説明

画像配信サーバ

【課題】端末から指定された表示倍率に応じた解像度の画像を端末に配信する際に、表示倍率に合わせて解像度も自然に変化する画像を配信する。
【解決手段】原画像を解像度によって階層化した複数の階層画像を記憶する画像記憶手段11と、ネットワーク3を介して接続された端末2から画像の配信要求を表示倍率の指定と共に受信する要求受信手段13と、指定の表示倍率から解像度を決定する解像度決定手段14と、決定された解像度に対応する階層と一致および隣接する階層に位置する2つの階層画像、もしくは、解像度に対応する階層と隣接する2つの階層に位置する2つの階層画像にそれぞれ重みを付して合成することにより配信画像を生成する画像合成手段15と、配信画像を端末2に送信する画像送信手段16とを備え、画像合成手段15が、決定された解像度との差分が小さい方の解像度の階層画像により大きな重みを付す画像配信サーバ1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像配信サーバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病理診断において病理標本を極めて高い分解能で撮影したバーチャルスライド画像(以下、VS画像という。)が用いられている。VS画像は、病理標本を小領域に分割して撮影し、取得された各小領域の画像を2次元に配列することにより構築された画像である。VS画像は、データ容量が非常に大きいため、閲覧用の端末とは別の画像サーバに保存されている。画像サーバは、端末から配信を要求された、閲覧者が所望とする位置と表示倍率に応じて、VS画像の一部または全部の領域を端末に配信する。
【0003】
このような画像サーバとして、VS画像の原画像を段階的に低解像度化することにより解像度の異なる複数のVS画像を作成しておき、端末から要求された表示倍率に応じた解像度のVS画像を配信するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような画像サーバによれば、低倍率で表示される場合には比較的低解像度のVS画像が配信され、高倍率で表示される場合には比較的高解像度のVS画像が配信される。端末は、受信したVS画像を閲覧者が指定した表示倍率となるように拡大縮小してから表示する。このように、表示倍率に応じた解像度のVS画像が配信されることで、画像サーバから端末へのデータの送信および端末によるVS画像の拡大縮小に要する時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2006−519443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の場合、端末に表示されたVS画像を閲覧している閲覧者が異なる表示倍率のVS画像の配信を画像サーバに要求したときに、画像サーバから配信されるVS画像の解像度が切り替わることがある。このときに、表示倍率の変化に対して端末に表示されるVS画像の解像度が大きく変化し、観察者に対して違和感を与えてしまうという不都合がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、端末から指定された表示倍率に応じた解像度の画像を端末に配信する画像配信サーバにおいて、表示倍率に合わせて解像度も自然に変化する画像を配信することができる画像配信サーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、標本が撮影された原画像から作成され解像度によって階層化された解像度の異なる複数の階層画像を記憶する画像記憶サーバおよび画像を表示可能な端末とネットワークを介して接続され、前記端末から前記標本の画像の配信要求を該画像の表示倍率の指定とともに受信する要求受信手段と、該要求受信手段によって受信された指定の表示倍率に基づいて解像度を決定する解像度決定手段と、前記解像度決定手段によって決定された解像度に対応する階層と一致する階層および隣接する階層、もしくは、前記決定された解像度に対応する階層と隣接する2つの階層に位置する階層画像を前記画像記憶サーバから取得する画像取得手段と、該画像取得手段によって取得された2つの階層画像にそれぞれ重みを付して合成することにより配信画像を生成する画像合成手段と、該画像合成手段によって生成された配信画像を前記端末に送信する画像送信手段とを備え、前記画像合成手段が、前記決定された解像度との差分が小さい方の解像度の階層画像により大きな重みを付す画像配信サーバを提供する。
【0008】
本発明によれば、要求受信手段が表示倍率の指定とともに画像の配信要求を受信すると、画像取得手段は、解像度決定手段によって表示倍率に基づき決定された解像度に応じた階層画像を画像記憶サーバから取得し、画像合成部は取得された階層画像から配信画像を生成し、画像送信部は配信画像を端末に送信する。これにより、端末は、表示倍率に見合った解像度の画像を表示することができる。
【0009】
この場合に、画像取得手段は、階層画像群のうち解像度決定部により決定された解像度と一致する解像度を有する階層画像を含む2つの階層画像、または、決定された解像度を間に挟み該解像度と最も近い解像度を有する2つの階層画像を取得する。画像合成部は、取得された2つの階層画像に対して、決定された解像度とより近い解像度を有する方の階層画像にはより大きな重みを付して配信画像を合成する。すなわち、合成された合成画像は、端末から要求された表示倍率に応じた解像度が擬似的に実現された画像となるので、表示倍率に合わせて解像度も自然に変化する配信画像を配信することができる。
【0010】
上記発明においては、前記画像合成手段が、前記差分が小さい方の解像度の階層画像の方が透明度が低くなるように前記2つの階層画像を透明化して重畳することとしてもよい。
このようにすることで、表示倍率に基づいて決定された解像度に近い解像度を有する方の階層画像の方が他方の階層画像よりも透明度が低くなり、配信画像内においてより強く反映される。これにより、2つの階層画像に簡便に重み付けをして配信画像を合成することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記画像合成手段が、各階層画像の解像度と前記指定された解像度との差分の比に比例する重みを各階層画像に付すこととしてもよい。
このようにすることで、表示倍率に基づいて決定された解像度がより正確に実現された配信画像を合成することができる。
【0012】
また、本発明は、画像を表示可能な端末とネットワークを介して接続され、標本が撮影された原画像から作成され解像度によって階層化された解像度の異なる複数の階層画像を記憶する画像記憶手段と、前記端末から前記標本の画像の配信要求を該画像の表示倍率の指定とともに受信する要求受信手段と、該要求受信手段によって受信された指定の表示倍率に基づいて解像度を決定する解像度決定手段と、前記画像記憶手段に記憶されている階層画像群のうち、前記解像度決定手段によって決定された解像度に対応する階層と一致する階層および隣接する階層に位置する2つの階層画像、もしくは、前記決定された解像度に対応する階層と隣接する2つの階層に位置する2つの階層画像にそれぞれ重みを付して合成することにより配信画像を生成する画像合成手段と、該画像合成手段によって生成された配信画像を前記端末に送信する画像送信手段とを備え、前記画像合成手段が、前記決定された解像度との差分が小さい方の解像度の階層画像により大きな重みを付す画像配信サーバを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、端末から指定された表示倍率に応じた解像度の画像を端末に配信する画像配信サーバにおいて、表示倍率に合わせて解像度も自然に変化する画像を配信することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像配信サーバの機能ブロック図および該画像配信サーバを備える画像配信システムの全体構成図である。
【図2】図1の画像配信システムが備える端末に表示されるビューアの一例を示す図である。
【図3】図1の画像配信サーバの画像記憶部に記憶される階層画像群を説明する概念図である。
【図4】図1の画像配信サーバおよび画像配信システムの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態に係る画像配信サーバ1および画像配信システム100について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る画像配信システム100は、図1に示されるように、病理医等の閲覧者によって使用される端末2と、該端末2とネットワーク3を介して接続され病理標本のVS画像を記憶するとともに端末2からの配信要求に応じてVS画像を端末2に配信する画像配信サーバ1とを備えている。
【0016】
端末2は、例えば、病理医が病理診断を行う病院内の診察室等に設置される。画像配信サーバ1は、例えば、患者等の提供者の身体から採取した検体から病理標本を作成し、該病理標本のVS画像を作成する病院内の検査室や検査機関等に設置される。端末2と画像配信サーバ1は、同一の施設に設置されてイントラネットなどのローカルネットワーク(ネットワーク3)を介して接続されていてもよいし、異なる施設に設置されてインターネットや電話回線等の広域ネットワーク(ネットワーク3)を介して接続されていてもよい。
【0017】
端末2は、画面と、主記憶装置と、該主記憶装置に記憶されたプログラムを読み出して実行するCPU(中央演算処理装置)と、マウスやキーボード等の入力装置とを備えるコンピュータである。主記憶装置には、VS画像を表示する画像表示領域と閲覧者によって操作されるユーザインタフェース領域とが設定されたビューアウィンドウ4(以下、ビューア4という。)を画面に表示するビューアプログラムが記憶されている。閲覧者が入力装置を使用してビューアプログラムの起動を指示することにより、CPUがビューアプログラムを実行し、ビューア4が画面に表示される。
【0018】
図2は、ビューア4の一例を示す図である。ユーザインタフェース領域Bは、閲覧者が閲覧したいVS画像の標本を示す標本IDが入力される標本ID欄Cと、VS画像の明るさやコントラスト等の色調および表示倍率を選定するスライドバーD1〜D3と、既に画像配信サーバ1から取得されてキャッシュ画像(後述)として記憶されているVS画像のサムネイルQを表示するサムネイル欄Eとを少なくとも有する。
【0019】
端末2は、後に詳述するように、操作者によってユーザインタフェース領域Bになされた操作に基づいて、閲覧者が閲覧したいVS画像の標本ID、位置および表示倍率(以下、要求標本ID、要求位置および要求表示倍率とそれぞれいう。)が少なくとも含まれる配信要求情報を作成し、該配信要求情報を画像配信サーバ1に送信する。
【0020】
画像配信サーバ1は、VS画像作成装置5によって作成されたVS画像を記憶する画像記憶部11と、該画像記憶部11に記憶されているVS画像から解像度が段階的に低減する階層画像群を作成する階層化処理部12と、端末2からの配信要求情報を受信する要求受信部(要求受信手段)13と、該要求受信部13が受信した配信要求情報に応じて階層画像群から2つの階層画像を選択する解像度決定部(解像度決定手段)14と、該解像度決定部14によって選択された2つの階層画像から配信画像を生成する画像処理部(画像合成手段)15と、該画像処理部15によって生成された配信画像を端末2に送信する画像送信部(画像送信手段)16とを備えている。
【0021】
画像記憶部11は、VS画像作成装置5によって極めて高い分解能で撮像された病理標本のデジタル画像であるVS画像の原画像を、各病理標本に付与された標本IDと対応付けて記憶する。具体的には、病理標本と該病理標本を示す標本IDが記録されたバーコードとが同一のスライドガラスに貼付され、VS画像作成装置5が病理標本とバーコードを続けて撮像することにより、VS画像の原画像に標本IDを対応付けて画像記憶部11に記憶する。
【0022】
このときに、VS画像作成装置5は、病理標本を小量ずつ移動させながら比較的高倍率の対物レンズを用いて繰り返し撮像することにより、病理標本を小領域に分割して撮像する。撮像された小領域の画像(以下、タイル画像という。)は病理標本内における位置を示すアドレスが付与され、一部または全部のタイル画像がアドレスに従って配列されることによりVS画像の一部または全体が構築される。
【0023】
階層化処理部12は、新たに作成されたVS画像の原画像が画像記憶部11に記憶されたときに当該原画像を画像記憶部11から読み出し、原画像を段階的に低解像度化することにより原画像に対して解像度が1/1、1/2、1/4、1/8、…となる階層画像群を作成する。具体的には、各タイル画像内において縦方向および横方向に隣接する1画素×1画素、2画素×2画素、4画素×4画素、8画素×8画素、…を1画素としてビニングする。
【0024】
このようにして作成された階層画像群は、図3に示されるように、解像度によって階層化され上位ほど解像度が小さくなるピラミッド状の階層構造を構成する。以下、説明を簡潔にするために、原画像に対する解像度が1/n(n=1,2,4,8,…)である階層画像を1/n画像という。階層化処理部12は、作成した階層画像群を標本IDと対応付けて画像記憶部11に記憶する。これにより、画像記憶部11は、各病理標本について原画像と階層画像群とを記憶することとなる。
【0025】
要求受信部13は、端末2から受信した配信要求情報に含まれる情報のうち要求表示倍率を解像度決定部14に出力し、要求標本IDおよび要求位置を画像処理部15に出力する。
【0026】
解像度決定部14は、要求受信部13から受け取った要求表示倍率から該要求表示倍率に対応する解像度を決定する。要求表示倍率と解像度とは、要求表示倍率が大きくなるほど解像度も高くなる比例の関係にあり、予め対応付けられたデータとして解像度決定部14に保持されている。解像度決定部14は、決定した解像度(以下、要求解像度という。)を、画像処理部15に出力する。
【0027】
画像処理部15は、まず、要求受信部13から入力された要求標本IDと解像度決定部14から入力された要求解像度とに基づいて画像記憶部11から2つの階層画像を取得する。
【0028】
具体的には、画像処理部15は、決定した解像度を、階層画像群を構成する各階層画像の解像度と比較する。そして、要求解像度と一致する解像度の階層画像が存在する場合には当該階層画像と、該階層画像の直上位または直下位に位置する階層画像を選択する。一方、要求解像度と一致する解像度の階層画像が存在しない場合には、階層構造において要求解像度に対応する階層を間に挟み該階層の直上位および直下位に位置する階層画像を選択する。そして、要求標本IDと対応付けられた階層画像群のうち選択した2つの階層画像を画像記憶部11から取得する。ここで、画像処理部15は、要求位置および要求表示倍率に応じて一部または全てのタイル画像を選択して読み出す。
【0029】
次に、画像処理部15は、取得した2つの階層画像に対して画像処理を施した後にこれらの階層画像から配信画像を生成する。具体的には、画像処理部15は、複数種類の画像処理フィルタを備え、画像記憶部11から取得した2つの階層画像に対して前段階と後段階とに分けて各種の画像処理フィルタを適用する。まず、前段階おいて画像処理部15は、明るさやコントラスト等を補正する色調補正フィルタを2つの階層画像に適用する。色調補正フィルタの設定は、ビューア4のユーザインタフェース領域Bに設けられた色調用のスライドバーD1,D2よって決定される。
【0030】
続いて、後段階において画像処理部15は、画像の透明度を補正する透明化フィルタを2つの階層画像に適用する。ここで、画像処理部15は、2つの階層画像の透明度の比が各階層画像の解像度と解像度決定部14が決定した要求解像度との差分の比の逆数となるように、かつ、2つの透明度の和が1となるように、各階層画像の透明度を決定する。なお、透明度が1のときに階層画像は完全に透明となり、透明度が0のときに階層画像は完全に不透明となる。
【0031】
例えば、原画像の解像度をRとし、要求解像度がR/3であった場合、解像度決定部14は1/2画像と1/4画像とを選択する。要求解像度R/3と直上位の階層画像の解像度R/2との差分はR/6、要求解像度R/3と直下位の階層画像の解像度R/4との差分はR/12であるので、これらの比率は2:1となる。したがって、1/2画像の透明度は約0.33、1/4画像の透明度は約0.67と決定される。このようにすることで、要求解像度に近い解像度の階層画像により大きな重み付けがされることとなる。
【0032】
このようにして前段階と後段階とで各種の画像処理フィルタを2つの階層画像に適用した後、画像処理部15はこれらの階層画像を重畳することにより配信画像を生成する。これにより、要求解像度と一致する解像度の階層画像が画像記憶部11に存在する場合は、当該階層画像の透明度が0となり、該階層画像のみが反映された配信画像が生成される。一方、要求解像度と一致する解像度の階層画像が画像記憶部11に存在しない場合は、要求解像度と近い解像度の2つの階層画像から擬似的な要求解像度を有する配信画像が生成される。
【0033】
上述の例の場合、1/2画像の方が1/4画像よりもより強く反映され、1/2画像における比較的詳細な構造も比較的明瞭に表示されることにより、R/3と略同等の解像度を有する配信画像が生成される。画像処理部15は生成した配信画像を画像送信部16に出力し、画像送信部16は配信要求情報を送信してきた端末2に対して配信画像を送信する。
【0034】
次に、このように構成された画像配信サーバ1を備える画像配信システム100の作用について説明する。
本実施形態に係る画像配信システム100を使用して病理標本の病理診断を行うには、まず、閲覧者は端末2においてビューア4を起動し、診断対象の標本の標本IDを標本ID欄Cに入力し、確定ボタンFをクリックする。これにより、端末2は配信要求情報を作成して画像配信サーバ1に送信する。
【0035】
このときに、端末2は、新規に標本IDが入力されたときには、要求表示倍率を最も低い倍率とし、要求位置を中心位置として配信要求情報を作成する。これにより、端末2は、診断対象の病理標本の全体像が表示された低倍率かつ低解像度のVS画像Pである配信画像を受信してビューア4に表示する。
【0036】
端末2は、画像配信サーバ1から受信したVS画像Pを、CPUが備えるキャッシュメモリにキャッシュ画像として保存する。端末2は、キャッシュメモリに存在するキャッシュ画像と同一の要求位置および要求表示倍率のVS画像が再び指定されたときには、画像配信サーバ1に新たに配信要求せずにキャッシュ画像を読み出して画像表示領域Aに表示する。また、端末2は、キャッシュ画像のサムネイルQを作成してサムネイル一覧Eに表示する。閲覧者は、サムネイル一覧Eに表示されているサムネイルQを入力手段によって指定することによっても、キャッシュ画像を画像表示領域Aに再表示することができる。
【0037】
閲覧者は、端末2に表示される病理標本の全体像を観察した後に、例えば、全体像内の病変の疑われる位置をマウスで指定し、スライドバーD3によって表示倍率をより高い値に設定し、確定ボタンFをクリックする。これにより、端末2は、指定された位置を拡大したVS画像の配信を画像配信サーバ1に要求して取得し、画像表示領域Aに表示する。このように、閲覧者は、位置と表示倍率の指定を繰り返すことにより、病理標本の所望の位置を所望の表示倍率で観察することができる。
【0038】
この場合に、本実施形態によれば、画像配信サーバ1は、端末2からの要求表示倍率に比例する要求解像度と一致するまたは略同等の解像度の配信画像を端末2に配信する。つまり、端末2に表示されるVS画像Pが拡大縮小されると拡大縮小率に比例して解像度も連続的に増減する。これにより、端末に表示されるVS画像Pの解像度を、表示倍率の変化に伴って自然に変化させることができる。
【0039】
また、階層画像を小さい解像度の幅で多数作成することによっても本実施形態と同様に表示倍率に合わせて解像度が自然に変化するVS画像を端末に配信することは可能である。しかし、その場合、個々の階層画像のデータ容量が極めて大きいため、画像記憶部11には莫大な記憶容量が要求される。これに対して本実施形態によれば、階層画像は限られた数、例えば、1つの病理標本について数個で済み、画像記憶部11を肥大化する必要がない。
【0040】
以上のようにして端末2に表示されたVS画像Pに対して、閲覧者は、色調用のスライドバーD1,D2を左右に移動して所望の設定値に設定し、確定ボタンFをクリックすることによりVS画像Pの明るさやコントラスト等の色調を変更することができる。端末2は、スライドバーD1,D2によって設定された設置値を含む色調変更要求情報を画像配信サーバ1に送信する。画像配信サーバ1は、受信した色調変更要求情報にしたがって画像処理部15の対応する画像処理フィルタを再設定した後、直前に受信した配信要求情報に基づいて再度配信画像を作成して送信する。これにより、端末2には、色調が変更されたVS画像Pが表示される。
【0041】
ここで、画像配信サーバ1は、端末2から色調変更要求情報を受信したときに、端末2に対してそれまで記憶していたキャッシュ画像を全て消去するように指令する。なお、色調変更要求手段を画像配信サーバ1に送信すると同時にCPUが全てのキャッシュ画像の消去を実行するように端末2が構成されていてもよい。
【0042】
もし、色調の設定が変更された後も端末2がキャッシュ画像を保持し続けた場合に次のような不都合が生じる。すなわち、端末2に存在するキャッシュ画像は、画像処理部15の色調補正フィルタの設定が変更された後も、変更前の色調のままとなる。すなわち、色調変更後に画像配信サーバ1から受信したVS画像と、色調変更前に画像配信サーバ1から受信したVS画像とは、異なる色調の設定で端末2に表示される。閲覧者にとっては、一度設定した変更が反映されないVS画像が診断の途中に度々出現することは、煩わしく円滑な診断の妨げにもなる。そこで、色調の設定が変更される度に端末2が保持する全てのキャッシュ画像を消去することにより、色調の設定の変更後は新しい設定が反映されたVS画像のみが表示されることとなり、上述のような不都合を解消することができる。
【0043】
なお、本実施形態においては、画像配信サーバ1は配信画像をタイル画像単位で端末2に配信し、端末2はタイル画像を2次元に配列することによりVS画像Pとしてビューア4に表示するが、端末2は、タイル画像同士が隣接する縁部分においてスムージング処理を施してからビューア4に表示することとしてもよい。
このようにすることで、閲覧者にとって煩わしく感じたり観察の支障となったりするタイル画像の継ぎ目を目立たなくし、より快適にVS画像Pを観察することができる。
【0044】
また、本実施形態においては、画像処理部15が解像度の異なる2つの階層画像に透明化処理を施すことにより、配信画像における各階層画像の重み付けを行うこととしたが、画像処理部15による階層画像の重み付けの方法はこれに限定されるものではない。
【0045】
また、本実施形態においては、画像配信サーバ1が、画像表示領域Aよりも大きなサイズの配信画像を端末2に配信することとしてもよい。
このようにすることで、例えば、現在画像表示領域Aに表示されている領域から若干外れた領域を閲覧したときに、キャッシュ画像を用いて短時間で表示することができ、効率的にVS画像Pを閲覧することができる。
【0046】
また、本実施形態においては、画像配信サーバ1が階層画像群を記憶することとしたが、これに代えて、画像配信サーバ1とは別体の画像記憶サーバが階層画像群を記憶し、配信要求情報に基づいて画像配信サーバ1が画像記憶サーバから階層画像を取得することとしてもよい。
【0047】
この場合には、図4に示されるように、画像配信サーバ1は、要求受信部13によって受信された配信要求情報および解像度決定部14によって決定された解像度に基づいて画像記憶サーバ20から配信画像の生成に用いる2つの階層画像を取得する画像取得部(画像取得手段)17を備える。画像処理部15は、画像取得部17によって取得された2つの階層画像に対して上述した画像処理を施した後にこれらの階層画像から配信画像を生成する。
【符号の説明】
【0048】
1 画像配信サーバ
2 端末
3 ネットワーク
4 ビューアウィンドウ
5 バーチャルスライド画像作成装置
11 画像記憶部(画像記憶手段)
12 階層化処理部
13 要求受信部(要求受信手段)
14 解像度決定部(解像度決定手段)
15 画像処理部(画像合成手段)
16 画像送信部(画像送信手段)
17 画像取得部(画像取得手段)
20 画像記憶サーバ
100 画像配信システム
A 画像表示領域
B ユーザインタフェース領域
C 標本ID欄
D1〜D3 スライドバー
E サムネイル欄
F 確定ボタン
P VS画像(配信画像)
Q サムネイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本が撮影された原画像から作成され解像度によって階層化された解像度の異なる複数の階層画像を記憶する画像記憶サーバおよび画像を表示可能な端末とネットワークを介して接続され、
前記端末から前記標本の画像の配信要求を該画像の表示倍率の指定とともに受信する要求受信手段と、
該要求受信手段によって受信された指定の表示倍率に基づいて解像度を決定する解像度決定手段と、
前記解像度決定手段によって決定された解像度に対応する階層と一致する階層および隣接する階層、もしくは、前記決定された解像度に対応する階層と隣接する2つの階層に位置する階層画像を前記画像記憶サーバから取得する画像取得手段と、
該画像取得手段によって取得された2つの階層画像にそれぞれ重みを付して合成することにより配信画像を生成する画像合成手段と、
該画像合成手段によって生成された配信画像を前記端末に送信する画像送信手段とを備え、
前記画像合成手段が、前記決定された解像度との差分が小さい方の解像度の階層画像により大きな重みを付す画像配信サーバ。
【請求項2】
前記画像合成手段が、前記差分が小さい方の解像度の階層画像の方が透明度が低くなるように前記2つの階層画像を透明化して重畳する請求項1に記載の画像配信サーバ。
【請求項3】
前記画像合成手段が、各階層画像の解像度と前記指定された解像度との差分の比に比例する重みを各階層画像に付す請求項1または請求項2に記載の画像配信サーバ。
【請求項4】
画像を表示可能な端末とネットワークを介して接続され、
標本が撮影された原画像から作成され解像度によって階層化された解像度の異なる複数の階層画像を記憶する画像記憶手段と、
前記端末から前記標本の画像の配信要求を該画像の表示倍率の指定とともに受信する要求受信手段と、
該要求受信手段によって受信された指定の表示倍率に基づいて解像度を決定する解像度決定手段と、
前記画像記憶手段に記憶されている階層画像群のうち、前記解像度決定手段によって決定された解像度に対応する階層と一致する階層および隣接する階層に位置する2つの階層画像、もしくは、前記決定された解像度に対応する階層と隣接する2つの階層に位置する2つの階層画像にそれぞれ重みを付して合成することにより配信画像を生成する画像合成手段と、
該画像合成手段によって生成された配信画像を前記端末に送信する画像送信手段とを備え、
前記画像合成手段が、前記決定された解像度との差分が小さい方の解像度の階層画像により大きな重みを付す画像配信サーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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