説明

画像記録装置、及び、画像記録方法

【課題】カール押さえ部材の破損を防止することを目的とする。
【解決手段】媒体の幅方向の一方側端部を覆って押さえる第1の押さえ部と第1の押さえ部よりも媒体の搬送方向上流側に位置する第1の上流側接続部を有し、幅方向に移動可能であり、第1の押さえ部は第1の上流側接続部よりも幅方向の媒体側に突出し、第1の押さえ部は紙端検出センサーの検出位置よりも搬送方向下流側に位置し、第1の押さえ部の媒体側端面と第1の上流側接続部の媒体側端面がR形状で接続されている可動押さえ部と、幅方向の他方側の媒体端部を覆って押さえる第2の押さえ部と第2の押さえ部よりも搬送方向上流側に位置する第2の上流側接続部を有し、第2の押さえ部は第2の上流側接続部よりも幅方向の媒体側に突出し、第2の上流側接続部は供給ローラーよりも搬送方向上流側に位置する基準押さえ部と、を有する画像記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置、及び、画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像を記録する媒体にカールが生じた場合の対策として、媒体の両側部に薄い樹脂シートからなるカール押さえ部材を設け、カール押さえ部材とプラテン(媒体支持部)の間に媒体の端部を挿入することにより、カールによる不具合を回避する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−197799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カール押さえ部材では、カール押さえ部材を取り付ける部材の幅に応じて幅が変化したり、媒体の端部がセンサーに検出されるように媒体の端部をカール押さえ部材から露出させるために幅が変化したりする。
カール押さえ部材とプラテンの間に媒体の端部が挿入する部分において幅が変化していると、幅が変化する部分に力が掛かり易い。特に、幅が変化する部分の付け根部が直角形状であると、その付け根部に力が集中して亀裂が生じ、カール押さえ部材が破損してしまう。
【0005】
そこで、本発明では、カール押さえ部材の破損を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する為の主たる発明は、(A)媒体に画像を記録する記録部と、(B)画像記録領域において前記媒体を支持する媒体支持部と、(C)前記画像記録領域に前記媒体を供給する供給ローラーと、前記画像記録領域から前記媒体を排出する排出ローラーと、を有し、前記媒体を搬送方向の上流側から下流側に搬送する搬送部と、(D)前記搬送方向の前記上流側において、前記搬送方向と交差する幅方向の一方側の前記媒体の端部を検出するセンサーと、(E)前記幅方向の前記一方側の前記媒体の端部を覆って押さえる第1の押さえ部と、前記第1の押さえ部よりも前記搬送方向の前記上流側に位置する第1の上流側接続部と、を有し、前記幅方向に移動可能な可動押さえ部であって、前記第1の押さえ部は前記第1の上流側接続部よりも前記幅方向の前記媒体側に突出し、前記第1の押さえ部は前記センサーの検出位置よりも前記搬送方向の前記下流側に位置し、前記第1の押さえ部の前記媒体側の端面と前記第1の上流側接続部の前記媒体側の端面がR形状で接続されている可動押さえ部と、(F)前記幅方向の前記他方側の前記媒体の端部を覆って押さえる第2の押さえ部と、前記第2の押さえ部よりも前記搬送方向の前記上流側に位置する第2の上流側接続部と、を有する基準押さえ部であって、前記第2の押さえ部は前記第2の上流側接続部よりも前記幅方向の前記媒体側に突出し、前記第2の上流側接続部は前記供給ローラーよりも前記搬送方向の前記上流側に位置する基準押さえ部と、を有することを特徴とする画像記録装置である。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】プリンターの全体構成ブロック図である。
【図2】プリンターの概略を示す断面図である。
【図3】プリンターの概略を示す上面図である。
【図4】図4Aから図4Cは本実施形態のカール押さえ部材を説明する図である。
【図5】図5A及び図5Bは基準カール押さえ部材取付時のロール紙の端部の様子を示す図である。
【図6】図6A及び図6Bは比較例のカール押さえ部を説明する図である。
【図7】図7Aから図7Dは比較例のカール押さえ部材における問題点を説明する図である。
【図8】変形例の可動カール押さえ部材を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0009】
即ち、(A)媒体に画像を記録する記録部と、(B)画像記録領域において前記媒体を支持する媒体支持部と、(C)前記画像記録領域に前記媒体を供給する供給ローラーと、前記画像記録領域から前記媒体を排出する排出ローラーと、を有し、前記媒体を搬送方向の上流側から下流側に搬送する搬送部と、(D)前記搬送方向の前記上流側において、前記搬送方向と交差する幅方向の一方側の前記媒体の端部を検出するセンサーと、(E)前記幅方向の前記一方側の前記媒体の端部を覆って押さえる第1の押さえ部と、前記第1の押さえ部よりも前記搬送方向の前記上流側に位置する第1の上流側接続部と、を有し、前記幅方向に移動可能な可動押さえ部であって、前記第1の押さえ部は前記第1の上流側接続部よりも前記幅方向の前記媒体側に突出し、前記第1の押さえ部は前記センサーの検出位置よりも前記搬送方向の前記下流側に位置し、前記第1の押さえ部の前記媒体側の端面と前記第1の上流側接続部の前記媒体側の端面がR形状で接続されている可動押さえ部と、(F)前記幅方向の前記他方側の前記媒体の端部を覆って押さえる第2の押さえ部と、前記第2の押さえ部よりも前記搬送方向の前記上流側に位置する第2の上流側接続部と、を有する基準押さえ部であって、前記第2の押さえ部は前記第2の上流側接続部よりも前記幅方向の前記媒体側に突出し、前記第2の上流側接続部は前記供給ローラーよりも前記搬送方向の前記上流側に位置する基準押さえ部と、を有することを特徴とする画像記録装置である。
このような画像記録装置によれば、カール押さえ部材の破損を防止することができる。
【0010】
かかる画像記録装置であって、前記第2の押さえ部の前記媒体側の端面と前記第2の上流側接続部の前記媒体側の端面がR形状で接続されていること。
このような画像記録装置によれば、カール押さえ部材の破損を防止することができる。
【0011】
かかる画像記録装置であって、前記可動押さえ部は、前記第1の押さえ部よりも前記搬送方向の前記下流側に位置する第1の下流側接続部を有し、前記第1の押さえ部は前記第1の下流側接続部よりも前記幅方向の前記媒体側に突出し、前記第1の下流側接続部は前記排出ローラーよりも前記搬送方向の前記下流側に位置すること。
このような画像記録装置によれば、カール押さえ部材の破損を防止することができる。
【0012】
かかる画像記録装置であって、前記第1の押さえ部の前記媒体側の端面と前記第1の下流側接続部の前記媒体側の端面がR形状で接続されていること。
このような画像記録装置によれば、カール押さえ部材の破損を防止することができる。
【0013】
かかる画像記録装置であって、前記基準押さえ部は、前記第2の押さえ部よりも前記搬送方向の前記下流側に位置する第2の下流側接続部を有し、前記第2の押さえ部は前記第2の下流側接続部よりも前記幅方向の前記媒体側に突出し、前記第2の下流側接続部は前記排出ローラーよりも前記搬送方向の前記下流側に位置すること。
このような画像記録装置によれば、カール押さえ部材の破損を防止することができる。
【0014】
かかる画像記録装置であって、前記第2の押さえ部の前記媒体側の端面と前記第2の下流側接続部の前記媒体側の端面がR形状で接続されていること。
このような画像記録装置によれば、カール押さえ部材の破損を防止することができる。
【0015】
また、(A)媒体に画像を記録する記録部と、(B)画像記録領域において前記媒体を支持する媒体支持部と、(C)前記画像記録領域に前記媒体を供給する供給ローラーと、前記画像記録領域から前記媒体を排出する排出ローラーと、を有し、前記媒体を搬送方向の上流側から下流側に搬送する搬送部と、(D)前記搬送方向の前記上流側において、前記搬送方向と交差する幅方向の一方側の前記媒体の端部を検出するセンサーと、(E)前記幅方向の前記一方側の前記媒体の端部を覆って押さえる第1の押さえ部と、前記第1の押さえ部よりも前記搬送方向の前記上流側に位置する第1の上流側接続部と、を有し、前記幅方向に移動可能な可動押さえ部であって、前記第1の押さえ部は前記第1の上流側接続部よりも前記幅方向の前記媒体側に突出し、前記第1の押さえ部は前記センサーの検出位置よりも前記搬送方向の前記下流側に位置し、前記第1の押さえ部の前記媒体側の端面と前記第1の上流側接続部の前記媒体側の端面がR形状で接続されている可動押さえ部と、(F)前記幅方向の前記他方側の前記媒体の端部を覆って押さえる第2の押さえ部と、前記第2の押さえ部よりも前記搬送方向の前記上流側に位置する第2の上流側接続部と、を有する基準押さえ部であって、前記第2の押さえ部は前記第2の上流側接続部よりも前記幅方向の前記媒体側に突出し、前記第2の上流側接続部は前記供給ローラーよりも前記搬送方向の前記上流側に位置する基準押さえ部と、(G)を有する画像記録装置を用いて前記媒体に画像を記録することを特徴とする画像記録方法である。
このような画像記録方法によれば、カール押さえ部材を破損することなく、媒体に画像を記録することができる。
【0016】
===プリンターについて===
以下、「画像記録装置」の一例として示される「液体噴射装置」としてのインクジェットプリンター(以下、プリンター)を例に挙げて実施形態を説明する。
【0017】
図1は、プリンター1の全体構成ブロック図である。本実施形態では、プリンター1がコンピューター2に通信可能に接続されており、コンピューター2が、画像を印刷させるための印刷データをプリンター1に出力する。なお、コンピューター2の機能がプリンター1内に内蔵されていてもよい。
【0018】
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11はコンピューター2とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12はプリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12はユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、プリンター1内の状況を検出器群40が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0019】
図2は、プリンター1の概略を示す断面図である。本実施形態のプリンター1は、ロール状の媒体であるロール紙Rに画像を印刷する。なお、媒体は、紙に限らず、例えばフィルムや布地でもよい。搬送ユニット20(搬送部に相当)は、ロール紙Rを搬送方向の上流側から下流側に搬送させるものである。ロール紙ホルダー22に保持されているロール紙Rは、供給ローラー21等によって印刷領域(画像記録領域に相当)に供給される。印刷領域のロール紙Rに画像が印刷された後、印刷済みのロール紙Rは、排出ローラー23等によって印刷領域から排出され、巻き取りローラー24によってロール状に巻き取られる。
【0020】
記録ユニット30(記録部に相当)は、印刷領域のロール紙Rに画像を印刷するものであり、プラテン31(媒体支持部に相当)、キャリッジ32、ヘッド33を有する。印刷領域では、ロール紙Rは、ヘッド33と対向するように、印刷面とは反対側の裏面側からプラテン31によって支持される。キャリッジ32は、ガイド軸(不図示)に案内されながら、ヘッド33をX方向(ロール紙Rの搬送方向)及びY方向(搬送方向と交差する方向であるロール紙Rの幅方向)に移動させる。ヘッド33はロール紙Rにインクを吐出するためのものであり、ヘッド33の下面にはインク吐出部であるノズルNzが複数設けられている。
【0021】
なお、ノズルからのインク吐出方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて圧力室を膨張・収縮させてインクを吐出させるピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によってインクを吐出させるサーマル方式でもよい。
【0022】
ヘッド33はキャリッジ31と共にX方向及びY方向に移動しながら、印刷領域上のロール紙Rに向けてインクを吐出する。その結果、ロール紙Rには2次元の画像が印刷される。印刷領域に位置するロール紙Rの印刷が終了すると、印刷領域には印刷が未だなされていないロール紙Rの部分が搬送ユニット20により供給され、印刷領域のロール紙Rに再び画像が印刷される。
なお、キャリッジ32及びヘッド33は、図2に示すように、印刷領域よりも搬送方向の上流側に退避可能である。そのため、ロール紙Rの幅方向における端部を押さえるカール押さえ部材50,51(後述)の着脱を容易に行うことができる。
【0023】
また、印刷領域に位置するロール紙Rを所定の位置に保持するために、プラテン31の下からロール紙Rを吸引吸着する。そのために、プラテン31には、プラテン31の下部の圧力室35と連通する複数の吸引孔34が設けられている。ファン36によって圧力室35内の空気を吸引すると、プラテン31上のロール紙Rは所定の位置に吸引吸着される。その結果、ロール紙R上における正しい位置にインクが着弾し、印刷画像の画質劣化を抑制できる。ただし、これに限らず、例えば、ロール紙Rを静電吸着してもよい。
【0024】
また、プラテン31を加熱することによって、プラテン31上のロール紙Rに着弾したインクの乾燥を促進する。その結果、印刷画像の滲みを抑制することができる。そのために、プラテン31内部にヒーター37(例えばニクロム線)を配設するとよい。
【0025】
===ロール紙Rのカールを押さえる方法===
<カール押さえ部材50,51について>
図3は、プリンター1の概略を示す上面図である。図4Aから図4Cは、本実施形態のカール押さえ部材50,51を説明する図である。印刷領域において、ロール紙Rの幅方向における端部R1,R2にカールが生じた状態で印刷を行うと、例えば、ロール紙R上における正しい位置にインクが着弾せずに印刷画像の画質が劣化する等の不具合が生じる。そこで、本実施形態では、印刷領域のロール紙Rの端部R1,R2をカール押さえ部材50,51で上から覆って押さえる。つまり、カール押さえ部材50,51は、ロール紙Rの端部R1,R2がカールしてプラテン31から離間する力(所謂浮き上がり力)を押さえる。そうすることで、印刷領域におけるロール紙Rのカールによる不具合を解消することができる。
【0026】
本実施形態のカール押さえ部材50,51は、柔軟性および可撓性を有した軟弾性材からなる帯状の薄い部材(フィルム状の部材)とする。例えば、カール押さえ部材50,51のヤング率を10000MPa以下とし、厚みを0.5mm以下とし、また、素材をPET樹脂、ポリイミド、シリコンゴム等とする。ただし、これに限らず、他の部材であってもよい。
【0027】
以下では、ロール紙Rの幅方向の奥側端部R1(他方側の端部に相当)を押さえるカール押さえ部材を「基準カール押さえ部材50(基準押さえ部に相当)」と呼び、ロール紙Rの幅方向の手前側端部R2(一方側の端部に相当)を押さえるカール押さえ部材を「可動カール押さえ部材51(可動押さえ部に相当)」と呼ぶ。基準カール押さえ部材50の幅方向における位置は変動せずに一定とする。一方、可動カール押さえ部材51の幅方向における位置はロール紙Rの幅長さに応じて変動する。即ち、幅方向の奥側を基準とし、可動カール押さえ部材50は幅方向に移動可能とする。但し、これに限らず、幅方向奥側および手前側に位置する両方のカール押さえ部材を幅方向に移動可能としてもよい。
【0028】
基準カール押さえ部材50は、図4Aに示すように、上層部501と下層部502の2層のフィルム部材から構成される。上層部501に比べて下層部502は、搬送方向および幅方向の長さが短い。そして、下層部502は上層部501の搬送方向における中央部に位置し、上層部501は下層部502に対して幅方向の手前側(ロール紙側)に突出している。
【0029】
基準カール押さえ部材50は、プラテン31の支持面(上面)と下層部502を接触させた状態で、プリンター1(基体)に取り付けられる。そうすると、上層部501はプラテン31の支持面から離間するので、上層部501とプラテン31の間の隙間にロール紙Rの端部R1を挿入することができる。言い換えれば、上層部501によってロール紙Rの端部R1を上から覆って押さえることができる。なお、基準カール押さえ部材50がプリンター1に取り付けられた際に、下層部502は印刷領域の搬送方向の長さに亘って位置する。
【0030】
基準カール押さえ部材50の上層部501は、「押さえ部505(第2の押さえ部に相当)」と、押さえ部505よりも搬送方向上流側に位置する「上流側接続部506(第2の上流側接続部に相当)」と、上流側接続部506よりも搬送方向上流側に位置する「上流側取付部507」と、押さえ部505よりも搬送方向下流側に位置する「下流側接続部508(第2の下流側接続部に相当)」と、下流側接続部508よりも搬送方向下流側に位置する「下流側取付部509」と、を有する。
【0031】
基準カール押さえ部材50をプリンター1に取り付ける取付部材の幅に応じて、上流側取付部507及び下流側取付部509の幅方向の幅は「W2」となっている。一方、押さえ部505によってロール紙Rの端部R1を覆って押さえるように、押さえ部505の幅方向の幅はW2よりも広い「W1」となっている。よって、基準カール押さえ部材50では、押さえ部505と上流側取付部507の間に幅がW2である上流側接続部506と、押さえ部505と下流側取付部509の間に幅がW2である下流側接続部508とが設けられている。
【0032】
そして、押さえ部505は、上流側接続部506及び下流側接続部508よりも幅が広い分だけ、上流側接続部506及び下流側接続部508よりも幅方向の手前側(ロール紙側)に突出している。前述のように上層部501である押さえ部505は下層部502によってプラテン31の支持面から離間する。よって、上層部の中の押さえ部505とプラテン31の間の隙間にロール紙Rの端部R1を挿入することとなり、上層部501の中の押さえ部505が、ロール紙Rの幅方向奥側の端部R1を覆って押さえる役割を担う。
【0033】
そして、図3や図4Aに示すように、上流側接続部506は供給ローラー21よりも搬送方向上流側に位置し、下流側接続部508は排出ローラー23よりも搬送方向下流側に位置する。よって、ロール紙Rの幅方向奥側の端部R1は、供給ローラー21から供給された時点で、押さえ部505の幅方向手前側の端面よりも幅方向の奥側に位置し、押さえ部505によって上から覆われていることになる。また、ロール紙Rの幅方向奥側の端部R1は、排出ローラー23によって排出されるまで、押さえ部505の幅方向手前側の端面よりも幅方向の奥側に位置し、押さえ部505によって上から覆われていることになる。
【0034】
図4Cは、押さえ部505と上流側接続部506の境界部である上流側境界部503を説明する図である。押さえ部505の幅W1と上流側接続部506の幅W2は異なるため、上流側境界部503では、幅が変化し、段差が生じている。説明のため、押さえ部505から上流側接続部506にかけて、幅が変化し始める地点を「頂部t」と呼び、幅が変化し終える地点を「付け根部b」と呼ぶ。
【0035】
本実施形態の基準カール押さえ部材50では、付け根部bをR形状とする。言い換えると、押さえ部505の幅方向手前側(ロール紙側)の端面505s(一点鎖線部分)と、上流側接続部506の幅方向手前側(ロール紙側)の端面506s(点線部分)がR形状で接続されている。また、頂部tもR形状とする。ただし、頂部tは、R形状に加工するに限らず、例えば、面取り加工を施してもよい。
【0036】
同様に、図4Aに示すように、押さえ部505と下流側接続部508の境界部である下流側境界部504において、押さえ部505から下流側接続部508にかけて幅が変化し終える地点である付け根部bをR形状とする。即ち、押さえ部505の幅方向手前側(ロール紙側)の端面と下流側接続部508の幅方向手前側の端面がR形状で接続されている。また、押さえ部505から下流側接続部508にかけて幅が変化し始める地点である頂部tもR形状とする。
【0037】
一方、ロール紙Rの幅方向手前側の端部R2を覆って押さえる可動カール押さえ部材51も同様に、図4Bに示すように、上層部511と下層部512の2層のフィルム部材から構成される。上層部511は下層部512に対して幅方向の奥側(ロール紙側)に突出する。そのため、上層部511とプラテン31の間に隙間が生じ、その隙間にロール紙Rの端部R2を挿入することができる。
【0038】
可動カール押さえ部材51の上層部511は、「押さえ部515(第1の押さえ部に相当)」と、押さえ部515よりも搬送方向上流側に位置する「上流側接続部516(第1の上流側接続部に相当)」と、上流側接続部516よりも搬送方向上流側に位置する「上流側取付部517」と、押さえ部515よりも搬送方向下流側に位置する「下流側接続部518(第1の下流側接続部に相当)」と、下流側接続部518よりも搬送方向下流側に位置する「下流側取付部519」と、を有する。
【0039】
基準カール押さえ部材50と同様に、可動カール押さえ部材51の押さえ部515の幅は「W1」であり、上流側接続部516、上流側取付部517、下流側接続部518、及び、下流側取付部519の幅W2は押さえ部515の幅W1よりも狭い。そして、押さえ部515は、上流側接続部516及び下流側接続部518よりも幅方向奥側(ロール紙側)に突出している。そのため、上層部511の中の押さえ部515が、ロール紙Rの幅方向手前側の端部R2を覆って押さえる役割を担う。
【0040】
ここで、本実施形態のプリンター1は、例えば、ロール紙Rの幅長さを測定するために、ロール紙Rの端部を検出する紙端検出センサー41(センサーに相当)を有する。なお、紙端検出センサー41として例えばファイバーセンサー等が挙げられる。図2に示すように、紙端検出センサー41は、キャリッジ32に取り付けられ、キャリッジ32と共に搬送方向および幅方向に移動可能とする。本実施形態では、幅方向の奥側を基準として、ロール紙Rの幅長さに応じて、可動カール押さえ部材51の搬送方向の位置を変動させる。そこで、紙端検出センサー41にロール紙Rの幅方向手前側の端部R2を検出させる。また、図2に示すように、プラテン31(又は印刷領域)よりも搬送方向の上流側であり、且つ、供給ローラー21よりも搬送方向の下流側の位置において、紙端検出センサー41にロール紙Rの端部R2を検出させる。
【0041】
紙端検出センサー41は、ロール紙Rの有無(検出する素材の違い)によって、ロール紙Rの端部R2の搬送方向における位置を検出する。そのため、紙端検出センサー41による検出位置においてロール紙Rの端部R2が可動カール押さえ部材51から露出していないと、紙端検出センサー41はロール紙Rの端部R2の幅方向における正しい位置を検出することが出来ない。
【0042】
そこで、可動カール押さえ部材51では、押さえ部515を紙端検出センサー41の検出位置よりも搬送方向の下流側に位置させる。そうすることで、検出位置では、押さえ部515よりも幅の狭い上流側接続部516が位置することになり、ロール紙Rの幅方向手前側の端部R2を可動カール押さえ部材51から露出させることができる。よって、紙端検出センサー41は、ロール紙Rの幅方向手前側の端部R2の幅方向における正しい位置を検出することができる。
【0043】
なお、本実施形態の可動カール押さえ部材51では、下流側接続部518と上流側接続部516の搬送方向の長さを同程度とする。よって、可動カール押さえ部材51では、下流側接続部518が排出ローラー23よりも搬送方向上流側に位置する。
【0044】
また、可動カール押さえ部材51の押さえ部515と上流側接続部516の境界部である上流側境界部513では、幅が変化し、段差が生じている。そして、押さえ部515から上流側接続部516にかけて幅が変化し終える地点である「付け根部b」をR形状とする。言い換えると、可動カール押さえ部材51の押さえ部515の幅方向奥側(ロール紙側)の端面と上流側接続部516の幅方向奥側の端面がR形状で接続される。なお、押さえ部515から上流側接続部516にかけて幅が変化し始める地点である「頂部t」もR形状とする。
【0045】
同様に、可動カール押さえ部材51の押さえ部515と下流側接続部518の境界部である下流側境界部514でも、幅が変化し、段差が生じている。そして、押さえ部515から下流側接続部518にかけて幅が変化し終える地点である「付け根部b」をR形状とする。言い換えると、可動カール押さえ部材51の押さえ部515の幅方向奥側の端面と下流側接続部518の幅方向奥側の端面がR形状で接続される。なお、押さえ部515から下流側接続部518にかけて幅が変化し始める地点である「頂部t」もR形状とする。
【0046】
<カール押さえ部材50,51の取り付け方について>
次に、プリンター1(基体部)に対するカール押さえ部材50,51の取り付け方について説明する。プリンター1には、図3に示すように、プラテン31よりも搬送方向の上流側および下流側に、カール押さえ部材50,51を取り付ける「上流側取付部材60A」と「下流側取付部材60B」が配設されている。上流側取付部材60Aは、ばね64と係合している。よって、調整レバー63によってばね64を伸縮させることにより、上流側取付部材60Aは搬送方向に変位可能となっている。一方、下流側取付部材60Bは、搬送方向に移動することなくプリンター1に固定して取り付けられている。
【0047】
上流側取付部材60Aおよび下流側取付部材60Bの上面には、カール押さえ部材50,51の幅方向における取り付け位置に応じて、幅方向の奥側と手前側に穴が設けられている。その穴にカール押さえ部材50,51の上流側取付部507,517又は下流側取付部509,519を合わせた状態で、穴に固定用ピン61を嵌合させて固定用ピン61を締め付けることによって、カール押さえ部材50,51をプリンター1に取り付ける。なお、カール押さえ部材50,51はフィルム部材であるため、カール押さえ部材50,51と固定用ピン61の間に固定用補助部材62を設けることで、取り付け強度を高めることができる。取り付け時に、固定用補助部材62を挟んでもよいし、カール押さえ部材50,51に予め固定用補助部材62を取り付けてもよい。
【0048】
なお、可動カール押さえ部材51はロール紙Rの幅に応じて幅方向における取付位置が変動する。そこで、可動カール押さえ部材51が幅方向における所望の位置に取り付けられるように、上流側取付部材60Aおよび下流側取付部材60Bに設ける穴を幅方向に延びた長穴にするとよい。長穴とする場合、基準カール押さえ部材50を取り付ける穴と可動カール押さえ部材51を取り付ける穴を共通化してもよい。ただし、これに限らず、上流側取付部材60Aおよび下流側取付部材60Bに幅方向の所定の間隔おきに複数の穴を設けてもよい。また、固定用ピン61によってカール押さえ部材50,51をプリンター1に取り付けているが、これに限らず他の取り付け方であってもよい。
【0049】
固定用ピン61によってカール押さえ部材50,51を上流側取付部材60A及び下流側取付部材60Bに取り付けた後、調整レバー63によって上流側取付部材60Aを搬送方向上流側に移動する。その結果、カール押さえ部材50,51は搬送方向下流側を基準に搬送方向上流側に引っ張られ、カール押さえ部材50,51は弛むことなくプリンター1に取り付けられる。即ち、カール押さえ部材50,51がプラテン31の支持面に対して浮き上がってしまうことを防止でき、ロール紙Rの端部R1,R1を上から押さえることができる。また、カール押さえ部材50,51とヘッド33のノズル面が接触してしまうことを防止できる。
【0050】
また、図2に示すように、上流側取付部材60Aおよび下流側取付部材60Bは、プラテン31の支持面よりも鉛直方向の下側に位置する。よって、上流側取付部材60Aを搬送方向上流側に移動させることによって、カール押さえ部材50,51の搬送方向上流側の端部を、搬送方向に対して斜め下方に引っ張ることができる。その結果、カール押さえ部材50,51は、ロール紙Rの端部R1,R2をより確実に上から押さえることができる。なお、上流側取付部材60Aおよび下流側取付部材60Bをプラテン31の支持面よりも下に下げるに限らず、上流側取付部材60Aおよび下流側取付部材60Bが少なくともプラテン31の支持面と同じ高さであれば、ロール紙Rの端部R1,R2を上から押さえることができる。
【0051】
図5A及び図5Bは、基準カール押さえ部材50を取り付ける時のロール紙Rの端部R1の様子を示す図である。図は、搬送方向から見た基準カール押さえ部材50等の断面図である。カール押さえ部材50,51は印刷領域にロール紙Rが位置する状態で取り付けられる。このとき、図5Aに示すように、ロール紙Rの端部R1がカールしている場合があるので、まず、基準カール押さえ部材50の下層部502の奥側端部をプラテン31の支持面に載せる。そうすると、ロール紙Rの端部R1とプラテン31の支持面と基準カール押さえ部材50によって、密閉空間Aが構成される。
【0052】
また、カール押さえ部材50,51を取り付ける際にプラテン31の吸引孔34から空気を吸引する。その結果、密閉空間Aの空気が吸引され、図5Bに示すように、ロール紙Rの端部R1はプラテン31の支持面に密着する。その後、基準カール押さえ部材50の上層部501で、プラテン31の支持面に密着したロール紙Rの端部R1を上から覆う。その結果、ロール紙Rの端部R1が折れることなく、基準カール押さえ部材50によってロール紙Rの端部R1を上から覆って押さえることができる。同様に、ロール紙Rの幅方向手前側の端部R2もプラテン31の支持面に密着させた状態で、可動カール押さえ部材51で上から覆う。
【0053】
なお、ロール紙Rの幅長さに応じて、可動カール押さえ部材51は幅方向に移動可能としている。そのため、図3に示すように、可動カール押さえ部材51よりも幅方向の手前側に、プラテン31に設けられた吸引孔34が位置する場合がある。そこで、可動カール押さえ部材51よりも幅方向手前側の吸引孔34をカバー部材65によって覆う。可動カール押さえ部材51を取り付ける際にプラテン31と可動カール押さえ部材51の間にカバー部材65を挟むようにしてもよいし、可動カール押さえ部材51の端部にカバー部材65の先端を予め接続していてもよい。その結果、ロール紙Rの下に位置する吸引孔34からの吸引力が低下してしまうことを防止できる。露出するプラテン31上の吸引孔34がカバー部材65によって全て覆われるように、カバー部材65の搬送方向の長さはプラテン31の搬送方向の長さ以上とし、また、カバー部材65の幅方向の長さは巻き取り装置66によって調整可能とする。
【0054】
<比較例のカール押さえ部材について>
図6A及び図6Bは、比較例のカール押さえ部50’51’を説明する図である。図6Aは比較例の可動カール押さえ部材51’の上流側境界部513’を説明する図である。比較例では、上流側境界部513’における付け根部bがR形状ではなく、直角形状(90度)に加工されている。即ち、押さえ部515’の幅方向奥側の端面515’sと上流側接続部516’の幅方向奥側の端面516’sが直角形状で接続されている。なお、図示しないが、比較例では、可動カール押さえ部材51’の下流側境界部514’の付け根部b、基準カール押さえ部材50’の上流側境界部503’の付け根部b、及び、下流側境界部504’の付け根部bも、R形状ではなく、直角形状であるとする。
【0055】
また、本実施形態の基準カール押さえ部材50では、図4Aに示すように、上流側接続部506(上流側境界部503)が供給ローラー21よりも搬送方向上流側に位置し、且つ、下流側接続部508(下流側境界部504)が排出ローラー23よりも搬送方向下流側に位置する。これに対して、比較例の基準カール押さえ部材50’では、図6Bに示すように、上流側接続部506’(上流側境界部503’)が供給ローラー21よりも搬送方向下流側に位置し、且つ、下流側接続部508’(下流側境界部504’)が排出ローラー23よりも搬送方向上流側に位置する。
【0056】
図7Aから図7Dは、比較例のカール押さえ部材50’51’における問題点を説明する図である。以下、比較例の基準カール押さえ部材50’の上流側境界部503’をロール紙Rが通過する状況を例に挙げて説明する。図6Bに示すように、比較例の基準カール押さえ部材50’では、上流側接続部506’(上流側境界部503’)が供給ローラー21よりも搬送方向下流側に位置する。そのため、ロール紙Rの端部R1は供給ローラー21から供給された後に押さえ部505’で上から覆われることになる。言い換えると、ロール紙Rの端部R1は供給ローラー21から供給された後にプラテン31と押さえ部505’(上層部501’)の間に入ることになる。
【0057】
図7Aは、ロール紙Rが正常に上流側境界部503’を通過する様子を示す図である。図7Aの左図は上面図であり、図7Aの右図は断面図である。図7Aでは、ロール紙Rが搬送方向に沿って搬送され、また、供給ローラー21からロール紙Rが弛むことなく供給されるとする。この場合、ロール紙Rの端部R1が、上流側境界部503’の付け根部bや押さえ部505’に接触することなく、プラテン31と押さえ部505’(上層部501’)の間に入る。
【0058】
図7Bは、ロール紙Rが搬送方向に対して斜めに搬送される様子を示す上面図である。ロール紙Rを交換したばかりの不安定時や、供給ローラー21の幅方向におけるバランスが悪い場合に(例えば奥側と手前側で供給量がずれている場合に)、ロール紙Rは、搬送方向に対して斜めに搬送されたり、蛇行しながら搬送されたりする。例えば、図7Bに示すように、搬送方向に対して斜め下方向にロール紙Rが搬送されると、ロール紙Rが上流側境界部503’を通過する際に、ロール紙Rの端部R1と上流側境界部503’の付け根部bが接触する虞がある。
【0059】
カール押さえ部材の製造方法の一例として、フィルム部材から型抜きする方法が挙げられる。比較例の基準カール押さえ部材50’のように上流側境界部503’の付け根部bが直角形状であると、型抜きする際に付け根部bに亀裂が生じ易い。よって、図7Bに示すようにロール紙Rが搬送方向に対して斜め方向に搬送されたり、蛇行しながら搬送されたりして、ロール紙Rの端部R1と付け根部bが接触すると、製造時に生じた亀裂が進行してしまう。その結果、比較例の基準カール押さえ部材50’の破損に繋がる。
【0060】
図7Cは、ロール紙Rが押さえ部505’(上層部501’)に乗り上げた様子を示す図である。図7Cの左図は上面図であり、図7Cの右図は断面図である。ロール紙Rが蛇行しながら搬送される場合、ロール紙Rが幅方向手前側に蛇行すると、ロール紙Rの端部R1が押さえ部505’とプラテン31の間から外れてしまう。その後、ロール紙Rが幅方向奥側に蛇行する際に、ロール紙Rの端部R1が押さえ部505’とプラテン31の間に入らずに、図7Cに示すように、ロール紙Rの端部R1が押さえ部505’の上に乗り上げてしまう場合がある。そうすると、ロール紙Rの自重によって、プラテン31から離間する押さえ部505’(上層部501’)に鉛直方向下向きの力が掛かってしまう。
【0061】
比較例の基準カール押さえ部材50’のように上流側境界部503’の付け根部bが直角形状であると、ロール紙Rの自重による鉛直方向の下向きの力が付け根部bに集中してしまう。その結果、付け根部bに亀裂が生じたり、製造時に生じた亀裂が進行したりして、比較例の基準カール押さえ部材50’の破損に繋がる。
【0062】
図7Dは、ロール紙Rが弛んで供給された様子を示す図である。図7Dの左図は上面図であり、図7Dの右図は断面図である。供給ローラー21によるロール紙Rの供給量(供給力)と排出ローラー23によるロール紙Rの排出量(引っ張り力)のバランスが取れないと、図7Dに示すように、ロール紙Rが弛んで供給されてしまう。そうすると、ロール紙Rの端部R1が押さえ部505’(上層部501’)とプラテン31の間に入る際に、押さえ部505’に鉛直方向上向きの力が掛かってしまう。
【0063】
比較例の基準カール押さえ部材50’のように上流側境界部503’の付け根部bが直角形状であると、ロール紙Rの弛みによる鉛直方向上向きの力が付け根部bに集中してしまう。その結果、付け根部bに亀裂が生じたり、製造時に生じた亀裂が進行したりして、比較例の基準カール押さえ部材50’の破損に繋がる。
【0064】
<本実施形態のカール押さえ部材について>
そこで、本実施形態の基準カール押さえ部材50では、図4Aに示すように、上流側接続部506(上流側境界部503)が供給ローラー21よりも搬送方向上流側に位置するようにする。そうすることで、図3に示すように、ロール紙Rの幅方向奥側の端部R1は、供給ローラー21から供給された時点で押さえ部505の幅方向手前側の端面よりも幅方向奥側に位置し、押さえ部505によって上から覆われていることになる。
【0065】
よって、ロール紙Rが蛇行して搬送されたり、ロール紙Rが弛んで供給されたりしても、上流側境界部503の付け根部bとロール紙Rの端部R1が接触したり(図7B)、ロール紙Rが押さえ部505に乗り上げて付け根部bに鉛直方向下向きの力を加えたり(図7C)、ロール紙Rの弛みで付け根部bに鉛直方向上向きの力を加えたり(図7D)することを防止できる。その結果、付け根部bに亀裂を生じさせたり、製造時に生じた亀裂を進行させたりすることを防止でき、基準カール押さえ部材50の破損を防止できる。
【0066】
更に、本実施形態の基準カール押さえ部材50では、図4Cに示すように、上流側境界部503の付け根部bをR形状とする。そうすることで、基準カール押さえ部材50の製造時に付け根部bに亀裂が生じてしまうことを防止できる。また、基準カール押さえ部材50の取り扱い時(例えば着脱時)に生じる力が付け根部bに集中してしまうことを防止できる(力を分散させることができる)。よって、基準カール押さえ部材50の破損をより防止することができる。
【0067】
ただし、これに限らず、上流側接続部506を供給ローラー21よりも搬送方向上流側に位置させることで基準カール押さえ部材50の破損を防止できるので、上流側境界部503の付け根部bをR形状にせずに、他の形状にしてもよい。
【0068】
図7では比較例の基準カール押さえ部材50’の問題点を説明しているが、比較例の可動カール押さえ部材51’の上流側境界部513’(図6A)でも同様の問題が生じる。しかし、本実施形態のプリンター1では、紙端検出センサー41がロール紙Rの幅方向手前側の端部R2を検出するため、供給ローラー21よりも搬送方向下流側において、ロール紙Rの端部R2を可動カール押さえ部材51から露出させる必要がある。よって、本実施形態の可動カール押さえ部材51では、基準カール押さえ部材50のように上流側接続部を供給ローラー21よりも搬送方向上流側に位置させることは出来ない。
【0069】
そこで、本実施形態の可動カール押さえ部材51では、図4Bに示すように、上流側境界部513の付け根部bをR形状とする。そうすることで、可動カール押さえ部材51の製造時に(型抜きの際に)、付け根部bに亀裂が生じてしまうことを防止できる。よって、上流側境界部513と付け根部bが接触しても(例えば図7B)、亀裂が進行してしまうことを防止できる。また、ロール紙Rの乗り上げによる鉛直方向下向きの力(例えば図7C)やロール紙Rの弛みによる鉛直方向上向きの力(例えば図7D)が、付け根部bに集中して掛かってしまうことを防止できる。その結果、付け根部bに亀裂を生じさせることを防止でき、可動カール押さえ部材50の破損を防止できる。
【0070】
また、図7では、比較例の基準カール押さえ部材50’の上流側境界部503’の問題点を説明しているが、下流側境界部504’でも同様の問題が生じる。ただし、下流側境界部504’では、ロール紙Rの供給時の弛みによる問題(例えば図7D)は生じない。よって、上流側境界部503の付け根部bに比べて下流側境界部504の付け根部bの方が、破損が起こり難いため、比較例の基準カール押さえ部材50’でも搬送方向の下流側部分については問題が無い。即ち、基準カール押さえ部材50の下流側接続部508を排出ローラー23よりも搬送方向上流側に位置するようにしてもよい。
【0071】
しかし、本実施形態の基準カール押さえ部材50では、図4Aに示すように、下流側接続部508(下流側境界部504)が排出ローラー23よりも搬送方向下流側に位置するようにする。そうすることで、図3に示すように、ロール紙Rの幅方向奥側の端部R1は、排出ローラー23から排出されるまで押さえ部505の幅方向手前側の端面よりも幅方向奥側に位置し、押さえ部505によって上から覆われていることになる。よって、下流側境界部504の付け根部bとロール紙Rの端部R1が接触したり、ロール紙Rが押さえ部505に乗り上げて下流側境界部504の付け根部bに鉛直方向下向きの力を加えたりすることを防止できる。その結果、下流側境界部504の付け根部bに亀裂を生じさせたり、製造時に生じた亀裂を進行させたりすることを防止でき、基準カール押さえ部材50の破損を防止できる。
【0072】
更に、本実施形態の基準カール押さえ部材50では、下流側境界部504の付け根部bをR形状とし、基準カール押さえ部材50の破損をより防止する。ただし、下流側境界部504の付け根部bをR形状にせずに、他の形状にしてもよい。
【0073】
同様に、可動カール押さえ部材51においても、下流側境界部514の付け根部bとロール紙Rの端部R1が接触したり(例えば図7B)、ロール紙Rが押さえ部505に乗り上げて付け根部bに鉛直方向下向きの力を加えたり(例えば図7C)する虞がある。ただし、本実施形態の可動カール押さえ部材51では、図4Bに示すように、上流側接続部516と下流側接続部518の搬送方向の長さを同程度とする。そのため、下流側接続部518(下流側境界部514)は排出ローラー23よりも搬送方向上流側に位置するので、下流側境界部514の付け根部bをR形状とする。
【0074】
そうすることで、可動カール押さえ部材51の製造時に(型抜きの際に)、付け根部bに亀裂が生じてしまうことを防止でき、また、ロール紙Rの乗り上げによる鉛直方向下向きの力(例えば図7C)が付け根部bに集中して掛かってしまうことを防止できる。その結果、可動カール押さえ部材50の破損を防止できる。
【0075】
===変形例===
図8は、変形例の可動カール押さえ部材70を説明する図である。前述の実施形態では、可動カール押さえ部材51(図4B)の下流側接続部518が排出ローラー23よりも搬送方向上流側にも位置している。これに対して、変形例の可動カール押さえ部材70では、下流側接続部702(下流側境界部703)が排出ローラー23よりも搬送方向下流側に位置する。
【0076】
そうすることで、ロール紙Rの幅方向手前側の端部R2は、排出ローラー23によって排出されるまで、押さえ部701の幅方向奥側の端面よりも幅方向手前側に位置し、押さえ部505によって上から覆われることになる。よって、下流側境界部703の付け根部bとロール紙Rの端部R2が接触したり、ロール紙Rが押さえ部701に乗り上げて下流側境界部703の付け根部bに鉛直方向下向きの力が加わったりすることを防止できる。その結果、変形例の可動カール押さえ部材70の破損を防止できる。この場合、付け根部bをR形状にするに限らず、他の形状にしてもよい。
【0077】
また、紙端検出センサー41がロール紙Rの幅方向奥側の端部R1を検出する場合には、例えば、基準カール押さえ部材50の押さえ部505が紙端検出センサー41の検出位置よりも搬送方向下流側に位置するようにする。また、紙端検出センサー41が印刷領域(プラテン31)よりも搬送方向下流側のロール紙Rを検出する場合には、例えば、可動カール押さえ部材51の押さえ部515が紙端検出センサー41の検出位置よりも搬送方向上流側に位置するようにする。
【0078】
また、前述の実施形態では、カール押さえ部材50,51を、上層部501,511と下層部502,512の2層のフィルムから構成しているが、これに限らない。例えば、上層部501,511だけをカール押さえ部材としてもよい。
【0079】
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、主としてインクジェットプリンターを有する印刷システムについて記載されているが、媒体の端部を押さえる部材等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0080】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、印刷領域に位置するロール紙Rに対して、ヘッド33をロール紙Rの搬送方向及び幅方向に移動させながら画像を形成するプリンター1を例に挙げているが、これに限らない。例えば、固定されたヘッド33の下をロール紙Rが通過する際に画像を形成するプリンターでもよい。なお、画像を記録する媒体はロール紙Rに限らず、単票紙でもよい。
【0081】
また、画像記録装置はプリンターに限らず、例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、気体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の装置に、上述の実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
【符号の説明】
【0082】
1 プリンター、2 コンピューター
10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、21 供給ローラー、22 ロール紙ホルダー、
23 排出ローラー、24 巻き取りローラー、
30 記録ユニット、31 プラテン、32 キャリッジ、33 ヘッド、
34 吸引孔、35 圧力室、36 ファン、37 ヒーター、
40 検出器群、41 紙端検出センサー
50 基準カール押さえ部材、501 上層部、502 下層部、
503 上流側境界部、504 下流側境界部、505 押さえ部、506 上流側接続部、507 上流側取付部、508 下流側接続部、509 下流側取付部、
51 可動カール押さえ部材、511 上層部、512 下層部、
513 上流側境界部、514 下流側境界部、515 押さえ部、516 上流側接続部、517 上流側取付部、518 下流側接続部、519 下流側取付部、
60A 上流側取付部材、60B 下流側取付部材、61 固定用ピン、62 固定用補助部材、63 調整レバー、64 ばね、65 カバー部材、66 巻取り装置、
70 可動カール押さえ部材、701 押さえ部、702 下流側接続部、703 下流側境界部、
R ロール紙、Nz ノズル、t 頂部、b 付け根部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)媒体に画像を記録する記録部と、
(B)画像記録領域において前記媒体を支持する媒体支持部と、
(C)前記画像記録領域に前記媒体を供給する供給ローラーと、前記画像記録領域から前記媒体を排出する排出ローラーと、を有し、前記媒体を搬送方向の上流側から下流側に搬送する搬送部と、
(D)前記搬送方向の前記上流側において、前記搬送方向と交差する幅方向の一方側の前記媒体の端部を検出するセンサーと、
(E)前記幅方向の前記一方側の前記媒体の端部を覆って押さえる第1の押さえ部と、前記第1の押さえ部よりも前記搬送方向の前記上流側に位置する第1の上流側接続部と、を有し、前記幅方向に移動可能な可動押さえ部であって、
前記第1の押さえ部は前記第1の上流側接続部よりも前記幅方向の前記媒体側に突出し、前記第1の押さえ部は前記センサーの検出位置よりも前記搬送方向の前記下流側に位置し、前記第1の押さえ部の前記媒体側の端面と前記第1の上流側接続部の前記媒体側の端面がR形状で接続されている可動押さえ部と、
(F)前記幅方向の前記他方側の前記媒体の端部を覆って押さえる第2の押さえ部と、前記第2の押さえ部よりも前記搬送方向の前記上流側に位置する第2の上流側接続部と、を有する基準押さえ部であって、
前記第2の押さえ部は前記第2の上流側接続部よりも前記幅方向の前記媒体側に突出し、前記第2の上流側接続部は前記供給ローラーよりも前記搬送方向の前記上流側に位置する基準押さえ部と、
を有することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像記録装置であって、
前記第2の押さえ部の前記媒体側の端面と前記第2の上流側接続部の前記媒体側の端面がR形状で接続されている、
画像記録装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像記録装置であって、
前記可動押さえ部は、前記第1の押さえ部よりも前記搬送方向の前記下流側に位置する第1の下流側接続部を有し、
前記第1の押さえ部は前記第1の下流側接続部よりも前記幅方向の前記媒体側に突出し、
前記第1の下流側接続部は前記排出ローラーよりも前記搬送方向の前記下流側に位置する、
画像記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像記録装置であって、
前記第1の押さえ部の前記媒体側の端面と前記第1の下流側接続部の前記媒体側の端面がR形状で接続されている、
画像記録装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像記録装置であって、
前記基準押さえ部は、前記第2の押さえ部よりも前記搬送方向の前記下流側に位置する第2の下流側接続部を有し、
前記第2の押さえ部は前記第2の下流側接続部よりも前記幅方向の前記媒体側に突出し、
前記第2の下流側接続部は前記排出ローラーよりも前記搬送方向の前記下流側に位置する、
画像記録装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像記録装置であって、
前記第2の押さえ部の前記媒体側の端面と前記第2の下流側接続部の前記媒体側の端面がR形状で接続されている、
画像記録装置。
【請求項7】
(A)媒体に画像を記録する記録部と、
(B)画像記録領域において前記媒体を支持する媒体支持部と、
(C)前記画像記録領域に前記媒体を供給する供給ローラーと、前記画像記録領域から前記媒体を排出する排出ローラーと、を有し、前記媒体を搬送方向の上流側から下流側に搬送する搬送部と、
(D)前記搬送方向の前記上流側において、前記搬送方向と交差する幅方向の一方側の前記媒体の端部を検出するセンサーと、
(E)前記幅方向の前記一方側の前記媒体の端部を覆って押さえる第1の押さえ部と、前記第1の押さえ部よりも前記搬送方向の前記上流側に位置する第1の上流側接続部と、を有し、前記幅方向に移動可能な可動押さえ部であって、
前記第1の押さえ部は前記第1の上流側接続部よりも前記幅方向の前記媒体側に突出し、前記第1の押さえ部は前記センサーの検出位置よりも前記搬送方向の前記下流側に位置し、前記第1の押さえ部の前記媒体側の端面と前記第1の上流側接続部の前記媒体側の端面がR形状で接続されている可動押さえ部と、
(F)前記幅方向の前記他方側の前記媒体の端部を覆って押さえる第2の押さえ部と、前記第2の押さえ部よりも前記搬送方向の前記上流側に位置する第2の上流側接続部と、を有する基準押さえ部であって、
前記第2の押さえ部は前記第2の上流側接続部よりも前記幅方向の前記媒体側に突出し、前記第2の上流側接続部は前記供給ローラーよりも前記搬送方向の前記上流側に位置する基準押さえ部と、
(G)を有する画像記録装置を用いて前記媒体に画像を記録することを特徴とする画像記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−20554(P2012−20554A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162025(P2010−162025)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】