説明

画像表示装置

【課題】 低消費電力での駆動を可能とすると共に、小型且つ低コストで高品位な画像を表示する。
【解決手段】 異なる波長の光を出射する複数の光源と、前記複数の光源から出射された光のうち少なくとも一つを表示する画像表示部と、を備えてなる画像表示装置において、前記光源は、半導体レーザよりなる光源であって、赤色レーザ光を出射する第1の光源と、青色レーザ光を出射する第2の光源と、前記第1の光源及び第2の光源よりも発振波長が短波長であるレーザ光を出射する第3の光源とを有しており、前記画像表示部には前記第3の光源からの光で励起されて緑色を発する蛍光体が塗布されている画像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示部(スクリーン)にカラー画像を表示する画像表示装置に関し、特に光源には半導体レーザを採用した画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置としては、画像信号に応じて出射される電子ビームを蛍光体に照射させこの蛍光体を発光させることにより画像を表示する陰極線管型の画像表示装置(CRT:Cathode Ray Tube)や、画像信号に応じた電圧を印加して液晶の配列等を変化させることにより入射光の透過率等を変化させて画像を表示する液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)や、ガス放電に伴う発光を利用して画像を表示するプラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)等が実用化されている。
【0003】
これらの中で、陰極線管型の画像表示装置は、表示画像の高画質化の実現が比較的容易であるが、消費電力が大きく、装置自体の小型化が困難であるという問題がある。一方、液晶表示装置やプラズマディスプレイは、小さな消費電力で駆動が可能であるが、製造コストが高く、また、微小欠陥が生じやすいといった問題がある。
【0004】
これら画像表示装置の上述したような欠点を補うべく、色表現の原色となり得る少なくとも3色のレーザ光を画像形成に用いるようにしたレーザディスプレイ装置が提案されている。このレーザディスプレイ装置の一構成例としては、光源から出射される赤色光、緑色光および青色光のレーザ光をビデオアンプの制御に基づいて動作される光変調器により画像信号に応じてそれぞれ変調し、変調されたレーザ光をダイナミックミラー等の波長選択性を有する光学部品を用いて略同一光路上に導いた後に、垂直走査鏡や水平走査鏡等によりスクリーン上に走査させて、スクリーンに画像を表示させるようにしている。
【0005】
上記レーザディスプレイ装置のレーザ光源の1つとして、ガスレーザが使用されているが、ガスレーザ光源は、一般にエネルギー変換効率が0.1%程度と低く、また冷却機構が必要であるため、装置が大型化し、コストが非常に高いという問題があった。
【0006】
そこで、レーザ光源として半導体レーザ励起SHG(第2高調波発生)固体レーザが使用されている。例えば、発振波長が1064nmの半導体レーザ励起固体レーザを用いた532nmの緑色波長を発するYAGレーザでは、ガスレーザよりもエネルギー変換効率が高いものが得られている。
【0007】
【特許文献1】特開平3−113484号公報
【特許文献2】特開平11−64789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した半導体レーザ励起SHG固体レーザは高出力化に伴い、レーザ光に縦モード競合というノイズが発生することが知られている。これらの縦モードを制御するために、例えばエタロンを波長選択素子として挿入することも考えられる。そうした場合には、ロスが大きすぎ、高出力が得られなくなり、レーザディスプレイを高輝度化できないという問題が発生する。また、余分な熱対策や変調器が必要となる。したがって、半導体レーザ励起SHG固体レーザをレーザディスプレイの光源に用いた場合、高効率化、小型化およびコストという点で多くの問題点が残されている。
【0009】
また、レーザ光を用いた画像表示装置においては、スペックルノイズにより画質の劣化を招来することがある。スペックルノイズは、レーザ光のような可干渉波(コヒーレント波)を表示面に照射した際に、表示面の各点で散乱された光が互いに不規則な位相関係で干渉することにより発生する。スペックルノイズが発生すると人の目に強いランダムノイズとして認識され、画質が劣化しているように感じられることになる。赤色、青色、緑色の3色の中でも、緑色は人の感じる視感度が他の色よりも高いため、スペックルノイズが大きな問題となる。
本発明は上記事情に鑑みて、高効率化および小型化が可能で、かつスペックルノイズの影響を抑制して画質を高めることを目的とする画像表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像表示装置は、異なる波長の光を出射する複数の光源と、前記複数の光源から出射された光のうち少なくとも一つを表示する画像表示部と、を備えてなる画像表示装置であり、前記光源は、半導体レーザよりなる光源であって、赤色レーザ光を出射する第1の光源と、青色レーザ光を出射する第2の光源と、前記第1の光源及び第2の光源よりも発振波長が短波長であるレーザ光を出射する第3の光源とを有しており、前記画像表示部には前記第3の光源からの光で励起されて緑色を発する蛍光体が塗布されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成であれば、光源に半導体レーザを用いており装置の小型化を実現することができる。また、画像表示部には、第3の光源のような短波長のレーザ光で励起されて緑色を発する蛍光体を塗布しており、スペックルノイズの発生を抑制して画像表示することができる。前記蛍光体は第1の光源である赤色や第2の光源である青色の光では励起するものではなく、それらよりも短波長である光で励起させて発光するものである。そのため、赤色や青色の出力を低減することはなく、また不要な混色光を表示することなく、各色の再現性は良好となる。
【0012】
前記画像表示装置において、第3の光源は、発振波長が420nm以下であることが好ましい。更に好ましくは、第3の光源は、発振波長が400nm以下の紫外域である光源とする。これによって、第3の光源自体の色が画像表示部に表示されたとしても、該光源の色を人間が目視できるものではなく、緑色のスペックルノイズは抑制されて赤色、青色、緑色の再現性は良好となる。
【0013】
前記画像表示装置において、画像表示部は、透光性部材と蛍光体層との積層体である ことが好ましい。透光性部材とは、ガラス、プラスチック等である。また、透光性部材は前面側透光性部材と背面側透光性部材とからなり、該透光性部材で蛍光体層を挟み込むものとする。これによって、塗布される蛍光体の平面形状を任意に変更することができる。
【0014】
前記画像表示装置において、前記蛍光体は、BaMgAl1017:Eu,Mn、BaMgAl1627:Eu,Mn、SrGa:Eu、ZnGeO:Mn、ZnS:Cu、SrAl:Eu、Ca:Ce,Tb、CaAl11:Ce,Tb、BaSiO:Eu、BaSi:Eu、(Sr,Ca)Si:Euからなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【0015】
前記BaMgAl1017:Euは、(M1−m,Eu(Mg1−n,MnAl1015+a+b(ただし、MはBa、Sr及びCaからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、0.9≦a≦1.1、0.9≦b≦1.1、0.02≦m≦0.6、0≦n≦0.6である。)の組成範囲も含む。
【0016】
前記蛍光体は、発光波長が420nm以下の光での変換効率が高く、緑色の高出力化を実現することができる。また、上記蛍光体は短残光である性質を有するため、視感度が強い緑色であってもランダムノイズが認識されることが抑制される。
【0017】
本発明における前記蛍光体は一般式を列挙して示しており、BaMgAl1017:Euと同様に、他の蛍光体においても組成比が多少異なるものや不純物を含有したものであってもよい。
【0018】
前記画像表示装置において、前記蛍光体は、前記画像表示部にストライプ状、ドット状、網目状、又は矩形状に塗布されていることを特徴とする。これによって、蛍光体のライフ特性を向上させる効果を有する。
【0019】
前記画像表示装置において、前記第2の光源及び/又は、第3の光源は、窒化物半導体レーザよりなることを特徴とする。窒化物半導体から成るレーザを用いることで高出力の光源を実現することができる。その理由は、窒化物半導体は直接遷移型半導体であるため発光効率が高く、放熱性も良好であるからである。
また第2の光源と第3の光源とを窒化物半導体レーザよりなる構成とすれば、同一チップで2波長レーザとすることもできるため、光源を更に小型化することができる。また、製造工程を簡略化することができるため、量産化にも好ましい。
【0020】
前記窒化物半導体レーザに用いる窒化物半導体は、一般式をInAlGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)とする。またn型窒化物半導体にはn型不純物として、Si、Ge、O等のいずれか1つ以上を含有している。またp型窒化物半導体にはp型不純物として、Mg、Zn等を含有している。活性層は、単一量子井戸構造、又は多重量子井戸構造とする。また、成長用基板には窒化物半導体基板を用いており、劈開性や放熱性に優れている。同一基板上に半導体層を積層して2つのリッジを形成した2波長レーザを作製するには、従来であれば歩留まりを大幅に低下させるものであった。しかし、硬度が高く、劈開性に優れているGaN基板を採用すれば、デバイス工程においてチップ欠けやチップ割れを抑制することができる。そのため、前記第2の光源と第3の光源とを2波長レーザとした画像表示装置用光源を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の画像表示装置は、半導体レーザを光源に用いているため、画像表示装置の小型化を実現することができる。また画像表示部(スクリーン)は、CRT(陰極線管)等のように真空雰囲気中に配置する必要がないため、容易に大型化することができる。
【0022】
またレーザ光を画像表示部(スクリーン)上の蛍光体層に走査して緑色を表示するものであり、視感度が高い緑色のスペックルノイズを減少させることができる。光源に半導体レーザを用いることで低消費電力であって、高輝度(高出力)化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る画像表示装置を示すものである。図1に示すように、赤色を出射する半導体レーザからなる第1の光源1aと、青色を出射する半導体レーザからなる第2の光源1bと、励起用波長のレーザ光を出射する半導体レーザからなる第3の光源1cとを有している。
【0024】
また、前記第1の光源1aから出射されコリメートレンズ2により平行光とされたレーザ光はミラー3aで反射される。前記第2の光源1bからのレーザ光はコリメートレンズ2により平行光とされた後、ダイクロイックミラー3bで反射した後、ダイクロミラー3aを透過して1本のビームに合波される。前記第3の光源1cからのレーザ光は、コリメートレンズにより平行光とされた後、ダイクロイックミラー3cで反射された後、ダイクロイックミラー3bおよび3aを透過して前記ビームに合波される。
【0025】
前記ミラー3で反射されたレーザ光を、画像表示部(スクリーン)7上に走査する光走査部は、これらのレーザ光を画像表示部の垂直方向に走査させるための垂直走査鏡4aと、この垂直走査鏡を駆動する垂直走査鏡駆動部4bと、レーザ光を画像表示部の平行方向に走査させるための平行走査鏡5aと、この平行走査鏡を駆動する水平走査鏡駆動部5bとを備えている。尚、図1において垂直走査鏡駆動部4bと水平走査鏡駆動部5bとの図示は省略している。
【0026】
垂直走査鏡4aは、周囲に多数の光反射面が形成された多角柱状を呈しており、垂直走査鏡駆動部により回転操作されることにより、各光反射面を画像表示部の垂直方向に沿った方向に移動させて、各光反射面にて反射したレーザ光を画像表示部の垂直方向に順次走査させる。垂直走査鏡を回転操作する垂直走査鏡駆動部4bは、制御部によりその動作が制御されており、制御部に供給された画像信号に応じて、所定の回転速度で垂直走査鏡を回転操作する。
【0027】
水平走査鏡5aは、垂直走査鏡の光反射面により反射されたレーザ光の光路上に配置されている。この水平走査鏡は垂直走査鏡と同様に、周囲に多数の光反射面が形成された多角柱状を呈しており、水平走査鏡駆動部により回転操作されることにより、各光反射面を画像表示部の水平方向に沿った方向に移動させて、光反射面にて反射したレーザ光を画像表示部の水平方向に走査させるようになされている。水平走査鏡を回転操作する水平走査鏡駆動部5bは、制御部によりその動作が制御されており、制御部に供給された画像信号に応じて、水平走査鏡を垂直走査鏡に連動させながら、所定の回転速度で回転操作する。
【0028】
各光源1から出射されコリメートレンズ2により平行光とされたレーザ光は、ダイクロイックミラー3で反射された後、上記光走査部により、画像表示部7の垂直方向及び平行方向にそれぞれ走査され、投射レンズ6を介して画像表示部7上に投影される。
【0029】
前記画像表示部7は、前面透光性部材7aと背面透光性部材7cとで蛍光体層7bを挟み込む構造であることが好ましい(図3)。該蛍光体層7bは前記第3の光源1cより発するレーザ光を励起用光として励起されて、緑色を発する。この緑色は、人に対する視感度が高い500〜550nmの光であって、レーザ光とは異なり光の位相が変化して可干渉性の度合いが低下したものである。
【0030】
前記透光性部材は紫外光から赤色光までを透過するものであれば特に限定しない。例えば、画像表示部用途にはガラス、プラスチック等がある。前面透光性部材7aは光散乱フィルターを形成したもの、又は光拡散材料を塗布する構造とすることで視野角を広げることができる。また、前面透光性部材7a、及び/又は背面透光性部材7cは紫外光を反射して可視光を透過する保護膜を積層したものであれば、前面透光性部材7a側に紫外光が漏れることを抑制することができる。更に背面側に反射した紫外光を再度、背面透光性部材7cに設けた前記保護膜で蛍光体層7b側に反射させて緑色光を発光させることができる。
【0031】
前記蛍光体層7bは、前記透光性部材の略全面に蛍光体を塗布することで形成することができる。その他の蛍光体の平面形状としてはストライプ状、ドット状、網目状、矩形状に塗布するものがある。また蛍光体層7bの断面形状が凹型である透光性部材7dの底面及び側面に蛍光体を塗布したものがある(図4a)。該形態であれば、蛍光体が塗布されている表面積を拡大できるため、緑色の輝度を向上させることができる。蛍光体層7bの膜厚は1μm〜1mmの範囲である。
また前記透光性部材7dの凹部形状は側面を傾斜させた三角形状としたものがある(図4b)。第3の光源はレーザ光であるため、入射口が小さい三角形状をした透光性部材の内部に励起光を入射することは容易であり、入射されたレーザ光で緑色に波長変換される。このような三角形状であれば底面のみならず、側面である斜面でも効率よく波長変換することができるため緑色の高輝度化には好ましい。
【0032】
次に、赤色を出射する半導体レーザからなる第1の光源1aと、青色を出射する半導体レーザからなる第2の光源1bと、励起用波長のレーザ光を出射する半導体レーザからなる第3の光源1cについて説明する。
【0033】
まず、第1の光源1aは、気相成長法により、GaAs基板上に、一般式がIn(Ga1−yAl1−xP(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)である半導体層を積層したものである。n側光閉じ込め層とp側光閉じ込め層とで多重量子井戸構造の活性層を挟んだ構成としており、該活性層は、In0.5(Ga1−yAl0.5P(0≦y≦1)を一般式として発振波長を600nm以上750nm以下とする。
【0034】
次に、第2の光源1bと第3の光源1cとは、気相成長法により、GaNやSi、SiC、Al等からなる基板上にInAlGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)を一般式とした半導体層を積層したものである。
【0035】
前記第2の光源1bにおける活性層の井戸層は、InxGa1−xN(0.05≦x≦0.20)からなり、該活性層を挟んだ第1の障壁層及び第2の障壁層がInGa1−uN(0≦u≦0.1)からなる。好ましくは、井戸層は、InxGa1−xN(0.10≦x≦0.15)からなり、該活性層を挟んだ第1の障壁層及び第2の障壁層がInGa1−uN(0≦u≦0.05)からなる。第2の光源の発振波長は430nm以上490nm以下とする。第2の光源1bは単一量子井戸構造であっても、多重量子井戸構造であってもよい。
【0036】
前記第3の光源1cにおける活性層の井戸層は、AlInGa1−x−yN(0≦x≦0.1、0≦y≦0.15、x+y<1)からなり、該活性層を挟んだ第1の障壁層及び第2の障壁層がAlInvGa1−u-vN(0≦u≦0.25、0≦v≦0.1、u+v<1)からなる。好ましくは、井戸層は、AlInGa1−x−yN(0≦x≦0.05、0.005≦y≦0.05、x+y<1)からなる。第3の光源1bは単一量子井戸構造であっても、多重量子井戸構造であってもよい。
【0037】
以下、第2の光源、及び第3の光源に用いる半導体レーザ素子の製造方法について説明するが、本発明は以下に限定させるわけではない。
【0038】
まず、窒化物半導体基板を形成する。これは、窒化物半導体から成る単体基板、その他に窒化物半導体と異なる材料であるサファイアやSiC、GaAs等から成る支持基板を有するものであってもよい。該基板の主面は例えば(0001)面、(11−20)面、又は(1−100)面とする。尚、本明細書において、面指数を表す括弧内のバー(−)は、後ろの数字の上に付すべきバーを表すものとする。
【0039】
前記基板の主面上に、気相成長法を利用してAlGa1−xN(0≦x≦1)から成るバッファ層を成長する。バッファ層の成長温度は900℃以下とする。尚、該バッファ層は省略可能である。前記基板の膜厚は50μm以上10mm以下とする。この窒化物半導体基板の第1の主面及び/又は第2の主面には0.01〜0.5°のオフ角を有する基板を用いる。窒化物半導体基板の製法には、ELO法や選択成長法などを用いるMOCVD法やHVPE法、MBE法等の気相成長法、その他には超臨界流体中で結晶育成させる水熱合成法、高圧法、フラックス法、溶融法等がある。前記窒化物半導体基板の単位面積当たりの転位数が1×10/cm以下、好ましくは1×10/cm以下となる。これらの転位測定はCL観察やTEM観察等で行う。
【0040】
前記窒化物半導体から成る基板や窒化物半導体層は、III族元素であるB、Ga、Al、In等と窒素との化合物であるGaN、AlN、その他に3元や4元の混晶化合物であるAlGaNやInAlGaNがある。該窒化物半導体は、n型不純物やp型不純物を含有するものが好ましい。n型不純物としては、Si、Ge、Se、S、O等である。n型不純物、又はp型不純物の不純物濃度は、1×1017cm−3〜1×1020cm−3である。また窒化物半導体基板の外周形状は特に限定されず、ウェハー状であっても、矩形状等であってもよい。ウェハー状である場合には、1インチ以上のサイズとする。
【0041】
次に、本実施形態では、以下の各層をMOCVD法により、減圧〜大気圧の条件で成長させる。前記窒化物半導体層は、前記窒化物半導体基板の第1主面上にn側窒化物半導体層、活性層、p側窒化物半導体層の順で積層されている。尚、n側窒化物半導体層及びp側窒化物半導体層は多層膜である。
n側窒化物半導体層としてはAlGa1−xN(0<x≦0.5)、好ましくはAlGa1−xN(0<x≦0.3)である。第1のn側窒化物半導体層はクラッド層として機能させることもできる。次に第2のn側窒化物半導体層を形成する。該第2のn側窒化物半導体層は光ガイド層として機能するAlGa1−xN(0≦x≦0.3)である。
【0042】
次に上述したように、それぞれの光源用に活性層を積層する。次に、活性層上にp側窒化物半導体層を積層する。第1のp側窒化物半導体層としてはp型不純物ドープAlGa1−xN(0≦x≦0.5)である。第1のp側窒化物半導体層はp側電子閉じ込め層として機能する。次に第2のp側窒化物半導体層としてAlGa1−xN(0≦x≦0.3)、第3のp側窒化物半導体層としてp型不純物ドープAlGa1−xN(0≦x≦0.5)、第4のp側窒化物半導体層としてp型不純物ドープAlGa1−xN(0≦x≦1)を順に形成する。また、これらの半導体層にInを混晶させてもよい。前記第1のp側窒化物半導体層は省略可能である。前記各層の膜厚としては、30Å〜5μmである。また、前記各層は単一層構造、2層構造、又は組成比がお互いに異なる2層からなる超格子構造であっても構わない。
【0043】
その後、窒化物半導体基板上に窒化物半導体層を積層したウェハーを半導体成長装置の反応容器から取り出す。次に、n側窒化物半導体層をエッチングにより露出させる。n側窒化物半導体層の露出面は特に限定するのもではないが本実施形態では第1のn側窒化物半導体層まで露出する。これによって、応力緩和の効果があるが、該工程は省略することが可能である。エッチングにはRIE法を用いる。
【0044】
次に、前記p側窒化物半導体層にストライプ状のリッジ部を形成する。次に、電流狭窄層を形成する。この電流狭窄層とは半導体層よりも屈折率が小さく、絶縁性の材料から選ばれるものである。本実施形態では窒化物半導体層を用いているため電流狭窄層の具体例としては、ZrO、SiO、その他にはV、Nb、Hf、Ta、Al等の酸化物やAlNである。
【0045】
その後、前記窒化物半導体基板の第2の主面にn電極を形成する。窒化物半導体基板の第2の主面にn電極をCVDやマグネトロンスパッタ、ECRスパッタ、蒸着等で形成する。該電極は、少なくともTi、Ni、Au、Pt、Al、Pd、W、Rh、Ag、Mo、V、Hfから成る群より選ばれる少なくとも1つを有する。また前記電極における多層構造の最上層はPtまたはAuであることで電極からの放熱性を向上させることが可能となり好ましい。n電極の膜厚としては10000Å以下、好ましくは6000Å以下とする。またn電極を形成した後、300℃以上でアニールしてもよい。
【0046】
n電極を形成した後、ストライプ状のp電極に垂直な方向であって、半導体層の共振面を形成するためにウェハーをバー状に分割する。ここで、共振面は、M面(1−100)やA面(11−20)とする。ウェハーをバー状に分割する方法としては、ブレードブレイク、ローラーブレイク、又はプレスブレイクがある。
ウェハーをバー状に分割した後、劈開により形成された共振面に反射ミラーを形成することもできる。反射ミラーはSiOやZrO、TiO、Al、Nb等から成る誘電体多層膜である。前記反射ミラーは、共振面の光反射側、及び/又は光出射面に形成する。その後、バー状となった窒化物半導体基板を分割してチップ化する。半導体レーザ素子としてチップ化した後の形状は矩形状であって、該矩形状の共振器長は1000μm以下とする。以上より半導体レーザ素子を形成する。
【0047】
本発明の半導体レーザの作製にはMOVPE(有機金属気相成長法)、HVPE(ハライド気相成長法)、MBE(分子線気相成長法)等、半導体を成長させるのに知られている全ての方法を適用できる。また本発明の半導体レーザは、n型半導体層とp型半導体層とで、活性層を挟んだ分離光閉じ込め型構造であるSCH(Separate Confinement Heterostructure)構造とすることが好ましい。
【0048】
本発明の半導体レーザを3波長レーザとするには、前記第2の光源と第3の光源とを同一基板で形成した後、第1の光源を第2の光源又は第3の光源上に形成するものがある。このような構造とすれば、各光源間の距離が近くなり、同一レンズでの集光が容易となるため、装置を更に小型化することができる。
【0049】
次に、蛍光体について説明する。本発明における蛍光体には、蛍光体を励起して緑色域に発光スペクトルを有する発光効率の高い蛍光体、また耐光性やライフ特性にも優れた蛍光体を用いる。該蛍光体としては、BaMgAl1017:Eu,Mn、BaMgAl1627:Eu,Mn、SrGa:Eu、ZnGeO:Mn、ZnS:Cu、SrAl:Eu、Ca:Ce,Tb、CaAl11:Ce,Tb、BaSiO:Eu、BaSi:Eu、(Sr,Ca)Si:Euからなる群から選ばれる少なくとも1つである。本発明における前記蛍光体層は、上記蛍光体を2以上混合させて蛍光体層とするものや、異なる蛍光体層同士を多層に積層したものであってもよい。
【0050】
前記BaMgAl1017:Euは、(M1−m,Eu(Mg1−n,MnAl1015+a+b(ただし、MはBa、Sr及びCaからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、0.9≦a≦1.1、0.9≦b≦1.1、0.02≦m≦0.6、0≦n≦0.6である。)該蛍光体は、発光効率が極めて高く、耐候性及びライフ特性に極めて優れている
【0051】
次に、前記蛍光体の一例であるBa0.6Eu0.4Mg0.75Mn0.25Al10O17の400nm励起による発光スペクトルを図5に示す。励起スペクトルを図6に示す。反射スペクトルを図7に示す。該蛍光体の色度座標はX=0.152、Y=0.678である。また、別の蛍光体としてBa0.9Eu0.1Mg0.64Mn0.34Al10O17の400nm励起による発光スペクトルを図8に示す。励起スペクトルを図9に示す。反射スペクトルを図10に示す。該蛍光体の色度座標はX=0.152、Y=0.690である。前記蛍光体は、発光スペクトルのピーク波長が500〜550nmの範囲にあって、紫外線励起により緑色発光することがわかる。また、前記蛍光体は、紫外線により効率よく励起されることがわかる。
【0052】
前記蛍光体に加えて他の蛍光体を混合して使用することもできる。例えば、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)(PO(Cl,Br):Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg)(POCl:Eu等のハロりん酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)SiO:Eu等の珪酸塩蛍光体、(Ca,Ba,Sr,Mg,Zn)Cl:Eu,Mn等のホウ酸塩蛍光体、SrAl1425:Eu、CaAl:Eu,Mn、BaMgAl1627:Eu等のアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、(Y,La,Gd)S:Eu等の希土類酸硫化物蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba,Zn)Si:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba,Zn)Si10:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba,Zn)1.8Si0.2:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba,Zn)0.9Si0.110:Eu等の窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba)Si:Eu等の酸窒化物蛍光体、(Y,Tb,Lu,Gd)(Al,Ga)12:Ce等の希土類アルミン酸塩蛍光体、ZnS:Eu、ZnGeO:Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)Ga:Euなどが好ましい。
【0053】
本発明における蛍光体は、ClをF、Br、Iから選ばれる少なくとも1種以上に代えることもできる。
【0054】
本発明における蛍光体は、所望に応じてEuやCeに代えて、又は、加えてTb、Cu、Ag、Au、Cr、Nd、Dy、Co、Ni、Tiから選択される1種以上を含有させることもできる。
【0055】
蛍光体には、必要に応じて表面にコーティングを施しても良い。これによって、蛍光体が熱、湿度、紫外線等の外的要因によって劣化することがさらに防止される。また、蛍光体表面からイオンが溶出し、他の部材に悪影響を及ぼすことも抑止される。
【0056】
前記蛍光体は次に示す方法で得ることができる。該蛍光体の構成元素のリン酸塩酸化物もしくは熱分解によって酸化物などになり得る各種化合物と塩化アンモニウムを所定量秤量し、ボールミル等で混合した後、坩堝に入れ、N,H等の還元雰囲気において、800℃から1500℃の温度で3〜10時間焼成する。得られた焼成品を湿式で粉砕、篩後、脱水、乾燥して蛍光体を得ることができる。前記蛍光体原料にフラックスを加えて混合してもよい。
【0057】
また、フラックスとしてはフッ化物、ホウ酸塩等が好ましく、蛍光体原料100重量部に対し0.01〜1.0重量部の範囲で添加する。焼成雰囲気は還元性雰囲気が好ましく、水素を数%含有する水素・窒素の混合ガス雰囲気がより好ましい。焼成温度は800〜1500℃が好ましく、目的の中心粒径の蛍光体を得ることができる。より好ましくは900〜1400℃である。
【0058】
本発明の蛍光体の中心粒径は1〜100μmの範囲が好ましく、より好ましくは5〜50μmの範囲であり、さらに好ましくは5〜15μmの範囲である。1μmより小さい蛍光体は、凝集体を形成しやすい傾向にある。これに対し、5〜50μmの粒径範囲の蛍光体は、光の吸収率及び変換効率が高い。ここで、中心粒径とは、体積基準粒度分布曲線において積算値が50%のときの粒径値であり、体積基準粒度分布曲線は、レーザ回折・散乱法により粒度分布を測定し得られるもので、具体的には、気温25℃、湿度70%の環境下において、濃度が0.05%であるヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に各物質を分散させ、レーザ回折式粒度分布測定装置(SALD−2000A)により、粒径範囲0.03μm〜700μmで測定することにより得られる。また、上記中心粒径値を有する蛍光体が頻度高く含有されていることが好ましく、頻度値は20%〜50%が好ましい。このように粒径のバラツキが小さい蛍光体を用いることにより、より色ムラが抑制され良好な色調を有する画像表示装置が得られる。前記蛍光体の残光は20mm/sec以下、好ましくは10mm/sec以下である。また、前記蛍光体に拡散剤を含有させても良い。具体的な拡散剤としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等が好適に用いられる。
【0059】
また、前記蛍光体を塗布して得られる蛍光体層の膜厚は蛍光体のみで1μm〜1mmの範囲であって、好ましくは5〜300μm、最も好ましくは5〜100μmとする。
【0060】
前記蛍光体の塗布方法としては、透光性部材にスクリーン印刷する方法がある。その他の方法としては電着法や静電塗布法、スラリー塗布、インクジェット塗布、ポッティング、孔版印刷法がある。該蛍光体を固着させる結着剤とともに構成してもよい。結着剤としては、例えば、エポキシ樹脂のような透光性樹脂や、耐光性の高いシリコーン樹脂や金属アルコキシドを出発原料としてゾルゲル法により生成される透光性無機材料とすることもできる。
【0061】
本発明は、赤色レーザ光、青色レーザ光、励起用レーザ光が画像表示部上を2次元的に走査することにより、RGBのカラー画像が投影される上記方式の他には各色レーザ光を液晶パネルやDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)等の空間変調素子8を用いて変調し、それによって得られる画像をプロジェクション光学系によって画像表示部上に投影する方式であってもよい(図2)。これによって、画像表示部上に画像が表示される。
【0062】
その他の形態として、第1の光源と第2の光源との出射光の光軸上に液晶レンズ素子を設けるものがある。第1の光源と第2の光源との出射光は、液晶レンズ素子に入射し液晶レンズ素子を変調して光の位相を変化させることで、赤色と青色についてもスペックルノイズを減少させることができる。液晶レンズ素子は、光の位相を変化させる上で、60Hz以上の周波数で変調する必要がある。強誘電液晶は応答速度が数μs、液晶高分子やポリマーなどを用いた複合液晶膜は応答速度が数十μsと優れている。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上、説明したように、本発明によれば簡易な手段でスペックルノイズの影響を抑制し、画像表示部は大型化を実現して、画像表示装置を小型化したものが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係る画像表示装置亜の模式的斜視図である。
【図2】本発明の別の実施形態に係る画像表示装置の模式的斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像表示部の模式的断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る画像表示部の模式的断面図である。
【図5】本発明に用いられる蛍光体の発光スペクトルである。
【図6】本発明に用いられる蛍光体の励起スペクトルである。
【図7】本発明に用いられる蛍光体の反射スペクトルである。
【図8】本発明に用いられる蛍光体の発光スペクトルである。
【図9】本発明に用いられる蛍光体の励起スペクトルである。
【図10】本発明に用いられる蛍光体の反射スペクトルである。
【符号の説明】
【0065】
1…光源、2…コリメートレンズ、3…ミラー、4a…垂直走査鏡、5a…平行走査鏡、6…投射レンズ、7…画像表示部、8…空間変調素子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる波長の光を出射する複数の光源と、前記複数の光源から出射された光のうち少なくとも一つを表示する画像表示部と、を備えてなる画像表示装置において、
前記光源は、半導体レーザよりなる光源であって、赤色レーザ光を出射する第1の光源と、青色レーザ光を出射する第2の光源と、前記第1の光源及び第2の光源よりも発振波長が短波長であるレーザ光を出射する第3の光源とを有しており、
前記画像表示部には前記第3の光源からの光で励起されて緑色を発する蛍光体が塗布されていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記第3の光源は、発振波長が420nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記画像表示部は、透光性部材と蛍光体層との積層体であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記蛍光体は、BaMgAl1017:Eu,Mn、BaMgAl1627:Eu,Mn、SrGa:Eu、ZnGeO:Mn、ZnS:Cu、SrAl:Eu、Ca:Ce,Tb、CaAl11:Ce,Tb、BaSiO:Eu、BaSi:Eu、(Sr,Ca)Si:Euからなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記蛍光体は、前記画像表示部にストライプ状、ドット状、網目状、又は矩形状に塗布されていることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記第2の光源及び/又は、第3の光源は、窒化物半導体レーザよりなることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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