説明

画像記録装置、及び、画像記録方法

【課題】記録基材と剥離基材の剥離を防止することにある。
【解決手段】一方の面が画像の記録層であり他方の面が粘着層である記録基材と、前記粘着層を覆う剥離基材とを有する媒体を、複数の搬送ローラーにより搬送径路に沿って搬送する搬送部と、前記媒体に画像を記録する記録部と、前記媒体に記録された画像を定着させる加熱部と、を備え、前記搬送径路上に連続して設けられた2つの前記搬送ローラーであり、接触する前記媒体の面が異なる2つの前記搬送ローラーにおいて、一方の前記搬送ローラーの外径と他方の前記搬送ローラーの外径が異なる画像記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置、及び、画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像記録装置として、紙などの媒体に対してヘッドからインクを吐出して画像を印刷するプリンターがある。また、プリンターの中には、画像が印刷された媒体を加熱することによって、媒体に印刷された画像を定着させる乾燥部(加熱部)を有するプリンターがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−125830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷面の反対側が粘着層となっている記録紙(記録基材)と、その粘着層を覆うセパレーター(剥離基材)とが一体となったシール紙に画像を印刷する場合がある。乾燥部によりプリンターの本体部内は比較的に高温となる。そのため、シール紙が搬送ローラー(特に外径の小さいローラー)に巻きつけられた状態で長時間放置されると、その間にシール紙内の水分が蒸発し、搬送ローラーに沿って湾曲した癖がシール紙に付いてしまう。その後、癖の付いたシール紙の部位が逆向きに湾曲するように搬送ローラーに巻きつけられると、記録紙とセパレーターが剥がれ易くなってしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、記録基材と剥離基材の剥離を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための主たる発明は、一方の面が画像の記録層であり他方の面が粘着層である記録基材と、前記粘着層を覆う剥離基材とを有する媒体を、複数の搬送ローラーにより搬送径路に沿って搬送する搬送部と、前記媒体に画像を記録する記録部と、前記媒体に記録された画像を定着させる加熱部と、を備え、前記搬送径路上に連続して設けられた2つの前記搬送ローラーであり、接触する前記媒体の面が異なる2つの前記搬送ローラーにおいて、一方の前記搬送ローラーの外径と他方の前記搬送ローラーの外径が異なることを特徴とする画像記録装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】プリンターの全体構成ブロック図である。
【図2】プリンターの概略を示す断面図である。
【図3】図3A及び図3Bは媒体を説明する図である。
【図4】剥離現象を説明する図である。
【図5】剥離現象に関する評価試験の結果を示す図である。
【図6】比較例の搬送経路を説明する図である。
【図7】本実施形態の搬送経路を説明する図である。
【図8】変形例の搬送経路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0009】
即ち、一方の面が画像の記録層であり他方の面が粘着層である記録基材と、前記粘着層を覆う剥離基材とを有する媒体を、複数の搬送ローラーにより搬送径路に沿って搬送する搬送部と、前記媒体に画像を記録する記録部と、前記媒体に記録された画像を定着させる加熱部と、を備え、前記搬送径路上に連続して設けられた2つの前記搬送ローラーであり、接触する前記媒体の面が異なる2つの前記搬送ローラーにおいて、一方の前記搬送ローラーの外径と他方の前記搬送ローラーの外径が異なる、ことを特徴とする画像記録装置である。
このような画像記録装置によれば、記録基材と剥離基材の剥離を防止することができる。
【0010】
かかる画像記録装置であって、前記搬送径路上に連続して設けられた3つの前記搬送ローラーであり、前記搬送経路の上流側から1番目の前記搬送ローラー及び3番目の前記搬送ローラーが接触する前記媒体の面と2番目の前記搬送ローラーが接触する前記媒体の面とが異なる3つの前記搬送ローラーにおいて、2番目の前記搬送ローラーの外径が、1番目の前記搬送ローラーの外径、及び、3番目の前記搬送ローラーの外径よりも、大きいこと。
このような画像記録装置によれば、記録基材と剥離基材の剥離を防止することができる。また、3つの搬送ローラーのうちの1つの搬送ローラーの外径だけを大きくするため、例えば、コストダウンを図れたり、小さい搬送力で媒体を搬送することができたりする。
【0011】
かかる画像記録装置であって、前記搬送径路上に連続して設けられた3つの前記搬送ローラーであり、前記搬送経路の上流側から1番目の前記搬送ローラー及び3番目の前記搬送ローラーが接触する前記媒体の面と2番目の前記搬送ローラーが接触する前記媒体の面とが異なる3つの前記搬送ローラーにおいて、1番目の前記搬送ローラーの外径、及び、3番目の前記搬送ローラーの外径が、2番目の前記搬送ローラーの外径よりも、大きいこと。
このような画像記録装置によれば、記録基材と剥離基材の剥離を防止することができる。
【0012】
かかる画像記録装置であって、前記搬送径路上に連続して設けられた2つの前記搬送ローラーであり、外径が異なる2つの前記搬送ローラーは、前記記録部が前記媒体に画像を記録する領域よりも、前記搬送径路の上流側に位置すること。
このような画像記録装置によれば、記録基材と剥離基材が剥離していない状態で画像を記録することができる。その結果、記録部と媒体との接触を防止したり、画像形成位置のずれを防止したりすることができる。
【0013】
また、一方の面が画像の記録層であり他方の面が粘着層である記録基材と、前記粘着層を覆う剥離基材とを有する媒体を、複数の搬送ローラーにより搬送径路に沿って搬送する搬送部と、前記媒体に画像を記録する記録部と、前記媒体に記録された画像を定着させる加熱部と、を備え、前記搬送径路上に連続して設けられた2つの前記搬送ローラーであり、接触する前記媒体の面が異なる2つの前記搬送ローラーにおいて、一方の前記搬送ローラーの外径と他方の前記搬送ローラーの外径が異なる、画像記録装置を用いて前記媒体に画像を記録することを特徴とする画像記録方法である。
このような画像記録方法によれば、記録基材と剥離基材が剥離していない状態で画像を記録することができる。その結果、記録部と媒体との接触を防止したり、画像形成位置のずれを防止したりすることができる。
【0014】
===プリンターについて===
以下、「画像記録装置」としてインクジェットプリンター(以下、プリンター)を例に挙げて実施形態を説明する。
【0015】
図1は、プリンター1の全体構成ブロック図である。図2は、プリンター1の概略を示す断面図である。本実施形態のプリンター1は、媒体として、ロール紙S(連続紙)に画像を印刷する。また、プリンター1はコンピューター2と通信可能に接続されており、コンピューター2が、プリンター1に画像を印刷させるための印刷データを作成する。なお、コンピューター2の機能がプリンター1内に内蔵されていてもよい。
【0016】
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11はコンピューター2とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12はプリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12はユニット制御回路14に従って各ユニットを制御する。なお、プリンター1内の状況を検出器群70が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0017】
給送ユニット20は、ロール紙Sを搬送ユニット30に給送するものである。給送ユニット20は、ロール紙Sが巻かれ回転可能に支持される巻軸21と、巻軸21から繰り出されたロール紙Sを巻き付けて搬送ユニット30に導くための中継ローラー22と、を有している。なお、給送ユニット20は、プリンター1の中の画像の印刷が行われる本体部1’の外部に位置する。
【0018】
搬送ユニット30(搬送部に相当)は、給送ユニット20から送られたロール紙Sを、予め設定された搬送経路に沿って上流側から下流側へと搬送するものである。搬送ユニット30は、複数の中継ローラー31a〜31jと、可動ローラー32、固定ローラー33、供給ローラー34、排出ローラー35を有する。給送ユニット20と印刷領域の間に可動ローラー32と固定ローラー33が設けられ、印刷領域の直ぐ上流側に供給ローラー34が設けられ、印刷領域の下流側に排出ローラー35が設けられている。ロール紙Sがこれらのローラー(以下、搬送ローラーと呼ぶ)を順次経由して移動することにより、ロール紙Sを搬送するための搬送経路が形成されることになる。
【0019】
供給ローラー34及び排出ローラー35はそれぞれ対を成すローラーから構成され、一方のローラーは不図示のモーターにより回転する駆動ローラー(34a・35a)であり、他方のローラーは駆動ローラーに連動して回転する従動ローラー(34b・35b)である。印刷領域に位置するロール紙Sに対する画像の印刷が終了すると、供給ローラー34や排出ローラー35等により、画像が印刷されたロール紙Sの部位は印刷領域から排出され、未だ画像が印刷されていないロール紙Sの新たな部位が印刷領域に供給される。即ち、印刷領域に位置するロール紙Sに対する印刷動作とロール紙Sの搬送動作とが繰り返される。
【0020】
可動ローラー32は第1の可動ローラー32aと第2の可動ローラー32bから構成される。そして、第1の可動ローラー32a及び第2の可動ローラー32bの各回転軸の両端は、ローラーが回転可能なように、1対のアーム36に取り付けられている。アーム36はプリンター1の上下方向に稼動可能とする。よって、アーム36の稼動に伴って第1の可動ローラー32a及び第2の可動ローラー32bも上下方向に稼動する。一方、固定ローラー33はプリンター1の上下方向における所定の位置に固定されている。
【0021】
ところで、搬送ユニット30では、1回の搬送動作により、印刷領域のX方向の長さに相当するロール紙Sが所定の速度で搬送される。ただし、例えば、ロール紙Sの交換直後でロール紙Sが重く、搬送動作時に給送ユニット20(巻軸21)からのロール紙Sの繰り出しが追いつかない場合がある。そこで、本実施形態のプリンター1では、1回の搬送動作で搬送する分のロール紙Sを、可動ローラー32と固定ローラー33に巻き付けて弛ませておく。そうすることで、搬送動作時に給送ユニット20からのロール紙Sの繰り出しが遅れた場合には、可動ローラー32とアーム36が持ち上がり、弛ませておいたロール紙Sが印刷領域に供給される。その結果、所定の長さのロール紙Sを所定の搬送時間で印刷領域に供給することができる。
【0022】
記録ユニット40(記録部に相当)は、印刷領域に位置するロール紙Sに画像を印刷(記録)するものである。記録ユニット40は、キャリッジ41とヘッド42を有する。キャリッジ41は、ガイド軸(不図示)に案内されながら、ヘッド42をX方向(ロール紙Sが搬送される方向)及びY方向(ロール紙Sの幅方向)に移動させる。ヘッド42はロール紙Sにインクを吐出するためのものであり、ヘッド42の下面にはインク吐出部であるノズルが複数設けられている。ヘッド42がキャリッジ41と共にX方向及びY方向に移動しながらインクを吐出することで、ロール紙Sには2次元の画像が印刷される。
【0023】
なお、印刷領域に位置するロール紙Sは印刷面とは反対側の裏面側からプラテン51の上面で支持される。また、ノズルからのインク吐出方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて圧力室を膨張・収縮させてインクを吐出させるピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によってインクを吐出させるサーマル方式でもよい。
【0024】
乾燥ユニット50(加熱部に相当)は、ロール紙Sに印刷された画像を定着させるためのものであり(ロール紙Sに着弾したインクを乾燥させるためのものであり)、プラテン51と乾燥炉52を有する。
【0025】
プラテン51内部には複数のヒーター511(例えばニクロム線)が配設されている。ヒーター511が通電されることによりプラテン51の温度が上昇し、プラテン51上のロール紙S(即ち、印刷領域に位置するロール紙S)の温度も上昇する。プラテン51上のロール紙Sに対して熱が均一に伝導するように、プラテン51の全域に亘ってヒーター511が配設されている。その結果、プラテン51上のロール紙Sに着弾したインクの乾燥を促進することができ、印刷画像におけるインクの滲みを抑制できる。
【0026】
なお、プラテン51には吸引孔513が設けられ、プラテン51の下部には、圧力室512とファン514(軸流ファン)が設けられている。ファン514により圧力室512内の空気が吸引されると圧力室512内は負圧状態となり、プラテン51上のロール紙Sは吸引孔513から吸引される。その結果、プラテン51上のロール紙Sはプラテン51の上面に吸引吸着する。そうすることで、プラテン51上のロール紙Sは所定の位置に保持されて、インク滴を正しい位置に着弾させることができる。また、インク滴の水分でロール紙Sが膨潤したとしてもロール紙Sを平坦な状態に保持することができる。ただし、これに限らず、例えば、ロール紙Sを静電吸着してもよい。
【0027】
乾燥炉52は、印刷領域よりも搬送経路における下流側に設けられ、複数のヒーター521と、複数のファン522が配設されている。乾燥炉52では、乾燥炉52内に供給されたロール紙Sの印刷面に対して、ヒーター521により加熱された空気がファン522により吹付けられる。その結果、ロール紙Sに印刷された画像を構成するインクを乾燥させることができ、ロール紙Sに印刷された画像をロール紙Sに定着させることができる。その結果、画像が印刷されたロール紙Sの部位をロール状に巻き取ったとしても、ロール紙Sの裏面がインクで汚れてしまうことを防止でき、高品質な印刷物を提供することができる。なお、乾燥炉52の構成はこれに限らず、ロール紙Sに吹付けた高温の空気が乾燥炉52内で対流する構成にしても良いし、ヒーター521により乾燥炉52内の温度を高温にするだけの構成にしても良い。
【0028】
巻取りユニット60は、搬送ユニット30により送られたロール紙S(印刷済みのロール紙S)を巻き取るためのものである。巻取りユニット60は、中継ローラー31jから送られてきたロール紙Sを巻き付けて搬送する中継ローラー61と、ロール紙Sを巻き取る巻取り駆動軸62とを有する。なお、巻取りユニット60は、プリンター1の本体部1’の外部に位置する。
【0029】
===剥離現象===
図3A及び図3Bは、本実施形態で用いる媒体(前述のロール紙S)を説明する図である。本実施形態では、画像を記録する媒体として、一方の面が画像の記録層であり、他方の面が粘着層である記録紙(記録基材に相当)と、記録紙の粘着層を覆うセパレーター(剥離基材に相当)と、を有するシール紙を使用する。図3Bに示すように、記録紙とセパレーターは剥離可能となっている。なお、記録紙は、紙に限らず、例えばフィルムなどでも良い。図2に示すプリンター1では、記録紙(記録層)がヘッド42と対向し、セパレーターがプラテン51と接触するように、媒体(ロール紙S)がセットされる。
【0030】
図4は、剥離現象を説明する図である。図4の左図は、搬送ローラーRとセパレーターが接触するように、搬送ローラーRに媒体が巻き付けられた様子を示す図であり、図4の中央図は、搬送ローラーRと記録紙が接触するように、搬送ローラーRに媒体が巻き付けられた様子を示す図である。
【0031】
ところで、プリンター1の本体部1’内には、媒体に印刷された画像を定着させるために、ヒーターを有するプラテン51および乾燥炉52が設けられている。そのため、ヒーターにより加熱されたプラテン51(例えば45度)および乾燥炉52(例えば75度)により、プリンター1の本体部1’内は比較的に高温となる。
【0032】
また、例えばメンテナンスのために、プラテン51や乾燥炉52を加熱させた状態で長い時間に亘って(例えば1時間以上に亘って)印刷を停止する場合がある。この時、媒体は搬送されることがなく、媒体の同じ部位が同じ場所に位置する。即ち、高温であるプリンター1の本体部1’内に、媒体の同じ部位が同じ搬送ローラーRに巻き付けられた状態で長時間放置される場合がある。この場合、媒体の同じ部位が同じ搬送ローラーRに巻き付けられた状態で、媒体内の水分が蒸発してしまう。
【0033】
通常、媒体(記録紙やセパレーター)から水分が蒸発すると、媒体(記録紙やセパレーター)は硬化する。また、粘着層を構成する粘着剤(記録紙に塗布された粘着剤)から水分が蒸発すると、粘着剤の粘着力は低下する。よって、媒体の同じ部位が同じ搬送ローラーRに巻き付けられた状態で媒体内の水分が蒸発すると、媒体に搬送ローラーRの巻き付け癖が付いてしまい、且つ、粘着層の粘着力が低下してしまう。例えば、媒体が、図4の左図のように搬送ローラーRに巻き付けられた状態で、高温であるプリンター1の本体部1’内に長時間に亘って放置されると、セパレーターを内側として湾曲する癖が媒体に付いてしまう。
【0034】
また、図2に示すプリンター1の本体部1’内では、搬送径路上に連続して設けられた2つの搬送ローラーRに接触する媒体の面が異なる場合がある。そのため、例えば、図4の左図のように搬送ローラーRとセパレーターが接触するように媒体が搬送ローラーRに巻き付けられた状態で、高温であるプリンター1の本体部1’内に長時間放置された後に、図4の中央図のように搬送ローラーRと記録紙が接触するように媒体が搬送ローラーRに巻き付けられる場合がある。
【0035】
即ち、セパレーターを内側として湾曲する癖が付き、且つ、粘着層の粘着力が低下した媒体の部位が、記録紙を内側として逆向きに湾曲させられてしまう場合がある。そうすると、図4の右図のように、癖の付いた媒体の一部分において記録紙とセパレーターが剥離し、記録紙とセパレーターの間に空気層が発生してしまう(以下、この現象を「剥離現象」と呼ぶ)。つまり、高温であるプリンター1の本体部1’内に、搬送ローラーRと媒体の一方の面(セパレーター又は記録紙)が接触するように媒体が搬送ローラーRに巻き付けられた状態で長時間放置されると、その直後に、搬送ローラーRと媒体の他方の面が接触するように媒体が搬送ローラーRに巻き付けられた際に、剥離現象が発生してしまう。媒体に剥離現象が発生してしまうと、製品として不良品になってしまう。
【0036】
また、印刷領域に位置する媒体は、プラテン51によりセパレーター側から吸引吸着される。そのため、印刷領域に位置する媒体に剥離現象が発生していると(即ち、印刷領域よりも搬送経路の上流側で媒体に剥離現象が発生すると)、図4の右図のように、セパレーターに対して記録紙の一部が上方に(ヘッド42側に)盛り上がった状態となる。通常、ヘッド42のノズル面と媒体との間隔(所謂ペーパーギャップ)は狭い間隔に設定されている。よって、記録紙の盛り上がり部分とヘッド42が接触してしまう。そうすると、ヘッド42のノズル面により記録紙が汚れたり、ヘッド42の故障に繋がったりする。また、記録紙に盛り上がり部分が生じていると、ヘッド42のノズルから吐出されたインク滴が正しい位置に着弾せずに(ドット形成位置がずれてしまい)、印刷画像の画質が劣化してしまう。
【0037】
図5は、剥離現象に関する評価試験の結果を示す図である。本実施形態のプリンター1では、搬送ローラーRの外径d(図4に示すように、搬送ローラーRの外周面の直径d)が異なる2種類の搬送ローラーRを用いる。外径dの大きい搬送ローラー(例えば、d=60mm)を「大径ローラーRl」と呼び、外径dの小さい搬送ローラー(例えば、d=40mm)を「小径ローラーRs」と呼ぶ。
【0038】
ここでは、4種類の条件下において剥離現象の発生の有無を評価した。なお、搬送ローラーRの周面にて媒体が巻き付けられている角度θ(図4に示すように、搬送ローラーRの周面にて媒体が接触している部分(弧)に対する中心角)を「巻き付け角θ」と呼ぶ。そして、この評価試験では、本実施形態のプリンター1が有する搬送ローラーRの最大巻き付け角θ以上の巻き付け角θ(ここでは180度)で試験を行った。また、媒体の種類に応じて剥離現象の発生具合が異なるため、プリンター1にて使用する媒体(推奨する媒体)を用いて評価試験を行った。
【0039】
1つ目の条件下では、まず、高温である筐体内において、大径ローラーRlとセパレーターが接触するように大径ローラーRlに媒体を巻き付けて、長時間放置した(温度:40度、湿度:30%、2時間)。この時、大径ローラーRlに巻きつけた媒体の一端側と他端側に対して下向きに所定の張力を付与した。その後、大径ローラーRlと記録紙が接触するように逆向きに、大径ローラーRlに媒体を巻きつけた。そして、媒体に剥離現象が発生しているか否かを確認した結果、1つ目の条件下では剥離現象が発生しなかった。
【0040】
2つ目の条件下では、高温である筐体内において、小径ローラーRsとセパレーターが接触するように小径ローラーRsに媒体を巻き付けて、媒体端部に所定の張力を付与した状態で、長時間放置した。その後、大径ローラーRlと記録紙が接触するように逆向きに、大径ローラーRlに媒体を巻きつけた。この2つ目の条件下では剥離現象が発生しなかった。
【0041】
3つ目の条件下では、高温である筐体内において、大径ローラーRlとセパレーターが接触するように大径ローラーRlに媒体を巻き付けて、媒体端部に所定の張力を付与した状態で、長時間放置した。その後、小径ローラーRsと記録紙が接触するように逆向きに、小径ローラーRsに媒体を巻きつけた。この3つ目の条件下では剥離現象が発生しなかった。
【0042】
4つ目の条件下では、高温である筐体内において、小径ローラーRsとセパレーターが接触するように小径ローラーRsに媒体を巻き付けて、媒体端部に所定の張力を付与した状態で、長時間放置した。その後、小径ローラーRsと記録紙が接触するように逆向きに、小径ローラーRsに媒体を巻きつけた。この4つ目の条件下では剥離現象が発生してしまった。
【0043】
以上の評価試験の結果から、次のことが分かった。
高温の筐体内(プリンター1の本体部1’内)において、媒体の一方の面が接触するように大径ローラーRlに媒体を巻き付けた状態で、長時間放置した後に、媒体の他方の面が接触するように逆向きに大径ローラーRl又は小径ローラーRsに媒体を巻きつけても、剥離現象は発生しない。これは、大径ローラーRlのように搬送ローラーRの外径dが大きい場合、媒体の湾曲度合いが小さく、媒体が大径ローラーRlに巻き付けられた状態で媒体内の水分が蒸発したとしても、媒体に癖が付き難いからである。
【0044】
また、高温の筐体内において、媒体の一方の面が接触するように小径ローラーRsに媒体を巻き付けた状態で長時間放置した後に、媒体の他方の面が接触するように逆向きに大径ローラーRlに媒体を巻きつけても、剥離現象は発生しない。これは、小径ローラーRsにより媒体の一方の面を内側として湾曲する癖が媒体に付いていたとしても、大径ローラーRlにより媒体が逆向きに湾曲されるのであれば、媒体の湾曲度合いが小さく、記録紙とセパレーターが剥離し難いからである。
【0045】
そして、高温の筐体内において、媒体の一方の面が接触するように小径ローラーRsに媒体を巻き付けた状態で長時間放置した後に、媒体の他方の面が接触するように逆向きに小径ローラーRsに媒体を巻きつけた場合にだけ、剥離現象が発生する。これは、小径ローラーRsにより媒体の一方の面を内側としても湾曲する癖が媒体に付いた後に、小径ローラーRsにより媒体を逆向きに湾曲してしまうと、媒体の湾曲度合いが大きく、記録紙とセパレーターが剥離してしまうからである。
【0046】
なお、図5には示さないが、最初に記録紙を内側として搬送ローラーRに媒体を巻き付けた状態で高温の筐体内に長時間放置し、その後に、セパレーターを内側として搬送ローラーRに媒体を巻きつけた場合にも、同様の結果が得られた。
【0047】
以上の結果、プリンター1の搬送径路上に連続して設けられ、接触する媒体の面が異なる2つの搬送ローラーRを、共に小径ローラーRsにしてしまうと、剥離現象が発生してしまうことが分かった。
【0048】
図2に示す本実施形態のプリンター1では、印刷領域よりも搬送経路の上流側の位置に、搬送経路上に連続して設けられ、接触する媒体の面が異なる搬送ローラー(可動ローラー32a,32bと固定ローラー33)が存在する。具体的には、最も上流側の第1の可動ローラー32aと接触する媒体面は記録紙であり、次の固定ローラー33と接触する媒体面はセパレーターであり、次の第2の可動ローラー32bと接触する媒体面は記録紙である。
以下、この可動ローラー32及び固定ローラー33による搬送経路について説明する。
【0049】
===比較例の搬送径路===
図6Aから図6Cは、比較例の可動ローラー32a’,32b’及び固定ローラー33’による搬送経路を説明する図である。図6Aでは、2つの可動ローラー32a’,32b’、及び、固定ローラー33’が全て小径ローラーRsであるとする。ここで、高温であるプリンター1の本体部1’内において、図6Aに示すように媒体Sが各搬送ローラー32a’,33’,32b’に巻きつけられた状態で、長時間放置されたとする。
【0050】
そうすると、第1の可動ローラー32a’に巻き付けられた媒体Sの部位では、記録紙を内側として湾曲する癖が付き、且つ、粘着層の粘着力が低下してしまう。その後、印刷が再開して媒体Sが搬送されると、第1の可動ローラー32a’に巻き付けられていた媒体Sの部位は固定ローラー33’に巻き付けられる。その結果、記録紙を内側として湾曲する癖が付き、且つ、粘着層の粘着力が低下した媒体Sの部位が、小径ローラーRsである固定ローラー33’によりセパレーターを内側として逆向きに湾曲させられ、剥離現象が発生してしまう。
【0051】
同様に、固定ローラー33’に巻き付けられた状態で長時間放置された媒体Sの部位では、セパレーターを内側として湾曲する癖が付き、且つ、粘着層の粘着力が低下してしまう。その後、媒体Sが搬送され、固定ローラー33’に巻き付けられていた媒体Sの部位が、小径ローラーRsである第2の可動ローラー32b’に巻き付けられると、記録紙を内側として逆向きに湾曲させられ、剥離現象が発生してしまう。
【0052】
このように、印刷領域よりも搬送経路の上流側に位置する媒体Sの部位に剥離現象が発生してしまうと、媒体Sとヘッド42が接触したり、印刷画像の画質が劣化したりしてしまう。
【0053】
図6Bでは、2つの可動ローラー32a’,32b’及び固定ローラー33’が全て大径ローラーRlであるとする。この場合、高温であるプリンター1の本体部1’内において媒体Sが各搬送ローラー32a’,33’,32b’に巻きつけられた状態で長時間放置されたとしても、各搬送ローラー32a’,32b’,33’にて媒体Sが湾曲される度合いが小さいため、媒体Sに癖が付き難い。その結果、剥離現象の発生を防止することができる。
【0054】
しかし、3つの搬送ローラー32a’,33’,32b’を全て大径ローラーRlにしてしまうと、小径ローラーRsを使用する場合に比べて、コストがかかってしまう。また、大径ローラーRlに媒体Sを巻き付ける方が、小径ローラーRsに媒体Sを巻き付ける場合に比べて、媒体Sを搬送するための搬送力(即ち、媒体Sに付与する張力)を、強くする必要がある。そのため、図6Bの搬送経路では、媒体Sを搬送するためのモーター(即ち、搬送ローラーRを回転駆動させるためのモーター)の出力を高くする必要があり、その結果、コストがかかったり、消費電力が高まったりしてしまう。
【0055】
そこで、本実施形態では、小径ローラーRsを使用してコストダウンや省電力化を図りつつ、剥離現象を防止することを目的とする。
【0056】
図6Cでは、小径ローラーRsである第1の可動ローラー32a’及び固定ローラー33’に関して、横方向の距離を広げ、且つ、上下方向の距離を縮めている。そうすることで、図6Cの搬送経路では、図6Aの搬送経路に比べて、第1の可動ローラー32a’及び固定ローラー33’の各巻き付け角θを小さくすることができる。巻き付け角θが小さいという事は、搬送ローラーRによる媒体Sの湾曲度合いが小さいということである。よって、高温であるプリンター1の本体部1’内に図6Cに示すように媒体が各搬送ローラー32a’,33’に巻きつけられた状態で長時間放置されたとしても、媒体Sに癖が付き難く、剥離現象の発生を防止することができる。
【0057】
しかし、巻き付け角θを小さくするために、第1の可動ローラー32a’と固定ローラー33’の横方向の距離を広げてしまうと、プリンター1の本体部1’の横方向の長さが長くなり、装置が大型化してしまう。また、巻き付け角θを小さくするために、第1の可動ローラー32a’と固定ローラー33’の上下方向の距離を縮めてしまうと、給送ユニット20からの媒体Sの繰り出しが遅れる時のために媒体Sを十分に弛ませておくことが出来なくなってしまう。
【0058】
そこで、本実施形態では、2つの可動ローラー32a’,32b’及び固定ローラー33’を所望の設計位置に固定した状態で、各搬送ローラー32a’,33’,32b’における巻き付け角θを変動させずに、剥離現象を防止することを目的とする。
【0059】
===本実施形態の搬送径路===
図7は、本実施形態の可動ローラー32a,32b及び固定ローラー33による搬送経路を説明する図である。本実施形態では、第1の可動ローラー32aが小径ローラーRsであり、固定ローラー33が大径ローラーRlであり、第2の可動ローラー32bが小径ローラーRsである。また、第1の可動ローラー32aに接触する媒体面(記録紙)と、その次の固定ローラー33に接触する媒体面(セパレーター)とが逆の面であり、固定ローラー33に接触する媒体面(セパレーター)と、その次の第2の可動ローラー32bに接触する媒体面(記録紙)とが逆の面である。
【0060】
ここで、高温であるプリンター1の本体部1’内に、図7に示すように媒体Sが各搬送ローラー32a,33,32bに巻きつけられた状態で、長時間放置されたとする。
【0061】
そうすると、小径ローラーRsである第1の可動ローラー32aに巻き付けられた媒体Sの部位では、記録紙を内側として湾曲する癖が付き、且つ、粘着層の粘着力が低下してしまう。ただし、第1の可動ローラー32aに巻き付けられていた媒体Sの部位は、その後、大径ローラーRlである固定ローラー33に巻き付けられる。そのため、記録紙を内側として湾曲する癖が付いた媒体Sの部位が、固定ローラー33によりセパレーターを内側として逆向きに湾曲されたとしても、湾曲度合いが小さく、剥離現象の発生を防止することができる。
【0062】
一方、大径ローラーRlである固定ローラー33に巻き付けられた状態で長時間放置された媒体Sの部位では、固定ローラー33による媒体の湾曲度合いが小さいため、媒体Sに癖が付き難い。よって、固定ローラー33に巻き付けられていた媒体Sの部位が、その後、小径ローラーRsである第2の可動ローラー32bにより逆向きに湾曲されたとしても、剥離現象の発生を防止することができる。
【0063】
つまり、本実施形態のプリンター1では、媒体Sの搬送径路上に連続して設けられた2つの搬送ローラーRであり、接触する媒体Sの面が異なる2つの搬送ローラーRにおいて、一方の搬送ローラーRの外径と他方の搬送ローラーRの外径を異ならせている。なお、搬送経路上に連続して設けられた2つの搬送ローラーとは、媒体Sの或る部位が連続して巻き付けられる搬送ローラーのことである。
【0064】
具体的には、搬送経路上に連続して設けられた第1の可動ローラー32aと固定ローラー33において、第1の可動ローラー32aの外径よりも固定ローラー33の外径を大きくする。また、搬送経路上に連続して設けられた固定ローラー33と第2の可動ローラー32bにおいて、固定ローラー33の外径よりも、第2の可動ローラー32bの外径を小さくする。
【0065】
言い換えると、搬送経路上に連続して設けられ、接触する媒体の面が異なる2つの搬送ローラーRのうちの一方の搬送ローラーRを大径ローラーRlとする。そして、大径ローラーRlの外径は、大径ローラーRlに媒体Sが巻き付けられた状態で高温であるプリンター1の本体部1’内に長時間放置されたとしても、剥離現象が発生する程に湾曲した癖が付かないような大きな外径であるとする。また、大径ローラーRlの外径は、湾曲した癖の付いた媒体Sが大径ローラーRlにより逆向きに湾曲されたとしても剥離現象が発生しない程に大きな外径であるとする。
【0066】
そうすることで、記録紙とセパレーターの剥離(剥離現象)を防止することができる。その結果、不良品の発生を防止することができる。
【0067】
また、特に、印刷領域よりも搬送径路の上流側に位置する搬送ローラーRに関して、搬送径路上に連続して設けられ、且つ、接触する媒体Sの面が異なる2つの搬送ローラーRの外径を異ならせると良い。
【0068】
そうすることで、印刷前の媒体Sに剥離現象が発生してしまうことを防止できる。その結果、ヘッド42と媒体Sの接触を防止することができ、媒体Sの汚れやヘッド42の故障を防止することができる。また、ドット形成位置のずれを防止することができる。
【0069】
また、本実施形態では(図7)、3つの搬送ローラーRのうち、2つの可動ローラー32a,32bを小径ローラーRsとするため、図6Bに示すように全ての搬送ローラーRを大径ローラーRlとする比較例に比べて、コストダウンを図ることができる。また、小径ローラーRsを使用することで媒体Sを搬送するための搬送力を弱くすることができる。その結果、搬送ローラーRを回転駆動させるためのモーターの出力を低くすることができ、コストダウンや省電力化を図ることができる。
【0070】
また、本実施形態では(図7)、図6Cに示す比較例のように巻き付け角θを小さくするために、連続して設けられる搬送ローラー(32a,33,32b)の横方向の距離を広げたり、上下方向の距離を縮めたりしない。そのため、装置の大型化を防止することができ、また、給送ユニット20からの媒体Sの繰り出しが遅れる時のために媒体Sを十分に弛ませておくことが出来る。
【0071】
また、本実施形態のプリンター1では、搬送径路上に連続して設けられた3つの搬送ローラーであり、搬送経路の上流側から1番目の搬送ローラー及び3番目の搬送ローラーが接触する媒体の面と2番目の搬送ローラーが接触する媒体の面とが異なる3つの搬送ローラーにおいて、2番目の搬送ローラーの外径を、1番目の搬送ローラーの外径、及び、3番目の搬送ローラーの外径よりも、大きくしている。具体的には、搬送経路の上流側から2番目の固定ローラー33の外径を、上流側から1番目の第1の可動ローラー32aの外径、及び、上流側から3番目の第2の可動ローラー32bの外径よりも、大きくしている。
【0072】
そうすることで、搬送経路上に連続して設けられ、接触する媒体の面が交互に異なる3つの搬送ローラー(32a,33,32b)の中の1つの固定ローラー33だけを大径ローラーRlにすればよいため、コストダウンを図ることが出来る。また、媒体Sを搬送するための搬送力も弱くすることができる。
【0073】
なお、ここでは、2つの可動ローラー32a,32bと固定ローラー33に着目しているが、これに限らない。高温となるプリンター1の本体部1’内に配置される全ての搬送ローラーRに関して、搬送径路上に連続して設けられ、且つ、接触する媒体の面が異なる2つの搬送ローラーRの外径を異ならせることが好ましい。
【0074】
例えば、図2に示すように、第1の可動ローラー32aが接触する媒体Sの面と、第1の可動ローラー32aよりも1つ前(上流側)の中継ローラー31aが接触する媒体Sの面は異なる。そこで、第1の可動ローラー32aを小径ローラーRsとした場合、中継ローラー31aを大径ローラーRlにすると良い。
【0075】
また、第2の可動ローラー32bが接触する媒体Sの面と、第2の可動ローラー32bよりも1つ後(下流側)の中継ローラー31bが接触する媒体Sの面は、同じである。このような場合、剥離現象の発生の虞がないため、この2つの搬送ローラー32b,31bの外径の関係を考慮しなくて良い。
【0076】
===変形例の搬送径路===
図8は、変形例の可動ローラー32a,32b及び固定ローラー33による搬送経路を説明する図である。変形例では、第1の可動ローラー32aが大径ローラーRlであり、固定ローラー33が小径ローラーRsであり、第2の可動ローラー32bが大径ローラーRlである。
【0077】
つまり、変形例では、搬送径路上に連続して設けられた3つの搬送ローラーにおいて、搬送経路の上流側から1番目の第1の可動ローラー32a及び3番目の第2の可動ローラー32bが接触する媒体の面(記録紙)と、2番目の固定ローラー33が接触する媒体の面(セパレーター)とが異なる場合に、上流側から1番目の第1の可動ローラー32aの外径、及び、3番目の第2の可動ローラー32bの外径を、2番目の固定ローラー33の外径よりも、大きくしている。このような搬送経路においても剥離現象の発生を防止することができる。
【0078】
具体的に説明すると、大径ローラーRlである第1の可動ローラー32aに巻き付けられた状態で長時間放置された媒体Sの部位では、第1の可動ローラー32aによる媒体Sの湾曲度合いが小さいため、媒体Sに癖が付き難い。よって、第1の可動ローラー32bに長時間巻き付けられていた媒体Sの部位が、その後、小径ローラーRsである固定ローラー33に巻き付けられ、逆向きに湾曲させられたとしても、剥離現象の発生を防止することができる。
【0079】
一方、小径ローラーRsである固定ローラー33に巻き付けられた状態で長時間放置された媒体Sの部位では、セパレーターを内側として湾曲する癖が付き、且つ、粘着層の粘着力が低下してしまう。しかし、固定ローラー33に長時間巻き付けられていた媒体Sの部位は、その後、大径ローラーRlである第2の可動ローラー32bに巻き付けられるため、逆向きに湾曲させられたとしても湾曲度合いが小さく、剥離現象の発生を防止することができる。
【0080】
ただし、前述の実施形態の搬送経路(図7)の方が、変形例の搬送経路(図8)に比べて、使用する大径ローラーRlの数を少なくすることができるため、コストダウンや省電力化を図ることができる。
【0081】
===その他の実施の形態===
本実施形態は、主として画像記録装置について記載されているが、画像記録方法等の開示も含まれる。また、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0082】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、印刷領域に位置するロール紙に対して、ヘッド42をX方向及びY方向に移動させながら画像を印刷するプリンター1を例に挙げているが、これに限らない。例えば、固定されたヘッドの下をロール紙が通過する際に画像を印刷するプリンターでもよい。また、画像を記録する媒体はロール紙に限らず、単票紙でもよいし、ノズルからインク以外の他の流体を吐出することで媒体に画像を記録する画像記録装置であってもよい。
【0083】
また、画像記録装置はプリンターに限らず、例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、気体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の装置に、上述の実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
【符号の説明】
【0084】
1 プリンター、2 コンピューター、
10 コントローラー、11 インターフェース部、12 CPU、
13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 給送ユニット、21 巻軸、22 中継ローラー、
30 搬送ユニット、31 中継ローラー、32 可動ローラー、
33 固定ローラー、34 供給ローラー、35 排出ローラー、
36 アーム、40 記録ユニット、41 キャリッジ、42 ヘッド、
50 乾燥ユニット、51 プラテン、511 ヒーター、512 圧力室、
513 吸引孔、514 ファン、52 乾燥炉、521 ヒーター、
522 ファン、60 巻取りユニット、61 中継ローラー、
62 巻取り駆動軸、70 検出器群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面が画像の記録層であり他方の面が粘着層である記録基材と、前記粘着層を覆う剥離基材とを有する媒体を、複数の搬送ローラーにより搬送径路に沿って搬送する搬送部と、
前記媒体に画像を記録する記録部と、
前記媒体に記録された画像を定着させる加熱部と、
を備え、
前記搬送径路上に連続して設けられた2つの前記搬送ローラーであり、接触する前記媒体の面が異なる2つの前記搬送ローラーにおいて、一方の前記搬送ローラーの外径と他方の前記搬送ローラーの外径が異なる、
ことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像記録装置であって、
前記搬送径路上に連続して設けられた3つの前記搬送ローラーであり、前記搬送経路の上流側から1番目の前記搬送ローラー及び3番目の前記搬送ローラーが接触する前記媒体の面と2番目の前記搬送ローラーが接触する前記媒体の面とが異なる3つの前記搬送ローラーにおいて、
2番目の前記搬送ローラーの外径が、1番目の前記搬送ローラーの外径、及び、3番目の前記搬送ローラーの外径よりも、大きい、
画像記録装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像記録装置であって、
前記搬送径路上に連続して設けられた3つの前記搬送ローラーであり、前記搬送経路の上流側から1番目の前記搬送ローラー及び3番目の前記搬送ローラーが接触する前記媒体の面と2番目の前記搬送ローラーが接触する前記媒体の面とが異なる3つの前記搬送ローラーにおいて、
1番目の前記搬送ローラーの外径、及び、3番目の前記搬送ローラーの外径が、2番目の前記搬送ローラーの外径よりも、大きい、
画像記録装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像記録装置であって、
前記搬送径路上に連続して設けられた2つの前記搬送ローラーであり、外径が異なる2つの前記搬送ローラーは、前記記録部が前記媒体に画像を記録する領域よりも、前記搬送径路の上流側に位置する、
画像記録装置。
【請求項5】
一方の面が画像の記録層であり他方の面が粘着層である記録基材と、前記粘着層を覆う剥離基材とを有する媒体を、複数の搬送ローラーにより搬送径路に沿って搬送する搬送部と、
前記媒体に画像を記録する記録部と、
前記媒体に記録された画像を定着させる加熱部と、
を備え、
前記搬送径路上に連続して設けられた2つの前記搬送ローラーであり、接触する前記媒体の面が異なる2つの前記搬送ローラーにおいて、一方の前記搬送ローラーの外径と他方の前記搬送ローラーの外径が異なる、
画像記録装置を用いて前記媒体に画像を記録することを特徴とする画像記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−91346(P2012−91346A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238767(P2010−238767)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】