説明

画像読取装置及びイメージセンサの判別方法

【課題】イメージセンサの種類を簡易な方法で正確に判別することが可能な画像読取装置及びイメージセンサの判別方法を提供する。
【解決手段】読取動作時において、イメージセンサ14から初期設定期間中に出力される出力信号に基づいて、イメージセンサ14の種類を判別する。これにより、簡易な構成で精度良くイメージセンサ14の判別を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置及びイメージセンサの判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イメージセンサにより原稿画像の読み取りを行う画像読取装置では、製造時に、互いに読取特性が異なる複数種類のイメージセンサの中から選択されたものを装置に組み込むことがある。こうしたイメージセンサのインターフェイスはメーカに拘わらず共通化が図られており、イメージセンサとその制御部とを接続する各信号線の機能はある程度共通化されている。また、制御部には、そうした複数種類のイメージセンサに対応可能なファームウェアが組み込まれており、作業者がイメージセンサの種類を指定することで、各イメージセンサの種類に応じた動作を切り替えて行うことができるように構成されている。
【特許文献1】特開2001−358998公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来では、作業者がイメージセンサに貼り付けたバーコード等を参照してイメージセンサの種類を判別していた。そのため、作業者は、組み込んだイメージセンサの種類を確実に判別して適切な設定を行わねばならず、手間がかかると共に、設定ミスが生じると正しい読取動作を行うことができなくなってしまうおそれがあった。
【0004】
この対策として、例えば新たに種類判別用の信号線を設けてイメージセンサと制御部とを接続し、組み込まれたイメージセンサの種類を制御部で自動判別する方法が考えられる。しかしながら、そのようにすると構成が複雑化しコストアップを招くという問題がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、イメージセンサの種類を簡易な方法で精度良く判別することが可能な画像読取装置及びイメージセンサの判別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、第1の発明は、読取動作時において、複数の受光素子からの受光信号に基づく画素データをデータ出力期間中に出力信号に乗せて出力する複数種類のイメージセンサの中から選択されたイメージセンサが組み込まれる画像読取装置であって、前記イメージセンサに前記読取動作を実行させる制御手段と、前記読取動作時において、前記イメージセンサから、前記データ出力期間外のデータ非出力期間中に出力される出力信号に基づいてイメージセンサの種類を判別する判別手段と、を備える。
【0007】
第1の発明によれば、読取動作時において、イメージセンサからデータ非出力期間中に出力される出力信号に基づいて、イメージセンサの種別を判別する。これにより、受光素子からの受光信号に基づいて判別を行う場合等に比べ、簡易な構成で精度良くイメージセンサの判別を行うことができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記制御手段は、前記イメージセンサの読取対象に対して光を照射する光源のオン・オフを制御し、前記判別手段は、前記光源をオフとした状態での出力信号に基づいて、イメージセンサの種類を判別する。
【0009】
第2の発明によれば、光源をオフにした状態でイメージセンサの種類を判別することができるため、光源オン後の立ち上がりを待つ必要が無く、速やかに判別処理を行うことができる。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記判別手段は、前記データ非出力期間中の複数のタイミングにおける前記出力信号の出力値を取得し、それらの出力値の組み合わせに基づいて、イメージセンサの種類を判別する。
【0011】
第3の発明によれば、複数のタイミングにおける出力値の組み合わせに基づいて判別を行うため、一つのタイミングの出力値のみに基づいて判別する場合に比較すると、精度を高めることができ、また、多種類のイメージセンサの判別を行うことが可能となる。
【0012】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明において、前記判別手段は、前記出力信号から複数のタイミングにて取得される出力値を平均化した値に基づいて判別を行う。
第4の発明によれば、ノイズの影響を低減でき、判定精度を確保することができる。
【0013】
第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明において、前記判別手段は、前記出力信号の出力値に対応するイメージセンサの種類が見つからない場合には、エラーが生じたと判定する。
第5の発明によれば、出力信号の出力値に対応するイメージセンサがみつからないときには、エラーと判定する。これによりイメージセンサの異常等を見つけることができる。
【0014】
第6の発明は、第1から第5のいずれかの発明において、前記制御手段は、前記イメージセンサと複数の信号線で接続されており、前記判別手段により判別された前記イメージセンサの種類に応じて、前記複数の信号線のうち少なくとも一部の信号線で伝達される信号の種別を切り替える。
第6の発明によれば、イメージセンサの種類に応じて信号線で伝達される信号の種別を切り替えるため、信号線の配置が異なる種類のイメージセンサにも対応することができる。
【0015】
第7の発明は、読取動作時において、複数の受光素子からの受光信号に基づく画素データをデータ出力期間中に出力信号に乗せて出力する複数種類のイメージセンサの中から選択されたイメージセンサの種類を判別する方法であって、前記読取動作時において、前記イメージセンサから、前記データ出力期間外のデータ非出力期間中に出力される出力信号に基づいてイメージセンサの種類を判別する。
【0016】
第7の発明によれば、読取動作時において、イメージセンサからデータ非出力期間中に出力される出力信号に基づいて、イメージセンサの種別を判別する。これにより、受光素子からの受光信号に基づいて判別を行う場合等に比べ、簡易な構成で精度良くイメージセンサの判別を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、読取動作時において、イメージセンサからデータ非出力期間中に出力される出力信号に基づいて、イメージセンサの種別を判別する。これにより、受光素子からの受光信号に基づいて判別を行う場合等に比べ、簡易な構成で精度良くイメージセンサの判別を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に本発明の一実施形態について図1から図6を参照して説明する。
【0019】
(複合機の構成)
本実施形態では、本発明をスキャナ機能、プリンタ機能、コピー機能、ファクシミリ機能等を備えた複合機1(画像読取装置の一例)に適用した例を示す。図1は、複合機1の外観斜視図であり、図2は、原稿読取部3の要部拡大断面図である。
【0020】
複合機1は、図1に示すように、用紙に画像を印刷する画像形成部38(図3参照)を収容した本体部2を備え、その上方に原稿を読み取る原稿読取部3を備えている。原稿読取部3の前側には、各種のボタンや液晶ディスプレイ等を備えた操作パネル4が設けられ、この操作パネル4により動作状態等の表示や、ユーザによる操作の入力が可能となっている。
【0021】
原稿読取部3は、フラットベッド部6とその上方を開閉可能に覆う原稿カバー部7とを備えている。フラットベッド部6の上面には、透明な長方形状をなした第1プラテンガラス8と第2プラテンガラス9とが並んで設けられている。原稿カバー部7は、ADF(自動原稿供給装置)11、原稿トレイ12、排出トレイ13を備えている。ADF11は、原稿トレイ12に載置された原稿を一枚ずつ搬送して、その原稿を第2プラテンガラス9に対向する位置に搬送した後、排出トレイ13上に排出する。
【0022】
第1プラテンガラス8の下側には、イメージセンサ14が設けられている。このイメージセンサ14は、CIS(Contact Image Sensor)方式のものであり、CMOS撮像素子15、レンズからなる光学素子16、RGB3色の発光ダイオードからなる光源17を備えている。CMOS撮像素子15は、主走査方向(紙面に直交方向)に一列に並んで配置された複数の画素部を有しており、光源17より原稿に光を当てたときの反射光を光学素子16を介して、各画素部に設けられたフォトダイオードで受光し、各画素部毎に反射光の光強度(明度)を電気信号に変換して出力する。
【0023】
原稿の読み取りは、原稿を第1プラテンガラス8上に載置して行う場合と、ADF11を利用する場合とがある。前者の場合、イメージセンサ14がステップモータ40(図3参照)の動力により副走査方向(図2の矢線A方向)に移動され、その際に主走査方向(図2の紙面に直交する方向)に1ラインずつ原稿の読み取りが行われる。また、後者の場合には、イメージセンサ14が第2プラテンガラス9に対向する位置に固定され、原稿がADF11の駆動によって第2プラテンガラス9に対向する位置に搬送されたときに、原稿の読み取りが主走査方向に1ラインずつ行われる。
【0024】
フラットベッド部6には、筐体の第2プラテンガラス9に隣接した内面部分には、基準部材20が設けられている。この基準部材20は、長方形の板状をなしており、主走査方向に細長く、かつイメージセンサ14の1ラインの読取領域よりも若干大きい程度の長さ寸法を有している。基準部材20は、副走査方向に二分されており、一方が全域が均一な濃度の白色をなした白基準部21であり、他方がイメージセンサ14のホームポジション(初期位置)を検出するための所定のマークが形成されたHP検出基準部22とされている。
【0025】
(複合機の電気的構成)
次に、複合機1の電気的構成について説明する。図3は、複合機1の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【0026】
複合機1は、CPU31(制御手段、判別手段の一例)、ROM32、RAM33、NVRAM(不揮発性メモリ)34、ASIC35、ネットワークインターフェイス36、ファクシミリインターフェイス37等を備えて構成された制御装置30を備えている。
【0027】
ROM32には、複合機1を制御するための各種制御プログラムや各種設定、初期値等が記憶されており、例えば後述する各型のイメージセンサ14に関する設定情報等が記憶されている。RAM33は、各種制御プログラムが読み出される作業領域として、あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として用いられる。ASIC35は、既述の画像形成部38、原稿読取部3、操作パネル4等と接続されている。CPU31は、ROM32から読み出した制御プログラムに従って、その処理結果をRAM33又はNVRAM34に記憶させながら、ASIC35を介して複合機1の各構成要素を制御する。
【0028】
ネットワークインターフェイス36には、コンピュータ等が接続され、このネットワークインターフェイス36を介して相互のデータ通信が可能となっている。また、ファクシミリインターフェイス37は、電話回線(図示せず)に接続され、このファクシミリインターフェイス37を介して外部のファクシミリ装置等とファクシミリデータの通信が可能となっている。
【0029】
(イメージセンサとASIC間で送受される信号の機能)
本実施形態の複合機1では、製造時に読取速度等の特性が異なるA型、B型、C型の3種類のイメージセンサ14のうちいずれか一つが選択され、原稿読取部3に組み込まれる。各型のイメージセンサ14のインターフェイスは共通化が図られており、それぞれASIC35に対して11本の信号線を備えたフレキシブルフラットケーブル39(図3参照)を介して接続されるようになっている。
【0030】
図4は、A型のイメージセンサ14とASIC35を接続する信号線の番号(詳細にはフレキシブルフラットケーブル39とASIC35と接続するコネクタのピン番号)と、その信号の機能とを示している。このうち1番の信号は、イメージセンサ14からASIC35へ出力されるアナログの出力信号であり、後述するように、読取動作時には、CMOS撮像素子15の各画素からの出力に基づく画素データがこの出力信号に乗せて出力される。なお、この出力信号は、ASIC35側でA/D変換されてその電圧値が取得される。
【0031】
2番から11番の信号は、いずれもASIC35側からイメージセンサ14に入力される信号であって、読取動作時の解像度を切り替えるための解像度切替信号、GND電位を入力するためのGND信号、イメージセンサ14を駆動するための駆動電源信号(Vcc)、出力時の基準となる電圧を入力するための基準電圧信号(Vref)、ライン毎の駆動開始タイミングを与える駆動開始パルス信号(SP(TG))、基準クロックを入力するための駆動クロック信号(CIS_CLK)、光源17であるRGB各色の発光ダイオードのアノード側に共通に供給される電流供給コモン信号、各色の発光ダイオード別にカソード側に供給される電流供給信号からなる。
【0032】
B型、C型のイメージセンサ14における各信号線の機能(即ち信号のピン配置)は、1番から8番まではA型と共通であり、9番から11番まではA型と異なっている。即ち、A型のイメージセンサ14では9番がB、10番がG、11番がRの発光ダイオードに対する電流供給信号であるのに対し、B型のイメージセンサ14では9番がG、10番がR、11番がBの発光ダイオードに対する電流供給信号であり、C型では9番がR、10番がB、11番がGの発光ダイオードに対する電流供給信号となっている。
【0033】
(イメージセンサの読取動作)
図5は、各型のイメージセンサ14の出力信号の例を示すタイミングチャートである。イメージセンサ14の1ライン毎の動作は、同図に示すように、その出力信号の内容に応じて、初期設定期間、データ出力期間、待機期間の3つに分けることができる。
【0034】
初期設定期間(データ非出力期間の一例)は、駆動開始パルス信号(SP(TG))に基づいて開始される一定の期間(同図では0〜82クロック)である。この初期設定期間には、CMOS撮像素子15において、各画素部からの情報電荷(受光信号)が出力部に転送され、続いて各画素部に蓄積された電荷が放出されてリセット状態となる。また、CMOS撮像素子15にVcc、GND、Vrefの各電圧が取り込まれ、それぞれが基準の電位として設定される。
【0035】
この初期設定期間には、各型のイメージセンサ14ともに出力信号として画素データとは異なる信号が出力され、その出力値はイメージセンサ14の種類によって異なる。即ち、図5に示すように、A型のイメージセンサ14では、始めはGNDの値が出力され、途中で(同図では79クロックの時点で)Vrefの値に切り替わる。また、B型のイメージセンサ14では、初期設定期間の間、常にVrefの値が出力され、C型のイメージセンサ14では、常にGNDの値が出力される。
【0036】
続くデータ出力期間には、CMOS撮像素子15の各画素部において電荷が蓄積される。一方で、出力部に転送された電荷情報(前ラインの動作期間中に各画素部で蓄積されたもの)が各画素毎に駆動クロックと同期したタイミングで順次読み出され、画素データとして出力信号に乗せて出力される。
【0037】
データ出力期間に続く待機期間(データ非出力期間の一例)には、CMOS撮像素子15の各画素部において電荷の蓄積が続行されるとともに、次ラインの駆動開始パルス信号の入力が待機される待機状態となる。この待機期間には、各型のイメージセンサ14とも画素データの出力を停止し、A型及びC型のイメージセンサ14では、常にGNDの値、B型のイメージセンサ14では、常にVrefの値を出力信号として出力する。そして、CMOS撮像素子15は、待機期間中に次の駆動開始パルス信号を受けると、既述の初期設定期間の動作を開始する。
【0038】
(起動時設定処理)
複合機1の電源投入時にCPU31の制御により実行される起動時設定処理の動作について説明する。図6は、起動時設定処理の流れを示すフローチャートである。
【0039】
CPU31は、起動時設定処理を開始すると、以下に述べるように、最初にイメージセンサ14の種類を判別する処理を行う。CPU31は、まずASIC35からイメージセンサ14に対し既述の各信号を入力して各種読取モードの設定を行う(S101)。具体的には、解像度切替信号によりイメージセンサ14の読取動作時の解像度を設定する。ここで、各型のイメージセンサ14では、それぞれ解像度切替信号に基づいて読取動作時の解像度を1200dpi、600dpi、300dpiの3種類のうちのいずれかに設定することができる。この例では、イメージセンサ14の解像度を600dpiに設定する。
【0040】
また、電流供給信号により読取動作時の光源17をオフ状態とするように設定する。さらに基準電圧信号(Vref)により基準電圧として1.1[V]等の値をイメージセンサ14に入力する。また、駆動開始パルス信号及び駆動クロック信号により、イメージセンサ14の1ラインの動作周期を所定のクロック数(例えば5456クロック)に設定する。
【0041】
次に、CPU31は、イメージセンサ14の読取動作を実行し、初期設定期間(1〜Wクロック)における各クロック毎の出力信号の出力値(電圧値)を取得する(S102)。なお、ここでは、初期設定期間の最後のクロック数をW(図5では82に対応する)としている。また、読取動作を開始して最初の2ライン分のデータは捨てられ、それに続くラインの出力信号から上記のデータが取得される。
【0042】
そして、CPU31は、A型のイメージセンサ14において初期設定期間に出力がGNDからVrefの値に切り替わるときのクロック数をX+1とすると、得られた出力値を1〜XクロックのものとX+1〜Wクロックのものとの2組に分ける。そして、各組の出力値の中から上位と下位の所定数のデータを除去し、残りのデータについて平均値を算出する(S103)。
【0043】
続いて、1〜Xクロックの出力平均値を、VrefとGNDとの中間の値をとる所定の閾値と比較し(S104)、そしてX+1〜Wクロックの出力平均値を同じ閾値と比較する(S105,S106)。出力平均値が閾値よりも小さい出力をL、閾値よりも大きい出力をHとすると、1〜Xクロックの出力平均値がL、X+1〜Wクロックの出力平均値がHの場合(S104:Yes、S105:No)には、イメージセンサ14がA型であると判定される。このため、ROM32に記憶されたA型のイメージセンサ14に関する各種設定情報を読み込み、A型用の設定を行う(S107)。
【0044】
具体的には、例えば、取得された画素データの補正の際に、A型のイメージセンサ14に対応したガンマテーブルを用いるように設定する。また、9番から11番の信号線(電流供給信号)の機能をA型のイメージセンサ14に対応するものに切り替える。さらには、画素データの取得タイミング(サンプリングポイント)をA型のイメージセンサ14に対応するタイミングに設定する等の設定を行う。
【0045】
同様に1〜Xクロックの出力平均値とX+1〜Wクロックの出力平均値とがともにHの場合(S104:No、S106:No)には、イメージセンサ14がB型であると判定されるため、B型のイメージセンサ14に関する各種設定情報を読み込み、B型用の設定を行う(S108)。即ち、B型のイメージセンサ14に対応するガンマテーブルを用いる設定としたり、信号線の機能をB型のイメージセンサ14に対応するものに切り替えたり、あるいは画素データのサンプリングポイントをB型のイメージセンサ14に適したタイミングに設定したり等の設定を行う。そして、1〜Xクロックの出力平均値とX+1〜Wクロックの出力平均値とがともにLの場合(S104:Yes、S105:Yes)には、イメージセンサ14がC型であると判定されるため、C型のイメージセンサ14に関する各種設定情報を読み込み、C型用の設定を同様に行う(S109)。
【0046】
また、1〜Xクロックの出力平均値がH、X+1〜Wクロックの出力平均値がLの場合(S104:No、S106:Yes)、即ち両出力平均値の組み合わせに対応するイメージセンサ14が見つからないときには、何らかのエラーが生じたと判断される。この場合、イメージセンサ14の種類が特定できないエラーが生じた旨を操作パネル4のディスプレイに表示して、エラー情報をNVRAM34に記録する等のエラー処理を行い(S110)、処理を終了する。
【0047】
続いて、CPU31は、イメージセンサ14のホームポジションを検出するHP検出処理や光源17である発光ダイオードの光量を調整する光量調整処理等の各種の調整処理を実行する(S111)。HP検出処理においては、まずステップモータ40の動力によりイメージセンサ14を副走査方向に移動させつつ読取動作を行い、出力された画素データからHP検出基準部22のマークが検出された位置をホームポジション(副走査方向における初期位置)とする。
【0048】
また、光量調整処理においては、イメージセンサ14により白基準部21をスキャンして1ライン又は複数ラインの読み取りを行う。なお、このとき各色の発光ダイオードが所定の(仮の)光量で発光するように各電流供給信号が入力される。そして、CPU31は、取得される画素データの値が所定範囲内となるように電流供給信号を変化させることで各色の発光ダイオードの光量(1ラインの点灯時間や供給される電流値)を調整する。
【0049】
CPU31は、上記の各種調整処理を終了した後に起動時設定処理を終了し、ユーザからの指示を待機する待機状態となる。
【0050】
(本実施形態の効果)
以上のように本実施形態によれば、読取動作時において、イメージセンサ14から初期設定期間中に出力される出力信号に基づいて、イメージセンサ14の種類を判別する。これにより、簡易な構成で精度良くイメージセンサ14の判別を行うことができる。
【0051】
ここで、イメージセンサの種類の判別を行う別の方法として、イメージセンサにより基準部材等の読み取りを行ってその出力信号の出力値(画素データ)を取得し、それに基づいてイメージセンサの種類を判別することも考えられる。しかしながら、この方法では、イメージセンサの種類が不明の状態で読み取りを行うために、出力信号に対してイメージセンサの特性に合わせた処理を行うことが困難である。具体的には、例えば出力信号の電圧値を取得するタイミング(サンプリングポイント)をイメージセンサに合わせて設定することができないため、判別に適した値を得ることが難しい場合がある。そのため、この方法では、精度良い判別を行うことが困難である。
【0052】
本実施形態では、データ非出力期間中の出力信号に基づいてイメージセンサの種類を判別するため、上記のように画素データに基づいて判別を行うような場合に比べ、簡易な構成で精度良くイメージセンサ14の判別を行うことができる。また、判別に際して画素データを用いないために、イメージセンサ14がどのような位置にあっても判別を行うことができ、イメージセンサの位置を検知するセンサ等を設ける必要がない。さらに、例えば原稿カバー部7が開いて、外部からの光がイメージセンサ14に入光するような状況下でも判別を行うことができる。
【0053】
また、光源17をオフにした状態でイメージセンサ14の種類を判別することができるため、光源オン後の立ち上がりを待つ必要が無く、速やかに判別処理を行うことができる。
【0054】
また、複数のタイミングにおける出力信号の出力値の組み合わせに基づいて判別を行うため、一つのタイミングの出力値のみに基づいて判別する場合に比較すると、精度を高めることができ、また、多種類のイメージセンサ14の判別を行うことが可能となる。
【0055】
また、出力信号から複数のタイミングにて取得される出力値を平均化した値に基づいて判別を行うため、ノイズの影響を低減でき、判定精度を確保することができる。
【0056】
また、出力信号の出力値に対応するイメージセンサ14が見つからないときには、エラーと判定する。これによりイメージセンサ14の異常等を見つけることができる。
【0057】
また、イメージセンサ14の種類に応じて信号線で伝達される信号の種別を切り替えるため、信号線の配置が異なる種類のイメージセンサ14にも対応することができる。
【0058】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、CIS方式のイメージセンサの種類を判別するものを示したが、本発明は、CCD方式等の他の方式のイメージセンサの種類を判別する場合にも適用することができる。
【0059】
(2)上記実施形態では、1ラインの始めの初期設定期間に出力される出力信号に基づいてイメージセンサの種類を判別するものを示したが、1ラインの終りの待機期間に出力される出力信号に基づいて判別を行っても良い。
【0060】
(3)上記実施形態では、本発明を複合機に適用した例を示したが、本発明は、少なくともスキャナ機能を備えた画像読取装置であれば、プリンタ機能、コピー機能やファクシミリ機能を備えていないものにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】複合機の外観斜視図
【図2】原稿読取部の要部拡大断面図
【図3】複合機の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図4】A型のイメージセンサとASICとを接続する信号線の番号とその信号の機能とを説明する図
【図5】各型のイメージセンサの出力信号の例を示すタイミングチャート
【図6】起動時設定処理の流れを示すフローチャート
【符号の説明】
【0062】
1…複合機(画像読取装置)
14…イメージセンサ
17…光源
31…CPU(制御手段、判別手段)
39…フレキシブルフラットケーブル(信号線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取動作時において、複数の受光素子からの受光信号に基づく画素データをデータ出力期間中に出力信号に乗せて出力する複数種類のイメージセンサの中から選択されたイメージセンサが組み込まれる画像読取装置であって、
前記イメージセンサに前記読取動作を実行させる制御手段と、
前記読取動作時において、前記イメージセンサから、前記データ出力期間外のデータ非出力期間中に出力される出力信号に基づいてイメージセンサの種類を判別する判別手段と、
を備える画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置において、
前記制御手段は、前記イメージセンサの読取対象に対して光を照射する光源のオン・オフを制御し、
前記判別手段は、前記光源をオフとした状態での出力信号に基づいて、イメージセンサの種類を判別する。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像読取装置において、
前記判別手段は、前記データ非出力期間中の複数のタイミングにおける前記出力信号の出力値を取得し、それらの出力値の組み合わせに基づいて、イメージセンサの種類を判別する。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像読取装置において、
前記判別手段は、前記出力信号から複数のタイミングにて取得される出力値を平均化した値に基づいて判別を行う。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の画像読取装置において、
前記判別手段は、前記出力信号の出力値に対応するイメージセンサの種類が見つからない場合には、エラーが生じたと判定する。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の画像読取装置において、
前記制御手段は、前記イメージセンサと複数の信号線で接続されており、前記判別手段により判別された前記イメージセンサの種類に応じて、前記複数の信号線のうち少なくとも一部の信号線で伝達される信号の種別を切り替える。
【請求項7】
読取動作時において、複数の受光素子からの受光信号に基づく画素データをデータ出力期間中に出力信号に乗せて出力する複数種類のイメージセンサの中から選択されたイメージセンサの種類を判別する方法であって、
前記読取動作時において、前記イメージセンサから、前記データ出力期間外のデータ非出力期間中に出力される出力信号に基づいてイメージセンサの種類を判別するイメージセンサの判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−27248(P2009−27248A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185708(P2007−185708)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】