説明

画像読取装置及び画像形成装置

【課題】読取画像における黒筋の発生を従来よりも確実に防止する。
【解決手段】ADF20によって読取位置に自動給紙される原稿の端部近傍の原稿内画像と、ADF20よって先行して読取位置に自動給紙される先行原稿と当該先行原稿に続いて自動給紙される後行原稿との間の原稿外画像とをCCDラインセンサー38を用いて取得し、原稿内画像と原稿外画像とに基づいて読取位置における外乱要素の存在が推定された場合には、外乱要素を避けた位置に読取位置を変更して原稿の全体画像を読み取る複合機であって、ADF20によって読取位置に自動給紙される原稿の傾斜状態を検出する第1、第2の原稿位置センサーと、該傾斜検出手段によって検出された原稿の傾斜が所定のしきい値を超える場合には、原稿内画像の取得に際して、原稿外の画像が含まれない取得態様で原稿内画像を取得する演算制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電子写真方式の画像読取装置においては、ADF(Automatic document feeder:自動原稿送り装置)によりプラテンガラス上に副走査方向から自動給紙される原稿を、主走査方向に延在するCCD(Charge Coupled Device)ラインセンサーによって読み取る。このような画像読取装置においては、プラテンガラス上の読取位置(副走査方向における特定位置)にごみ(紙粉等)、汚れあるいは傷等の外乱要素が存在すると、読取画像に副走査方向に延びる筋模様(以下、黒筋と称す)が現れる。下記特許文献1には、このような黒筋の発生を回避するために、上記ADFにより自動給紙される原稿の余白部分である先端近傍部と後端近傍部との画像(原稿内画像)、またADFにより先行して自動給紙される原稿(先行原稿)と当該原稿に続いて自動給紙される原稿(後行原稿)との間における画像(原稿外画像)を取得し、これら画像における最高濃度領域の主走査方向の位置に基づいて黒筋の発生(つまり読取位置における外乱要素の存在)を予想し、当該黒筋の発生が予想される場合には、読取位置を変更する原稿読取装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−193553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術では、原稿の余白部分の画像をより確実に取得するために、原稿の先端に極近い部位の画像と原稿の後端に極近い部位の画像とを原稿内画像として取得する。
しかしながら、ADFを用いて原稿を読取位置に自動給紙した場合に、ADFの搬送ローラーの滑り等に起因して原稿が斜めに傾いた状態で読取位置に供給されることがある。このように傾いた原稿の先端に極近い部位と原稿の後端に極近い部位とをCCDラインセンサーによって読み取ると、原稿の余白ではなく、原稿外の画像を読み取る虞がある。この結果、上記従来技術では、原稿の余白部分の画像を確実に取得することができないので、黒筋の発生を確実に防止することが難しい。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、読取画像における黒筋の発生を従来よりも確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、画像読取装置に係る第1の解決手段として、自動原稿送り装置によって読取位置に自動給紙される原稿の端部近傍の原稿内画像と、自動原稿送り装置によって先行して読取位置に自動給紙される先行原稿と当該先行原稿に続いて自動給紙される後行原稿との間の原稿外画像とをラインセンサーを用いて取得し、原稿内画像と原稿外画像とに基づいて読取位置における外乱要素の存在が推定された場合には、外乱要素を避けた位置に読取位置を変更して原稿の全体画像を読み取る画像読取装置であって、自動原稿送り装置によって読取位置に自動給紙される原稿の傾斜状態を検出する傾斜検出手段と、該傾斜検出手段によって検出された原稿の傾斜が所定のしきい値を超える場合には、原稿内画像の取得に際して、原稿外の画像が含まれない取得態様で原稿内画像を取得する制御手段とを備える,という手段を採用する。
【0007】
本発明では、画像読取装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、制御手段は、取得態様として、読取位置を原稿の端部から内側に変更させる、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、画像読取装置に係る第3の解決手段として、上記第1の解決手段において、ラインセンサーは副走査方向に複数ラインの個別センサーを備え、制御手段は、取得態様として、原稿の端部近傍の複数ラインに亘る画像をラインセンサーに読み取らせ、当該複数ラインに亘る画像から原稿の表面画像を抽出して原稿内画像とする、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、画像読取装置に係る第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれか1つの解決手段において、傾斜検出手段は、自動原稿送り装置において原稿の搬送位置を検出する第1の原稿位置センサーと、主走査方向において第1の原稿位置センサーとは異なる位置に設けられた第2の原稿位置センサーと、第1の原稿位置センサーの検出結果と第2の原稿位置センサーの検出結果とに基づいて原稿の傾斜角を算出する演算手段とを備える、という手段を採用する。
【0010】
また、本発明では、画像形成装置に係る解決手段として、上記第1〜第4のいずれか1つの解決手段に係る画像読取装置を具備し、該画像読取装置で読み取った画像を記録紙上に画像形成する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自動原稿送り装置によって読取位置に自動給紙される原稿の端部近傍の原稿内画像と、自動原稿送り装置によって先行して読取位置に自動給紙される先行原稿と当該先行原稿に続いて自動給紙される後行原稿との間の原稿外画像とをラインセンサーを用いて取得し、原稿内画像と原稿外画像とに基づいて読取位置における外乱要素の存在が推定された場合には、外乱要素を避けた位置に読取位置を変更して原稿の全体画像を読み取る画像読取装置であって、自動原稿送り装置によって読取位置に自動給紙される原稿の傾斜状態を検出する傾斜検出手段と、該傾斜検出手段によって検出された原稿の傾斜が所定のしきい値を超える場合には、原稿内画像の取得に際して、原稿外の画像が含まれない取得態様で原稿内画像を取得する制御手段とを備える。このように本発明によれば、原稿の傾斜が所定のしきい値を超えた場合でも原稿の端部近傍の原稿内画像に原稿外の画像が含まれないために、黒筋の原因となる外乱要素を的確を推定することができるので、読取画像における黒筋の発生を従来よりも確実に防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合機Aの機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態における画像読取部2の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態における傾斜検出手段の概要を示す模式図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る複合機Aの動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態における黒筋検知時における読取位置の変更を示す模式図である。
【図6】本発明の一実施形態における黒筋検知時における読取方法の変更を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る複合機Aは、電子写真方式に基づいて記録紙に画像を形成する画像形成装置であり、図1に示すように、操作表示部1、画像読取部2、画像データ記憶部3、通信部4、画像形成部5及び演算制御部6を備える。なお、演算制御部6は、本実施形態における制御手段であり、また画像読取部2及び演算制御部6は、本実施形態における画像読取装置を構成する。
【0014】
操作表示部1は、操作キー及びタッチパネルを備えており、ユーザーと複合機Aとを関係付けるマンマシンインターフェイスとして機能する。操作表示部1は、操作キーまたはタッチパネルに表示された操作ボタンに対するユーザーの操作指示を操作信号として演算制御部6に出力するとともに、演算制御部6から入力される制御信号に基づいてタッチパネルに種々の画像を表示する。
【0015】
画像読取部2は、図1,2に示すようにADF(Automatic document feeder:自動原稿送り装置)20及びフラットベット読取部30から構成されており、演算制御部6から入力される制御信号に基づいてADF20により給紙される原稿Pまたはユーザーによりフラットベット読取部30上に載置された原稿Pの表面画像(原稿画像)を読み取って原稿画像データに変換し、この原稿画像データを画像データ記憶部3に出力する。なお、図2のADF20は、説明の便宜上、フラットベット読取部30から上方向に若干離れているが、実際にはフラットベット読取部30上に載置されている。
【0016】
ADF20は、原稿給紙トレイ22に載置された複数枚の原稿Pを原稿画像の読取位置に1枚ずつ順次自動給紙するものであり、図2に示すようにプラテンカバー21、原稿給紙トレイ22、ピックアップローラー23、搬送ローラー24、レジストローラー25、原稿検出部26、排紙ローラー27及び原稿排紙トレイ28を備える。
【0017】
プラテンカバー21は、給紙途中で紙詰まりした原稿Pを除去する等のために、ADF20本体に開閉自在に取り付けられた可動カバーである。図2では、プラテンカバー21の内部が閉じられた状態を示しているが、ユーザーは、プラテンカバー21を開状態とすることによりピックアップローラー23、搬送ローラー24及びレジストローラー25等にアクセス可能である。原稿給紙トレイ22は、読取対象である原稿Pを収容する容器である。
【0018】
ピックアップローラー23は、原稿給紙トレイ22に収容された原稿Pを1枚づつ取り出して搬送ローラー24に送り出す駆動ローラーである。搬送ローラー24は、ピックアップローラー23から供給された原稿Pをレジストローラー25に向けて搬送する駆動ローラーである。レジストローラー25は、搬送ローラー24から供給された原稿Pを所定のタイミングで排紙ローラー27に向けて送り出す駆動ローラーである。
【0019】
このレジストローラー25と排紙ローラー27との間には、図示するように読取用開口部Kが形成されている。この読取用開口部Kは、ADF20の底部、つまりフラットベット読取部30との対向部に副操作方向に所定幅で設けられた帯状開口であり、ADF20によって自動給紙される原稿Pの表面がフラットベット読取部30に露出する部位である。
【0020】
このような読取用開口部Kとレジストローラー25との間には原稿検出部26が設けられている。この原稿検出部26は、図3に示すように、レジストローラー25から送り出された原稿Pの先端位置を検出する第1、第2の原稿位置センサー26a,26bから構成されている。これら第1、第2の原稿位置センサー26a,26bは、図示するように主走査方向に差し渡された棒状部材に支持されることにより、原稿搬送方向(副走査方向)において同一位置に設けられている。
【0021】
また、第1の原稿位置センサー26aは、原稿Pの搬送路において主走査方向の略中央に設けられている。これに対して、第2の原稿位置センサー26bは、主走査方向において第1の原稿位置センサー26aから若干離間したところに設けられている。なお、第1、第2の原稿位置センサー26a,26bは、光学的に原稿Pの先端位置を検出するもの、あるいは原稿Pの先端と接触して機械的に可動することにより原稿Pの先端位置を検出するも等、種々の方式のものが考えられる。
【0022】
このような第1、第2の原稿位置センサー26a,26bは、各々の検出結果を演算制御部6に出力する。演算制御部6は、このような第1、第2の原稿位置センサー26a,26bの検出結果に基づいて原稿Pの傾斜角θを演算する。第1、第2の原稿位置センサー26a,26b及び演算制御部6は、本実施形態における傾斜検出手段を構成する。
【0023】
排紙ローラー27は、ピックアップローラー23から供給された原稿Pを原稿排出トレイ28に向けて搬送する駆動ローラーである。原稿排出トレイ28は、排紙ローラー27から供給された原稿Pを収容する収容部である。
【0024】
フラットベット読取部30は、図2に示すように、第1のプラテンガラス31、第2のプラテンガラス32、白色基準板33、原稿サイズ指示板34、フルレートキャリッジ35、ハーフレートキャリッジ36、集光レンズ37、CCD(Charge Coupled Device)ラインセンサー38及び読取部筐体39を備えている。このようなフラットベット読取部30は、ADF20により自動給紙された原稿P、またはユーザーにより第2のプラテンガラス32上に載置された原稿Pを読み取る。
【0025】
第1のプラテンガラス31は、読取部筐体39の上面左側に設けられた帯状開口に嵌め込まれた透明な板ガラスであり、上述したADF20の読取用開口部Kと対向している。ADF20のレジストローラー25から排紙ローラー27に向けて順次搬送される複数枚の原稿Pは、第1のプラテンガラス31上を順次通過する。第2のプラテンガラス32は、読取部筐体39の上面に設けられた帯状開口の右側に設けられた矩形開口に嵌め込まれた透明な板ガラスであり、ADF20を使用しない画像読取処理を行う際に、ユーザーにより原稿Pが載置される。
【0026】
白色基準板33は、読取部筐体39の上面において第1のプラテンガラス31と第2のプラテンガラス32との間に設けられ、周知のシェーディング補正に用いられる基準色を提供する白色板である。原稿サイズ指示板34は、読取部筐体39の上面において第2のプラテンガラス32と白色基準板33との間に設けられ、ユーザーが第2のプラテンガラス32上に原稿Pを載置する際に原稿サイズに応じた載置位置を示すマークである。
【0027】
フルレートキャリッジ35は、照明光を斜め上方に向けて照射する光源35aと、原稿Pにより反射された光をハーフレートキャリッジ36に向けて反射する第1のミラー35bとを備え、副走査方向(原稿搬送方向)に延在するレール上に移動可能に取り付けられている。フルレートキャリッジ35は、ADF20により自動給紙された原稿Pを読み取る際には、図2に示すように第1のプラテンガラス31の下方に固定され、第1のプラテンガラス31上の読取用開口部Kを通過する原稿Pに向けて光源35aから放射された光(例えばレーザー光)を照明光として照射すると共に、当該照明光が原稿Pの表面で反射して得られる反射光(読取光)を第1のミラー35bによってハーフレートキャリッジ36に向けて反射する。
【0028】
なお、フルレートキャリッジ35は、第2のプラテンガラス32に載置された原稿Pを読み取る際には、第2のプラテンガラス32の下方において副走査方向に移動しながら原稿Pに向けて照明光を照射すると共に、原稿Pから順次得られる読取光を第1のミラー35bによってハーフレートキャリッジ36に向けて反射する。
【0029】
ハーフレートキャリッジ36は、上記第1のミラー35bから入射した読取光を下方に反射する第2のミラー36aと、該第2のミラー36aから入射した読取光を集光レンズ37に向けて反射する第3のミラー36bとを備え、フルレートキャリッジ35と同一のレール上にフルレートキャリッジ35の左側に位置するように取り付けられている。ハーフレートキャリッジ36は、ADF20によって自動給紙された原稿Pを読み取る場合には、図2に示すように第1のプラテンガラス31の下方に位置するフルレートキャリッジ35の左側において所定距離離れて固定されている。なお、第1のプラテンガラス31上にセットされた原稿Pの画像を読み取る場合、ハーフレートキャリッジ36は、フルレートキャリッジ35と同様に副走査方向に移動する。
【0030】
集光レンズ37は、上記第3のミラー36bから入射する読取光を集光してCCDラインセンサー38の受光面に結像させる。CCDラインセンサー38は、所定数のCCD受光素子が直線状(ライン状)に並ぶラインセンサーであり、受光面で順次受光した読取光を電気信号に光電変換し、原稿画像に応じた原稿画像データとして画像データ記憶部3に出力する。なお、図2に示す破線矢印は、ADF20により原稿Pが自動給紙される際における照明光及び読取光の光路を示している。なお、読取部筐体39は、上述したフルレートキャリッジ35、ハーフレートキャリッジ36、集光レンズ37及びCCDラインセンサー38を収容する箱型筐体である。
【0031】
ここで、ADF20によって自動給紙される複数の原稿Pを読み取る場合、光源35aから第1のプラテンガラス31上の読取用開口部Kに順次表れる原稿Pに照明光が照射される。すなわち、この場合において、本実施形態における原稿画像の読取位置は、読取用開口部Kにおける照明光の照射位置である。詳細は後述するが、本実施形態では、ADF20によって自動給紙される原稿Pの読取画像に外乱要素に起因する黒筋の発生が推定された場合には、上原稿画像の読取位置、つまり読取用開口部Kにおける照明光の照射位置を変更する。
【0032】
画像データ記憶部3は、半導体メモリ−またはハードディスク装置等であり、演算制御部6から入力される制御信号に基づいて上記原稿画像データ、通信部4が外部のクライアントコンピューターから受信するプリント画像データあるいは通信部4が外部のファクシミリ装置から受信するファクシミリ画像データを記憶すると共に、これら画像データを演算制御部6から入力される制御信号に基づいて読み出して画像形成部5に出力する。
【0033】
通信部4は、演算制御部6から入力される制御信号に基づいて電話回線を介して外部の複合機あるいはファクシミリ装置、またLAN(Local Area Network)を介してクライアントコンピューター等と通信を行うものである。すなわち、この通信部4は、イーサネット(登録商標)等のLAN規格に準拠した通信機能と、G3等のファクシミリ規格に準拠した通信機能とを兼ね備えたものである。
【0034】
画像形成部5は、プリントエンジン(感光ドラム、帯電器、現像装置及び定着ローラーなど)などを備え、演算制御部6から入力される制御信号に基づいて記録紙を搬送し、画像データ記憶部3から入力された画像データに基づいて記録紙上にトナー画像を形成するものである。画像形成部5は、画像読取部2が読み取った原稿画像や通信部4が個々のクライアントコンピューターやファクシミリ装置から受信した印刷対象画像を個々の「ジョブ(プリントジョブ)」として処理することにより画像形成を行う。
【0035】
演算制御部6は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び上述した各部と各種信号の送受信を行うインターフェイス回路等から構成されており、上記ROMに記憶された制御プログラムに基づいて複合機Aの全体動作を制御する。この演算制御部6は、本実施形態の特徴的な処理として、ADF20によって自動給紙される原稿Pを読み取る場合に原稿Pの読取位置における外乱要素の存在の推定処理を行い、当該外乱要素の存在が推定された場合には、外乱要素を避けた位置に上記読取位置を変更して原稿Pの全体画像を読み取る。上記推定処理は、ADF20によって読取位置に自動給紙される原稿Pの端部近傍の画像(原稿内画像)と、ADF20によって先行して読取位置に自動給紙される原稿P(先行原稿)と当該先行原稿に続いて自動給紙される原稿P(後行原稿)との間の画像(原稿外画像)とを取得し、上記原稿内画像と原稿外画像とに基づいて上記外乱要素の存在を推定するものである。
【0036】
詳細は後述するが、演算制御部6は、このような外乱要素の存在の推定処理の一環として、第1、第2の原稿位置センサー26a,26bの検出結果に基づいて原稿Pの傾斜角θを演算すると共に、当該傾斜角θが予め設定されたしきい値を超える場合には、上記原稿内画像の取得に際して、原稿外の画像が含まれない取得態様で原稿内画像を取得する。
【0037】
次に、このように構成された複合機Aの動作について説明する。
最初に本複合機Aの全体動作を説明する。例えばユーザーがADFに原稿Pをセットし、また操作表示部1を操作することにより原稿Pの複写(コピー)を指示すると、当該指示に関する操作信号は操作表示部1から演算制御部6に入力される。この結果、演算制御部6は、画像読取部2に原稿Pを頁毎に読み取らせる画像読取処理を実行させる。
【0038】
すなわち、演算制御部6は、ピックアップローラー23を駆動させて原稿給紙トレイ22内の記録紙Pを1枚づつ取り出して搬送ローラー24に送り出させると共に当該搬送ローラー24を駆動させて原稿Pをレジストローラー25に向けて搬送させ、それと同時に、フルレートキャリッジ35及びハーフレートキャリッジ36を図2に示す所定の位置に移動させる。そして、演算制御部6は、レジストローラー25を駆動させて搬送ローラー24から供給された原稿Pを読取用開口部Kに向けて搬送すると共に光源35aを駆動させて原稿Pに向けて光を照射させる。この結果、光源35aにより照射された光は、原稿Pに反射され、その後第1のミラー35b、第2のミラー36a及び第3のミラー36bにより順次反射されることで集光レンズ37に導入され、集光レンズ37によってCCDラインセンサー38の受光面に集光される。
【0039】
そして、演算制御部6は、CCDラインセンサー38を駆動させて受光させると共にレジストローラー25から送り出された原稿Pが原稿検出部26により検出されたタイミングに基づいてCCDラインセンサー38から出力される画像データを原稿Pの頁毎の原稿画像データとして画像データ記憶部3に記憶させる。そして、演算制御部6は、レジストローラー25から給紙用開口部21a及び排紙用開口部21bを経由して搬送された原稿Pを排紙ローラー27を駆動させて原稿排出トレイ28に排出させる。そして、演算制御部6は、画像データ記憶部3に記憶された原稿画像データに基づいて原稿画像の画像形成処理を画像形成部5に実行させる。
【0040】
このような画像読取部2の画像読取処理においては、レジストローラー25の滑り等に起因して原稿Pが斜めに傾いた状態で搬送されることがある。演算制御部6は、図4のフローチャートに示すように、第1、第2の原稿位置センサー26a,26b各々の検出結果に基づいて原稿Pの傾斜角θを算出する(ステップS1)。すなわち、演算制御部6は、第1、第2の原稿位置センサー26a,26b各々により原稿Pが検出されるタイミングの差に基づいて原稿Pの傾斜角θを算出する。これは、原稿Pが斜めに傾いた状態である場合に、原稿Pの先端が第1、第2の原稿位置センサー各々に異なるタイミングで検出されることを利用して、原稿Pの傾斜角θを算出している。
【0041】
続いて、演算制御部6は、原稿Pの傾斜角θが所定の角度(例えば1度)を超えているか否か判定する(ステップS2)。演算制御部6は、原稿Pの傾斜角θが所定の角度を超えていない場合(NOの場合)には、CCDラインセンサー38から出力される画像データから原稿Pにおける副走査方向(原稿搬送方向)の先端近傍部及び後端近傍部における規定箇所の画像(原稿内画像)を取得する(ステップS3)と共に、ADF20によって先行して読取位置に自動給紙される原稿P(先行原稿)と当該先行原稿に続いて自動給紙される原稿P(後行原稿)との間の画像(原稿外画像)を取得し(ステップS4)、上記原稿内画像と原稿外画像とに基づいて外乱要素の存在を推定し、推定結果に基づいて外乱要素に起因する黒筋の発生を推定(黒筋推定処理)する(ステップS5)。
【0042】
上記ステップS3,4において取得された画像について図5を参照して詳細に説明する。図5において原稿P1は傾斜角θが所定の角度を超えていない、つまりほぼ真っ直ぐな状態で読取位置に自動給紙された原稿P(先行原稿)を示し、原稿P2は傾斜角θが所定の角度を超える原稿P(先行原稿)を示し、原稿P3は原稿P1または原稿P2に続いて自動給紙された原稿P(後行原稿)を示している。上記ステップS3において取得された原稿Pにおける副走査方向の先端近傍部における規定箇所の画像とは、原稿P1の副走査方向の最先端から所定の距離内側の位置の画像であり、例えば一点鎖線a1の位置のライン画像である。また、原稿Pにおける副走査方向の後端近傍部における規定箇所の画像とは、原稿P1の副走査方向の最後端から所定の距離内側の位置の画像であり、例えば一点鎖線b1の位置のライン画像である。また、上記ステップS4において取得された原稿外画像とは、先行して読取位置に自動給紙された原稿P1または原稿P2と、続いて自動給紙される原稿P3との間の画像であり、例えば実線cの位置のライン画像である。なお、上記ライン画像とは、CCDラインセンサー38により読み取られた1ライン分の画像である。このように原稿Pの先端近傍部及び後端近傍部の画像を取得するのは、原稿Pの先端近傍部及び後端近傍部には画像がほとんど描かれていない余白であるためである。つまり、上記ステップS5において原稿Pの先端部及び後端部のように画像を含まない場所の画像を利用して黒筋の発生を推定するするためである。
【0043】
一方、演算制御部6は、上記ステップS2において原稿Pの傾斜角θが所定の角度を超えていた場合(YESの場合)には、読取位置を原稿Pの先端近傍部及び後端近傍部から内側に変更して画像(原稿内画像)を取得、つまり原稿Pの先端近傍部及び後端近傍部における修正箇所の画像を取得する(ステップS6)。
【0044】
上記ステップS6において取得された原稿Pの先端近傍部における修正箇所の画像は、上記ステップS4において原稿Pの先端近傍部における規定箇所の画像が取得された位置(図5の一点鎖線a1)から副走査方向かつ内側方向に変更した位置の画像であり、例えば図5に示す点線a2の位置のライン画像である。また、上記ステップS6において取得された取得された原稿Pの後端近傍部における修正箇所の画像は、上記ステップS4において原稿Pの先端近傍部における規定箇所の画像が取得された位置(図5の一点鎖線b1)から副走査方向かつ内側方向に変更した位置の画像であり、例えば図5に示す点線b2の位置のライン画像である。
【0045】
このように原稿Pが斜めに傾斜した場合に、原稿Pの先端近傍部及び後端近傍部の画像として原稿P上における副走査方向かつ内側に変更した位置の画像を取得することで、原稿外の画像が含まれない画像を取得できる。つまり、図5に示す一点鎖線a1,b1の画像を取得してしまうと原稿外の画像が含まれてしまうが、点線a2,b2の画像を取得することで、原稿外の画像が含まれない画像を取得できる。
【0046】
さらにこの際、演算制御部6は、原稿Pの傾斜角θに応じて読取位置を内側方向に変更する距離を可変させる。つまり、演算制御部6は、原稿Pの傾斜角θが大きければ大きい程に、変更する距離を長くする。これにより原稿Pの傾斜角θが小さい場合には、原稿P上における副走査方向かつ内側方向に変更する距離を短くすることができるので、内側に変更しすぎることで原稿P上の画像が含まれる画像を上記ステップS6において取得してしまうことを回避できる。
【0047】
そして、演算制御部6は、ステップS6の処理の後に、上記ステップS4において原稿外画像を取得し、続いて上記ステップS5において黒筋推定処理を実行する。具体的に、演算制御部6は、上記ステップS5において原稿Pにおける先端部近傍及び後端近傍部の原稿内画像と、原稿外画像を比較し、各画像における最高濃度領域の主走査方向の位置に基づいて外乱要素の存在を推定し、推定結果に基づいて外乱要素に起因する黒筋の発生を推定する。つまり、演算制御部6は、各画像における最高濃度領域の濃度差が所定のしきい値を超えるか否か判定し、所定のしきい値を超える場合には、各画像における最高濃度領域の主走査方向の位置が一致するか否か判定する。そして、演算制御部6は、各画像における最高濃度領域の位置が一致する場合には、外乱要素が存在していると推定し、外乱要素に起因する黒筋が発生していると推定する。一方、演算制御部6は、各画像における最高濃度の場所が一致しない場合には、外乱要素が存在していないと推定し、外乱要素に起因する黒筋が発生していないと推定する。なお、演算制御部6は、各像における最高濃度の差が所定のしきい値を超えない場合には、外乱要素が存在していないと推定し、外乱要素に起因する黒筋が発生していないと推定する。
【0048】
続いて、演算制御部6は、ステップS5の処理の後に、黒筋の発生を推定したか否か判定する(ステップS7)。演算制御部6は、黒筋の発生を推定した場合(YESの場合)には、第1のプラテンガラス31の下方におさまる範囲でフルレートキャリッジ35を副走査方向に移動させ、読取位置を変更する(ステップS8)。これにより、黒筋の原因となる第1のプラテンガラス31上の外乱要素を避けて、原稿Pの読取位置を変更することができる。また、演算制御部6は、黒筋が発生していないと推定した場合(NOの場合)には、フルレートキャリッジ35の移動を行わない。
【0049】
次に、複合機Aの特徴的動作の変形例として上記ステップS6とは異なる取得態様で画像を取得する動作について図6を参照して説明する。
演算制御部6は、上記ステップS2において原稿Pの傾斜角θが所定の角度を超えていた場合(YESの場合)には、上記ステップS6の処理とは異なる取得態様で原稿Pにおける副走査方向の先端部及び後端部の画像を取得する。つまり、演算制御部6は、原稿Pの先端近傍部及び後端近傍部の複数ラインに亘る画像をCCDラインセンサー38に読み取らせ、原稿Pの傾斜角θに応じて当該複数ラインに亘る画像から原稿の表面画像を抽出して先端近傍部及び後端近傍部の原稿内画像とする。この場合、CCDラインセンサー38は、副走査方向に複数ラインの個別センサーを備える。
【0050】
上述の原稿Pにおける先端近傍部の原稿内画像とは、例えば図6に示す点線a3の位置のライン画像であり、原稿P2の傾斜角θに応じてCCDラインセンサー38から出力される複数ラインに亘る画像データから生成された原稿Pの先端近傍部の画像である。すなわち、演算制御部6は、CCDラインセンサー38から出力される画像データから点線a3上の画素データを連ねることで1本のライン画像を生成する。
【0051】
また、上述の原稿Pにおける後端近傍部の原稿内画像とは、例えば図6に示す点線b3の場所のライン画像であり、原稿Pの傾斜角θに応じてCCDラインセンサー38から出力される複数ラインに亘る画像データから生成された原稿Pの後端近傍部の画像である。すなわち、演算制御部6は、CCDラインセンサー38から出力される画像データから点線b3上の画素データを連ねることで1本のライン画像を生成する。
【0052】
このように原稿Pが斜めに傾斜した場合に、原稿Pの先端近傍部及び後端近傍部の画像として原稿Pの傾斜角θに応じた原稿Pにおける副走査方向の先端部及び後端部の画像を生成することで、原稿外の画像が含まれない画像を取得できる。つまり、図6に示す一点鎖線a1,b1の画像を取得してしまうと原稿外の画像が含まれてしまうが、実線a3,b3の画像を取得することで、原稿外の画像が含まれない画像を取得できる。
【0053】
そして、演算制御部6は、上記処理の後に、上記ステップS4において原稿外画像を取得し、続いて上記ステップS5において黒筋推定処理を実行する。そして、演算制御部6は、ステップS5の処理の後に、ステップS7の判定処理を実行し、黒筋の発生を推定した場合には、上記ステップS8においてフルレートキャリッジ35を副走査方向に移動させ、黒筋が発生していないと推定した場合には、フルレートキャリッジ35を移動させない。
【0054】
このような本実施形態によれば、演算制御部6は、第1、第2の原稿位置センサー26a,26bによって検出された原稿Pの傾斜が所定のしきい値を超える場合には、原稿内画像の取得に際して、原稿外の画像が含まれない原稿内画像を取得する。このように本実施形態によれば、原稿Pの傾斜が所定のしきい値を超えた場合でも原稿Pの先端近傍部及び後端近傍部の原稿内画像に原稿外の画像が含まれないために、黒筋の原因となる外乱要素を的確を推定することができるので、読取画像における黒筋の発生を従来よりも確実に防止することが可能である。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、例えば以下のような変形が考えられる。
(1)上記実施形態では、原稿Pにおける副走査方向の先端近傍部及び後端近傍部両方の原稿内画像を取得し、これら原稿内画像と原稿外画像とを比較することにより黒筋の発生を推定したが本発明はこれに限定されない。例えば、原稿Pにおける副走査方向の先端近傍部及び後端近傍部の一方、つまり原稿Pにおける副走査方向の一方の端部の画像と、原稿外画像とを比較することにより黒筋の発生を推定するようにしてもよい。
【0056】
(3)上記実施形態では、CCDラインセンサー38により読み取られた1ライン分のライン画像を用いて黒筋推定処理を行ったが、本発明はこれに限定されない。例えば、原稿Pにおける副走査方向の先端近傍部及び後端近傍部や、原稿外画像として連続する複数のライン画像からなる画像を用いて黒筋推定処理を行うようにしてもよい。
【0057】
(4)上記実施形態では、ステップS6の処理において原稿Pの傾斜角θに応じて内側方向に移動させる距離を可変させるようにしたが本発明はこれに限定されない。原稿Pの傾斜角θに応じて移動させる距離は固定であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
A…複合機、1…操作表示部、2…画像読取部、3…画像データ記憶部、4…通信部、5…画像形成部、6…演算制御部(制御手段,傾斜検出手段)、20…ADF、30…フラットベット読取部、21…プラテンカバー、22…原稿給紙トレイ、23…ピックアップローラー、24…搬送ローラー、25…レジストローラー、26…原稿検出部、26a…第1の原稿位置センサー(傾斜検出手段)、26b…第2の原稿位置センサー(傾斜検出手段)、27…排紙ローラー、28…原稿排紙トレイ、K…読取用開口部、31…第1のプラテンガラス、32…第2プラテンガラス、33…白色基準板、34…原稿サイズ指示板、35…フルレートキャリッジ、35a…光源、35b…第1のミラー、36…ハーフレートキャリッジ、36a…第2のミラー、36b…第3のミラー、37…集光レンズ、38…CCDラインセンサー、39…読取部筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動原稿送り装置によって読取位置に自動給紙される原稿の端部近傍の原稿内画像と、前記自動原稿送り装置によって先行して読取位置に自動給紙される先行原稿と当該先行原稿に続いて自動給紙される後行原稿との間の原稿外画像とをラインセンサーを用いて取得し、前記原稿内画像と前記原稿外画像とに基づいて読取位置における外乱要素の存在が推定された場合には、外乱要素を避けた位置に読取位置を変更して原稿の全体画像を読み取る画像読取装置であって、
前記自動原稿送り装置によって読取位置に自動給紙される原稿の傾斜状態を検出する傾斜検出手段と、
該傾斜検出手段によって検出された原稿の傾斜が所定のしきい値を超える場合には、前記原稿内画像の取得に際して、原稿外の画像が含まれない取得態様で前記原稿内画像を取得する制御手段と
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記取得態様として、読取位置を原稿の端部から内側に変更させることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記ラインセンサーは副走査方向に複数ラインの個別センサーを備え、
前記制御手段は、前記取得態様として、原稿の端部近傍の複数ラインに亘る画像を前記ラインセンサーに読み取らせ、当該複数ラインに亘る画像から原稿の表面画像を抽出して前記原稿内画像とすることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記傾斜検出手段は、
前記自動原稿送り装置において原稿の搬送位置を検出する第1の原稿位置センサーと、
主走査方向において前記第1の原稿位置センサーとは異なる位置に設けられた第2の原稿位置センサーと、
前記第1の原稿位置センサーの検出結果と前記第2の原稿位置センサーの検出結果とに基づいて原稿の傾斜角を算出する演算手段と
を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像読取装置を具備し、該画像読取装置で読み取った画像を記録紙上に画像形成することを特徴とする画像形成装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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