説明

画像表示装置及びその制御方法

【課題】表示パネルの温度変化や経時劣化により表示パネルの応答特性が変化した場合でも動画ぼけを好適に低減することができる画像表示装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】入力される画像データが変化した場合の前記表示パネルの応答開始タイミング及び応答終了タイミングを取得する取得手段と、入力される画像データが変化した場合に、前記取得手段が取得した前記表示パネルの応答開始タイミング及び応答終了タイミングに基づいて、前記バックライトを点灯及び消灯させる制御を行う制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記表示パネルの応答開始タイミングから応答終了タイミングまでの時間間隔である応答時間に応じて、前記バックライトの点灯及び消灯のタイミングを変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶パネルを有する画像表示装置は、ホールド型駆動であることや、液晶パネルの応答時間が遅いことに起因して、動画表示時に残像が視認される、動画ぼけと呼ばれる問題がある。
液晶ディスプレイの残像を低減する技術として、画像表示と画像表示の間に黒表示を挟む黒挿入と呼ばれる技術がある。また、液晶パネルの画像の切り替えに同期してバックライトの点灯・非点灯を制御するバックライトブリンキングと呼ばれる技術がある。
【0003】
黒挿入技術に関連して、特許文献1には、温度センサにより液晶パネルの温度を測定し、液晶パネルの温度が高いほど1フレーム期間内に占める黒画像表示期間の割合(黒挿入率)を高くする発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−295156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶パネルの応答特性は、環境変化によるパネル温度変化や長期使用による経時劣化などによって変化する。液晶パネルの応答特性が変化すると、液晶素子に印加する電気信号の変化に対する液晶の透過率の応答特性が変化することになる。図9は、IPS方式(InPlane Switching)の液晶パネルの応答特性が温度によって変化する様子を示す図である。
図9は、液晶パネルの表示する画像が黒画像から白画像へ切り替わる場合の液晶パネルの輝度値の変化を、2種類のパネル温度(30℃及び10℃)について示したものである。図9(A)は画像信号の変化を示し、図9(B)はパネル温度が30℃の場合の液晶パネルの輝度値の変化を示し、図9(C)はパネル温度が10℃の場合の液晶パネルの輝度値の変化を示す。
【0006】
共通の横軸は時間を表し、t1は画像の切り替えタイミング、t2及びt3はそれぞれパネル温度が30℃の場合の液晶立ち上がり開始時間及び終了時間、t2’及びt3’はそれぞれパネル温度が10℃の場合の液晶立ち上がり開始時間及び終了時間を表す。液晶立ち上がり開始時間は、黒画像表示から白画像表示に切り替えた場合の液晶パネルの輝度値が液晶立ち上がり開始閾値を超えるタイミングである。液晶立ち上がり終了期間は、黒画像表示から白画像表示に切り替えた場合の液晶パネルの輝度値が液晶立ち上がり終了閾値を超えるタイミングである。また、液晶立ち上がり開始時間から液晶立ち上がり終了時間までの期間を液晶の応答時間とする。
【0007】
図9に示す例では、パネル温度が10℃の場合の液晶立ち上がり開始時間t2’は、パネル温度が30℃の場合の液晶立ち上がり開始時間t2より遅くなっている。また、パネル温度が10℃の場合の液晶の応答時間Δt’(=t3’−t2’)は、パネル温度が30℃の場合の液晶の応答時間Δt(=t3−t2)より長くなっている。
【0008】
バックライトブリンキングによって動画ぼけを効果的に低減するためには、画像信号の切り替わりに対する液晶パネルの応答とバックライトの点灯・非点灯の制御とが正確に同期
して行われることが重要である。しかしながら、上記のように液晶パネルの温度変化や経時劣化などにより液晶パネルの応答特性が変化すると、液晶パネルの応答とバックライトの点灯・非点灯の制御とが正確に同期しなくなり、動画ぼけを効果的に低減できなくなる可能性がある。
【0009】
そこで本発明は、表示パネルの温度変化や経時劣化により表示パネルの応答特性が変化した場合でも動画ぼけを好適に低減することができる画像表示装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、バックライトと、
入力される画像データに応じて前記バックライトからの光の透過率を変化させることで前記画像データに基づく画像を表示する表示パネルと、
入力される画像データが変化した場合の前記表示パネルの応答開始タイミング及び応答終了タイミングを取得する取得手段と、
入力される画像データが変化した場合に、前記取得手段が取得した前記表示パネルの応答開始タイミング及び応答終了タイミングに基づいて、前記バックライトを点灯及び消灯させる制御を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記表示パネルの応答開始タイミングから応答終了タイミングまでの時間間隔である応答時間に応じて、前記バックライトの点灯及び消灯のタイミングを変更する画像表示装置である。
【0011】
本発明は、バックライトと、入力される画像データに応じて前記バックライトからの光の透過率を変化させることで前記画像データに基づく画像を表示する表示パネルと、を有する画像表示装置の制御方法であって、
入力される画像データが変化した場合の前記表示パネルの応答開始タイミング及び応答終了タイミングを取得する取得工程と、
入力される画像データが変化した場合に、前記取得工程が取得した前記表示パネルの応答開始タイミング及び応答終了タイミングに基づいて、前記バックライトを点灯及び消灯させる制御を行う制御工程と、を有し、
前記制御工程は、前記表示パネルの応答開始タイミングから応答終了タイミングまでの時間間隔である応答時間に応じて、前記バックライトの点灯及び消灯のタイミングを変更する画像表示装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、表示パネルの温度変化や経時劣化により表示パネルの温度が変化した場合でも動画ぼけを好適に低減することができる画像表示装置及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1における画像表示装置の構成を示すブロック図
【図2】実施例1,2における画像表示装置の動作のフローチャート
【図3】実施例1,2,3における較正のフローチャート
【図4】実施例1、3における応答時間の判定のフローチャート
【図5】実施例2における画像表示装置の構成を示すブロック図
【図6】実施例2における応答時間の判定のフローチャート
【図7】実施例3における画像表示装置の構成を示すブロック図
【図8】実施例3における画像表示装置の動作のフローチャート
【図9】環境変化による応答時間の変化の一例
【図10】液晶の応答時間とバックライト点灯制御の変化の一例
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例1)
本発明の実施例1について、説明する。図1は、本発明を適用した画像表示装置のシステム構成の概略図である。
入力信号源100は、放送受信装置、DVDプレーヤ等の再生装置、録画装置、パーソナルコンピュータ等、画像信号を出力する装置である。
【0015】
表示制御装置101は、入力信号源100の出力する画像信号を入力部202から入力し、画像出力部205から液晶パネル102へ画像信号を出力する。また、表示制御装置101は、パネル前面輝度測定部103の出力する測定輝度情報を測定制御部209から入力し、点灯制御部212からバックライト104へ駆動制御信号を出力する。
【0016】
液晶パネル102は、所定の表示領域内に複数の画素がマトリクス状に配置され、表示制御装置101から入力される画像信号に応じてバックライト104からの光の透過率を変化させることで画像の表示を行う。なお、本発明は、液晶パネルでなくても、バックライトを必要とし、応答時間がある程度長いシャッター方式のホールド型駆動表示パネルであれば、適用可能である。
パネル前面輝度測定部103は、液晶パネル102の表示領域内の所定の測定対象領域(例えば表示領域の中央部、若しくは表示領域の上端の中心部)の輝度を測定し、測定結果を測定輝度情報として測定制御部209へ出力する。パネル前面輝度測定部103は、例えば輝度センサであり、液晶パネル102の表示領域の上端の中心部に固定されていてもよい。或いは、液晶パネル102の周辺を覆うカバーの内部に収納されていて必要なときだけ表示領域の中央部に引き出すことができるようになっていてもよい。
【0017】
バックライト104は、液晶パネル102に光を照射する一又は複数の光源を有し、表示制御装置101から入力される駆動制御信号に応じて光源の点灯・非点灯が制御される。光源はCCFL、RGB−LED、白色LED等を例示でき、導光型又は直下型のいずれでも良い。また、バックライト104が複数のブロックに分割され、ブロック毎に光源の点灯状態(発光強度)を独立に制御するローカルディミング制御可能に構成されていても良い。
【0018】
本実施例の画像表示装置では、液晶パネル102に入力される画像信号が変化した場合に、液晶パネルの応答特性に基づいてバックライト104を点灯及び消灯させるバックライト制御(バックライトブリンキング)を行う。具体的には、画像信号が切り替わる場合の液晶パネルの輝度の液晶立ち上がり開始時間(応答開始タイミング)及び液晶立ち上がり終了時間(応答終了タイミング)に同期させてバックライト104を点灯又は非点灯とする。すなわち、液晶立ち上がり開始時間から液晶立ち上がり終了時間までの時間間隔(応答開始タイミングから応答終了タイミングまでの時間間隔)である応答時間において、バックライト104を非点灯とする。
【0019】
バックライト104のバックライトブリンキングを液晶の応答に同期させる方法については後述する。バックライトブリンキングにより、擬似的なインパルス表示が行われることになり、動画ぼけが低減される。なお、動画ぼけをより効果的に低減するために、画像信号の1フレームの表示期間の一部期間において黒画像表示を行う黒挿入を行っても良い。1フレームの一部を帯状の黒画像とし、1フレームの表示期間内に帯状の黒画像の位置を移動させる方式で黒挿入を行っても良い。バックライトブリンキングにおいて、黒画像の表示領域に対応する位置のバックライトを非点灯としても良い。
【0020】
表示制御装置101は、CPU201、入力部202、画像処理部203、合成部204
、画像出力部205、パッチ画像生成部206、及びパネル表示時間計測部207を備える。表示制御装置101は、更に、較正指示部208、測定制御部209、応答時間判定部210、バックライト設定部211、及び点灯制御部212を備える。
【0021】
CPU201は、表示制御装置101全体の動作を制御する。CPU201には、不図示のROM、RAM、及びタイマーが接続される。CPU201は、ROM(記憶手段)に格納されたプログラムを実行し、RAMをワークメモリとして使用し、タイマーを使用して時間管理を行う。
【0022】
入力部202は、入力信号源100から入力される画像信号をデコードし、画像処理部203へ画像データを出力する。
画像処理部203は、入力部202から入力される画像データに対し高画質化処理等の画像処理を適用した後、合成部204へ画像データを出力する。
【0023】
合成部204は、後述するパッチ画像生成部206から入力されるパッチ画像の画像データを、画像処理部203から入力される画像データに重畳して、画像出力部205へ出力する。
画像出力部205は、合成部204から入力される画像データを液晶パネル102へ出力するとともに、垂直同期信号を点灯制御部212と応答時間判定部210へ出力する。
【0024】
パッチ画像生成部206は、後述する応答時間判定部210から入力されるパッチ情報に基づきパッチ画像の画像データを生成して合成部204へ出力するとともに、パッチ出力タイミング信号を応答時間判定部210へ出力する。ここで、パッチ情報とは、生成するパッチ画像の色、サイズ、表示位置等を指定する情報である。パッチ出力タイミング信号とは、合成部204へのパッチ画像データの出力に同期する信号である。
【0025】
パネル表示時間計測部207は、CPU201が備えているタイマーを用いて、液晶パネル102が画像の表示を開始してからの経過時間(パネル表示時間)を計測し、パネル表示時間情報として較正指示部208へ出力する(計測手段)。パネル表示時間計測部207は、例えば、画像出力部205が液晶パネル102へ画像データを出力開始した時間を0とし、時間の計測を開始する。
【0026】
較正指示部208は、パネル表示時間計測部207から入力されるパネル表示時間情報からパネル表示時間を取得する。パネル表示時間が所定時間増加したと判定した場合、較正指示部208は、応答時間判定部210に対し、バックライトの点灯及び消灯のタイミングを変更(較正)するよう指示する。この所定時間は液晶パネル102の温度が大きく変化しない程度のパネル表示時間から決まるもので、測定により決定され予めROMに保持されている。
【0027】
測定制御部209は、パネル前面輝度測定部103から入力される測定輝度情報に基づき、液晶パネル102の測定対象領域の輝度を測定し、輝度値を応答時間判定部210へ出力する(輝度測定手段)。
応答時間判定部210は、較正指示部208からバックライトの点灯タイミングの較正指示を受けると、後述するバックライト設定部211に測定用バックライト駆動制御情報を出力し、パッチ情報をパッチ画像生成部206へ出力する。
【0028】
ここで、測定用バックライト駆動制御情報とは、液晶パネル102の測定対象領域に対応する位置のバックライトの駆動制御に適用されるバックライト駆動制御情報である。バックライト駆動制御情報とは、バックライトの点灯・非点灯制御の設定情報であり、ブリンキング開始時間情報とブリンキング期間情報を含む。ここで、ブリンキング開始時間とは
、後述する点灯制御部212がバックライトブリンキング駆動制御の開始タイミングを垂直同期信号に対し遅延させる時間を表す。
【0029】
ブリンキング期間情報とは、バックライトブリンキング駆動制御におけるバックライト104の点灯期間及び非点灯期間を表す。測定用バックライト駆動制御情報では、ブリンキング開始時間は0、ブリンキング期間情報における非点灯期間は0である。すなわち、バックライトの点灯タイミングの較正のために液晶パネル102の測定対象領域の輝度値を測定する際には、測定対象領域に対応する位置のバックライトは常時点灯する。
【0030】
また、応答時間判定部210は、パッチ画像生成部206から入力されるパッチ出力タイミング信号と、画像出力部205から入力される垂直同期信号と、測定制御部209から入力される輝度値と、に基づき、応答時間情報を生成する。ここで、応答時間情報とは、液晶の応答時間に関わる情報(液晶立ち上がり開始時間及び液晶立ち上がり終了時間の情報)である。応答時間情報の生成方法の詳細は後述する。応答時間判定部210は、応答時間情報をバックライト設定部211へ出力する。
【0031】
バックライト設定部211は、応答時間判定部210から入力されるバックライト駆動制御情報をバックライト駆動制御データに変換し、点灯制御部212へ出力する。ここでバックライト駆動制御データとは、点灯制御部212がバックライト104を駆動するために用いる制御データである。バックライト設定部211は、画像表示装置の電源が投入された場合、初期設定されているバックライト駆動制御情報をROMから読み出し、当該初期設定されているバックライト駆動制御情報をバックライト駆動制御データに変換して点灯制御部212へ出力する。
【0032】
また、バックライトの点灯タイミングを較正する場合には、バックライト設定部211は応答時間判定部210から入力される応答時間情報に基づきバックライト駆動制御情報を変更する。そして、バックライト設定部211は、変更後のバックライト駆動制御情報をバックライト駆動制御データに変換して点灯制御部212へ出力するとともに、変更後のバックライト駆動制御情報をROMに保存する。
【0033】
点灯制御部212は、画像出力部205から入力される垂直同期信号に同期して、バックライト設定部211により設定されたバックライト駆動制御データに基づきバックライトブリンキング駆動制御を実行する。本実施例のバックライトブリンキングでは、垂直同期信号からブリンキング開始時間経過した時点でバックライト104を非点灯とし、その時点からブリンキング期間情報に規定された非点灯期間経過して時点でバックライト104を点灯する。
【0034】
次に表示制御装置101の動作について、図2に示すフローチャートを用いて説明する。ユーザが画像表示装置の電源オン操作を行うと、CPU201による本フローチャートの処理が開始する。
パネル表示時間計測部207はパネル表示時間を計測し、パネル表示時間情報を較正指示部208へ出力する(S301)。
【0035】
較正指示部208は、パネル表示時間計測部207から取得したパネル表示時間情報に基づき、パネル表示時間が所定時間増加したか判定する(S302)。パネル表示時間が所定時間増加していない場合、本フローチャートの処理は終了する。パネル表示時間が所定時間増加した場合、較正指示部208は、応答時間判定部210に、バックライトの点灯タイミングの較正を指示する(S303)。例えば閾値を10秒とした場合、パネル表示時間が10秒経過する度に較正指示部208は応答時間判定部210に対しバックライトの点灯タイミングの較正を指示する。
【0036】
次にバックライト駆動制御の較正の詳細について、図3に示すフローチャート及び図10のタイミングチャートに基づいて説明する。図3は、バックライトの点灯タイミングの較正の手順を表すフローチャートである。図10は、液晶パネル102の表示画像が黒パッチ画像から白パッチ画像へ切り替わる場合の液晶パネルの輝度値の変化及びバックライトの点灯・非点灯の変化を示す図である。
【0037】
図10(A)は画像信号を示す。図10(B)は前回の較正における液晶パネルの輝度値の変化を示し、図10(C)は前回の較正によって決定されたバックライト駆動制御情報に基づくバックライト104の点灯・非点灯の状態変化を示す。図10(D)は現在(今回)の液晶パネルの輝度値の変化を示し、図10(E)は今回の較正によって決定されたバックライト駆動制御情報に基づくバックライト104の点灯・非点灯の状態変化を示す。
【0038】
共通の横軸は時間を表し、t1は黒パッチ画像から白パッチ画像への切り替わりタイミング、すなわち、白パッチ画像を液晶パネル102に表示する際に出力される垂直同期信号のタイミングである。t2及びt3はそれぞれ前回の較正における液晶立ち上がり開始時間及び液晶立ち上がり終了時間を表し、t2’及びt3’はそれぞれ現在(今回)の液晶立ち上がり開始時間及び液晶立ち上がり終了時間を表す。
【0039】
図10に示すように、前回の較正実行時と比較して今回は液晶パネルの応答特性が変化しており、液晶立ち上がり開始時間が遅くなり、また応答時間が長くなっている。これは前回の較正実行時と今回との液晶パネルの温度や環境温度の相違によるものである。前回の較正によって決定されたバックライト駆動制御情報に基づくバックライトブリンキングを行うと、バックライト104が非点灯とされる期間はt2〜t3となるが、今回の液晶パネルの応答時間はt2’〜t3’になっている。
【0040】
そのため、今回の動作環境において、前回の較正によって決定されたバックライト駆動制御情報に基づくバックライトブリンキングを行うと、バックライト104の非点灯期間と液晶パネルの応答時間とが一致しない。そこで、現在の液晶パネルの応答特性に応じてバックライトの点灯タイミングを変更することにより、図10(E)に示すように、バックライト104の非点灯期間と現在の液晶パネルの応答時間とが一致するように、バックライト駆動制御情報を変更する。以下、バックライトの点灯タイミングの較正の詳細について説明する。
【0041】
較正指示部208が応答時間判定部210に対しバックライトの点灯タイミングの較正を指示すると、ステップS401において、応答時間判定部210は、現在の液晶パネル102の応答時間(Δt’)を判定する。応答時間の判定方法の詳細は後述する。
【0042】
ステップS402において、応答時間判定部210は、前回の較正においてROMに保存された前回の較正における液晶パネル102の応答時間(Δt)を読み込み、ステップS401で判定した今回の液晶パネル102の応答時間(Δt’)と比較する。応答時間判定部210は、前回の較正における応答時間Δtと今回の応答時間Δt’の差分(応答時間変化量)(=|Δt’−Δt|)を算出し、応答時間変化量が閾値を超えているか判定する。
【0043】
この閾値は、液晶パネル102の応答特性の変化に起因する液晶応答時間とバックライトブリンキングとの同期ずれにより生じる動画ぼけの程度が、予め決められる許容レベルを超える応答時間変化量によって決まるもので、ROMに予め保持されている。ここでは、応答時間変化量の閾値を例えば5msとする。応答時間変化量が閾値を超えていない場合
、本フローチャートの処理は終了する。応答時間変化量が閾値を超えている場合は、応答時間判定部210は、ステップS403の処理に進む。
【0044】
ステップS403において、応答時間判定部210は、ステップS401で判定した今回の応答時間情報によって前回の較正において保存された応答時間情報を更新する。応答時間判定部210は、更新後の応答時間情報をバックライト設定部211へ出力する。バックライト設定部211は、更新後の応答時間情報に基づき今回の液晶立ち上がり開始時間t2’と垂直同期信号のタイミングt1との間隔Δtd’(=t2’−t1)を算出し、これによってブリンキング開始時間を更新する。また、バックライト設定部211は、今回の応答時間Δt’によってブリンキング期間情報における非点灯期間を更新する。
【0045】
ステップS404において、バックライト設定部211は、更新後のブリンキング開始時間及び非点灯期間により、前回の較正において決定されたバックライト駆動制御情報を更新する。バックライト設定部211は、更新後のバックライト駆動制御情報をバックライト駆動制御データに変換し、点灯制御部212へ出力する。点灯制御部212は、バックライト設定部211から入力されるバックライト駆動制御データに基づき、バックライト104を駆動する。
【0046】
すなわち、点灯制御部212は、画像出力部205から入力される垂直同期信号(t1)に対して更新後のブリンキング開始時間Δtd’だけ遅延させたタイミングt2’において、バックライト104を非点灯とする。そして、t2’から更新後の非点灯期間Δt’経過したタイミングt3’において、バックライト104を点灯する。これにより、図10(E)に示すように、現在の液晶の応答時間に同期してバックライト104の点灯・非点灯の状態が切り替わるよう、バックライト104が駆動される。
【0047】
ステップS405において、応答時間判定部210は、較正により変更したバックライト駆動制御情報をROMに保存する。このように、現在の液晶パネルの液晶立ち上がり開始時間及び液晶立ち上がり終了時間に合わせて、バックライト104の点灯及び消灯のタイミングが変更される。
【0048】
次に、応答時間の判定方法の詳細について、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
応答時間の判定処理が開始すると、応答時間判定部210は、測定対象領域に対応するバックライトの駆動制御を測定用バックライト駆動制御情報に基づき行うようバックライト設定部211に設定する(S501)。測定用バックライト駆動制御情報は、ブリンキング開始時間0、非点灯期間0とするバックライト駆動制御情報である。測定用バックライト駆動制御情報が適用されるバックライト104は常時点灯する。
【0049】
ステップS502において、応答時間判定部210は、パネル前面輝度測定部103による測定対象領域を覆う程度のサイズと位置の黒画像(黒パッチ画像)を指定するパッチ情報をパッチ画像生成部206へ出力する。
【0050】
パッチ画像生成部206は、応答時間判定部210から入力されたパッチ情報に基づきパッチ画像を生成し、合成部204に出力するとともに、パッチ出力タイミング信号を応答時間判定部210へ出力する。このパッチ出力タイミング信号は、応答時間の判定処理における1回目のパッチ出力タイミング信号となる。
【0051】
合成部204は、パッチ画像生成部206から入力された黒パッチ画像の画像データを、画像処理部203から入力された画像データに重畳して、画像出力部205へ合成画像データを出力する。
画像出力部205は、合成画像データを液晶パネル102へ出力すると同時に、応答時間判定部210へ垂直同期信号を出力する。
【0052】
ステップS503において、応答時間判定部210は、1回目のパッチ出力タイミング信号が入力されてから一定時間経った後、測定対象領域を覆う程度のサイズと位置の白画像(白パッチ画像)を指定するパッチ情報をパッチ画像生成部206へ出力する。ここで、一定時間とは、液晶パネル102に黒パッチ画像を表示してから液晶パネルの応答が安定するまでの時間であり、例えば100msとする。
【0053】
パッチ画像生成部206は、応答時間判定部210から入力されたパッチ情報に基づきパッチ画像を生成し、合成部204に出力するとともに、パッチ出力タイミング信号を応答時間判定部210へ出力する。このパッチ出力タイミング信号は、応答時間の判定処理における2回目のパッチ出力タイミング信号となる。
【0054】
合成部204は、パッチ画像生成部206から入力された白パッチ画像の画像データを、画像処理部203から入力された画像データに重畳して、画像出力部205へ合成画像データを出力する。
画像出力部205は、合成画像データを液晶パネル102へ出力すると同時に、応答時間判定部210へ垂直同期信号を出力する。
【0055】
応答時間判定部210は、2回目のパッチ出力タイミング信号を受信して直後の垂直同期信号を受信すると、測定制御部209から、一定周期で一定回数(例えば1ms周期で50回)輝度値を取得する(S504)。応答時間判定部210は、測定制御部209から取得した一定回数分の輝度値Lum(t)から、最小輝度値Lum_minと、最大輝度値Lum_maxを決定する(S505)。ここで、輝度値Lum(t)は、応答時間判定部210が測定制御部209から時刻tに取得した輝度値を表す。
【0056】
ステップS506において、応答時間判定部210は、以下の関係式を満たすタイミングとして、液晶の立ち上がり開始時間t_rise_start及び液晶の立ち上がり終了時間t_rise_endを算出する。
(数1)
Lum(t_rise_start) = (Lum_max - Lum_min) × th_rise_start + Lum_min
Lum(t_rise_end) = (Lum_max - Lum_min) × th_rise_end + Lum_min
ここで、立ち上がり開始閾値th_rise_start及び立ち上がり終了閾値th_rise_endは、それぞれ固定値であり、例えば、th_rise_start = 0.1, th_rise_end = 0.9とする。立ち上がり開始閾値及び立ち上がり終了閾値は、液晶パネル102の一般的な応答特性から決定される。応答時間判定部210は、上記の式より算出した液晶立ち上がり開始時間t_rise_start及び液晶立ち上がり終了時間t_rise_endを、現在の液晶立ち上がり開始時間t2’及び液晶立ち上がり終了時間t3’と判定する。
なお、黒パッチ画像及び白パッチ画像は、液晶パネルの端に小さく表示するのが好ましい。例えば、液晶パネル102の表示領域の上端の中心部に設けられたパネル前面輝度測定部103に対向する位置に小さく表示するようにしてもよい。このように、黒パッチ画像及び白パッチ画像を、液晶パネルの端に小さく表示すると、液晶パネルの他の表示領域にはユーザが所望の画像を表示させることができるので、作業を邪魔されずにすむ。
また、図4の応答時間の判定処理を、表示制御装置101が使用されていない時間に行うようにしてもよい。例えば、図2のステップS303の較正指示が出されたときに、表示制御装置101が使用中であれば、図3,4の処理を一旦保留し、表示制御装置101の使用が終わってから(電源オフの操作がされてから)、図3,4の処理を行うようにしてもよい。
また、本実施例では、黒パッチ画像を表示した後に白パッチ画像を表示する例を挙げたが
、白パッチ画像を表示した後に黒パッチ画像を表示して、液晶パネルの応答時間を判定してもよい。また、黒パッチ画像を表示した後にグレー(灰色)パッチ画像を表示、若しくはグレー(灰色)パッチ画像を表示した後に黒パッチ画像を表示して、液晶パネルの応答時間を判定してもよい。或いは、グレー(灰色)パッチ画像を表示した後に白パッチ画像を表示、若しくは白パッチ画像を表示した後にグレー(灰色)パッチ画像を表示して、液晶パネルの応答時間を判定してもよい。また、ダークグレー(濃い灰色)パッチ画像を表示した後にライトグレー(薄い灰色)パッチ画像を表示、若しくはライトグレー(薄い灰色)パッチ画像を表示した後にダークグレー(濃い灰色)パッチ画像を表示して、液晶パネルの応答時間を判定してもよい。
【0057】
本実施例では、前回の較正から液晶パネルの応答時間に閾値を超える変化がある場合に、現在の液晶パネルの応答特性に合わせてバックライト駆動制御情報を変更する。これにより、液晶パネルの応答特性が変化した場合でもバックライトブリンキングによる非点灯期間を液晶パネルの応答時間に精度良く同期させることができるので、動画ぼけを好適に低減することが可能になる。
【0058】
なお、本実施例において、画像処理部203から出力された画像データとパッチ画像の画像データを合成するとしたが、画像処理部203に入力される前の画像データとパッチ画像の画像データを合成する構成であってもよい。
【0059】
本実施例では、固定値である立ち上がり開始閾値及び立ち上がり終了閾値を用いて式1に基づいて現在の液晶の応答時間を判定し、判定した応答時間と一致するようにバックライトの点灯タイミングを較正する例を説明した。しかしながら、バックライトの点灯タイミングの較正方法はこれに限らない。例えば、動画ぼけが最も顕著な期間に対して、バックライトブリンキングに起因するフリッカの発生を抑制するように算出される期間を、非点灯期間として設定しても良い。
【0060】
また、較正によりバックライトブリンキングの非点灯期間を変更した場合、表示輝度が変化する可能性があるので、非点灯期間の変更に応じてバックライトの電流値を変更するなどにより表示輝度が一定になるようにすることも好適である。
【0061】
(実施例2)
本発明の実施例2について説明する。図5は、本発明を適用した画像表示装置のシステム構成の概略図である。以下、実施例2にかかる説明は、実施例1との相違点を中心に説明する。実施例2と実施例1との主な相違点は、バックライトの点灯タイミングの較正を実行するタイミング(条件)と、現在の液晶パネルの応答時間の判定方法である。
【0062】
実施例1では液晶パネル102に画像を表示開始してからの経過時間が閾値を超えた場合に較正を実行したが、実施例2では工場出荷時から積算した液晶パネル102の表示時間(累積表示時間)が段階的に設定される複数の閾値を経過する度に較正を実行する。累積表示時間は最初の画像表示装置の電源投入から起算しても良い。
【0063】
また、実施例1では測定用画像を液晶パネルに表示したときの実際の輝度値の測定値から現在の液晶パネル102の応答時間を判定したが、実施例2では累積表示時間から現在の液晶パネル102の応答時間を推測する。推測した現在の液晶パネル102の応答時間に応じてバックライトの点灯及び消灯のタイミングを変更する点は実施例1と同様である。
【0064】
表示制御装置601は、入力信号源100の出力する画像信号を入力部202から入力し、画像出力部705から液晶パネル102へ画像信号を出力する。また、表示制御装置601は、点灯制御部212からバックライト104へ駆動制御信号を出力し、バックライ
ト104を駆動する。
表示制御装置601は、CPU201、入力部202、画像処理部703、画像出力部705、パネル表示時間計測部707、較正指示部708、応答時間判定部710、バックライト設定部211、及び点灯制御部212を備える。
【0065】
画像処理部703は、入力部202から入力される画像データに対し高画質化処理等の画像処理を適用した後、画像出力部705へ画像データを出力する。
画像出力部705は、画像処理部703から入力された画像データを液晶パネル102へ出力するとともに、垂直同期信号を点灯制御部212へ出力する。
【0066】
パネル表示時間計測部707は、CPU201が備えているタイマーとROMに保存されている累積表示時間を用いて、画像表示装置の出荷時から現在までの累積表示時間を計測し、パネル表示時間情報として較正指示部708へ出力する。累積表示時間とは、液晶パネル102に画像が表示されている時間を最初に電源が投入された時点(液晶パネル102が最初に画像の表示を行った時点。工場出荷時)から積算したものである。
【0067】
例えば、パネル表示時間計測部707は、画像表示装置の電源がオンになると、その時点までの累積表示時間をROMから読み出すとともに、当該電源投入からの液晶パネル102の画像表示時間をタイマーを用いて累積表示時間の増分をカウント開始する。そして、パネル表示時間計測部707は、画像表示装置の電源がオフにされる場合に、その時までの累積表示時間を求めてROMに保存し、既存の累積表示時間を更新する。工場出荷時の累積表示時間の初期値は0とする。
【0068】
較正指示部708は、パネル表示時間計測部707から入力されるパネル表示時間情報から累積表示時間を取得し、累積表示時間が閾値に達したか判定する。ここで、閾値は段階的に複数の値が設定され、較正指示部708は、累積表示時間がある閾値に達したと判定した後は、閾値を次の段階の閾値に変更し、それ以降は当該変更後の閾値に累積表示時間が達するか判定する。
【0069】
較正指示部708は、累積表示時間がこれら複数の段階的な閾値に達する度に、応答時間判定部710に対し、バックライトの点灯タイミングの較正を指示する。各閾値は、液晶パネル102の応答特性の経時的な変化に起因する液晶応答時間とバックライトブリンキングとの同期ずれにより生じる動画ぼけの程度が、予め決められる許容レベルを超える累積表示時間によって決まるもので、ROMに予め保持されている。
【0070】
例えば、閾値を10000時間、20000時間、25000時間、28000時間、30000時間に設定した場合、まず累積表示時間が10000時間に達した時点でバックライトの点灯タイミングの較正が行われる。液晶パネル102の画像表示時間が更に10000時間増えて累積表示時間が20000時間に達した時点で再びバックライトの点灯タイミングの較正が行われる。液晶パネル102の画像表示時間が更に5000時間増えて累積表示時間が25000時間に達した時点で再びバックライトの点灯タイミングの較正が行われる。
【0071】
応答時間判定部710は、パネル表示時間計測部707から入力されるパネル表示時間情報から累積表示時間を取得し、ROMに保存されている応答時間予測テーブルを参照して、当該累積表示時間に応じた液晶パネルの応答時間を判定する。
【0072】
ここで、応答時間予測テーブルとは、累積表示時間と、その累積表示時間から予測される液晶パネルの応答特性(液晶立ち上がり開始時間、液晶立ち上がり終了時間、応答時間)と、を対応づけたテーブルであり、予め測定により作成され、ROMに保持されている。
応答時間判定部710は、判定した液晶パネルの応答時間を応答時間情報としてバックライト設定部211へ出力する。
【0073】
次に表示制御装置601の動作について、図2に示すフローチャートを用いて説明する。なお、本実施例では、図2の「パネル表示時間」を「累積表示時間」に読み替える。
ユーザが画像表示装置の電源オン操作を行うと、CPU201による本フローチャートの処理が開始する。
【0074】
パネル表示時間計測部707は累積表示時間を計測し、パネル表示時間情報として較正指示部708へ出力する(S301)。
較正指示部708は、パネル表示時間計測部707から取得したパネル表示時間情報から累積表示時間を取得し、累積表示時間が閾値に達したか判定する(S302)。累積表示時間が閾値に達していない場合、本フローチャートの処理は終了する。累積表示時間が閾値に達した場合、較正指示部708は、応答時間判定部710に、バックライト駆動制御の較正を指示する(S303)。
【0075】
バックライトの点灯タイミングの較正は実施例1と同様、図3のフローチャートに従って実行される。但し、ステップS401の応答時間の判定処理は実施例1と異なり、後述する図6のフローチャートに従って実行される。
【0076】
なお、ステップS302の判定で用いる累積表示時間の閾値(Aとする)を、液晶パネル102の経時変化による応答時間変化量が実施例1のステップS402の判定で用いる応答時間変化量の閾値(Bとする)を超える累積表示時間として定めてもよい。この場合、ステップS302で累積表示時間が閾値Aを超えたと判定された時点で、液晶パネル102の応答時間変化量は閾値Bを超えたと判断できるので、図3のフローチャートにおいてステップS402の判定処理を省略してもよい。つまりこの場合、累積表示時間が閾値Aを超えたと判定された場合には常に較正が実行される。
【0077】
次に応答時間の判定処理の詳細について、図6に示すフローチャートを用いて説明する。応答時間判定部710は、パネル表示時間計測部707から入力されるパネル表示時間情報から現時点までの累積表示時間を取得する(S801)。
【0078】
応答時間判定部710は、応答時間予測テーブルを参照して、現時点までの累積表示時間に対応する液晶パネル102の応答時間を算出し、応答時間情報としてバックライト設定部211へ出力する(S802)。
【0079】
以上のように、応答時間判定部710は、液晶パネル102の累積表示時間から液晶パネルの応答時間に閾値を超える変化があると判定した場合に、現在の液晶パネルの応答特性に合わせてバックライト駆動制御情報を変更する。これにより、長期使用により液晶パネルの応答特性が変化した場合でも、バックライトブリンキングによる非点灯期間を液晶パネルの応答時間に精度良く同期させることができるので、液晶パネルの使用期間によらず動画ぼけを好適に低減することが可能になる。また、液晶パネルの輝度を測定することなく、液晶パネルの累積表示時間に基づく推定により現在の液晶パネルの応答時間を取得するので、簡易な構成により較正を行うことができる。
【0080】
なお、予め決められた複数の段階的な閾値と累積表示時間との比較に基づいて較正の実行要否判定を行う例を説明したが、一定周期(例えば3000時間毎)に較正を実行するようにしてもよい。
【0081】
(実施例3)
本発明の実施例3について説明する。図7は、本発明を適用した画像表示装置のシステム構成の概略図である。以下、実施例3にかかる説明は、実施例1との相違点を中心に説明する。実施例3と実施例1との主な相違点は、バックライトの点灯タイミングの較正を実行するタイミング(条件)である。実施例1では、液晶パネル102に画像を表示開始してからの経過時間が閾値を超えた場合に、較正を実行したが、実施例3では、前回行ったの較正からのパネル温度の変化量が閾値を超えた場合に、較正を実行する。
【0082】
表示制御装置901は、入力信号源100の出力する画像信号を入力部202から入力し、画像出力部205から液晶パネル102へ画像信号を出力する。また、表示制御装置901は、パネル前面輝度測定部103の出力する測定輝度情報を測定制御部1009から入力し、パネル温度測定部1005の出力する温度情報を測定制御部1009から入力する。また、表示制御装置901は、点灯制御部212からバックライト104へ駆動制御信号を出力する。
【0083】
パネル温度測定部1005は、液晶パネル102の温度を測定し、温度情報として測定制御部1009へ出力する(温度測定手段)。
測定制御部1009は、パネル温度測定部1005から入力される温度情報からパネル温度を算出し、較正指示部1008へ出力する。測定制御部1009は、パネル前面輝度測定部103から入力された測定輝度情報から液晶パネル102の測定対象領域の輝度値を算出し、応答時間判定部210へ出力する。
【0084】
較正指示部1008は、測定制御部1009から入力された今回のパネル温度と、ROMに保存されている前回の較正におけるパネル温度とを比較し、その変化量(パネル温度変化量)が閾値を超えたか判定する。パネル温度変化量が閾値を超えた場合、較正指示部1008は、応答時間判定部210に対し、バックライトの点灯タイミングの較正を指示するとともに、今回のパネル温度をROMに保存する。
【0085】
ここで、パネル温度変化量の閾値は、パネル温度変化による液晶パネル102の応答特性の変化に起因する液晶応答時間とバックライトブリンキングとの同期ずれにより生じる動画ぼけの程度が、予め決められる許容レベルを超えるパネル温度変化量によって決まる。パネル温度によって閾値は異なる。例えば、10℃から30℃の範囲でのパネル温度変化量の閾値を±5℃とし、30℃から60℃の範囲でのパネル温度変化量の閾値を±10℃とする。測定によりパネル温度とそれに対応する閾値とを対応づけるテーブルを予め作成し、ROMに保持しておく。
【0086】
次に表示制御装置901の動作について、図8に示すフローチャートを用いて説明する。ユーザが画像表示装置の電源オン操作を行うと、CPU201による本フローチャートの処理が開始する。
【0087】
測定制御部1009は、パネル温度測定部1005から入力されるパネル温度情報に基づき現在のパネル温度を取得し、較正指示部1008へ出力する(S1101)。
較正指示部1008は、ROMに保存されている前回の較正におけるパネル温度と今回のパネル温度とを比較し、パネル温度変化量が閾値を超えているか判定する(S1102)。
【0088】
パネル温度変化量が閾値を超えていない場合は、本フローチャートの処理は終了する。パネル温度変化量が閾値を超えている場合、較正指示部1008は、応答時間判定部210にバックライトの点灯タイミングの較正を指示する(S303)。較正指示部1008による較正指示に応じて、応答時間判定部210は、実施例1と同様に現在の液晶パネル102の応答時間の判定を行い(図4参照)、現在の液晶パネルの応答時間に応じてバック
ライトの点灯タイミングの較正を行う(図3参照)。
【0089】
バックライト設定部211は、較正によってバックライト駆動制御情報が変更されたか(すなわち、ステップS404の処理が実行されたか)判定する(S1104)。較正によりバックライト駆動制御情報が変更されていない場合は本フローチャートの処理は終了する。較正によりバックライト駆動制御情報が変更された場合、応答時間判定部は今回のパネル温度をROMに保存する(S1105)。
【0090】
なお、ステップS1102の判定で用いるパネル温度変化量の閾値(C)を、液晶パネル102の温度変化による応答時間変化量が実施例1のステップS402の判定で用いる応答時間変化量の閾値(Bとする)を超えるパネル温度変化量として定めても良い。この場合、ステップS1102でパネル温度変化量が閾値Cを超えると判定された時点で、液晶パネル102の応答時間変化量は閾値Bを超えたと判断できるので、図3のフローチャートにおいてステップS402の判定処理を省略しても良い。つまりこの場合、パネル温度変化量が閾値Cを超えたと判定された場合には常に較正が実行される。
【0091】
以上のように、応答時間判定部210は、液晶パネル102の温度変化から液晶パネルの応答時間に閾値を超える変化があると判定した場合に、現在の液晶パネルの応答特性に合わせてバックライト駆動制御情報を変更する。これにより、温度変化により液晶パネルの応答特性が変化した場合でも、バックライトブリンキングによる非点灯期間を液晶パネルの応答時間に精度良く同期させることができるので、液晶パネルの温度によらず動画ぼけを好適に低減することが可能になる。
【0092】
なお、ステップS401の応答時間の判定は、実施例1と同様にパネル前面輝度測定部103による測定結果に基づいて行ってもよい。或いは、ROMに保存されている応答時間予測テーブルを参照して、現在の液晶パネル102の温度に対応する液晶パネル102の応答時間を判定しても良い。ここで、応答時間予測テーブルとは、パネル温度と液晶パネルの応答特性(応答時間、液晶立ち上がり開始時間、液晶立ち上がり終了時間など)とを対応づけたテーブルであり、予め測定などにより作成してROMに保持しておく。
【符号の説明】
【0093】
102 液晶パネル、104 バックライト、208 較正指示部、210 応答時間判定部、211 バックライト設定部、212 点灯制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックライトと、
入力される画像データに応じて前記バックライトからの光の透過率を変化させることで前記画像データに基づく画像を表示する表示パネルと、
入力される画像データが変化した場合の前記表示パネルの応答開始タイミング及び応答終了タイミングを取得する取得手段と、
入力される画像データが変化した場合に、前記取得手段が取得した前記表示パネルの応答開始タイミング及び応答終了タイミングに基づいて、前記バックライトを点灯及び消灯させる制御を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記表示パネルの応答開始タイミングから応答終了タイミングまでの時間間隔である応答時間に応じて、前記バックライトの点灯及び消灯のタイミングを変更する画像表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記取得手段により取得した今回の前記表示パネルの応答時間と、前回行った前記バックライトの点灯及び消灯のタイミングの変更において前記取得手段により取得した前記表示パネルの応答時間と、の差分が閾値を超えている場合に、前記バックライトの点灯及び消灯のタイミングの変更を行う請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記表示パネルが画像の表示を開始してからの経過時間を計測する計測手段を有し、
前記制御手段は、前記計測手段により計測される経過時間が所定時間増加する度に、前記バックライトの点灯及び消灯のタイミングの変更を行う請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記表示パネルが最初に画像の表示を行った時点から前記表示パネルが画像の表示を行った時間を積算した値である累積表示時間を算出する算出手段を有し、
前記制御手段は、前記算出手段により算出される累積表示時間が、段階的に定められる複数の閾値に達する度に、前記バックライトの点灯及び消灯のタイミングの変更を行う請求項1から3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記表示パネルの温度を測定する温度測定手段を有し、
前記制御手段は、前記温度測定手段により測定した今回の前記表示パネルの温度と、前回行った前記バックライトの点灯及び消灯のタイミングの変更において前記温度測定手段により測定した前記表示パネルの温度と、の差分が閾値を超えている場合に、前記バックライトの点灯及び消灯のタイミングの変更を行う請求項1から4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記表示パネルの所定の測定対象領域の輝度を測定する輝度測定手段を有し、
前記取得手段は、前記バックライトを常時点灯させた状態で、測定対象領域に表示される画像が黒画像から白画像へ切り替わる画像データを入力した場合に、前記輝度測定手段により測定される前記測定対象領域の輝度値の変化に基づき、前記表示パネルの応答開始タイミング及び応答終了タイミングを取得する請求項1から5のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記表示パネルが最初に画像の表示を行った時点から前記表示パネルが画像の表示を行った時間を積算した値である累積表示時間を算出する算出手段と、
累積表示時間と、表示パネルの応答開始タイミング、応答終了タイミング、及び応答時間と、を対応づけるテーブルを記憶する記憶手段と、
を有し、
前記取得手段は、前記記憶手段に記憶されたテーブルを参照することにより、前記算出手
段により算出される累積表示時間から前記表示パネルの応答開始タイミング、応答終了タイミング、及び応答時間を取得する請求項1から5のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記表示パネルの温度を測定する温度測定手段と、
表示パネルの温度と、表示パネルの応答開始タイミング、応答終了タイミング、及び応答時間と、を対応づけるテーブルを記憶する記憶手段と、
を有し、
前記取得手段は、前記記憶手段に記憶されたテーブルを参照することにより、前記温度測定手段により測定される表示パネルの温度から表示パネルの応答開始タイミング、応答終了タイミング、及び応答時間を取得する請求項1から5のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記表示パネルは、液晶パネルであることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項10】
バックライトと、入力される画像データに応じて前記バックライトからの光の透過率を変化させることで前記画像データに基づく画像を表示する表示パネルと、を有する画像表示装置の制御方法であって、
入力される画像データが変化した場合の前記表示パネルの応答開始タイミング及び応答終了タイミングを取得する取得工程と、
入力される画像データが変化した場合に、前記取得工程が取得した前記表示パネルの応答開始タイミング及び応答終了タイミングに基づいて、前記バックライトを点灯及び消灯させる制御を行う制御工程と、を有し、
前記制御工程は、前記表示パネルの応答開始タイミングから応答終了タイミングまでの時間間隔である応答時間に応じて、前記バックライトの点灯及び消灯のタイミングを変更する画像表示装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−194530(P2012−194530A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−281930(P2011−281930)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】