画像表示装置及び方法
【課題】低い階調範囲において階調再現特性の浪打ちが発生する現象を緩和する技術を提供する。
【解決手段】画像表示装置の制御部は、画素信号の画素値に応じた駆動電流を光源素子に供給してビーム光を射出させる。この際、駆動電流の立上り時間が1画素期間の5〜35%の範囲に収まるように駆動電流の立上りを調整する。或いは、カットオフ周波数が画素周波数の1〜5倍の範囲にあるカットオフ特性を有するフィルタ要素を用いて駆動電流の立上りを調整する。
【解決手段】画像表示装置の制御部は、画素信号の画素値に応じた駆動電流を光源素子に供給してビーム光を射出させる。この際、駆動電流の立上り時間が1画素期間の5〜35%の範囲に収まるように駆動電流の立上りを調整する。或いは、カットオフ周波数が画素周波数の1〜5倍の範囲にあるカットオフ特性を有するフィルタ要素を用いて駆動電流の立上りを調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画素信号に応じて変調されたビーム光を走査させることにより画像を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ビーム光を走査させて画像を表示する画像表示装置としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。この画像表示装置では、レーザ光をPWM変調することにより、階調を表現している。
【0003】
【特許文献1】特開2007−140009号公報
【0004】
本願の発明者は、レーザ光をPWM変調した場合に、低い階調範囲において階調の浪打ちが発生して、視聴者に違和感が感じさせることを見いだした。これは、レーザの緩和振動現象によるものであると推定される。緩和振動現象とは、ステップ状の駆動電流がレーザ素子に入力されたときに、レーザ光強度が減衰振動する現象を意味する。緩和振動現象は、通常は、半導体レーザに現れる現象である。
【0005】
図1は、レーザの緩和振動現象の発生理由を説明するための説明図である。一般に、緩和振動現象は、レーザの駆動電流をステップ状に立ち上げた時に発生する。図1(A)は、ステップ状の駆動電流によるレーザ発光量の振動を示している。ところで、PWM変調による階調表現は、駆動電流の時間幅(駆動幅とも呼ぶ)を変えて発光時間の幅を変え、1画素当たりの平均発光量を変えることで階調を表現するものである。従って、暗い階調は、短い駆動幅で再現される。図1(B)は、図1(A)に示す緩和振動の一つ目の光パルスを丁度含むような時間幅で駆動された電流波形を示しており、図1(C)はそのときの発光波形を示している。図1(D)は、図1(C)の発光波形から僅かに明るい階調を表現するために、やや長い時間幅で駆動した場合の駆動電流波形を示しており、図1(E)はそのときの発光波形を示している。図1(C)の駆動時間幅の終端は、一つ目と二つ目の光パルスの谷間に相当するため、図1(B)の発光量と図1(D)の発光量はほとんど同じものになってしまう。図1(F)は、さらに明るい階調を表現するために、さらに長い時間幅で駆動した場合の駆動電流波形を示しており、図1(G)はそのときの発光波形を示している。この場合には、二つ目の光パルスが発生するので、発光量がかなり増加する。これらの例から理解できるように、PWM変調によって駆動幅を増加した場合には、発光量がほとんど増加しない階調範囲と、発光量がかなり増加する階調範囲とが生じるという問題がある。
【0006】
図2は、図1で説明した駆動幅と発光量の関係をプロットしたグラフである。低い階調範囲ではグラフが波打っており、階調再現性が劣っていることが理解できる。この現象は、視覚上は、暗い階調のグラデーションが滑らかにならないものとして観察される。
【0007】
このように、レーザ光をPWM変調した場合には、低い階調範囲において階調再現特性に浪打ちが発生するという問題があった。また、このような問題は、レーザ光のPWM変調に限らず、他の光源素子を用いて画素信号に応じて変調されたビーム光を発生させて画像を表示する技術にも共通する問題であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、画素信号に応じて変調されたビーム光を発生させて画像を表示する際に、低い階調範囲において階調再現特性の浪打ちが発生する現象を緩和する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]
画素信号に応じて変調されたビーム光を走査させることにより画像を表示する画像表示装置であって、
ビーム光を射出する光源素子と、
前記光源素子から射出された前記ビーム光をスクリーン上で走査させる走査部と、
前記画素信号の画素値に応じた駆動電流を前記光源素子に供給して前記ビーム光を射出させる制御部と
を備え、
前記制御部は、前記駆動電流の目標値の10%から90%までに要する立上り時間が1画素期間の5〜35%の範囲に収まるように前記駆動電流の立上りを調整する、画像表示装置。
この装置によれば、駆動電流の立上り時間が1画素期間の5%以上になるように駆動電流の立上りを調整したので、過度に短い立上り時間で駆動電流を立ち上げた場合に発生する階調再現特性の浪打ちを緩和することができる。また、駆動電流の立上り時間が1画素期間の35%以下になるように駆動電流の立上りを調整したので、過度に長い立上り時間で駆動電流を立ち上げた場合に実質的な階調数が減少するという問題を緩和することができる。この結果、良好な階調再現性を実現することが可能である。
【0011】
[適用例2]
適用例1記載の画像表示装置であって、
前記光源素子は、緩和振動現象を生じるレーザ素子である、画像表示装置。
【0012】
[適用例3]
適用例1又は2記載の画像表示装置であって、
前記制御部は、
前記画素値に応じて矩形波状制御信号を生成する制御信号生成部と、
前記制御信号生成部と前記光源素子との間の所定の位置に配置され、矩形波状の入力信号が供給されたときに矩形波状出力電流を発生する電流制御回路と、
前記矩形波発生回路と前記光源素子との間、又は、前記制御信号生成部と前記矩形波発生回路との間に設けられたフィルタ要素と、
を備え、
前記フィルタ要素によって前記駆動電流の立上り時間が調整される、画像表示装置。
【0013】
[適用例4]
適用例3記載の画像表示装置であって、
前記フィルタ要素は、ローパスフィルタである、画像表示装置。
【0014】
[適用例5]
適用例3記載の画像表示装置であって、
前記フィルタ要素は、同軸ケーブルである、画像表示装置。
【0015】
[適用例6]
画素信号に応じて変調されたビーム光を走査させることにより画像を表示する画像表示方法であって、
(a)前記画素信号の画素値に応じた駆動電流を光源素子に供給してビーム光を射出させる工程と、
(b)前記光源素子から射出された前記ビーム光をスクリーン上で走査させる工程と、
を備え、
前記工程(a)は、前記駆動電流の目標値の10%から90%までに要する立上り時間が1画素期間の5〜35%の範囲に収まるように前記駆動電流の立上りを調整する工程を含む、画像表示方法。
【0016】
[適用例7]
画素信号に応じて変調されたビーム光を走査させることにより画像を表示する画像表示装置であって、
ビーム光を射出する光源素子と、
前記光源素子から射出された前記ビーム光をスクリーン上で走査させる走査部と、
前記画素信号の画素値に応じた駆動電流を前記光源素子に供給して前記ビーム光を射出させる制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記画素値に応じて矩形波状制御信号を生成する制御信号生成部と、
前記矩形波状制御信号に応じて矩形波状出力電流を発生する電流制御回路と、
前記矩形波発生回路と前記光源素子との間に設けられたフィルタ要素と、
を備え、
前記フィルタ要素は、カットオフ周波数が画素周波数の1〜5倍の範囲にあるカットオフ特性を有する、画像表示装置。
この装置によれば、カットオフ周波数が画素周波数の5倍以下になるようにしたので、カットオフ周波数が過度に大きい場合に発生する階調再現特性の浪打ちを緩和することができる。また、カットオフ周波数が画素周波数の1倍以上になるようにしたので、カットオフ周波数が過度に小さい場合に実質的な階調数が減少するという問題を緩和することができる。この結果、良好な階調再現性を実現することが可能である。
【0017】
[適用例8]
適用例7記載の画像表示装置であって、
前記光源素子は、緩和振動現象を生じるレーザ素子である、画像表示装置。
【0018】
[適用例9]
適用例7又は8記載の画像表示装置であって、
前記フィルタ要素は、ローパスフィルタである、画像表示装置。
【0019】
[適用例10]
適用例7又は8記載の画像表示装置であって、
前記フィルタ要素は、同軸ケーブルである、画像表示装置。
【0020】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、画像表示方法および画像表示装置、光源素子の駆動方法及び装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.階調再現性の改善方法:
B.第1実施例:
C.第2実施例:
D.第3実施例:
E.変形例
【0022】
A.階調再現性の改善方法:
従来技術で説明した緩和振動現象は、駆動電流がステップ状に立ち上がることに主な原因があると推定される。そこで、駆動電流の立上りを、ステップ状波形よりも緩やかな上昇波形に従って変化させるようにすれば、緩和振動を緩和することが可能である。例えば、駆動電流の電流波形を滑らかにしてその高周波成分を少なくすると、緩和振動の振幅が減ると考えられる。このような考え方に基づいて、駆動電流の立上り方と表示特性との関係を定量的に調べた結果、以下のことが判明した。
【0023】
図3は、ステップ状入力とその2次応答波形の例を示すグラフである。横軸は時間、縦軸はレーザ電流である。2次応答波形は、高周波成分の少ない滑らかな駆動電流波形の典型例である。図3の右上に、2次応答の伝達関数H(s)が示されている。ここでは、極周波数f0を40MHzとし、減衰比ζを0.75と仮定している。
【0024】
図4は、この2次応答波形の周波数スペクトルを示すグラフである。ここでは、2次応答波形のカットオフ周波数fcutoffをパラメータとした4本のグラフが描かれている。なお、本明細書において、「カットオフ周波数fcutoff」とは、−3dBの減衰量を示す周波数を意味する。2次応答波形はステップ状波形に比べて高周波成分が小さく、また、そのカットオフ周波数fcutoffが小さいほど高周波成分が小さくなる。レーザ光源の緩和振動の周波数は1000MHz以上であると考えられるため、カットオフ周波数fcutoffが200MHz程度以下の電流波形で駆動すれば緩和振動の影響は小さくなると推定される。そこで、本願の発明者は、以下に示すレーザ動作モデルを作成し、PWM駆動幅とレーザ光量の関係を求めた。
【0025】
図5は、レーザ動作モデルの構成を示す説明図である。図5(A)に示すように、このモデルは、レーザドライバ440と、フィルタ要素450と、レーザ素子(レーザダイオード)100とを備えている。レーザドライバ440は、図5(B)に示す矩形波状の駆動電流を出力する。このドライバ出力は、1ピクセル期間(1画素期間)のうちの駆動幅DWの期間では所定の電圧レベルVccに維持され、他の期間では接地レベルに維持される。フィルタ要素450は、このようなドライバ出力をフィルタリングして、図5(C)に示すレーザ駆動電流を生成する。ここでは、フィルタ要素450として2次フィルタを用いた例が示されているが、1次フィルタを用いてもよい。なお、画素周波数(画素期間の逆数)は、VGA表示デバイスを想定して、40MHz(画素時間は25ns)とした。
【0026】
図6は、図5のレーザ動作モデルを用いて算出した階調特性のグラフであり、図7はその拡大図である。横軸は駆動幅DWであり、縦軸はレーザ光量である。また、シミュレーションのパラメータとして、フィルタ要素450のカットオフ周波数fcutoffを採用した。駆動幅DWが小さい領域は、低階調領域に相当し、駆動幅DWが1に近づくに従って階調が増大して光量が増加する。
【0027】
図6,図7において、駆動幅DWが1画素に等しい場合には、1画素期間(図5)の全体に渡って駆動電流が流れるので、カットオフ周波数fcutoffに拘わらず一定の発光量が得られる。一方、駆動幅DWが小さくなると、フィルタ要素450のカットオフ周波数fcutoffによってレーザ光量(すなわち実際の階調)が異なっている。具体的には、図7に示すように、カットオフ周波数fcutoffが高いほど、低い階調領域においてグラフがより大きく波打っており、カットオフ周波数fcutoffが下がるに従い波打ちが少なくなっていることがわかる。さらに、カットオフ周波数fcutoffが下がるほど、レーザ光量を立ち上げるための駆動幅DWが大きくなるという現象が発生している。後者の理由は、カットオフ周波数fcutoffが下がると駆動電流がゆっくりとしか上昇しないので、駆動幅DWを広げないとレーザ素子100が発光を始めないからである。
【0028】
図8は、図6,図7の各階調特性の直線からのずれ量(実線で示す)と、発光量が0.2mWとなる駆動幅(破線で示す)とを合わせてプロットしたグラフである。ここで、各階調特性の直線からのずれ量としては、各グラフを線形近似したときの残渣誤差(RMS)を利用した。階調特性の直線からのずれ量は、カットオフ周波数fcutoffが大きいほど低下する。換言すれば、階調特性の直線性は、カットオフ周波数fcutoffが小さいほど改善される。これは、カットオフ周波数fcutoffが小さいほど、電流波形がよりなだらかになるので、緩和振動現象が抑制されるからである。より具体的には、カットオフ周波数fcutoffが約200MHz以下であれば、階調特性の直線からのずれ量は約4%以下であり、実用上十分に満足できる程度である。但し、階調特性の直線性は、カットオフ周波数fcutoffが約40〜60MHzで最小値となり、40MHzを下回ると再び悪化する傾向がある。
【0029】
一方、図8において、発光量が0.2mWとなる駆動幅は、カットオフ周波数fcutoffが大きいほど小さくなる。図7からも理解できるように、発光量が0.2mWとなる駆動幅の値は、発光が開始される駆動幅を実質的に示しているものと考えることができる。一般に、発光量の階調再現性に利用できる駆動幅の範囲は、発光が開始される駆動幅以上の駆動幅の範囲である。従って、発光が開始される駆動幅の値が大きい場合には、発光量の階調再現性に利用できる残りの駆動幅の範囲が小さくなり、再現可能な階調数が実質的に低下する。換言すれば、再現可能な階調数は、カットオフ周波数fcutoffが大きく、発光が開始される駆動幅が小さいほど増加するので好ましいことが理解できる。より具体的には、カットオフ周波数fcutoffが約40MHz以上であれば、発光量が0.2mWとなる駆動幅は約0.3画素以下であり、実用上十分に満足できる程度である。
【0030】
上述した階調特性の直線性と、再現可能な階調数とを考慮すると、図8において、カットオフ周波数fcutoffとして40MHz〜200MHzの範囲の値を採用するが好ましいことが理解できる。カットオフ周波数fcutoffが40MHzよりも小さいと、発光が開始される駆動幅が過度に大きくなり、再現可能な階調数が過度に低下してしまう。一方、カットオフ周波数fcutoffが200MHzよりも大きいと階調特性の直線性が過度に劣化してしまう。なお、図5〜図8におけるシミュレーションでは、画素周波数を40MHzと仮定したので、図8におけるカットオフ周波数fcutoffの好ましい範囲(40MHz〜200MHz)は、画素周波数の1倍〜5倍の範囲に相当することが理解できる。この関係は、他の画素周波数でも同様に成立するものと推定される。すなわち、一般に、カットオフ周波数fcutoffを画素周波数の1倍〜5倍の範囲に選べば、低い階調領域での階調特性の波打ちが無く、また、レーザ光量の立上りに要する駆動幅が十分に小さな駆動を実現可能である。
【0031】
図9は、カットオフ周波数と駆動電流の立上り時間との関係を示すグラフである。ここでは、フィルタ要素450(図5)にステップ状のドライバ出力を入力した状態におけるフィルタ要素450の出力の立上り時間を計算した。ここで、「立上り時間」とは、ステップ状入力の目標値の10%から90%に至るまでに要する時間である。図9の縦軸は、立上り時間をピクセル時間(1画素幅の時間)で除した値である。図8において得られたカットオフ周波数fcutoffの好ましい範囲(40MHz〜200MHz)は、立上り時間に換算すると、ピクセル時間の約5%〜約35%の範囲にほぼ相当していることが理解できる。また、立上り時間の範囲としては、ピクセル時間の7%〜35%がより好ましく、7%〜32%がさらに好ましい。
【0032】
図8又は図9に従ってフィルタ要素のカットオフ周波数fcutoffを設定すれば、階調再現性に優れたレーザスキャンディスプレイを実現することが可能である。なお、図5〜図9のシミュレーションでは、フィルタ要素450をレーザドライバ440とレーザ素子100との間に設けていたが、この代わりに、フィルタ要素450をレーザドライバ440の前段に設けてもよい。後者の場合には、レーザドライバ440に非矩形状入力(フィルタ後信号)が供給されて、レーザドライバ440からレーザ素子100に非矩形状の駆動信号が入力される。
【0033】
B.第1実施例:
図10は、第1実施例における画像表示装置の全体構成を示す説明図である。この画像表示装置は、レーザ素子100と、水平走査部200と、垂直走査部300と、制御回路400とを有している。水平走査部200と垂直走査部300は、それぞれのミラーを有しており、ミラーを水平方向及び垂直方向に揺動させてレーザ光を水平方向及び垂直方向にそれぞれ走査する機構である。レーザ光は、2つの走査部200,300の動作によってスクリーンSC上を走査し、また、レーザ光の強さが画像の階調に従って変調されて、スクリーンSC上に表示画像が形成される。なお、ここでは1色分の構成のみを示しているが、カラー画像を表示する場合には、同様の構成が各色毎に設けられる。
【0034】
図11は、制御回路400の内部構成を示すブロック図である。制御回路400は、フレームメモリ410と、ラインバッファ420と、PWM回路430と、レーザドライバ440と、フィルタ要素450と、ミラー駆動回路460と、同期信号生成回路470とを備えている。フレームメモリ410は、外部の画像供給装置(例えばパーソナルコンピュータやDVDプレーヤ)から供給された画素信号Dmを格納する。この画素信号Dmは、タイミング調整用のラインバッファ420に一旦格納された後に、PWM回路430に順次供給される。PWM回路430は、画素信号Dmに対してPWM制御を行い、PWM信号Spwmを生成してレーザドライバ440に供給する。レーザドライバ440から出力される駆動信号は、フィルタ要素450を介してレーザ素子100に供給される。ミラー駆動回路460は、画素信号Dmに応じたレーザ素子100の発光制御に同期して走査部200,300(図10)を動作させる回路である。なお、同期信号生成回路470は、PWM回路430やミラー駆動回路460に同期信号を供給している。
【0035】
図12は、PWM回路430とレーザドライバ440の内部構成を示す図である。PWM回路430は、階調調整用ルックアップテーブル432と、DA変換器434と、三角波発生回路436と、コンパレータ438とを有している。階調調整用ルックアップテーブル432と、DA変換器434と、三角波発生回路436には、同期信号生成回路470(図11)から描画クロックDCLK(画素クロック)が供給されている。レーザドライバ440は、電流制限用の抵抗442と、駆動トランジスタ444との直列接続を有している。電源電位Vccと抵抗442との間には、フィルタ要素450を介してレーザ素子100が接続されている。なお、駆動トランジスタ444の制御電極(ゲート電極)には、PWM信号Spwmが入力されている。
【0036】
図13は、PWM回路430とレーザドライバ440の動作を示すタイミングチャートである。画素データDmは、描画クロックDCLKに同期して階調調整用ルックアップテーブル432に供給され、ここで描画データDpに変換されて、DA変換器434に入力される。なお、LUT432は、図6で説明した階調特性を考慮して、画素データDmと発光量の関係が直線性を維持するように、画素データDmを描画データDpに変換する機能を有している。例えば、画素データDmが8ビットであり、PWM駆動信号の駆動幅(図6の横軸)が0.2画素のときにレーザ素子100が発光を開始するものと仮定する。この場合には、Dm=1(0.5%の階調値)の時に、この画素データDmが、PWM駆動信号の駆動幅(図6の横軸)を0.2画素とする描画データDpに変換される。この描画データDpは、DA変換器434でアナログ描画信号Sdaに変換される。
【0037】
コンパレータ438は、アナログ描画信号Sdaと、三角波発生回路436から供給された三角波信号Striとを比較して、Dp≦Striの場合にHレベルとなり、Stri<Dpの場合にLレベルとなるPWM信号Spwmを生成する。なお、本実施例ではDA変換器434の出力電圧Sdaが大きいほどPWM信号Spwmの駆動幅は狭くなり、より暗い階調に対応した信号となる。このPWM信号Spwmに応じてレーザドライバ440の駆動トランジスタ444がオン/オフ制御され、これに応じたレーザ電流Idrが流れてレーザ光が発生する。
【0038】
図14は、第1実施例におけるフィルタ要素450の内部構成を示す回路図である。このフィルタ要素450は、コイル452とコンデンサ454とで構成された2次ローパスフィルタとしての特性を有している。一例では、コイル452のインダクタンスは15nH、 コンデンサ454の容量は56pFである。このとき、フィルタ要素450のカットオフ周波数fcutoffは、約170MHz≒1/(2π√(LC))である。なお、この周波数(1/(2π√(LC))は厳密には共振周波数であるが、カットオフ周波数fcutoffはこの共振周波数に近い値となる。
【0039】
図15は、レーザ素子100のIV特性の例を示すグラフである。このIV特性を用いてシミュレーションを行ったところ、図16に示すにように、立上り時間として7nsが得られた。画素周波数が40MHzの場合の1ピクセル時間は25nSなので、この立上り時間(7ns)は1ピクセル時間の28%に相当する。従って、この立上り時間は、図8で説明した好ましい範囲(ピクセル時間の7%〜35%)に収まっている。
【0040】
以上のように、第1実施例では、レーザドライバ440とレーザ素子100との間に2次ローパスフィルタを設けることによって、レーザ素子100の駆動電流の立上り時間を好ましい範囲に収め、良好な階調再現性を実現することが可能である。すなわち、暗い階調領域においてはレーザの緩和振動による影響を抑制して滑らかな階調表現を実現するができ、また、比較的短い駆動幅からレーザを発光させて実質的に再現可能な階調数を増加させ、より明るい表示を実現することが可能である。
【0041】
C.第2実施例:
図17は、第2実施例におけるフィルタ要素450aの構成を示す回路図である。このフィルタ要素450aは、同軸ケーブルである。このフィルタ要素450aも、2次ローパスフィルタとしての特性を有している。より具体的には、フィルタ要素450aとして、特性インピーダンスが50Ω、コードNo.が1.5D−2Vである同軸ケーブルを使用した、このケーブルのインダクタンスは260nH/m、容量は100pF/mである。この同軸ケーブルの長さ5cmとしてシミュレーションを行ったところ、図18のように駆動電流の立上り時間は8nsとなった。この立上り時間(8ns)は1ピクセル時間の32%に相当する。従って、この立上り時間は、図8で説明した好ましい範囲(ピクセル時間の7%〜35%)に収まっていることが理解できる。
【0042】
以上のように、第2実施例においても、レーザドライバ440とレーザ素子100との間に同軸ケーブルを設けることによって、レーザ素子100の駆動電流の立上り時間を好ましい範囲に収め、良好な階調再現性を実現することが可能である。
【0043】
D.第3実施例:
図19は、第9実施例におけるフィルタ要素450bの構成を示す回路図である。このフィルタ要素450bは、抵抗456とコンデンサ458とで構成されたRC積分回路である。このRC積分回路は、1次ローパスフィルタとしての特性を有している。なお、第2実施例では、フィルタ要素450bがレーザドライバ440の入力側に設けられている点で、上述した第1,第2実施例と異なっている。すなわち、第3実施例では、PWM駆動信号Spwmがフィルタ要素450bにおいてフィルタリングされ、こうして得られた非矩形状の駆動信号がレーザドライバ440に入力されている。換言すれば、第3実施例では、駆動電流波形の制御が、レーザドライバ440の駆動トランジスタ444の制御端子の入力波形を制御することで行なっている。
【0044】
一例として、抵抗456の抵抗値を100Ωとし、コンデンサ458の容量を27pFとして、レーザ素子100をレーザドライバ440に直接接続した状態でシミュレーションを行ったところ、図20に示すように、駆動電流の立上り時間として6nsが得られた。この立上り時間(6ns)は1ピクセル時間の24%に相当する。従って、この立上り時間は、図8で説明した好ましい範囲(ピクセル時間の7%〜35%)に収まっていることが理解できる。
【0045】
以上のように、第3実施例においても、レーザドライバ440の入力側にフィルタ要素を設けることによって、レーザ素子100の駆動電流の立上り時間を好ましい範囲に収め、良好な階調再現性を実現することが可能である。
【0046】
なお、第3実施例において、1次フィルタの代わりに2次フィルタを利用することも可能である。また、第1,第2実施例において、2次フィルタの代わりに1次フィルタを設けることも可能である。
【0047】
E.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0048】
E1.変形例1:
上記実施例では、駆動電流の立上り時間が1画素期間の5〜35%の範囲に収まるように駆動電流の立上りを調整するか、或いは、カットオフ周波数が画素周波数の1〜5倍の範囲にあるカットオフ特性を有するフィルタ要素を用いて階調特性を改善していた。しかし、本発明は、これらの数値に限定されるものでは無く、一般に、駆動電流の立上りを、ステップ状波形よりも緩やかな上昇波形に従って変化させることによって階調特性を改善する方法や装置として実現可能である。
【0049】
E2.変形例2:
上記実施例では、レーザ素子を用いた例を説明したが、本発明は、レーザ素子に限らず、他の光源素子(発光素子)を用いた表示装置に適用可能である。また、上記実施例では、表示装置としてプロジェクタを説明したが、本発明はプロジェクタ以外の表示装置にも適応可能である。
【0050】
E3.変形例3:
上記実施例では、PWM回路430を用いていたが、この代わりに、他の駆動方法でレーザドライバ440に制御信号を供給する制御信号生成部を利用してもよい。典型的な例では、画素値に応じて矩形波状制御信号を生成する制御信号生成部を利用することが可能である。PWM回路430は、このような制御信号生成部の一例であることが理解できる。また、レーザドライバ440としては、矩形波状の入力信号が供給されたときに矩形波状出力電流を発生する任意の回路(電流制御回路)を利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】レーザの緩和振動現象の発生理由を説明するための説明図である。
【図2】駆動時間幅と発光量の関係をプロットしたグラフである。
【図3】ステップ状入力とその2次応答波形の例を示すグラフである。
【図4】2次応答波形の周波数スペクトルを示すグラフである。
【図5】レーザ動作モデルの構成を示す説明図である。
【図6】レーザ動作モデルを用いて算出した階調特性のグラフである。
【図7】図6の一部拡大図である。
【図8】階調特性の直線からのずれ量と、発光量が0.2mWとなる駆動幅とを合わせてプロットしたグラフである。
【図9】カットオフ周波数と駆動電流の立上り時間との関係を示すグラフである。
【図10】第1実施例における画像表示装置の全体構成を示す説明図である。
【図11】制御回路の内部構成を示すブロック図である。
【図12】PWM回路とレーザドライバの内部構成を示す図である。
【図13】PWM回路とレーザドライバの動作を示すタイミングチャートである。
【図14】第1実施例におけるフィルタ要素の構成を示す回路図である。
【図15】レーザ素子のIV特性の例を示すグラフである。
【図16】第1実施例におけるレーザ駆動電流の立上り特性を示すグラフである。
【図17】第2実施例におけるフィルタ要素の構成を示す回路図である。
【図18】第2実施例におけるレーザ駆動電流の立上り特性を示すグラフである。
【図19】第3実施例におけるフィルタ要素の構成を示す回路図である。
【図20】第3実施例におけるレーザ駆動電流の立上り特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0052】
100…レーザ素子
200…水平走査部
300…垂直走査部
400…制御回路
410…フレームメモリ
420…ラインバッファ
430…PWM回路
432…階調調整用ルックアップテーブル
434…DA変換器
436…三角波発生回路
438…コンパレータ
440…レーザドライバ
442…抵抗
444…駆動トランジスタ
450…フィルタ要素
452…コイル
454…コンデンサ
456…抵抗
458…コンデンサ
460…ミラー駆動回路
470…同期信号生成回路
【技術分野】
【0001】
この発明は、画素信号に応じて変調されたビーム光を走査させることにより画像を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ビーム光を走査させて画像を表示する画像表示装置としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。この画像表示装置では、レーザ光をPWM変調することにより、階調を表現している。
【0003】
【特許文献1】特開2007−140009号公報
【0004】
本願の発明者は、レーザ光をPWM変調した場合に、低い階調範囲において階調の浪打ちが発生して、視聴者に違和感が感じさせることを見いだした。これは、レーザの緩和振動現象によるものであると推定される。緩和振動現象とは、ステップ状の駆動電流がレーザ素子に入力されたときに、レーザ光強度が減衰振動する現象を意味する。緩和振動現象は、通常は、半導体レーザに現れる現象である。
【0005】
図1は、レーザの緩和振動現象の発生理由を説明するための説明図である。一般に、緩和振動現象は、レーザの駆動電流をステップ状に立ち上げた時に発生する。図1(A)は、ステップ状の駆動電流によるレーザ発光量の振動を示している。ところで、PWM変調による階調表現は、駆動電流の時間幅(駆動幅とも呼ぶ)を変えて発光時間の幅を変え、1画素当たりの平均発光量を変えることで階調を表現するものである。従って、暗い階調は、短い駆動幅で再現される。図1(B)は、図1(A)に示す緩和振動の一つ目の光パルスを丁度含むような時間幅で駆動された電流波形を示しており、図1(C)はそのときの発光波形を示している。図1(D)は、図1(C)の発光波形から僅かに明るい階調を表現するために、やや長い時間幅で駆動した場合の駆動電流波形を示しており、図1(E)はそのときの発光波形を示している。図1(C)の駆動時間幅の終端は、一つ目と二つ目の光パルスの谷間に相当するため、図1(B)の発光量と図1(D)の発光量はほとんど同じものになってしまう。図1(F)は、さらに明るい階調を表現するために、さらに長い時間幅で駆動した場合の駆動電流波形を示しており、図1(G)はそのときの発光波形を示している。この場合には、二つ目の光パルスが発生するので、発光量がかなり増加する。これらの例から理解できるように、PWM変調によって駆動幅を増加した場合には、発光量がほとんど増加しない階調範囲と、発光量がかなり増加する階調範囲とが生じるという問題がある。
【0006】
図2は、図1で説明した駆動幅と発光量の関係をプロットしたグラフである。低い階調範囲ではグラフが波打っており、階調再現性が劣っていることが理解できる。この現象は、視覚上は、暗い階調のグラデーションが滑らかにならないものとして観察される。
【0007】
このように、レーザ光をPWM変調した場合には、低い階調範囲において階調再現特性に浪打ちが発生するという問題があった。また、このような問題は、レーザ光のPWM変調に限らず、他の光源素子を用いて画素信号に応じて変調されたビーム光を発生させて画像を表示する技術にも共通する問題であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、画素信号に応じて変調されたビーム光を発生させて画像を表示する際に、低い階調範囲において階調再現特性の浪打ちが発生する現象を緩和する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]
画素信号に応じて変調されたビーム光を走査させることにより画像を表示する画像表示装置であって、
ビーム光を射出する光源素子と、
前記光源素子から射出された前記ビーム光をスクリーン上で走査させる走査部と、
前記画素信号の画素値に応じた駆動電流を前記光源素子に供給して前記ビーム光を射出させる制御部と
を備え、
前記制御部は、前記駆動電流の目標値の10%から90%までに要する立上り時間が1画素期間の5〜35%の範囲に収まるように前記駆動電流の立上りを調整する、画像表示装置。
この装置によれば、駆動電流の立上り時間が1画素期間の5%以上になるように駆動電流の立上りを調整したので、過度に短い立上り時間で駆動電流を立ち上げた場合に発生する階調再現特性の浪打ちを緩和することができる。また、駆動電流の立上り時間が1画素期間の35%以下になるように駆動電流の立上りを調整したので、過度に長い立上り時間で駆動電流を立ち上げた場合に実質的な階調数が減少するという問題を緩和することができる。この結果、良好な階調再現性を実現することが可能である。
【0011】
[適用例2]
適用例1記載の画像表示装置であって、
前記光源素子は、緩和振動現象を生じるレーザ素子である、画像表示装置。
【0012】
[適用例3]
適用例1又は2記載の画像表示装置であって、
前記制御部は、
前記画素値に応じて矩形波状制御信号を生成する制御信号生成部と、
前記制御信号生成部と前記光源素子との間の所定の位置に配置され、矩形波状の入力信号が供給されたときに矩形波状出力電流を発生する電流制御回路と、
前記矩形波発生回路と前記光源素子との間、又は、前記制御信号生成部と前記矩形波発生回路との間に設けられたフィルタ要素と、
を備え、
前記フィルタ要素によって前記駆動電流の立上り時間が調整される、画像表示装置。
【0013】
[適用例4]
適用例3記載の画像表示装置であって、
前記フィルタ要素は、ローパスフィルタである、画像表示装置。
【0014】
[適用例5]
適用例3記載の画像表示装置であって、
前記フィルタ要素は、同軸ケーブルである、画像表示装置。
【0015】
[適用例6]
画素信号に応じて変調されたビーム光を走査させることにより画像を表示する画像表示方法であって、
(a)前記画素信号の画素値に応じた駆動電流を光源素子に供給してビーム光を射出させる工程と、
(b)前記光源素子から射出された前記ビーム光をスクリーン上で走査させる工程と、
を備え、
前記工程(a)は、前記駆動電流の目標値の10%から90%までに要する立上り時間が1画素期間の5〜35%の範囲に収まるように前記駆動電流の立上りを調整する工程を含む、画像表示方法。
【0016】
[適用例7]
画素信号に応じて変調されたビーム光を走査させることにより画像を表示する画像表示装置であって、
ビーム光を射出する光源素子と、
前記光源素子から射出された前記ビーム光をスクリーン上で走査させる走査部と、
前記画素信号の画素値に応じた駆動電流を前記光源素子に供給して前記ビーム光を射出させる制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記画素値に応じて矩形波状制御信号を生成する制御信号生成部と、
前記矩形波状制御信号に応じて矩形波状出力電流を発生する電流制御回路と、
前記矩形波発生回路と前記光源素子との間に設けられたフィルタ要素と、
を備え、
前記フィルタ要素は、カットオフ周波数が画素周波数の1〜5倍の範囲にあるカットオフ特性を有する、画像表示装置。
この装置によれば、カットオフ周波数が画素周波数の5倍以下になるようにしたので、カットオフ周波数が過度に大きい場合に発生する階調再現特性の浪打ちを緩和することができる。また、カットオフ周波数が画素周波数の1倍以上になるようにしたので、カットオフ周波数が過度に小さい場合に実質的な階調数が減少するという問題を緩和することができる。この結果、良好な階調再現性を実現することが可能である。
【0017】
[適用例8]
適用例7記載の画像表示装置であって、
前記光源素子は、緩和振動現象を生じるレーザ素子である、画像表示装置。
【0018】
[適用例9]
適用例7又は8記載の画像表示装置であって、
前記フィルタ要素は、ローパスフィルタである、画像表示装置。
【0019】
[適用例10]
適用例7又は8記載の画像表示装置であって、
前記フィルタ要素は、同軸ケーブルである、画像表示装置。
【0020】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、画像表示方法および画像表示装置、光源素子の駆動方法及び装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.階調再現性の改善方法:
B.第1実施例:
C.第2実施例:
D.第3実施例:
E.変形例
【0022】
A.階調再現性の改善方法:
従来技術で説明した緩和振動現象は、駆動電流がステップ状に立ち上がることに主な原因があると推定される。そこで、駆動電流の立上りを、ステップ状波形よりも緩やかな上昇波形に従って変化させるようにすれば、緩和振動を緩和することが可能である。例えば、駆動電流の電流波形を滑らかにしてその高周波成分を少なくすると、緩和振動の振幅が減ると考えられる。このような考え方に基づいて、駆動電流の立上り方と表示特性との関係を定量的に調べた結果、以下のことが判明した。
【0023】
図3は、ステップ状入力とその2次応答波形の例を示すグラフである。横軸は時間、縦軸はレーザ電流である。2次応答波形は、高周波成分の少ない滑らかな駆動電流波形の典型例である。図3の右上に、2次応答の伝達関数H(s)が示されている。ここでは、極周波数f0を40MHzとし、減衰比ζを0.75と仮定している。
【0024】
図4は、この2次応答波形の周波数スペクトルを示すグラフである。ここでは、2次応答波形のカットオフ周波数fcutoffをパラメータとした4本のグラフが描かれている。なお、本明細書において、「カットオフ周波数fcutoff」とは、−3dBの減衰量を示す周波数を意味する。2次応答波形はステップ状波形に比べて高周波成分が小さく、また、そのカットオフ周波数fcutoffが小さいほど高周波成分が小さくなる。レーザ光源の緩和振動の周波数は1000MHz以上であると考えられるため、カットオフ周波数fcutoffが200MHz程度以下の電流波形で駆動すれば緩和振動の影響は小さくなると推定される。そこで、本願の発明者は、以下に示すレーザ動作モデルを作成し、PWM駆動幅とレーザ光量の関係を求めた。
【0025】
図5は、レーザ動作モデルの構成を示す説明図である。図5(A)に示すように、このモデルは、レーザドライバ440と、フィルタ要素450と、レーザ素子(レーザダイオード)100とを備えている。レーザドライバ440は、図5(B)に示す矩形波状の駆動電流を出力する。このドライバ出力は、1ピクセル期間(1画素期間)のうちの駆動幅DWの期間では所定の電圧レベルVccに維持され、他の期間では接地レベルに維持される。フィルタ要素450は、このようなドライバ出力をフィルタリングして、図5(C)に示すレーザ駆動電流を生成する。ここでは、フィルタ要素450として2次フィルタを用いた例が示されているが、1次フィルタを用いてもよい。なお、画素周波数(画素期間の逆数)は、VGA表示デバイスを想定して、40MHz(画素時間は25ns)とした。
【0026】
図6は、図5のレーザ動作モデルを用いて算出した階調特性のグラフであり、図7はその拡大図である。横軸は駆動幅DWであり、縦軸はレーザ光量である。また、シミュレーションのパラメータとして、フィルタ要素450のカットオフ周波数fcutoffを採用した。駆動幅DWが小さい領域は、低階調領域に相当し、駆動幅DWが1に近づくに従って階調が増大して光量が増加する。
【0027】
図6,図7において、駆動幅DWが1画素に等しい場合には、1画素期間(図5)の全体に渡って駆動電流が流れるので、カットオフ周波数fcutoffに拘わらず一定の発光量が得られる。一方、駆動幅DWが小さくなると、フィルタ要素450のカットオフ周波数fcutoffによってレーザ光量(すなわち実際の階調)が異なっている。具体的には、図7に示すように、カットオフ周波数fcutoffが高いほど、低い階調領域においてグラフがより大きく波打っており、カットオフ周波数fcutoffが下がるに従い波打ちが少なくなっていることがわかる。さらに、カットオフ周波数fcutoffが下がるほど、レーザ光量を立ち上げるための駆動幅DWが大きくなるという現象が発生している。後者の理由は、カットオフ周波数fcutoffが下がると駆動電流がゆっくりとしか上昇しないので、駆動幅DWを広げないとレーザ素子100が発光を始めないからである。
【0028】
図8は、図6,図7の各階調特性の直線からのずれ量(実線で示す)と、発光量が0.2mWとなる駆動幅(破線で示す)とを合わせてプロットしたグラフである。ここで、各階調特性の直線からのずれ量としては、各グラフを線形近似したときの残渣誤差(RMS)を利用した。階調特性の直線からのずれ量は、カットオフ周波数fcutoffが大きいほど低下する。換言すれば、階調特性の直線性は、カットオフ周波数fcutoffが小さいほど改善される。これは、カットオフ周波数fcutoffが小さいほど、電流波形がよりなだらかになるので、緩和振動現象が抑制されるからである。より具体的には、カットオフ周波数fcutoffが約200MHz以下であれば、階調特性の直線からのずれ量は約4%以下であり、実用上十分に満足できる程度である。但し、階調特性の直線性は、カットオフ周波数fcutoffが約40〜60MHzで最小値となり、40MHzを下回ると再び悪化する傾向がある。
【0029】
一方、図8において、発光量が0.2mWとなる駆動幅は、カットオフ周波数fcutoffが大きいほど小さくなる。図7からも理解できるように、発光量が0.2mWとなる駆動幅の値は、発光が開始される駆動幅を実質的に示しているものと考えることができる。一般に、発光量の階調再現性に利用できる駆動幅の範囲は、発光が開始される駆動幅以上の駆動幅の範囲である。従って、発光が開始される駆動幅の値が大きい場合には、発光量の階調再現性に利用できる残りの駆動幅の範囲が小さくなり、再現可能な階調数が実質的に低下する。換言すれば、再現可能な階調数は、カットオフ周波数fcutoffが大きく、発光が開始される駆動幅が小さいほど増加するので好ましいことが理解できる。より具体的には、カットオフ周波数fcutoffが約40MHz以上であれば、発光量が0.2mWとなる駆動幅は約0.3画素以下であり、実用上十分に満足できる程度である。
【0030】
上述した階調特性の直線性と、再現可能な階調数とを考慮すると、図8において、カットオフ周波数fcutoffとして40MHz〜200MHzの範囲の値を採用するが好ましいことが理解できる。カットオフ周波数fcutoffが40MHzよりも小さいと、発光が開始される駆動幅が過度に大きくなり、再現可能な階調数が過度に低下してしまう。一方、カットオフ周波数fcutoffが200MHzよりも大きいと階調特性の直線性が過度に劣化してしまう。なお、図5〜図8におけるシミュレーションでは、画素周波数を40MHzと仮定したので、図8におけるカットオフ周波数fcutoffの好ましい範囲(40MHz〜200MHz)は、画素周波数の1倍〜5倍の範囲に相当することが理解できる。この関係は、他の画素周波数でも同様に成立するものと推定される。すなわち、一般に、カットオフ周波数fcutoffを画素周波数の1倍〜5倍の範囲に選べば、低い階調領域での階調特性の波打ちが無く、また、レーザ光量の立上りに要する駆動幅が十分に小さな駆動を実現可能である。
【0031】
図9は、カットオフ周波数と駆動電流の立上り時間との関係を示すグラフである。ここでは、フィルタ要素450(図5)にステップ状のドライバ出力を入力した状態におけるフィルタ要素450の出力の立上り時間を計算した。ここで、「立上り時間」とは、ステップ状入力の目標値の10%から90%に至るまでに要する時間である。図9の縦軸は、立上り時間をピクセル時間(1画素幅の時間)で除した値である。図8において得られたカットオフ周波数fcutoffの好ましい範囲(40MHz〜200MHz)は、立上り時間に換算すると、ピクセル時間の約5%〜約35%の範囲にほぼ相当していることが理解できる。また、立上り時間の範囲としては、ピクセル時間の7%〜35%がより好ましく、7%〜32%がさらに好ましい。
【0032】
図8又は図9に従ってフィルタ要素のカットオフ周波数fcutoffを設定すれば、階調再現性に優れたレーザスキャンディスプレイを実現することが可能である。なお、図5〜図9のシミュレーションでは、フィルタ要素450をレーザドライバ440とレーザ素子100との間に設けていたが、この代わりに、フィルタ要素450をレーザドライバ440の前段に設けてもよい。後者の場合には、レーザドライバ440に非矩形状入力(フィルタ後信号)が供給されて、レーザドライバ440からレーザ素子100に非矩形状の駆動信号が入力される。
【0033】
B.第1実施例:
図10は、第1実施例における画像表示装置の全体構成を示す説明図である。この画像表示装置は、レーザ素子100と、水平走査部200と、垂直走査部300と、制御回路400とを有している。水平走査部200と垂直走査部300は、それぞれのミラーを有しており、ミラーを水平方向及び垂直方向に揺動させてレーザ光を水平方向及び垂直方向にそれぞれ走査する機構である。レーザ光は、2つの走査部200,300の動作によってスクリーンSC上を走査し、また、レーザ光の強さが画像の階調に従って変調されて、スクリーンSC上に表示画像が形成される。なお、ここでは1色分の構成のみを示しているが、カラー画像を表示する場合には、同様の構成が各色毎に設けられる。
【0034】
図11は、制御回路400の内部構成を示すブロック図である。制御回路400は、フレームメモリ410と、ラインバッファ420と、PWM回路430と、レーザドライバ440と、フィルタ要素450と、ミラー駆動回路460と、同期信号生成回路470とを備えている。フレームメモリ410は、外部の画像供給装置(例えばパーソナルコンピュータやDVDプレーヤ)から供給された画素信号Dmを格納する。この画素信号Dmは、タイミング調整用のラインバッファ420に一旦格納された後に、PWM回路430に順次供給される。PWM回路430は、画素信号Dmに対してPWM制御を行い、PWM信号Spwmを生成してレーザドライバ440に供給する。レーザドライバ440から出力される駆動信号は、フィルタ要素450を介してレーザ素子100に供給される。ミラー駆動回路460は、画素信号Dmに応じたレーザ素子100の発光制御に同期して走査部200,300(図10)を動作させる回路である。なお、同期信号生成回路470は、PWM回路430やミラー駆動回路460に同期信号を供給している。
【0035】
図12は、PWM回路430とレーザドライバ440の内部構成を示す図である。PWM回路430は、階調調整用ルックアップテーブル432と、DA変換器434と、三角波発生回路436と、コンパレータ438とを有している。階調調整用ルックアップテーブル432と、DA変換器434と、三角波発生回路436には、同期信号生成回路470(図11)から描画クロックDCLK(画素クロック)が供給されている。レーザドライバ440は、電流制限用の抵抗442と、駆動トランジスタ444との直列接続を有している。電源電位Vccと抵抗442との間には、フィルタ要素450を介してレーザ素子100が接続されている。なお、駆動トランジスタ444の制御電極(ゲート電極)には、PWM信号Spwmが入力されている。
【0036】
図13は、PWM回路430とレーザドライバ440の動作を示すタイミングチャートである。画素データDmは、描画クロックDCLKに同期して階調調整用ルックアップテーブル432に供給され、ここで描画データDpに変換されて、DA変換器434に入力される。なお、LUT432は、図6で説明した階調特性を考慮して、画素データDmと発光量の関係が直線性を維持するように、画素データDmを描画データDpに変換する機能を有している。例えば、画素データDmが8ビットであり、PWM駆動信号の駆動幅(図6の横軸)が0.2画素のときにレーザ素子100が発光を開始するものと仮定する。この場合には、Dm=1(0.5%の階調値)の時に、この画素データDmが、PWM駆動信号の駆動幅(図6の横軸)を0.2画素とする描画データDpに変換される。この描画データDpは、DA変換器434でアナログ描画信号Sdaに変換される。
【0037】
コンパレータ438は、アナログ描画信号Sdaと、三角波発生回路436から供給された三角波信号Striとを比較して、Dp≦Striの場合にHレベルとなり、Stri<Dpの場合にLレベルとなるPWM信号Spwmを生成する。なお、本実施例ではDA変換器434の出力電圧Sdaが大きいほどPWM信号Spwmの駆動幅は狭くなり、より暗い階調に対応した信号となる。このPWM信号Spwmに応じてレーザドライバ440の駆動トランジスタ444がオン/オフ制御され、これに応じたレーザ電流Idrが流れてレーザ光が発生する。
【0038】
図14は、第1実施例におけるフィルタ要素450の内部構成を示す回路図である。このフィルタ要素450は、コイル452とコンデンサ454とで構成された2次ローパスフィルタとしての特性を有している。一例では、コイル452のインダクタンスは15nH、 コンデンサ454の容量は56pFである。このとき、フィルタ要素450のカットオフ周波数fcutoffは、約170MHz≒1/(2π√(LC))である。なお、この周波数(1/(2π√(LC))は厳密には共振周波数であるが、カットオフ周波数fcutoffはこの共振周波数に近い値となる。
【0039】
図15は、レーザ素子100のIV特性の例を示すグラフである。このIV特性を用いてシミュレーションを行ったところ、図16に示すにように、立上り時間として7nsが得られた。画素周波数が40MHzの場合の1ピクセル時間は25nSなので、この立上り時間(7ns)は1ピクセル時間の28%に相当する。従って、この立上り時間は、図8で説明した好ましい範囲(ピクセル時間の7%〜35%)に収まっている。
【0040】
以上のように、第1実施例では、レーザドライバ440とレーザ素子100との間に2次ローパスフィルタを設けることによって、レーザ素子100の駆動電流の立上り時間を好ましい範囲に収め、良好な階調再現性を実現することが可能である。すなわち、暗い階調領域においてはレーザの緩和振動による影響を抑制して滑らかな階調表現を実現するができ、また、比較的短い駆動幅からレーザを発光させて実質的に再現可能な階調数を増加させ、より明るい表示を実現することが可能である。
【0041】
C.第2実施例:
図17は、第2実施例におけるフィルタ要素450aの構成を示す回路図である。このフィルタ要素450aは、同軸ケーブルである。このフィルタ要素450aも、2次ローパスフィルタとしての特性を有している。より具体的には、フィルタ要素450aとして、特性インピーダンスが50Ω、コードNo.が1.5D−2Vである同軸ケーブルを使用した、このケーブルのインダクタンスは260nH/m、容量は100pF/mである。この同軸ケーブルの長さ5cmとしてシミュレーションを行ったところ、図18のように駆動電流の立上り時間は8nsとなった。この立上り時間(8ns)は1ピクセル時間の32%に相当する。従って、この立上り時間は、図8で説明した好ましい範囲(ピクセル時間の7%〜35%)に収まっていることが理解できる。
【0042】
以上のように、第2実施例においても、レーザドライバ440とレーザ素子100との間に同軸ケーブルを設けることによって、レーザ素子100の駆動電流の立上り時間を好ましい範囲に収め、良好な階調再現性を実現することが可能である。
【0043】
D.第3実施例:
図19は、第9実施例におけるフィルタ要素450bの構成を示す回路図である。このフィルタ要素450bは、抵抗456とコンデンサ458とで構成されたRC積分回路である。このRC積分回路は、1次ローパスフィルタとしての特性を有している。なお、第2実施例では、フィルタ要素450bがレーザドライバ440の入力側に設けられている点で、上述した第1,第2実施例と異なっている。すなわち、第3実施例では、PWM駆動信号Spwmがフィルタ要素450bにおいてフィルタリングされ、こうして得られた非矩形状の駆動信号がレーザドライバ440に入力されている。換言すれば、第3実施例では、駆動電流波形の制御が、レーザドライバ440の駆動トランジスタ444の制御端子の入力波形を制御することで行なっている。
【0044】
一例として、抵抗456の抵抗値を100Ωとし、コンデンサ458の容量を27pFとして、レーザ素子100をレーザドライバ440に直接接続した状態でシミュレーションを行ったところ、図20に示すように、駆動電流の立上り時間として6nsが得られた。この立上り時間(6ns)は1ピクセル時間の24%に相当する。従って、この立上り時間は、図8で説明した好ましい範囲(ピクセル時間の7%〜35%)に収まっていることが理解できる。
【0045】
以上のように、第3実施例においても、レーザドライバ440の入力側にフィルタ要素を設けることによって、レーザ素子100の駆動電流の立上り時間を好ましい範囲に収め、良好な階調再現性を実現することが可能である。
【0046】
なお、第3実施例において、1次フィルタの代わりに2次フィルタを利用することも可能である。また、第1,第2実施例において、2次フィルタの代わりに1次フィルタを設けることも可能である。
【0047】
E.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0048】
E1.変形例1:
上記実施例では、駆動電流の立上り時間が1画素期間の5〜35%の範囲に収まるように駆動電流の立上りを調整するか、或いは、カットオフ周波数が画素周波数の1〜5倍の範囲にあるカットオフ特性を有するフィルタ要素を用いて階調特性を改善していた。しかし、本発明は、これらの数値に限定されるものでは無く、一般に、駆動電流の立上りを、ステップ状波形よりも緩やかな上昇波形に従って変化させることによって階調特性を改善する方法や装置として実現可能である。
【0049】
E2.変形例2:
上記実施例では、レーザ素子を用いた例を説明したが、本発明は、レーザ素子に限らず、他の光源素子(発光素子)を用いた表示装置に適用可能である。また、上記実施例では、表示装置としてプロジェクタを説明したが、本発明はプロジェクタ以外の表示装置にも適応可能である。
【0050】
E3.変形例3:
上記実施例では、PWM回路430を用いていたが、この代わりに、他の駆動方法でレーザドライバ440に制御信号を供給する制御信号生成部を利用してもよい。典型的な例では、画素値に応じて矩形波状制御信号を生成する制御信号生成部を利用することが可能である。PWM回路430は、このような制御信号生成部の一例であることが理解できる。また、レーザドライバ440としては、矩形波状の入力信号が供給されたときに矩形波状出力電流を発生する任意の回路(電流制御回路)を利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】レーザの緩和振動現象の発生理由を説明するための説明図である。
【図2】駆動時間幅と発光量の関係をプロットしたグラフである。
【図3】ステップ状入力とその2次応答波形の例を示すグラフである。
【図4】2次応答波形の周波数スペクトルを示すグラフである。
【図5】レーザ動作モデルの構成を示す説明図である。
【図6】レーザ動作モデルを用いて算出した階調特性のグラフである。
【図7】図6の一部拡大図である。
【図8】階調特性の直線からのずれ量と、発光量が0.2mWとなる駆動幅とを合わせてプロットしたグラフである。
【図9】カットオフ周波数と駆動電流の立上り時間との関係を示すグラフである。
【図10】第1実施例における画像表示装置の全体構成を示す説明図である。
【図11】制御回路の内部構成を示すブロック図である。
【図12】PWM回路とレーザドライバの内部構成を示す図である。
【図13】PWM回路とレーザドライバの動作を示すタイミングチャートである。
【図14】第1実施例におけるフィルタ要素の構成を示す回路図である。
【図15】レーザ素子のIV特性の例を示すグラフである。
【図16】第1実施例におけるレーザ駆動電流の立上り特性を示すグラフである。
【図17】第2実施例におけるフィルタ要素の構成を示す回路図である。
【図18】第2実施例におけるレーザ駆動電流の立上り特性を示すグラフである。
【図19】第3実施例におけるフィルタ要素の構成を示す回路図である。
【図20】第3実施例におけるレーザ駆動電流の立上り特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0052】
100…レーザ素子
200…水平走査部
300…垂直走査部
400…制御回路
410…フレームメモリ
420…ラインバッファ
430…PWM回路
432…階調調整用ルックアップテーブル
434…DA変換器
436…三角波発生回路
438…コンパレータ
440…レーザドライバ
442…抵抗
444…駆動トランジスタ
450…フィルタ要素
452…コイル
454…コンデンサ
456…抵抗
458…コンデンサ
460…ミラー駆動回路
470…同期信号生成回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素信号に応じて変調されたビーム光を走査させることにより画像を表示する画像表示装置であって、
ビーム光を射出する光源素子と、
前記光源素子から射出された前記ビーム光をスクリーン上で走査させる走査部と、
前記画素信号の画素値に応じた駆動電流を前記光源素子に供給して前記ビーム光を射出させる制御部と
を備え、
前記制御部は、前記駆動電流の目標値の10%から90%までに要する立上り時間が1画素期間の5〜35%の範囲に収まるように前記駆動電流の立上りを調整する、画像表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像表示装置であって、
前記光源素子は、緩和振動現象を生じるレーザ素子である、画像表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の画像表示装置であって、
前記制御部は、
前記画素値に応じて矩形波状制御信号を生成する制御信号生成部と、
前記制御信号生成部と前記光源素子との間の所定の位置に配置され、矩形波状の入力信号が供給されたときに矩形波状出力電流を発生する電流制御回路と、
前記矩形波発生回路と前記光源素子との間、又は、前記制御信号生成部と前記矩形波発生回路との間に設けられたフィルタ要素と、
を備え、
前記フィルタ要素によって前記駆動電流の立上り時間が調整される、画像表示装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像表示装置であって、
前記フィルタ要素は、ローパスフィルタである、画像表示装置。
【請求項5】
請求項3記載の画像表示装置であって、
前記フィルタ要素は、同軸ケーブルである、画像表示装置。
【請求項6】
画素信号に応じて変調されたビーム光を走査させることにより画像を表示する画像表示方法であって、
(a)前記画素信号の画素値に応じた駆動電流を光源素子に供給してビーム光を射出させる工程と、
(b)前記光源素子から射出された前記ビーム光をスクリーン上で走査させる工程と、
を備え、
前記工程(a)は、前記駆動電流の目標値の10%から90%までに要する立上り時間が1画素期間の5〜35%の範囲に収まるように前記駆動電流の立上りを調整する工程を含む、画像表示方法。
【請求項7】
画素信号に応じて変調されたビーム光を走査させることにより画像を表示する画像表示装置であって、
ビーム光を射出する光源素子と、
前記光源素子から射出された前記ビーム光をスクリーン上で走査させる走査部と、
前記画素信号の画素値に応じた駆動電流を前記光源素子に供給して前記ビーム光を射出させる制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記画素値に応じて矩形波状制御信号を生成する制御信号生成部と、
前記矩形波状制御信号に応じて矩形波状出力電流を発生する電流制御回路と、
前記矩形波発生回路と前記光源素子との間に設けられたフィルタ要素と、
を備え、
前記フィルタ要素は、カットオフ周波数が画素周波数の1〜5倍の範囲にあるカットオフ特性を有する、画像表示装置。
【請求項8】
請求項7記載の画像表示装置であって、
前記光源素子は、緩和振動現象を生じるレーザ素子である、画像表示装置。
【請求項9】
請求項7又は8記載の画像表示装置であって、
前記フィルタ要素は、ローパスフィルタである、画像表示装置。
【請求項10】
請求項7又は8記載の画像表示装置であって、
前記フィルタ要素は、同軸ケーブルである、画像表示装置。
【請求項1】
画素信号に応じて変調されたビーム光を走査させることにより画像を表示する画像表示装置であって、
ビーム光を射出する光源素子と、
前記光源素子から射出された前記ビーム光をスクリーン上で走査させる走査部と、
前記画素信号の画素値に応じた駆動電流を前記光源素子に供給して前記ビーム光を射出させる制御部と
を備え、
前記制御部は、前記駆動電流の目標値の10%から90%までに要する立上り時間が1画素期間の5〜35%の範囲に収まるように前記駆動電流の立上りを調整する、画像表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像表示装置であって、
前記光源素子は、緩和振動現象を生じるレーザ素子である、画像表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の画像表示装置であって、
前記制御部は、
前記画素値に応じて矩形波状制御信号を生成する制御信号生成部と、
前記制御信号生成部と前記光源素子との間の所定の位置に配置され、矩形波状の入力信号が供給されたときに矩形波状出力電流を発生する電流制御回路と、
前記矩形波発生回路と前記光源素子との間、又は、前記制御信号生成部と前記矩形波発生回路との間に設けられたフィルタ要素と、
を備え、
前記フィルタ要素によって前記駆動電流の立上り時間が調整される、画像表示装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像表示装置であって、
前記フィルタ要素は、ローパスフィルタである、画像表示装置。
【請求項5】
請求項3記載の画像表示装置であって、
前記フィルタ要素は、同軸ケーブルである、画像表示装置。
【請求項6】
画素信号に応じて変調されたビーム光を走査させることにより画像を表示する画像表示方法であって、
(a)前記画素信号の画素値に応じた駆動電流を光源素子に供給してビーム光を射出させる工程と、
(b)前記光源素子から射出された前記ビーム光をスクリーン上で走査させる工程と、
を備え、
前記工程(a)は、前記駆動電流の目標値の10%から90%までに要する立上り時間が1画素期間の5〜35%の範囲に収まるように前記駆動電流の立上りを調整する工程を含む、画像表示方法。
【請求項7】
画素信号に応じて変調されたビーム光を走査させることにより画像を表示する画像表示装置であって、
ビーム光を射出する光源素子と、
前記光源素子から射出された前記ビーム光をスクリーン上で走査させる走査部と、
前記画素信号の画素値に応じた駆動電流を前記光源素子に供給して前記ビーム光を射出させる制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記画素値に応じて矩形波状制御信号を生成する制御信号生成部と、
前記矩形波状制御信号に応じて矩形波状出力電流を発生する電流制御回路と、
前記矩形波発生回路と前記光源素子との間に設けられたフィルタ要素と、
を備え、
前記フィルタ要素は、カットオフ周波数が画素周波数の1〜5倍の範囲にあるカットオフ特性を有する、画像表示装置。
【請求項8】
請求項7記載の画像表示装置であって、
前記光源素子は、緩和振動現象を生じるレーザ素子である、画像表示装置。
【請求項9】
請求項7又は8記載の画像表示装置であって、
前記フィルタ要素は、ローパスフィルタである、画像表示装置。
【請求項10】
請求項7又は8記載の画像表示装置であって、
前記フィルタ要素は、同軸ケーブルである、画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−20212(P2010−20212A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182411(P2008−182411)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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