画像記録装置
【課題】複数の切換ギヤそれぞれと、それらに対応する伝達ギヤとを確実に且つ迅速に噛合させることが可能な手段を提供すること。
【解決手段】モータ65の駆動力が切換ギヤ71に伝達され、モータ66の駆動力が切換ギヤ72に伝達される。切換ギヤ71は伝達ギヤ171,172と噛合可能であり、切換ギヤ72は伝達ギヤ173と噛合可能である。各切換ギヤの位置が変更されると、切換ギヤの駆動伝達が切り換えられる。駆動伝達の切換時に、モータ65,66が所定回転量(伝達ギヤの1歯分に相当する回転量)だけ回転される。モータ65,66は、少なくとも一方のモータ66が駆動している間に、他方のモータ65が起動されるように駆動制御される。
【解決手段】モータ65の駆動力が切換ギヤ71に伝達され、モータ66の駆動力が切換ギヤ72に伝達される。切換ギヤ71は伝達ギヤ171,172と噛合可能であり、切換ギヤ72は伝達ギヤ173と噛合可能である。各切換ギヤの位置が変更されると、切換ギヤの駆動伝達が切り換えられる。駆動伝達の切換時に、モータ65,66が所定回転量(伝達ギヤの1歯分に相当する回転量)だけ回転される。モータ65,66は、少なくとも一方のモータ66が駆動している間に、他方のモータ65が起動されるように駆動制御される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに連結された切換ギヤの位置を変更することにより各駆動部に至る各伝達ギヤとの間で駆動伝達を切り換える機構を備えた画像記録装置に関し、特に、複数のモータそれぞれから各駆動部への駆動伝達を切り換えることが可能な画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力信号に基づいてインクを吐出して被記録媒体に画像記録を行う画像記録装置として、インクジェットプリンタが知られている。インクジェットプリンタは、記録ヘッドのアクチュエータにインクを導き、入力信号に応じた圧電素子、電歪素子などのアクチュエータの撓みや、発熱素子による局部的なインクの沸騰を利用してインクを加圧噴射する。
【0003】
インクジェットプリンタは、給紙トレイから排紙トレイへ記録用紙が搬送される過程において、記録ヘッドから被記録媒体へインクを選択的に吐出して画像記録を行う。給紙トレイから用紙搬送路への記録用紙の給送や、用紙搬送路における記録用紙の搬送は、給紙ローラや搬送ローラと称されるローラが、記録用紙に圧接して回転されることによって行われる。これらローラの駆動源としてDCモータやステッピングモータなどのモータが用いられ、モータから各ローラへの駆動伝達は、ピニオンギヤやタイミングベルトなどが組み合わされた駆動伝達機構により実現される。
【0004】
インクジェットプリンタに用いられる記録ヘッドにおいて、インクを吐出するノズルに気泡が生じたり異物が詰まったりすることにより、インクの吐出不良が起こり得る。インクの吐出不良を防止又は回復するために、記録ヘッドのノズルから気泡や異物を吸引除去する手法が知られており、一般にパージと呼ばれている。パージを行うためのメインテナンスユニットは、記録ヘッドのノズルを覆うキャップやキャップ内を減圧するためのポンプなどから構成される。メインテナンスユニットにおけるポンプの駆動や、排気弁の切換を行うカムなどの駆動源としてもモータが用いられ、モータから各駆動部への駆動伝達は、前述された駆動伝達機構により実現される。
【0005】
従来、モータから各駆動部への駆動伝達を切り換える動力伝達切換手段を有する画像記録装置が知られている(特許文献1参照)。この動力伝達切換手段は、キャリッジの移動位置に応じて、各駆動部へ択一的に動力を伝達する。これによって、1つのモータから、例えば、画像記録の際には給紙ローラや搬送ローラなどに駆動伝達を行い、パージの際にはメインテナンスユニットに駆動伝達を行うことができる。
【0006】
特許文献1によれば、1つのLFモータ(42)の駆動を、動力伝達切換手段(100)によって複数の作動部位へ動力伝達を行う。この動力伝達切換手段(100)は、1つの切換ギヤ(102)と、間欠給紙伝動ギヤ(113)、連続給紙伝動ギヤ(114)、下段給紙用伝動ギヤ(121)及びメインテナンス用伝動ギヤ(115)の4種類の伝動ギヤとを有する。切換ギヤ(102)は、レバー部(104a)が第1、第2、第3セット部(111,112,108)にそれぞれ位置決めされることにより、その位置に対応する種類の伝動ギヤと択一的に噛合して動力伝達する。レバー部(104a)は、作動モードに対応したキャリッジ(13)の主走査方向への移動によって、その位置が変更される。なお、かっこ内の参照符号は特許文献1に示されたものである。
【0007】
また、特許文献2には、搬送系駆動部に至る伝達ギヤ及びパージ系駆動部に至る伝達ギヤそれぞれに対する伝達ギヤとの切り換えを円滑に行うために、切換ギヤを別の伝達ギヤに噛み合わせる際に、モータを往復動させて切換ギヤを同方向へ往復動させている。これにより、切換前に噛合していた伝達ギヤからの切換ギヤの切り離し、及び切換ギヤと別の伝達ギヤとの噛み合わせが円滑に行われる。
【0008】
【特許文献1】特開2007−90761号公報
【特許文献2】特開平8−174958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
インクジェットプリンタに代表される画像記録装置には、ユーザの使い勝手を考慮して、複数の給紙トレイが設けられたものがある。ユーザは、頻繁に使用する記録用紙を大量に一方の給紙トレイに収容し、他方の給紙トレイには、必要に応じて所望サイズの記録用紙を収容する。このように、複数の給紙トレイを備えた画像記録装置には、各給紙トレイに対応して複数の給紙ローラが設けられている。また、近年、画像記録装置が多機能化しつつある傾向に鑑みれば、機能の増加に伴い様々な駆動部が装置内に設けられることになる。このように、複数の駆動部が設けられた画像記録装置においては、1つのモータでこれら複数の駆動部に動力を伝達する駆動伝達機構の構成が極めて複雑になる。また、駆動伝達の切換タイミングや切換順序が煩雑となるため、所望する伝達ギヤに切り換えられるまでに時間がかかり過ぎるという問題が生じ得る。
【0010】
一方、複数のモータを用いれば、駆動伝達機構を簡単な構成とすることができる。例えば、第1モータに連結された第1切換ギヤを、複数の給紙ローラそれぞれの伝達ギヤに択一的に噛合可能なように配置し、第2のモータに連結された第2切換ギヤを、搬送ローラやメインテナンスユニットに用いられるポンプそれぞれの伝達ギヤに択一的に噛合可能なように配置することが考えられる。しかしながら、各切換ギヤ及び各伝達ギヤは、必ずしも双方が噛合可能な位置にあるとは限らない。そのため、第1切換ギヤ及び第2切換ギヤを同時に移動させるようにその移動方向へ力を付与したとしても、各切換ギヤが各伝達ギヤに噛合されない場合がある。また、駆動部から各伝達ギヤに至る複数のギヤの面圧が影響して、切換ギヤが軸方向へ移動されず、その結果、切換ギヤと伝達ギヤとが噛合できない場合もある。いずれの場合でも、特許文献2に記載の如く、各モータを往復動させることにより、切換ギヤが伝達ギヤと噛合できると予測される。
【0011】
しかしながら、複数のモータを単に無造作に往復動させても、各切換ギヤを円滑に切り換えることができない場合がある。例えば、一方の組みのギヤ同士を噛合可能な状態にすることができたとしても、モータの回転速度が上昇し過ぎて、他方の組みのギヤ同士を噛合可能な状態にすることができない場合がある。また、ギヤの切り換えが行われる前に各切換ギヤが他の伝達ギヤと噛合している場合に複数のモータを交互に駆動させても、一方の切換ギヤが停止している場合は、そのギヤにかかる面圧の影響を受けて双方の切換ギヤが同時に移動できず、各切換ギヤが各伝達ギヤに噛合されない。
【0012】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の切換ギヤそれぞれと、それらに対応する伝達ギヤとを確実に且つ迅速に噛合させることが可能な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1) 本発明の画像記録装置は、第1回転方向及び該第1回転方向とは逆の第2回転方向へ回転制御可能な第1モータ及び第2モータと、上記第1モータからの駆動力を受けて回転される第1切換ギヤと、上記第1切換ギヤと同軸上に軸支され、上記第2モータからの駆動力を受けて回転される第2切換ギヤと、上記第1切換ギヤと噛合可能に配置され、対応する駆動部へ駆動力を伝達する第1伝達ギヤと、上記第2切換ギヤと噛合可能に配置され、対応する駆動部へ駆動力を伝達する第2伝達ギヤとを具備する。この画像記録装置は、上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤそれぞれの軸方向の移動に応じて上記第1伝達ギヤ又は上記第2伝達ギヤに上記第1切換ギヤ又は上記第2切換ギヤが噛合されるように構成されている。また、当該画像記録装置は、上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤが移動される際に、上記第1モータ及び上記第2モータのいずれか一方のモータを所定回転量だけ回転駆動させ、少なくとも上記一方のモータが回転駆動している間に他方のモータを起動して所定回転量だけ回転駆動させる制御手段を備えている。
【0014】
第1切換ギヤ及び第2切換ギヤが移動されてその位置が変更されることで、第1切換ギヤが第1伝達ギヤに噛合可能となり、第2切換ギヤが第2伝達ギヤに噛合可能となる。各切換ギヤ及び各伝達ギヤは、その用途に応じた伝達比に設計されている。
【0015】
本発明の画像記録装置では、上記切換ギヤと上記伝達ギヤとの噛合を円滑にするため、上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤが位置変更される際に、制御手段によって、第1モータ及び第2モータが所定回転量だけ駆動される。詳細には、例えば、上記第1モータ(又は第2モータ)を所定回転量だけ回転駆動させ、そして、少なくとも第1モータ(又は第2モータ)が回転駆動している間に他方の第2モータ(又は第1モータ)を起動して所定回転量だけ回転駆動させる。ここで、起動とは、停止状態にあるモータを所定回転速度になるまで加速することである。また、所定回転量としては、第1モータ及び第2モータそれぞれを同じ回転量にしてもよいし、異なる回転量としてもよい。例えば、上記所定回転量は、第1伝達ギヤや第2伝達ギヤの1ピッチ(隣り合う歯の間隔)分或いは数ピッチ分に相当する回転量に設定することが考えられる。
【0016】
モータ起動直後は、モータは低回転で回転される。モータが低回転で回転されている場合は、切換ギヤと伝達ギヤとが噛合可能な状態になりやすい。本発明では、少なくとも一方のモータが起動されて回転駆動している間に、他方のモータが起動される。つまり、一方のモータが所定回転量だけ回転された後に、他方のモータが所定回転量だけ回転されるのではなく、少なくとも、双方のモータが同時に回転している重複駆動領域が存在する。これにより、双方の切換ギヤが回転駆動されることで切換ギヤにかかる面圧が解放されるとともに、少なくとも一方のモータについては、モータ起動後の低回転領域において切換ギヤが伝達ギヤと噛合可能な状態になる。その結果、各モータの回転速度が上がりきる前に各切換ギヤと各伝達ギヤとを迅速に、且つ確実に噛み合わせることができる。
【0017】
(2) 上記制御手段は、上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤが移動される際に、同じタイミングで上記第1モータ及び上記第2モータを起動させて上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤを同じタイミングで回転させるものである。
【0018】
これにより、双方のモータの起動直後の低回転領域を一致させることができる。その結果、各切換ギヤを各伝達ギヤにより確実に噛み合わせることができる。
【0019】
(3) 上記制御手段は、上記第1モータを上記第1回転方向又は上記第2回転方向のいずれかへ第1回転量だけ回転させた後に上記第1モータを停止させる第1制御と、該第1制御が行われている間に、上記第2モータを上記第1回転方向へ第2回転量だけ回転させ、更に上記第2回転方向へ上記第2回転量だけ回転させた後に上記第2モータを停止させる第2制御を行うものが好ましい。
【0020】
(4) この場合、上記制御手段は、上記第2制御の終了時と略同時期に上記第1制御を終了させるものであってもよい。
【0021】
(5) また、上記制御手段は、上記第1制御及び上記第2制御の双方が終了した後に、上記第1制御及び上記第2制御を予め定められた回数繰り返し行うことが好ましい。
【0022】
これにより、初回の動作で各切換ギヤと各伝達ギヤとが噛合できなても、各切換ギヤと各伝達ギヤとを噛合させる機会が与えられる。そのため、各切換ギヤと各伝達ギヤとを確実に噛み合わせることができる。
【0023】
(6) 上記制御手段は、上記第1モータを上記第1回転方向又は上記第2回転方向のいずれかへ第3回転量だけ回転させた後に上記第1モータを停止させる第3制御と、該第3制御が行われている間に、上記第2モータを上記第1モータと同方向又は逆方向のいずれかへ第4回転量だけ回転させた後に上記第2モータを停止させる第4制御を行うものであってもよい。
【0024】
(7) この場合、上記制御手段は、上記第3制御及び上記第4制御の双方が終了した後に、上記第3制御及び上記第4制御を予め定められた回数繰り返し行うことが好ましい。
【0025】
これにより、初回の動作で各切換ギヤと各伝達ギヤとが噛合できなくても、各切換ギヤと各伝達ギヤとを噛合させる機会が与えられる。そのため、各切換ギヤと各伝達ギヤとを確実に噛み合わせることができる。
【0026】
(8) 本発明の画像記録装置は、キャリッジと、位置決め部材と、伸縮部材と、を更に具備する。キャリッジは、記録ヘッドを搭載して所定方向へ往復動される。位置決め部材は、上記キャリッジの当接により当該キャリッジが往復動する所定方向へスライドして、上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤの位置を軸方向へ変更するように設けられている。この位置決め部材は、上記第1切換ギヤを上記第1伝達ギヤと噛合可能に位置決めし、上記第2切換ギヤを上記第2伝達ギヤと噛合可能に位置決めする。伸縮部材は、上記キャリッジが往復動する所定方向に沿った一方向へ上記位置決め部材を弾性付勢する。
【0027】
これにより、当該画像記録装置において、上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤの移動機構が具現化される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、第1切換ギヤ及び第2切換ギヤそれぞれの駆動伝達が同時に切り換えられる際に、第1切換ギヤ及び第2切換ギヤそれぞれと、それらに対応する伝達ギヤとを確実に、且つ迅速に噛合させることができる。
【0029】
また、上記伸縮部材によって上記位置決め部材を弾性付勢するよう構成された画像記録装置においては、第1切換ギヤ及び第2切換ギヤの移動に必要な伸縮部材の弾性付勢力を小さくすることができるため、各切換ギヤを低トルクで回転させることができる。その結果、モータで消費される電力を抑制することができ、且つ、切換ギヤ周辺機構を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0031】
[図面の説明]
図1は、本発明の実施形態にかかる複合機10の外観構成を示す図であり、複合機10を正面側から見た斜視図である。図2は、プリンタ部11の縦断面構造を示す模式断面図である。図3は、プリンタ部11の内部構成を示す図であり、プリンタ部11を背面側から見た斜視図である。図4は、駆動切換機構70の構成を示す斜視図である。図5は、ギヤユニット110の構成及び伝達経路を示す模式図である。図6は、入力レバー74の位置及びギヤユニット110の動作を説明するための模式図である。図7は、ギヤユニット110の動作不良を説明するための模式図である。図8は、モータ制御部130の構成を示すブロック図である。図9は、モータ制御部130によって実行されるモータ制御の処理手順の一例を説明するフローチャートである。図10は、ASFモータ65及びLFモータ66の駆動状態を説明するタイミングチャートである。図11は、モータ制御部130によって実行されるモータ制御の処理手順の変形例1を説明するフローチャートである。図12は、変形例1にかかるASFモータ65及びLFモータ66の駆動状態を説明するタイミングチャートである。図13は、モータ制御部130によって実行されるモータ制御の処理手順の変形例2を説明するフローチャートである。図14は、変形例2にかかるASFモータ65及びLFモータ66の駆動状態を説明するタイミングチャートである。図15は、モータ制御部130によって実行されるモータ制御の処理手順の変形例3を説明するフローチャートである。図16は、変形例3にかかるASFモータ65及びLFモータ66の駆動状態を説明するタイミングチャートである。図17は、モータ制御部130によって実行されるモータ制御の処理手順の変形例4を説明するフローチャートである。
【0032】
[複合機10の概略構成]
図1及び図2に示されるように、本実施形態にかかる複合機10(本発明の画像記録装置の一例)は、プリンタ部11とスキャナ部12を一体的に備え、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。なお、プリンタ部11によるプリント機能以外の機能は任意であり、例えば、スキャナ部12がなく、スキャン機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタとして本発明にかかる画像記録装置が実施されてもよい。
【0033】
複合機10の下側にプリンタ部11が配置され、上側にスキャナ部12が配置されている。プリンタ部11は、主にコンピュータなどの外部情報機器と接続されて、外部情報機器から送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、記録用紙や樹脂シートなどのシート状の被記録媒体に画像や文字を記録する。スキャナ部12は、所謂フラットベッドスキャナである。
【0034】
複合機10の外形は、高さ(矢印102)より横幅(矢印101)及び奥行き(矢印103)が大きい幅広薄型の概ね直方体である。複合機10の外形は、主として、プリンタ部11の筐体15と、スキャナ部12の筐体16とから構成される。
【0035】
プリンタ部11の筐体15には、正面に開口13が設けられている。開口13の内部には、第1給紙カセット20及び第2給紙カセット21が設けられている。第1給紙カセット20及び第2給紙カセット21は、第1給紙カセット20を上側として上下二段に設けられている。第1給紙カセット20の上面22は、排紙トレイとして機能する。第1給紙カセット20又は第2給紙カセット21に収容された記録用紙が、プリンタ部11の内部へ給送されて所望の画像が記録され、画像記録後の記録用紙が第1給紙カセット20の上面22へ排出される。
【0036】
プリンタ部11の筐体15の正面上部には、操作パネル14が設けられている。操作パネル14において、プリンタ部11及びスキャナ部12に所望の動作をさせるための所定の入力が行われる。操作パネル14は、入力を行うための複数のボタンや、複合機10の状態やエラー表示などを行うためのディスプレイを有する。なお、複合機10に外部情報機器が接続されていると、外部情報機器からプリンタドライバやスキャナドライバなどの通信ソフトを通じて送信される指示に基づいても、複合機10は動作する。
【0037】
[プリンタ部11]
図2に示されるように、プリンタ部11には、第1給紙カセット20及び第2給紙カセット21が設けられている。第2給紙カセット21は、プリンタ部11の最も底側に設けられている。第1給紙カセット20は、第2給紙カセット21の上側に設けられている。図示されるように、第1給紙カセット20及び第2給紙カセット21は、上下二段に配置されている。第1給紙カセット20又は第2給紙カセット21と第1給紙カセット20の上面22とは、第1用紙搬送路23又は第2用紙搬送路24によって記録用紙が搬送可能にそれぞれ連続されている。第1給紙カセット20に収容された記録用紙は、第1給紙ローラ25によって給送される。第1給紙カセット20から給送された記録用紙は、第1用紙搬送路23により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット41(発明の画像記録手段の一例)へ搬送され、画像記録ユニット41により画像記録が行われた後、第1給紙カセット20の上面22へ排出される。第2給紙カセット21に収容された記録用紙は、第2給紙ローラ30によって給送される。第2給紙カセット21から給送された記録用紙は、第2用紙搬送路24により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット41へ搬送され、画像記録ユニット41により画像記録が行われた後、第1給紙カセット20の上面22へ排出される。
【0038】
第1給紙カセット20は、装置背面側の一部が開口された容器形状であり、その内部空間に、記録用紙などのシート部材が積層状態で収容される。本実施形態では、第1給紙ローラ25が上記開口から内部空間に挿通されて、記録用紙の上面に当接される。第1給紙カセット20には、例えば、A3サイズ以下のA4サイズ、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙が収容可能である。第1給紙カセット20の上面22は、装置正面側に設けられており、この上面22を排紙トレイとして記録用紙が排出される。
【0039】
第2給紙カセット21は、装置背面側の一部が開口された容器形状であり、その内部空間に、記録用紙などのシート部材が積層状態で収容される。本実施形態では、第2給紙ローラ30が上記開口から内部空間に挿通されて、記録用紙の上面に当接される。第2給紙カセット21には、例えば、A3サイズ以下のA4サイズ、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙が収容可能である。1つの給紙カセットしか備えていない画像記録装置の場合、既に収容されている記録用紙とは異なるサイズや種類の記録用紙に画像を記録しようとすると、給紙カセット内の記録用紙をその都度入れ換えなければならない。しかし、本実施形態のように、2つの給紙カセット(第1給紙カセット20及び第2給紙カセット21)を備える複合機10であれば、第2給紙カセット21に、第1給紙カセット20に収容された記録用紙とはサイズや種類が異なる記録用紙を収容することにより、上述のような問題は発生しない。すなわち、1つの給紙カセットにおいて記録用紙を入れ換える作業を行うことなく、2種類の記録用紙に対して選択的に画像記録が可能になるのである。
【0040】
第1給紙カセット20の装置奥部側(図2において左側)には、第1給紙ローラ25が設けられている。第1給紙ローラ25は、第1給紙カセット20に積載された記録用紙を第1用紙搬送路23へ供給する。第1給紙ローラ25は、プリンタ部11内に設けられたASF(Auto Sheet Feed)モータ65(本発明の第2モータの一例、図5参照)のCW方向(本発明の第1回転方向に相当)の駆動力(回転力)が図示しないギヤ伝達機構を介して駆動伝達されて回転する。第1給紙ローラ25は、第1アーム26の先端に回転可能に支持されている。第1アーム26の基端側は、第1給紙カセット20の上側に架設された駆動軸28に回動可能に支持されている。そのため、第1給紙ローラ25が第1給紙カセット20に接離する方向へ上下に回動可能である。第1アーム26は、第1給紙ローラ25の重量又はバネなどに付勢されて下側へ回動されており、第1給紙カセット20に収容された記録用紙の量に応じて上側又は下側へ移動する。これにより、第1給紙ローラ25が第1給紙カセット20における最上位置の記録用紙に接触する。その状態で第1給紙ローラ25が回転されると、第1給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力により、少なくとも最上位置の記録用紙が第1用紙搬送路23に向けて給送される。ここで、複数の記録用紙が第1用紙搬送路23に向けて給送され始めたとしても、図2において第1給紙カセット20の左方に配置された分離傾斜面20Aに設けられている図示しない分離片によって、1枚の記録用紙のみが第1用紙搬送路23へ送り出されるのである。
【0041】
第2給紙カセット21の装置奥部側(図2において左側)には、第2給紙ローラ30が設けられている。第2給紙ローラ30は、第2給紙カセット21に積載された記録用紙を第2用紙搬送路24へ供給する。第2給紙ローラ30は、ASFモータ65(図5参照)のCCW方向(本発明の第2回転方向に相当)の駆動力(回転力)が図示しないギヤ伝達機構を介して駆動伝達されて回転する。第2給紙ローラ30は、第2アーム31の先端に回転可能に支持されている。第2アーム31の基端側は、第2給紙カセット21の上側に架設された駆動軸33に回動可能に支持されている。そのため、第2給紙ローラ30が第2給紙カセット21に接離する方向へ上下に回動可能である。第2アーム31は、第2給紙ローラ30の重量又はバネなどに付勢されて下側へ回動されており、第2給紙カセット21に収容された記録用紙の量に応じて上側又は下側へ移動する。これにより、第2給紙ローラ30が第2給紙カセット21における最上位置の記録用紙に接触する。その状態で第2給紙ローラ30が回転されると、第2給紙ローラ30のローラ面と記録用紙との間の摩擦力により、少なくとも最上位置の記録用紙が第2用紙搬送路24に向けて給送される。ここで、複数の記録用紙が第2用紙搬送路24に向けて給送され始めたとしても、図2において第2給紙カセット21の左方に配置された分離傾斜面21Aに設けられている図示しない分離片によって、1枚の記録用紙のみが第2用紙搬送路24へ送り出されるのである。
【0042】
本実施形態では、第1給紙ローラ25及び第2給紙ローラ30は、ASFモータ65から伝達されたCW方向又はCCW方向の駆動力を受けて所定方向へ回転される。ASFモータ65から第1給紙ローラ25及び第2給紙ローラ30に至る伝達経路には、ワンウェイクラッチ或いは遊星ギヤなどの伝達切換機構が設けられている。したがって、ASFモータ65がCW方向に回転駆動されると、第1給紙ローラ25のみに回転駆動力が伝達され、第2給紙ローラ30への駆動伝達は遮断される。一方、ASFモータ65がCCW方向に回転駆動されると、第2給紙ローラ25のみに回転駆動力が伝達され、第1給紙ローラ30への駆動伝達は遮断される。
【0043】
第1給紙カセット20の先端の上方には第1用紙搬送路23が形成されている。第1用紙搬送路23は、第1給紙カセット20の装置奥部側から上方へ延び、続いて装置正面側へ湾曲して、複合機10の背面側から正面側(図2の右側)へ延び、画像記録ユニット41を経て第1給紙カセット20の上面22へ通じている。つまり、第1用紙搬送路23は、図2において横向き略U字形状に構成されている。第1用紙搬送路23は、画像記録ユニット41などが配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。
【0044】
また、第2給紙カセット21の先端の上方には第2用紙搬送路24が形成されている。第2用紙搬送路24は、第1用紙搬送路23と同様に、図2において横向き略U字形状に構成されて、第2給紙カセット21から画像記録ユニット41を経て第1給紙カセット20の上面22へ通じている。この第2用紙搬送路24は、画像記録ユニット41よりも搬送方向上流側において第1用紙搬送路23と合流し、この合流箇所よりも下流側では、一つの搬送パスを形成している。第2用紙搬送路24も、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。
【0045】
[画像記録ユニット41]
図2に示されるように、第1用紙搬送路23に画像記録ユニット41が設けられている。画像記録ユニット41は、第1用紙搬送路23における記録用紙の搬送過程において、記録用紙に画像を記録するものである。画像記録ユニット41は、キャリッジ38と、インクジェット記録方式の記録ヘッド39とを備える周知の画像記録手段である。
【0046】
図3に示されるように、第1用紙搬送路23の上側に一対のガイドレール43,44が設けられている。一対のガイドレール43,44は、第1用紙搬送路23の上側において記録用紙の搬送方向に所定距離を隔てられて、記録用紙の搬送方向と直交する方向(矢印101の方向)に延設されている。ガイドレール43,44は、プリンタ部11の筐体15内に設けられて、プリンタ部11を構成する各部材を支持するフレームの一部を構成している。キャリッジ38は、ガイドレール43,44を跨ぐように載置されて、ガイドレール43,44上を記録用紙の搬送方向と直交する方向に往復動可能である。
【0047】
記録用紙の搬送方向上流側に配設されたガイドレール43は、第1用紙搬送路23の幅方向(矢印101の方向)の長さがキャリッジ38の往復動範囲より長い平板状に構成されている。記録用紙の搬送方向下流側に配設されたガイドレール44は、第1用紙搬送路23の幅方向の長さがガイドレール43とほぼ同じ長さの平板状に構成されている。キャリッジ38における搬送方向上流側の端部がガイドレール43上に載置され、下流側の端部がガイドレール44上に載置されて、ガイドレール43,44の長手方向に沿ってキャリッジ38が摺動される。ガイドレール44における搬送方向上流側の縁部45は、上方へ向かって略直角に曲折されている。ガイドレール43,44に担持されたキャリッジ38は、縁部45をローラ対などの挟持部材により摺動可能に挟持している。これにより、キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向に対して位置決めされ、且つ、記録用紙の搬送方向と直交する方向に摺動可能になる。
【0048】
ガイドレール44の上面には、ベルト駆動機構46が配設されている。ベルト駆動機構46は、第1用紙搬送路23の幅方向(矢印101の方向)の両端付近にそれぞれ設けられた駆動プーリ(不図示)と従動プーリ48との間に、内側に歯が設けられた無端環状のベルト49が張架されてなるものである。なお、図3において、駆動プーリはキャリッジ38によって隠されている。駆動プーリの軸にはCRモータ(不図示)から駆動力(回転力)が入力され、駆動プーリの回転によりベルト49が周運動する。なお、ベルト49は、その一部がキャリッジ38に固定された無端環状のもののほか、有端のベルトの両端部をキャリッジ38に固着するものを用いてもよい。
【0049】
ガイドレール43には、レバーガイド91(本発明の位置決め部材の一例)が設けられている。なお、図4では、レバーガイド91の図示が省略されている。レバーガイド91は、ガイドレール43のメインテナンス機構55側に形成された図示しない嵌合孔に嵌め込まれてガイドレール43に固定されている。レバーガイド91の下方に駆動切換機構70が配置されている。レバーガイド91は、内側に所定形状のガイド孔95(図5参照)が形成された略平板状の部材である。ガイド孔95には、後述する入力レバー74(本発明の位置決め部材の一例)の入力部77が下側から挿入されて、ガイドレール43の上側へ突出される。ガイド孔95に挿入された入力部77は、外力が付与されなければ、図5に示されるように、ガイド孔95における装置内側の端部である第1駆動伝達位置P1に維持される。
【0050】
キャリッジ38は、その底面側においてベルト49に固着されている。したがって、CRモータ(不図示)によるベルト49の周運動に基づいて、キャリッジ38が縁部45を基準としてガイドレール43,44上を往復動する。このようなキャリッジ38に記録ヘッド39が搭載されて、記録ヘッド39が、用紙搬送路23の幅方向(矢印101の方向)を所定方向として往復動される。
【0051】
図3に示されるように、キャリッジ38の搬送方向上流端には、搬送方向上流側へ水平方向に突出するガイド片92が設けられている。ガイド片92はキャリッジ38とともにガイドレール43の延出方向へ往復動される。キャリッジ38の移動に伴って、ガイド片92が、ガイド孔95(図5参照)からガイドレール43の上側へ突出する入力部77(図4参照)と当接する。これにより、入力レバー74の位置が変えられる。入力レバー74の位置は、キャリッジ38の往復動を制御することにより任意に選択的に変更することができる。入力レバー74が所定の位置(後述する第1駆動伝達位置P1、第2駆動伝達位置P2、第3駆動伝達位置P3)に選択的に移動されると、後述するギヤユニット110の第1切換ギヤ71(本発明の第1切換ギヤの一例)及び第2切換ギヤ72(本発明の第2切換ギヤの一例)が入力レバー74の位置に対応する位置に位置決めされる。
【0052】
図2及び図3に示されるように、用紙搬送路23の下側には、記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38が往復動する範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に渡って配設されている。プラテン42の幅(矢印101方向の長さ)は、当該複合機10において使用可能な記録用紙、すなわち、プリンタ部11において使用可能な記録用紙の最大幅より十分に幅広である。プラテン42の上面に支持された記録用紙は、記録ヘッド39との距離が一定に保持される。この記録用紙に、記録ヘッド39から吐出されたインク滴が着弾する。
【0053】
図2に示されるように、画像記録ユニット41よりも搬送方向104の上流側には、一対の搬送ローラ60及びピンチローラ61が設けられている。ピンチローラ61は搬送ローラ60の下側に圧接状態で配置されている。搬送ローラ60は、プリンタ部11内に設けられたLF(Line Feed)モータ66(本発明の第1モータの一例、図5参照)の駆動力(回転力)が駆動伝達されて、連続的に回転駆動され、或いは所定の改行幅で間欠駆動される。搬送ローラ60及びピンチローラ61間に記録用紙が進入すると、記録用紙は挟持されつつ、プラテン42上へ搬送される。
【0054】
画像記録ユニット41よりも搬送方向104の下流側には、排紙ローラ62及び拍車63が設けられている。拍車63は排紙ローラ62の上側に圧接状態で配置されている。排紙ローラ62と搬送ローラ60との間には、ギヤ等の駆動伝達機構が設けられている。したがって、排紙ローラ62は、LFモータ66の駆動力が上記駆動伝達機構を介して伝達されることにより、搬送ローラ60と同時に連続的に回転駆動され、或いは所定の改行幅で間欠駆動される。排紙ローラ62及び拍車63は、画像記録済みの記録用紙を挟持して第1給紙カセット20の上面22へ搬送する。
【0055】
図3に示されるように、プラテン42における幅方向(矢印101の方向)の両側のうち、一方にメインテナンス機構55が配設され、他方にフラッシング部56が配設されている。図3において、メインテナンス機構55は左端部(正面から見て右端部)に設けられ、フラッシング部56は右端部(正面から見て左端部)に設けられている。フラッシング部56は、フラッシングと呼ばれる記録ヘッド39からのインクの空吐出にて吐出される廃インクを受けるための部位である。フラッシング部56内にはスポンジやフェルト等が敷設されており、フラッシングにて吐出されたインクは、このスポンジやフェルト等に回収されて図示しない廃インク吸収体に保持される。
【0056】
メインテナンス機構55は、記録ヘッド39のノズルから気泡や異物を吸引除去する負圧パージ動作や、記録ヘッド39のノズル面を図示しないワイパで清掃するワイプ動作、更には記録ヘッド39内に設けられたサブタンク内の気泡を除去する排気動作等を行うことにより記録ヘッド39の状態を常に最良の状態に維持する機構である。メインテナンス機構55は、記録ヘッド39のノズルや記録ヘッド39の排気口を覆うキャップ57を有する。キャップ57は、公知のリフトアップ機構51(図5参照)によって上下動されて記録ヘッド39のノズル面や排気口面と接離する。図3には示されていないが、メインテナンス機構55は、さらに吸引ポンプ52(図5参照)を有する。吸引ポンプ52は、キャップ57と接続されており、吸引ポンプ52が動作されることによって、キャップ57の内部が負圧にされる。キャップ57が記録ヘッド39と接触してノズル及び排気口をそれぞれ覆った状態において吸引ポンプ52が作動されると、記録ヘッド39から気泡や異物が吸引除去される。メインテナンス機構55における吸引ポンプ52は、LFモータ66の駆動力が駆動伝達されることによって動作される。また、メインテナンス機構55におけるリフトアップ機構51は、ASFモータ65の駆動力が駆動伝達されることによって動作される。つまり、メインテナンス機構55における吸引ポンプ52及びリフトアップ機構51それぞれが、本発明における駆動部に相当する。このようにメインテナンス機構55及びフラッシング部56が用いられて、記録ヘッド39内の気泡や混色インクの除去、乾燥防止などのメインテナンスが行われる。
【0057】
[駆動切換機構70]
以下、ASFモータ65及びLFモータ66の2つのモータから第1給紙ローラ25、第2給紙ローラ30、吸引ポンプ52、リフトアップ機構51などの各駆動へ駆動伝達を切り換えるための駆動切換機構70について説明する。駆動切換機構70は、ガイドレール44,45などにより構成されるフレームの右側(図3における左側)に配置されて、ASFモータ65及びLFモータ66それぞれから独立に出力される2系統の駆動力を、各駆動部へ択一的に伝達するものである。
【0058】
図4及び図5に示されるように、駆動切換機構70は、第1切換ギヤ71や第2切換ギヤ72などからなるギヤユニット110と、このギヤユニット110を支持する支持フレーム120とにより構成されている。ギヤユニット110は、支持フレーム120に支持された1本の支軸73に第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72が回転可能、かつ、軸線方向にスライド可能に支持されている。なお、図5において、紙面左側が装置の内側であり、紙面右側が装置の外側である。
【0059】
図5に示されるように、ASFモータ65の駆動力は第1切換ギヤ71に伝達される。ASFモータ65から受けた回転駆動力によって第1切換ギヤ71が回転される。ASFモータ65から第1切換ギヤ71に至る伝達機構としては、複数のギヤからなるギヤ列が考えられる。このギヤ列は、ASFモータ65の出力ギヤ75と第1切換ギヤ71との間に設けられており、ASFモータ65の回転駆動力を第1切換ギヤ71に伝達する。上記ギヤ列において、第1切換ギヤ71と噛合する伝達ギヤ67の厚み(軸方向の長さ)は、支軸73における第1切換ギヤ71のスライド範囲に対して十分に厚いので、第1切換ギヤ71のスライド範囲において、第1切換ギヤ71と伝達ギヤ67とは常時噛合される。第1切換ギヤ71は、伝達ギヤ67と噛合した状態で、支軸73の軸方向へ移動可能である。
【0060】
LFモータ66の駆動力は、第2切換ギヤ72に伝達される。LFモータ66から受けた回転駆動力によって第2切換ギヤ72が回転される。LFモータ66から第2切換ギヤ72に至る伝達機構としては、例えば、搬送ローラ60の一端に図示しない伝達ギヤを搬送ローラ60と同軸かつ一体に回転するように設け、この伝達ギヤと第2切換ギヤ72とを複数のギヤからなるギヤ列を介して接続することにより実現可能である。LFモータ66の出力ギヤ76は、搬送ローラ60の他端にギヤ連結されている。LFモータ66の駆動力が搬送ローラ60の他端に入力されると、搬送ローラ60が回転されるとともに、第2切換ギヤ72がLFモータ66の駆動力に応じて回転駆動される。上記ギヤ列において、第2切換ギヤ72と噛合する伝達ギヤ68の厚み(軸方向の長さ)は、支軸73における第2切換ギヤ72のスライド範囲に対して十分に厚いので、第2切換ギヤ72のスライド範囲において、第2切換ギヤ72と伝達ギヤ68とは常時噛合される。第2切換ギヤ72は、伝達ギヤ68と噛合した状態で、支軸73の軸方向へ移動可能である。
【0061】
[ギヤユニット110]
図5に示されるように、ギヤユニット110は、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72に加えて、第1コイルバネ111(本発明の伸縮部材の一例)と、第2コイルバネ112(本発明の伸縮部材の一例)と、入力レバー74とが支軸73に支持されてなる。これら各部材は、支軸73の軸線方向にスライド可能に支持されている。支軸73は、支持フレーム120によって水平方向に支持されている。
【0062】
第1切換ギヤ71は、装置の外側(図5の右側)に配置され、第2切換ギヤ72は装置の内側(図5の左側)に配置されている。支軸73の軸線方向(図5の左右方向)は、キャリッジ38が往復動する方向(図1の矢印101)と一致する。この支軸73に沿って第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72がスライド移動されることにより、第1切換ギヤ71は、後述する第1伝達ギヤ171及び第2伝達ギヤ172それぞれとの噛合が選択される。また、第2切換ギヤ72は、フリーの状態か後述の第3伝達ギヤ173との噛合かが選択される。
【0063】
図4に示されるように、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72には、径方向の角部に面取り加工が施されている。また、図示しないが、伝達ギヤ171〜173それぞれにも、径方向の角部に面取り加工が施されている。これらの面取りは、各切換ギヤ71,72と伝達ギヤ171〜173との噛合を容易にするために施されている。
【0064】
第2切換ギヤ72は、第2切換ギヤ71側へ延出された円筒部79を有する。この円筒部79は、その延出端が第1切換ギヤ71に当接して第1切換ギヤ71と第2切換ギヤ72との離間距離を一定に保持するとともに、第2コイルバネ112の付勢力を第1切換ギヤ71に伝達するものである。円筒部79の寸法は、後述する伝達ギヤ171〜173の厚みや数などによって決定される。
【0065】
入力レバー74は、第1切換ギヤ71よりも装置の外側(図5の右側)に配置されている。この入力レバー74と、上述のレバーガイド91とによって、第1切換ギヤ71が後述する第1伝達ギヤ171及び第2伝達ギヤ172のいずれかに噛合可能に位置決めされ、且つ、第2切換ギヤ72がフリーの位置か後述の第3伝達ギヤ173に噛合可能な位置のいずれかに位置決めされる。つまり、入力レバー74及びレバーガイド91によって本発明の位置決め部材が実現されている。
【0066】
図5に示されるように、入力レバー74は、支軸73に外嵌される筒状の円筒部78と、円筒部78から径方向に突設された入力部77とを有する。ギヤユニット110が支持フレーム120に装着された状態で、入力レバー74の入力部77が後述する開口122を通じてレバーガイド91のガイド孔95に挿入される。円筒部78は、支軸73に外嵌されて軸線方向にスライド自在且つ回転自在である。円筒部78がスライドされると、入力部77は、支軸73の軸線方向へスライドし、円筒部78が支軸73の周りに回転すると、入力部77も同方向に回転する。
【0067】
第1コイルバネ111は、入力レバー74よりも装置の外側(図5の右側)に配置されている。また、第2コイルバネ112は、第2切換ギヤ72よりも装置の内側(図5の左側)に配置されている。
【0068】
ギヤユニット110が支持フレーム120に装着された状態で、第1コイルバネ111及び第2コイルバネ112は圧縮されている。つまり、第1コイルバネ111及び第2コイルバネ112は所謂圧縮バネとして機能している。第1コイルバネ111及び第2コイルバネ112は、支軸73の軸線方向に伸縮可能に設けられている。入力レバー74は、第1コイルバネ111によって第1切換ギヤ71側(図5の矢印85の方向)へ付勢されている。また、第2切換ギヤ72は、第2コイルバネ112によって第1切換ギヤ71側(図5の矢印86の方向)へ付勢されている。つまり、第1切換ギヤ71と第2切換ギヤ72とは、相反する方向へ付勢する2つのコイルバネ111,112によって、互いに接近する方向へ付勢されている。なお、2つのコイルバネ111,112によって付勢されて互いに当接された第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72は、一体となった状態、すなわち、それぞれの部材が互いに当接した状態において独立して回転可能である。
【0069】
本実施形態では、第1コイルバネ111の付勢力(矢印85の方向の付勢力)は、第2コイルバネ112の付勢力(矢印86の方向の付勢力)より大きく設定されている。したがって、第2切換ギヤ72、第1切換ギヤ71、入力レバー74は、外力が付与されなければ、第1コイルバネ111に付勢されて、第2コイルバネ112を圧縮させるとともに、支軸73を矢印85へ向かってスライドする。そして、入力レバー74の入力部77がガイド孔95の内側端部(図5の左側端部)に当接すると、矢印85方向のスライドが停止する。このとき、入力部77は、第1駆動伝達位置P1に配置される。この第1駆動伝達位置P1において、第1切換ギヤ71は第2伝達ギヤ172と噛合しており、第2切換ギヤ72はフリー状態となっている。入力部77にガイド片92が当接して、該入力部77がガイド片92に押されると、入力部77は、各切換ギヤ71,72による駆動伝達を切り換えるために、第2駆動伝達位置P2または第3駆動伝達位置P3に移動する。
【0070】
図4に示されるように、支持フレーム120の上面121に開口122が形成されている。この開口122は、支軸73の軸線方向へ延びる長孔である。支持フレーム120にギヤユニット110が装着された状態で、開口122に入力レバー74の入力部77が挿通される。開口122の横幅、すなわち支軸73の軸線方向の長さ寸法は、入力レバー74の移動範囲よりも大きく設定されている。したがって、入力レバー74の移動が開口122によって規制されることはない。
【0071】
[伝達ギヤ171〜173]
図5に示されるように、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72の下方には、支軸73と平行な支軸180に第1伝達ギヤ171、第2伝達ギヤ172及び第3伝達ギヤ173が並列に配置されている。第1伝達ギヤ171及び第2伝達ギヤ172は、第1切換ギヤ71と噛離可能な位置に配置されている。このように配置された第1伝達ギヤ171及び第2伝達ギヤ172が、本発明の第1伝達ギヤに相当する。第3伝達ギヤ173は第2切換ギヤ72と噛離可能な位置に配置されている。このように配置された第3伝達ギヤ173が、本発明の第2伝達ギヤに相当する。第1伝達ギヤ171、第2伝達ギヤ172及び第3伝達ギヤ173は、その厚み等が異なるが、外径は同等である。第1伝達ギヤ171、第2伝達ギヤ172及び第3伝達ギヤ173は、支軸180に、装置外側(図5の右側)から順に装置内側(図5の左側)へ並べられている。
【0072】
伝達ギヤ171〜173は、各駆動部に駆動力をそれぞれ伝達するためのものである。図5に示されるように、第1伝達ギヤ171は、キャップ57を上下動させるリフトアップ機構51などへの駆動伝達を行う。第2伝達ギヤ172は、第1給紙ローラ25及び第2給紙ローラ30への駆動伝達を行う。第3伝達ギヤ173は、メインテナンス機構55における吸引ポンプ52などへの駆動伝達を行う。このように、第1伝達ギヤ171、第2伝達ギヤ172及び第3伝達ギヤ173は、複数の各駆動部に駆動力をそれぞれ伝達すべく割り当てが定められている。第1伝達ギヤ171、第2伝達ギヤ172及び第3伝達ギヤ173から各駆動部への駆動伝達機構は、ギヤ列やベルトなどを用いた公知の駆動伝達機構を採用することができ、本発明の要旨には直接影響しないので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0073】
図6(A)に示されるように、入力レバー74の入力部77が第1駆動伝達位置P1に配置された状態では、第1切換ギヤ71が第2伝達ギヤ172と噛合されており、第2切換ギヤ72がフリーの状態にある。図6(B)に示されるように、入力部77が第1駆動伝達位置P1から第2駆動伝達位置P2に移動されると、第1切換ギヤ71が第2伝達ギヤ172から離れて第1伝達ギヤ171と噛合される。一方、第2切換ギヤ72は、フリーの状態を維持する。図6(C)に示されるように、入力部77が第2駆動伝達位置P2から第3駆動伝達位置P3に移動されると、第1切換ギヤ71は第1伝達ギヤ171と噛合したまま軸方向へスライドする。一方、第2切換ギヤ72は、フリーの状態から第3伝達ギヤ173と噛合される。
【0074】
上述の如く構成されたギヤユニット110では、図7(A)に示されるように、第1切換ギヤ71が第2伝達ギヤ172から離れて第1伝達ギヤ171と噛合される際に、各ギヤの歯の位置が一致しないため、第1切換ギヤ71と第1伝達ギヤ171とが上手く噛み合わない場合がある。また、第1切換ギヤ71と第2伝達ギヤ172との面圧によって、第1切換ギヤ71が第2伝達ギヤ172から離れない場合もある。この場合、入力部77が第2駆動伝達位置P2に移動しても、第1切換ギヤ71の駆動伝達の切り換えができない。また、図7(B)に示されるように、第2切換ギヤ72がフリーの状態から第3伝達ギヤ173と噛合される際も、同様に、第2切換ギヤ72と第3伝達ギヤ173とが上手く噛み合わない場合がある。そのため、本実施形態では、切換ギヤ71,72の駆動伝達が切り換えられる際に、後述するモータ制御部130(本発明の制御手段の一例)により、図9に示されるフローチャートにしたがったモータ制御が行われることによって、切換ギヤ71,72を所定回転量だけ回転させている。これにより、ギヤ間の面圧が解除され、或いは、各ギヤの歯が互いに噛合可能に合わせられるため、各ギヤの駆動伝達の切り替えが円滑且つ確実に行われる。
【0075】
[モータ制御部130]
以下、図8のブロック図を参照して、モータ制御部130の構成について説明する。図8では、各モータ65,66からの伝達経路が破線で示されている。モータ制御部130は、ASFモータ65及びLFモータ66を制御するものである。モータ制御部130は、複合機10の動作を統括制御する主制御部とは別の構成とされていてもよいが、モータ制御部130が上記主制御部に組み込まれた構成であってもかまわない。なお、キャリッジ38を駆動するCRモータもモータ制御部130によって駆動制御されるものであるが、CRモータの制御は本発明に直接関係しないので、CRモータの動作に関する構成の説明は省略する。
【0076】
図8に示されるように、モータ制御部130は、主として、CPU131と、ROM132と、RAM133と、ASIC136と、駆動回路137とを備え、これら各部がバス135によって通信可能に接続されている。
【0077】
ROM132には、ASFモータ65及びLFモータ66の回転駆動を制御するためのプログラムが格納されている。具体的には、図9に示されるフローチャートの手順に従った各処理を実行するためのプログラムが格納されている。その他、ロータリーエンコーダ81,82やその他のセンサの検知信号に基づいて、ASFモータ65やLFモータ66の回転方向の切り換えを制御したり、ASFモータ65やLFモータ66の回転量を制御するプログラムがROM132に格納されている。
【0078】
RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域又は作業領域として使用される。また、RAM133には、CPU131によってモータ制御(後述するASFモータ制御、LFモータ制御)の回数をカウントしたときのカウント値の記録領域が確保されている。
【0079】
ASIC136は、CPU131からの指令に従い、ASFモータ65やLFモータ66に通電するPWM信号等を生成して、該信号を後述する駆動回路137,138に付与する。駆動回路137を介して駆動信号がASFモータ65に通電されることにより、モータ制御部130によるASFモータ65の回転制御が行われる。また、駆動回路138を介して駆動信号がLFモータ66に通電されることにより、モータ制御部130によるLFモータ66の回転制御が行われる。
【0080】
駆動回路137は、第1給紙ローラ25及び第2給紙ローラ30に接続されたASFモータ65を駆動させるものである。駆動回路137は、ASIC136からの出力信号を受けて、ASFモータ65をCW方向或いはCCW方向へ回転させるための電気信号を形成する。該電気信号を受けてASFモータ65が所定の回転方向へ回転する。ASFモータ65の回転は、該ASFモータ65から第1給紙ローラ25及び第2給紙ローラ30それぞれに至る伝達経路に設けられたギヤなどの駆動伝達機構を介して、第1給紙ローラ25及び第2給紙ローラ30それぞれに伝達される。
【0081】
駆動回路138は、搬送ローラ60に接続されたLFモータ66を駆動させるものである。駆動回路138は、ASIC136からの出力信号を受けて、LFモータ66を所定の回転方向へ回転させるための電気信号を形成する。該電気信号を受けてLFモータ66が所定の回転方向へ回転する。LFモータ66の回転は、該LFモータ66から搬送ローラ60に至る伝達経路に設けられたギヤなどの駆動伝達機構を介して搬送ローラ60へ伝達される。
【0082】
ASIC136には、ロータリーエンコーダ81,82が接続されている。ロータリーエンコーダ81は、ASFモータ65の回転量を検知するためのものであり、ASFモータ65に取り付けられている。また、ロータリーエンコーダ82は、搬送ローラ60及びLFモータ66の回転量を検知するためのものであり、搬送ローラ60に取り付けられている。ロータリーエンコーダ81,82は、回転軸と同軸に設けられたエンコーダディスクと光学センサとからなる周知の回転量検知手段である。回転軸とともにエンコーダディスクが回転すると、光学センサから電気的なパルス信号(検知信号)が発信される。ロータリーエンコーダ80,81によって検知された信号は、ASIC136からバス135を経てCPU131に送られる。CPU131は、この検知信号に基づいて各モータ65,66の回転量を測定し、或いは、各モータ65,66の回転異常の有無を判定する。
【0083】
続いて、図9のフローチャート及び図10のタイミングチャートを参照して、CPU131によって実行されるASFモータ65及びLFモータ66の駆動制御の処理手順の一例について説明する。かかる駆動制御は、入力レバー74が第1駆動伝達位置P1から第3駆動伝達位置P3(図5参照)に移動した際に、或いは、入力レバー74が第2駆動伝達位置P2から第3駆動伝達位置P3にした際に実行される。なお、処理はステップS1から開始される。
【0084】
ステップS1では、CPU131によって、RAM133に確保されたカウントメモリのカウント値Cをリセットされる。
【0085】
その後、ステップS10〜S13までの手順にしたがって行われるASFモータ制御(本発明の第2制御に相当)と、ステップS20〜S21までの手順にしたがって行われるLFモータ制御(本発明の第1制御に相当)とが並行して実行される。なお、図9のフローチャートでは、説明の便宜上ステップS1からステップS10及びS20それぞれへ進むフローが分岐しているが、実際は、ASFモータ制御とLFモータ制御とは、独立して駆動制御される。
【0086】
ASFモータ制御(S10〜S13)では、ASFモータ65をCW方向へ所定回転量だけ回転させ、更にCCW方向へ所定回転量だけ回転させ、その後にASFモータ65を停止させる制御が行われる。すなわち、まず、ステップS10においてASFモータ65を起動させて、CW方向へ所定回転量だけ回転させる(S10)。具体的には、ロータリーエンコーダ81からのパルス信号を基準にして、ASFモータ65を1154パルス(1154ENC)だけ回転させる。ここで、1154パルスは、伝達ギヤ171,172の歯を基準にして2.7歯分だけ第1切換ギヤ71を回転させる回転量である。つまり、第1切換ギヤ71と第1伝達ギヤ171(又は第2伝達ギヤ172)とが噛み合っているときにASFモータ65を1154パルスだけ回転させると、第1伝達ギヤ171が2.7歯分だけ回転する。
【0087】
停止状態のASFモータ65が回転されると、ASFモータ65は、所定の回転速度(本実施形態では729min−1に設定)に到達するまで加速され、その後、上記回転速度で定速駆動され、そして、減速されることにより再び停止する(図10の上段参照)。そして、ステップS10の駆動が終了すると、100ms待機した後に(S11)、ステップS10と同様にして、ASFモータ65をCCW方向へ所定回転量だけ回転させる(S12)。そして、ステップS12の駆動が終了すると、CPU131は、200ms待機する(S13)。待機時間200msが経過すると、ASFモータ制御の終了フラグをセットしてから、次のステップS14へ進む。
【0088】
なお、本実施形態では、ステップS10及びステップS12において、伝達ギヤ171,172の2.7歯分だけASFモータ65を回転させることとしたが、この回転量は、各ギヤのバックラッシや停止誤差などのロスを考慮して定めたものである。第1切換ギヤ71と伝達ギヤ171,172とが噛合するには、最低限として第1切換ギヤ71が伝達ギヤ171,172の1歯分だけ回転すればよい。したがって、ギヤのバックラッシや停止誤差などのロスを考慮したとしても、実質的に、第1切換ギヤ71を伝達ギヤ171,172の1歯分だけ回転させ得る回転量だけ、ASFモータ65を回転させればよい。
【0089】
ステップS14では、LFモータ制御が終了したかどうかの判断がCPU131によって行われる。なお、ステップS14の判断は、例えば、LFモータ制御が終了したときに終了フラグをCPU131のレジスタ或いはRAM133にセットしておき、当該終了フラグの有無に基づいて行うことができる。
【0090】
LFモータ制御(S20〜S21)では、LFモータ66をCCW方向へ所定回転量だけ回転させた後にLFモータ66を停止させる制御が行われる。すなわち、まず、ステップS20においてLFモータ66をASFモータ65と同じタイミングで起動させて、該LFモータ66をCW方向へ所定回転量だけ回転させる(S20)。具体的には、ロータリーエンコーダ82からのパルス信号を基準にして、LFモータ66を1024パルス(1024ENC)だけ回転させる。ここで、1024パルスは、伝達ギヤ173の歯を基準にして2.25歯分だけ第2切換ギヤ72を回転させる回転量である。つまり、第2切換ギヤ72と第3伝達ギヤ173とが噛み合っているときにLFモータ66を1024パルスだけ回転させると、第3伝達ギヤ173が2.25歯分だけ回転する。
【0091】
停止状態のLFモータ66が回転されると、LFモータ66は、所定の回転速度(本実施形態では140min−1に設定)に到達するまで加速され、その後、上記回転速度で定速駆動され、そして、減速されることにより再び停止する(図10の下段参照)。そして、ステップS20の駆動が終了すると、CPU131は、200ms待機する(S21)。待機時間200msが経過すると、LFモータ制御の終了フラグをセットしてから、次のステップS22へ進む。
【0092】
なお、本実施形態では、ステップS20において、第3伝達ギヤ173の2.25歯分だけLFモータ66を回転させることとしたが、この回転量は、各ギヤのバックラッシや停止誤差などのロスを考慮して定めたものである。第2切換ギヤ72と第3伝達ギヤ173とが噛合するには、最低限として第2切換ギヤ72が第3伝達ギヤ173の1歯分だけ回転すればよい。したがって、ギヤのバックラッシや停止誤差などのロスを考慮したとしても、実質的に、第2切換ギヤ72を第3伝達ギヤ173の1歯分だけ回転させ得る回転量だけ、LFモータ66を回転させればよい。
【0093】
ステップS22では、ASFモータ制御が終了したかどうかの判断がCPU131によって行われる。なお、ステップS22の判断は、例えば、ASFモータ制御が終了したときに終了フラグをCPU131のレジスタ或いはRAM133にセットしておき、当該終了フラグの有無に基づいて行うことができる。
【0094】
ステップS14又はステップS22においてモータ制御が終了したと判断されると、次のステップS30において、CPU131によってカウント値Cがインクリメントされる。
【0095】
ステップS31では、カウント値Cが予め設定された設定回数nであるかどうかが判断される。本実施形態では、上記設定回数nは、3回に設定されている。なお、言うまでもなく、上記設定回数nは、任意に設定できる要素である。ステップS31において、カウント値C=nと判断されると、一連の処理が終了する。一方、カウント値C≠nと判断されると、再び、上記ASFモータ制御(S10〜S13)及び上記LFモータ制御(S20〜S21)が並行して行われる。なお、上記ASFモータ制御及び上記LFモータ制御は、ステップS14においてカウント値C=nと判断されるまで繰り返し行われる。
【0096】
[本実施形態の作用効果]
このようにASFモータ制御及びLFモータ制御が行われるため、図10に示されるように、各モータ65,66の起動直後の加速領域T10をオーバーラップさせることができる。各モータ65,66の加速は、求められる回転速度やモータのトルクなどによって異なるため、加速領域T10が完全に一致することは稀であるが、少なくとも、起動直後から一方のモータが一定速度に到達するまでは、加速領域T10の一部がオーバーラップする。モータ起動直後は、各モータ65,66は低回転で回転され、各切換ギヤ71,72も低回転で回転される。そのため、切換ギヤ71,72が切換可能な状態になりやすい。つまり、第1切換ギヤ71が第2伝達ギヤ172から第1伝達ギヤ171に切り換えられやすい状態となり、第2切換ギヤ72がフリーの状態から第3伝達ギヤ173に噛合し易い状態となる。これにより、各モータ65,66の回転速度が一定速度まで上がりきる前に各切換ギヤ71,72と各伝達ギヤ171,173とを迅速に、且つ確実に噛み合わせることができる。
【0097】
また、図10に示されるように、ASFモータ65のCW方向の回転駆動において減速領域T11が存在する。そのため、仮に、各モータ65,66の起動直後における加速領域T10で切り換えができなかったとしても、少なくとも第1切換ギヤ71については、減速領域T11において第1切換ギヤ71が第2伝達ギヤ172から第1伝達ギヤ171に切り換えられやすい状態となる。ここで、他方のLFモータ66は一定速度で回転駆動されているが、LFモータ66が回転されてさえいれば、切換ギヤの位相(伝達ギヤに対する位相)がずれるため、LFモータ66が停止している場合に比べて第1切換ギヤ71は切換可能な状態になりやすいと言える。なお、ASFモータ65のCCW方向への回転駆動の際についても、加速領域T12が存在するため、同様のことが言える。
【0098】
なお、上述のASFモータ制御(S10〜S13)及びLFモータ制御(S20〜S21)において、ステップS12の回転駆動の停止タイミングとステップS20の回転駆動の停止タイミングとを概ね一致させるように各モータ65,66の回転駆動を制御してもかまわない。言い換えると、LFモータ制御の終了時と略同時期にASFモータ制御を終了させてもかまわない。この場合は、図10に示されるように、ASFモータ65及びLFモータ66の減速領域T13をオーバーラップさせることができるため、モータ停止直前においても切換ギヤ71,72が切換可能な状態になりやすい。
【0099】
また、図9のフローチャートでは、ASFモータ65の起動時に該ASFモータ65をCW方向へ回転させ、LFモータ66の起動時に該LFモータ66をCW方向へ回転させることとしたが、例えば、図10の太破線に示されるように、ASFモータ65の起動時に該ASFモータ65をCW方向へ回転させ、LFモータ66の起動時に該LFモータ66をCCW方向へ回転させてもよい。
【0100】
また、図9のフローチャートでは、ASFモータ65とLFモータ66とを同じタイミングで起動させることとしたが、各モータ65,66の起動タイミングを異ならせてもかまわない。起動タイミングが異なったとしても、少なくとも、LFモータ66が回転駆動している間に、ASFモータ65が起動されればよい。この場合、仮に、起動直度の加速領域がオーバーラップしなくても、LFモータ66の回転駆動中にASFモータ65が反転加速されるため、ギヤ間の面圧が解放された状態で第1切換ギヤ71が低速で回転する。これにより、LFモータ66が停止している場合に比べて第1切換ギヤ71は切換可能な状態になりやすい。
【0101】
[変形例1]
次に、図11のフローチャート及び図12のタイミングチャートを参照して、CPU131によって実行されるASFモータ65及びLFモータ66の駆動制御の処理手順の変形例1について説明する。かかる駆動制御は、入力レバー74が第1駆動伝達位置P1から第3駆動伝達位置P3に移動した際に、或いは、入力レバー74が第2駆動伝達位置P2から第3駆動伝達位置P3(図5参照)にした際に実行される。以下においては、前述された処理手順と同じ処理手順については、その詳細な説明を省略する。なお、処理はステップS101から開始される。
【0102】
CPU131によって、カウント値Cがリセットされると(S101)、その後、ステップS110〜S113までの手順にしたがって行われるASFモータ制御(本発明の第2制御に相当)と、ステップS120〜S124までの手順にしたがって行われるLFモータ制御(本発明の第1制御に相当)とが並行して実行される。なお、図11のフローチャートでは、説明の便宜上ステップS101からステップS110及びS120それぞれへ進むフローが分岐しているが、実際は、ASFモータ制御とLFモータ制御とは、独立して駆動制御される。
【0103】
ASFモータ制御(S110〜S112)では、図12の上段に示されるように、ASFモータ65をCW方向へ所定回転量だけ回転させ、更にCCW方向へ所定回転量だけ回転させ、その後にASFモータ65を停止させる制御が2回繰り返し行われる。すなわち、まず、ステップS110において、図9のステップS10〜S13と同様の処理が行われる。その後、ステップS111において、LFモータ制御側の1回目の待機時間(200ms)が経過したかどうかが判断される。ここで、上記待機時間が経過していた場合は、ステップS112において、後述するステップS122と同じタイミングで上記ステップS111と同じ処理が行われる。その後、ステップS113において図9のステップS14と同様の判断処理、つまり、LFモータ制御が終了したかどうかの判断が行われる。
【0104】
LFモータ制御(S120〜S123)では、図12の下段に示されるように、LFモータ66をCW方向へ所定回転量だけ回転させ、更にCCW方向へ所定回転量だけ回転させ、その後にLFモータ66を停止させる制御が行われる。すなわち、まず、ステップS120において、図9のステップS20〜S21と同様の処理が行われる。その後、ステップS121において、ASFモータ制御側の1回目の待機時間(100ms)が経過したかどうかが判断される。ここで、上記待機時間が経過していた場合は、ステップS122において、上述のステップS112と同じタイミングで、ステップS20と同様にして、LFモータ66をCCW方向へ所定回転量だけ回転させる(S122)。そして、ステップS122の駆動が終了すると、200ms待機した後に(S123)に、次のステップS124において、図9のステップS14と同様の判断処理、つまり、ASFモータ制御が終了したかどうかの判断が行われる。
【0105】
ステップS113又はステップS123においてモータ制御が終了したと判断されると、次のステップS130において、CPU131によってカウント値Cがインクリメントされて、その後、カウント値Cが設定回数nであるかどうかが判断される(S131)。ここで、カウント値C=nと判断されると一連の処理が終了し、カウント値C≠nと判断されるとステップS110,S120以降の処理が繰り返される。
【0106】
[変形例2]
次に、図13のフローチャート及び図14のタイミングチャートを参照して、CPU131によって実行されるASFモータ65及びLFモータ66の駆動制御の処理手順の変形例2について説明する。かかる駆動制御は、入力レバー74が第3駆動伝達位置P3から第1駆動伝達位置P1に移動した際に実行される。以下においては、前述された処理手順と同じ処理手順については、その詳細な説明を省略する。なお、処理はステップS201から開始される。
【0107】
CPU131によって、カウント値Cがリセットされると(S201)、その後、ステップS210〜S211までの手順にしたがって行われるASFモータ制御(本発明の第2制御に相当)と、ステップS220〜S221までの手順にしたがって行われるLFモータ制御(本発明の第1制御に相当)とが並行して実行される。なお、図13のフローチャートでは、説明の便宜上ステップS201からステップS210及びS220それぞれへ進むフローが分岐しているが、実際は、ASFモータ制御とLFモータ制御とは、独立して駆動制御される。
【0108】
ASFモータ制御(S210〜S211)では、図14の上端に示されるように、ASFモータ65をCW方向へ所定回転量だけ回転させる制御が行われる。すなわち、まず、ステップS210において、図9のステップS10と同様の処理が行われる。ステップS210の駆動が終了すると、CPU131は、200ms待機する(S211)。待機時間200msが経過すると、ASFモータ制御の終了フラグをセットしてから、次のステップS212へ進み、図9のステップS14と同様の判断処理、つまり、LFモータ制御が終了したかどうかの判断が行われる。
【0109】
LFモータ制御(S220〜S221)では、図14の下段に示されるように、LFモータ66をCW方向へ所定回転量だけ回転させる制御が行われる。すなわち、まず、ステップS220において、図9のステップS20と同様の処理が行われる。ステップS220の駆動が終了すると、CPU131は、200ms待機する(S221)。待機時間200msが経過すると、LFモータ制御の終了フラグをセットしてから、次のステップS222へ進み、図9のステップS22と同様の判断処理、つまり、ASFモータ制御が終了したかどうかの判断が行われる。
【0110】
ステップS212又はステップS222においてモータ制御が終了したと判断されると、次のステップS230において、CPU131によってカウント値Cがインクリメントされて、その後、カウント値Cが設定回数nであるかどうかが判断される(S231)。ここで、カウント値C=nと判断されると一連の処理が終了し、カウント値C≠nと判断されるとステップS210,S220以降の処理が繰り返される。
【0111】
[変形例3]
次に、図15のフローチャート及び図16のタイミングチャートを参照して、CPU131によって実行されるASFモータ65及びLFモータ66の駆動制御の処理手順の変形例3について説明する。かかる駆動制御は、入力レバー74が第3駆動伝達位置P3から第1駆動伝達位置P1に移動した際に実行される。以下においては、前述された処理手順と同じ処理手順については、その詳細な説明を省略する。なお、処理はステップS301から開始される。
【0112】
CPU131によって、カウント値Cがリセットされると(S301)、その後、ステップS310〜S314までの手順にしたがって行われるASFモータ制御(本発明の第2制御に相当)と、ステップS320〜S324までの手順にしたがって行われるLFモータ制御(本発明の第1制御に相当)とが並行して実行される。なお、図15のフローチャートでは、説明の便宜上ステップS301からステップS310及びS320それぞれへ進むフローが分岐しているが、実際は、ASFモータ制御とLFモータ制御とは、独立して駆動制御される。
【0113】
ASFモータ制御(S310〜S314)では、図16の上段に示されるように、ASFモータ65をCW方向へ所定回転量だけ回転させ、更にCCW方向へ所定回転量だけ回転させ、その後にASFモータ65を停止させる制御が行われる。すなわち、まず、ステップS310において、図9のステップS10と同様に、ASFモータ65をCW方向へ所定回転量だけ回転させる。ステップS310の駆動が終了すると、CPU131は、200ms待機する(S311)。待機時間200msが経過すると、ステップS312において、図11のステップS111と同様に、LFモータ制御側の1回目の待機時間(200ms)が経過したかどうかが判断される。ここで、上記待機時間が経過していた場合は、ステップS313において、後述するステップS323の駆動と同じタイミングで、図9のステップS12と同様に、ASFモータ65をCCW方向へ所定回転量だけ回転させる。ステップS313の駆動が終了すると、CPU131は、200ms待機する(S314)。その後、待機時間200msが経過すると、ステップS315において図9のステップS14と同様の判断処理、つまり、LFモータ制御が終了したかどうかの判断が行われる。
【0114】
LFモータ制御(S320〜S325)では、図16の下段に示されるように、LFモータ66をCW方向へ所定回転量だけ回転させ、更にCCW方向へ所定回転量だけ回転させ、その後にLFモータ66を停止させる制御が行われる。すなわち、まず、ステップS320において、図9のステップS20と同様に、LFモータ66をCW方向へ所定回転量だけ回転させる。ステップS320の駆動が終了すると、CPU131は、200ms待機する(S321)。待機時間200msが経過すると、ステップS312において、図11のステップS121と同様に、ASFモータ制御側の1回目の待機時間(200ms)が経過したかどうかが判断される。ここで、上記待機時間が経過していた場合は、ステップS323において、上述のステップS313の駆動と同じタイミングで、図11のステップS122と同様に、LFモータ66をCCW方向へ所定回転量だけ回転させる。ステップS323の駆動が終了すると、CPU131は、200ms待機する(S324)。その後、待機時間200msが経過すると、ステップS325において図9のステップS22と同様の判断処理、つまり、ASFモータ制御が終了したかどうかの判断が行われる。
【0115】
ステップS315又はステップS325においてモータ制御が終了したと判断されると、次のステップS330において、CPU131によってカウント値Cがインクリメントされて、その後、カウント値Cが設定回数nであるかどうかが判断される(S331)。ここで、カウント値C=nと判断されると一連の処理が終了し、カウント値C≠nと判断されるとステップS310,S320以降の処理が繰り返される。
【0116】
[変形例4]
次に、図17のフローチャートを参照して、CPU131によって実行されるASFモータ65及びLFモータ66の駆動制御の処理手順の変形例4について説明する。
【0117】
上述の実施形態及び各変形例において、各モータ65,66を回転させるべく駆動信号を供給しても、各モータ65,66から各駆動部に至る伝達経路にギヤ間の面圧や予期せぬトルクが負荷となり、モータ65,66が回転しない場合がある。また、回転したとしても、その回転量が所定回転量未満である場合がある。また逆に、上記負荷が軽すぎるなどの要因で、勢い余ってモータ65,66が所定回転量以上回転する場合もあり得る。いずれの場合でも、上述したASFモータ制御及びLFモータ制御においては、異常駆動である。このような異常な制御が行われた場合は、その制御回数をカウントすることは望ましくない。
【0118】
本変形例3では、図17(A)に示されるように、例えば、図9のステップS14又はステップS22においてモータ制御が終了したと判断された場合に、ASFモータ制御或いはLFモータ制御が行われている最中にモータ異常駆動が発生したかどうかを判断する(S401)。かかる判断は、ロータリーエンコーダ81,82のパルス数に基づいて判断される。例えば、CPU131によって所定回転量に相当するパルス数が所定時間以内に検知されなかった場合にモータ以上駆動が発生していると判断する。モータ異常駆動が発生していると判断された場合は、カウント値CをインクリメントせずにステップS31の判断処理を行うこととしている。一方、モータ異常駆動が発生していない場合は、通常通り、ステップS30においてカウント値Cをインクリメントする。これにより、モータ異常駆動が発生した場合は、そのときのモータ制御がカウントされないため、結果として設定回数n以上のモータ制御が行われることになる。なお、図17(B)に示されるように、モータ異常駆動が発生していると判断された場合は、図9のステップS1に進んで、カウント値Cをリセットするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、本発明の実施形態にかかる複合機10の外観構成を示す図であり、複合機10を正面側から見た斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部11の縦断面構造を示す模式断面図である。
【図3】図3は、プリンタ部11の内部構成を示す図であり、プリンタ部11を背面側から見た斜視図である。
【図4】図4は、駆動切換機構70の構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、ギヤユニット110の構成及び伝達経路を示す模式図である。
【図6】図6は、入力レバー74の位置及びギヤユニット110の動作を説明するための模式図である。
【図7】図7は、ギヤユニット110の動作不良を説明するための模式図である。
【図8】図8は、モータ制御部130の構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、モータ制御部130によって実行されるモータ制御の処理手順の一例を説明するフローチャートである。
【図10】図10は、ASFモータ65及びLFモータ66の駆動状態を説明するタイミングチャートである。
【図11】図11は、モータ制御部130によって実行されるモータ制御の処理手順の変形例1を説明するフローチャートである。
【図12】図12は、変形例1にかかるASFモータ65及びLFモータ66の駆動状態を説明するタイミングチャートである。
【図13】図13は、モータ制御部130によって実行されるモータ制御の処理手順の変形例2を説明するフローチャートである。
【図14】図14は、変形例2にかかるASFモータ65及びLFモータ66の駆動状態を説明するタイミングチャートである。
【図15】図15は、モータ制御部130によって実行されるモータ制御の処理手順の変形例3を説明するフローチャートである。
【図16】図16は、変形例3にかかるASFモータ65及びLFモータ66の駆動状態を説明するタイミングチャートである。
【図17】図17は、モータ制御部130によって実行されるモータ制御の処理手順の変形例4を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0120】
11・・・プリンタ部
25・・・第1給紙ローラ
30・・・第2給紙ローラ
38・・・キャリッジ
39・・・記録ヘッド
55・・・メインテナンス機構
56・・・フラッシング部
51・・・リフトアップ機構
52・・・吸引ポンプ
70・・・駆動切換機構
71・・・第1切換ギヤ
72・・・第2切換ギヤ
73・・・支軸
74・・・入力レバー
77・・・入力部
110・・・ギヤユニット
111・・・第1コイルバネ
112・・・第2コイルバネ
171・・・第1伝達ギヤ
172・・・第2伝達ギヤ
173・・・第3伝達ギヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに連結された切換ギヤの位置を変更することにより各駆動部に至る各伝達ギヤとの間で駆動伝達を切り換える機構を備えた画像記録装置に関し、特に、複数のモータそれぞれから各駆動部への駆動伝達を切り換えることが可能な画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力信号に基づいてインクを吐出して被記録媒体に画像記録を行う画像記録装置として、インクジェットプリンタが知られている。インクジェットプリンタは、記録ヘッドのアクチュエータにインクを導き、入力信号に応じた圧電素子、電歪素子などのアクチュエータの撓みや、発熱素子による局部的なインクの沸騰を利用してインクを加圧噴射する。
【0003】
インクジェットプリンタは、給紙トレイから排紙トレイへ記録用紙が搬送される過程において、記録ヘッドから被記録媒体へインクを選択的に吐出して画像記録を行う。給紙トレイから用紙搬送路への記録用紙の給送や、用紙搬送路における記録用紙の搬送は、給紙ローラや搬送ローラと称されるローラが、記録用紙に圧接して回転されることによって行われる。これらローラの駆動源としてDCモータやステッピングモータなどのモータが用いられ、モータから各ローラへの駆動伝達は、ピニオンギヤやタイミングベルトなどが組み合わされた駆動伝達機構により実現される。
【0004】
インクジェットプリンタに用いられる記録ヘッドにおいて、インクを吐出するノズルに気泡が生じたり異物が詰まったりすることにより、インクの吐出不良が起こり得る。インクの吐出不良を防止又は回復するために、記録ヘッドのノズルから気泡や異物を吸引除去する手法が知られており、一般にパージと呼ばれている。パージを行うためのメインテナンスユニットは、記録ヘッドのノズルを覆うキャップやキャップ内を減圧するためのポンプなどから構成される。メインテナンスユニットにおけるポンプの駆動や、排気弁の切換を行うカムなどの駆動源としてもモータが用いられ、モータから各駆動部への駆動伝達は、前述された駆動伝達機構により実現される。
【0005】
従来、モータから各駆動部への駆動伝達を切り換える動力伝達切換手段を有する画像記録装置が知られている(特許文献1参照)。この動力伝達切換手段は、キャリッジの移動位置に応じて、各駆動部へ択一的に動力を伝達する。これによって、1つのモータから、例えば、画像記録の際には給紙ローラや搬送ローラなどに駆動伝達を行い、パージの際にはメインテナンスユニットに駆動伝達を行うことができる。
【0006】
特許文献1によれば、1つのLFモータ(42)の駆動を、動力伝達切換手段(100)によって複数の作動部位へ動力伝達を行う。この動力伝達切換手段(100)は、1つの切換ギヤ(102)と、間欠給紙伝動ギヤ(113)、連続給紙伝動ギヤ(114)、下段給紙用伝動ギヤ(121)及びメインテナンス用伝動ギヤ(115)の4種類の伝動ギヤとを有する。切換ギヤ(102)は、レバー部(104a)が第1、第2、第3セット部(111,112,108)にそれぞれ位置決めされることにより、その位置に対応する種類の伝動ギヤと択一的に噛合して動力伝達する。レバー部(104a)は、作動モードに対応したキャリッジ(13)の主走査方向への移動によって、その位置が変更される。なお、かっこ内の参照符号は特許文献1に示されたものである。
【0007】
また、特許文献2には、搬送系駆動部に至る伝達ギヤ及びパージ系駆動部に至る伝達ギヤそれぞれに対する伝達ギヤとの切り換えを円滑に行うために、切換ギヤを別の伝達ギヤに噛み合わせる際に、モータを往復動させて切換ギヤを同方向へ往復動させている。これにより、切換前に噛合していた伝達ギヤからの切換ギヤの切り離し、及び切換ギヤと別の伝達ギヤとの噛み合わせが円滑に行われる。
【0008】
【特許文献1】特開2007−90761号公報
【特許文献2】特開平8−174958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
インクジェットプリンタに代表される画像記録装置には、ユーザの使い勝手を考慮して、複数の給紙トレイが設けられたものがある。ユーザは、頻繁に使用する記録用紙を大量に一方の給紙トレイに収容し、他方の給紙トレイには、必要に応じて所望サイズの記録用紙を収容する。このように、複数の給紙トレイを備えた画像記録装置には、各給紙トレイに対応して複数の給紙ローラが設けられている。また、近年、画像記録装置が多機能化しつつある傾向に鑑みれば、機能の増加に伴い様々な駆動部が装置内に設けられることになる。このように、複数の駆動部が設けられた画像記録装置においては、1つのモータでこれら複数の駆動部に動力を伝達する駆動伝達機構の構成が極めて複雑になる。また、駆動伝達の切換タイミングや切換順序が煩雑となるため、所望する伝達ギヤに切り換えられるまでに時間がかかり過ぎるという問題が生じ得る。
【0010】
一方、複数のモータを用いれば、駆動伝達機構を簡単な構成とすることができる。例えば、第1モータに連結された第1切換ギヤを、複数の給紙ローラそれぞれの伝達ギヤに択一的に噛合可能なように配置し、第2のモータに連結された第2切換ギヤを、搬送ローラやメインテナンスユニットに用いられるポンプそれぞれの伝達ギヤに択一的に噛合可能なように配置することが考えられる。しかしながら、各切換ギヤ及び各伝達ギヤは、必ずしも双方が噛合可能な位置にあるとは限らない。そのため、第1切換ギヤ及び第2切換ギヤを同時に移動させるようにその移動方向へ力を付与したとしても、各切換ギヤが各伝達ギヤに噛合されない場合がある。また、駆動部から各伝達ギヤに至る複数のギヤの面圧が影響して、切換ギヤが軸方向へ移動されず、その結果、切換ギヤと伝達ギヤとが噛合できない場合もある。いずれの場合でも、特許文献2に記載の如く、各モータを往復動させることにより、切換ギヤが伝達ギヤと噛合できると予測される。
【0011】
しかしながら、複数のモータを単に無造作に往復動させても、各切換ギヤを円滑に切り換えることができない場合がある。例えば、一方の組みのギヤ同士を噛合可能な状態にすることができたとしても、モータの回転速度が上昇し過ぎて、他方の組みのギヤ同士を噛合可能な状態にすることができない場合がある。また、ギヤの切り換えが行われる前に各切換ギヤが他の伝達ギヤと噛合している場合に複数のモータを交互に駆動させても、一方の切換ギヤが停止している場合は、そのギヤにかかる面圧の影響を受けて双方の切換ギヤが同時に移動できず、各切換ギヤが各伝達ギヤに噛合されない。
【0012】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の切換ギヤそれぞれと、それらに対応する伝達ギヤとを確実に且つ迅速に噛合させることが可能な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1) 本発明の画像記録装置は、第1回転方向及び該第1回転方向とは逆の第2回転方向へ回転制御可能な第1モータ及び第2モータと、上記第1モータからの駆動力を受けて回転される第1切換ギヤと、上記第1切換ギヤと同軸上に軸支され、上記第2モータからの駆動力を受けて回転される第2切換ギヤと、上記第1切換ギヤと噛合可能に配置され、対応する駆動部へ駆動力を伝達する第1伝達ギヤと、上記第2切換ギヤと噛合可能に配置され、対応する駆動部へ駆動力を伝達する第2伝達ギヤとを具備する。この画像記録装置は、上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤそれぞれの軸方向の移動に応じて上記第1伝達ギヤ又は上記第2伝達ギヤに上記第1切換ギヤ又は上記第2切換ギヤが噛合されるように構成されている。また、当該画像記録装置は、上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤが移動される際に、上記第1モータ及び上記第2モータのいずれか一方のモータを所定回転量だけ回転駆動させ、少なくとも上記一方のモータが回転駆動している間に他方のモータを起動して所定回転量だけ回転駆動させる制御手段を備えている。
【0014】
第1切換ギヤ及び第2切換ギヤが移動されてその位置が変更されることで、第1切換ギヤが第1伝達ギヤに噛合可能となり、第2切換ギヤが第2伝達ギヤに噛合可能となる。各切換ギヤ及び各伝達ギヤは、その用途に応じた伝達比に設計されている。
【0015】
本発明の画像記録装置では、上記切換ギヤと上記伝達ギヤとの噛合を円滑にするため、上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤが位置変更される際に、制御手段によって、第1モータ及び第2モータが所定回転量だけ駆動される。詳細には、例えば、上記第1モータ(又は第2モータ)を所定回転量だけ回転駆動させ、そして、少なくとも第1モータ(又は第2モータ)が回転駆動している間に他方の第2モータ(又は第1モータ)を起動して所定回転量だけ回転駆動させる。ここで、起動とは、停止状態にあるモータを所定回転速度になるまで加速することである。また、所定回転量としては、第1モータ及び第2モータそれぞれを同じ回転量にしてもよいし、異なる回転量としてもよい。例えば、上記所定回転量は、第1伝達ギヤや第2伝達ギヤの1ピッチ(隣り合う歯の間隔)分或いは数ピッチ分に相当する回転量に設定することが考えられる。
【0016】
モータ起動直後は、モータは低回転で回転される。モータが低回転で回転されている場合は、切換ギヤと伝達ギヤとが噛合可能な状態になりやすい。本発明では、少なくとも一方のモータが起動されて回転駆動している間に、他方のモータが起動される。つまり、一方のモータが所定回転量だけ回転された後に、他方のモータが所定回転量だけ回転されるのではなく、少なくとも、双方のモータが同時に回転している重複駆動領域が存在する。これにより、双方の切換ギヤが回転駆動されることで切換ギヤにかかる面圧が解放されるとともに、少なくとも一方のモータについては、モータ起動後の低回転領域において切換ギヤが伝達ギヤと噛合可能な状態になる。その結果、各モータの回転速度が上がりきる前に各切換ギヤと各伝達ギヤとを迅速に、且つ確実に噛み合わせることができる。
【0017】
(2) 上記制御手段は、上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤが移動される際に、同じタイミングで上記第1モータ及び上記第2モータを起動させて上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤを同じタイミングで回転させるものである。
【0018】
これにより、双方のモータの起動直後の低回転領域を一致させることができる。その結果、各切換ギヤを各伝達ギヤにより確実に噛み合わせることができる。
【0019】
(3) 上記制御手段は、上記第1モータを上記第1回転方向又は上記第2回転方向のいずれかへ第1回転量だけ回転させた後に上記第1モータを停止させる第1制御と、該第1制御が行われている間に、上記第2モータを上記第1回転方向へ第2回転量だけ回転させ、更に上記第2回転方向へ上記第2回転量だけ回転させた後に上記第2モータを停止させる第2制御を行うものが好ましい。
【0020】
(4) この場合、上記制御手段は、上記第2制御の終了時と略同時期に上記第1制御を終了させるものであってもよい。
【0021】
(5) また、上記制御手段は、上記第1制御及び上記第2制御の双方が終了した後に、上記第1制御及び上記第2制御を予め定められた回数繰り返し行うことが好ましい。
【0022】
これにより、初回の動作で各切換ギヤと各伝達ギヤとが噛合できなても、各切換ギヤと各伝達ギヤとを噛合させる機会が与えられる。そのため、各切換ギヤと各伝達ギヤとを確実に噛み合わせることができる。
【0023】
(6) 上記制御手段は、上記第1モータを上記第1回転方向又は上記第2回転方向のいずれかへ第3回転量だけ回転させた後に上記第1モータを停止させる第3制御と、該第3制御が行われている間に、上記第2モータを上記第1モータと同方向又は逆方向のいずれかへ第4回転量だけ回転させた後に上記第2モータを停止させる第4制御を行うものであってもよい。
【0024】
(7) この場合、上記制御手段は、上記第3制御及び上記第4制御の双方が終了した後に、上記第3制御及び上記第4制御を予め定められた回数繰り返し行うことが好ましい。
【0025】
これにより、初回の動作で各切換ギヤと各伝達ギヤとが噛合できなくても、各切換ギヤと各伝達ギヤとを噛合させる機会が与えられる。そのため、各切換ギヤと各伝達ギヤとを確実に噛み合わせることができる。
【0026】
(8) 本発明の画像記録装置は、キャリッジと、位置決め部材と、伸縮部材と、を更に具備する。キャリッジは、記録ヘッドを搭載して所定方向へ往復動される。位置決め部材は、上記キャリッジの当接により当該キャリッジが往復動する所定方向へスライドして、上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤの位置を軸方向へ変更するように設けられている。この位置決め部材は、上記第1切換ギヤを上記第1伝達ギヤと噛合可能に位置決めし、上記第2切換ギヤを上記第2伝達ギヤと噛合可能に位置決めする。伸縮部材は、上記キャリッジが往復動する所定方向に沿った一方向へ上記位置決め部材を弾性付勢する。
【0027】
これにより、当該画像記録装置において、上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤの移動機構が具現化される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、第1切換ギヤ及び第2切換ギヤそれぞれの駆動伝達が同時に切り換えられる際に、第1切換ギヤ及び第2切換ギヤそれぞれと、それらに対応する伝達ギヤとを確実に、且つ迅速に噛合させることができる。
【0029】
また、上記伸縮部材によって上記位置決め部材を弾性付勢するよう構成された画像記録装置においては、第1切換ギヤ及び第2切換ギヤの移動に必要な伸縮部材の弾性付勢力を小さくすることができるため、各切換ギヤを低トルクで回転させることができる。その結果、モータで消費される電力を抑制することができ、且つ、切換ギヤ周辺機構を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0031】
[図面の説明]
図1は、本発明の実施形態にかかる複合機10の外観構成を示す図であり、複合機10を正面側から見た斜視図である。図2は、プリンタ部11の縦断面構造を示す模式断面図である。図3は、プリンタ部11の内部構成を示す図であり、プリンタ部11を背面側から見た斜視図である。図4は、駆動切換機構70の構成を示す斜視図である。図5は、ギヤユニット110の構成及び伝達経路を示す模式図である。図6は、入力レバー74の位置及びギヤユニット110の動作を説明するための模式図である。図7は、ギヤユニット110の動作不良を説明するための模式図である。図8は、モータ制御部130の構成を示すブロック図である。図9は、モータ制御部130によって実行されるモータ制御の処理手順の一例を説明するフローチャートである。図10は、ASFモータ65及びLFモータ66の駆動状態を説明するタイミングチャートである。図11は、モータ制御部130によって実行されるモータ制御の処理手順の変形例1を説明するフローチャートである。図12は、変形例1にかかるASFモータ65及びLFモータ66の駆動状態を説明するタイミングチャートである。図13は、モータ制御部130によって実行されるモータ制御の処理手順の変形例2を説明するフローチャートである。図14は、変形例2にかかるASFモータ65及びLFモータ66の駆動状態を説明するタイミングチャートである。図15は、モータ制御部130によって実行されるモータ制御の処理手順の変形例3を説明するフローチャートである。図16は、変形例3にかかるASFモータ65及びLFモータ66の駆動状態を説明するタイミングチャートである。図17は、モータ制御部130によって実行されるモータ制御の処理手順の変形例4を説明するフローチャートである。
【0032】
[複合機10の概略構成]
図1及び図2に示されるように、本実施形態にかかる複合機10(本発明の画像記録装置の一例)は、プリンタ部11とスキャナ部12を一体的に備え、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。なお、プリンタ部11によるプリント機能以外の機能は任意であり、例えば、スキャナ部12がなく、スキャン機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタとして本発明にかかる画像記録装置が実施されてもよい。
【0033】
複合機10の下側にプリンタ部11が配置され、上側にスキャナ部12が配置されている。プリンタ部11は、主にコンピュータなどの外部情報機器と接続されて、外部情報機器から送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、記録用紙や樹脂シートなどのシート状の被記録媒体に画像や文字を記録する。スキャナ部12は、所謂フラットベッドスキャナである。
【0034】
複合機10の外形は、高さ(矢印102)より横幅(矢印101)及び奥行き(矢印103)が大きい幅広薄型の概ね直方体である。複合機10の外形は、主として、プリンタ部11の筐体15と、スキャナ部12の筐体16とから構成される。
【0035】
プリンタ部11の筐体15には、正面に開口13が設けられている。開口13の内部には、第1給紙カセット20及び第2給紙カセット21が設けられている。第1給紙カセット20及び第2給紙カセット21は、第1給紙カセット20を上側として上下二段に設けられている。第1給紙カセット20の上面22は、排紙トレイとして機能する。第1給紙カセット20又は第2給紙カセット21に収容された記録用紙が、プリンタ部11の内部へ給送されて所望の画像が記録され、画像記録後の記録用紙が第1給紙カセット20の上面22へ排出される。
【0036】
プリンタ部11の筐体15の正面上部には、操作パネル14が設けられている。操作パネル14において、プリンタ部11及びスキャナ部12に所望の動作をさせるための所定の入力が行われる。操作パネル14は、入力を行うための複数のボタンや、複合機10の状態やエラー表示などを行うためのディスプレイを有する。なお、複合機10に外部情報機器が接続されていると、外部情報機器からプリンタドライバやスキャナドライバなどの通信ソフトを通じて送信される指示に基づいても、複合機10は動作する。
【0037】
[プリンタ部11]
図2に示されるように、プリンタ部11には、第1給紙カセット20及び第2給紙カセット21が設けられている。第2給紙カセット21は、プリンタ部11の最も底側に設けられている。第1給紙カセット20は、第2給紙カセット21の上側に設けられている。図示されるように、第1給紙カセット20及び第2給紙カセット21は、上下二段に配置されている。第1給紙カセット20又は第2給紙カセット21と第1給紙カセット20の上面22とは、第1用紙搬送路23又は第2用紙搬送路24によって記録用紙が搬送可能にそれぞれ連続されている。第1給紙カセット20に収容された記録用紙は、第1給紙ローラ25によって給送される。第1給紙カセット20から給送された記録用紙は、第1用紙搬送路23により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット41(発明の画像記録手段の一例)へ搬送され、画像記録ユニット41により画像記録が行われた後、第1給紙カセット20の上面22へ排出される。第2給紙カセット21に収容された記録用紙は、第2給紙ローラ30によって給送される。第2給紙カセット21から給送された記録用紙は、第2用紙搬送路24により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット41へ搬送され、画像記録ユニット41により画像記録が行われた後、第1給紙カセット20の上面22へ排出される。
【0038】
第1給紙カセット20は、装置背面側の一部が開口された容器形状であり、その内部空間に、記録用紙などのシート部材が積層状態で収容される。本実施形態では、第1給紙ローラ25が上記開口から内部空間に挿通されて、記録用紙の上面に当接される。第1給紙カセット20には、例えば、A3サイズ以下のA4サイズ、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙が収容可能である。第1給紙カセット20の上面22は、装置正面側に設けられており、この上面22を排紙トレイとして記録用紙が排出される。
【0039】
第2給紙カセット21は、装置背面側の一部が開口された容器形状であり、その内部空間に、記録用紙などのシート部材が積層状態で収容される。本実施形態では、第2給紙ローラ30が上記開口から内部空間に挿通されて、記録用紙の上面に当接される。第2給紙カセット21には、例えば、A3サイズ以下のA4サイズ、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙が収容可能である。1つの給紙カセットしか備えていない画像記録装置の場合、既に収容されている記録用紙とは異なるサイズや種類の記録用紙に画像を記録しようとすると、給紙カセット内の記録用紙をその都度入れ換えなければならない。しかし、本実施形態のように、2つの給紙カセット(第1給紙カセット20及び第2給紙カセット21)を備える複合機10であれば、第2給紙カセット21に、第1給紙カセット20に収容された記録用紙とはサイズや種類が異なる記録用紙を収容することにより、上述のような問題は発生しない。すなわち、1つの給紙カセットにおいて記録用紙を入れ換える作業を行うことなく、2種類の記録用紙に対して選択的に画像記録が可能になるのである。
【0040】
第1給紙カセット20の装置奥部側(図2において左側)には、第1給紙ローラ25が設けられている。第1給紙ローラ25は、第1給紙カセット20に積載された記録用紙を第1用紙搬送路23へ供給する。第1給紙ローラ25は、プリンタ部11内に設けられたASF(Auto Sheet Feed)モータ65(本発明の第2モータの一例、図5参照)のCW方向(本発明の第1回転方向に相当)の駆動力(回転力)が図示しないギヤ伝達機構を介して駆動伝達されて回転する。第1給紙ローラ25は、第1アーム26の先端に回転可能に支持されている。第1アーム26の基端側は、第1給紙カセット20の上側に架設された駆動軸28に回動可能に支持されている。そのため、第1給紙ローラ25が第1給紙カセット20に接離する方向へ上下に回動可能である。第1アーム26は、第1給紙ローラ25の重量又はバネなどに付勢されて下側へ回動されており、第1給紙カセット20に収容された記録用紙の量に応じて上側又は下側へ移動する。これにより、第1給紙ローラ25が第1給紙カセット20における最上位置の記録用紙に接触する。その状態で第1給紙ローラ25が回転されると、第1給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力により、少なくとも最上位置の記録用紙が第1用紙搬送路23に向けて給送される。ここで、複数の記録用紙が第1用紙搬送路23に向けて給送され始めたとしても、図2において第1給紙カセット20の左方に配置された分離傾斜面20Aに設けられている図示しない分離片によって、1枚の記録用紙のみが第1用紙搬送路23へ送り出されるのである。
【0041】
第2給紙カセット21の装置奥部側(図2において左側)には、第2給紙ローラ30が設けられている。第2給紙ローラ30は、第2給紙カセット21に積載された記録用紙を第2用紙搬送路24へ供給する。第2給紙ローラ30は、ASFモータ65(図5参照)のCCW方向(本発明の第2回転方向に相当)の駆動力(回転力)が図示しないギヤ伝達機構を介して駆動伝達されて回転する。第2給紙ローラ30は、第2アーム31の先端に回転可能に支持されている。第2アーム31の基端側は、第2給紙カセット21の上側に架設された駆動軸33に回動可能に支持されている。そのため、第2給紙ローラ30が第2給紙カセット21に接離する方向へ上下に回動可能である。第2アーム31は、第2給紙ローラ30の重量又はバネなどに付勢されて下側へ回動されており、第2給紙カセット21に収容された記録用紙の量に応じて上側又は下側へ移動する。これにより、第2給紙ローラ30が第2給紙カセット21における最上位置の記録用紙に接触する。その状態で第2給紙ローラ30が回転されると、第2給紙ローラ30のローラ面と記録用紙との間の摩擦力により、少なくとも最上位置の記録用紙が第2用紙搬送路24に向けて給送される。ここで、複数の記録用紙が第2用紙搬送路24に向けて給送され始めたとしても、図2において第2給紙カセット21の左方に配置された分離傾斜面21Aに設けられている図示しない分離片によって、1枚の記録用紙のみが第2用紙搬送路24へ送り出されるのである。
【0042】
本実施形態では、第1給紙ローラ25及び第2給紙ローラ30は、ASFモータ65から伝達されたCW方向又はCCW方向の駆動力を受けて所定方向へ回転される。ASFモータ65から第1給紙ローラ25及び第2給紙ローラ30に至る伝達経路には、ワンウェイクラッチ或いは遊星ギヤなどの伝達切換機構が設けられている。したがって、ASFモータ65がCW方向に回転駆動されると、第1給紙ローラ25のみに回転駆動力が伝達され、第2給紙ローラ30への駆動伝達は遮断される。一方、ASFモータ65がCCW方向に回転駆動されると、第2給紙ローラ25のみに回転駆動力が伝達され、第1給紙ローラ30への駆動伝達は遮断される。
【0043】
第1給紙カセット20の先端の上方には第1用紙搬送路23が形成されている。第1用紙搬送路23は、第1給紙カセット20の装置奥部側から上方へ延び、続いて装置正面側へ湾曲して、複合機10の背面側から正面側(図2の右側)へ延び、画像記録ユニット41を経て第1給紙カセット20の上面22へ通じている。つまり、第1用紙搬送路23は、図2において横向き略U字形状に構成されている。第1用紙搬送路23は、画像記録ユニット41などが配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。
【0044】
また、第2給紙カセット21の先端の上方には第2用紙搬送路24が形成されている。第2用紙搬送路24は、第1用紙搬送路23と同様に、図2において横向き略U字形状に構成されて、第2給紙カセット21から画像記録ユニット41を経て第1給紙カセット20の上面22へ通じている。この第2用紙搬送路24は、画像記録ユニット41よりも搬送方向上流側において第1用紙搬送路23と合流し、この合流箇所よりも下流側では、一つの搬送パスを形成している。第2用紙搬送路24も、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。
【0045】
[画像記録ユニット41]
図2に示されるように、第1用紙搬送路23に画像記録ユニット41が設けられている。画像記録ユニット41は、第1用紙搬送路23における記録用紙の搬送過程において、記録用紙に画像を記録するものである。画像記録ユニット41は、キャリッジ38と、インクジェット記録方式の記録ヘッド39とを備える周知の画像記録手段である。
【0046】
図3に示されるように、第1用紙搬送路23の上側に一対のガイドレール43,44が設けられている。一対のガイドレール43,44は、第1用紙搬送路23の上側において記録用紙の搬送方向に所定距離を隔てられて、記録用紙の搬送方向と直交する方向(矢印101の方向)に延設されている。ガイドレール43,44は、プリンタ部11の筐体15内に設けられて、プリンタ部11を構成する各部材を支持するフレームの一部を構成している。キャリッジ38は、ガイドレール43,44を跨ぐように載置されて、ガイドレール43,44上を記録用紙の搬送方向と直交する方向に往復動可能である。
【0047】
記録用紙の搬送方向上流側に配設されたガイドレール43は、第1用紙搬送路23の幅方向(矢印101の方向)の長さがキャリッジ38の往復動範囲より長い平板状に構成されている。記録用紙の搬送方向下流側に配設されたガイドレール44は、第1用紙搬送路23の幅方向の長さがガイドレール43とほぼ同じ長さの平板状に構成されている。キャリッジ38における搬送方向上流側の端部がガイドレール43上に載置され、下流側の端部がガイドレール44上に載置されて、ガイドレール43,44の長手方向に沿ってキャリッジ38が摺動される。ガイドレール44における搬送方向上流側の縁部45は、上方へ向かって略直角に曲折されている。ガイドレール43,44に担持されたキャリッジ38は、縁部45をローラ対などの挟持部材により摺動可能に挟持している。これにより、キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向に対して位置決めされ、且つ、記録用紙の搬送方向と直交する方向に摺動可能になる。
【0048】
ガイドレール44の上面には、ベルト駆動機構46が配設されている。ベルト駆動機構46は、第1用紙搬送路23の幅方向(矢印101の方向)の両端付近にそれぞれ設けられた駆動プーリ(不図示)と従動プーリ48との間に、内側に歯が設けられた無端環状のベルト49が張架されてなるものである。なお、図3において、駆動プーリはキャリッジ38によって隠されている。駆動プーリの軸にはCRモータ(不図示)から駆動力(回転力)が入力され、駆動プーリの回転によりベルト49が周運動する。なお、ベルト49は、その一部がキャリッジ38に固定された無端環状のもののほか、有端のベルトの両端部をキャリッジ38に固着するものを用いてもよい。
【0049】
ガイドレール43には、レバーガイド91(本発明の位置決め部材の一例)が設けられている。なお、図4では、レバーガイド91の図示が省略されている。レバーガイド91は、ガイドレール43のメインテナンス機構55側に形成された図示しない嵌合孔に嵌め込まれてガイドレール43に固定されている。レバーガイド91の下方に駆動切換機構70が配置されている。レバーガイド91は、内側に所定形状のガイド孔95(図5参照)が形成された略平板状の部材である。ガイド孔95には、後述する入力レバー74(本発明の位置決め部材の一例)の入力部77が下側から挿入されて、ガイドレール43の上側へ突出される。ガイド孔95に挿入された入力部77は、外力が付与されなければ、図5に示されるように、ガイド孔95における装置内側の端部である第1駆動伝達位置P1に維持される。
【0050】
キャリッジ38は、その底面側においてベルト49に固着されている。したがって、CRモータ(不図示)によるベルト49の周運動に基づいて、キャリッジ38が縁部45を基準としてガイドレール43,44上を往復動する。このようなキャリッジ38に記録ヘッド39が搭載されて、記録ヘッド39が、用紙搬送路23の幅方向(矢印101の方向)を所定方向として往復動される。
【0051】
図3に示されるように、キャリッジ38の搬送方向上流端には、搬送方向上流側へ水平方向に突出するガイド片92が設けられている。ガイド片92はキャリッジ38とともにガイドレール43の延出方向へ往復動される。キャリッジ38の移動に伴って、ガイド片92が、ガイド孔95(図5参照)からガイドレール43の上側へ突出する入力部77(図4参照)と当接する。これにより、入力レバー74の位置が変えられる。入力レバー74の位置は、キャリッジ38の往復動を制御することにより任意に選択的に変更することができる。入力レバー74が所定の位置(後述する第1駆動伝達位置P1、第2駆動伝達位置P2、第3駆動伝達位置P3)に選択的に移動されると、後述するギヤユニット110の第1切換ギヤ71(本発明の第1切換ギヤの一例)及び第2切換ギヤ72(本発明の第2切換ギヤの一例)が入力レバー74の位置に対応する位置に位置決めされる。
【0052】
図2及び図3に示されるように、用紙搬送路23の下側には、記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38が往復動する範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に渡って配設されている。プラテン42の幅(矢印101方向の長さ)は、当該複合機10において使用可能な記録用紙、すなわち、プリンタ部11において使用可能な記録用紙の最大幅より十分に幅広である。プラテン42の上面に支持された記録用紙は、記録ヘッド39との距離が一定に保持される。この記録用紙に、記録ヘッド39から吐出されたインク滴が着弾する。
【0053】
図2に示されるように、画像記録ユニット41よりも搬送方向104の上流側には、一対の搬送ローラ60及びピンチローラ61が設けられている。ピンチローラ61は搬送ローラ60の下側に圧接状態で配置されている。搬送ローラ60は、プリンタ部11内に設けられたLF(Line Feed)モータ66(本発明の第1モータの一例、図5参照)の駆動力(回転力)が駆動伝達されて、連続的に回転駆動され、或いは所定の改行幅で間欠駆動される。搬送ローラ60及びピンチローラ61間に記録用紙が進入すると、記録用紙は挟持されつつ、プラテン42上へ搬送される。
【0054】
画像記録ユニット41よりも搬送方向104の下流側には、排紙ローラ62及び拍車63が設けられている。拍車63は排紙ローラ62の上側に圧接状態で配置されている。排紙ローラ62と搬送ローラ60との間には、ギヤ等の駆動伝達機構が設けられている。したがって、排紙ローラ62は、LFモータ66の駆動力が上記駆動伝達機構を介して伝達されることにより、搬送ローラ60と同時に連続的に回転駆動され、或いは所定の改行幅で間欠駆動される。排紙ローラ62及び拍車63は、画像記録済みの記録用紙を挟持して第1給紙カセット20の上面22へ搬送する。
【0055】
図3に示されるように、プラテン42における幅方向(矢印101の方向)の両側のうち、一方にメインテナンス機構55が配設され、他方にフラッシング部56が配設されている。図3において、メインテナンス機構55は左端部(正面から見て右端部)に設けられ、フラッシング部56は右端部(正面から見て左端部)に設けられている。フラッシング部56は、フラッシングと呼ばれる記録ヘッド39からのインクの空吐出にて吐出される廃インクを受けるための部位である。フラッシング部56内にはスポンジやフェルト等が敷設されており、フラッシングにて吐出されたインクは、このスポンジやフェルト等に回収されて図示しない廃インク吸収体に保持される。
【0056】
メインテナンス機構55は、記録ヘッド39のノズルから気泡や異物を吸引除去する負圧パージ動作や、記録ヘッド39のノズル面を図示しないワイパで清掃するワイプ動作、更には記録ヘッド39内に設けられたサブタンク内の気泡を除去する排気動作等を行うことにより記録ヘッド39の状態を常に最良の状態に維持する機構である。メインテナンス機構55は、記録ヘッド39のノズルや記録ヘッド39の排気口を覆うキャップ57を有する。キャップ57は、公知のリフトアップ機構51(図5参照)によって上下動されて記録ヘッド39のノズル面や排気口面と接離する。図3には示されていないが、メインテナンス機構55は、さらに吸引ポンプ52(図5参照)を有する。吸引ポンプ52は、キャップ57と接続されており、吸引ポンプ52が動作されることによって、キャップ57の内部が負圧にされる。キャップ57が記録ヘッド39と接触してノズル及び排気口をそれぞれ覆った状態において吸引ポンプ52が作動されると、記録ヘッド39から気泡や異物が吸引除去される。メインテナンス機構55における吸引ポンプ52は、LFモータ66の駆動力が駆動伝達されることによって動作される。また、メインテナンス機構55におけるリフトアップ機構51は、ASFモータ65の駆動力が駆動伝達されることによって動作される。つまり、メインテナンス機構55における吸引ポンプ52及びリフトアップ機構51それぞれが、本発明における駆動部に相当する。このようにメインテナンス機構55及びフラッシング部56が用いられて、記録ヘッド39内の気泡や混色インクの除去、乾燥防止などのメインテナンスが行われる。
【0057】
[駆動切換機構70]
以下、ASFモータ65及びLFモータ66の2つのモータから第1給紙ローラ25、第2給紙ローラ30、吸引ポンプ52、リフトアップ機構51などの各駆動へ駆動伝達を切り換えるための駆動切換機構70について説明する。駆動切換機構70は、ガイドレール44,45などにより構成されるフレームの右側(図3における左側)に配置されて、ASFモータ65及びLFモータ66それぞれから独立に出力される2系統の駆動力を、各駆動部へ択一的に伝達するものである。
【0058】
図4及び図5に示されるように、駆動切換機構70は、第1切換ギヤ71や第2切換ギヤ72などからなるギヤユニット110と、このギヤユニット110を支持する支持フレーム120とにより構成されている。ギヤユニット110は、支持フレーム120に支持された1本の支軸73に第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72が回転可能、かつ、軸線方向にスライド可能に支持されている。なお、図5において、紙面左側が装置の内側であり、紙面右側が装置の外側である。
【0059】
図5に示されるように、ASFモータ65の駆動力は第1切換ギヤ71に伝達される。ASFモータ65から受けた回転駆動力によって第1切換ギヤ71が回転される。ASFモータ65から第1切換ギヤ71に至る伝達機構としては、複数のギヤからなるギヤ列が考えられる。このギヤ列は、ASFモータ65の出力ギヤ75と第1切換ギヤ71との間に設けられており、ASFモータ65の回転駆動力を第1切換ギヤ71に伝達する。上記ギヤ列において、第1切換ギヤ71と噛合する伝達ギヤ67の厚み(軸方向の長さ)は、支軸73における第1切換ギヤ71のスライド範囲に対して十分に厚いので、第1切換ギヤ71のスライド範囲において、第1切換ギヤ71と伝達ギヤ67とは常時噛合される。第1切換ギヤ71は、伝達ギヤ67と噛合した状態で、支軸73の軸方向へ移動可能である。
【0060】
LFモータ66の駆動力は、第2切換ギヤ72に伝達される。LFモータ66から受けた回転駆動力によって第2切換ギヤ72が回転される。LFモータ66から第2切換ギヤ72に至る伝達機構としては、例えば、搬送ローラ60の一端に図示しない伝達ギヤを搬送ローラ60と同軸かつ一体に回転するように設け、この伝達ギヤと第2切換ギヤ72とを複数のギヤからなるギヤ列を介して接続することにより実現可能である。LFモータ66の出力ギヤ76は、搬送ローラ60の他端にギヤ連結されている。LFモータ66の駆動力が搬送ローラ60の他端に入力されると、搬送ローラ60が回転されるとともに、第2切換ギヤ72がLFモータ66の駆動力に応じて回転駆動される。上記ギヤ列において、第2切換ギヤ72と噛合する伝達ギヤ68の厚み(軸方向の長さ)は、支軸73における第2切換ギヤ72のスライド範囲に対して十分に厚いので、第2切換ギヤ72のスライド範囲において、第2切換ギヤ72と伝達ギヤ68とは常時噛合される。第2切換ギヤ72は、伝達ギヤ68と噛合した状態で、支軸73の軸方向へ移動可能である。
【0061】
[ギヤユニット110]
図5に示されるように、ギヤユニット110は、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72に加えて、第1コイルバネ111(本発明の伸縮部材の一例)と、第2コイルバネ112(本発明の伸縮部材の一例)と、入力レバー74とが支軸73に支持されてなる。これら各部材は、支軸73の軸線方向にスライド可能に支持されている。支軸73は、支持フレーム120によって水平方向に支持されている。
【0062】
第1切換ギヤ71は、装置の外側(図5の右側)に配置され、第2切換ギヤ72は装置の内側(図5の左側)に配置されている。支軸73の軸線方向(図5の左右方向)は、キャリッジ38が往復動する方向(図1の矢印101)と一致する。この支軸73に沿って第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72がスライド移動されることにより、第1切換ギヤ71は、後述する第1伝達ギヤ171及び第2伝達ギヤ172それぞれとの噛合が選択される。また、第2切換ギヤ72は、フリーの状態か後述の第3伝達ギヤ173との噛合かが選択される。
【0063】
図4に示されるように、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72には、径方向の角部に面取り加工が施されている。また、図示しないが、伝達ギヤ171〜173それぞれにも、径方向の角部に面取り加工が施されている。これらの面取りは、各切換ギヤ71,72と伝達ギヤ171〜173との噛合を容易にするために施されている。
【0064】
第2切換ギヤ72は、第2切換ギヤ71側へ延出された円筒部79を有する。この円筒部79は、その延出端が第1切換ギヤ71に当接して第1切換ギヤ71と第2切換ギヤ72との離間距離を一定に保持するとともに、第2コイルバネ112の付勢力を第1切換ギヤ71に伝達するものである。円筒部79の寸法は、後述する伝達ギヤ171〜173の厚みや数などによって決定される。
【0065】
入力レバー74は、第1切換ギヤ71よりも装置の外側(図5の右側)に配置されている。この入力レバー74と、上述のレバーガイド91とによって、第1切換ギヤ71が後述する第1伝達ギヤ171及び第2伝達ギヤ172のいずれかに噛合可能に位置決めされ、且つ、第2切換ギヤ72がフリーの位置か後述の第3伝達ギヤ173に噛合可能な位置のいずれかに位置決めされる。つまり、入力レバー74及びレバーガイド91によって本発明の位置決め部材が実現されている。
【0066】
図5に示されるように、入力レバー74は、支軸73に外嵌される筒状の円筒部78と、円筒部78から径方向に突設された入力部77とを有する。ギヤユニット110が支持フレーム120に装着された状態で、入力レバー74の入力部77が後述する開口122を通じてレバーガイド91のガイド孔95に挿入される。円筒部78は、支軸73に外嵌されて軸線方向にスライド自在且つ回転自在である。円筒部78がスライドされると、入力部77は、支軸73の軸線方向へスライドし、円筒部78が支軸73の周りに回転すると、入力部77も同方向に回転する。
【0067】
第1コイルバネ111は、入力レバー74よりも装置の外側(図5の右側)に配置されている。また、第2コイルバネ112は、第2切換ギヤ72よりも装置の内側(図5の左側)に配置されている。
【0068】
ギヤユニット110が支持フレーム120に装着された状態で、第1コイルバネ111及び第2コイルバネ112は圧縮されている。つまり、第1コイルバネ111及び第2コイルバネ112は所謂圧縮バネとして機能している。第1コイルバネ111及び第2コイルバネ112は、支軸73の軸線方向に伸縮可能に設けられている。入力レバー74は、第1コイルバネ111によって第1切換ギヤ71側(図5の矢印85の方向)へ付勢されている。また、第2切換ギヤ72は、第2コイルバネ112によって第1切換ギヤ71側(図5の矢印86の方向)へ付勢されている。つまり、第1切換ギヤ71と第2切換ギヤ72とは、相反する方向へ付勢する2つのコイルバネ111,112によって、互いに接近する方向へ付勢されている。なお、2つのコイルバネ111,112によって付勢されて互いに当接された第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72は、一体となった状態、すなわち、それぞれの部材が互いに当接した状態において独立して回転可能である。
【0069】
本実施形態では、第1コイルバネ111の付勢力(矢印85の方向の付勢力)は、第2コイルバネ112の付勢力(矢印86の方向の付勢力)より大きく設定されている。したがって、第2切換ギヤ72、第1切換ギヤ71、入力レバー74は、外力が付与されなければ、第1コイルバネ111に付勢されて、第2コイルバネ112を圧縮させるとともに、支軸73を矢印85へ向かってスライドする。そして、入力レバー74の入力部77がガイド孔95の内側端部(図5の左側端部)に当接すると、矢印85方向のスライドが停止する。このとき、入力部77は、第1駆動伝達位置P1に配置される。この第1駆動伝達位置P1において、第1切換ギヤ71は第2伝達ギヤ172と噛合しており、第2切換ギヤ72はフリー状態となっている。入力部77にガイド片92が当接して、該入力部77がガイド片92に押されると、入力部77は、各切換ギヤ71,72による駆動伝達を切り換えるために、第2駆動伝達位置P2または第3駆動伝達位置P3に移動する。
【0070】
図4に示されるように、支持フレーム120の上面121に開口122が形成されている。この開口122は、支軸73の軸線方向へ延びる長孔である。支持フレーム120にギヤユニット110が装着された状態で、開口122に入力レバー74の入力部77が挿通される。開口122の横幅、すなわち支軸73の軸線方向の長さ寸法は、入力レバー74の移動範囲よりも大きく設定されている。したがって、入力レバー74の移動が開口122によって規制されることはない。
【0071】
[伝達ギヤ171〜173]
図5に示されるように、第1切換ギヤ71及び第2切換ギヤ72の下方には、支軸73と平行な支軸180に第1伝達ギヤ171、第2伝達ギヤ172及び第3伝達ギヤ173が並列に配置されている。第1伝達ギヤ171及び第2伝達ギヤ172は、第1切換ギヤ71と噛離可能な位置に配置されている。このように配置された第1伝達ギヤ171及び第2伝達ギヤ172が、本発明の第1伝達ギヤに相当する。第3伝達ギヤ173は第2切換ギヤ72と噛離可能な位置に配置されている。このように配置された第3伝達ギヤ173が、本発明の第2伝達ギヤに相当する。第1伝達ギヤ171、第2伝達ギヤ172及び第3伝達ギヤ173は、その厚み等が異なるが、外径は同等である。第1伝達ギヤ171、第2伝達ギヤ172及び第3伝達ギヤ173は、支軸180に、装置外側(図5の右側)から順に装置内側(図5の左側)へ並べられている。
【0072】
伝達ギヤ171〜173は、各駆動部に駆動力をそれぞれ伝達するためのものである。図5に示されるように、第1伝達ギヤ171は、キャップ57を上下動させるリフトアップ機構51などへの駆動伝達を行う。第2伝達ギヤ172は、第1給紙ローラ25及び第2給紙ローラ30への駆動伝達を行う。第3伝達ギヤ173は、メインテナンス機構55における吸引ポンプ52などへの駆動伝達を行う。このように、第1伝達ギヤ171、第2伝達ギヤ172及び第3伝達ギヤ173は、複数の各駆動部に駆動力をそれぞれ伝達すべく割り当てが定められている。第1伝達ギヤ171、第2伝達ギヤ172及び第3伝達ギヤ173から各駆動部への駆動伝達機構は、ギヤ列やベルトなどを用いた公知の駆動伝達機構を採用することができ、本発明の要旨には直接影響しないので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0073】
図6(A)に示されるように、入力レバー74の入力部77が第1駆動伝達位置P1に配置された状態では、第1切換ギヤ71が第2伝達ギヤ172と噛合されており、第2切換ギヤ72がフリーの状態にある。図6(B)に示されるように、入力部77が第1駆動伝達位置P1から第2駆動伝達位置P2に移動されると、第1切換ギヤ71が第2伝達ギヤ172から離れて第1伝達ギヤ171と噛合される。一方、第2切換ギヤ72は、フリーの状態を維持する。図6(C)に示されるように、入力部77が第2駆動伝達位置P2から第3駆動伝達位置P3に移動されると、第1切換ギヤ71は第1伝達ギヤ171と噛合したまま軸方向へスライドする。一方、第2切換ギヤ72は、フリーの状態から第3伝達ギヤ173と噛合される。
【0074】
上述の如く構成されたギヤユニット110では、図7(A)に示されるように、第1切換ギヤ71が第2伝達ギヤ172から離れて第1伝達ギヤ171と噛合される際に、各ギヤの歯の位置が一致しないため、第1切換ギヤ71と第1伝達ギヤ171とが上手く噛み合わない場合がある。また、第1切換ギヤ71と第2伝達ギヤ172との面圧によって、第1切換ギヤ71が第2伝達ギヤ172から離れない場合もある。この場合、入力部77が第2駆動伝達位置P2に移動しても、第1切換ギヤ71の駆動伝達の切り換えができない。また、図7(B)に示されるように、第2切換ギヤ72がフリーの状態から第3伝達ギヤ173と噛合される際も、同様に、第2切換ギヤ72と第3伝達ギヤ173とが上手く噛み合わない場合がある。そのため、本実施形態では、切換ギヤ71,72の駆動伝達が切り換えられる際に、後述するモータ制御部130(本発明の制御手段の一例)により、図9に示されるフローチャートにしたがったモータ制御が行われることによって、切換ギヤ71,72を所定回転量だけ回転させている。これにより、ギヤ間の面圧が解除され、或いは、各ギヤの歯が互いに噛合可能に合わせられるため、各ギヤの駆動伝達の切り替えが円滑且つ確実に行われる。
【0075】
[モータ制御部130]
以下、図8のブロック図を参照して、モータ制御部130の構成について説明する。図8では、各モータ65,66からの伝達経路が破線で示されている。モータ制御部130は、ASFモータ65及びLFモータ66を制御するものである。モータ制御部130は、複合機10の動作を統括制御する主制御部とは別の構成とされていてもよいが、モータ制御部130が上記主制御部に組み込まれた構成であってもかまわない。なお、キャリッジ38を駆動するCRモータもモータ制御部130によって駆動制御されるものであるが、CRモータの制御は本発明に直接関係しないので、CRモータの動作に関する構成の説明は省略する。
【0076】
図8に示されるように、モータ制御部130は、主として、CPU131と、ROM132と、RAM133と、ASIC136と、駆動回路137とを備え、これら各部がバス135によって通信可能に接続されている。
【0077】
ROM132には、ASFモータ65及びLFモータ66の回転駆動を制御するためのプログラムが格納されている。具体的には、図9に示されるフローチャートの手順に従った各処理を実行するためのプログラムが格納されている。その他、ロータリーエンコーダ81,82やその他のセンサの検知信号に基づいて、ASFモータ65やLFモータ66の回転方向の切り換えを制御したり、ASFモータ65やLFモータ66の回転量を制御するプログラムがROM132に格納されている。
【0078】
RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域又は作業領域として使用される。また、RAM133には、CPU131によってモータ制御(後述するASFモータ制御、LFモータ制御)の回数をカウントしたときのカウント値の記録領域が確保されている。
【0079】
ASIC136は、CPU131からの指令に従い、ASFモータ65やLFモータ66に通電するPWM信号等を生成して、該信号を後述する駆動回路137,138に付与する。駆動回路137を介して駆動信号がASFモータ65に通電されることにより、モータ制御部130によるASFモータ65の回転制御が行われる。また、駆動回路138を介して駆動信号がLFモータ66に通電されることにより、モータ制御部130によるLFモータ66の回転制御が行われる。
【0080】
駆動回路137は、第1給紙ローラ25及び第2給紙ローラ30に接続されたASFモータ65を駆動させるものである。駆動回路137は、ASIC136からの出力信号を受けて、ASFモータ65をCW方向或いはCCW方向へ回転させるための電気信号を形成する。該電気信号を受けてASFモータ65が所定の回転方向へ回転する。ASFモータ65の回転は、該ASFモータ65から第1給紙ローラ25及び第2給紙ローラ30それぞれに至る伝達経路に設けられたギヤなどの駆動伝達機構を介して、第1給紙ローラ25及び第2給紙ローラ30それぞれに伝達される。
【0081】
駆動回路138は、搬送ローラ60に接続されたLFモータ66を駆動させるものである。駆動回路138は、ASIC136からの出力信号を受けて、LFモータ66を所定の回転方向へ回転させるための電気信号を形成する。該電気信号を受けてLFモータ66が所定の回転方向へ回転する。LFモータ66の回転は、該LFモータ66から搬送ローラ60に至る伝達経路に設けられたギヤなどの駆動伝達機構を介して搬送ローラ60へ伝達される。
【0082】
ASIC136には、ロータリーエンコーダ81,82が接続されている。ロータリーエンコーダ81は、ASFモータ65の回転量を検知するためのものであり、ASFモータ65に取り付けられている。また、ロータリーエンコーダ82は、搬送ローラ60及びLFモータ66の回転量を検知するためのものであり、搬送ローラ60に取り付けられている。ロータリーエンコーダ81,82は、回転軸と同軸に設けられたエンコーダディスクと光学センサとからなる周知の回転量検知手段である。回転軸とともにエンコーダディスクが回転すると、光学センサから電気的なパルス信号(検知信号)が発信される。ロータリーエンコーダ80,81によって検知された信号は、ASIC136からバス135を経てCPU131に送られる。CPU131は、この検知信号に基づいて各モータ65,66の回転量を測定し、或いは、各モータ65,66の回転異常の有無を判定する。
【0083】
続いて、図9のフローチャート及び図10のタイミングチャートを参照して、CPU131によって実行されるASFモータ65及びLFモータ66の駆動制御の処理手順の一例について説明する。かかる駆動制御は、入力レバー74が第1駆動伝達位置P1から第3駆動伝達位置P3(図5参照)に移動した際に、或いは、入力レバー74が第2駆動伝達位置P2から第3駆動伝達位置P3にした際に実行される。なお、処理はステップS1から開始される。
【0084】
ステップS1では、CPU131によって、RAM133に確保されたカウントメモリのカウント値Cをリセットされる。
【0085】
その後、ステップS10〜S13までの手順にしたがって行われるASFモータ制御(本発明の第2制御に相当)と、ステップS20〜S21までの手順にしたがって行われるLFモータ制御(本発明の第1制御に相当)とが並行して実行される。なお、図9のフローチャートでは、説明の便宜上ステップS1からステップS10及びS20それぞれへ進むフローが分岐しているが、実際は、ASFモータ制御とLFモータ制御とは、独立して駆動制御される。
【0086】
ASFモータ制御(S10〜S13)では、ASFモータ65をCW方向へ所定回転量だけ回転させ、更にCCW方向へ所定回転量だけ回転させ、その後にASFモータ65を停止させる制御が行われる。すなわち、まず、ステップS10においてASFモータ65を起動させて、CW方向へ所定回転量だけ回転させる(S10)。具体的には、ロータリーエンコーダ81からのパルス信号を基準にして、ASFモータ65を1154パルス(1154ENC)だけ回転させる。ここで、1154パルスは、伝達ギヤ171,172の歯を基準にして2.7歯分だけ第1切換ギヤ71を回転させる回転量である。つまり、第1切換ギヤ71と第1伝達ギヤ171(又は第2伝達ギヤ172)とが噛み合っているときにASFモータ65を1154パルスだけ回転させると、第1伝達ギヤ171が2.7歯分だけ回転する。
【0087】
停止状態のASFモータ65が回転されると、ASFモータ65は、所定の回転速度(本実施形態では729min−1に設定)に到達するまで加速され、その後、上記回転速度で定速駆動され、そして、減速されることにより再び停止する(図10の上段参照)。そして、ステップS10の駆動が終了すると、100ms待機した後に(S11)、ステップS10と同様にして、ASFモータ65をCCW方向へ所定回転量だけ回転させる(S12)。そして、ステップS12の駆動が終了すると、CPU131は、200ms待機する(S13)。待機時間200msが経過すると、ASFモータ制御の終了フラグをセットしてから、次のステップS14へ進む。
【0088】
なお、本実施形態では、ステップS10及びステップS12において、伝達ギヤ171,172の2.7歯分だけASFモータ65を回転させることとしたが、この回転量は、各ギヤのバックラッシや停止誤差などのロスを考慮して定めたものである。第1切換ギヤ71と伝達ギヤ171,172とが噛合するには、最低限として第1切換ギヤ71が伝達ギヤ171,172の1歯分だけ回転すればよい。したがって、ギヤのバックラッシや停止誤差などのロスを考慮したとしても、実質的に、第1切換ギヤ71を伝達ギヤ171,172の1歯分だけ回転させ得る回転量だけ、ASFモータ65を回転させればよい。
【0089】
ステップS14では、LFモータ制御が終了したかどうかの判断がCPU131によって行われる。なお、ステップS14の判断は、例えば、LFモータ制御が終了したときに終了フラグをCPU131のレジスタ或いはRAM133にセットしておき、当該終了フラグの有無に基づいて行うことができる。
【0090】
LFモータ制御(S20〜S21)では、LFモータ66をCCW方向へ所定回転量だけ回転させた後にLFモータ66を停止させる制御が行われる。すなわち、まず、ステップS20においてLFモータ66をASFモータ65と同じタイミングで起動させて、該LFモータ66をCW方向へ所定回転量だけ回転させる(S20)。具体的には、ロータリーエンコーダ82からのパルス信号を基準にして、LFモータ66を1024パルス(1024ENC)だけ回転させる。ここで、1024パルスは、伝達ギヤ173の歯を基準にして2.25歯分だけ第2切換ギヤ72を回転させる回転量である。つまり、第2切換ギヤ72と第3伝達ギヤ173とが噛み合っているときにLFモータ66を1024パルスだけ回転させると、第3伝達ギヤ173が2.25歯分だけ回転する。
【0091】
停止状態のLFモータ66が回転されると、LFモータ66は、所定の回転速度(本実施形態では140min−1に設定)に到達するまで加速され、その後、上記回転速度で定速駆動され、そして、減速されることにより再び停止する(図10の下段参照)。そして、ステップS20の駆動が終了すると、CPU131は、200ms待機する(S21)。待機時間200msが経過すると、LFモータ制御の終了フラグをセットしてから、次のステップS22へ進む。
【0092】
なお、本実施形態では、ステップS20において、第3伝達ギヤ173の2.25歯分だけLFモータ66を回転させることとしたが、この回転量は、各ギヤのバックラッシや停止誤差などのロスを考慮して定めたものである。第2切換ギヤ72と第3伝達ギヤ173とが噛合するには、最低限として第2切換ギヤ72が第3伝達ギヤ173の1歯分だけ回転すればよい。したがって、ギヤのバックラッシや停止誤差などのロスを考慮したとしても、実質的に、第2切換ギヤ72を第3伝達ギヤ173の1歯分だけ回転させ得る回転量だけ、LFモータ66を回転させればよい。
【0093】
ステップS22では、ASFモータ制御が終了したかどうかの判断がCPU131によって行われる。なお、ステップS22の判断は、例えば、ASFモータ制御が終了したときに終了フラグをCPU131のレジスタ或いはRAM133にセットしておき、当該終了フラグの有無に基づいて行うことができる。
【0094】
ステップS14又はステップS22においてモータ制御が終了したと判断されると、次のステップS30において、CPU131によってカウント値Cがインクリメントされる。
【0095】
ステップS31では、カウント値Cが予め設定された設定回数nであるかどうかが判断される。本実施形態では、上記設定回数nは、3回に設定されている。なお、言うまでもなく、上記設定回数nは、任意に設定できる要素である。ステップS31において、カウント値C=nと判断されると、一連の処理が終了する。一方、カウント値C≠nと判断されると、再び、上記ASFモータ制御(S10〜S13)及び上記LFモータ制御(S20〜S21)が並行して行われる。なお、上記ASFモータ制御及び上記LFモータ制御は、ステップS14においてカウント値C=nと判断されるまで繰り返し行われる。
【0096】
[本実施形態の作用効果]
このようにASFモータ制御及びLFモータ制御が行われるため、図10に示されるように、各モータ65,66の起動直後の加速領域T10をオーバーラップさせることができる。各モータ65,66の加速は、求められる回転速度やモータのトルクなどによって異なるため、加速領域T10が完全に一致することは稀であるが、少なくとも、起動直後から一方のモータが一定速度に到達するまでは、加速領域T10の一部がオーバーラップする。モータ起動直後は、各モータ65,66は低回転で回転され、各切換ギヤ71,72も低回転で回転される。そのため、切換ギヤ71,72が切換可能な状態になりやすい。つまり、第1切換ギヤ71が第2伝達ギヤ172から第1伝達ギヤ171に切り換えられやすい状態となり、第2切換ギヤ72がフリーの状態から第3伝達ギヤ173に噛合し易い状態となる。これにより、各モータ65,66の回転速度が一定速度まで上がりきる前に各切換ギヤ71,72と各伝達ギヤ171,173とを迅速に、且つ確実に噛み合わせることができる。
【0097】
また、図10に示されるように、ASFモータ65のCW方向の回転駆動において減速領域T11が存在する。そのため、仮に、各モータ65,66の起動直後における加速領域T10で切り換えができなかったとしても、少なくとも第1切換ギヤ71については、減速領域T11において第1切換ギヤ71が第2伝達ギヤ172から第1伝達ギヤ171に切り換えられやすい状態となる。ここで、他方のLFモータ66は一定速度で回転駆動されているが、LFモータ66が回転されてさえいれば、切換ギヤの位相(伝達ギヤに対する位相)がずれるため、LFモータ66が停止している場合に比べて第1切換ギヤ71は切換可能な状態になりやすいと言える。なお、ASFモータ65のCCW方向への回転駆動の際についても、加速領域T12が存在するため、同様のことが言える。
【0098】
なお、上述のASFモータ制御(S10〜S13)及びLFモータ制御(S20〜S21)において、ステップS12の回転駆動の停止タイミングとステップS20の回転駆動の停止タイミングとを概ね一致させるように各モータ65,66の回転駆動を制御してもかまわない。言い換えると、LFモータ制御の終了時と略同時期にASFモータ制御を終了させてもかまわない。この場合は、図10に示されるように、ASFモータ65及びLFモータ66の減速領域T13をオーバーラップさせることができるため、モータ停止直前においても切換ギヤ71,72が切換可能な状態になりやすい。
【0099】
また、図9のフローチャートでは、ASFモータ65の起動時に該ASFモータ65をCW方向へ回転させ、LFモータ66の起動時に該LFモータ66をCW方向へ回転させることとしたが、例えば、図10の太破線に示されるように、ASFモータ65の起動時に該ASFモータ65をCW方向へ回転させ、LFモータ66の起動時に該LFモータ66をCCW方向へ回転させてもよい。
【0100】
また、図9のフローチャートでは、ASFモータ65とLFモータ66とを同じタイミングで起動させることとしたが、各モータ65,66の起動タイミングを異ならせてもかまわない。起動タイミングが異なったとしても、少なくとも、LFモータ66が回転駆動している間に、ASFモータ65が起動されればよい。この場合、仮に、起動直度の加速領域がオーバーラップしなくても、LFモータ66の回転駆動中にASFモータ65が反転加速されるため、ギヤ間の面圧が解放された状態で第1切換ギヤ71が低速で回転する。これにより、LFモータ66が停止している場合に比べて第1切換ギヤ71は切換可能な状態になりやすい。
【0101】
[変形例1]
次に、図11のフローチャート及び図12のタイミングチャートを参照して、CPU131によって実行されるASFモータ65及びLFモータ66の駆動制御の処理手順の変形例1について説明する。かかる駆動制御は、入力レバー74が第1駆動伝達位置P1から第3駆動伝達位置P3に移動した際に、或いは、入力レバー74が第2駆動伝達位置P2から第3駆動伝達位置P3(図5参照)にした際に実行される。以下においては、前述された処理手順と同じ処理手順については、その詳細な説明を省略する。なお、処理はステップS101から開始される。
【0102】
CPU131によって、カウント値Cがリセットされると(S101)、その後、ステップS110〜S113までの手順にしたがって行われるASFモータ制御(本発明の第2制御に相当)と、ステップS120〜S124までの手順にしたがって行われるLFモータ制御(本発明の第1制御に相当)とが並行して実行される。なお、図11のフローチャートでは、説明の便宜上ステップS101からステップS110及びS120それぞれへ進むフローが分岐しているが、実際は、ASFモータ制御とLFモータ制御とは、独立して駆動制御される。
【0103】
ASFモータ制御(S110〜S112)では、図12の上段に示されるように、ASFモータ65をCW方向へ所定回転量だけ回転させ、更にCCW方向へ所定回転量だけ回転させ、その後にASFモータ65を停止させる制御が2回繰り返し行われる。すなわち、まず、ステップS110において、図9のステップS10〜S13と同様の処理が行われる。その後、ステップS111において、LFモータ制御側の1回目の待機時間(200ms)が経過したかどうかが判断される。ここで、上記待機時間が経過していた場合は、ステップS112において、後述するステップS122と同じタイミングで上記ステップS111と同じ処理が行われる。その後、ステップS113において図9のステップS14と同様の判断処理、つまり、LFモータ制御が終了したかどうかの判断が行われる。
【0104】
LFモータ制御(S120〜S123)では、図12の下段に示されるように、LFモータ66をCW方向へ所定回転量だけ回転させ、更にCCW方向へ所定回転量だけ回転させ、その後にLFモータ66を停止させる制御が行われる。すなわち、まず、ステップS120において、図9のステップS20〜S21と同様の処理が行われる。その後、ステップS121において、ASFモータ制御側の1回目の待機時間(100ms)が経過したかどうかが判断される。ここで、上記待機時間が経過していた場合は、ステップS122において、上述のステップS112と同じタイミングで、ステップS20と同様にして、LFモータ66をCCW方向へ所定回転量だけ回転させる(S122)。そして、ステップS122の駆動が終了すると、200ms待機した後に(S123)に、次のステップS124において、図9のステップS14と同様の判断処理、つまり、ASFモータ制御が終了したかどうかの判断が行われる。
【0105】
ステップS113又はステップS123においてモータ制御が終了したと判断されると、次のステップS130において、CPU131によってカウント値Cがインクリメントされて、その後、カウント値Cが設定回数nであるかどうかが判断される(S131)。ここで、カウント値C=nと判断されると一連の処理が終了し、カウント値C≠nと判断されるとステップS110,S120以降の処理が繰り返される。
【0106】
[変形例2]
次に、図13のフローチャート及び図14のタイミングチャートを参照して、CPU131によって実行されるASFモータ65及びLFモータ66の駆動制御の処理手順の変形例2について説明する。かかる駆動制御は、入力レバー74が第3駆動伝達位置P3から第1駆動伝達位置P1に移動した際に実行される。以下においては、前述された処理手順と同じ処理手順については、その詳細な説明を省略する。なお、処理はステップS201から開始される。
【0107】
CPU131によって、カウント値Cがリセットされると(S201)、その後、ステップS210〜S211までの手順にしたがって行われるASFモータ制御(本発明の第2制御に相当)と、ステップS220〜S221までの手順にしたがって行われるLFモータ制御(本発明の第1制御に相当)とが並行して実行される。なお、図13のフローチャートでは、説明の便宜上ステップS201からステップS210及びS220それぞれへ進むフローが分岐しているが、実際は、ASFモータ制御とLFモータ制御とは、独立して駆動制御される。
【0108】
ASFモータ制御(S210〜S211)では、図14の上端に示されるように、ASFモータ65をCW方向へ所定回転量だけ回転させる制御が行われる。すなわち、まず、ステップS210において、図9のステップS10と同様の処理が行われる。ステップS210の駆動が終了すると、CPU131は、200ms待機する(S211)。待機時間200msが経過すると、ASFモータ制御の終了フラグをセットしてから、次のステップS212へ進み、図9のステップS14と同様の判断処理、つまり、LFモータ制御が終了したかどうかの判断が行われる。
【0109】
LFモータ制御(S220〜S221)では、図14の下段に示されるように、LFモータ66をCW方向へ所定回転量だけ回転させる制御が行われる。すなわち、まず、ステップS220において、図9のステップS20と同様の処理が行われる。ステップS220の駆動が終了すると、CPU131は、200ms待機する(S221)。待機時間200msが経過すると、LFモータ制御の終了フラグをセットしてから、次のステップS222へ進み、図9のステップS22と同様の判断処理、つまり、ASFモータ制御が終了したかどうかの判断が行われる。
【0110】
ステップS212又はステップS222においてモータ制御が終了したと判断されると、次のステップS230において、CPU131によってカウント値Cがインクリメントされて、その後、カウント値Cが設定回数nであるかどうかが判断される(S231)。ここで、カウント値C=nと判断されると一連の処理が終了し、カウント値C≠nと判断されるとステップS210,S220以降の処理が繰り返される。
【0111】
[変形例3]
次に、図15のフローチャート及び図16のタイミングチャートを参照して、CPU131によって実行されるASFモータ65及びLFモータ66の駆動制御の処理手順の変形例3について説明する。かかる駆動制御は、入力レバー74が第3駆動伝達位置P3から第1駆動伝達位置P1に移動した際に実行される。以下においては、前述された処理手順と同じ処理手順については、その詳細な説明を省略する。なお、処理はステップS301から開始される。
【0112】
CPU131によって、カウント値Cがリセットされると(S301)、その後、ステップS310〜S314までの手順にしたがって行われるASFモータ制御(本発明の第2制御に相当)と、ステップS320〜S324までの手順にしたがって行われるLFモータ制御(本発明の第1制御に相当)とが並行して実行される。なお、図15のフローチャートでは、説明の便宜上ステップS301からステップS310及びS320それぞれへ進むフローが分岐しているが、実際は、ASFモータ制御とLFモータ制御とは、独立して駆動制御される。
【0113】
ASFモータ制御(S310〜S314)では、図16の上段に示されるように、ASFモータ65をCW方向へ所定回転量だけ回転させ、更にCCW方向へ所定回転量だけ回転させ、その後にASFモータ65を停止させる制御が行われる。すなわち、まず、ステップS310において、図9のステップS10と同様に、ASFモータ65をCW方向へ所定回転量だけ回転させる。ステップS310の駆動が終了すると、CPU131は、200ms待機する(S311)。待機時間200msが経過すると、ステップS312において、図11のステップS111と同様に、LFモータ制御側の1回目の待機時間(200ms)が経過したかどうかが判断される。ここで、上記待機時間が経過していた場合は、ステップS313において、後述するステップS323の駆動と同じタイミングで、図9のステップS12と同様に、ASFモータ65をCCW方向へ所定回転量だけ回転させる。ステップS313の駆動が終了すると、CPU131は、200ms待機する(S314)。その後、待機時間200msが経過すると、ステップS315において図9のステップS14と同様の判断処理、つまり、LFモータ制御が終了したかどうかの判断が行われる。
【0114】
LFモータ制御(S320〜S325)では、図16の下段に示されるように、LFモータ66をCW方向へ所定回転量だけ回転させ、更にCCW方向へ所定回転量だけ回転させ、その後にLFモータ66を停止させる制御が行われる。すなわち、まず、ステップS320において、図9のステップS20と同様に、LFモータ66をCW方向へ所定回転量だけ回転させる。ステップS320の駆動が終了すると、CPU131は、200ms待機する(S321)。待機時間200msが経過すると、ステップS312において、図11のステップS121と同様に、ASFモータ制御側の1回目の待機時間(200ms)が経過したかどうかが判断される。ここで、上記待機時間が経過していた場合は、ステップS323において、上述のステップS313の駆動と同じタイミングで、図11のステップS122と同様に、LFモータ66をCCW方向へ所定回転量だけ回転させる。ステップS323の駆動が終了すると、CPU131は、200ms待機する(S324)。その後、待機時間200msが経過すると、ステップS325において図9のステップS22と同様の判断処理、つまり、ASFモータ制御が終了したかどうかの判断が行われる。
【0115】
ステップS315又はステップS325においてモータ制御が終了したと判断されると、次のステップS330において、CPU131によってカウント値Cがインクリメントされて、その後、カウント値Cが設定回数nであるかどうかが判断される(S331)。ここで、カウント値C=nと判断されると一連の処理が終了し、カウント値C≠nと判断されるとステップS310,S320以降の処理が繰り返される。
【0116】
[変形例4]
次に、図17のフローチャートを参照して、CPU131によって実行されるASFモータ65及びLFモータ66の駆動制御の処理手順の変形例4について説明する。
【0117】
上述の実施形態及び各変形例において、各モータ65,66を回転させるべく駆動信号を供給しても、各モータ65,66から各駆動部に至る伝達経路にギヤ間の面圧や予期せぬトルクが負荷となり、モータ65,66が回転しない場合がある。また、回転したとしても、その回転量が所定回転量未満である場合がある。また逆に、上記負荷が軽すぎるなどの要因で、勢い余ってモータ65,66が所定回転量以上回転する場合もあり得る。いずれの場合でも、上述したASFモータ制御及びLFモータ制御においては、異常駆動である。このような異常な制御が行われた場合は、その制御回数をカウントすることは望ましくない。
【0118】
本変形例3では、図17(A)に示されるように、例えば、図9のステップS14又はステップS22においてモータ制御が終了したと判断された場合に、ASFモータ制御或いはLFモータ制御が行われている最中にモータ異常駆動が発生したかどうかを判断する(S401)。かかる判断は、ロータリーエンコーダ81,82のパルス数に基づいて判断される。例えば、CPU131によって所定回転量に相当するパルス数が所定時間以内に検知されなかった場合にモータ以上駆動が発生していると判断する。モータ異常駆動が発生していると判断された場合は、カウント値CをインクリメントせずにステップS31の判断処理を行うこととしている。一方、モータ異常駆動が発生していない場合は、通常通り、ステップS30においてカウント値Cをインクリメントする。これにより、モータ異常駆動が発生した場合は、そのときのモータ制御がカウントされないため、結果として設定回数n以上のモータ制御が行われることになる。なお、図17(B)に示されるように、モータ異常駆動が発生していると判断された場合は、図9のステップS1に進んで、カウント値Cをリセットするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、本発明の実施形態にかかる複合機10の外観構成を示す図であり、複合機10を正面側から見た斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部11の縦断面構造を示す模式断面図である。
【図3】図3は、プリンタ部11の内部構成を示す図であり、プリンタ部11を背面側から見た斜視図である。
【図4】図4は、駆動切換機構70の構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、ギヤユニット110の構成及び伝達経路を示す模式図である。
【図6】図6は、入力レバー74の位置及びギヤユニット110の動作を説明するための模式図である。
【図7】図7は、ギヤユニット110の動作不良を説明するための模式図である。
【図8】図8は、モータ制御部130の構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、モータ制御部130によって実行されるモータ制御の処理手順の一例を説明するフローチャートである。
【図10】図10は、ASFモータ65及びLFモータ66の駆動状態を説明するタイミングチャートである。
【図11】図11は、モータ制御部130によって実行されるモータ制御の処理手順の変形例1を説明するフローチャートである。
【図12】図12は、変形例1にかかるASFモータ65及びLFモータ66の駆動状態を説明するタイミングチャートである。
【図13】図13は、モータ制御部130によって実行されるモータ制御の処理手順の変形例2を説明するフローチャートである。
【図14】図14は、変形例2にかかるASFモータ65及びLFモータ66の駆動状態を説明するタイミングチャートである。
【図15】図15は、モータ制御部130によって実行されるモータ制御の処理手順の変形例3を説明するフローチャートである。
【図16】図16は、変形例3にかかるASFモータ65及びLFモータ66の駆動状態を説明するタイミングチャートである。
【図17】図17は、モータ制御部130によって実行されるモータ制御の処理手順の変形例4を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0120】
11・・・プリンタ部
25・・・第1給紙ローラ
30・・・第2給紙ローラ
38・・・キャリッジ
39・・・記録ヘッド
55・・・メインテナンス機構
56・・・フラッシング部
51・・・リフトアップ機構
52・・・吸引ポンプ
70・・・駆動切換機構
71・・・第1切換ギヤ
72・・・第2切換ギヤ
73・・・支軸
74・・・入力レバー
77・・・入力部
110・・・ギヤユニット
111・・・第1コイルバネ
112・・・第2コイルバネ
171・・・第1伝達ギヤ
172・・・第2伝達ギヤ
173・・・第3伝達ギヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転方向及び該第1回転方向とは逆の第2回転方向へ回転制御可能な第1モータ及び第2モータと、
上記第1モータからの駆動力を受けて回転される第1切換ギヤと、
上記第1切換ギヤと同軸上に軸支され、上記第2モータからの駆動力を受けて回転される第2切換ギヤと、
上記第1切換ギヤと噛合可能に配置され、対応する駆動部へ駆動力を伝達する第1伝達ギヤと、
上記第2切換ギヤと噛合可能に配置され、対応する駆動部へ駆動力を伝達する第2伝達ギヤと、を具備し、
上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤそれぞれの軸方向への移動に応じて上記第1伝達ギヤ又は上記第2伝達ギヤに上記第1切換ギヤ又は上記第2切換ギヤが噛合されるように構成された画像記録装置であって、
上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤが移動される際に、上記第1モータ及び上記第2モータのいずれか一方のモータを所定回転量だけ回転駆動させ、少なくとも上記一方のモータが回転駆動している間に他方のモータを起動して所定回転量だけ回転駆動させる制御手段を備えてなる画像記録装置。
【請求項2】
上記制御手段は、上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤが移動される際に、同じタイミングで上記第1モータ及び上記第2モータを起動させて上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤを同じタイミングで回転させる請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
上記制御手段は、
上記第1モータを上記第1回転方向又は上記第2回転方向のいずれかへ第1回転量だけ回転させた後に上記第1モータを停止させる第1制御と、
該第1制御が行われている間に、上記第2モータを上記第1回転方向へ第2回転量だけ回転させ、更に上記第2回転方向へ上記第2回転量だけ回転させた後に上記第2モータを停止させる第2制御を行う請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
上記制御手段は、上記第2制御の終了時と略同時期に上記第1制御を終了させる請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
上記制御手段は、上記第1制御及び上記第2制御の双方が終了した後に、上記第1制御及び上記第2制御を予め定められた回数繰り返し行う請求項3又は4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
上記制御手段は、
上記第1モータを上記第1回転方向又は上記第2回転方向のいずれかへ第3回転量だけ回転させた後に上記第1モータを停止させる第3制御と、
該第3制御が行われている間に、上記第2モータを上記第1モータと同方向又は逆方向のいずれかへ第4回転量だけ回転させた後に上記第2モータを停止させる第4制御を行う請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項7】
上記制御手段は、上記第3制御及び上記第4制御の双方が終了した後に、上記第3制御及び上記第4制御を予め定められた回数繰り返し行う請求項6に記載の画像記録装置。
【請求項8】
記録ヘッドを搭載して所定方向へ往復動されるキャリッジと、
上記キャリッジの当接により当該キャリッジが往復動する所定方向へスライドして、上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤの位置を軸方向へ変更するように設けられ、上記第1切換ギヤを上記第1伝達ギヤと噛合可能に位置決めし、上記第2切換ギヤを上記第2伝達ギヤと噛合可能に位置決めする位置決め部材と、
上記キャリッジが往復動する所定方向に沿った一方向へ上記位置決め部材を弾性付勢する伸縮部材と、を更に具備する請求項1から7のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項1】
第1回転方向及び該第1回転方向とは逆の第2回転方向へ回転制御可能な第1モータ及び第2モータと、
上記第1モータからの駆動力を受けて回転される第1切換ギヤと、
上記第1切換ギヤと同軸上に軸支され、上記第2モータからの駆動力を受けて回転される第2切換ギヤと、
上記第1切換ギヤと噛合可能に配置され、対応する駆動部へ駆動力を伝達する第1伝達ギヤと、
上記第2切換ギヤと噛合可能に配置され、対応する駆動部へ駆動力を伝達する第2伝達ギヤと、を具備し、
上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤそれぞれの軸方向への移動に応じて上記第1伝達ギヤ又は上記第2伝達ギヤに上記第1切換ギヤ又は上記第2切換ギヤが噛合されるように構成された画像記録装置であって、
上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤが移動される際に、上記第1モータ及び上記第2モータのいずれか一方のモータを所定回転量だけ回転駆動させ、少なくとも上記一方のモータが回転駆動している間に他方のモータを起動して所定回転量だけ回転駆動させる制御手段を備えてなる画像記録装置。
【請求項2】
上記制御手段は、上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤが移動される際に、同じタイミングで上記第1モータ及び上記第2モータを起動させて上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤを同じタイミングで回転させる請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
上記制御手段は、
上記第1モータを上記第1回転方向又は上記第2回転方向のいずれかへ第1回転量だけ回転させた後に上記第1モータを停止させる第1制御と、
該第1制御が行われている間に、上記第2モータを上記第1回転方向へ第2回転量だけ回転させ、更に上記第2回転方向へ上記第2回転量だけ回転させた後に上記第2モータを停止させる第2制御を行う請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
上記制御手段は、上記第2制御の終了時と略同時期に上記第1制御を終了させる請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
上記制御手段は、上記第1制御及び上記第2制御の双方が終了した後に、上記第1制御及び上記第2制御を予め定められた回数繰り返し行う請求項3又は4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
上記制御手段は、
上記第1モータを上記第1回転方向又は上記第2回転方向のいずれかへ第3回転量だけ回転させた後に上記第1モータを停止させる第3制御と、
該第3制御が行われている間に、上記第2モータを上記第1モータと同方向又は逆方向のいずれかへ第4回転量だけ回転させた後に上記第2モータを停止させる第4制御を行う請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項7】
上記制御手段は、上記第3制御及び上記第4制御の双方が終了した後に、上記第3制御及び上記第4制御を予め定められた回数繰り返し行う請求項6に記載の画像記録装置。
【請求項8】
記録ヘッドを搭載して所定方向へ往復動されるキャリッジと、
上記キャリッジの当接により当該キャリッジが往復動する所定方向へスライドして、上記第1切換ギヤ及び上記第2切換ギヤの位置を軸方向へ変更するように設けられ、上記第1切換ギヤを上記第1伝達ギヤと噛合可能に位置決めし、上記第2切換ギヤを上記第2伝達ギヤと噛合可能に位置決めする位置決め部材と、
上記キャリッジが往復動する所定方向に沿った一方向へ上記位置決め部材を弾性付勢する伸縮部材と、を更に具備する請求項1から7のいずれかに記載の画像記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−255307(P2009−255307A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104137(P2008−104137)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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