説明

画像読取装置、画像形成装置及び搬送制御方法。

【課題】搬送対象物の加減速時における振動を低減させることが可能な画像読取装置、画像形成装置及び搬送制御方法を提供する。
【解決手段】画像が記録された媒体の当該画像を読み取る画像読取装置において、前記媒体を保持する保持手段(固定板8)と、記録された画像を読み取る画像読取手段(光学ユニット1)と、前記保持手段及び/又は前記画像読取手段を搬送させる搬送手段(リニアモータ7)と、前記搬送手段の搬送状態を検出する検出手段(ロータリエンコーダ51)と、前記検出手段により検出された搬送状態に基づいて、所定の速度に達するまでの加速時及び/又は所定の速度からの減速時における前記搬送手段の速度パターンをS字状に変化せしめる搬送制御手段(搬送制御部100)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置及び画像記録装置及び搬送制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、X線画像に代表される放射線画像が診断に広く用いられている。この放射線画像を得るための方式としては、被写体を透過させた放射線を増感紙と呼ばれる蛍光体層に照射し、この蛍光体層から放出された可視光をハロゲン化銀写真感光材料に照射し、この感光材料に現像処理を施して可視画像を得る、いわゆる放射線写真方式が提案され、実用化されている。
【0003】
また、近年においては、前記した放射線写真方式に代えて、照射された放射線エネルギーを蓄積、記録し、励起光を照射すると蓄積、記録された放射線エネルギーに応じて輝尽発光する「輝尽性蛍光体」を用いた放射線画像記録再生方式が提案されている。
【0004】
この放射線画像記録再生方式には、輝尽性蛍光体に蓄積、記録された放射線エネルギーを電気信号に変換して放射線画像を作成する放射線画像読取装置が用いられている。放射線画像読取装置は、被写体を透過させた放射線を輝尽性蛍光体に照射することによって、被写体各部の放射線透過密度に対応する放射線エネルギーを輝尽性蛍光体に蓄積、記録させた後、励起光によって放射線エネルギーを輝尽発光させ、この輝尽発光光の強弱を光電変換素子を用いて電気信号に変換する。そして、この電気信号を、感光材料等の画像記録材料に画像を形成する画像形成装置やCRTなどの画像表示装置を介して可視像として再生する。
【0005】
放射線画像記録再生方式によると、画像読取の際に輝尽性蛍光体層を形成した撮影パネル上で読取用のレーザ光を主走査方向に走査しながら当該主走査方向に垂直な副走査方向に、当該輝尽性蛍光体シートを一定速度で搬送させるのが一般的である。なお、この輝尽性蛍光体シートの搬送にはシャフト型リニアモータが用いられており、高精度な搬送の実現と画像ムラの低減化とが図られている。
【0006】
ここで、画像読取時における輝尽性蛍光体シートの搬送は、図8(a)に示すように、最初に所定の画像読取速度V’まで一定加速度で加速し、その画像読取速度V’で少なくともP11からP12の画像読取区間では一定速度で搬送させて画像を読み取り、画像読取後に一定加速度で減速させて停止させるのが一般的である。従来、この画像読取区間における搬送速度を一定に保つことが可能な放射線画像読取装置が提案されている。
【0007】
一方、画像形成装置の給紙装置における用紙の搬送時に、用紙の送り出しローラの回転速度を停止状態から緩やかに加速した後、目標の用紙供給速度に加速させる技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−344964号公報
【特許文献2】特開2003−192156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した放射線画像読取装置は、図8(b)に示すように防振部材が設けられることが多くあり、この防振部材を介して放射線画像を読み取る画像読取部が配置されることで、外部からの振動を低減することが図られている。
【0009】
しかしながら、この放射線画像読取装置において、輝尽性蛍光体シートを一定の加速度で加速または減速した場合に、加減速により生じた慣性力により防振部材を介して配置された画像読取装置や基台が振動してしまうため、読み取り画像にムラが生じ高画質の画像が得られないという問題がある。また、搬送対象の剛性が低い場合には、上記同様、加減速により生じた慣性力により搬送対象が振動してしまうため、読み取り画像にムラが生じ高画質の画像が得られないという問題がある。
【0010】
この場合、搬送経路上において加減速により生じた振動が低減するまでの安定区間を設けることで、読み取り画像への影響を低減させることが考えられるが、装置が大型化するとともに、振動が低減するまでの時間待機する必要がある。また、特許文献1に記載の放射線画像読取装置では、搬送対象の加減速時に関して考慮されておらず、上記した課題を解決することはできない。さらに、特許文献2に記載の技術では、減速時に関しては考慮されておらず、シャフト型リニアモータを搬送手段とする上記放射線画像読取装置等には適用することができない。
【0011】
本発明の課題は、搬送対象物の加減速時における振動を低減させることが可能な画像読取装置、画像形成装置及び搬送制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
画像が記録された媒体の当該画像を読み取る画像読取装置において、
前記媒体を保持する保持手段と、
記録された画像を読み取る画像読取手段と、
前記保持手段及び/又は前記画像読取手段を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の搬送状態を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された搬送状態に基づいて、所定の速度に達するまでの加速時及び/又は所定の速度からの減速時における前記搬送手段の速度パターンをS字状に変化せしめる搬送制御手段と、
を備えたことを特徴としている。
【0013】
更に、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記搬送制御手段は、前記加速時及び/又は減速時の速度vが下記式(1)及び(2)の関係を満たすよう制御することを特徴としている。
【数1】

ここで、Δα=(V1−V0)*(V1+V02/L2、T=2L/|V1+V0|であって、V1は目標とする速度、V0は搬送手段の初速度、Lは加速完了又は減速完了までに要する距離である。
【0014】
更に、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記搬送手段は、リニアモータであることを特徴としている。
【0015】
また、上記課題を解決するために、請求項4に記載の発明は、
所定の記録媒体に画像を記録する画像形成装置において、
前記記録媒体を保持する保持手段と、
前記記録媒体に画像を記録する画像形成手段と、
前記保持手段及び/又は画像形成手段を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の搬送状態を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された搬送状態に基づいて、所定の速度に達するまでの加速時及び/又は所定の速度からの減速時における前記搬送手段の速度パターンをS字状に変化せしめる搬送制御手段と、
を備えたことを特徴としている。
【0016】
更に、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、
前記搬送制御手段は、前記加速時及び/又は減速時の速度vが下記式(3)及び(4)の関係を満たすよう制御することを特徴としている。
【数2】

ここで、Δα=(V1−V0)*(V1+V02/L2、T=2L/|V1+V0|であって、V1は目標とする速度、V0は搬送手段の初速度、Lは加速完了又は減速完了までに要する距離である。
【0017】
更に、請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の発明において、
前記搬送手段は、リニアモータであることを特徴としている。
【0018】
また、上記課題を解決するために、請求項7に記載の発明は、
搬送対象物を搬送する搬送手段と、前記搬送手段の搬送状態を検出する検出手段と、を備えた搬送装置における搬送制御方法であって、
前記検出手段により検出された搬送状態に基づいて、所定の速度に達するまでの加速時及び/又は所定の速度からの減速時における前記搬送手段の速度パターンをS字状に変化せしめる搬送制御工程を含むことを特徴としている。
【0019】
更に、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、
前記搬送制御工程は、前記加速時及び/又は減速時の速度vが下記式(5)及び(6)の関係を満たすよう制御することを特徴としている。
【数3】

ここで、Δα=(V1−V0)*(V1+V02/L2、T=2L/|V1+V0|であって、V1は目標とする速度、V0は搬送手段の初速度、Lは加速完了又は減速完了までに要する距離である。
【0020】
更に、請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の発明において、
前記搬送手段は、リニアモータであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によれば、加速及び/又は減速により生じる慣性力の影響を低減することが可能であるため、保持手段又は前記画像読取手段の加減速時における振動を低減させることができる。また、画像読取時における搬送速度の速度ムラ(変動)を低減することが可能であるため、画像読取時における画像ムラを低減することができる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、加速及び/又は減速により生じる慣性力の影響を低減することが可能であるため、保持手段又は前記画像読取手段の加減速時における振動を低減させることができる。また、画像読取時における搬送速度の速度ムラを低減することが可能であるため、画像読取時における画像ムラを低減することができる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、搬送手段をリニアモータにすることで、より安定で精度、性能のよい搬送を行うことができる。また、画像読取時における搬送速度の速度ムラを低減することが可能であるため、画像読取時における画像ムラを低減することができる。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、加速及び/又は減速により生じる慣性力の影響を低減することが可能であるため、保持手段又は画像形成手段の加減速時における振動を低減させることができる。また、画像形成おける搬送速度の速度ムラを低減できるため、画像形成時における画像ムラを低減することができる。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、加速及び/又は減速により生じる慣性力の影響を低減することが可能であるため、保持手段又は画像形成手段の加減速時における振動を低減させることができる。また、画像形成おける搬送速度の速度ムラを低減できるため、画像形成時における画像ムラを低減することができる。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、搬送手段をリニアモータにすることで、より安定で精度、性能のよい搬送を行うことができるため、特に画像形成おける搬送速度の速度ムラを低減でき、形成画像ムラを低減することができる。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、加速及び/又は減速により生じる慣性力の影響を低減することが可能であるため、搬送の加減速時における振動を低減させることができる。
【0028】
請求項8に記載の発明によれば、加速及び/又は減速により生じる慣性力の影響を低減することが可能であるため、搬送の加減速時における振動を低減させることができる。
【0029】
請求項9に記載の発明によれば、搬送手段をリニアモータにすることで、より安定で精度、性能のよい搬送を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本発明において、輝尽性蛍光体シートは単体では剛性が無く、装置内での取り扱いが難しいため、輝尽性蛍光体シートを単体で扱うことは少なく、多くの場合は金属板や樹脂板などの支持体に貼付したり、カセッテと呼ばれる着脱自在のケースに収納してカセッテ内面に接着するなどして支持している。このように、輝尽性蛍光体シートが上記支持体やカセッテに支持された構成を以下の説明では輝尽性蛍光体プレートと呼ぶこととする。また、この輝尽性蛍光体プレートは、その支持体側がラバーマグネット等で固定板に取り付けられることにより支持されている。
【0031】
この輝尽性蛍光体プレートは、撮影時に被写体を透過した放射線が吸収され、そのエネルギーの一部が輝尽性蛍光体中の放射線画像の情報として蓄積される。本発明に係る画像読取装置は、このような輝尽性蛍光体中に蓄積された放射線画像の情報を読み取る装置である。
【0032】
図1は、本発明の実施の形態の画像読取装置における搬送機構の斜視図、図2は、図1におけるX−Z平面図、図3は、図1におけるX−Y平面図、図4は、図1におけるY−Z平面図、図5は、搬送制御部100を示すブロック図である。
【0033】
図1に示すように、画像読取装置は、輝尽性蛍光体プレートPにレーザ光照射装置(光源)(図示しない)からのレーザ光(励起光)を走査しながら照射して輝尽性蛍光体プレートPから発せられる輝尽発光光を集光し、光電変換させて画像情報を読み取る光学ユニット(読取部)1と、基台4上に設けられた支持部材2により、光学ユニット1の水平方向への移動を案内するガイドレール31が支持(固定)され、光学ユニット(搬送体)1を移動させるリニアモータ(搬送手段)7と、を備えている。
【0034】
また、光学ユニット1が取り付けられた搬送板33に連結し、光学ユニット1とともに移動するワイヤ6及びロータリエンコーダユニット5と、光学ユニット1の移動がワイヤ6を介して伝達されて回転するプーリ52と、このプーリ52の回転速度を検出するロータリエンコーダ51と、リニアモータ7による搬送板33の搬送速度を制御する搬送制御部100とを備えている。
以下、各構成部材について詳細に説明する。
【0035】
基台4は、振動を低減するための防振部材41〜44上に設けられている。この防振部材41〜44は、防振ゴムやゲル状部材等の緩衝材等から構成され、当該緩衝材が有する弾性により外部から基台4に係る振動(衝撃)を低減する。
【0036】
また、基台4は、略矩形板状をなしており、輝尽性蛍光体プレートPを支持する固定板8が基台4上に固定されることによって、基台4の上面に対して輝尽性蛍光体プレートPのレーザ光照射面が略垂直となるように、輝尽性蛍光体プレートPは基台4上に保持されている。また、この輝尽性蛍光体プレートPに対向して光学ユニット1が配置されており、光学ユニット1は、下面に取り付けられた搬送板33が基台4に対して移動可能に設けられ、これによって光学ユニット1は基台4に対して移動可能とされている。
【0037】
基台4上面の略中央には、水平方向に延在する長尺な板状の支持部材2が略水平となるように固定されている。支持部材2の上面には、光学ユニット1を水平方向に案内するガイドレール31が設けられている。ガイドレール31は断面視略矩形状の棒状部材であって、図4に示すように、ガイドレール31に案内される断面視略コ字型状の被ガイド部材32が係合している。そして、被ガイド部材32は搬送板33の下面に取り付けられている。このように、光学ユニット1は、支持部材2、ガイドレール31、被ガイド部材32、搬送板33等によって基台4上に移動可能に支持されており、輝尽性蛍光体プレートPに対向して配置されている。
【0038】
また、基台4上面で、支持部材2の側方には、リニアモータ7を構成するマグネット部71を保持するためのリニアモータ保持部72が設けられている。マグネット部71は、断面円形状の永久磁石のN極同士あるいはS極同士を規則的に対向させた永久磁石を複数連結することでシャフト状に形成されている。
【0039】
また、マグネット部71には、リニアモータ7を構成する可動コイル73が設けられている。可動コイル73は円筒状に形成されたコイルを有しており、コイルは箱状のカバー部材により覆われている。そして、可動コイル73が搬送板33の下面に設けられており、リニアモータ7は可動コイル73の中心をマグネット部71が貫通するように構成されている。
【0040】
さらに、基台4上面で、リニアモータ保持部72の側方には、支持部材2と平行して水平方向に延在する長尺な板状の保持部材9が略水平となるように固定されている。保持部材9の上面の長手方向両端部には、図1に示すように、断面視略L字型の固定部材91a、91bがそれぞれ設けられており、これら固定部材91a、91bにワイヤ6の両端部に固定され、ワイヤ6にロータリエンコーダユニット5が連結されている。
【0041】
ロータリエンコーダユニット5は、搬送板33に固定されて搬送板33とともに移動可能な支持台53と、支持台53上に設けられたロータリエンコーダ51と、ロータリエンコーダ51の回転軸(図示しない)に連結されて支持台53の下面に取り付けられたプーリ52とを備えている。
【0042】
このようにプーリ52に巻き付けられたワイヤ6は、光学ユニット1及び搬送板33の移動に連動して水平方向に移動するようになっている。そして、ワイヤ6の移動により回転するプーリ52及びロータリエンコーダ51の回転軸から、ロータリエンコーダ51は搬送板33の位置を検出する。そして、検出された位置情報は、搬送制御部100に出力されるようになっている。
【0043】
搬送制御部100は、図5に示すように、搬送制御部100は、制御部101、記憶部102、位置速度演算手段103、差分出力器104、制御器105、モータ駆動部106等から構成される。
【0044】
制御部101は、リニアモータ7による光学ユニット1(搬送板33)の搬送速度を指示する速度指令信号を差分出力器104に出力し、画像読み取り時における光学ユニット1の搬送速度を統括的に制御する。また、制御部101は、光学ユニット1の加速時及び/又は減速時において、記憶部102に記憶された後述するLUT(Look Up Table)1021に基づいて、搬送板33の搬送速度をS字状に変化せしめる速度指令信号を差分出力器104に出力する。なお、制御部101は、CPU(Central Processing Unit)、デジタルロジック回路、マイクロコンピュータ等からなるデジタル回路で構成してもよいし、アナログ回路で構成してもよく、また、デジタル回路とアナログ回路とを組み合わせて構成してもよい。
【0045】
記憶部102は、光学ユニット1の加速時及び減速時における搬送速度を定義したLUT1021を予め記憶する。以下、このLUT1021について説明する。
【0046】
LUT1021は、搬送板33の加速及び/又は減速時の時間tと搬送速度vとの関係が定義されたテーブルであって、下記式(7)及び(8)から導出された値に基づいて構成されている。ここで、加速度の変動量Δα=(V1−V0)*(V1+V02/L2、加速及び/又は減速完了までの制限時間T=2L/|V1+V0|であって、V1は目標とする速度、V0は搬送手段の初速度、Lは加速完了及び/又は減速完了までに要する距離を意味している。ここで、目標速度Vと距離Lとは、所定の値が予め設定されており、その設定値は記憶部102に予め記憶されているものとする。なお、目標速度V、距離L及び制限時間Tの何れか又は全ての値が予め設定されることとしてもよい。
【0047】
【数4】

【数5】

【0048】
なお、加速度変動量Δαの値は、下記式(9)の関係を満たすことが好ましく、この場合、制限時間Tを下記式(10)とすることがより好ましい。ここで、Δα0は、リニアモータ7により搬送される搬送対象物の剛性や質量、搬送機構自体の重量、防振部材の弾性係数等、画像読取装置の実際の稼働条件を考慮した加速度変動量である。これにより、搬送機構の特性に応じた加速度変動量Δαに基づいて、搬送板33の搬送速度を制御することができるため、加速及び/又は減速により生じる慣性力の影響をより低減することが可能となる。例えば、搬送対象物の質量が10Kg、防振部材上の構造体の質量と防振部材の弾性係数から求まる固有振動周波数が40Hzである場合、加速度変化量Δα0は、実験の結果10m/s3となるため、加速度変動量Δαの値は10m/s3以下となるようにすることが好ましい。ここで、加速度変化量Δα0は、加速時にはΔα0>0、減速時にはΔα0<0となる。
【0049】
【数6】

【数7】

【0050】
図6は、上記式に基づいて定義された搬送板33の加速時における時間tと搬送速度vとの関係の一例を説明するための図である。なお、同図においては、V0=0、V1=10mm/s、制限時間T=2.0secの場合を例示している。
同図に示すように、加速時の速度パターンは加速時間t=1.0が変曲点としたS字状を描くことになり、この速度パターンに基づいて搬送板33の搬送速度が制御されることになる。なお、リニアモータ7の減速時における速度パターンは図示しないが、図6の速度パターンを左右反転した形状(逆S字)となる。
【0051】
LUT1021には、この速度パターンを具現化する搬送速度vが、時間tと対応付けて記録されており、このLUT1021が搬送板33の加速時及び減速時に制御部101から読み出されることにより、S字状の速度パターンを指示する速度指令信号が差分出力機113に出力されるようになっている。このように、搬送板33の加速及び/又は減速時における速度パターンをS字状に変化せしめることにより、加速及び/又は減速により生じる慣性力の影響を低減することが可能となる。
【0052】
なお、LUT1021に記録される速度パターンの態様は特に問わないものとする。例えば、所定の関数等で規格化した基本となる速度パターンをLUT1021として記憶し、このLUT1021と目標速度とに基づいて当該目標速度に最適な速度パターンを導出することとしてもよい。この場合、LUT1021のデータ量を少なくすることができるため、記憶部102の記憶容量を節約することができる。
【0053】
また、搬送速度の制御をデジタル制御する場合には、離散時間で制御を行うため所定の所定時間間隔毎の搬送速度vを記録したLUT1021をしてもよく、さらには、制御部101が、間引きした時間における搬送速度vを線形補完等することで導出可能な形態としてもよい。この場合、速度パターンにおける加速度の変化量が所定の値以下となるようLUT1021に記録する時間間隔が取られていることが好ましい。また、t=0.5T(図6の場合、T=1.0)で加速度の変化量が反転するため、この加速度の変動量が0となる区間を設けたLUT1021を生成することが好ましい。
【0054】
また、本実施形態では、制御部101は上述したLUT1021に基づいて速度パターンを指示することとしたが、これに限らず、制御部101が上気した式(13)〜(16)を演算し、この演算された値に基づいて時刻又はモータの位置における速度パターンを指示する態様としてもよい。
【0055】
位置速度演算手段103は、ロータリエンコーダ51から入力された位置信号に基づいて搬送板33の搬送速度を示す速度信号を導出し、差分出力器104に出力する。差分出力器104は、制御部101から入力される速度指令信号と位置速度演算手段103から入力される速度信号との差分に応じて差分信号を発生し、制御器105に出力する。
【0056】
制御器105は、差分出力器104から入力される差分信号に基づいてリニアモータ7に供給する電力値を導出し、この電力値を駆動制御信号としてモータ駆動部106に出力する。なお、制御器105による制御方式は特に問わず、例えば、古典制御であるPID制御や現代制御であるH∞制御等を用いることができる。また、制御器105は、CPU、デジタルロジック回路、マイクロコンピュータ等からなるデジタル回路で構成してもよいし、アナログ回路で構成してもよく、また、デジタル回路とアナログ回路とを組み合わせて構成してもよい。
【0057】
モータ駆動部106は、制御器105から入力される駆動制御信号に基づいて、リニアモータ7に対し駆動電力を供給することで、リニアモータ7を駆動する。
【0058】
光学ユニット1は、輝尽性蛍光体プレートPの移動方向と直行する方向に走査させながら輝尽性蛍光体プレートPに対してレーザ光L1を照射するレーザ光照射装置と、レーザ光照射装置により輝尽性蛍光体プレートPにレーザ光L1が照射されることで励起された輝尽性発光光L2を導く導光板13と、この導光板13により導かれた輝尽性発光光L2を集光する集光管11と、集光管11により集光された輝尽性発光光を電気信号に変換する光電変換器12とを有している。
【0059】
なお、本発明の画像読取装置には、光学ユニット1により放射線エネルギーの読み取りがなされた後、輝尽性蛍光体プレートPに残留する放射線エネルギーを放出させるために輝尽性蛍光体プレートPに対して消去光を照射する消去装置(不図示)が設けられている。
【0060】
次に、上記構成からなる画像読取装置の動作について説明する。
まず、輝尽性蛍光体プレートPが画像読取装置の内部に取り込まれて、固定板8に固定される。その後、搬送制御部100は、リニアモータ7を駆動させて光学ユニット1を支持する搬送板33が所定の搬送開始位置からガイドレール31に沿って水平方向に搬送させる。これにより、光学ユニット1が輝尽性蛍光体プレートPのレーザ照射面に対向する位置(以下、読取開始位置という)に搬送されるとともに、搬送速度v=0の停止状態から画像の読み取りを行う所定の目標速度Vまで加速される。ここで、加速時における搬送板33の搬送位置が、ロータリエンコーダ51により検出され、この検出信号が位置速度演算手段103を介して速度信号として差分出力器104に入力される。
【0061】
制御部101は、搬送速度v=0の停止状態から目標速度Vまでの加速時において、記憶部102に記憶されたLUT1021に基づき、搬送板33の搬送速度をS字状の速度パターンに変化せしめる速度指令信号を差分出力器104に出力する。差分出力器104は、入力された速度指令信号と速度信号との差分に応じて差分信号を制御器105に出力する。そして、制御器105は、差分出力器104から入力された差分信号に基づいて、モータ駆動部106からリニアモータ7に供給する電力値を導出し、この電力値を駆動制御信号としてモータ駆動部106に出力することで、制御部101から指示されたS字状の速度パターンとなるよう、リニアモータ7により搬送される搬送板33の搬送速度を制御する。ここで、U相、V相、W相の三相モータを有したリニアモータをリニアモータ(搬送手段)7として用いた場合には、モータの位置に応じたU相、V相、W相への電力値を、ロータリエンコーダ51から出力される位置信号に基づいて導出することとしてもよい。
【0062】
図7は、ガイドレール31上における搬送板33の位置と搬送速度との関係を示した図である。図7に示すように、搬送開始位置P0から読取開始位置P1までの加速時において、搬送板33を目標速度Vに到達させるまでの速度パターンはS字状となっている。ここで、横軸はガイドレール31上における搬送板33の位置を、縦軸は搬送板33の搬送速度を示している、P0〜P1までの距離が、上述した距離Lと対応する。また、同図において、P2は後述する読取完了位置を、P3は後述する搬送停止位置を示しており、P1〜P2の区間に輝尽性蛍光体プレートPの読み取りが行われる。
【0063】
読取開始位置まで移動された光学ユニット1は、輝尽性蛍光体プレートPの水平方向に沿って一定の読取速度Vで移動され、この間、レーザ光照射装置からレーザ光が輝尽性蛍光体プレートPに対して走査される。このときレーザ光は光学ユニット1の移動方向と直交する方向に走査させながら照射される。その結果、励起された輝尽発光光が不図示の導光板により導かれて集光管11に集光され、光電変換器12によって電気信号に変換される。
【0064】
次いで、光学ユニット1が輝尽性蛍光体プレートPの一方の端部(以下、読取完了位置という)まで搬送されて読み取りが完了すると、搬送制御部100により搬送板33が読取速度Vから減速され、ガイドレール31上における所定の搬送停止位置に搬送板33を停止させる。なお、この減速時においても、上記した加速時と同様、搬送制御部100により、記憶部102に記憶されたLUT1021に基づき、搬送板33の搬送速度をS字状の速度パターンで減速されるようモータ駆動部106の駆動電力が制御される。その結果、図5で示すように、読取完了位置P2から搬送停止位置P3までの減速時において、搬送板33を停止させるまでの速度パターンはS字状(逆S時)となる。なお、ここでP2〜P3までの距離が、上述した距離Lと対応する。
【0065】
その後、図示しない消去装置によって、輝尽性蛍光体プレートPに対して消去光を照射させ、これにより輝尽性蛍光体プレートPに残存する放射線画像を消去させる。そして、輝尽性蛍光体プレートPが画像読取装置の外部へと搬送させる。
【0066】
以上、本実施形態によれば、加速及び減速により生じる慣性力の影響を低減することが可能であるため、光学ユニット1(搬送板33)の加減速時における振動を低減させることができる。また、画像読取時における搬送速度の速度ムラを低減することが可能であるため、画像読取時における画像ムラを低減することができる。
【0067】
なお、上記実施形態では、固定板8に保持された輝尽性蛍光体プレートPを読み取る光学ユニット1をリニアモータ7により搬送することとしたが、これに限らず、光学ユニット1を固定とし、固定板8をリニアモータ7により搬送することで輝尽性蛍光体プレートPを読み取る態様としてもよい。また、他の搬送手段(リニアモータ7)を更に備える等により、光学ユニット1及び固定板8を共に搬送する態様としてもよい。。
【0068】
上記実施形態における画像形成装置の細部構成および詳細動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0069】
例えば、上記実施形態では、画像読取装置の実施形態を説明したが、これに限らず、レーザ光照射部等の画像形成手段により、所定の保持手段に保持された銀塩感光材料等の記録媒体に画像の記録を行う画像形成装置の搬送機構に、上述した画像読取装置の搬送機構を用いることとしてもよい。この場合、画像形成手段及び/又は記憶媒体を保持する保持手段を搬送させることとしてもよい。これにより、本発明と同様の効果が得られる。
【0070】
また、上記実施形態では、位置検出手段としてロータリエンコーダ51を用いることとしたが、これに限らず、リニアエンコーダや、レゾルバ等の他の位置検出手段を用いることとしてもよい。また、搬送板33の搬送速度を求めることが可能な検出手段であれば、その態様は特に問わず、例えば、レーザ変位計等の搬送板33の位置変化を検出する位置検出手段を用い、当該位置検出手段から出力される検出信号の値を時間微分することで搬送板33の搬送速度を導出する態様としてもよい。また、搬送板33の加速度を検出する加速度センサを用い、当該加速度センサからの検出信号の値を積分することで搬送板33の搬送速度を導出する態様としてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、搬送板33の加速時及び減速時における搬送速度の速度パターンをS字状に変化せしめることとしたが、これに限らず、搬送板33の加速時又は減速時における何れかの搬送速度の速度パターンをS字状に変化せしめる態様としてもよい。
【0072】
さらに、上記実施形態では、搬送手段としてシャフト型リニアモータを用いた場合を説明したが、これに限らず、非シャフト型のリニアモータや、プーリを回転させてベルトやワイヤ等により搬送対象物を直線搬送させる回転モータ、DCモータ等を用いることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】画像読取装置における搬送機構の斜視図である。
【図2】図1の搬送機構におけるX−Y平面図である。
【図3】図1の搬送機構におけるX−Y平面図である。
【図4】図1の搬送機構におけるY−Z平面図である。
【図5】画像読取装置の搬送制御部を示すブロック図である。
【図6】加速時における時間と搬送速度との関係野を説明するための図である。
【図7】移動板の位置と搬送速度との関係を示した図である。
【図8】(a)従来における搬送対象物の位置と搬送速度との関係を示した図である。(b)画像読取装置の構成を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0074】
1 光学ユニット
11 集光管
12 光電変換器
13 導光板
2 支持部材
31 ガイドレール
32 被ガイド部材
33 搬送板
34 モータ駆動部
4 基台
41 防振部材
42 防振部材
43 防振部材
44 防振部材
5 ロータリエンコーダユニット
51 ロータリエンコーダ
52 プーリ
53 支持台
6 ワイヤ
7 リニアモータ
71 マグネット部
72 リニアモータ保持部
73 可動コイル
8 固定板
9 保持部材
91a 固定部材
91b 固定部材
100 搬送制御部
101 制御部
102 記憶部
1021 LUT
103 位置速度演算手段
104 差分出力器
105 制御器
106 モータ駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像が記録された媒体の当該画像を読み取る画像読取装置において、
前記媒体を保持する保持手段と、
記録された画像を読み取る画像読取手段と、
前記保持手段及び/又は前記画像読取手段を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の搬送状態を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された搬送状態に基づいて、所定の速度に達するまでの加速時及び/又は所定の速度からの減速時における前記搬送手段の速度パターンをS字状に変化せしめる搬送制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記搬送制御手段は、前記加速時及び/又は減速時の速度vが下記式(1)及び(2)の関係を満たすよう制御することを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【数1】

ここで、Δα=(V1−V0)*(V1+V02/L2、T=2L/|V1+V0|であって、V1は目標とする速度、V0は搬送手段の初速度、Lは加速完了又は減速完了までに要する距離である。
【請求項3】
前記搬送手段は、リニアモータであることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
所定の記録媒体に画像を記録する画像形成装置において、
前記記録媒体を保持する保持手段と、
前記記録媒体に画像を記録する画像形成手段と、
前記保持手段及び/又は画像形成手段を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の搬送状態を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された搬送状態に基づいて、所定の速度に達するまでの加速時及び/又は所定の速度からの減速時における前記搬送手段の速度パターンをS字状に変化せしめる搬送制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記搬送制御手段は、前記加速時及び/又は減速時の速度vが下記式(3)及び(4)の関係を満たすよう制御することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【数2】

ここで、Δα=(V1−V0)*(V1+V02/L2、T=2L/|V1+V0|であって、V1は目標とする速度、V0は搬送手段の初速度、Lは加速完了又は減速完了までに要する距離である。
【請求項6】
前記搬送手段は、リニアモータであることを特徴とする請求項4又は5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
搬送対象物を搬送する搬送手段と、前記搬送手段の搬送状態を検出する検出手段と、を備えた搬送装置における搬送制御方法であって、
前記検出手段により検出された搬送状態に基づいて、所定の速度に達するまでの加速時及び/又は所定の速度からの減速時における前記搬送手段の速度パターンをS字状に変化せしめる搬送制御工程を含むことを特徴とする搬送制御方法。
【請求項8】
前記搬送制御工程は、前記加速時及び/又は減速時の速度vが下記式(5)及び(6)の関係を満たすよう制御することを特徴とする請求項7に記載の搬送制御方法。
【数3】

ここで、Δα=(V1−V0)*(V1+V02/L2、T=2L/|V1+V0|であって、V1は目標とする速度、V0は搬送手段の初速度、Lは加速完了又は減速完了までに要する距離である。
【請求項9】
前記搬送手段は、リニアモータであることを特徴とする請求項7又は8に記載の搬送制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−20083(P2007−20083A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201772(P2005−201772)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】