合計3台作製した。このうち2台にはアクリル板として、その周縁領域に幅2mmの黒色インキ層からなる遮光部(ブラックマトリックス)5が形成されているものを使用し、他の1台は遮光部5が形成されていないものを使用した。
【0067】
次に、遮光部5が形成されたアクリル板を使用したもの1台について、アクリル板から10cmほど離れた箇所から、UVランプ(ウシオ電機製)を使って積算光量5000mJの紫外線を照射するとともに(正面照射)、フレーム6の周囲全体に渡って、黒色インキ層からなる遮光部5の外方側面側から(より具体的にはフレーム6の側面から3cmほど離れたところから)、光ファイバーを使って積算光量5000mJの紫外線を照射した(側面照射)。
【0068】
次に、残りの2台について、側面照射を行うことなく、上述と同様の正面照射のみ行った。
【0069】
こうして光照射した3台の画像表示装置のアクリル板を引き剥がし、アクリル板の中央部および遮光部5の直下について、樹脂組成物の硬化率を次のように測定した。その結果を表2に示す。
【0070】
樹脂組成物の硬化率の測定方法:
照射前の樹脂組成物と照射後の硬化物のそれぞれから、それらの硬化成分(モノマー、オリゴマー)を、樹脂組成物、硬化物が0.2wt%となる量のアセトニトリルを用いて抽出し、液体クロマトグラフィーで樹脂組成物における硬化成分のピーク強度Iと、硬化物における硬化成分のピーク強度Iを求め、次式により硬化率を算出した。
【0071】
【数2】

【0072】
【表2】

【0073】
表2の結果からわかるように、アクリル板に遮光部がある場合には、正面照射のみであると、アクリル板中央部は樹脂組成物の硬化率は高いものの、遮光部の直下の樹脂組成物の硬化率は必ずしも高くない。それに対し、正面照射と側面照射を併用すると、遮光部が形成されている場合であっても、遮光部の直下の樹脂組成物の硬化率を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、液晶表示装置等の画像表示装置の製造に有用である。
【符号の説明】
【0075】
1…画像表示装置
2…基部
3…保護部
4…透光性部材
5…遮光部
5a…遮光部の貼り合わせ面
6…フレーム
6a…フレームの貼り合わせ面
7…バックライト
8…液晶表示パネル(画像表示部)
11…光硬化型樹脂組成物
12…樹脂組成物充填部
14…樹脂硬化物層
32、33…紫外線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示部を有する基部と、遮光部を有する透光性の保護部との間に光硬化型樹脂組成物を介在させ、光硬化させて樹脂硬化物層を形成する工程を有する画像表示装置の製造方法であって、
光硬化型樹脂組成物として、硬化収縮率が5%以下、硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下、樹脂硬化物層の可視光領域の光透過率を90%以上とする樹脂組成物を使用し、
光硬化を、少なくとも遮光部の形成面の外方側面側から光硬化型樹脂組成物に光照射することにより行う画像表示装置の製造方法。
【請求項2】
樹脂硬化物層の25℃における貯蔵弾性率が1×10〜1×10Paである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
光硬化型樹脂組成物の硬化収縮率が4.0%以下である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
樹脂硬化物層の厚みが50〜200μmである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
光硬化型樹脂組成物が、ポリウレタンアクリレート、ポリイソプレン系アクリレート又はそのエステル化物、テルペン系水素添加樹脂及びブタジエン重合体から選ばれる1種以上のポリマーと、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート及び2−ヒドロキシブチルメタクリレートから選ばれる1種以上のアクリレート系モノマーと、光重合開始剤とを含有する請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
画像表示部が、液晶表示パネルである請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
保護部が、アクリル樹脂からなる請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
保護部が、光学ガラスからなる請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−145955(P2012−145955A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−48220(P2012−48220)
【出願日】平成24年3月5日(2012.3.5)
【分割の表示】特願2008−98776(P2008−98776)の分割
【原出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】