説明

画像読取装置

【課題】搬送ローラを回転させるモータの温度を管理して原稿を読み取る画像読取装置において、原稿に負荷が掛かるのを抑制すること。
【解決手段】複合機では、モータ駆動回路を用いてモータを回転させることでローラを回転させて原稿を搬送し、原稿を読み取る。複合機は、搬送路上に位置する原稿を検出するRセンサと、モータの温度を検出する温度検出部と、CPUとを備える。CPUは、温度検出部が検出した温度が基準温度以上となった時、Rセンサが原稿を検出している場合には、ローラを第1向きに回転させて原稿を排紙トレイに排紙し、Rセンサが原稿を検出していない場合には、搬送ローラを第1向きと逆向きの第2向きに回転させて原稿を原稿トレイに排出するようにモータ駆動回路を制御する。
【選択図】図4

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを用いて搬送ローラを回転させて原稿を搬送し、原稿を読み取る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、原稿を搬送し、搬送中の原稿を読み取る原稿読取装置が知られている。これらの装置では、原稿を搬送する搬送ローラを備えており、モータを用いて搬送ローラを回転させることで原稿を搬送する。
【0003】
従来から、原稿を搬送する際に、搬送ローラを回転させるモータの温度を管理する技術が知られている(例えば特許文献1)。この技術では、原稿の搬送中にモータの温度を測定し、モータの温度が予め定めた上限温度に到達したならば、読取中の原稿については原稿の読み取りを完了して、読取前の原稿については上限温度に到達した状態で原稿の搬送を一定時間停止する。そして、原稿搬送の停止中にモータの温度を測定し、モータの温度が上限温度未満まで下がったならば、原稿の搬送を再開する。これによって、モータの温度が上限温度以上に高くなることが抑制され、温度上昇によりモータが故障及び劣化することが抑制されるという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−289626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、原稿の搬送中にモータの温度を測定し、モータの温度が上限温度に到達した時に読取前である原稿については、上限温度に到達した状態で搬送路に留まり、その姿勢が維持される。そのため、原稿が搬送路のカーブなど、大きく搬送方向が変わる領域に位置していた場合、原稿が搬送路の形状に沿って一定方向に負荷が掛かる。その結果、原稿の搬送が再開された後、排出台に排出された原稿に一方向に丸まるクセがつくという問題が生じていた。
【0006】
本明細書では、搬送ローラを回転させるモータの温度を管理して原稿を読み取る画像読取装置において、原稿に負荷が掛かるのを抑制する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書によって開示される画像読取装置は、原稿を載置する供給台と、搬送ローラを回転させるモータを有し、前記搬送ローラの回転によって前記原稿を、搬送路を通って搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送された原稿が排出される排出台と、前記モータの温度を検出する温度検出部と、前記搬送路上に位置する原稿を検出する位置検出部と、前記位置検出部の検出位置より前記搬送路上の下流側に位置し、前記位置検出部が前記原稿を検出したのに基づいて前記原稿を読み取る読取部と、前記温度検出部が検出した温度が基準温度以上となった時、前記位置検出部が前記原稿を検出している場合には、前記搬送ローラを第1向きに回転させて前記原稿を前記排出台に排出し、前記位置検出部が前記原稿を検出していない場合には、前記搬送ローラを前記第1向きと逆向きの第2向きに回転させて前記原稿を前記供給台に排出するように前記搬送部を制御する制御部と、を備える。
【0008】
また、上記の画像読取装置では、前記基準温度は、前記モータが異常となる異常温度より前記原稿を前記検出位置から前記供給台又は前記排出台に搬送する際の前記モータの温度上昇分低い温度に設定されている構成としても良い。
【0009】
また、上記の画像読取装置では、前記制御部は、前記原稿が前記供給台又は前記排出台に搬送された後、前記温度検出部が検出した温度が前記基準温度未満となった場合、前記原稿の搬送を再開するように前記搬送部を制御する構成としても良い。
【0010】
また、上記の画像読取装置では、更に、前記供給台に載置された原稿を押える原稿押え部を備え、前記制御部は、前記搬送ローラを回転させて前記原稿を前記供給台に排出するように前記搬送部を制御した際、前記原稿押え部による前記原稿の押えを解除するように前記原稿押え部を制御する構成としても良い。
【0011】
また、上記の画像読取装置では、前記供給台では、複数の原稿が上下方向に重ねて載置されており、前記原稿押え部は、前記供給台に載置された原稿を前記供給台に対向する下面と逆側の上面から押えており、搬送部は、前記供給台に載置された原稿を搬送する際、最も上側に載置された原稿から順次搬送しており、更に、前記搬送路の前記供給台に隣接する領域に位置し、前記搬送路に対して出し入れ可能な突起を有する突起部を備え、前記制御部は、前記原稿の押えを解除するように前記原稿押え部を制御した際、前記搬送路に対して前記突起を上向きに出して前記供給台に排出する原稿が前記供給台に載置された原稿の上側に載置されるように前記突起部を制御する構成としても良い。
【0012】
また、上記の画像読取装置では、前記制御部は、前記供給台に複数の原稿が載置された場合、予め定められた規定間隔毎に前記原稿を搬送しており、前記温度検出部が検出した温度が前記基準温度以上となった時、前記搬送路に前記位置検出部に検出されている第1原稿と、前記検出位置に到達していない第2原稿が同時に存在する場合には、前記搬送ローラを第1向きに回転させて前記第1原稿を前記排出台に排出し、その後、前記搬送ローラを第2向きに回転させて前記第2原稿を前記供給台に排出するように前記搬送部を制御する構成としても良い。
【0013】
本明細書によって開示される画像読取装置は、原稿を載置する供給台と、搬送ローラを回転させるモータを有し、前記搬送ローラの回転によって前記原稿を、搬送路を通って搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送された原稿が排出される排出台と、前記モータの温度を検出する温度検出部と、前記搬送路上に位置する原稿を検出する位置検出部と、前記位置検出部の検出位置より前記搬送路上の下流側に位置し、前記位置検出部が前記原稿を検出したのに基づいて前記原稿を読み取る読取部と、前記温度検出部が検出した温度が基準温度以上となった時、前記位置検出部が前記原稿を検出している場合には、前記原稿を前記排出台側に排出する第1向きに前記搬送ローラを回転させ、前記検出部が前記原稿を検出していない場合には、前記原稿を前記供給台に排出する向きであり、前記第1向きと逆向きの第2向きに前記搬送ローラを回転させるように前記搬送部を制御する制御部と、を備え、前記搬送路は、前記位置検出部より前記搬送路上の上流側に、湾曲した搬送路を有し、前記制御部は、前記温度検出部が検出した温度が基準温度以上となった時、前記位置検出部が前記原稿を検出している場合には、前記原稿を前記排出台に排出するように前記搬送ローラを回転させ、前記検出部が前記原稿を検出していない場合には、前記原稿を前記湾曲した搬送路よりも前記供給台側に搬送するように前記搬送部を制御する構成としても良い。
【発明の効果】
【0014】
本明細書によって開示される画像読取装置では、温度検出部を用いて搬送ローラを回転させるモータの温度を検出する。そして、原稿搬送中に温度検出部が検出した温度が基準温度以上となった時であって、位置検出部が原稿を検出していない場合には、原稿を供給台に排出する。この画像読取装置によれば、上記の場合に、位置検出部が検出していない原稿が搬送路に一定期間に亘って留まり、その姿勢が維持されることが抑制され、原稿に負荷がかかるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】複合機1の概略的な断面図
【図2】押え部材48及びピン49を示す図
【図3】複合機1の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図4】実施形態1における読取処理を示すフローチャート
【図5】実施形態1における読取処理を示すフローチャート
【図6】実施形態1における読取処理を示すフローチャート
【図7】読取処理における原稿Gの位置を示す図
【図8】読取処理における原稿Gの位置を示す図
【図9】読取処理におけるモータMの温度を示す図
【図10】実施形態2における読取処理を示すフローチャート
【図11】読取処理における原稿Gの位置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
実施形態1を、図1ないし図9を用いて説明する。
【0017】
1.複合機の機械的構成
図1は、本発明の画像形成装置の一例である複合機1の断面図であり、原稿カバー41を下げた閉姿勢における複合機1の断面図を示す。この複合機1は、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能などを備えた多機能周辺装置である。
【0018】
図1に示すように、複合機1は、本体部2の上方に原稿Gを読み取るための画像読取装置3を備えている。画像読取装置3は、後述する読取部30、原稿自動送り装置(ADF)40を含む。
【0019】
図1に示すように、ADF40は、原稿トレイ(供給台の一例)42、Gセンサ43、Rセンサ(位置検出部の一例)44、搬送路45、各種ローラ(搬送ローラの一例)46、これらを回転駆動する図示しないモータ、排紙トレイ(排出台の一例)47、押え部材48、およびピン(突起の一例)49等を含む。
【0020】
Gセンサ43は、原稿トレイ42に配置されており、原稿トレイ42に原稿Gが載置されているか否かを検出する。Rセンサ44は、搬送路45上に配置されており、搬送路45上にRセンサ44が配置された検出位置P1に原稿Gが存在するか否かを検出する。いずれのセンサ43、44も、原稿Gが存在する場合にONし、原稿Gが存在しない場合にOFFするように設定されている。
【0021】
押え部材48は、原稿トレイ42の上側に配置されており、ローラ46Aを用いて原稿トレイ42に上下方向に重ねて載置される原稿Gを上側から押える。また、押え部材48は、図示しない駆動回路によって、ローラ46Aを上側に移動可能に制御している。押え部材48は、図2に拡大して示すように、当該駆動回路によってローラ46Aを上側に移動させることで、ローラ46Aが原稿Gの上面を押えることを解除する。
【0022】
ピン49は、搬送路45の原稿トレイ42に隣接する領域に配置されているとともに、搬送路45の下側に配置されている。ピン49は、図示しない駆動回路によって、搬送路45の下側から搬送路45に対して出し入れ可能に制御されている。ピン49は、図2に拡大して示すように、当該駆動回路によって原稿トレイ42に載置可能な原稿Gの高さよりもその上端部が高くなるように搬送路45に突出され、搬送路45上にピン49が配置されたピン位置P2に存在する原稿Gを原稿トレイ42に載置された原稿Gより上側に持ち上げる。
【0023】
ADF40は、原稿トレイ42に原稿Gが載置されたことを検知すると、ローラ46を駆動して原稿トレイ42に載置されている原稿Gを搬送路45に搬送する。ローラ46Aは、原稿トレイ42に載置されている原稿Gのうち、最も上側に載置された原稿Gから一枚ずつ搬送路45に搬送し、搬送路45上に位置するプラテンガラス53上を通過させ、排紙トレイ47に排出する。押圧部材35は、プラテンガラス53上を通過する原稿Gがプラテンガラス53から浮かないように、原稿Gをプラテンガラス53に押圧する。
【0024】
読取部30は、CIS(Contact Image Sensor)を用いた、いわゆるCIS方式である。読取部30は、図1に示すように、プラテンガラス53上を通過する原稿Gを読み取る際に、搬送路45において検出位置P1より下流側に位置する読取位置P3において原稿Gを読み取る。読取部30は、プラテンガラス53上を通過する原稿Gを読み取る場合、上流側に配置されたRセンサ44が原稿Gを検出してから、原稿Gが搬送路45に沿って検出位置P1と読取位置P3の間を搬送される時間である規定時間T1後に原稿Gの読み取りを開始する。
【0025】
読取部30は、複数の受光素子が図1の紙面垂直方向に直線状に配列されているリニアイメージセンサ33、RGB3色の発光ダイオードなどで構成される光源31、原稿Gで反射された光源31からの反射光をリニアイメージセンサ33の各受光素子に結像させるロッドレンズアレイ32、これらが搭載されるキャリッジ34、およびキャリッジ34を搬送する図示しない搬送機構を含む。リニアイメージセンサ33は、受光素子に結像した反射光の輝度や色度を検出し、原稿Gの画像に基づくデータを生成する。なお、読取部30はCIS方式に限られず、CCD(電荷結合素子)イメージセンサを用いた、いわゆるCCD方式であってもよい。
【0026】
さらに、複合機1には、各種のボタンからなり、ユーザからの操作指令を受け付ける操作部11、複合機1の状態を表示する液晶ディスプレイからなる表示部12が設けられている(図3参照)。
【0027】
2.複合機の電気的構成
図3は、複合機1の電気的構成を概略的に示すブロック図である。図3に示すように、複合機1は、複合機1の各部を制御するASIC(特定用途向け集積回路)10を含む。ASIC10は、中央処理装置(以下、CPU)20、ROM24、RAM26を備え、これらにバス28を介して操作部11、表示部12、ローラ46を駆動するモータM及びモータMを駆動するモータ駆動回路(搬送部の一例)13、温度検出部14、押え部材48を駆動する押え部材駆動回路(原稿押え部の一例)15、ピン49を駆動するピン駆動回路(突起部の一例)16、デバイス制御部25、アナログフロントエンド(以下、AFE)27、Gセンサ43、Rセンサ44などが接続されている。
【0028】
ROM24には、複合機1の動作を制御するための各種のプログラムが記憶されており、CPU20は、ROM24から読み出したプログラムに従って、制御部21、温度検出部14等として機能し、各部の制御を行う。
【0029】
モータMは、ローラ46を駆動するモータであり、モータ駆動回路13によって駆動されている。モータMはステッピングモータであり、モータ駆動回路13は、CPU20からの命令を受けると、モータMにパルス信号を入力する。モータMは、モータ駆動回路13から入力されたパルス数Xに応じてローラ46を駆動する。モータ駆動回路13は、搬送路45を搬送される原稿Gが排紙トレイ47側に搬送される第1向きD1(図1参照)にローラ46が回転するようにモータMを駆動可能であるとともに、搬送路45を搬送される原稿Gが原稿トレイ42側に搬送される第2向きD2(図1参照)にローラ46が回転するようにモータMを駆動可能である。
【0030】
温度検出部14として機能するCPU20は、モータMの温度Yを検出する。図3に示すように、ROM24には基準温度YKが記憶されており、CPU20は、検出したモータMの温度を基準温度YKと比較する。
【0031】
基準温度YKは、以下のように決定される温度である。モータMは、モータ駆動回路13からパルス信号が入力されてローラ46を駆動することで、温度Yが上昇する。モータMには、温度上昇による故障を防止するために使用上限温度YMAXが設定されている。モータMが、"搬送路45を搬送される原稿Gを検出位置P1から原稿トレイ42まで搬送するまで"及び"読取部30で読み取られる前の原稿Gを原稿トレイ42側に搬送する際"とに要する温度上昇をΔYとする。すると、基準温度YKは、このΔYを用いて以下の条件に設定されている(図9参照)。
YK=YMAX−ΔY
【0032】
デバイス制御部25は、読取部30に接続されており、CPU20からの命令に基づいて、光源31の点灯、及びリニアイメージセンサ33による読取データの読み取りを制御する信号を読取部30に送信する。読取部30で読み取られたアナログデータである読取データは、A/D変換回路を有するAFE27でデジタル化処理された後に、RAM26に記憶される。
【0033】
3.読取処理
次に、図4ないし図9を参照して、ADF40を用いて複数枚の原稿Gを読み取る場合の、CPU20における処理について説明する。
【0034】
図4は、CPU20が所定のプログラムに従って実行する読取処理のフローチャートを示す。CPU20は、ユーザによって複合機1の原稿トレイ42に原稿Gが載置され、操作部11を介して読取指示が入力されると、処理を開始する。
CPU20は、処理を開始すると、原稿Gの搬送を開始する(S1)。また、CPU20は、原稿Gの搬送開始からモータ駆動回路13に入力されたパルス数Xを計数するとともに、原稿Gの搬送開始からの経過時間Zを計時する。
【0035】
また、CPU20は、パルス数X及び経過時間Zを用いてモータMの温度Yの検出を開始する。温度検出部14として機能するCPU20は、CPU20は、パルス数Xと経過時間Zから、モータMが経過時間Zの間に何回転したかに基づいてモータMの温度Yを推定することで検出している。CPU20は、原稿Gの搬送開始後、一定時間毎にモータMの温度Yを検出する。
【0036】
CPU20は、原稿Gの搬送を開始すると、モータ駆動回路13を用いてローラ46を第1向きD1に回転させる。これによって、原稿トレイ42に載置されていた原稿Gのうち、最も上側に載置されていた原稿Gが搬送路45に搬送される。原稿トレイ42の最も上側に載置されていた原稿Gが搬送路45に搬送された後に、一定の間隔(規定間隔の一例)ΔTをおいて、次に上側に載置されていた原稿Gがローラ46によって搬送路45に搬送される。そして、原稿トレイ42に原稿Gが存在しなくなるまで、原稿トレイ42に載置されていた原稿Gは、一定の間隔ΔTをおいて、連続して搬送路45に搬送される。
【0037】
CPU20は、原稿Gの搬送を開始すると、Rセンサ44を用いて搬送路45を搬送される原稿Gの位置を確認する(S4)。CPU20は、原稿Gの搬送方向先端が検出位置P1に到達し、Rセンサ44がOFFからONに切り替わったことを検出した場合(S4:YES)、S6の処理に進む。S6の処理において、CPU20は、モータMの温度Yを基準温度YKと比較し、温度Yが基準温度YKよりも低い場合(S6:NO)、S8の読取処理を実行する。
【0038】
図5に示すように、読取処理において、CPU20は、Rセンサ44がOFFからONに切り替わってから規定時間T1後、読取部30を用いて原稿Gの読み取りを開始する(S101)。CPU20は、原稿Gの読み取りにおいて、Rセンサ44の状態を監視しており(S102:NO)、Rセンサ44がOFFからONに切り替わったことを検出してから規定時間T1後、読取部30を用いて原稿Gの読み取りを終了する(S103)。
【0039】
CPU20は、S8の読取処理の終了後、Gセンサ43及びRセンサ44の状態を確認する(S10)。CPU20は、両センサ43、44がOFFである場合(S10:YES)、原稿トレイ42及び搬送路45に読み取りが終了していない原稿Gが存在しないと判断し、当該読取処理において読み取りを終了した原稿Gを排紙トレイ47に排紙して原稿Gの搬送を終了し(S14)、処理を終了する。
【0040】
また、CPU20は、いずれか一方のセンサがONである場合(S10:NO)、原稿トレイ42及び搬送路45の少なくとも一方に読み取りを終了していない原稿Gが存在していると判断する。CPU20は、S8の読取処理中に検出したモータMの温度Yが基準温度YKに到達したか否かを確認する(S12)。CPU20は、図7に示す原稿Gの読取処理中に、モータMの温度Yが基準温度YKに到達していない場合(S12:NO)、読み取りが終了していない原稿Gの読み取りを継続する。また、CPU20は、当該読取処理中に、モータMの温度Yが基準温度YKに到達した場合(S12:YES)、後述して説明するS18の逆搬送処理S18に進む。
【0041】
一方、CPU20は、S6の処理において、モータMの温度Yが基準温度YK以上である場合(S6:YES)、S81の読取処理を実行する。尚、S81の読取処理は、図5を用いて説明したS8の読取処理と同一の処理であり、重複した説明を省略する。
【0042】
CPU20は、S81の読取処理の終了後、原稿Gが搬送路45に沿って読取位置P3と排紙トレイ47の間を搬送される時間である規定時間T2に亘って、ローラ46を第1向きD1に回転させる(S20)。これによって、S81の読取処理において読み取りを終了した原稿Gが排紙トレイ47に排紙される。
【0043】
CPU20は、S81の読取処理の終了から規定時間T2経過後、Rセンサ44の状態を確認する(S22)。CPU20は、Rセンサ44がOFFである場合(S22:NO)、原稿トレイ42及び搬送路45に読み取りが終了していない原稿Gが存在しないと判断し、搬送を終了して(S14)、処理を終了する。搬送を終了することで、基準温度YK以上となっていたモータMの温度Yが、放熱により冷却され、モータMの温度Yが、モータMの使用上限温度YMAXを超えて上昇することが抑制される。
【0044】
また、CPU20は、Rセンサ44がONである場合(S22:YES)、後述して説明するS18の逆搬送処理に進む。
【0045】
一方、CPU20は、S4の処理において、原稿Gの搬送方向先端が検出位置P1に到達しておらず、Rセンサ44がOFFしている場合(S4:NO)、S16の処理に進む。S16の処理において、CPU20は、モータMの温度Yを基準温度YKと比較し、温度Yが基準温度YKよりも低い場合、S4からの処理を繰り返す。
【0046】
また、CPU20は、S16の処理において、モータMの温度Yが基準温度YK以上である場合(S16:YES)、S18の逆搬送処理を実行する。
【0047】
図6に示すように、逆搬送処理において、CPU20は、モータ駆動回路13を用いてローラ46を第1向きD1の回転から第2向きD2の回転に切り換える(S200)。この際、CPU20は、図8に示すように、押え部材駆動回路15を制御し、押え部材48及びローラ46Aによる原稿トレイ42に載置された原稿Gの押えを解除する(S202)。また、CPU20は、ピン駆動回路16を制御し、ピン49を搬送路45に突出させる(S204)。これによって、検出位置P1とピン位置P2の間に位置する原稿Gは、図2に示したように、原稿トレイ42に載置されている原稿Gの上側に排紙される(S206)。
【0048】
CPU20は、原稿Gを原稿トレイ42に排紙後、搬送を停止する(S208)。CPU20は、モータ駆動回路13を用いてモータMにパルス信号を入力するのを停止する。これにより、モータMに入力されたパルス数XによってモータMの温度Yが上昇するのが防止される。また、CPU20は、予め定められた規定時間T3に亘って搬送停止状態を継続する(S210)。これにより、モータMが放熱によって冷却されモータMの温度Yが低下する。
【0049】
CPU20は、規定時間T2後、S212の処理に進む。S212の処理において、CPU20は、モータMの温度Yを基準温度YKと比較し、温度Yが基準温度YK以上である低い場合(S212:NO)、S210、212の処理を繰り返す。一方、CPU20は、温度Yが基準温度YKよりも低い場合(S212:NO)、逆搬送処理を終了する。
【0050】
CPU20は、S18の逆搬送処理の終了後、S2からの処理を繰り返す。CPU20は、モータ駆動回路13を用いてローラ46を第1向きD1に回転させる。これによって、原稿トレイ42に排紙された原稿Gが再び、搬送路45へと搬送される。
【0051】
4.本実施形態の効果
(1)本実施形態の複合機1では、温度検出部14を用いてローラ46を回転させるモータMの温度Yを検出する。そして、原稿搬送中に温度検出部14が検出した温度Yが基準温度YK以上となった時であって、Rセンサ44が原稿Gを検出していない場合、つまりRセンサ44がOFFしている場合には、原稿Gを原稿トレイ42に排出する。この複合機1によれば、上記の場合に、Rセンサ44が検出していない原稿Gが搬送路45に一定期間に亘って留まり、その姿勢が維持されることが抑制される。図8のように、原稿搬送中に温度検出部14が検出した温度Yが基準温度YK以上となった時に、回転半径の比較的大きいローラ46Bに原稿Gが近接している場合、その姿勢が維持されると、原稿Gに負荷がかかりやすく、原稿Gが変形しやすい。本実施形態の複合機1によれば、原稿Gに負荷がかかるのを抑制することができ、原稿Gが変形してしまうことが抑制される。
【0052】
(2)本実施形態の複合機1では、モータMの温度Yが基準温度YK以上となった後、モータMを用いてローラ46を回転させ、原稿Gを排出する。特に、Rセンサ44が原稿Gを検出していない場合には、モータMを通常の駆動方向と逆搬送方向である第2向きD2に回転させて原稿Gを原稿トレイ42に排出する。本実施形態では、モータMの温度Yが基準温度YKとなった後において、モータMを第2向きD2に回転させることがあるため、従来技術のように、使用上限温度YMAXを基準として制御を行うと、モータMの温度が使用上限温度YMAXを超えてしまい、モータMが故障してしまうことがある。本実施形態の複合機1では、図9に示すように、基準温度YKがモータMの使用上限温度YMAXより温度上昇ΔY分低い温度に設定されている。そのため、モータMの温度Yが基準温度YKとなった後において、原稿Gを原稿トレイ42に排出するためにモータMを第2向きに回転させた場合でも、モータMの温度Yが使用上限温度YMAXに達することが抑制され、モータMの故障及び劣化を確実に防止することができる。
【0053】
(3)本実施形態の複合機1では、複数枚の原稿Gを連続して読み取る途中に、モータMの温度Yが基準温度YK以上となった場合でも、ユーザ等により再び指示がされることなく原稿Gの搬送を再開するので、装置の操作性を向上させることができる。
【0054】
(4)本実施形態の複合機1では、原稿Gを原稿トレイ42に排出する際に、押え部材48及びローラ46Aによる原稿Gの押えを解除する。これによって、当該原稿Gがローラ46間において、或はローラ46と原稿トレイ42に載置されている原稿Gとの間で干渉してジャムとなることを抑制することができる。
【0055】
(5)本実施形態の複合機1では、原稿Gを原稿トレイ42に排出する際に、搬送路45の下側からピン49を突出させ、原稿トレイ42に排出する原稿Gが原稿トレイ42に載置された原稿Gの上側に載置されるようにする。そのため、搬送停止後、原稿Gの搬送を再開した際、ローラ46Aは原稿トレイ42に載置された原稿Gのうち、原稿トレイ42に排出された原稿Gから搬送を開始する。この複合機1によれば、複数の原稿Gを読み取る途中に、モータMの温度Yが基準温度YK以上となり、原稿トレイ42に原稿Gが排紙される場合でも、原稿Gの読み取り順が変わってしまうことが抑制される。
【0056】
(6)本実施形態の複合機1では、原稿トレイ42に載置されていた原稿Gは、一定の間隔ΔTをおいて、連続して搬送路45に搬送される。そのため、図7に示すように、先に搬送路45に搬送された原稿(第1原稿に相当)G1が検出位置P1を通過する前に次の原稿(第2原稿に相当)G2が搬送路45に搬送される。この結果、複合機1を用いて複数の原稿Gを読み取る場合、Rセンサ44により検出されている原稿G1と、Rセンサ44により検出されていない原稿G2とが搬送路45に同時に存在することがある。
【0057】
本実施形態の複合機1では、S6の処理のおいて、モータMの温度Yが基準温度YK以上である場合、S81の読取処理を実行した後に、規定時間T2に亘ってローラ46を第1向きD1に回転させ、原稿G1を排紙トレイ47に排紙する。その後、Rセンサ44によって原稿G2の存在が確認された場合、S18の逆搬送処理において、ローラ46を第2向きD2に回転させ、原稿G2を排紙トレイ47に排紙する。これによって、複合機1を用いて複数の原稿Gを読み取る場合、Rセンサ44により検出されている原稿G1とRセンサ44により検出されていない原稿G2を、異なるトレイ42、47に排紙することができる。
【0058】
<実施形態2>
実施形態2を、図10または図11を用いて説明する。本実施形態では、逆搬送処理において、ローラ46を第2向きD2に回転させて原稿Gを原稿トレイ42側に搬送するものの、原稿トレイ42まで搬送しない点で、実施形態1と異なる。以下の説明では、実施形態1と同一の内容については重複した記載を省略する。
【0059】
1.読取処理
本実施形態では、図11に示すように、逆搬送処理において、CPU20は、モータ駆動回路13を用いてローラ46を第2向きD2に回転させ、検出位置P1とピン位置P2の間に位置する原稿Gを、ローラ46Bよりも上流側に搬送し(S207)、図11に示す位置で原稿Gを留める。
【0060】
2.本実施形態の効果
(1)ローラ46Bは、その外周の約半周に亘って搬送路45が設定されている。搬送路45は、ローラ46Bの上側とローラ46Bの下側において原稿Gの搬送向きが略逆向きとなり、湾曲している。つまり、搬送路45のうち、ローラ46Bに接するように設定されている部分が湾曲した搬送路45ということができる。
【0061】
(2)本実施形態の複合機1では、温度検出部14を用いてローラ46を回転させるモータMの温度Yを検出する。そして、原稿搬送中に温度検出部14が検出した温度Yが基準温度YK以上となった時であって、Rセンサ44が原稿Gを検出していない場合、つまりRセンサ44がOFFしている場合には、原稿Gを湾曲した搬送路45の上流側まで搬送する。この複合機1によれば、上記の場合に、Rセンサ44が検出していない原稿Gがローラ46Bに接した状態で留まり、その姿勢が維持されることが抑制され、原稿Gに負荷が掛かるのを抑制することができる。
【0062】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、複合機1を用いて説明を行ったが、本発明はこれに限られない。例えば、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能の少なくとも1つの機能を備えた装置であっても良い。
【0063】
(2)上記実施形態では、Rセンサ44を用いて搬送路45を搬送される原稿Gの位置を検出する例を用いて説明を行ったが、必ずしもRセンサ44は必要ない。例えば、搬送路45を搬送される原稿Gの搬送速度が解かっており、原稿トレイ42からの搬送必要時間に基づいて搬送路45を搬送される原稿Gの位置を特定しても良い。
【0064】
(3)上記実施形態では、モータMの温度Yを検出する際に、モータMに入力されるパルス信号のパルス数X、及び前回モータMの温度Yを検出してからの経過時間Zに基づいてモータMの温度Yを検出する例を用いて説明を行ったが、本発明はこれに限られない。例えば、モータMの温度を測定する温度計を備えていても良い。
【符号の説明】
【0065】
1:複合機、2:本体部、3:画像読取装置、13:モータ駆動回路、14:温度検出部、15:部材駆動回路、16:ピン駆動回路、20:CPU、21:制御部、24:ROM、25:デバイス制御部、26:RAM、30:読取部、42:原稿トレイ、43:Gセンサ、44:Rセンサ、45:搬送路、46:ローラ、47:排紙トレイ、48:押え部材、49:ピン、G:原稿、M:モータ、P1:検出位置、P2:ピン位置、P3:読取位置、X:パルス数、Y:モータの温度、YK:基準温度、YMAX:使用上限温度、Z:経過時間、ΔT:一定の間隔、ΔY:温度上昇

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を載置する供給台と、
搬送ローラを回転させるモータを有し、前記搬送ローラの回転によって前記原稿を、搬送路を通って搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送された原稿が排出される排出台と、
前記モータの温度を検出する温度検出部と、
前記搬送路上に位置する原稿を検出する位置検出部と、
前記位置検出部の検出位置より前記搬送路上の下流側に位置し、前記位置検出部が前記原稿を検出したのに基づいて前記原稿を読み取る読取部と、
前記温度検出部が検出した温度が基準温度以上となった時、前記位置検出部が前記原稿を検出している場合には、前記搬送ローラを第1向きに回転させて前記原稿を前記排出台に排出し、前記位置検出部が前記原稿を検出していない場合には、前記搬送ローラを前記第1向きと逆向きの第2向きに回転させて前記原稿を前記供給台に排出するように前記搬送部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置であり、
前記基準温度は、前記モータが異常となる異常温度より前記原稿を前記検出位置から前記供給台又は前記排出台に搬送する際の前記モータの温度上昇分低い温度に設定されていること、
を特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の画像読取装置であって、
前記制御部は、前記原稿が前記供給台又は前記排出台に搬送された後、前記温度検出部が検出した温度が前記基準温度未満となった場合、前記原稿の搬送を再開するように前記搬送部を制御すること、
を特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の画像読取装置であって、
更に、
前記供給台に載置された原稿を押える原稿押え部を備え、
前記制御部は、前記搬送ローラを回転させて前記原稿を前記供給台に排出するように前記搬送部を制御した際、前記原稿押え部による前記原稿の押えを解除するように前記原稿押え部を制御すること、
を特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像読取装置であって、
前記供給台では、複数の原稿が上下方向に重ねて載置されており、前記原稿押え部は、前記供給台に載置された原稿を前記供給台に対向する下面と逆側の上面から押えており、搬送部は、前記供給台に載置された原稿を搬送する際、最も上側に載置された原稿から順次搬送しており、
更に、
前記搬送路の前記供給台に隣接する領域に位置し、前記搬送路に対して出し入れ可能な突起を有する突起部を備え、
前記制御部は、前記原稿の押えを解除するように前記原稿押え部を制御した際、前記搬送路に対して前記突起を上向きに出して前記供給台に排出する原稿が前記供給台に載置された原稿の上側に載置されるように前記突起部を制御すること、
を特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5に記載の画像読取装置であって、
前記制御部は、前記供給台に複数の原稿が載置された場合、予め定められた規定間隔毎に前記原稿を搬送しており、前記温度検出部が検出した温度が前記基準温度以上となった時、前記搬送路に前記位置検出部に検出されている第1原稿と、前記検出位置に到達していない第2原稿が同時に存在する場合には、前記搬送ローラを第1向きに回転させて前記第1原稿を前記排出台に排出し、その後、前記搬送ローラを第2向きに回転させて前記第2原稿を前記供給台に排出するように前記搬送部を制御すること、
を特徴とする画像読取装置。
【請求項7】
原稿を載置する供給台と、
搬送ローラを回転させるモータを有し、前記搬送ローラの回転によって前記原稿を、搬送路を通って搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送された原稿が排出される排出台と、
前記モータの温度を検出する温度検出部と、
前記搬送路上に位置する原稿を検出する位置検出部と、
前記位置検出部の検出位置より前記搬送路上の下流側に位置し、前記位置検出部が前記原稿を検出したのに基づいて前記原稿を読み取る読取部と、
前記温度検出部が検出した温度が基準温度以上となった時、前記位置検出部が前記原稿を検出している場合には、前記原稿を前記排出台側に排出する第1向きに前記搬送ローラを回転させ、前記検出部が前記原稿を検出していない場合には、前記原稿を前記供給台に排出する向きであり、前記第1向きと逆向きの第2向きに前記搬送ローラを回転させるように前記搬送部を制御する制御部と、
を備え、
前記搬送路は、前記位置検出部より前記搬送路上の上流側に、湾曲した搬送路を有し、
前記制御部は、前記温度検出部が検出した温度が基準温度以上となった時、前記位置検出部が前記原稿を検出している場合には、前記原稿を前記排出台に排出するように前記搬送ローラを回転させ、前記検出部が前記原稿を検出していない場合には、前記原稿を前記湾曲した搬送路よりも前記供給台側に搬送するように前記搬送部を制御すること、
を特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−231402(P2012−231402A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99728(P2011−99728)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】