説明

画像読取装置、及び画像読取制御方法

【課題】より簡単な方法で、画像処理装置における精度のよい信号検出を行う。
【解決手段】ラインセンサーを備える画像読取装置は、基準クロックを所定間隔で出力する。また、ライン毎の制御タイミングを示す駆動クロックを出力する。また、前記基準クロック毎に、前記駆動クロックの信号状態を検出し、所定の信号状態の順序を検出した場合に、前記ラインセンサーにラインの制御タイミングを示す信号を出力する。ここで、前記駆動クロックの信号状態が検出されるタイミングのうち、信号状態が不定となり得る所定のタイミングの前後の基準クロックの出力間隔を前記所定間隔より長く空けて出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取技術に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナー、コピー機、複合機等の、ラインセンサーを備える画像読取装置では、ラインセンサーの制御信号として、主に主走査方向の読み取りを制御するための基準のクロック(以下、「基準クロック」とも呼ぶ。)と、主に副走査方向のライン毎の処理の駆動を制御するためのクロック(以下、「駆動クロック」とも呼ぶ。)が使用される。
【0003】
ラインセンサーは、例えば、駆動クロックを検出した場合に、各ラインの読み取りデータの出力を開始する。また、ラインセンサーは、例えば、基準クロックごとに、画素を順次出力する。
【0004】
特許文献1には、CCDラインセンサーによる原稿の読み取りタイミングを制御するための読取クロック信号、CCDラインセンサーによる副走査位置を制御するための駆動クロック信号を用いた画像読取装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−229407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、理想的には、設定されたとおりの波形パターンの制御信号がラインセンサーに入力されるのがよい。そうすれば、ラインセンサーは、制御信号を精度よく検出することができ、想定どおりに動作することができる。
【0007】
しかしながら、実際には、画像処理装置に対する外部からの電気的な影響、画像処理装置の個体の電気的な特性などにより、制御信号は、設定されたとおりの波形パターンとはならない。以下、具体例を用いて説明する。
【0008】
図6は、従来の一例に係る、基準クロックと駆動クロックの波形パターンとその出力後の波形を説明する図である。
【0009】
なお、この例では、基準クロックは、MCK(マスタークロック)信号と対応し、駆動クロックは、TR(トリガー)信号と対応する。また、この例では、ラインセンサーは、所定間隔(所定期間)tごとに出力されるMCKの立ち上がりのタイミングで、TRの信号状態(L(ロウ)、H(ハイ))をラッチし、所定の信号状態の順序パターンLHLを検出(認識)した場合に、ライン毎の制御タイミングを示すTR信号を検出する。
【0010】
図6(A)に示すような波形パターンがほとんど変化することなくラインセンサーに入力される場合、ラインセンサーは、MCKの2、3、4クロック目で、それぞれ、TRのL、H、Lを検出することができる。この場合、ラインセンサーは、想定されるタイミングからずれることなくTRを検出することができる。
【0011】
しかしながら、実際には、図6(A)の波形パターンは、ラインセンサーに入力される際には、例えば、図6(B)に示すような波形に変化している場合がある。図6(B)のTRの波形は、図6(A)の波形パターンよりも立ち下がりの角度が緩くなっている。そのため、MCKの4クロック目でラッチされることが想定されている信号状態Lが、状態Hでラッチされる可能性もある。そのような場合、パターンは、LHHLとなり、TR信号が検出されない。
【0012】
TRの検出がされなかった場合は、例えば、ライン抜けが発生し、画像データに異常が生じる。
【0013】
なお、上記の問題に対しては、例えば、フィルタリング回路などを設けて、制御信号の波形を修正する方法がある。しかし、この方法は、回路の複雑化など、製造コストの増加を招く。また、MCKの周波数が上がるほど対処が困難となる。
【0014】
そこで、本発明は、より簡単な方法で、画像処理装置における精度のよい信号検出を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するための本発明の第一の態様は、ラインセンサーを備える画像読取装置であって、基準クロックを所定間隔で出力する基準クロック出力手段と、ライン毎の制御タイミングを示す駆動クロックを出力する駆動クロック出力手段と、前記基準クロック毎に、前記駆動クロックの信号状態を検出し、所定の信号状態の順序を検出した場合に、前記ラインセンサーにラインの制御タイミングを示す信号を出力する検出手段と、を備え、前記基準クロック出力手段は、前記駆動クロックの信号状態が検出されるタイミングのうち、信号状態が不定となり得る所定のタイミングの前後の基準クロックの出力間隔を前記所定間隔より長く空けて出力する、ことを特徴とする。
【0016】
ここで、前記基準クロック出力手段は、前記駆動クロックの信号状態が不定となり得る所定のタイミングに対応する基準クロックを停止することにより、前記出力間隔を前記所定間隔より長く空ける、ことを特徴としていてもよい。
【0017】
また、前記基準クロック出力手段は、前記駆動クロックの信号状態が不定となり得る所定のタイミングに対応する基準クロックの直前の基準クロックを、前記所定間隔よりも長い期間出力することにより、前記出力間隔を前記所定間隔より長く空ける、ことを特徴としていてもよい。
【0018】
また、前記所定の信号状態の順序は、ロウ、ハイ、ロウであり、前記駆動クロックの信号状態が不定となり得る所定のタイミングは、ハイ状態の後の少なくとも一以上のタイミングである、ことを特徴としていてもよい。
【0019】
また、前記駆動クロックの信号状態が不定となり得る所定のタイミングは、さらに、ハイ状態の前の少なくとも一以上のタイミングである、ことを特徴としていてもよい。
【0020】
上記の課題を解決するための本発明の第二の態様は、ラインセンサーを備える画像読取装置であって、基準クロックを所定間隔で出力する基準クロック出力手段と、ライン毎の制御タイミングを示す駆動クロックを出力する駆動クロック出力手段と、前記基準クロック毎に、前記駆動クロックの信号状態を検出し、所定の信号状態の順序を検出した場合に、前記ラインセンサーにラインの制御タイミングを示す信号を出力する検出手段と、を備え、前記基準クロック出力手段は、前記駆動クロックの信号状態が検出されるタイミングのうち、信号状態が不定となり得る所定のタイミングに対応する基準クロックを停止する、ことを特徴とする。
【0021】
上記の課題を解決するための本発明の第三の態様は、ラインセンサーを備える画像読取装置であって、基準クロックを所定間隔で出力する基準クロック出力手段と、ライン毎の制御タイミングを示す駆動クロックを出力する駆動クロック出力手段と、前記基準クロック毎に、前記駆動クロックの信号状態を検出し、所定の信号状態の順序を検出した場合に、前記ラインセンサーにラインの制御タイミングを示す信号を出力する検出手段と、を備え、前記基準クロック出力手段は、前記駆動クロックの信号状態が検出されるタイミングのうち、信号状態が不定となり得る所定のタイミングに対応する基準クロックの直前の基準クロックを、前記所定間隔よりも長い期間出力する、ことを特徴とする。
【0022】
上記の課題を解決するための本発明の第四の態様は、ラインセンサーを備える画像読取装置における画像読取制御方法であって、基準クロックを所定間隔で出力する基準クロック出力ステップと、ライン毎の制御タイミングを示す駆動クロックを出力する駆動クロック出力ステップと、前記基準クロック毎に、前記駆動クロックの信号状態を検出し、所定の信号状態の順序を検出した場合に、前記ラインセンサーにラインの制御タイミングを示す信号を出力する検出ステップと、を含み、前記基準クロック出力ステップでは、前記駆動クロックの信号状態が検出されるタイミングのうち、信号状態が不定となり得る所定のタイミングの前後の基準クロックの出力間隔を前記所定間隔より長く空けて出力する、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一実施形態の一例に係る、画像読取装置1の概略構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第一実施形態の一例に係る、基準クロックと駆動クロックの波形パターン1とその出力後の波形を説明する図。
【図3】本発明の第一実施形態の一例に係る、基準クロックと駆動クロックの波形パターン2とその出力後の波形を説明する図。
【図4】本発明の第一実施形態の一例に係る、基準クロックと駆動クロックの波形パターン3とその出力後の波形を説明する図。
【図5】本発明の第一実施形態の一例に係る、基準クロックと駆動クロックの波形パターン4とその出力後の波形を説明する図。
【図6】従来の一例に係る、基準クロックと駆動クロックの波形パターンとその出力後の波形を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第一実施形態の一例について図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本発明の第一実施形態の一例に係る、画像読取装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0026】
画像読取装置1は、例えば、筐体の上面に原稿台(不図示)を備えた、いわゆるフラットベッド型画像読取装置である。画像読取装置1は、センサー制御基板30が搭載されたキャリッジ(不図示)を移動させながら、ラインセンサー310により透明板の原稿台に載置された原稿の画像を読み取る。画像読取装置1は、スキャナーに限られず、スキャン機能を有するファクシミリ、コピー機、複合機等であってもよい。
【0027】
画像読取装置1は、メイン制御基板10と、FFC(Flexible Flat Cable)20と、センサー制御基板30とを有する。メイン制御基板10とセンサー制御基板30は、FFC20により接続されている。
【0028】
センサー制御基板30は、トリガー検出部300およびラインセンサー310を備える。なお、本実施形態では、トリガー検出部300およびセンサー制御基板30はラインセンサー310と一体となっているが、別体となっていてもよい。
【0029】
なお、キャリッジ(不図示)は、センサー制御基板30に加え、LEDなどの光源ランプを備える。また、キャリッジは、原稿台の盤面に対し平行なガイド用のシャフト等にスライド自在に取り付けられており、モーターにより回転するベルトにより副走査方向(もしくはその逆方向)に牽引される。
【0030】
トリガー検出部300は、メイン制御基板10から出力される基準クロック(MCK)とトリガー信号(TR)を、FFC20を介して受信する。
【0031】
また、トリガー検出部300は、基準クロックに基づいて、例えば、基準クロック毎に、トリガー信号の信号状態(L又はH)をラッチし、所定の信号状態の順序パターン(例えば、L、H、L)を検出した場合に、トリガー信号を検出する。また、トリガー検出部300は、基準クロックをラインセンサー310に出力するとともに、トリガー信号を検出したタイミングで、ラインセンサー310のライン単位の制御を駆動するクロックを出力する。
【0032】
なお、トリガー検出部300は、例えば、ハードウェア回路により構成される。また、本実施形態では、トリガー検出部300は、ラインセンサー310と別体となっているが、一体となっていてもよい。
【0033】
ラインセンサー310は、例えば、主走査方向に並んだ複数のセンサーチップからなる。各センサーチップは、例えば、通常のCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサーと同様の構成を備えている。
【0034】
ラインセンサー310は、例えば、原稿に反射した光の受光量に応じて蓄積した1ライン分の電荷を、トリガー検出部300から入力された駆動クロックのタイミングで、FFC200を介してメイン制御基板10に出力する。各画素の電荷は、トリガー検出部300から入力された基準クロックに同期した電気信号(アナログ出力信号)として送る。
【0035】
メイン制御基板10は、画像読取装置1の全体を制御し、原稿の画像データを読み取るための種々の処理を行う。そのため、メイン制御基板10は、SoC(System on Chip)100と、AFE(Analog Front End)140とを備える。
【0036】
SoC100は、AFE140から出力される画素データ(デジタル信号)を順次受信し、各種画像処理(例えば、シェーディング補正など)を施し、所定の大きさ(たとえば、1ページ)の原稿の画像データを生成する。なお、SoC110は、キャリッジの光源ランプの発光、キャリッジを移動するためのモーター等の制御も行う。
【0037】
また、SoC100は、信号出力部110と、波形設定部120と、波形パターン記憶部130とを有する。
【0038】
信号出力部110は、波形設定部120により設定された波形パターンで、基準クロック及びトリガー信号を、FFC20を介してセンサー制御基板30のトリガー検出部300に出力する。
【0039】
出力する波形パターンの詳細については後述するが、信号出力部110は、トリガー検出部300によりトリガー信号の信号状態が検出されるタイミングのうち、信号状態が不定となり得る所定のタイミングの前後の基準クロックの出力間隔を所定間隔(所定期間)tより長く空けて出力する。なお、信号状態が不定となり得る所定のタイミングは、例えば、画像処理装置の製造工程において決定される。
【0040】
波形設定部120は、波形パターン記憶部130に予め記憶された一以上の波形パターンの中から、いずれか一つを選択し、信号出力部110に出力させる波形パターンとして設定する。設定する波形パターンの詳細については、後述する。
【0041】
波形パターン記憶部130は、信号出力部110に出力される波形パターンを一以上記憶する。波形パターン記憶部130には、例えば、画像読取装置1の製造工程で決定された波形パターンが記録される。記憶する波形パターンの詳細については、後述する。
【0042】
上記のSoC100は、例えば、主制御装置であるCPUと、プログラム等が記録されたROMと、メインメモリーとしてデータ等を一時的に格納するRAMと、ホスト等との入出力を制御するインターフェイスと、所定の画像処理を行う回路と、各構成要素間の通信経路となるバスとを備えた、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)で構成することができる。
【0043】
なお、信号出力部110は、例えば、クロックを発生、出力するための専用回路で実現することができる。波形設定部120は、例えば、CPUが所定のプログラムを実行することにより実現することができる。波形パターン記憶部130は、例えば、ROMにより実現することができる。
【0044】
AFE140は、ラインセンサー310から出力された出力信号(アナログ信号)を、デジタル信号に変換して、SoC100に出力する。AFE120は、例えば、CDS回路、ゲイン回路、A/D変換回路などを有する。AFE140は、SoC100から供給されるCDS信号に基づいて、ラインセンサー310の基準クロックに同期したアナログ出力信号について、CDS回路によるサンプリングを行い、デジタル信号としてSoC100に出力する。
【0045】
本実施形態の一例に係る画像読取装置1は、以上のように構成される。ただし、この構成は、本願発明の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、上記の構成に限られない。また、一般的な画像読取装置が備える他の構成を排除するものではない。
【0046】
また、上記した各構成要素は、画像読取装置1の構成を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものである。構成要素の分類の仕方や名称によって、本願発明が制限されることはない。画像読取装置1の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。
【0047】
次に、上記の画像読取装置1により出力される制御信号の波形パターンについて説明する。
【0048】
なお、以下では、トリガー検出部300は、基準クロック(MCK)の各クロックの立ち上がりのタイミングで、トリガー信号(TR)の信号状態(L(ロウ)、H(ハイ))をラッチし、所定の信号状態の順序パターンLHLを検出した場合に、TR信号を検出するものとする。また、以下では、基準クロックは、MCK信号と対応し、駆動クロックは、TR信号と対応する。
【0049】
図2は、本発明の第一実施形態の一例に係る、基準クロックと駆動クロックの波形パターン1とその出力後の波形を説明する図である。もちろん、図中の各クロックの周期、間隔、波形などは、一例であり、これに限定されるものではない。
【0050】
信号出力部110は、図2(A)に示す波形パターン1を出力するように、波形設定部120により設定される。すなわち、波形パターン記憶部130には、波形パターン1が記憶されており、この波形パターン1を波形設定部120が信号出力部110に設定する。設定のタイミングは、例えば、画像処理装置1の電源がオンされた場合である。
【0051】
信号出力部110は、所定間隔tで、MCK0〜3を出力し、MCK3から所定間隔t後の1クロック(TR信号のH状態の直後の信号状態をラッチするためのクロック)を停止し、その後、MCK4〜7を出力する。すなわち、MCK3から2t経過後に、MCK4を出力する。
【0052】
MCK2は、TR信号のH状態の前の信号状態Lをラッチするためのクロックである。MCK3は、TR信号のH状態をラッチするためのクロックである。MCK4は、TR信号のH状態の後の信号状態Lをラッチするためのクロックである。
【0053】
上述の波形パターン1は、トリガー検出部300に入力される際には、例えば、図2(B)のような波形に変化する。TR信号の信号状態は、MCK3の直後(1クロック停止されているタイミング)では、不定となっている。しかし、TRの信号状態は、MCK4の立ち上がりのタイミングでラッチされるため、L状態を検出することができる。
【0054】
上記の波形パターン1が信号出力部110により出力されることにより、トリガー検出部300は、トリガー信号を不定の状態でラッチする可能性が低下し、所定の信号状態の順序パターンLHLを精度よく認識することができる。また、想定されるタイミング(波形パターン1と同じタイミング)からずれることなくTRを検出することができる。
【0055】
一般的に、クロックの立ち下がりの角度は緩やかになり易く、信号状態が不定となり易い。従って、波形パターン1のように、TR信号の立ち下がりのタイミングのMCKを停止して、その後MCKを出力することで、TRの信号状態Lを精度よくラッチすることができる。
【0056】
もちろん、波形パターン1は、上記に限られない。例えば、波形パターン1において、MCK3から所定間隔t後の2クロック以上を停止するようにしてもよい。すなわち、MCK3から3t以上経過後に、MCK4を出力するようにしてもよい。
【0057】
また、図3〜5のような波形パターンを出力するようにしてもよい。
【0058】
図3は、本発明の第一実施形態の一例に係る、基準クロックと駆動クロックの波形パターン2とその出力後の波形を説明する図である。もちろん、図中の各クロックの周期、間隔、波形などは、一例であり、これに限定されるものではない。
【0059】
信号出力部110は、図3(A)に示す波形パターン2を出力するように、波形設定部120により設定される。すなわち、波形パターン記憶部130には、波形パターン2が記憶されており、この波形パターン2を波形設定部120が信号出力部110に設定する。設定のタイミングは、例えば、画像処理装置1の電源がオンされた場合である。
【0060】
なお、図3(A)に示すように、波形パターン2は、上述の波形パターン1と異なり、TRの出力時間が長く設定されている。すなわち、信号出力部110は、MCK1から所定間隔tが経過してからTRを出力する。
【0061】
信号出力部110は、所定間隔tで、MCK0〜1を出力し、MCK1から所定間隔t後の1クロック(TR信号のH状態の直前の信号状態をラッチするためのクロック)を停止し、その後、MCK2を出力する。すなわち、MCK1から2t経過後に、MCK2を出力する。また、信号出力部110は、MCK2から所定間隔t後の1クロック(TR信号のH状態の直後の信号状態をラッチするためのクロック)を停止し、その後、MCK3〜6を出力する。すなわち、MCK2から2t経過後に、MCK3を出力する。
【0062】
MCK1は、TR信号のH状態の前の信号状態Lをラッチするためのクロックである。MCK2は、TR信号のH状態をラッチするためのクロックである。MCK3は、TR信号のH状態の後の信号状態Lをラッチするためのクロックである。
【0063】
上述の波形パターン2は、トリガー検出部300に入力される際には、例えば、図3(B)のような波形に変化する。TR信号の信号状態は、MCK2の直前(1クロック停止されているタイミング)と、MCK2の直後(1クロック停止されているタイミング)では、不定となっている。しかし、TRの信号状態は、MCK1とMCK3の立ち上がりのタイミングでラッチされるため、L状態を検出することができる。
【0064】
上記の波形パターン2が信号出力部110により出力されることにより、トリガー検出部300は、トリガー信号を不定の状態でラッチする可能性が低下し、所定の信号状態の順序パターンLHLを精度よく認識することができる。また、想定されるタイミング(波形パターン2と同じタイミング)からずれることなくTRを検出することができる。なお、波形パターン2では、TR信号の立ち上がりの角度が緩やかになり、信号状態が不定となった場合でも、TRの信号状態Lを精度よくラッチすることができる。
【0065】
もちろん、波形パターン2は、上記に限られない。例えば、波形パターン2において、MCK2の前の2クロック以上を停止するようにしてもよい。また、MCK2の後の2クロック以上を停止するようにしてもよい。
【0066】
図4は、本発明の第一実施形態の一例に係る、基準クロックと駆動クロックの波形パターン3とその出力後の波形を説明する図である。もちろん、図中の各クロックの周期、間隔、波形などは、一例であり、これに限定されるものではない。
【0067】
図4(A)に示すように、波形パターン3は、上述の波形パターン1、2と異なり、所定のMCKが停止されるのではなく、所定のMCKの出力時間が長く設定されている。すなわち、信号出力部110は、所定間隔tで、MCK0〜3を出力する。ここで、MCK3については、2クロック分の時間出力する。MCK3から2t経過後、MCK4〜7を出力する。
【0068】
MCK2は、TR信号のH状態の前の信号状態Lをラッチするためのクロックである。MCK3は、TR信号のH状態をラッチするためのクロックである。MCK4は、TR信号のH状態の後の信号状態Lをラッチするためのクロックである。
【0069】
上述の波形パターン3は、トリガー検出部300に入力される際には、例えば、図4(B)のような波形に変化する。TR信号の信号状態は、MCK3の立ち上がりでは、H状態となっているが、MCK3の立ち上がり終了後から、MCK4の立ち上がり開始までの間では、不定の期間がある。しかし、TRの信号状態は、MCK4の立ち上がりのタイミングでラッチされるため、L状態を検出することができる。
【0070】
上記の波形パターン3が信号出力部110により出力されても、トリガー検出部300は、トリガー信号を不定の状態でラッチする可能性が低下し、所定の信号状態の順序パターンLHLを精度よく認識することができる。また、想定されるタイミング(波形パターン3と同じタイミング)からずれることなくTRを検出することができる。
【0071】
もちろん、波形パターン3は、上記に限られない。例えば、波形パターン3において、MCK3を3クロック以上の長さとしてもよい。また、MCK3の直前の複数クロック(例えば、MCK1とMCK2)を1つのクロックとしてもよい。
【0072】
図5は、本発明の第一実施形態の一例に係る、基準クロックと駆動クロックの波形パターン4とその出力後の波形を説明する図である。もちろん、図中の各クロックの周期、間隔、波形などは、一例であり、これに限定されるものではない。
【0073】
なお、図5(A)に示すように、波形パターン4は、上述の波形パターン3と異なり、TRの出力時間が長く設定されている。すなわち、信号出力部110は、MCK1から所定間隔tが経過してからTRを出力する。
【0074】
図5(A)に示すように、波形パターン4は、上述の波形パターン3と一部が異なる。すなわち、信号出力部110は、所定間隔tで、MCK0〜1を出力する。ここで、MCK1については、2クロック分の時間出力する。MCK1から2t経過後、MCK2を出力する。MCK2についても、2クロック分の時間出力する。MCK2から2t経過後、MCK3〜6を出力する。
【0075】
MCK1は、TR信号のH状態の前の信号状態Lをラッチするためのクロックである。MCK2は、TR信号のH状態をラッチするためのクロックである。MCK3は、TR信号のH状態の後の信号状態Lをラッチするためのクロックである。
【0076】
上述の波形パターン4は、トリガー検出部300に入力される際には、例えば、図5(B)のような波形に変化する。TR信号の信号状態は、MCK1の立ち上がりでは、L状態となっているが、MCK1の立ち上がり終了後から、MCK2の立ち上がり開始までの間では、不定の期間がある。しかし、TRの信号状態は、MCK1の立ち上がりのタイミングでラッチされるため、L状態を検出することができる。また、TR信号の信号状態は、MCK2の立ち上がりでは、H状態となっているが、MCK2の立ち上がり終了後から、MCK3の立ち上がり開始までの間では、不定の期間がある。しかし、TRの信号状態は、MCK3の立ち上がりのタイミングでラッチされるため、L状態を検出することができる。
【0077】
上記の波形パターン4が信号出力部110により出力されても、トリガー検出部300は、トリガー信号を不定の状態でラッチする可能性が低下し、所定の信号状態の順序パターンLHLを精度よく認識することができる。また、想定されるタイミング(波形パターン4と同じタイミング)からずれることなくTRを検出することができる。
【0078】
もちろん、波形パターン4は、上記に限られない。例えば、波形パターン4において、MCK1を3クロック以上の長さとしてもよい。また、MCK2を3クロック以上の長さとしてもよい。
【0079】
以上、本発明の第一実施形態について説明した。本実施形態によれば、より簡単な方法で、画像処理装置における精度のよい信号検出を行うことができる。
【0080】
すなわち、本実施形態では、基準クロックの間隔を広める(クロックを停止する)ことで、駆動クロックの信号状態をラッチするタイミングを前又は後にずらし、駆動クロックの信号状態の検出の精度を上げている。このような構成により、信号状態の検出の精度を上げるために波形(1クロックごとの波形)を調整する作業が少なくなる又は必要なくなり、製造コストを低減することができる。また、フィルタリング回路の追加などの回路の複雑化も招かないため、製造コストを低減することができる。
【0081】
また、一般的に、画像処理装置などの電子機器では、EMI(電磁波妨害)を発生させないように設計、調整をすることが求められる。ここで、通常は、EMIを低減した波形(1クロックごとの波形)は、滑らかになり易い。これに対して、信号検出の精度を上げるためには、波形(1クロックごとの波形)は滑らかでない方が好ましい。従って、EMI対策及び信号検出精度の両方を満たす波形のチューニングには、製造コストを要する。
【0082】
しかし、本願発明によれば、EMI対策を施した波形パターンであっても、クロックの間隔を広める(クロックを停止する)ことで信号検出の精度を上げることができるため、チューニングの作業負担が低減される。
【0083】
なお、上記の本発明の実施形態は、本発明の要旨と範囲を例示することを意図し、限定するものではない。多くの代替物、修正および変形例が当業者にとって明らかである。
【0084】
例えば、基準クロックを停止する期間は、クロック単位ではなく、クロック単位よりも小さな時間単位で調整してもよい。
【0085】
また、例えば、上記の実施形態は、基準クロックの立ち上がりで信号状態をラッチするシステムに限らず、基準クロックの立ち下がりで信号状態をラッチするシステムにも適用できる。
【0086】
また、上記の実施形態では、検出対象の信号状態の順序パターンが「L、H、L」である場合を例に挙げているが、もちろん、他のパターンにも適用できる。例えば、パターン「L、H」である。また、例えば、パターン「L、所定の複数のH、L」にも適用できる。このパターンでは、例えば、H状態を検出するための基準クロックとその後のL状態を検出するための基準クロックの間隔を広めればよい。なお、このパターンでは、例えば、ラインセンサーは、Lの後に検出されるHの数に応じて解像度等の動作モードを変更する制御を行う。
【0087】
なお、上記の実施形態、各種修正、変形例は、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1:画像読取装置、10:メイン制御基板、20:FFC、30:センサー制御基板、100:SoC、110:信号出力部、120:波形設定部、130:波形パターン記憶部、140:AFE、300:トリガー検出部、310:ラインセンサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラインセンサーを備える画像読取装置であって、
基準クロックを所定間隔で出力する基準クロック出力手段と、
ライン毎の制御タイミングを示す駆動クロックを出力する駆動クロック出力手段と、
前記基準クロック毎に、前記駆動クロックの信号状態を検出し、所定の信号状態の順序を検出した場合に、前記ラインセンサーにラインの制御タイミングを示す信号を出力する検出手段と、を備え、
前記基準クロック出力手段は、前記駆動クロックの信号状態が検出されるタイミングのうち、信号状態が不定となり得る所定のタイミングの前後の基準クロックの出力間隔を前記所定間隔より長く空けて出力する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置であって、
前記基準クロック出力手段は、前記駆動クロックの信号状態が不定となり得る所定のタイミングに対応する基準クロックを停止することにより、前記出力間隔を前記所定間隔より長く空ける、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像読取装置であって、
前記基準クロック出力手段は、前記駆動クロックの信号状態が不定となり得る所定のタイミングに対応する基準クロックの直前の基準クロックを、前記所定間隔よりも長い期間出力することにより、前記出力間隔を前記所定間隔より長く空ける、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか一項に記載の画像読取装置であって、
前記所定の信号状態の順序は、ロウ、ハイ、ロウであり、
前記駆動クロックの信号状態が不定となり得る所定のタイミングは、ハイ状態の後の少なくとも一以上のタイミングである、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像読取装置であって、
前記駆動クロックの信号状態が不定となり得る所定のタイミングは、さらに、ハイ状態の前の少なくとも一以上のタイミングである、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
ラインセンサーを備える画像読取装置であって、
基準クロックを所定間隔で出力する基準クロック出力手段と、
ライン毎の制御タイミングを示す駆動クロックを出力する駆動クロック出力手段と、
前記基準クロック毎に、前記駆動クロックの信号状態を検出し、所定の信号状態の順序を検出した場合に、前記ラインセンサーにラインの制御タイミングを示す信号を出力する検出手段と、を備え、
前記基準クロック出力手段は、前記駆動クロックの信号状態が検出されるタイミングのうち、信号状態が不定となり得る所定のタイミングに対応する基準クロックを停止する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項7】
ラインセンサーを備える画像読取装置であって、
基準クロックを所定間隔で出力する基準クロック出力手段と、
ライン毎の制御タイミングを示す駆動クロックを出力する駆動クロック出力手段と、
前記基準クロック毎に、前記駆動クロックの信号状態を検出し、所定の信号状態の順序を検出した場合に、前記ラインセンサーにラインの制御タイミングを示す信号を出力する検出手段と、を備え、
前記基準クロック出力手段は、前記駆動クロックの信号状態が検出されるタイミングのうち、信号状態が不定となり得る所定のタイミングに対応する基準クロックの直前の基準クロックを、前記所定間隔よりも長い期間出力する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項8】
ラインセンサーを備える画像読取装置における画像読取制御方法であって、
基準クロックを所定間隔で出力する基準クロック出力ステップと、
ライン毎の制御タイミングを示す駆動クロックを出力する駆動クロック出力ステップと、
前記基準クロック毎に、前記駆動クロックの信号状態を検出し、所定の信号状態の順序を検出した場合に、前記ラインセンサーにラインの制御タイミングを示す信号を出力する検出ステップと、を含み、
前記基準クロック出力ステップでは、前記駆動クロックの信号状態が検出されるタイミングのうち、信号状態が不定となり得る所定のタイミングの前後の基準クロックの出力間隔を前記所定間隔より長く空けて出力する、
ことを特徴とする画像読取制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−147383(P2012−147383A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6030(P2011−6030)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】