画像送信装置及びそれを備えた画像伝送システム
【課題】画像送信装置において、画質の低下を抑制しつつ、低消費電力の無線通信方式にも対応する程度に、低ビットレート化を図る。
【解決手段】輝度の1階時間微分値dY/dt、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2、Iフレームを挿入した後の経過時間t等から画質の劣化を予測する。画質の劣化が予測されたとき、画像情報の送信に用いる周波数帯域を一時的に拡張して、画像情報にIフレームを挿入する。画質の劣化が予測されないとき、Pフレームを送信する。
【解決手段】輝度の1階時間微分値dY/dt、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2、Iフレームを挿入した後の経過時間t等から画質の劣化を予測する。画質の劣化が予測されたとき、画像情報の送信に用いる周波数帯域を一時的に拡張して、画像情報にIフレームを挿入する。画質の劣化が予測されないとき、Pフレームを送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像した画像情報を送信する画像送信装置等の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像情報を圧縮して送信する場合に、画像の変化領域を抽出し、送信する技術が知られている。近年、画像情報を圧縮して送信する技術は、家屋内外の要所に配設されたカメラで撮像された画像を家屋内のモニタで表示可能とするいわゆるホームセキュリティシステムへの応用が検討されている。ホームセキュリティシステムにおいては、カメラからモニタに画像情報を送信する際に、無線LANの他にもBluetooth、ZigBee、特定小電力無線など低消費電力の無線方式を適用する技術が検討されている。
【0003】
これらの低消費電力の無線通信方式は、無線LANと比較すると、電力を抑えた分通信信頼性を確保するため、通信に使用できる周波数帯域は狭い。そのため、ホームセキュリティシステムにこれら低消費電力の無線通信を適用する場合には、画像情報を圧縮することにより、送信に必要なビットレートを少なくすることが要求される。
【0004】
ホームセキュリティシステムの用途において良好な動画性能を得るためには、QVGA相当の解像度(320×240ドット)では、15〜30fps程度以上のフレームレートが望ましい。また、VGA相当の解像度(640×480ドット)でも、7.5〜15fps程度以上のフレームレートが望ましい。ところが、上記解像度とフレームレートの組み合わせによる画像情報を送信する場合であっても、低消費電力の無線通信方式で伝送可能なビットレートを超えることがある。
【0005】
画像情報を圧縮する技術としては、特許文献1に示されるH.264やMPEG等の規格が知られている。このような符号化方式においては、フレーム内の情報のみを使用して符号化するIフレーム(Intra-coded Frame)と直前のフレームとの差分情報を符号化するPフレーム(Predictive Frame)によって、画像情報が構成される。Iフレームは、所定時間毎に又はシーンチェンジの際に挿入される。
【0006】
図10は、所定時間毎にIフレームの画像情報を挿入して、画質の低下を抑制する例を示す。この例においては、情報量の多いIフレームを定期的に挿入するために、画像情報の送信に要する周波数帯域を広く確保しておく必要があり、画像情報の圧縮率が低下する。従って、低消費電力の無線通信方式に対応できない虞がある。
【0007】
一方、ホームセキュリティシステムにおいては、画像を撮像するカメラは固定されているため、シーンチェンジが発生しない。従って、最初にIフレームの画像情報を送信した後は、Pフレームの画像情報のみを送信すればよいとする考え方もある。
【0008】
図11は、カメラが固定されていることを前提に、最初にIフレームの画像情報を送信し、その後Pフレームの画像情報のみを送信する例を示す。この例においては、一旦Iフレームの画像情報を送信した後は、情報量の少ないPフレームの画像情報のみを送信すればよいので、画像情報の圧縮率が高められ、低消費電力の無線通信方式に対応する狭い周波数帯域で画像情報を送信することも可能ではある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−112852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図11に示した例においては、カメラの視野内に訪問者が現れた場合のように、撮像画像内の被写体の動きが激しくなると、Iフレームの画像との差が大きくなるため、画質が劣化する虞がある。また、Pフレームを構成する差分情報の量が大きくなるため、画像情報の圧縮率が低下することが懸念される。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、実用上問題となる画質の低下を抑制しつつ、低消費電力の無線通信方式にも対応する程度に、低ビットレート化を図ることができる画像送信装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の画像送信装置は、画像情報を送信する送信手段と、画質の劣化を予測する画質劣化予測手段と、前記画質劣化予測手段によって画質の劣化が予測されたとき、画像情報の送信に用いる周波数帯域を一時的に拡張する帯域拡張手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
この発明において、前記画質劣化予測手段によって画質の劣化が予測されたとき、送信する画像情報にIフレームを挿入するIフレーム挿入手段を備えることが好ましい。
【0014】
この発明において、前記Iフレーム挿入手段によって挿入されたIフレームの画像情報が送信された後、Pフレームの画像情報の送信に用いる周波数帯域を縮小する帯域縮小手段を備えることが好ましい。
【0015】
この発明において、前記帯域拡張手段は、前記画質劣化予測手段によって予測された画質の劣化の度合いに応じて、周波数帯域を拡張する期間を変更することが好ましい。
【0016】
この発明において、前記帯域拡張手段は、前記画質劣化予測手段によって予測された画質の劣化の度合いに応じて、拡張する周波数帯域の帯域幅を変更することが好ましい。
【0017】
この発明において、前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の1階時間微分値が第1閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することが好ましい。
【0018】
この発明において、前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の1階時間微分値と、Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする単調増加関数値と、の積が第2閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することが好ましい。
【0019】
この発明において、前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の2階時間微分値が第3閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することが好ましい。
【0020】
この発明において、前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の2階時間微分値と、Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする単調増加関数値と、の積が第4閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することが好ましい。
【0021】
この発明において、前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の1階時間微分値と、該輝度の2階時間微分値と、の積が第5閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することが好ましい。
【0022】
この発明において、前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の1階時間微分値と、該輝度の2階時間微分値と、Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする単調増加関数値と、の積が第6閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することが好ましい。
【0023】
この発明において、前記画質劣化予測手段は、Iフレームを挿入した後の経過時間が第7閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することが好ましい。
【0024】
この発明において、前記画質劣化予測手段は、Iフレームを挿入した後の経過時間が第7閾値未満であるとき、画質が劣化していないと判断することが好ましい。
【0025】
この発明において、前記第1閾値乃至前記第7閾値は、任意に設定可能であることが好ましい。
【0026】
この発明において、前記単調増加関数は、Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする一次関数よりも関数値の増加が大きいことが好ましい。
【0027】
この発明において、前記単調増加関数は、Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする一次関数よりも関数値の増加が小さいことが好ましい。
【0028】
この発明において、前記画質劣化予測手段は、送信する画像情報から所定の間隔で抽出したフレームの画像の輝度について、前記1階時間微分値及び/又は前記2階時間微分値を算出することが好ましい。
【0029】
また、本発明の画像伝送システムは、上記画像送信装置を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の画像送信装置によれば、画質劣化予測手段によって画質の劣化が予測されたとき、帯域拡張手段によって画像情報の送信に用いる周波数帯域が一時的に拡張される。従って、一時的に拡張された周波数帯域を用いて送信する画像情報の情報量を増やすことにより、画像の劣化を抑制することができる。これにより、画質の低下を抑制しつつ、低消費電力の無線通信方式にも対応する程度に、低ビットレート化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態による画像送信装置を備えたホームセキュリティ向け無線画像音声伝送システムのブロック図。
【図2】同画像音声送信装置から送信される画像情報のフレーム構成、情報量の推移及び送信に用いられる周波数帯域を示す図。
【図3】カメラによって撮像された画像の輝度の1階時間微分値の波形の一例を示す図。
【図4】Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする単調増加関数の例を示す図。
【図5】輝度の1階時間微分値と、単調増加関数値との積の波形を示す図。
【図6】カメラによって撮像された画像の輝度の2階時間微分値の波形を示す図。
【図7】輝度の2階時間微分値と、単調増加関数値との積の波形を示す図。
【図8】輝度の1階時間微分値と、輝度の2階時間微分値との積の波形を示す図。
【図9】輝度の1階時間微分値と、輝度の2階時間微分値と、単調増加関数値との積の波形を示す図。
【図10】従来の符号化方式による画像音声送信装置から送信される画像情報のフレーム構成、情報量の推移及び送信に用いられる周波数帯域を示す図。
【図11】従来の別の画像音声送信装置から送信される画像情報のフレーム構成、情報量の推移及び送信に用いられる周波数帯域を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施形態による画像送信装置を備えたホームセキュリティ向けの無線画像音声伝送システム(画像伝送システム)について図面を参照して説明する。図1は、無線画像音声伝送システム1を示す。無線画像音声伝送システム1は、屋外又は屋内に設置される画像音声送信装置10と、屋内に設置される画像音声受信装置20等によって構成される。監視対象場所が複数存在する場合は、複数の画像音声送信装置10が設けられる。
【0033】
画像音声送信装置10は、カメラ(撮像手段)11によって撮像した画像情報及びマイク12によって集音した音声情報を送信する。画像音声受信装置20は、画像音声送信装置10から送信された画像情報及び音声情報を受信して、モニタ24及びスピーカ25によって再生する。これにより、訪問者や不審者の画像や音声を確認でき、これらの情報は、必要に応じて、画像音声受信装置20等に保存される。画像音声送信装置10と画像音声受信装置20とは、例えば低消費電力の無線通信方式の一つである特定小電力無線を用いて通信される。また、画像音声送信装置10と画像音声受信装置20は、必要に応じて双方向に通信可能に構成され、画像情報及び音声情報の他、各種の制御信号が送受信される。
【0034】
画像音声送信装置10は、カメラ11と、マイク12と、メモリ(記憶手段)13と、CPU(画質劣化予測手段、帯域拡張手段、Iフレーム挿入手段、帯域縮小手段)14と、送信部(送信手段)15と、タイマ(時間計数手段、時刻計数手段)16と、操作スイッチ(操作入力手段)17と、電池(図示せず)等を備える。カメラ11は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子(Image Sensor)を有し、画像音声送信装置10の周辺の被写体を撮像して電子的な画像情報に変換して出力する。マイク12は、画像音声送信装置10の周辺の音声を集音して電子的な音声情報に変換して出力する。メモリ13は、カメラ11から入力された画像情報の他、CPU14の動作に必要な情報を記憶する。CPU14は、画像音声送信装置10の各部を制御する。例えば、CPU14は、送信しようとする画像の劣化を予測して、送信部15が画像情報を送信する際に使用される周波数帯域を拡張/縮小制御する。送信部15は、カメラ11から入力された画像情報及びマイク12から入力された音声情報の他、各種の信号を特定小電力無線にて送信する。特定小電力無線のような低消費電力の無線通信方式は、送信に要する電力を抑制できるので、電池の消耗を抑制し、その交換サイクルを長くすることができる。
【0035】
タイマ16は、時間を計数する。タイマ16は、基準となる時刻を設定することにより、時刻を計数する時計としても機能する。操作スイッチ17は、ユーザ又は訪問者によって操作される。操作スイッチ17は、例えば、屋外のユーザ又は訪問者と屋内のユーザとが無線画像音声伝送システム1を介して会話をする際に操作される。操作スイッチ17が操作されると、その旨の信号がCPU14に入力され、送信部(送信手段)15から画像音声受信装置20に各種の信号が送信される。
【0036】
画像音声受信装置20は、受信部(受信手段)21と、メモリ(記憶手段)22と、CPU(画像再生手段)23と、モニタ24と、スピーカ25等を備える。受信部21は、送信部15から送信された画像情報及び音声情報の他、各種の信号を受信する。メモリ22は、受信部21によって受信された画像情報の他、CPU23の動作に必要な情報を記憶する。CPU23は、画像音声受信装置20の各部を制御する。モニタ24は、受信部21によって受信された画像情報を表示する。スピーカ25は、受信部21によって受信された音声情報を再生する。
【0037】
図2は、画像音声送信装置10から送信される画像情報のフレーム構成、情報量の推移及び送信に用いられる周波数帯域を示す。画像情報は、フレーム内の情報のみで符号化され間欠的に挿入される複数のIフレームと、直前のフレームとの差分情報で符号化されるPフレームによって構成される。Iフレームが送信されるとき、画像情報の情報量が一時的に増加するので、画像音声送信装置10は、送信部15が画像情報の送信に用いる周波数帯域を一時的に拡張する。Iフレームの画像情報が送信された後、Pフレームの画像情報が送信されるとき、画像情報の情報量が減少するので、画像音声送信装置10は、送信部15が画像情報の送信に用いる周波数帯域を元通りに縮小する。送信部15が画像情報を送信する際に用いる周波数帯域の拡張/縮小は、CPU14によって制御される。CPU14は、送信する画像の輝度の変化やIフレームを挿入した後の経過時間等に基づいて画質の劣化を予測し、その劣化の度合いに応じて周波数帯域の帯域幅を動的に変更する。そして、変更した帯域幅に応じて画像情報にIフレームを適宜挿入し、送信部15を介して送信させる。なお、Iフレームを挿入した後の経過時間は、タイマ16によって計数される。
【0038】
周波数帯域を拡張する期間の長さや帯域幅は、Iフレームの情報量(ビットレート)や、画質の劣化度合いに応じて定められる。例えば、CPU14は、画質の劣化度合いが大きいと予測したとき、周波数帯域を拡張する期間が長くなるように送信部15を制御する。また、画質の劣化度合いが大きいと予測したとき、拡張する周波数帯域の帯域幅が大きくなるように送信部15を制御する。これらの制御によって、より情報量の多いIフレームの画像情報を送信でき、画質の劣化を抑制できる。
【0039】
一方、CPU14は、画質の劣化度合いが小さいと予測したとき、周波数帯域を拡張する期間が短くなるように送信部15を制御する。また、画質の劣化度合いが小さいと予測したとき、拡張する周波数帯域の帯域幅が小さくなるように送信部15を制御する。
【0040】
画質の劣化度合いは、例えば、後述する画質の劣化予測の手法において算出した値、又はこの算出した値が所定の閾値を超える頻度に基づいて予測できる。
【0041】
以下、図3乃至図9を参照して、CPU14による画質の劣化予測の手法について説明する。CPU14が実行する画質劣化の予測の手法は1つに限られず、各手法を適宜組み合わせて画質の劣化を予測してもよい。
【0042】
図3は、カメラ11によって撮像された画像の輝度変化、すなわち輝度の1階時間微分値dY/dtの推移を示す。輝度変化とは、各画素毎の輝度変化量の総和を各フレーム毎に算出したものをいう。全ての画素について輝度変化量の総和を算出する形態に限られず、中間の画素を間引くことにより、代表的な特定の画素について輝度変化量の総和を算出する形態であってもよい。輝度変化は、カメラ11によって撮像された画像、すなわち被写体の変化に依存するので、図3に示した波形に限られず、様々な波形が想定される。同図においては、一例として、期間t1において画像の輝度はほとんど変化せず、期間t2において訪問者等が現れ、動くことにより画像の輝度の変化が大きくなり、期間t3において画像の輝度の変化が元に戻る波形を示している。
【0043】
CPU14は、カメラ11によって撮像され、メモリ13に記憶された画像の輝度の1階時間微分値dY/dtを算出する。輝度の1階時間微分値dY/dtは、カメラ11によって撮像されたフレーム毎に算出され、図3の波形を構成する。算出された輝度の1階時間微分値dY/dtは、第1閾値と比較される。画像の輝度変化が大きくなり、輝度の1階時間微分値dY/dtが第1閾値以上になると、CPU14は、画質が劣化しているであろうと判断し、Iフレームを挿入し、周波数帯域を拡大して送信部15から画像情報を送信させる。図中黒塗り円は、Iフレームを挿入するタイミングを示す。輝度の1階時間微分値dY/dtが第1閾値以上である期間が長いときは、Iフレームを定期的に挿入し、その他のタイミングではPフレームを送信する。このとき、Iフレームの挿入に応じて周波数帯域の帯域幅を動的に変更する。これにより、画像の輝度変化が大きくなって画質の劣化が予測されたとき、Iフレームが挿入されるので、画質の劣化を抑制できる。
【0044】
画質の劣化の予測には、輝度の1階時間微分値dY/dtと、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする単調増加関数値と、の積を用いてもよい。単調増加関数とは、経過時間tの増加に応じて、常に関数値T=f(t)が増加する関数をいう。
【0045】
図4は、単調増加関数の例を示す。同図において、実線は、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする一次関数を示す。一点鎖線は、経過時間tの増加に伴い、一次関数よりも関数値の増加が大きくなる関数(例えば、二次関数、指数関数等の変化が急峻な関数)を示す。破線は、経過時間tの増加に伴い、一次関数よりも関数値の増加が小さくなる関数(例えば、n次根関数(nは自然数)、対数関数等の変化が穏やかな関数)を示す。これらは、いずれも単調増加関数である。
【0046】
図5は、図3に示した輝度の1階時間微分値dY/dtと、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする単調増加関数値と、の積を示す。横軸の時間は、図3に対応する。また、実線、一点鎖線及び破線は、乗じた単調増加関数(図4参照)に対応する。
【0047】
CPU14は、輝度の1階時間微分値dY/dtと、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする単調増加関数値と、の積を算出する。算出された積は、第2閾値と比較される。積が大きくなり、第2閾値以上になると、CPU14は、画質が劣化しているであろうと判断し、Iフレームを挿入し、周波数帯域を拡大して送信部15から画像情報を送信させる。Iフレームが送信されると、経過時間tが0にリセットされるので、積の値は急減する。積が第2閾値未満に低下すると、Pフレームが送信される。
【0048】
輝度の1階時間微分値dY/dtと、単調増加関数値との積が、第2閾値に達するタイミングは、計算に用いた単調増加関数によって異なる。一点鎖線で示す関数、すなわち経過時間tの増加に伴い急峻に変化する関数では、積が第2閾値に達するタイミングが早くなり、頻繁にIフレームが挿入されることとなる。その結果、画質の劣化が抑制され、品質の高い動画が得られる。
【0049】
一方、破線で示す関数、すなわち経過時間tの増加に伴い穏やかに変化する関数では、積が第2閾値に達するタイミングが遅くなり、Iフレームが挿入される頻度が低下する。その結果、画像情報の送信に用いられる周波数帯域の幅が狭くても、安定した通信を行うことができる。すなわち、低消費電力で、安定した通信を行うことができる。どの単調増加関数を用いるかは、画像音声送信装置10と画像音声受信装置20との間の通信環境や、無線通信方式の仕様等に応じて決定すればよい。
【0050】
このように、輝度の1階時間微分値dY/dtと、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする単調増加関数値と、の積に基づいて画質の劣化を予測する形態においては、Iフレームを挿入した後の経過時間tの要素を加味して、画質の劣化を判断できる。従って、輝度の1階時間微分値dY/dtのみを用いて判断する手法と比較すると、より高精度に画質の劣化を予測することができる。
【0051】
(変形例)
図6は、カメラ11によって撮像された画像の輝度変化の傾き、すなわち輝度の2階時間微分値d2Y/dt2の推移を示す。横軸の時間は、図3に対応する。輝度の2階時間微分値d2Y/dt2は、図3に示した画像の輝度変化を、さらに1階時間微分することにより算出できる。
【0052】
CPU14は、カメラ11によって撮像され、メモリ13に記憶された画像の輝度の2階時間微分値d2Y/dt2を算出する。算出された輝度の2階時間微分値d2Y/dt2は、第3閾値と比較される。画像の輝度変化の度合いが大きくなり、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2が第3閾値以上になると、CPU14は、画質が劣化しているであろうと判断し、Iフレームを挿入し、周波数帯域を拡大して送信部15から画像情報を送信させる。このとき、Iフレームの挿入に応じて周波数帯域の帯域幅を動的に変更する。これにより、画像の輝度変化の度合いが大きくなって画質の劣化が予測されたとき、Iフレームが挿入されるので、画質の劣化を抑制できる。
【0053】
画質の劣化の予測には、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2と、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする単調増加関数値と、の積を用いてもよい。
【0054】
図7は、図6に示した輝度の2階時間微分値d2Y/dt2と、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする単調増加関数値と、の積を示す。横軸の時間は、図3に対応する。また、実線、一点鎖線及び破線は、乗じた単調増加関数(図4参照)に対応する。
【0055】
CPU14は、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2と、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする単調増加関数値と、の積を算出する。算出された積は、第4閾値と比較される。積が大きくなり、第4閾値以上になると、CPU14は、画質が劣化しているであろうと判断し、Iフレームを挿入し、周波数帯域を拡大して送信部15から画像情報を送信させる。Iフレームが送信されると、経過時間tが0にリセットされるので、積の値は急減する。積が第4閾値未満に低下すると、Pフレームが送信される。
【0056】
この図7においても、図5と同様に、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2と、単調増加関数値との積が、第4閾値に達するタイミングは、計算に用いた単調増加関数によって異なる。どの単調増加関数を用いるかは、画像音声送信装置10と画像音声受信装置20との間の通信環境や、無線通信方式の仕様等に応じて決定すればよい。
【0057】
このように、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2と、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする単調増加関数値と、の積に基づいて画質の劣化を予測する形態においては、Iフレームを挿入した後の経過時間tの要素を加味して、画質の劣化を判断できる。従って、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2のみを用いて判断する手法と比較すると、より高精度に画質の劣化を予測することができる。
【0058】
(変形例)
図8は、図3に示した輝度の1階時間微分値dY/dtと、図6に示した輝度の2階時間微分値d2Y/dt2の積を示す。横軸の時間は、図3に対応する。
【0059】
CPU14は、輝度の1階時間微分値dY/dtと、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2と、の積を算出する。算出された積は、第5閾値と比較される。積が大きくなり、第5閾値以上になると、CPU14は、画質が劣化しているであろうと判断し、Iフレームを挿入し、周波数帯域を拡大して送信部15から画像情報を送信させる。このとき、Iフレームの挿入に応じて周波数帯域の帯域幅を動的に変更する。これにより、画像の輝度変化の度合いが大きくなって画質の劣化が予測されたとき、Iフレームが挿入されるので、画質の劣化を抑制できる。
【0060】
このように、輝度の1階時間微分値dY/dtと、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2と、の積に基づいて画質の劣化を予測する形態においては、それぞれの微分値を個別に評価する手法よりも、高精度に画質の劣化を予測することができる。
【0061】
図9は、図3に示した輝度の1階時間微分値dY/dtと、図6に示した輝度の2階時間微分値d2Y/dt2と、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする単調増加関数値と、の積を示す。横軸の時間は、図3に対応する。また、実線、一点鎖線及び破線は、乗じた単調増加関数(図4参照)に対応する。
【0062】
CPU14は、輝度の1階時間微分値dY/dtと、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2と、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする単調増加関数値と、の積を算出する。算出された積は、第6閾値と比較される。積が大きくなり、第6閾値以上になると、CPU14は、画質が劣化しているであろうと判断し、Iフレームを挿入し、周波数帯域を拡大して送信部15から画像情報を送信させる。Iフレームが送信されると、経過時間tが0にリセットされ、積の値は急減する。積が第6閾値未満に低下すると、Pフレームが送信される。
【0063】
この図9においても、図5と同様に、輝度の1階時間微分値dY/dtと、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2と、単調増加関数値との積が、第6閾値に達するタイミングは、計算に用いた単調増加関数によって異なる。どの単調増加関数を用いるかは、画像音声送信装置10と画像音声受信装置20との間の通信環境や、無線通信方式の仕様等に応じて決定すればよい。
【0064】
このように、輝度の1階時間微分値dY/dtと、2階時間微分値d2Y/dt2と、Iフレームを挿入した後の経過時間tの単調増加関数値と、の積に基づいて画質の劣化を予測する形態においては、経過時間tの要素を加味して、画質の劣化を判断できる。従って、輝度の1階時間微分値dY/dtと輝度の2階時間微分値d2Y/dt2の積のみを用いて判断する手法と比較すると、より高精度に画質の劣化を予測することができる。
【0065】
(変形例)
H.264やMPEG等の符号化方式においては、一般に、Iフレームを挿入した後の経過時間tが長くなると、画質が劣化する傾向にある。従って、CPU14は、Iフレームを挿入した後の経過時間tを直接的に評価して、画質の劣化を予測する形態としてもよい。
【0066】
例えば、図3に示すように、輝度の1階時間微分値dY/dtが連続して第1閾値を超える場合であっても、Iフレームを挿入した後の経過時間tが所定の閾値(第7閾値)未満であるときは、画質が劣化していないとみなして判断する形態としてもよい。同様に、図8に示すように、輝度の1階時間微分値dY/dtと、2階時間微分値d2Y/dt2と、の積が短い期間で複数回第5閾値を超える場合であっても、経過時間tが第7閾値未満であるときは、画質が劣化していないとみなして判断する形態としてもよい。すなわち、Iフレームを挿入した後の経過時間tが第7閾値未満である期間は、Iフレーム挿入禁止期間であると扱われる。図5、図6、図7及び図9に示した手法についても同様である。
【0067】
一方、図3及び図5乃至図9において、縦軸の値が各閾値を超えない場合であっても、Iフレームを挿入した後の経過時間tが第7閾値以上になると、画質が劣化したとみなして判断する形態としてもよい。
【0068】
以上のように、本実施形態の画像音声送信装置10及び無線画像音声伝送システム1によれば、CPU14によって画質の劣化が予測されたとき、CPU14によって画像情報の送信に用いる周波数帯域が一時的に拡張される。従って、一時的に拡張された周波数帯域を用いて送信する画像情報の情報量を増やすことにより、画像の劣化を抑制することができる。これにより、画質の低下を抑制しつつ、低消費電力の無線通信方式にも対応する程度に、低ビットレート化を図ることができる。
【0069】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも、画質の劣化を予測し、画質の劣化が予測されたとき、画像情報の送信に用いる周波数帯域を一時的に拡張するように構成されていればよい。
【0070】
また、本発明は、種々の変更が可能である。例えば、上述した第1閾値乃至第7閾値は、システムのユーザや管理者等によって、任意に設定可能に構成されていてもよい。例えば、第1閾値乃至第7閾値を大きく設定することにより、Iフレームを挿入するタイミングを遅延させて、その頻度を低下させることができる。これにより、画像音声送信装置10の消費電力を低減しながら、画像音声受信装置20との間で安定した通信を行うことができる。一方、第1閾値乃至第7閾値を小さく設定することにより、Iフレームを挿入するタイミングを早めて、その頻度を高めることができる。これにより、画像音声送信装置10から劣化の少ない画像を送信することができる。
【0071】
また、CPU14は、送信する画像情報から所定の間隔で抽出したフレームの画像の輝度について、輝度の1階時間微分値及び/又は2階時間微分値を算出するように構成されていてもよい。抽出されなかったフレームは間引かれて、間欠的に輝度の1階時間微分値及び/又は2階時間微分値が算出される。この構成によれば、CPU14の処理負担を軽減でき、更なる低消費電力化を図ることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 無線画像音声伝送システム(画像伝送システム)
10 画像音声送信装置
11 カメラ(撮像手段)
12 メモリ(記憶手段)
14 CPU(画質劣化予測手段、帯域拡張手段、Iフレーム挿入手段、帯域縮小手段)
15 送信部(送信手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像した画像情報を送信する画像送信装置等の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像情報を圧縮して送信する場合に、画像の変化領域を抽出し、送信する技術が知られている。近年、画像情報を圧縮して送信する技術は、家屋内外の要所に配設されたカメラで撮像された画像を家屋内のモニタで表示可能とするいわゆるホームセキュリティシステムへの応用が検討されている。ホームセキュリティシステムにおいては、カメラからモニタに画像情報を送信する際に、無線LANの他にもBluetooth、ZigBee、特定小電力無線など低消費電力の無線方式を適用する技術が検討されている。
【0003】
これらの低消費電力の無線通信方式は、無線LANと比較すると、電力を抑えた分通信信頼性を確保するため、通信に使用できる周波数帯域は狭い。そのため、ホームセキュリティシステムにこれら低消費電力の無線通信を適用する場合には、画像情報を圧縮することにより、送信に必要なビットレートを少なくすることが要求される。
【0004】
ホームセキュリティシステムの用途において良好な動画性能を得るためには、QVGA相当の解像度(320×240ドット)では、15〜30fps程度以上のフレームレートが望ましい。また、VGA相当の解像度(640×480ドット)でも、7.5〜15fps程度以上のフレームレートが望ましい。ところが、上記解像度とフレームレートの組み合わせによる画像情報を送信する場合であっても、低消費電力の無線通信方式で伝送可能なビットレートを超えることがある。
【0005】
画像情報を圧縮する技術としては、特許文献1に示されるH.264やMPEG等の規格が知られている。このような符号化方式においては、フレーム内の情報のみを使用して符号化するIフレーム(Intra-coded Frame)と直前のフレームとの差分情報を符号化するPフレーム(Predictive Frame)によって、画像情報が構成される。Iフレームは、所定時間毎に又はシーンチェンジの際に挿入される。
【0006】
図10は、所定時間毎にIフレームの画像情報を挿入して、画質の低下を抑制する例を示す。この例においては、情報量の多いIフレームを定期的に挿入するために、画像情報の送信に要する周波数帯域を広く確保しておく必要があり、画像情報の圧縮率が低下する。従って、低消費電力の無線通信方式に対応できない虞がある。
【0007】
一方、ホームセキュリティシステムにおいては、画像を撮像するカメラは固定されているため、シーンチェンジが発生しない。従って、最初にIフレームの画像情報を送信した後は、Pフレームの画像情報のみを送信すればよいとする考え方もある。
【0008】
図11は、カメラが固定されていることを前提に、最初にIフレームの画像情報を送信し、その後Pフレームの画像情報のみを送信する例を示す。この例においては、一旦Iフレームの画像情報を送信した後は、情報量の少ないPフレームの画像情報のみを送信すればよいので、画像情報の圧縮率が高められ、低消費電力の無線通信方式に対応する狭い周波数帯域で画像情報を送信することも可能ではある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−112852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図11に示した例においては、カメラの視野内に訪問者が現れた場合のように、撮像画像内の被写体の動きが激しくなると、Iフレームの画像との差が大きくなるため、画質が劣化する虞がある。また、Pフレームを構成する差分情報の量が大きくなるため、画像情報の圧縮率が低下することが懸念される。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、実用上問題となる画質の低下を抑制しつつ、低消費電力の無線通信方式にも対応する程度に、低ビットレート化を図ることができる画像送信装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の画像送信装置は、画像情報を送信する送信手段と、画質の劣化を予測する画質劣化予測手段と、前記画質劣化予測手段によって画質の劣化が予測されたとき、画像情報の送信に用いる周波数帯域を一時的に拡張する帯域拡張手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
この発明において、前記画質劣化予測手段によって画質の劣化が予測されたとき、送信する画像情報にIフレームを挿入するIフレーム挿入手段を備えることが好ましい。
【0014】
この発明において、前記Iフレーム挿入手段によって挿入されたIフレームの画像情報が送信された後、Pフレームの画像情報の送信に用いる周波数帯域を縮小する帯域縮小手段を備えることが好ましい。
【0015】
この発明において、前記帯域拡張手段は、前記画質劣化予測手段によって予測された画質の劣化の度合いに応じて、周波数帯域を拡張する期間を変更することが好ましい。
【0016】
この発明において、前記帯域拡張手段は、前記画質劣化予測手段によって予測された画質の劣化の度合いに応じて、拡張する周波数帯域の帯域幅を変更することが好ましい。
【0017】
この発明において、前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の1階時間微分値が第1閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することが好ましい。
【0018】
この発明において、前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の1階時間微分値と、Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする単調増加関数値と、の積が第2閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することが好ましい。
【0019】
この発明において、前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の2階時間微分値が第3閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することが好ましい。
【0020】
この発明において、前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の2階時間微分値と、Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする単調増加関数値と、の積が第4閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することが好ましい。
【0021】
この発明において、前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の1階時間微分値と、該輝度の2階時間微分値と、の積が第5閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することが好ましい。
【0022】
この発明において、前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の1階時間微分値と、該輝度の2階時間微分値と、Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする単調増加関数値と、の積が第6閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することが好ましい。
【0023】
この発明において、前記画質劣化予測手段は、Iフレームを挿入した後の経過時間が第7閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することが好ましい。
【0024】
この発明において、前記画質劣化予測手段は、Iフレームを挿入した後の経過時間が第7閾値未満であるとき、画質が劣化していないと判断することが好ましい。
【0025】
この発明において、前記第1閾値乃至前記第7閾値は、任意に設定可能であることが好ましい。
【0026】
この発明において、前記単調増加関数は、Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする一次関数よりも関数値の増加が大きいことが好ましい。
【0027】
この発明において、前記単調増加関数は、Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする一次関数よりも関数値の増加が小さいことが好ましい。
【0028】
この発明において、前記画質劣化予測手段は、送信する画像情報から所定の間隔で抽出したフレームの画像の輝度について、前記1階時間微分値及び/又は前記2階時間微分値を算出することが好ましい。
【0029】
また、本発明の画像伝送システムは、上記画像送信装置を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の画像送信装置によれば、画質劣化予測手段によって画質の劣化が予測されたとき、帯域拡張手段によって画像情報の送信に用いる周波数帯域が一時的に拡張される。従って、一時的に拡張された周波数帯域を用いて送信する画像情報の情報量を増やすことにより、画像の劣化を抑制することができる。これにより、画質の低下を抑制しつつ、低消費電力の無線通信方式にも対応する程度に、低ビットレート化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態による画像送信装置を備えたホームセキュリティ向け無線画像音声伝送システムのブロック図。
【図2】同画像音声送信装置から送信される画像情報のフレーム構成、情報量の推移及び送信に用いられる周波数帯域を示す図。
【図3】カメラによって撮像された画像の輝度の1階時間微分値の波形の一例を示す図。
【図4】Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする単調増加関数の例を示す図。
【図5】輝度の1階時間微分値と、単調増加関数値との積の波形を示す図。
【図6】カメラによって撮像された画像の輝度の2階時間微分値の波形を示す図。
【図7】輝度の2階時間微分値と、単調増加関数値との積の波形を示す図。
【図8】輝度の1階時間微分値と、輝度の2階時間微分値との積の波形を示す図。
【図9】輝度の1階時間微分値と、輝度の2階時間微分値と、単調増加関数値との積の波形を示す図。
【図10】従来の符号化方式による画像音声送信装置から送信される画像情報のフレーム構成、情報量の推移及び送信に用いられる周波数帯域を示す図。
【図11】従来の別の画像音声送信装置から送信される画像情報のフレーム構成、情報量の推移及び送信に用いられる周波数帯域を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施形態による画像送信装置を備えたホームセキュリティ向けの無線画像音声伝送システム(画像伝送システム)について図面を参照して説明する。図1は、無線画像音声伝送システム1を示す。無線画像音声伝送システム1は、屋外又は屋内に設置される画像音声送信装置10と、屋内に設置される画像音声受信装置20等によって構成される。監視対象場所が複数存在する場合は、複数の画像音声送信装置10が設けられる。
【0033】
画像音声送信装置10は、カメラ(撮像手段)11によって撮像した画像情報及びマイク12によって集音した音声情報を送信する。画像音声受信装置20は、画像音声送信装置10から送信された画像情報及び音声情報を受信して、モニタ24及びスピーカ25によって再生する。これにより、訪問者や不審者の画像や音声を確認でき、これらの情報は、必要に応じて、画像音声受信装置20等に保存される。画像音声送信装置10と画像音声受信装置20とは、例えば低消費電力の無線通信方式の一つである特定小電力無線を用いて通信される。また、画像音声送信装置10と画像音声受信装置20は、必要に応じて双方向に通信可能に構成され、画像情報及び音声情報の他、各種の制御信号が送受信される。
【0034】
画像音声送信装置10は、カメラ11と、マイク12と、メモリ(記憶手段)13と、CPU(画質劣化予測手段、帯域拡張手段、Iフレーム挿入手段、帯域縮小手段)14と、送信部(送信手段)15と、タイマ(時間計数手段、時刻計数手段)16と、操作スイッチ(操作入力手段)17と、電池(図示せず)等を備える。カメラ11は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子(Image Sensor)を有し、画像音声送信装置10の周辺の被写体を撮像して電子的な画像情報に変換して出力する。マイク12は、画像音声送信装置10の周辺の音声を集音して電子的な音声情報に変換して出力する。メモリ13は、カメラ11から入力された画像情報の他、CPU14の動作に必要な情報を記憶する。CPU14は、画像音声送信装置10の各部を制御する。例えば、CPU14は、送信しようとする画像の劣化を予測して、送信部15が画像情報を送信する際に使用される周波数帯域を拡張/縮小制御する。送信部15は、カメラ11から入力された画像情報及びマイク12から入力された音声情報の他、各種の信号を特定小電力無線にて送信する。特定小電力無線のような低消費電力の無線通信方式は、送信に要する電力を抑制できるので、電池の消耗を抑制し、その交換サイクルを長くすることができる。
【0035】
タイマ16は、時間を計数する。タイマ16は、基準となる時刻を設定することにより、時刻を計数する時計としても機能する。操作スイッチ17は、ユーザ又は訪問者によって操作される。操作スイッチ17は、例えば、屋外のユーザ又は訪問者と屋内のユーザとが無線画像音声伝送システム1を介して会話をする際に操作される。操作スイッチ17が操作されると、その旨の信号がCPU14に入力され、送信部(送信手段)15から画像音声受信装置20に各種の信号が送信される。
【0036】
画像音声受信装置20は、受信部(受信手段)21と、メモリ(記憶手段)22と、CPU(画像再生手段)23と、モニタ24と、スピーカ25等を備える。受信部21は、送信部15から送信された画像情報及び音声情報の他、各種の信号を受信する。メモリ22は、受信部21によって受信された画像情報の他、CPU23の動作に必要な情報を記憶する。CPU23は、画像音声受信装置20の各部を制御する。モニタ24は、受信部21によって受信された画像情報を表示する。スピーカ25は、受信部21によって受信された音声情報を再生する。
【0037】
図2は、画像音声送信装置10から送信される画像情報のフレーム構成、情報量の推移及び送信に用いられる周波数帯域を示す。画像情報は、フレーム内の情報のみで符号化され間欠的に挿入される複数のIフレームと、直前のフレームとの差分情報で符号化されるPフレームによって構成される。Iフレームが送信されるとき、画像情報の情報量が一時的に増加するので、画像音声送信装置10は、送信部15が画像情報の送信に用いる周波数帯域を一時的に拡張する。Iフレームの画像情報が送信された後、Pフレームの画像情報が送信されるとき、画像情報の情報量が減少するので、画像音声送信装置10は、送信部15が画像情報の送信に用いる周波数帯域を元通りに縮小する。送信部15が画像情報を送信する際に用いる周波数帯域の拡張/縮小は、CPU14によって制御される。CPU14は、送信する画像の輝度の変化やIフレームを挿入した後の経過時間等に基づいて画質の劣化を予測し、その劣化の度合いに応じて周波数帯域の帯域幅を動的に変更する。そして、変更した帯域幅に応じて画像情報にIフレームを適宜挿入し、送信部15を介して送信させる。なお、Iフレームを挿入した後の経過時間は、タイマ16によって計数される。
【0038】
周波数帯域を拡張する期間の長さや帯域幅は、Iフレームの情報量(ビットレート)や、画質の劣化度合いに応じて定められる。例えば、CPU14は、画質の劣化度合いが大きいと予測したとき、周波数帯域を拡張する期間が長くなるように送信部15を制御する。また、画質の劣化度合いが大きいと予測したとき、拡張する周波数帯域の帯域幅が大きくなるように送信部15を制御する。これらの制御によって、より情報量の多いIフレームの画像情報を送信でき、画質の劣化を抑制できる。
【0039】
一方、CPU14は、画質の劣化度合いが小さいと予測したとき、周波数帯域を拡張する期間が短くなるように送信部15を制御する。また、画質の劣化度合いが小さいと予測したとき、拡張する周波数帯域の帯域幅が小さくなるように送信部15を制御する。
【0040】
画質の劣化度合いは、例えば、後述する画質の劣化予測の手法において算出した値、又はこの算出した値が所定の閾値を超える頻度に基づいて予測できる。
【0041】
以下、図3乃至図9を参照して、CPU14による画質の劣化予測の手法について説明する。CPU14が実行する画質劣化の予測の手法は1つに限られず、各手法を適宜組み合わせて画質の劣化を予測してもよい。
【0042】
図3は、カメラ11によって撮像された画像の輝度変化、すなわち輝度の1階時間微分値dY/dtの推移を示す。輝度変化とは、各画素毎の輝度変化量の総和を各フレーム毎に算出したものをいう。全ての画素について輝度変化量の総和を算出する形態に限られず、中間の画素を間引くことにより、代表的な特定の画素について輝度変化量の総和を算出する形態であってもよい。輝度変化は、カメラ11によって撮像された画像、すなわち被写体の変化に依存するので、図3に示した波形に限られず、様々な波形が想定される。同図においては、一例として、期間t1において画像の輝度はほとんど変化せず、期間t2において訪問者等が現れ、動くことにより画像の輝度の変化が大きくなり、期間t3において画像の輝度の変化が元に戻る波形を示している。
【0043】
CPU14は、カメラ11によって撮像され、メモリ13に記憶された画像の輝度の1階時間微分値dY/dtを算出する。輝度の1階時間微分値dY/dtは、カメラ11によって撮像されたフレーム毎に算出され、図3の波形を構成する。算出された輝度の1階時間微分値dY/dtは、第1閾値と比較される。画像の輝度変化が大きくなり、輝度の1階時間微分値dY/dtが第1閾値以上になると、CPU14は、画質が劣化しているであろうと判断し、Iフレームを挿入し、周波数帯域を拡大して送信部15から画像情報を送信させる。図中黒塗り円は、Iフレームを挿入するタイミングを示す。輝度の1階時間微分値dY/dtが第1閾値以上である期間が長いときは、Iフレームを定期的に挿入し、その他のタイミングではPフレームを送信する。このとき、Iフレームの挿入に応じて周波数帯域の帯域幅を動的に変更する。これにより、画像の輝度変化が大きくなって画質の劣化が予測されたとき、Iフレームが挿入されるので、画質の劣化を抑制できる。
【0044】
画質の劣化の予測には、輝度の1階時間微分値dY/dtと、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする単調増加関数値と、の積を用いてもよい。単調増加関数とは、経過時間tの増加に応じて、常に関数値T=f(t)が増加する関数をいう。
【0045】
図4は、単調増加関数の例を示す。同図において、実線は、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする一次関数を示す。一点鎖線は、経過時間tの増加に伴い、一次関数よりも関数値の増加が大きくなる関数(例えば、二次関数、指数関数等の変化が急峻な関数)を示す。破線は、経過時間tの増加に伴い、一次関数よりも関数値の増加が小さくなる関数(例えば、n次根関数(nは自然数)、対数関数等の変化が穏やかな関数)を示す。これらは、いずれも単調増加関数である。
【0046】
図5は、図3に示した輝度の1階時間微分値dY/dtと、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする単調増加関数値と、の積を示す。横軸の時間は、図3に対応する。また、実線、一点鎖線及び破線は、乗じた単調増加関数(図4参照)に対応する。
【0047】
CPU14は、輝度の1階時間微分値dY/dtと、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする単調増加関数値と、の積を算出する。算出された積は、第2閾値と比較される。積が大きくなり、第2閾値以上になると、CPU14は、画質が劣化しているであろうと判断し、Iフレームを挿入し、周波数帯域を拡大して送信部15から画像情報を送信させる。Iフレームが送信されると、経過時間tが0にリセットされるので、積の値は急減する。積が第2閾値未満に低下すると、Pフレームが送信される。
【0048】
輝度の1階時間微分値dY/dtと、単調増加関数値との積が、第2閾値に達するタイミングは、計算に用いた単調増加関数によって異なる。一点鎖線で示す関数、すなわち経過時間tの増加に伴い急峻に変化する関数では、積が第2閾値に達するタイミングが早くなり、頻繁にIフレームが挿入されることとなる。その結果、画質の劣化が抑制され、品質の高い動画が得られる。
【0049】
一方、破線で示す関数、すなわち経過時間tの増加に伴い穏やかに変化する関数では、積が第2閾値に達するタイミングが遅くなり、Iフレームが挿入される頻度が低下する。その結果、画像情報の送信に用いられる周波数帯域の幅が狭くても、安定した通信を行うことができる。すなわち、低消費電力で、安定した通信を行うことができる。どの単調増加関数を用いるかは、画像音声送信装置10と画像音声受信装置20との間の通信環境や、無線通信方式の仕様等に応じて決定すればよい。
【0050】
このように、輝度の1階時間微分値dY/dtと、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする単調増加関数値と、の積に基づいて画質の劣化を予測する形態においては、Iフレームを挿入した後の経過時間tの要素を加味して、画質の劣化を判断できる。従って、輝度の1階時間微分値dY/dtのみを用いて判断する手法と比較すると、より高精度に画質の劣化を予測することができる。
【0051】
(変形例)
図6は、カメラ11によって撮像された画像の輝度変化の傾き、すなわち輝度の2階時間微分値d2Y/dt2の推移を示す。横軸の時間は、図3に対応する。輝度の2階時間微分値d2Y/dt2は、図3に示した画像の輝度変化を、さらに1階時間微分することにより算出できる。
【0052】
CPU14は、カメラ11によって撮像され、メモリ13に記憶された画像の輝度の2階時間微分値d2Y/dt2を算出する。算出された輝度の2階時間微分値d2Y/dt2は、第3閾値と比較される。画像の輝度変化の度合いが大きくなり、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2が第3閾値以上になると、CPU14は、画質が劣化しているであろうと判断し、Iフレームを挿入し、周波数帯域を拡大して送信部15から画像情報を送信させる。このとき、Iフレームの挿入に応じて周波数帯域の帯域幅を動的に変更する。これにより、画像の輝度変化の度合いが大きくなって画質の劣化が予測されたとき、Iフレームが挿入されるので、画質の劣化を抑制できる。
【0053】
画質の劣化の予測には、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2と、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする単調増加関数値と、の積を用いてもよい。
【0054】
図7は、図6に示した輝度の2階時間微分値d2Y/dt2と、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする単調増加関数値と、の積を示す。横軸の時間は、図3に対応する。また、実線、一点鎖線及び破線は、乗じた単調増加関数(図4参照)に対応する。
【0055】
CPU14は、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2と、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする単調増加関数値と、の積を算出する。算出された積は、第4閾値と比較される。積が大きくなり、第4閾値以上になると、CPU14は、画質が劣化しているであろうと判断し、Iフレームを挿入し、周波数帯域を拡大して送信部15から画像情報を送信させる。Iフレームが送信されると、経過時間tが0にリセットされるので、積の値は急減する。積が第4閾値未満に低下すると、Pフレームが送信される。
【0056】
この図7においても、図5と同様に、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2と、単調増加関数値との積が、第4閾値に達するタイミングは、計算に用いた単調増加関数によって異なる。どの単調増加関数を用いるかは、画像音声送信装置10と画像音声受信装置20との間の通信環境や、無線通信方式の仕様等に応じて決定すればよい。
【0057】
このように、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2と、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする単調増加関数値と、の積に基づいて画質の劣化を予測する形態においては、Iフレームを挿入した後の経過時間tの要素を加味して、画質の劣化を判断できる。従って、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2のみを用いて判断する手法と比較すると、より高精度に画質の劣化を予測することができる。
【0058】
(変形例)
図8は、図3に示した輝度の1階時間微分値dY/dtと、図6に示した輝度の2階時間微分値d2Y/dt2の積を示す。横軸の時間は、図3に対応する。
【0059】
CPU14は、輝度の1階時間微分値dY/dtと、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2と、の積を算出する。算出された積は、第5閾値と比較される。積が大きくなり、第5閾値以上になると、CPU14は、画質が劣化しているであろうと判断し、Iフレームを挿入し、周波数帯域を拡大して送信部15から画像情報を送信させる。このとき、Iフレームの挿入に応じて周波数帯域の帯域幅を動的に変更する。これにより、画像の輝度変化の度合いが大きくなって画質の劣化が予測されたとき、Iフレームが挿入されるので、画質の劣化を抑制できる。
【0060】
このように、輝度の1階時間微分値dY/dtと、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2と、の積に基づいて画質の劣化を予測する形態においては、それぞれの微分値を個別に評価する手法よりも、高精度に画質の劣化を予測することができる。
【0061】
図9は、図3に示した輝度の1階時間微分値dY/dtと、図6に示した輝度の2階時間微分値d2Y/dt2と、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする単調増加関数値と、の積を示す。横軸の時間は、図3に対応する。また、実線、一点鎖線及び破線は、乗じた単調増加関数(図4参照)に対応する。
【0062】
CPU14は、輝度の1階時間微分値dY/dtと、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2と、Iフレームを挿入した後の経過時間tを変数とする単調増加関数値と、の積を算出する。算出された積は、第6閾値と比較される。積が大きくなり、第6閾値以上になると、CPU14は、画質が劣化しているであろうと判断し、Iフレームを挿入し、周波数帯域を拡大して送信部15から画像情報を送信させる。Iフレームが送信されると、経過時間tが0にリセットされ、積の値は急減する。積が第6閾値未満に低下すると、Pフレームが送信される。
【0063】
この図9においても、図5と同様に、輝度の1階時間微分値dY/dtと、輝度の2階時間微分値d2Y/dt2と、単調増加関数値との積が、第6閾値に達するタイミングは、計算に用いた単調増加関数によって異なる。どの単調増加関数を用いるかは、画像音声送信装置10と画像音声受信装置20との間の通信環境や、無線通信方式の仕様等に応じて決定すればよい。
【0064】
このように、輝度の1階時間微分値dY/dtと、2階時間微分値d2Y/dt2と、Iフレームを挿入した後の経過時間tの単調増加関数値と、の積に基づいて画質の劣化を予測する形態においては、経過時間tの要素を加味して、画質の劣化を判断できる。従って、輝度の1階時間微分値dY/dtと輝度の2階時間微分値d2Y/dt2の積のみを用いて判断する手法と比較すると、より高精度に画質の劣化を予測することができる。
【0065】
(変形例)
H.264やMPEG等の符号化方式においては、一般に、Iフレームを挿入した後の経過時間tが長くなると、画質が劣化する傾向にある。従って、CPU14は、Iフレームを挿入した後の経過時間tを直接的に評価して、画質の劣化を予測する形態としてもよい。
【0066】
例えば、図3に示すように、輝度の1階時間微分値dY/dtが連続して第1閾値を超える場合であっても、Iフレームを挿入した後の経過時間tが所定の閾値(第7閾値)未満であるときは、画質が劣化していないとみなして判断する形態としてもよい。同様に、図8に示すように、輝度の1階時間微分値dY/dtと、2階時間微分値d2Y/dt2と、の積が短い期間で複数回第5閾値を超える場合であっても、経過時間tが第7閾値未満であるときは、画質が劣化していないとみなして判断する形態としてもよい。すなわち、Iフレームを挿入した後の経過時間tが第7閾値未満である期間は、Iフレーム挿入禁止期間であると扱われる。図5、図6、図7及び図9に示した手法についても同様である。
【0067】
一方、図3及び図5乃至図9において、縦軸の値が各閾値を超えない場合であっても、Iフレームを挿入した後の経過時間tが第7閾値以上になると、画質が劣化したとみなして判断する形態としてもよい。
【0068】
以上のように、本実施形態の画像音声送信装置10及び無線画像音声伝送システム1によれば、CPU14によって画質の劣化が予測されたとき、CPU14によって画像情報の送信に用いる周波数帯域が一時的に拡張される。従って、一時的に拡張された周波数帯域を用いて送信する画像情報の情報量を増やすことにより、画像の劣化を抑制することができる。これにより、画質の低下を抑制しつつ、低消費電力の無線通信方式にも対応する程度に、低ビットレート化を図ることができる。
【0069】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも、画質の劣化を予測し、画質の劣化が予測されたとき、画像情報の送信に用いる周波数帯域を一時的に拡張するように構成されていればよい。
【0070】
また、本発明は、種々の変更が可能である。例えば、上述した第1閾値乃至第7閾値は、システムのユーザや管理者等によって、任意に設定可能に構成されていてもよい。例えば、第1閾値乃至第7閾値を大きく設定することにより、Iフレームを挿入するタイミングを遅延させて、その頻度を低下させることができる。これにより、画像音声送信装置10の消費電力を低減しながら、画像音声受信装置20との間で安定した通信を行うことができる。一方、第1閾値乃至第7閾値を小さく設定することにより、Iフレームを挿入するタイミングを早めて、その頻度を高めることができる。これにより、画像音声送信装置10から劣化の少ない画像を送信することができる。
【0071】
また、CPU14は、送信する画像情報から所定の間隔で抽出したフレームの画像の輝度について、輝度の1階時間微分値及び/又は2階時間微分値を算出するように構成されていてもよい。抽出されなかったフレームは間引かれて、間欠的に輝度の1階時間微分値及び/又は2階時間微分値が算出される。この構成によれば、CPU14の処理負担を軽減でき、更なる低消費電力化を図ることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 無線画像音声伝送システム(画像伝送システム)
10 画像音声送信装置
11 カメラ(撮像手段)
12 メモリ(記憶手段)
14 CPU(画質劣化予測手段、帯域拡張手段、Iフレーム挿入手段、帯域縮小手段)
15 送信部(送信手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報を送信する送信手段と、画質の劣化を予測する画質劣化予測手段と、前記画質劣化予測手段によって画質の劣化が予測されたとき、画像情報の送信に用いる周波数帯域を一時的に拡張する帯域拡張手段とを備えたことを特徴とする画像送信装置。
【請求項2】
前記画質劣化予測手段によって画質の劣化が予測されたとき、送信する画像情報にIフレームを挿入するIフレーム挿入手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像送信装置。
【請求項3】
前記Iフレーム挿入手段によって挿入されたIフレームの画像情報が送信された後、Pフレームの画像情報の送信に用いる周波数帯域を縮小する帯域縮小手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の画像送信装置。
【請求項4】
前記帯域拡張手段は、前記画質劣化予測手段によって予測された画質の劣化の度合いに応じて、周波数帯域を拡張する期間を変更することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項5】
前記帯域拡張手段は、前記画質劣化予測手段によって予測された画質の劣化の度合いに応じて、拡張する周波数帯域の帯域幅を変更することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項6】
前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の1階時間微分値が第1閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項7】
前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の1階時間微分値と、Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする単調増加関数値と、の積が第2閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項8】
前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の2階時間微分値が第3閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することを特徴とする請求項1又は請求項7のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項9】
前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の2階時間微分値と、Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする単調増加関数値と、の積が第4閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項10】
前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の1階時間微分値と、該輝度の2階時間微分値と、の積が第5閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項11】
前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の1階時間微分値と、該輝度の2階時間微分値と、Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする単調増加関数値と、の積が第6閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項12】
前記画質劣化予測手段は、Iフレームを挿入した後の経過時間が第7閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項13】
前記画質劣化予測手段は、Iフレームを挿入した後の経過時間が第7閾値未満であるとき、画質が劣化していないと判断することを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項14】
前記第1閾値乃至前記第7閾値は、任意に設定可能であることを特徴とする請求項6乃至請求項13のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項15】
前記単調増加関数は、Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする一次関数よりも関数値の増加が大きいことを特徴とする請求項7乃至請求項14のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項16】
前記単調増加関数は、Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする一次関数よりも関数値の増加が小さいことを特徴とする請求項7乃至請求項15のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項17】
前記画質劣化予測手段は、送信する画像情報から所定の間隔で抽出したフレームの画像の輝度について、前記1階時間微分値及び/又は前記2階時間微分値を算出することを特徴とする請求項6乃至請求項16のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項18】
請求項1乃至請求項17のいずれか一項に記載の画像送信装置を備えたことを特徴とする画像伝送システム。
【請求項1】
画像情報を送信する送信手段と、画質の劣化を予測する画質劣化予測手段と、前記画質劣化予測手段によって画質の劣化が予測されたとき、画像情報の送信に用いる周波数帯域を一時的に拡張する帯域拡張手段とを備えたことを特徴とする画像送信装置。
【請求項2】
前記画質劣化予測手段によって画質の劣化が予測されたとき、送信する画像情報にIフレームを挿入するIフレーム挿入手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像送信装置。
【請求項3】
前記Iフレーム挿入手段によって挿入されたIフレームの画像情報が送信された後、Pフレームの画像情報の送信に用いる周波数帯域を縮小する帯域縮小手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の画像送信装置。
【請求項4】
前記帯域拡張手段は、前記画質劣化予測手段によって予測された画質の劣化の度合いに応じて、周波数帯域を拡張する期間を変更することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項5】
前記帯域拡張手段は、前記画質劣化予測手段によって予測された画質の劣化の度合いに応じて、拡張する周波数帯域の帯域幅を変更することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項6】
前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の1階時間微分値が第1閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項7】
前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の1階時間微分値と、Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする単調増加関数値と、の積が第2閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項8】
前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の2階時間微分値が第3閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することを特徴とする請求項1又は請求項7のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項9】
前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の2階時間微分値と、Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする単調増加関数値と、の積が第4閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項10】
前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の1階時間微分値と、該輝度の2階時間微分値と、の積が第5閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項11】
前記画質劣化予測手段は、送信する画像の輝度の1階時間微分値と、該輝度の2階時間微分値と、Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする単調増加関数値と、の積が第6閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項12】
前記画質劣化予測手段は、Iフレームを挿入した後の経過時間が第7閾値以上であるとき、画質が劣化したと判断することを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項13】
前記画質劣化予測手段は、Iフレームを挿入した後の経過時間が第7閾値未満であるとき、画質が劣化していないと判断することを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項14】
前記第1閾値乃至前記第7閾値は、任意に設定可能であることを特徴とする請求項6乃至請求項13のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項15】
前記単調増加関数は、Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする一次関数よりも関数値の増加が大きいことを特徴とする請求項7乃至請求項14のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項16】
前記単調増加関数は、Iフレームを挿入した後の経過時間を変数とする一次関数よりも関数値の増加が小さいことを特徴とする請求項7乃至請求項15のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項17】
前記画質劣化予測手段は、送信する画像情報から所定の間隔で抽出したフレームの画像の輝度について、前記1階時間微分値及び/又は前記2階時間微分値を算出することを特徴とする請求項6乃至請求項16のいずれか一項に記載の画像送信装置。
【請求項18】
請求項1乃至請求項17のいずれか一項に記載の画像送信装置を備えたことを特徴とする画像伝送システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−78024(P2013−78024A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217379(P2011−217379)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.ZIGBEE
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.ZIGBEE
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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