説明

界面活性剤およびプロテアーゼを使用して核酸を単離するための組成物、方法およびキット

【課題】本発明は、組織全体を含む生物学的サンプルから核酸を単離するための組成物および方法を提供することを課題とする。本発明はまた、生物学的サンプルから核酸を単離するためのキットを提供することを課題とする。
【解決手段】生物学的サンプルから核酸を得て、そして該核酸を固相に結合させるための方法であって、以下:該生物学的サンプルに破壊緩衝液を接触させる工程であって、該破壊緩衝液は、プロテアーゼおよびカチオン性界面活性剤を含む、工程;該カチオン性界面活性剤を実質的に中和する工程;ならびに該核酸を固相に結合させる工程、を包含する方法を提供することによって、上記課題が解決された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全組織を含む生物学的サンプルからの、核酸の遊離および単離のための組成物および方法に関連する。本発明はまた、生物学的サンプルからの核酸の単離および/または遊離のためのキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
生物学的サンプルから核酸を単離するための現行の方法としては、組織の浸軟、細胞の溶解、ならびにカオトロピズム塩(グアニジン塩酸塩、またはチオシアン酸グアニジニウムなど)、および非イオン性界面活性剤を用いるヌクレアーゼの不活性化が挙げられ得る。次いで、遊離された核酸は、溶液から選択的に沈殿され得る。
【0003】
様々な化学分解方法(界面活性剤、カオトロープ(chaotrope)、プロテアーゼ、胆汁酸塩、有機溶媒、および過酷な酸性条件または過酷な塩基性条件を用いる)が、組織を浸軟し、核酸を遊離させるために使用されている。そのような方法を使用して得られる核酸は、長いインキュベーション時間または過酷な条件への曝露が原因で、分解され得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の概要)
特定の実施形態において、生物学的サンプルからの核酸の遊離のための組成物が、提供される。特定の実施形態において、この組成物は、少なくとも1つのカチオン性界面活性剤、少なくとも1つのプロテアーゼ、および緩衝液を含む。
【0005】
特定の実施形態において、生物学的サンプルから核酸を遊離する方法が、提供される。特定の実施形態において、生体から核酸を単離する方法が、提供される。特定の実施形態において、これらの方法は、反応組成物を形成するために、少なくとも1つのカチオン性界面活性剤、少なくとも1つのプロテアーゼ、および緩衝液とサンプルとを混合する工程を含む。特定の実施形態において、この反応組成物は、第2の界面活性剤をさらに含む。特定の実施形態において、この反応組成物は、塩をさらに含む。特定の実施形態において、この反応組成物は、生物学的サンプルから核酸を遊離するのに、適した条件下でインキュベートされる。特定の実施形態において、遊離された核酸は、次いで、単離される。
【0006】
特定の実施形態において、生物学的サンプルから核酸を単離および/または遊離するためのキットがまた、提供される。特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1つのカチオン性界面活性剤および少なくとも1つのプロテアーゼを含むキットを提供する。特定の実施形態において、キットは、第2の界面活性剤、塩、有機抽出剤、有機沈殿剤、可溶化剤、核酸結合固相、またはこれらの成分の組合せをさらに含む。
【0007】
特定の実施形態に従って、生物学的サンプルから核酸を得る方法、および固相に核酸を結合する方法が、提供される。特定の実施形態において、この方法は、生物学的サンプルと、(プロテアーゼおよびカチオン性界面活性剤を含む)破壊緩衝液とを接触させる工程、および核酸を固相へ結合させる工程を含む。特定の実施形態において、この方法は、生物学的サンプルと、(プロテアーゼおよびカチオン性界面活性剤を含む)破壊緩衝液とを接触させる工程、およびカチオン性界面活性剤を実質的に中和する工程、および核酸を固相に結合する工程を含む。
【0008】
特定の実施形態に従って、プロテアーゼ、カチオン性界面活性剤および第2の界面活性剤を含むキットが、提供される。第2の界面活性剤は、プロテアーゼおよびカチオン性界面活性剤の存在下で、核酸の固相への結合を可能にする。
【0009】
特定の実施形態に従って、生物学的サンプルから核酸を得るためのキットが提供され、このキットは、プロテアーゼ、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤を含む。ここで、非イオン性界面活性剤は、プロテアーゼおよびカチオン性界面活性剤、および高塩緩衝液の存在下で、核酸の固相への結合を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施形態の詳細な説明)
本発明においては、以下が提供される。
(項目1) 生物学的サンプルから核酸を得て、そして該核酸を固相に結合させるための方法であって、以下:
該生物学的サンプルに破壊緩衝液を接触させる工程であって、該破壊緩衝液は、以下:
プロテアーゼ;および
カチオン性界面活性剤、
を含む、工程;
該カチオン性界面活性剤を実質的に中和する工程;ならびに
該核酸を固相に結合させる工程、
を包含する、方法。
(項目2) 項目1に記載の方法であって、前記緩衝剤のpHがpH8よりも上昇される場合に、前記カチオン性界面活性剤が沈殿しない、方法。
(項目3) 項目1に記載の方法であって、前記カチオン性界面活性剤を実質的に中和する工程が、該カチオン性界面活性剤を除去することを包含する、方法。
(項目4) 項目1に記載の方法であって、前記カチオン性界面活性剤を実質的に中和する工程が、該カチオン性界面活性剤を実質的に中和する第2の界面活性剤を添加することを包含する、方法。
(項目5) 項目4に記載の方法であって、前記界面活性剤が、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTACl)、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(TTAB)、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド(TTACl)、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB)、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(DTACl)、ドデシルエチルジメチルアンモニウムブロミド(DEDTAB)、デシルトリメチルアンモニウムブロミド(D10TAB)、およびドデシルトリフェニルホスホニウムブロミド(DTPB)からなる群の少なくとも1つから選択される、方法。
(項目6) 塩を添加する工程をさらに包含する、項目4に記載の方法。
(項目7) 項目6に記載の方法であって、前記塩が、NaBr、NaI、NaSCN、LiCl、LiBr、LiI、GuHClおよびGuSCNからなる群の少なくとも1つから選択される、方法。
(項目8) 項目6に記載の方法であって、前記塩が、CaClであり、そして少なくとも20mMの濃度で存在する、方法。
(項目9) 前記第2の界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、項目4に記載の方法。
(項目10) 項目9に記載の方法であって、前記非イオン性界面活性剤が、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X−100)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween 21)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(Tween 40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(Tween 60)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween 80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノトリオレエート(Tween 85)、(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630)、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30)、およびソルビタンモノラウレート(Span 20)からなる群の少なくとも1つから選択される、方法。
(項目11) 前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween 20)である、項目9に記載の方法。
(項目12) 前記Tween 20が、少なくとも4% w/wの濃度で存在する、項目11に記載の方法。
(項目13) 前記Tween 20が、20% w/wの濃度で存在する、項目12に記載の方法。
(項目14) 前記プロテアーゼが、サブチリシン、サブチラーゼ、およびアルカリセリンプロテアーゼからなる群の少なくとも1つから選択される、項目1に記載の方法。
(項目15) 項目14に記載の方法であって、前記プロテアーゼが、プロテイナーゼK、プロテイナーゼR、プロテイナーゼT、サブチリシンDY、Streptomyces griseus由来のアルカリセリンプロテアーゼ、Bacillus lichenformis由来のアルカリセリンプロテアーゼ、ディスパーゼ、サブチリシンCalsberg、サブチロペプチダーゼA、およびサーモリシンからなる群の少なくとも1つから選択される、方法。
(項目16) 前記プロテアーゼが、熱安定性プロテアーゼである、項目1に記載の方法。
(項目17) 項目16に記載の方法であって、前記熱安定性プロテアーゼが、Thermus Rt41AおよびBacillus thermoproteolyticus rokkoからなる群の少なくとも1つから選択される生物から単離される、方法。
(項目18) 前記破壊緩衝液が、リボヌクレアーゼインヒビターをさらに含む、項目4に記載の方法。
(項目19) 項目18に記載の方法であって、前記リボヌクレアーゼインヒビターが、バナジレートリボヌクレオシド複合体、フェニルグリオキサール、p−ヒドロキシフェニルグリオキサール、ポリアミン、スペルミジン、9−アミノアクリジン、ヨードアセテート、ベントナイト、ポリ[2’−O−(2,4−ジニトロフェニル)]ポリ(アデニル酸)、硫酸亜鉛、ブロモピルベート、ホルムアミド、銅、および亜鉛からなる群の少なくとも1つから選択される、方法。
(項目20) 前記リボヌクレアーゼインヒビターが、アウリントリカルボン酸である、項目18に記載の方法。
(項目21) 前記アウリントリカルボン酸が、10μMの濃度で存在する、項目20に記載の方法。
(項目22) デオキシリボヌクレアーゼインヒビターを添加する工程をさらに包含する、項目4に記載の方法。
(項目23) 前記デオキシリボヌクレアーゼインヒビターが、二価カチオンキレート剤を含む、項目22に記載の方法。
(項目24) 前記二価カチオンキレート剤が、EDTA、EGTAおよびDPTAからなる群の少なくとも1つから選択される、項目23に記載の方法。
(項目25) 生物学的サンプルから核酸を得て、そして該核酸を固相に結合させるための方法であって、以下:
該生物学的サンプルに破壊緩衝液を接触させる工程であって、該破壊緩衝液は、以下:
プロテアーゼ;および
カチオン性界面活性剤、
を含む、工程;ならびに
該核酸を固相に結合させる工程、
を包含する、方法。
(項目26) 項目25に記載の方法であって、前記カチオン性界面活性剤が、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTACl)、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(TTAB)、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド(TTACl)、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB)、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(DTACl)、ドデシルエチルジメチルアンモニウムブロミド(DEDTAB)、デシルトリメチルアンモニウムブロミド(D10TAB)、およびドデシルトリフェニルホスホニウムブロミド(DTPB)からなる群の少なくとも1つから選択される、方法。
(項目27) 塩を添加する工程をさらに包含する、項目25に記載の方法。
(項目28) 項目27に記載の方法であって、前記塩が、NaBr、NaI、NaSCN、LiCl、LiBr、LiI、GuHClおよびGuSCNからなる群の少なくとも1つから選択される、方法。
(項目29) 項目27に記載の方法であって、前記塩が、CaClであり、そして少なくとも20mMの濃度で存在する、方法。
(項目30) 前記プロテアーゼが、サブチリシン、サブチラーゼ、およびアルカリセリンプロテアーゼからなる群の少なくとも1つから選択される、項目25に記載の方法。
(項目31) 項目30に記載の方法であって、前記プロテアーゼが、プロテイナーゼK、プロテイナーゼR、プロテイナーゼT、サブチリシンDY、Streptomyces griseus由来のアルカリセリンプロテアーゼ、Bacillus lichenformis由来のアルカリセリンプロテアーゼ、ディスパーゼ、サブチリシンCalsberg、サブチロペプチダーゼA、およびサーモリシンからなる群の少なくとも1つから選択される、方法。
(項目32) 前記プロテアーゼが、熱安定性プロテアーゼである、項目25に記載の方法。
(項目33) 項目32に記載の方法であって、前記熱安定性プロテアーゼが、Thermus Rt41AおよびBacillus thermoproteolyticus rokkoからなる群の少なくとも1つから選択される生物から単離される、方法。
(項目34) 前記破壊緩衝液が、リボヌクレアーゼインヒビターをさらに含む、項目25に記載の方法。
(項目35) 項目34に記載の方法であって、前記リボヌクレアーゼインヒビターが、バナジレートリボヌクレオシド複合体、フェニルグリオキサール、p−ヒドロキシフェニルグリオキサール、ポリアミン、スペルミジン、9−アミノアクリジン、ヨードアセテート、ベントナイト、ポリ[2’−O−(2,4−ジニトロフェニル)]ポリ(アデニル酸)、硫酸亜鉛、ブロモピルベート、ホルムアミド、銅、および亜鉛からなる群の少なくとも1つから選択される、方法。
(項目36) 前記リボヌクレアーゼインヒビターが、アウリントリカルボン酸である、項目34に記載の方法。
(項目37) 前記アウリントリカルボン酸が、10μMの濃度で存在する、項目36に記載の方法。
(項目38) デオキシリボヌクレアーゼインヒビターを添加する工程をさらに包含する、項目25に記載の方法。
(項目39) 前記デオキシリボヌクレアーゼインヒビターが、二価カチオンキレート剤を含む、項目38に記載の方法。
(項目40) 前記二価カチオンキレート剤が、EDTA、EGTAおよびDPTAからなる群の少なくとも1つから選択される、項目39に記載の方法。
(項目41) キットであって、以下:
プロテアーゼ;
カチオン性界面活性剤;および
第2の界面活性剤
を備え、該第2の界面活性剤が、該カチオン性界面活性剤を実質的に中和する、キット。
(項目42) 項目41に記載のキットであって、前記緩衝剤のpHがpH8よりも上昇される場合に、前記カチオン性界面活性剤が沈殿しない、キット。
(項目43) 項目41に記載のキットであって、前記カチオン性界面活性剤が、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTACl)、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(TTAB)、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド(TTACl)、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB)、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(DTACl)、ドデシルエチルジメチルアンモニウムブロミド(DEDTAB)、デシルトリメチルアンモニウムブロミド(D10TAB)、およびドデシルトリフェニルホスホニウムブロミド(DTPB)からなる群の少なくとも1つから選択される、キット。
(項目44) 前記プロテアーゼが、サブチリシン、サブチラーゼ、およびアルカリセリンプロテアーゼからなる群の少なくとも1つから選択される、項目41に記載のキット。
(項目45) 項目44に記載のキットであって、前記プロテアーゼが、プロテイナーゼK、プロテイナーゼR、プロテイナーゼT、サブチリシンDY、Streptomyces griseus由来のアルカリセリンプロテアーゼ、Bacillus lichenformis由来のアルカリセリンプロテアーゼ、ディスパーゼ、サブチリシンCalsberg、サブチロペプチダーゼA、およびサーモリシンからなる群の少なくとも1つから選択される、キット。
(項目46) 前記プロテアーゼが、熱安定性プロテアーゼである、項目41に記載のキット。
(項目47) 項目46に記載のキットであって、前記熱安定性プロテアーゼが、Thermus Rt41AおよびBacillus thermoproteolyticus rokkoからなる群の少なくとも1つから選択される生物から単離される、キット。
(項目48) リボヌクレアーゼインヒビターをさらに備える、項目41に記載のキット。
(項目49) 項目48に記載のキットであって、前記リボヌクレアーゼインヒビターが、バナジレートリボヌクレオシド複合体、フェニルグリオキサール、p−ヒドロキシフェニルグリオキサール、ポリアミン、スペルミジン、9−アミノアクリジン、ヨードアセテート、ベントナイト、ポリ[2’−O−(2,4−ジニトロフェニル)]ポリ(アデニル酸)、硫酸亜鉛、ブロモピルベート、ホルムアミド、銅、および亜鉛からなる群の少なくとも1つから選択される、キット。
(項目50) 前記リボヌクレアーゼインヒビターが、アウリントリカルボン酸である、項目48に記載のキット。
(項目51) 前記アウリントリカルボン酸が、10μMの濃度で存在する、項目50に記載のキット。
(項目52) デオキシリボヌクレアーゼインヒビターをさらに備える、項目41に記載のキット。
(項目53) 前記デオキシリボヌクレアーゼインヒビターが、二価カチオンキレート剤を備える、項目52に記載のキット。
(項目54) 前記二価カチオンキレート剤が、EDTA、EGTAおよびDPTAからなる群の少なくとも1つから選択される、項目53に記載のキット。
(項目55) 塩をさらに備える、項目41に記載のキット。
(項目56) 項目55に記載のキットであって、前記塩が、NaBr、NaI、NaSCN、LiCl、LiBr、LiI、GuHClおよびGuSCNからなる群から選択される、キット。
(項目57) 前記塩が、CaClである、項目55に記載のキット。
(項目58) 前記CaClが、少なくとも20mMの濃度で存在する、項目57に記載のキット。
(項目59) 前記第2の界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、項目41に記載のキット。
(項目60) 項目59に記載のキットであって、前記非イオン性界面活性剤が、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X−100)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween 21)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(Tween 40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(Tween 60)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween 80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノトリオレエート(Tween 85)、(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630)、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30)、およびソルビタンモノラウレート(Span 20)からなる群から選択される、キット。
(項目61) 前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween 20)である、項目59に記載のキット。
(項目62) 前記Tween 20が、少なくとも4% w/wの濃度で存在する、項目61に記載のキット。
(項目63) 前記Tween 20が、20% w/wの濃度で存在する、項目61に記載のキット。
(項目64) 生物学的サンプルから核酸を得るためのキットであって、以下:
プロテアーゼ;
カチオン性界面活性剤;
非イオン性界面活性剤であって、該非イオン性界面活性剤は、該プロテアーゼおよびカチオン性界面活性剤の存在下で、固相への核酸の結合を可能にする、非イオン性界面活性剤;および
高塩濃度を有する緩衝液
を備える、キット。
【0011】
上記の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方が、例示および説明のみのためであり、そして特許請求される本発明の限定ではないことが、理解されるべきである。本出願において、単数形の使用は、他に特に示されない限り、複数形を含む。本出願において、「または」の使用は、他に特に示されない限り、「および/または」を意味する。さらに、用語「含む(including)」ならびに他の形態(例えば、「含む(includes)」および「含んだ(included)」)の使用は、限定ではない。
【0012】
本明細書中に使用される節の見出しは、編成目的のみのためであり、記載される本件事項を制限するものとして解釈されるべきではない。本出願に引用される全文書(特許、特許出願、論文、書籍、および学術論文が挙げられるが、これらに限定されない)は、その全体がいずれかの目的のために参考として明確に引用される。
【0013】
(定義)
用語「アルキル基」は、直鎖アルカン、分枝アルカン、または環状アルカンに基づく炭化水素部分をいう。直鎖アルカンは、一般化学式C2n+2(ここでCは、炭素原子を表し、Hは水素原子を表し、そしてnは自然数を表す)を有する有機化合物である。例示的な直鎖アルカンとしては、メタン(CH)、エタン(C)、プロパン(C)、ブタン(C10)、オクタンなどが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な分枝アルカンとしては、イソブタン(C10)、イソペンタン(C12)などが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な環状アルカンとしては、シクロブタン(C)、シクロヘキサン(C12)などが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアルキル基としては、メチル(−CH)、プロピル(−C)、オクチル(−C17)などが挙げられるが、これらに限定されない。アルカンは、代表的に不活性であるが、アルキル基はほかの分子と組み合わされて化合物を形成し得る。例えば、イソプロピルアルコール(COH)は、プロピル基を含むアルコールである。アルキル基およびアルカンの一般的な考察は、とりわけ、MorrisonおよびBoyd,Organic Chemistry,第3版、Allyn and Bacon,Boston,MA,1973;ならびにVollhardt,Organic Chemistry,W.H.Freeman,New York,NY,1987に見出され得る。
【0014】
用語「アリール基」は、ベンゼンまたは他の芳香族化合物に基づく炭化水素部分をいう。アリール基は、アルキル基のように、他の分子を組み合わされて、化合物を形成し得る。芳香族化合物およびアリール基の一般的な考察は、とりわけ、MorrisonおよびBoyd,Organic Chemistry,第3版、Allyn and Bacon,Boston,MA,1973;ならびにVollhardt,Organic Chemistry,W.H.Freeman,New York,NY,1987,特に、第19章に見出され得る。
【0015】
用語「生物学的サンプル」は、広義に使用され、核酸を含む種々の生物学的供給源を含むことが意図される。このような供給源としては、組織全体(生検材料および吸引物を含む);インビトロ培養細胞(初代細胞および二次細胞、形質転換細胞株、ならびに組織および細胞外植片を含む);全血、赤血球、白血球、およびリンパ;ならびに体液(例えば、尿、唾液、精液、分泌物、洗眼水および吸引物、肺洗浄水および吸引物)が挙げられるが、これらに限定されない。真菌および植物組織(例えば、葉、根、幹、およびキャップ)もまた、本発明の範囲内である。生物学的サンプル上または生物学的サンプル中に存在し得る微生物およびウイルスは、本発明の範囲内である。細菌細胞もまた、本発明の範囲内である。
【0016】
用語「緩衝液」は、本明細書中に使用される場合、酸または塩基がその溶液に添加された場合に、pHの変化に抵抗する水溶液または組成物をいう。pH変化に対するこの抵抗性は、その溶液の緩衝作用に起因する。緩衝活性を示す溶液は、緩衝液または緩衝溶液と呼ばれる。緩衝液は、代表的に、溶液または組成物のpHを維持する無制限の能力は有さない。むしろ、緩衝液は、代表的に、特定の範囲内のpH(例えば、pH5とpH7との間)を維持し得る。一般的に、C.Mohan,Buffers,A guide for the preparation and use of buffers in biological systems,Calbiochem,1999を参照のこと。例示的な緩衝液としては、MES([2−(N−モルホリノ(N−Morphilino))エタンスルホン酸])、ADA(N−2−アセトアミド−2−イミノジ酢酸)、Tris([トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン];Trizmaとしても公知);Bis−Tris;ACES;PIPES;MOPSなど(全てSigmaから入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
特定のpH範囲内(例えば、pH5とpH7との間)でpHを維持する緩衝液、および本明細書中に使用されるような類似の用語は、示されたpH範囲内のいくつかの点で緩衝作用を示す、任意の緩衝液を含むことが意図される。従って、この用語は、示された範囲全体内で緩衝能力を示さない緩衝液、および示された範囲を超えて緩衝能力を有する緩衝液を含む。例えば、溶液Aは、pH5.2とpH6.7との間で緩衝能力を示し得、溶液Bは、pH6.0とpH8.0との間で緩衝能力を示し得る。本発明のために、これらの溶液は両方とも、pH5.0〜pH7.0の範囲内でpHを維持する緩衝液とみなされる。当業者は、緩衝液の表を用いて、特定された範囲間でpHを維持するための適切な緩衝液を同定し得る。緩衝液の表は、特に、Calbiochem 2000−2001 General Catalog 81〜82頁、およびSigma 2000−2001 Biochemicals and Reagents for Life Science Research Catalog 1873頁(これらは共に、参考として明確に援用される)に見出され得る。
【0018】
用語「カオトロープ(chaotrope)」または「カオトロープ塩」は、本明細書中に使用される場合、例えば、タンパク質または核酸の一次構造をインタクトにしたままで、タンパク質または核酸の二次構造、三次構造、または四次構造を変更することによって(これに限定されない)、タンパク質または核酸中に異常をもたらす物質をいう。例示的なカオトロープとしては、塩酸グアニジン、チオシアン酸グアニジニウム、チオシアン酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウムおよび尿素が挙げられるが、これらに限定されない。代表的なアニオン性カオトロープシリーズとしては、カオトロープ強度が低下する順に示すと:CCl3COO−>>CNS−>CF3COO−>ClO4−>−I>CH3COO−>Br−、Cl、またはCHO2−が挙げられる。カオトロープおよびカオトロープ塩の説明は、特に、Hamaguchi,KozoおよびGeiduschek;E.Peter;Hatefi,YおよびHanstein,W.G.(1962)、「Solubilization of Particulate Proteins And Nonelectrolytes
by Chaotropic Agents」、Proc.Natl.Acad.Sci.62:1129−1136);The Effect Of Electrolytes On The Stability Of The Deoxyribonucleate Helix,J.Amer.Chem.Soc.84:1329−1338);ならびに米国特許第5,234,809号に見出され得る。
【0019】
「キレート剤」は、金属カチオン(例えば、ナトリウム(Na+)イオン、マグネシウム(Mg++)イオン、またはカルシウム(Ca++)イオン)に結合し得る、化合物である。キレート剤の少なくとも2つの非金属イオンが、金属カチオンをその環の中に組み込んで、金属カチオンと配位結合を形成する。従って、金属カチオンは、いくつかの反応に関与するためには、もはや遊離ではない。例えば、キレートされた金属は、タンパク質を結合および活性化するために利用可能ではないかもしれない。1つの電荷を有するカチオン(例えば、Na+)は、一価カチオンと呼ばれ、一方、2つの電荷を有するカチオン(例えば、Mg++またはCa++)は、二価カチオンと呼ばれる。いくつかの酵素(例えば、特定のポリメラーゼおよびヌクレアーゼ)は、代表的に、遊離の二価カチオンの存在下で機能する。従って、二価カチオンキレート剤は、十分な量で提供される場合、このような二価カチオン依存性酵素の活性を阻害または低下させ得る。例示的なキレート剤としては、EDTA、EGTA、ジアミノエタンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
「ヌクレアーゼ」(例えば、デオキシリボヌクレアーゼ(DNアーゼ)またはリボヌクレアーゼ(RNアーゼ)は、核酸ポリマー中のホスホジエステル結合の加水分解を触媒する、酵素である。ヌクレアーゼは、核酸ポリマーの分解を引き起こし、構成要素であるヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチド(そのポリマーのフラグメント)を放出させる。DNアーゼは、DNA分子を分解し、RNアーゼは、RNA分子を分解する。ヌクレアーゼ活性は、代表的には、適切なヌクレアーゼインヒビターによって遅延または妨害され得る。特定の実施形態において、ヌクレアーゼは、RNAまたはDNAのいずれかを分解する化学物質であり得る。このようなヌクレアーゼの例としては、フェナントロリン−銅複合体;ならびに鉄と、過酸化水素と、エチレンジアミンテトラ酢酸との組合せが、挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書中で使用される場合、用語「有機溶媒」とは、有機液体(すなわち、炭化水素骨格を有する分子を含む液体)を指す。有機溶媒は、例えば、非溶媒分子がその溶媒中に溶解されるようにその溶媒分子でその非溶媒分子を囲むことによって、非溶媒分子を溶媒和させることができる。例示的有機溶媒としては、ベンゼン、四塩化炭素、クロロホルム、フェノール、および他のアルコール(例えば、エタノール、メタノール、およびイソプロパノール(2−プロパノール))、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられるが、これらに限定されない。有機溶媒は、例えば、特定の生化学的組成物から核酸を抽出するために、または水溶液から核酸を沈殿させるために、使用され得る。有機溶媒の考察は、とりわけ、MorrisonおよびBoyd,Organic Chemistry、第3版、AllynおよびBacon、Boston、MA、1973に見出され得る。
【0022】
本明細書中で使用される場合、用語「プロテアーゼ」とは、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、およびペプチド(まとめて「ペプチド」)中のペプチド結合の切断を触媒する、酵素を指す。例示的プロテアーゼとしては、サブチリシン、サブチラーゼ、およびアルカリセリンプロテアーゼが挙げられるが、これらに限定されない。サブチラーゼは、セリンプロテアーゼ(すなわち、切断のためにその活性部位中のセリンを使用する酵素)のファミリーである。サブチラーゼは、原核生物および真核生物(例えば、細菌、真菌、酵母および他の門)において見出される。サブチリシンは、広範な基質特異性を有する細菌性セリンプロテアーゼである。サブチリシンは、カオトロープ(例えば、尿素および塩酸グアニジン)およびアニオン性界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))による変性に対して、比較的耐性である。例示的サブチリシンとしては、プロテイナーゼK;プロテイナーゼR;プロテイナーゼT(Tritirachium album Limberから単離される);サブチリシンDY,カールスバーグ(サブチリシン、サブチリシンA、サブチロペプチダーゼA、またはアルカラーゼNovoとも呼ばれる);BPN’(ナガーゼプロテイナーゼ、ナガーゼ、またはサブチロペプチダーゼCとも呼ばれる);Novo(細菌性プロテイナーゼNovo、サブチリシンB、またはサブチロペプチダーゼBとも呼ばれる);腸膜間ペプチダーゼ;およびサーミターゼ(thermitase)が、挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
サブチラーゼ、サブチリシン、プロテイナーゼK、および他のプロテアーゼの考察は、とりわけ、Genovら(1995)Stability Of Subtilisins And Related Proteinases(Subtilases),Int.J.Peptide Protein Res.45:391〜400);NarhiおよびArakawa(1989)Sodium Dodecyl Sulfate Polyacrylamide Gel Electrophoresis As A Method For Studying The Stability Of Subtilisin、Biochimica et Biophysica Acta.第990巻:144〜149);DixonおよびWebb,Enzymes、第3版、Academic Press,New York,NY(1979);ならびにCreighton,Proteins:Structures and Molecular Principles、W.H.Freeman and Co.,New York,NY(1984)に見出され得る。
【0024】
用語「塩」とは、本明細書中で使用される場合、酸と塩基との相互作用により生成される化合物をさす。例示的塩基としては、塩化ナトリウム、リン酸カリウム、および炭酸水素ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。水および他の水溶液において、塩は、代表的には、「アニオン」(すなわち、負に荷電した小成分)と「カチオン」(すなわち、正に荷電した小成分)とに解離する。例えば、塩化ナトリウムが水中で解離する場合、塩化ナトリウム(NaCl)は、ナトリウムカチオン(Na+)と塩化物アニオン(Cl−)とに解離する。
【0025】
本明細書中で使用される場合、用語「界面活性剤」とは、一般的には、疎水性部分と親水性部分とを含む、表面活性剤を指す。界面活性剤の例としては、洗剤および胆汁酸塩が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Bhairi,A Guide to the Properties and Uses of Detergents in Biological Systems、Calbiochem−Novabiochem Corp.1997を参照のこと)。界面活性剤は、1つ以上の荷電基を含むか否かに依存して、アニオン性、非イオン性、双性イオン性、またはカチオン性に分類され得る。アニオン性界面活性剤(例えば、SDSまたはラウリルサルコシン)は、負に荷電した基を含み、そして正味負の電荷を有する。非イオン性界面活性剤は、非荷電性極性基を含み、電荷を有さない。例示的非イオン性界面活性剤としては、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X−100)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween 20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween 21)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(Tween 40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(Tween 60)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween 80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノトリオレエート(Tween 85)、(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40)、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30)、およびソルビタンモノラウレート(Span 20)が、挙げられるが、これらに限定されない。双性イオン性界面活性剤は、正に荷電した基と負に荷電した基との両方を含み、そして正味の電荷を有さない。
【0026】
「カチオン性界面活性剤」は、試験した条件下で正に荷電した基を有する。カチオン性界面活性剤は、四級アミンまたは三級アミンを含み得る。例示的四級アミン界面活性剤としては、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB;Calbiochem#B22633またはAldrich#85582−0)、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTACl;Aldrich#29273−7)、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTAB、Sigma#D−8638)、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTACl)、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム(TTAB)、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム(TTACl)、臭化ドデシルエチルジメチルアンモニウム(DEDTAB)、臭化デシルトリメチルアンモニウム(D10TAB)、臭化ドデシルトリフェニルホスホニウム(DTPB)、臭化オクタデシリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアロアルコニウム、塩化オレアルコニウム、塩化セトリモニウム、アルキルトリメチルアンモニウムメソサルフェート、パルミトアミドプロピルトリメチルクロリド、クオーターニウム84(Mackernium NLE;McIntyre
Group,Ltd.)およびコムギ脂質エポキシド(Mackernium
WLE;McIntyre Group,Ltd.)が挙げられるが、これらに限定されない。例示的三級アミン界面活性剤としては、オクチルジメチルアミン、デシルジメチルアミン、ドデシルジメチルアミン、テトラデシルジメチルアミン、ヘキサデシルジメチルアミン、オクチルデシルジメチルアミン、オクチルデシルメチルアミン、ジデシルメチルアミン、ドデシルメチルアミン、塩化トリアセチルアンモニウム、塩化セトリモニウム、および塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない。カチオン性界面活性剤のさらなる種類としては、ホスホニウム、イミダゾリン、およびエチル化アミン基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
アルキルアミンオキシドは、より低いpHでは代表的にはカチオン性であるが中性pHでは非イオン性である、種類の界面活性剤を示す。一般的構造は、以下の通りである:
【0028】
【化1】

【0029】
ここで、nは1と30との間の数値を示す。例としては、ヘキサデシルアミンオキシド、テトラデシルアミンオキシ、ドデシルアミンオキシド、デシルアミンオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
本発明に従う用語「全組織」は、単一の生物由来の任意の細胞収集物を含むように、広範な意味で使用される。組織の例としては、筋肉(心筋、横紋筋、および平滑筋を含む);器官(例えば、腎臓、肝臓、脾臓、および心臓);神経;皮膚層および表皮層(例えば、皮膚);血液;結合組織(例えば、骨、軟骨、靭帯、および腱)などが挙げられるが、これらに限定されない。全組織のフラグメント、片、セクション、スライス、および小成分は、本発明の範囲内にある。用語、全組織は、例えば、器官または骨全体には限定されない。任意のレベルの任意の細胞凝集物または細胞集合が、本発明の目的のためには、全組織であると見なされる。真菌組織および植物組織(例えば、葉、根、幹、およびキャップ)もまた、本発明の範囲内にある。
【0031】
用語「核酸」とは、本明細書中で使用される場合、サブユニット間にホスホジエステル結合を含む、リボヌクレオシドポリマーまたはデオキシリボヌクレオシドポリマーを指す。このような核酸としては、ゲノムDNA、cDNA、hnRNA、mRNA、rRNA、tRNA、断片核酸、亜細胞小器官(例えば、ミトコンドリアまたは葉緑体)から得られた核酸、ならびに生物学的サンプル上またはサンプル中に存在し得る微生物またはDNAウイルスもしくはRNAウイルスから得られた核酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
生物学的サンプルから放出される核酸に結合することができる固相成分(固相または固相支持体とも呼ばれる)としては、適切な条件下で核酸に結合することができる種々の材料が挙げられる。例示的固相成分としては、シリカ粒子、二酸化ケイ素、ケイ藻土、ガラス、アルキルシリカ、ケイ酸アルミニウム、ホウケイ酸塩、ニトロセルロース、ジアゾ化紙、ヒドロキシアパタイト、ナイロン、金属酸化物、ジルコニア、アルミナ、ジエチルアミノエチル誘導体化支持体およびトリエチルアミノエチル誘導体化支持体(Chromegabond SAX,LiChrosorb−AN、Nucleosil SB、Partisil SAX、RSL、Anion、Vydac TP Anion、Zorbax SAX、Nucleosil NMe2、Aminex Aシリーズ、Chromex、およびHamilton HA lonex SB、DEAEセファロース、QAEセファロース)、ならびに疎水性クロマトグラフィー樹脂(例えば、フェニルセファロースまたはオクチルセファロース)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
特定のポリマーは、適切な条件下で、溶液から核酸を沈殿させることができる。いくつかのポリマーは、低溶解度を有するかまたは不溶性である、核酸−ポリマー複合体を形成することができ、その結果、複合体化した核酸は沈殿し得る。核酸とこのような複合体を形成するポリマーの例としては、ポリエチレンイミン、DEAEデキストラン、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、他の弱塩基性ポリマー(とりわけ、米国特許第5,582,988号;同第5,733,762号;同第5,622,822号;および同第5,599,667号に記載される)などが挙げられるが、これらに限定されない。他のポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)は、溶液中で有意な量の水と結合し、これもまた、その溶液からの核酸の沈殿を引き起こし得る。
【0034】
特定の実施形態に従って、生物学的サンプルから核酸を放出させる方法およびその核酸を固相に結合する方法は、カチオン性界面活性剤を「実質的に中和する」工程を包含する。用語:カチオン性界面活性剤を「実質的に中和する」とは、本出願の目的のために、サンプル中の多数の核酸が、中和するのではなく、このような実質的な中和により固相に結合し得ることを意味する。特定の実施形態に従って、このカチオン性界面活性剤の実質的な中和は、カチオン性界面活性剤の1以上の効果を低減させること、阻害すること、または防止することによって達成され得る。特定の実施形態において、これらの効果としては、以下のうちの1以上が挙げられ得る:カチオン性界面活性剤によって核酸が沈殿すること、カチオン性界面活性剤が核酸に結合すること、核酸が固相に結合するのをブロックすること、および固相と相互作用した結果、核酸との結合を妨害すること。これらの効果の全てが、本発明の実施形態の全てにおいて、必ずしも存在するわけではない。特定の実施形態に従って、カチオン性界面活性剤を実質的に中和することは、破壊緩衝液中の条件によって達成され、そしてこの生物学的なサンプルをこの破壊緩衝液と接触させる工程からの分離工程を必ずしも含むわけではない。
【0035】
特定の実施形態において、カチオン性界面活性剤を「実質的に中和する」工程は、このカチオン性界面活性剤を実質的に中和する試薬を添加する工程、カチオン性界面活性剤を沈殿させる工程、相抽出によってカチオン性界面活性剤を除去する工程、透析によってカチオン性界面活性剤を除去する工程、カチオン性界面活性剤を固相に結合させる工程、および他の方法によってカチオン性界面活性剤を除去する工程のうちの少なくとも1つを包含し得るが、これらに限定されるわけではない。特定の実施形態において、カチオン性界面活性剤を実質的に中和する試薬としては、カオトロープ(chaotrope)、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、および双性イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書中で使用される場合、用語「破壊緩衝液」は、細胞を組織から放出させるプロセス、細胞を破壊して開くプロセス、または細胞を組織から放出させかつ、細胞を破壊して開くプロセスにおいて使用される、緩衝液をいう。
【0037】
(例示的な実施形態)
特定の実施形態において、本発明は、核酸を生物学的なサンプル(好ましくは、全組織)から単離するための、組成物、方法、およびキットに関する。特定の実施形態において、本発明の組成物、方法、およびキットは、サンプル調製に必要な時間を減少させ、繰り返されるサンプル操作を必要とする多段階手順によって課される潜在的な安全性の危険度を減少させ、そして/または高い完全性(すなわち、最小の分解性)の高分子量の核酸を提供する。特定の実施形態において、本発明の組成物、方法、およびキットは、組織を物理学的または機械学的に破壊するために、さらなる装置の必要性を除去する。
【0038】
この組成物およびキットは、界面活性剤およびプロテアーゼを含み、そしてこの方法は、界面活性剤およびプロテアーゼを使用する。特定の実施形態において、この生物学的なサンプルは、少なくとも1種のカチオン性界面活性剤と少なくとも1種のプロテアーゼとを合わされて、反応組成物を形成する。特定の実施形態において、次いで、この反応組成物が、核酸が生物学的サンプルから放出されるような様式でインキュベートされる。例えば、特定の実施形態において、インキュベーションの間、これらの反応組成物は、代表的に:(i)生物学的なサンプルを液浸軟化または脱凝集させ得;(ii)このサンプルを含む細胞を溶解し得;(iii)このサンプルを滅菌し得;(iv)ヌクレアーゼを中和または不活化させ得;そして(v)核酸を生物学的サンプルから放出させ得る。
【0039】
プロテイナーゼK単独は、代表的に、約12〜18時間インキュベートした場合に全組織を効果的に液浸軟化させるが、この放出した核酸は、頻繁に非常に分解される。この分解は、サンプル中に存在するヌクレアーゼに少なくとも一部において起因する。特定の実施形態において、この液浸軟化プロセスは、本明細書中に開示されるように、反応組成物にカチオン性界面活性剤を添加することによって、促進され得る。適切な条件下で、特定の実施形態において、高度な完全性の核酸は、本発明の組成物および方法を使用して、60分以内で生物学的サンプルから効率的に得られ得る。従って、特定の実施形態において、本発明の組成物および方法は、予想外の利点を提供する。
【0040】
いくつかのカチオン性界面活性剤は、適切な条件下で、放出された核酸と沈殿物との複合体を形成する。特定の実施形態において、これらのカチオン性界面活性剤:核酸複合体は、非イオン性界面活性剤および適切な塩を使用して溶解され得る。特定の実施形態において、これらのカチオン性界面活性剤:核酸複合体は、双性イオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤、および適切な塩を使用して、溶解され得る。従って、特定の実施形態において、この組成物は、第2の界面活性剤および塩をさらに含む。
【0041】
特定の実施形態において、この放出された核酸は、単離される。特定の実施形態において、核酸は、有機溶媒を使用して、生体分子(例えば、脂質、タンパク質など)を含む水溶液から効率的に単離され得る。例えば、特定の実施形態において、有機溶媒(例えば、フェノールまたはフェノールとクロロホルムとの組み合わせ)を使用して、このような溶液から核酸を抽出し得る。特定の実施形態において、抽出された核酸は、例えば、エタノール、プロパノール、またはブタノールのようなアルコールを使用して核酸を沈殿させることによって、単離され得る。特定の実施形態において、この放出された核酸は、この反応組成物から単離されない。
【0042】
特定の実施形態において、核酸はまた、その核酸を沈殿させるために、特定のポリマーまたは二価カチオンを使用して、反応組成物から単離され得る。核酸を沈殿させるための例示的なポリマーとしては、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、DEAEデキストラン、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、および他の弱い塩基性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。このようなポリマーの記載は、数ある中でも、米国特許第5,582,988号;同第5,733,762号;同第5,622,822号;および同第5,599,667号に見出され得る。特定の実施形態において、特定の二価カチオンがまた、核酸を、溶液から選択的に沈殿させ得る。このような二価カチオンの例としては、塩化亜鉛、塩化マグネシウムおよび硫酸マグネシウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
さらに、特定の実施形態において、核酸は、選択的に核酸と結合する固相支持対を使用して単離され得る。例えば、これに限定されないが、サンプル由来の核酸は、高濃度のカオトロープまたは塩の存在下で固相に吸着され得る。特定の実施形態において、固相を洗浄して、汚染物質を除去し得、そしてこの核酸を、低イオン強度の溶液を使用して固相から溶出し得る。適切な固相としては、シリカ粒子、二酸化ケイ素、珪藻土、ガラス、アルキルシリカ、ケイ素酸アルミニウム、またはホウケイ酸塩。
【0044】
また、特定の実施形態において、核酸は、低イオン強度の存在下で、イオン交換樹脂に結合され得る。特定の実施形態において、洗浄による汚染成分の除去後、核酸は、イオン強度を増加することによって、固相から溶出され得る。例示的なイオン交換樹脂としては、ジエチルアミノエチル誘導体化支持体およびトリエチルアミノエチル誘導体化支持体(Chromegabond SAX、LiChrosorb−AN、Nucleosil SB、Partisil SAX、RSL Anion、Vydac TP Anion、Zorbax SAX、Nucleosil NMe2、Aminex Aシリーズ、Chromex、およびHamilton HA lonex SB,DEAEセファロース、またはQAEセファロースなど)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、他の固相物質としてはまた、例えば、ニトロセルロース、ジアゾ化紙、ヒドロキシアパタイト、ナイロン、金属酸化物、ジルコニア、アルミナ、および逆相樹脂(例えば、オクチルセファロースまたはフェニルセファロース)を使用し得るが、これらに限定されないことを、当業者は理解する。
【0045】
本発明の組成物は、少なくとも1種のプロテアーゼを含む。特定の実施形態において、サブチリシン、サブチラーゼおよびアルカリセリンプロテアーゼのようなプロテアーゼを、使用する。例示的なプロテアーゼとしては、プロテイナーゼR、プロテイナーゼT、サブチリシンDY、ディスパーゼ、サブチリシンCarlsberg、サブチロペプチダーゼ(subtilopeptidase)A、サーモリシン、熱安定性プロテアーゼ(例えば、Thermus Rt41AおよびBacillus thermoproteolyticus rokko由来のもの)、ならびにStreptomyces griseusまたはBacillus licheniformis由来のアルカリセリンプロテアーゼが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態に従って、プロテアーゼは、プロテイナーゼKである。
【0046】
特定のプロテアーゼ(プロテイナーゼKを含む)は、塩化カルシウムの存在によって安定化され得る。塩化カルシウムが、特定のアニオン性界面活性剤(例えば、SDS)と合わされる場合、比較的不溶性の沈殿物が、形成され得る。特定の実施形態において、科学者は、プロテアーゼおよびアニオン性界面活性剤の両方を使用する場合に塩化カルシウムを使用しないことによって、このような沈殿を避けようとし得る。実質的な量のアニオン性界面活性剤が使用されない、本発明の特定の実施形態において、塩化カルシウムが、含まれ得る。カルシウムイオンおよび他の二価カチオンは、代表的に、カチオン性界面活性剤と反応して、不溶性の複合体を形成しない。
【0047】
特定の実施形態において、高い完全性のDNAを得るために、DNアーゼインヒビターが、本発明の組成物に添加され得る。例えば、多くの内因性DNアーゼsは、二価カチオンキレート剤(例えば、EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)、EGTA([エチレングリコール−ビス(β−アミノエチル)−N,N,N’,N’−テトラ酢酸])、DTPA(ジエチレントリアミンペンタ酢酸)など)よって阻害される。
【0048】
特定の実施形態において、少なくとも1種のカチオン性界面活性剤は、4級アミン、3級アミン、またはその両方を含む。特定の実施形態において、その少なくとも1種のカチオン性界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、セチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTACl)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDTAB)、またはヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(HDTACl)を含み、そしてこの少なくとも1種のプロテアーゼは、プロテイナーゼKを含む。
【0049】
特定の実施形態において、この少なくとも1種のカチオン性界面活性剤は、この界面活性剤をカチオン性にするpHのアルキルアミン酸化物(alky amine oxide)を含む。特定の実施形態において、この少なくとも1種のカチオン性界面活性剤は、酸化オクチルアミン、酸化デシルアミン、酸化ドデシルアミン、酸化テトラデシルアミン、および酸化ヘキサデシルアミンのうちの少なくとも1つを含む。
【0050】
特定の実施形態において、この少なくとも1種のカチオン性界面活性剤は、アルキルイミダゾリン誘導体またはアルキルホスホニウム誘導体を含む。
【0051】
特定の実施形態において、核酸を単離する工程としては、有機因子(例えば、フェノール、クロロホルム、フェノールとクロロホルムとの両方、またはβラクタム誘導体(これらに限定されない))を用いて、核酸を抽出する工程を包含する。特定の実施形態において、核酸は、有機因子(例えば、イソプロパノール、エタノール、またはブタノールのようなアルコール(これらに限定されない))で沈殿され得る。特定の実施形態において、核酸を単離する工程は、核酸を有機因子を用いて抽出する工程と、この抽出された核酸を有機因子を用いて沈殿させる工程との組み合わせを包含する。
【0052】
特定の実施形態において、カチオン性界面活性剤、プロテアーゼおよび緩衝液を使用する工程を包含する、リボ核酸を生物学的サンプルから単離する方法を提供する。特定の実施形態において、カチオン性界面活性剤は、CTAB(SigmaまたはAldrich)、CTACl(SigmaまたはAldrich)、HDTAB(Sigma#H−5882またはFluka#52367)、またはHDTACl(Fluka#41199)である。高度な完全性のRNAが所望される場合、内因性RNアーゼの存在は、しばしば、いくつかの現在の手順の効率を制限する。しかし、特定の実施形態において、本組成物および本方法の2つの成分は、高度な完全性のRNAの単離を増強する、内因性RNアーゼの活性を相殺し得る。第1に、プロテイナーゼKは、RNアーゼと不朽化し得る。第2に、カチオン性界面活性剤は、RNAと複合体を形成して、RNアーゼ分解に対するRNAの感受性を減少させ得る。例えば、Dahl,C.E.およびMacfarlane,D.E.,「Isolation Of RNA From
Cells In Culture Using Catrimox−14TM Cationic Surfactant」,BioTecniques 第15巻、第6号:1102〜1105(1993);Macfarlane,D.E.およびDahle,C.E.,「Isolation RNA From Whole Blood−The Dawn Of RNA−Based Diagnosis?」,Nature,第362号:186−188(1993);Macfarlane,D.E.およびDahle,C.E.,「Isolating RNA From Clinical Samples With Catrimox−14 and Lithium Chloride」,Journal of Clinical Laboratory Analysis」,11:132−139(1997)を参照のこと。
【0053】
特定の実施形態によれば、内因性RNAse活性は、本発明の組成物および方法を使用して、さらに低減される。例えば、特定の実施形態において、RNAseは、代表的に、より低いpH(例えば、pH5とpH7との間)および50℃未満の温度において、活性が低い。特定の実施形態において、アクリジンオレンジもまた、恐らく、放出されたRNA分子と相互作用してこれらのRNAを分解に対して感受性を低くすることによって、RNAseの核酸分解性(nucleolytic)活性を低下させ得る。特定の実施形態において、RNAseインヒビターがまた添加されて、RNAse活性を制限または防止し得る。例示的なRNAseインヒビターとしては、アウリントリカルボン酸、バナジレートリボヌクレオシド複合体、フェニルグリオキサール、p−ヒドロキシフェノールグリオキサール、ポリアミン、スペルミジン、9−アミノアクリジン、ヨードアセテート、ベントナイト、ポリ[2’−O−(2,4−ジニトロフェニル)]ポリ(アデニル酸(adenyhlic acid))、硫酸亜鉛、ブロモピルビン酸、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、銅、亜鉛などが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、本発明の組成物および方法は、少なくとも1つのRNAseインヒビターを含む。
【0054】
特定の実施形態によれば、組成物中、および方法において使用される、カチオン性界面活性剤は、以下の一般化学式を有する:
【0055】
【化2】

【0056】
(N:X)、ここで、カチオン部分R、R、R、およびRは、独立して、−H、20個までの炭素原子を含むアルキル基、または6個と26個との間の炭素原子を含むアリール基であり得;ここで、R、R、R、およびRのうちの少なくとも1つは、少なくとも6個の炭素のアルキル基を含み;そしてここで、Xは、アニオンである。例えば、カチオン性界面活性剤は、アルキルトリメチルアンモニウム塩であり得、ここで、R、R、およびRは、メチル基であり、そしてRは、6、8、10、12、14、16、または18の炭素原子を含むアルキル基である。アルキルトリメチルアンモニウム塩のカチオン性副成分(N)は、(限定せずに)セチルトリメチルアンモニウム基、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム基、テトラデシルトリメチルアンモニウム基、ドデシルトリメチルアンモニウム基、ラウリルトリメチルアンモニウム基などであり得る。この例示的なアルキルトリメチルアンモニウム塩のアニオン性副成分(X)は、(限定せずに)以下のイオンのいずれかであり得る:臭化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、シュウ酸イオン、マロン酸イオン、コハク酸イオン、またはクエン酸イオン。特定の実施形態において、カチオン性界面活性剤は、同じ群のアニオンを含む、ベンジルジメチル−n−アルキルアンモニウム塩である。
【0057】
特定の実施形態において、本発明の組成物および方法は、可溶化剤をさらに含み得る。特定の実施形態において、可溶化剤は、生物学的サンプルが消化に対して耐性である場合(例えば、このサンプルが組織全体を含む場合)に、特に有用である。特定の実施形態において、可溶化剤は、細胞内マトリックスの分解を補助し、界面活性剤およびプロテアーゼがサンプルに効率的に侵入し、そして分離することを可能にする。例示的な可溶化剤としては、1−メチル−2−ピロリジノン、N−メチルピロリジノン、ピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
特定の実施形態において、本発明はまた、核酸を生物学的サンプルから放出および/または単離するために設計された、キットを提供する。このキットは、少なくとも1つのカチオン性界面活性剤および少なくとも1つのプロテアーゼを含み、そして特定の実施形態によれば、さらなる成分を含み得る。特定の実施形態において、このキットは好ましくは、予め測定された単位量で成分を含み、最終使用者による測定を最小にする。特定の実施形態において、このキットは、本発明の1つ以上の方法を実施するための指示書を含む。特定の実施形態において、このキットは、別のものと組み合わせて操作するために最適化される。
【0059】
特定の実施形態において、少なくとも1つの界面活性剤は、CTAB、CTACl、HDTAB、HDTACl、または等価物を含む。特定の実施形態において、少なくとも1つのプロテアーゼは、プロテイナーゼKを含む。特定の実施形態において、抽出された核酸を単離するための他の試薬が、このようなキットに含まれ得る。特定の実施形態において、本発明のキットは、反応緩衝剤、塩、イオン、安定剤、ヌクレアーゼインヒビター、可溶化剤、またはこれらの成分の組み合わせをさらに含み得る。
【0060】
特定の実施形態によれば、生物学的サンプルから核酸を得、そしてこの核酸を固相に結合させるための方法が提供され、この方法は、以下の工程を包含する:この生物学的サンプルを破壊緩衝剤に接触させる工程であって、ここで、この破壊緩衝剤は、プロテアーゼおよびカチオン性界面活性剤を含む、工程;ならびにこの核酸を固相に結合させる工程。
【0061】
特定の実施形態によれば、生物学的サンプルから核酸を得、そしてこの核酸を固相に結合させるための方法が提供され、この方法は、以下の工程を包含する:この生物学的サンプルを、破壊緩衝剤に接触させる工程であって、ここで、この破壊緩衝剤は、プロテアーゼおよびカチオン性界面活性剤を含む、工程;引き続いて、このカチオン性界面活性剤を中和する工程;ならびにこの核酸を固相に結合させる工程。特定の実施形態によれば、このカチオン性界面活性剤は、この緩衝剤のpHがpH8より高く上昇する場合に、沈澱しない。
【0062】
方法の特定の実施形態によれば、カチオン性界面活性剤は、以下からなる群の少なくとも1つから選択される:セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTACl)、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(TTAB)、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド(TTACl)、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB)、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(DTACl)、ドデシルエチルジメチルアンモニウムブロミド(DEDTAB)、デシルトリメチルアンモニウムブロミド(D10TAB)、およびドデシルトリフェニルホスホニウムブロミド(DTPB)。
【0063】
特定の実施形態によれば、カチオン性界面活性剤を実質的に中和することは、このカチオン性界面活性剤を実質的に除去することによって達成される。特定の実施形態によれば、このような方法としては、沈澱、相抽出、および透析のうちの1つ以上が挙げられ得るが、これらに限定されない。このような方法の例示的な要約については、例えば、K.Ohlendieck,Removal of
Detergent From Protein Fractions,Methods Mol.Biol.59:305−312(1996)を参照のこと。特定の実施形態において、アニオン性界面活性剤は、不溶性の錯体を形成するカチオン(例えば、カリウムおよびグアニジニウム)との沈澱によって、除去され得る。例えば、Shively,J.E.Methods of Protein Microcharacterization,41−87頁(1986)を参照のこと。界面活性剤除去のための、市販の透析製品としては、Harverd/Amika Dialysis製品、Biodialyser(Western Analytical Products,Inc.)、ならびにAmicon(登録商標)、Microcon(登録商標)、およびCentricon(登録商標)遠心分離デバイス(Millipore Corporation)が挙げられるが、これらに限定されない。界面活性剤の除去のためのクロマトグラフィーアプローチとしては、ゲル濾過;疎水性クロマトグラフィー;逆相HPLC;およびイオン交換クロマトグラフィーが挙げられるが、これらに限定されない。このような技術および原理の例示的な要約に関しては、例えば、Bhairi,S.M.,Detergents:A Guide To The Properties And Uses Of Detergents
In Biological Systems,(1997)を参照のこと。界面活性剤の除去のための、市販の樹脂および他の製品の例としては、CALBIOSORBTM Absorbent(Calbiochem−Novabiochem Corporation);Detergent−OUTTM SDS−300(Genotech);Detergent−OUTTM DTG−100;OrgoSol−Detergent−OUTTM(Genotech);Bio−Beads SM2TM(BioRad);Vivapure Ion Exchange(Vivascience);およびZip TimHPL(Millipore Coiporation)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
方法の特定の実施形態によれば、カチオン性界面活性剤を実質的に中和することは、このカチオン性界面活性剤を実質的に中和する、第2の界面活性剤を添加する工程を包含する。特定の実施形態によれば、この第2の界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。特定の実施形態によれば、非界面活性剤は、以下からなる群の少なくとも1つから選択される:t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X−100)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween 20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween 21)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(Tween 40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(Tween 60)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween 80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノトリオレエート(Tween 85)、(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40)、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30)、およびソルビタンモノラウレート(Span 20)。特定の実施形態によれば、非イオン性界面活性剤は、Tween 20である。特定の実施形態によれば、Tween 20は、少なくとも4%w/wの濃度で存在する。特定の実施形態によれば、Tween 20は、20%w/wの濃度で存在する。
【0065】
方法の特定の実施形態によれば、核酸を生物学的サンプルから得、そしてこの核酸を固相に結合させるための方法は、塩を添加する工程をさらに包含する。特定の実施形態によれば、この塩は、NaCl、NaBr、NaI、NaSCN、LiCl、LiBr、LiI、GuHCl、およびGuSCNからなる群の少なくとも1つから選択される。方法の特定の実施形態によれば、塩はCaClであり、そして少なくとも20mMの濃度で存在する。
【0066】
方法の特定の実施形態によれば、プロテアーゼは、サブチリシン、サブチラーゼ、およびアルカリセリンプロテアーゼからなる群の少なくとも1つから選択される。特定の実施形態によれば、プロテアーゼは、プロテイナーゼK、プロテイナーゼR、プロテイナーゼT、サブチリシンDY、Streptmyces griseus由来のアルカリセリンプロテアーゼ、Bacillus lichenformis由来のアルカリセリンプロテアーゼ、ジスパーゼ、サブチリシンCalsberg、サブチロペプチダーゼA、およびサーモリシンからなる群の少なくとも1つから選択される。
【0067】
特定の実施形態によれば、プロテアーゼは、熱安定性プロテアーゼである。特定の実施形態によれば、熱安定性プロテアーゼは、Thermus Rt41AおよびBacillus thermoproteolyticus rokkoを含む群の少なくとも1つから選択される生物から、単離される。
【0068】
方法の特定の実施形態によれば、溶解緩衝剤は、さらに、リボヌクレアーゼインヒビターを含む。特定の実施形態によれば、リボヌクレアーゼインヒビターは、バナジレートリボヌクレオシド複合体、フェニルグリオキサール、p−ヒドロキシフェニルグリオキサール、ポリアミン、スペルミジン、9−アミノアクリジン、ヨードアセテート、ベントナイト、ポリ[2’−O−(2,4−ジニトロフェニル)]ポリ(アデニル酸)、硫酸亜鉛、ブロモピルベート、ホルムアミド、銅、および亜鉛を含む群の少なくとも1つから選択される。特定の実施形態によれば、リボヌクレアーゼインヒビターは、アウリントリカルボン酸である。特定の実施形態によれば、アウリントリカルボン酸は、10μMの濃度で存在する。
【0069】
特定の実施形態によれば、核酸を生物学的サンプルから得、そしてその核酸を固相に結合するための方法は、デオキシリボヌクレアーゼインヒビターを添加する工程をさらに包含する。特定の実施形態によれば、デオキシリボヌクレアーゼインヒビターは、二価のカチオンキレート剤を含む。特定の実施形態によれば、二価のカチオンキレート剤は、EDTA、EGTA、およびDPTAからなる群の少なくとも1つから選択される。
【0070】
特定の実施形態によれば、プロテアーゼ;カチオン性界面活性剤;塩;および第2の界面活性剤を備えるキットが提供され、ここで、この第2の界面活性剤は、カチオン性界面活性剤を実質的に中和する。
【0071】
このキットの特定の実施形態に従って、このカチオン性界面活性剤は、緩衝液のpHが8より上に上昇する場合、沈殿しない。
【0072】
このキットの特定の実施形態に従って、このカチオン性界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTACl)、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム(TTAB)、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム(TTACl)、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTAB)、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTACl)、臭化ドデシルエチルジメチルアンモニウム(DEDTAB)、臭化デシルトリメチルアンモニウム(D10TAB)、および臭化ドデシルトリフェニルホスホニウム(DTPB)を含む群のうちの少なくとも1つから選択される。
【0073】
このキットの特定の実施形態に従って、このプロテアーゼは、サブチリシン、サブチラーゼ、およびアルカリ性セリンプロテアーゼを含む群のうちの少なくとも1つから選択される。特定の実施形態において、このプロテアーゼは、プロテイナーゼK、プロテイナーゼR、プロテイナーゼT、サブチリシンDY、Streptomyces griseus由来のアルカリセリンプロテアーゼ、Bacillus lichenformis由来のアルカリセリンプロテアーゼ、ジスパーゼ、サブチリシンCalsberg、サブチロペプチダーゼA、およびサーモリシンを含む群のうちの少なくとも1つより選択される。
【0074】
このキットの特定の実施形態に従って、このプロテアーゼは、熱安定性プロテアーゼである。特定の実施形態において、この熱安定性プロテアーゼは、Thermus Rt41AおよびBacillus thermoproteolyticus rokkoを含む群のうちの少なくとも1つより選択される生物体から単離される。
【0075】
特定の実施形態に従って、このキットはさらに、リボヌクレアーゼインヒビターを含む。特定の実施形態において、このリボヌクレアーゼインヒビターは、バナジレートリボヌクレオシド複合体、フェニルグリオキサール、p−ヒドロキシフェニルグリオキサール、ポリアミン、スペルミジン、9−アミノアクリジン、ヨードアセテート、ベントナイト、ポリ[2’−O−(2,4−ジニトロフェニル)]ポリ(アデニル酸)、硫酸亜鉛、ブロモピルベート、ホルムアミド、銅、および亜鉛を含む群のうちの少なくとも1つより選択される。特定の実施形態において、このリボヌクレアーゼインヒビターは、アウリントリカルボン酸である。特定の実施形態において、このアウリントリカルボン酸は、10μMの濃度で存在する。
【0076】
特定の実施形態に従って、このキットはさらに、デオキシリボヌクレアーゼインヒビターを含む。特定の実施形態において、このデオキシリボヌクレアーゼインヒビターは、2価のカチオンキレート剤を含む。特定の実施形態において、この2価のカチオンキレート剤は、EDTA、EGTA、およびDPTAを含む群のうちの少なくとも1つより選択される。
【0077】
特定の実施形態に従って、このキットはさらに、塩を含む。特定の実施形態において、この塩は、NaBr、NaI、NaSCN、LiCl、LiBr、LiI、GuHCl、およびGuSCNを含む群より選択される。特定の実施形態において、この塩はCaClである。特定の実施形態において、このCaClは、少なくとも20mMの濃度で存在する。
【0078】
特定の実施形態に従って、このキットの第2の界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。特定の実施形態において、この非イオン性界面活性剤は、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X−100)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween 20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween 21)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(Tween 40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(Tween 60)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween 80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノトリオレエート(Tween 85)、(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40)、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30)、およびソルビタンモノラウレート(Span 20)を含む群より選択される。特定の実施形態において、この非イオン性界面活性剤は、Tween 20である。特定の実施形態において、このTween 20は、少なくとも4%重量/重量の濃度で存在する。特定の実施形態において、このTween 20は、20%重量/重量の濃度で存在する。
【0079】
特定の実施形態に従って、プロテアーゼ;カチオン性界面活性剤;非イオン性界面活性剤(この非イオン性界面活性剤は、このプロテアーゼおよびカチオン性界面活性剤の存在下で、核酸と固相との結合を可能にする);および高い塩濃度の緩衝液を含む、生体サンプルから核酸を単離するためのキットが提供される。
【0080】
核酸を固相に結合するプロセスと、カチオン性界面活性剤を用いて核酸をサンプルから放出するプロセスとを組み合わせて、単一の核酸単離プロセスとするプロセスの間、タンパク質分解を達成するために用いられるカチオン性界面活性剤のうちの多くが、核酸を固相上に結合するために用いられた高い塩濃度の存在下で不溶性であることを見出した。さらに、高い塩濃度中において可溶である、いくつかのカチオン性界面活性剤は、固相への核酸の結合を阻害した。このことは、固相に結合する核酸を減少させる。特定の実施形態において、核酸を固相に結合するために、高い塩濃度を用いる。
【実施例】
【0081】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示し、そして決して本発明の範囲を限定しない。
【0082】
(実施例1)
プロテイナーゼKの活性を測定するために、BoDipyで標識化されたカゼイン結合体(Enz Check Protease Assay Kit,製品番号E6638;Molecular Probes,Eugene,OR)を用いるアッセイを開発した。この誘導体化された結合体中の、蛍光BoDipy部分の濃度は、このタンパク質がインタクトである場合に、個々の部分の蛍光が消失するほど十分に高い。しかし、この誘導体化されたカゼインの、プロテアーゼによる消化において、より少数のBoDipy色素分子を含むペプチドが放出され、蛍光の増大を生じる。アッセイのための初期ダイナミックレンジを決定するために、以下のように、プロテイナーゼKの濃度を減少させながら、BoDipyで標識化されたカゼインを1時間消化した。
【0083】
プロテイナーゼK(製品番号2546、Ambion)を、10μg/mlのBoDipyで標識化されたカゼイン結合体を含む500μLの緩衝液(10mMのTris(pH8)、20mMのCaCl)に、最終濃度の範囲(40fg/ml〜40μg/ml)にわたって添加した。混合しながらの60℃での1時間のインキュベーションの後で、100μLのアリコートを、96ウェルの光学プレート(MicroAmp(登録商標) Optical 96−Well
Reaction Plate,Applied Biosystems,Foster City,CA)に移動し、そしてABI Prism 7700分光光度計(Applied Biosystems)において蛍光を測定した。バックグラウンドの蛍光を、プロテイナーゼKを有さない緩衝液中で基質をインキュベートすることによって決定した。
【0084】
図1に示したように、プロテイナーゼKの濃度が増大するにつれて、蛍光の量は増大した。このシグナルは、約30,000蛍光単位で平坦域に達しているようであった。そして、放出された蛍光を、わずか50ng/mlのプロテイナーゼKを含む反応組成物から検出した。
【0085】
(実施例2)
最初に、一連の反応組成物を、生体サンプル(例えば、肝臓の切片)を脱凝集させる能力について分析した。これらの反応組成物は、100mMのTris(pH8.0)、20mMのジチオスレイトール(DTT)、ならびに必要に応じて、1mg/mlのプロテイナーゼK、界面活性剤(例えば、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤)、カオトロープ(chaotropes)、または添加物1−メチル−2−ピロリジノン(Sigma)を含んだ。各々の反応組成物を、肝臓の切片とともにチューブに配置し、次いで、65℃でインキュベートした。このチューブを定期的に観察して、どの反応組成物がサンプルを効率的に軟化し得るかを決定した。
【0086】
表1に示したように、単独のプロテイナーゼKは、この肝臓組織を効率的に消化し得たが、それは65℃での延長されたインキュベーションの後でのみであった。試験された全ての反応組成物の中で、カチオン性界面活性剤CTABを含むものが、1時間のインキュベーション期間の間、もっとも効率的にこのサンプルを軟化した。さらに、CTABは、プロテイナーゼKのタンパク質分解活性を増強するようであった。
【0087】
【表1】

【0088】

【0089】

【0090】
(実施例3)
プロテイナーゼKの活性に対するカチオン性界面活性剤の効果を試験するために、以下のように一連の反応組成物を調製した。反応混合物は、以下を含んだ:カゼインBoDipy結合体(1μg、10ng/μL)、10mMのTris(pH8.0)、20mMのCaCl、1%の界面活性剤(以下の表2に示す)、ならびに、20μg/ml、5μg/ml、1.25μg/ml、0.31μg/ml、0.078μg/ml、0.02μg/mlおよび0.005μg/mlの濃度の、一連のプロテイナーゼK希釈物。アニオン性界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(試験された条件下でプロテイナーゼKの活性を活性化することが公知である)を、ポジティブコントロールとして含めた。反応チューブを、96−ウェルの光学プレート(MicroAmp(登録商標) Optical 96−Well Reaction Plate,Applied
Biosystems)において60℃でインキュベートし、そして、放出された蛍光の量を、ABI Prism 7700を用いて、示した時点で測定した。
【0091】
【表2】

【0092】

【0093】
図2A〜2Cに示すように:(i)プロテイナーゼKは界面活性剤なしで、周囲温度でさえも、高いタンパク質分解活性を有する(水中での0分インキュベーションを参照のこと);(ii)SDSは、カゼイン基質におけるプロテイナーゼKの活性を増強する;(iii)2つのカチオン性ポリマー(Mackernium006および007)は、プロテイナーゼK活性に対するわずかな阻害活性を有する;そして(iv)試験された全てのカチオン性界面活性剤は、(単独の水に対する(すなわち、界面活性剤を有さない)プロテイナーゼK活性と、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム曲線、ハロゲン化ベンジルアルキルアンモニウム曲線、またはポリクオーターニウム(polyquaterniums)曲線とを比較した場合)プロテイナーゼK活性を阻害するようである。
【0094】
(実施例4)
組織全体から核酸を抽出することは、代表的には困難であるので、本発明の組成物および方法の効力を例示することは、有効に用いられ得る。従って、実施例の残りを、例示的な組織全体として肝臓組織を用いて行った。しかし、当業者は、開示された組成物および方法がまた、広範囲の生体サンプルを用いて有効に使用され得ること、ならびに、本発明がいかなる型のサンプルを用いる使用にも限定されないことを、理解する。
【0095】
核酸放出の効力を、種々の試験処理によって評価するための最初のアプローチにおいて、肝臓サンプルを、界面活性剤およびプロテイナーゼKを含む反応組成物中で、特定の期間にわたって消化した。このプロトコルは、遠心分離を用いて未消化の物質を除去する工程を含んだ。精製核酸およびカチオン性界面活性剤を用いた予備的な結果は、このカチオン性界面活性剤が核酸とともに沈殿を形成していることを示した(データを示さず)。さらに、この複合体は、遠心分離の間、未消化の組織とともに除去されていた。従って、サンプルから放出されている核酸の量を定量する1つの方法は、界面活性剤:核酸複合体から核酸を遊離させることを含んだ。カチオン性界面活性剤複合体から核酸を遊離させるために、以下のように条件を評価した。
【0096】
ウシ胸腺DNA(Sigma;18ゲージの皮下注射針を使用して穏やかに剪断した700μg/ml)を、100mM Tris、pH8中の1%CTABと混合して、反応組成物を生成した。最初に、顕著な沈殿が観察された。表3に示される種々の添加物を、この反応組成物のアリコートを用いて試験して、カチオン性界面活性剤:核酸沈殿物を可溶化する組成物を同定した。
【0097】
【表3】

【0098】

【0099】
表3に示したように、反応組成物のうち4つが、沈殿を完全に可溶化した。最終濃度33%または50%で使用した、核酸精製物溶解溶液(#4305895,Applied Biosystems)は、沈殿を完全に可溶化した(サンプル24〜25を参照のこと)。さらに、NaCl塩および非イオン性界面活性剤Tween20のいくつかの組合せは、沈殿を完全に可溶化した(サンプル16および30を参照のこと)。しかし、単独で使用したNaClもTween20も、沈殿を可溶化しなかった(サンプル1,2,15および17を参照のこと)。当業者は、種々の濃度で使用した塩および非イオン性界面活性剤のさらなる組合せは、カチオン性界面活性剤:核酸沈殿を溶解するのに使用され得ることを理解する。
【0100】
(実施例5)
種々のカチオン性界面活性剤がプロテイナーゼKによる組織の消化を増大する能力を評価するために、16の界面活性剤のうち1つを含む反応組成物を使用し、プロテイナーゼKの有りまたは無しの両方で、肝臓切片を消化した(表4に示される)。還元剤ジチオトレイトール(DTT)を、組織消化に対する還元条件の効果を評価するために含ませた。肝臓組織(80mg〜120mg)を、1000μLの10mM Tris、pH8、20mM CaCl、および20mMジチオトレイトールを含む34本のエッペンドルフチューブ(17対のチューブ)の各々の中に置いた。16の界面活性剤のうち1つを、最終濃度1%の界面活性剤を生じるように一対のチューブに加えた。第17対目のチューブは、非界面活性剤コントロールとして働く。1ミリグラム(mg)のプロテイナーゼKを、17対の各々の一方のチューブに加えた。次いで、34本のチューブを60℃で攪拌しながらインキュベーションした(Eppendorf Thermomixer、モデル5436)。
【0101】
【表4】

【0102】

【0103】
各々のチューブを、インキュベーションの15分後および52分後に視覚的に評価した。表5(15分インキュベーション)および表6(52分インキュベーション)に示した結果は、試験した条件下では、CTABおよびプロテイナーゼKの組合せが、いずれの時点でも組織サンプルの全体的な脱凝集を引き起こしたことを示す。特に、CTAB単独では、明らかなサンプルの脱凝集を引き起こさなかった。DTTの存在は、これらの条件下で、組織の脱凝集を有意にもたらさないようにみえた。
【0104】
【表5】

【0105】

【0106】
PK=反応組成物中のプロテイナーゼKの存在または非存在;Y=プロテイナーゼKは存在した;N=プロテイナーゼKは、反応組成物中に存在しなかった。組織脱凝集:0=なし;1=フラグメント化なし、わずかに濁った上清;2=フラグメント化ほとんどなし、わずかに濁った上清、3=より有意な組織の上清、ひどく濁った上清;4=不溶性物質がほとんど残されていない、完全な組織凝集
【0107】
【表6】

【0108】

【0109】

【0110】
命名法の意味は、表5の凡例を参照のこと。
【0111】
(実施例6)
カチオン性界面活性剤およびプロテイナーゼKが生物学的サンプルから高度に完全な核酸を放出する能力を検査するために、放出された核酸を単離した。肝臓組織の切片(一片あたり90mg〜200mg)を、22本のエッペンドルフマイクロフューズチューブ各々の中に置いた。400μLの50mM Tris、pH8、20mM CaCl、1%界面活性剤、および1mgプロテイナーゼKを各々のチューブに加えた。チューブを60℃で22分間、攪拌しながらインキュベーションした(Eppendorf Thermomixer、モデル5436)。
【0112】
インキュベーションに続いて、界面活性剤:核酸複合体を溶解するために、核酸精製物溶解溶液(#4305895,Applied Biosystems;最終濃度29%)、酢酸ナトリウム(最終濃度214mM)およびグリコーゲン(イガイ(Mussel)VII型、Sigma;最終濃度143μg/ml)を、各々のチューブに加えた。残りの組織フラグメントをペレット化するために、これらチューブを、14,000RPMで5分間、エッペンドルフマイクロフューズ(モデル5415C)中で遠心分離した。得られた上清を、10mMTris HCl、pH8.0、および1mM EDTA(フェノール飽和)で飽和させた700μLのフェノール(Sigma)を使用して、抽出した。ペレット化された材料もまた、たとえ未消化サンプル中にいくらか残ってたとしても、核酸を得るために、飽和フェノールで抽出した。抽出された核酸を、等容量(750μL)の2−プロパノールを使用して沈殿させ、そしてこれらのチューブを−20℃で3時間インキュベーションした。前記のように、核酸をペレット化するために、14,000RPMで5分間室温で、マイクロフューズ中でサンプルを遠心分離した。核酸のペレットを、1mlの70%エタノールで洗浄し、そして14,000RPMで5分間室温で、マイクロフューズ中でサンプルを遠心分離した。洗浄した核酸ペレットを、100μLの10mM Tris、pH8、0.1mM EDTA、および1単位/μLのRNasin中に再懸濁した。放出された核酸の量を、UV/可視光分光光度計(Hewlett Packard、モデル8453)を使用して定量した。定量の目的のために、260nmの波長でUV光を吸収する材料が核酸であると仮定した。従って、吸光係数1OD260=40μg/mlを使用した。
【0113】
図3は、サンプル(μg核酸/処理した組織1mg)から回収したA260吸収材料の量を示す。結果を、各々のサンプルの重量について正規化した。前記実施例中で実証されたように、カチオン性界面活性剤の存在下における、プロテイナーゼKの減少したタンパク質分解活性にも関わらず、A260吸収物質の量は、アニオン性界面活性剤を用いて得られる量または界面活性剤を用いずに得られる量と類似していた。
【0114】
放出された核酸の完全性(すなわち、その分解度)および組織ペレット中に残っている核酸の量を評価するために、各々のサンプルの10分の1を、標準的分子生物学の手順に従って、1%アガロースゲルでの電気泳動によって分析した。標準的分子生物学の手順の記述は、特に、以下において見出され得る:in Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrookら,1989,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY;Current Protocols in Molecular Biology,Ausbelら,1993 および2000年9月補遺, John Wiley & Sons,New York,NY;またはMolecular Biology Techniques,W.Reamら,Academic Press,San Diego,CA,1999。
【0115】
図4に示したように、カチオン性界面活性剤:プロテイナーゼKの組合せのほとんどは、ペレット中に残る核酸がほとんどないことによって証明されるように、核酸を放出した。放出された核酸は、大きな電気泳動移動度を有することが観測された。なぜならば放出した核酸は、ゲルの底辺近くに現れたからである。インタクトな高度に完全な核酸は、代表的に、大きいというよりむしろ、小さい電気泳動移動度を有するので、回収した核酸はこれらの条件を使用することで、明らかに高度にフラグメント化された。言い換えると、核酸は明らかに低い完全性を有していた。
【0116】
(実施例7)
実施例6から得た結果は、サンプル中に有意なヌクレアーゼ活性があったことを示す。内因性RNAsesの核酸分解活性を減少させるために、反応組成物のpHを約6.0へ低下させ、そしてインキュベーション温度を45℃へ低下させた。フェニルグリオキサ−ル(Aldrich#14243−3)、1−メチル−2−ピロリジノン、RNA Later(Ambion,#7020)、およびStreck Tissue Fixitive(Streck Laboratories,#265138)を含むいくつかの添加物をまた、試験して、反応組成物中での内因性RNAse活性に対する効果を評価した。フェニルグリオキサ−ルは、リボヌクレアーゼ活性を減少することが知られている(Takahashi,The Structure And Function Of Ribonuclease T.XI.Modification Of The Single Arginine Residue In Ribonuclease T By Phenylglyoxal And Glyoxal,J.Biochem(Japan)68:659−664,1970を参照のこと)。RNA Laterについての製品の印刷物は、この試薬が組織中でRNAを安定化し、そして、Streck Tissue Fixativeは、組織の完全性を保存すると考えれていると主張している。
【0117】
肝臓組織の切片(100mg〜200mg/サンプル)を19本のエッペンドルフチューブ中に置いた。100mM MES(Sigma#M−5287)、pH6、20mM CaCl、および1mgプロテイナーゼKを含む反応組成物(400マイクロリットル)を、各々のチューブに加えた。表7に示すように、アニオン性界面活性剤(SDS,サルコシル(Sarkosyl))およびカチオン性界面活性剤(CTAB、CTACl、およびテトラメチルアンモニウムクロリド)を含むさらなる成分を特定のチューブに加えた。
【0118】
【表7】

【0119】

【0120】
これらのチューブを、混合しながら(Eppendorf Thermomixer,Model 5436)、45℃で20分間インキュベートした。このインキュベーションの後、1.75M NaCl、29% Tween 20、585μg/ml グリコーゲン(447mM NaCl、7.5% Tween 20、および149μg/ml グリコーゲン)を含む溶液(171μL)を、各チューブに添加して、界面活性剤:核酸複合体を溶解した。グリコーゲンは、核酸キャリアとして作用した。消化されていない組織フラグメントを、実施例6に開示される方法と同じかまたは類似の方法を使用して、遠心分離によって除去した。実施例6に記載の方法と同じかまたは類似の方法を使用して、上清を、フェノール(10mM Tris HCl(pH 8)、1mM EDTAで飽和;Sigma #P−4557)で抽出し、イソプロパノール(Aldrich #19076−4)で沈殿させ、そしてエタノールで洗浄した。この洗浄した核酸ペレットを、100μLの、10mM Tris(pH 8.0)、0.1mM EDTAおよび1単位/μL Rnasinと共に再懸濁した。遊離された核酸の量およびその完全性を、実施例6に記載されるようにして評価した。
【0121】
図5に示すように、これらの条件下で、カチオン性界面活性剤(CTABおよびCTACl)またはアニオン性界面活性剤(SDSおよびSarkosyl)のいずれかと組み合わせたプロテイナーゼKは、このサンプルからA260吸収物質を遊離させた。Streck Tissue FixativeまたはRNA Laterのいずれかを、これらの反応物に添加した場合、非常にわずかなA260吸収物質が遊離された。この遊離された核酸の平均分子量は、代表的に、プロテイナーゼKの消化がより低いpHおよびより低温で行われる場合、より大きかった(図4と図6とを比較9)。さらに、遊離された核酸の平均分子量は、代表的には、プロテイナーゼK消化をカチオン性界面活性剤の存在下で行った場合よりも大きかった(図6のレーン5〜9および15〜19と10〜14とを比較)。
【0122】
(実施例8)
CTAClとCTABとを比較するために、これら2つの界面活性剤を、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDTAB)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(HDTACl)、およびSarkosylと並行して評価した。3種の添加剤、フェニルグリオキサール、アクリジンオレンジ(例えば、Sigma #A6014)、および1−メチル−2−ピロリジノンもまた評価した。フェニルグリオキサールを試験して、これがRNAase活性を減少させるか否かを決定した。核酸分子と相互作用することが知られている色素化合物であるアクリジンオレンジを試験して、これがヌクレアーゼ活性を減少させるか否かを決定した。1−メチル−2−ピロリジノンを試験して、これが種々の反応組成物によるサンプルの溶解性を増大させるか否かを観察した。
【0123】
肝臓組織のスライス(100〜200mg/サンプル)を、21本のエッペンドルフチューブに入れた。100mM MES(pH6)、20mM CaCl、および1mg プロテイナーゼKを含む反応組成物(400μl)を、各チューブに添加した。表8に示すように、追加の成分を、特定のチューブに添加した。
【0124】
【表8】

【0125】
これらのチューブを、混合しながら(Eppendorf Thermomixer,Model 5436)、45℃で30分間インキュベートした。界面活性剤:プロテアーゼ複合体を、実施例7に記載の方法と同じかまたは類似の方法を使用して、可溶化した。残った組織フラグメントを、実施例7に記載の方法と同じかまたは類似の方法を使用して、遠心分離によって除去した。実施例6に記載の方法と同じかまたは類似の方法を使用して、上清をフェノールで抽出し、イソプロパノールで沈殿させ、そしてエタノールで洗浄した。この洗浄した核酸ペレットを、再懸濁し、そして遊離された核酸の量および完全性を、実施例6に記載の方法と同じかまたは類似の方法を使用して評価した。
【0126】
図7に示すように、3種の添加剤の効果は、界面活性剤に依存して異なった。例えば、CTAClおよび1−メチル−2−ピロリジノンを使用して遊離された核酸の量は、添加剤を含まないCTAClの組成物と比較して多かった。しかし、HDTABおよび1−メチル−2−ピロリジノンを使用して遊離された核酸の量は、添加剤を含まないHDTABの組成物と比較して、少なかった。
【0127】
遊離された核酸をゲル電気泳動により分析した場合、高分子量核酸が、HDTABを含む全ての反応組成物において現れた(図8を参照のこと)。高分子量核酸はまた、CTAClと1−メチル−2−ピロリジノンまたはアクリジンオレンジのいずれかとを含む反応組成物中に存在した。高分子量核酸はまた、HDTAClおよび1−メチル−2−ピロリジノンを含む反応組成物において観察された。
【0128】
(実施例9)
実施例7は、組織サンプル中のRNAを安定化するために使用される特定の試薬(すなわち、Streck Tissue FixativeおよびRNA Later)の存在が、プロテイナーゼKの活性を阻害することを証明した。この阻害の減少を試みるために、組織を、いくつかの試薬中でプレインキュベートして、この組織をサンプル中に拡散させた。残った試薬を、反応組成物中でのサンプルのインキュベーションの前に除去した。
【0129】
肝臓スライスを、以下のように、反応組成物に暴露する前に、種々の溶液中でインキュベートした。肝臓組織のスライス(94〜330mg/サンプル)を、4セットの6個のエッペンドルフチューブに配置した。核酸精製溶解溶液(Nucleic Acid Purification Lysis Solution)、RNA LaterまたはStreck Tissue Fixativeのいずれか(500μl)を、1セットのチューブに添加した。4番目のセットのチューブは、予備処理溶液を含まず、コントロールとしてはたらいた。
【0130】
これらのチューブを4℃で4時間インキュベートし、次いで、周囲温度で2分間、14,000RPMにて、Eppendorf微量遠心機(Model 5415C)で遠心分離した。上清を捨て、そして100mM MES(pH6.0)、20mM CaCl、および1mg プロテイナーゼKを含む反応組成物(400μl)を、各チューブに添加した。表9に示す6種の追加成分のうちの1つをまた、各チューブに添加した。これらのチューブを、混合しながら(Eppendorf Thermomixer,Model 5436)、45℃で30分間インキュベートした。
【0131】
得られた界面活性剤:プロテアーゼ複合体を、実施例7に記載の方法と同じかまたは類似の方法を使用して、可溶化した。残った組織フラグメントを、実施例7に記載の方法と同じかまたは類似の方法を使用して、遠心分離によって除去した。実施例6に記載の方法と同じかまたは類似の方法を使用して、上清を、フェノールで抽出し、イソプロパノールで沈殿させ、そしてエタノールで洗浄した。この洗浄した核酸ペレットを再懸濁し、そして遊離された核酸の量およびその核酸の完全性を、実施例6に記載の方法と同じかまたは類似の方法を使用して評価した。
【0132】
【表9】

【0133】
図9に示すように、予備処理溶液の1つでのサンプルの予備処理は、コントロールと比較した場合、遊離されるA260吸収物質の量の減少を生じた。
【0134】
(実施例10)
アウリントリカルボン酸がCTAB、CTAClまたはSDSを含む反応組成物を使用して遊離される核酸の完全性を維持する能力を評価した。アウリントリカルボン酸は、核酸へのタンパク質(例えば、ヌクレアーゼ)の結合を阻害すると考えられ、そしてリボヌクレアーゼを阻害することが証明されている。肝臓組織のスライス(77〜186mg/サンプル)を、21本のエッペンドルフチューブに入れた。各チューブに、50mM MES(pH6.0)、20mM CaCl、および表10に示されるような追加成分を含む反応組成物(400μL)を添加した。
【0135】
【表10】

【0136】
これらのチューブを、混合しながら(Eppendorf Thermomixer,Model 5436)、55℃で30分間インキュベートした。得られた界面活性剤−プロテアーゼ複合体を、実施例7に記載の方法と同じかまたは類似の方法を使用して、可溶化した。消化されていない組織フラグメントを、実施例7に記載の方法と同じかまたは類似の方法を使用して、遠心分離によって除去した。実施例6に記載の方法と同じかまたは類似の方法を使用して、上清を、フェノールで抽出し、イソプロパノールで沈殿させ、そしてエタノールで洗浄した。この洗浄した核酸ペレットを再懸濁し、そして実施例6に記載の方法と同じかまたは類似の方法を使用して、遊離された核酸の完全性を評価した。
【0137】
図11に示すように、反応組成物中のアウリントリカルボン酸の存在は、高分子量核酸の収量を増大させた。アウリントリカルボン酸とCTABまたはCTAClのいずれかとを含む反応組成物は、多量の高完全性の核酸を遊離させた。この反応組成物中の界面活性剤がSDSである場合、より少ない核酸が遊離された。
【0138】
(実施例11)
他のカチオン性試薬が高完全性の核酸を遊離する能力を試験するために、さらなる化合物を、以下のようにして試験した。肝臓組織のスライス(80〜140mg/サンプル)を、14本のEppendorfチューブに入れた。100mM MES(pH 6)、20mM CaCl、0.5mM アウリントリカルボン酸(例えば、Sigma #A1895)、および1mg プロテイナーゼKを含む反応組成物(500μl)を、各チューブに添加した。表11に示すカチオン性試薬の1つを、最終濃度が1%になるまでこのチューブに添加した。コントロールとして、1つのチューブは、追加の試薬を含まなかった。これらのチューブを、混合しながら(Eppendorf Thermomixer,Model 5436)、60℃で30分間インキュベートした。このインキュベーションの後、1.75M NaCl、29% Tween 20、585μg/ml グリコーゲンを含む溶液(200μL)(447mM NaCl、7.5% Tween 20、および149μg/ml グリコーゲンの最終濃度を生じる)を、各チューブに添加して、界面活性剤:核酸複合体を溶解した。残った組織フラグメントを、実施例7に記載の方法と同じかまたは類似の方法を使用して、遠心分離によって除去した。実施例6に記載の方法と同じかまたは類似の方法を使用して、上清を、フェノールで抽出し、イソプロパノールで沈殿させ、そしてエタノールで洗浄した。この洗浄した核酸ペレットを、100μLの、10mM Tris(pH8.0)、0.1mM EDTAおよび1単位/μL Rnasinに再懸濁した。遊離された核酸の量およびその完全性を、実施例6に記載の方法と同じかまたは類似の方法を使用して、評価した。
【0139】
【表11】

【0140】
図12に示されるように、Mackernium 006およびMackernium 007を除く、試験したカチオン試薬の全ては、高い完全性の核酸を放出した。試験した11のカチオン試薬のうちで、9つは、界面活性剤であり、そして2つ(Mackernium 006およびMackernium 007)は、カチオンポリマーであった。この結果は、これらの条件において、プロテイナーゼKと関連して使用される場合、カチオン性界面活性剤の全てが、効率的にサンプルから核酸を放出したことを示す。
【0141】
以下の用語、略語、および供給源を、実施例12〜実施例21の全体にわたって議論される物質に適用する。
【0142】
固相ガラス繊維膜(GF/BおよびGF/D)を、Whatman Bioscience(カタログ番号1821−150およびカタログ番号1823−150)から入手した。プロテイナーゼKを、Ambion(カタログ番号2548)から入手した。ラット組織およびマウス組織を、Pel−Freeze Biologicals(Rogers、Arkansas)により供給される動物から入手した。仔ウシ胸腺のゲノムDNAを、Sigma(製品番号D8515)から入手した。
【0143】
以下の試薬およびそれらに対する供給源の略語または名称は、以下の通りである:
以下の実施例において、これらの以下のカチオン性界面活性剤を使用した:臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB、Aldrich #85582−0)、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTACl、Aldrich #29273−7)、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTAB、Sigma
#D−8638)、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTACl、Fluka 製品番号44242)、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム(TTAB、Sigma 製品番号T4762)、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム(TTACl、Fluka 製品番号87212)、臭化ドデシルエチルジメチルアンモニウム(DEDTAB、Fluka 製品番号44165)、臭化デシルトリメチルアンモニウム(D10TAB Fluka 製品番号30725)、臭化ドデシルトリフェニルホスホニウム(DTPB、Research Chemicals 製品番号14295)、クオーターニウム84(MNLEまたはMackernium NLE;Mclntyre Group,Ltd.)、オレアルコニウムクロリド(Mackernium KPまたはMKP;Mclntyre Group,Ltd.)、およびコムギ(wheat)リピドエポキシド(MWLまたはMackernium WLE;Mclntyre Group,Ltd.)。
【0144】
以下の試薬およびそれらに対する供給源の略語または名称は、以下の通りである:ドデシル硫酸ナトリウム(SDS、Ambion カタログ番号9822)、ドデシル硫酸リチウム(LDS、Sigma 製品番号L4632)、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウムまたはラウロイルサルコシン(Sarkosyl、Sigma 製品番号L5125)、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X−100、Sigma 製品番号T8787)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween 20、Sigma
製品番号P9416)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween 21、Sigma 製品番号P2565)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(Tween 40、Sigma 製品番号P1504)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(Tween 60、Sigma 製品番号P1629)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween 80、Sigma 製品番号P8074)、ポリオキシエチレンソルビタンモノトリオレエート(Tween 85、Sigma 製品番号P4634)、(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40、Sigma 製品番号I3021)、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30、Aldrich 製品番号23598−9)、およびソルビタンモノラウレート(Span 20、Sigma
製品番号S6635)。
【0145】
以下の試薬およびそれらに対する供給源の略語または名称は、以下の通りである:塩酸グアニジニウム(Sigma、ロット38H5432)、チオシアン酸グアニジニウム(Sigma、製品番号G−9277)、ヨウ化ナトリウム(Aldrich Chemical Company、製品番号38,311−2、ロット番号07004TS)、過塩素酸ナトリウム(Aldrich Chemical Company、製品番号41,024−1、ロット KU 06910HU)、臭化ナトリウム(Aldrich、製品番号31050−6、ロット11805KR)、塩化ナトリウム(Aldrich Chemical Company、製品番号33,251−4、ロット番号16524CS)、Tris(Trizma base、トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン、Sigma、製品番号T−6791、ロット番号1261−15738)、ヨウ化リチウム(Sigma 製品番号L4508)、ヨウ化カリウム(Sigma
製品番号P2963)、ヨウ化ルビジウム(Sigma 製品番号R2252)、ヨウ化セシウム(Sigma 製品番号C8643)、臭化リチウム(Aldrich 21,322−5)、塩化リチウム(Sigma 製品番号L9650)、チオシアン酸ナトリウム(Sigma 製品番号S7757)、尿素(Sigma 製品番号U5378)、EDTA(Ambion カタログ番号9261)、および水酸化ナトリウム(Sigma、製品番号S−8045、ロット番号127H0531および69H1264)。
【0146】
(実施例12)
特定の例において、高塩中での洗浄剤の可溶性は、塩および洗浄剤それ自体の組成に関連し得る。混合実験を、異なる塩組成における種々のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および非イオン性界面活性剤の溶解性を試験するために実施した。0.5%(Sarkosyl、LDS、SDS、およびCTAB)または5.0%(Triton X−100、Tween 20、Tween 21、Tween 40、Tween 60、Tween 80、Tween 85、NP−40、Brij 30、およびSpan 20)の最終濃度で、界面活性剤を、塩溶液に対して加えた。この塩溶液は、pH6.0またはpH10.0で、LiI、NaI、KI、RbI、CsI、GuSCN、GuHCl、またはNaClOを含有した。表12に示すように、濃度は、加えた塩について2M、4Mまたは6Mであった。いくつかの塩溶液は、8Mの尿素を含み、そして他の塩溶液は、8Mの尿素を含まなかった。界面活性剤の可溶性を、可溶性または不溶性のいずれかとして記録した。塩溶液中の界面活性剤の可溶性を、最初に、曇りまたは沈殿の形成に対する目視観測によって決定した。得られた溶液をまた、沈殿ペレットが存在しないことによって、沈殿物が存在しないことを確認するために遠心分離した。溶液中に曇りを生じたかまたは沈殿物および沈殿ペレットを形成した界面活性剤を、不溶性(X)と記録し、そして遠心分離後に明らかなペレットを形成しない透明な溶液を生じた界面活性剤を、可溶性(S)として記録した。「S(V)」の記録を有するいくつかの洗浄剤は、塩溶液中に溶解したが、著しく粘稠な溶液を生じた。これらの結果を、表12に示す。観測された不溶性は、pHに独立であるように考えられ、そして変性試薬の尿素の添加によって変化しなかった。
【0147】
【表12】

【0148】
(実施例13)
いくつかのカチオン性界面活性剤の可溶性を、異なるカオトロピズムの塩溶液中で試験した。試験したカチオン性界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTACl)、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム(TTAB)、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム(TTACl)、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTAB)、ドデシルトリメチルアンモニウム(DTACl)、臭化ドデシルエチルジメチルアンモニウム(DEDTAB)、臭化デシルトリメチルアンモニウム(D10TAB)、および臭化ドデシルトリフェニルホスホニウム(DTPB)であった。試験したカチオン性界面活性剤のそれぞれは、1%濃度で存在した。カチオン性界面活性剤のそれぞれは、2% Tween 20を含有するカオトロピズムの塩の1つの5M溶液中で試験した。それぞれのカチオン性界面活性剤および塩の組み合わせを、pH6(50mM MES)、pH8(50mM Tris−HCl)、およびpH10(50mM AMP)で試験した。各界面活性剤の可溶性を、視覚的に評価し、そして実施例12において使用した同一の基準を用いて記録した。これらの結果を表13に示す。
【0149】
【表13】

【0150】
これらの結果は、可溶性と界面活性剤の鎖長との関係を示唆する。さらに、対アニオンの半径もまた、洗浄剤の可溶性に影響する。12個以下の炭素原子のアルキル鎖長を有する界面活性剤(例えば、DEDTAB、D10TAB(D10TAB)、DTPB、DTABおよびDTACl)は、より長い界面活性剤よりもより可溶性と考えられる。大きなヨウ化物アニオンの存在下では、カチオン性界面活性剤のいくつかは、不溶性であった。全てのカチオン性界面活性剤は、他のカオトロピズムの塩よりも、GuHClおよびLiClの両方においてより可溶性であった。
【0151】
(実施例14)
DTABおよびDTAClの存在下で、界面活性剤−核酸沈殿物の形成が可逆的であることを確認するために、以下の実験を実施した。仔ウシ胸腺のゲノムDNA(Sigma)を、18ゲージの皮下注射針中を3回通すことによって部分的に切断した。8μgの切断されたDNAを含有する90μLの溶液を、16の微量遠心管(microfuge tube)のそれぞれの中へ入れた。DTABを、8つのチューブに最終1.6%濃度まで加え、そしてDTAClを残りの8つに加えた。このチューブを、手短にボルテックスし、そして沈殿物を、全てのチューブにおいて注目した。次いで、8つのカオトロープ(chaotrope)溶液を、pH6.0で50mM MESおよび5Mの以下:NaBr、NaI、NaSCN、LiCl、LiBr、LiI、GuHClまたはGuSCNの1つとともに調製した。600μlのそれぞれのカオトロープ溶液を、別々に、DTABおよび沈殿物とともに6つの異なるチューブに加えた。600μlのそれぞれのカオトロープ溶液を、別々に、DTAClおよび沈殿物とともに6つの異なるチューブに加えた。結果を、表13に示す。溶液を、DNAが溶解した(「R」)かまたは溶解しない(「IR」)かどうかについて評価した。
【0152】
核酸沈殿物は、界面活性剤それ自体が可溶でないカオトロピズムの溶液を含む、ほとんどのカオトロピズムの塩溶液中に溶解した。
【0153】
(実施例15)
ラットの尾由来のゲノムDNAを入手しようと試みるために、50mgのラットの尾の小片を、微量遠心管中の、5mg/ml プロテイナーゼK、100mM Tris−HCl(pH8.0)、20μM ATA、20mM CaCl、および1%の以下のカチオン性界面活性剤:CTACl、CTAB、TTAB、DTAB、MNLE(クオーターニウム84、Mackernium NLE;Mclntyre Group,Ltd.)、MKP(オレアルコニウムクロリド、Mackernium KP;Mclntyre Grp,Ltd)、およびMWL(コムギ(wheat)リピドエポキシド、Mackernium
WLE;Mclntyre Group,Ltd.)を含有する、200μlの緩衝液中に浸軟した。このチューブを、65℃で1000rpm(Eppendorf Thermomixer、Model5436)で混合しながら60分間インキュベートした。各チューブから、100μlアリコートおよび50μlアリコートを、新たなチューブに移した。5M GuSCN、50mM Tris−HCl、pH8.0、20mM EDTA、および2% Tween 20を含有する、600μlのカオトロープ溶液を、各チューブに加え、そして溶液をSchlerinパターンが消失するまで混合した。消化されない組織微粒子物(例えば、毛および骨)を除去するために、このチューブを、4℃で5分間14,000rpmで遠心分離した。上清溶液中に放出されたゲノムDNAを、ABI PRISM 6100 Nucleic Acid PrepStation(Applied Biosystems 製品番号6100−01)を使用する、ガラスフィルター−吸着および真空濾過法によって単離した。サンプル溶液を、ガラス繊維GF/Bフィルター(96−ウェル形式における)に移し、そして2.4psi真空で排出した。フィルターを、90%エチルアルコールで3回洗浄した。DNAを、最初に、200μlのTE溶液(10mM Tris、pH8.0、1mM EDTA)の使用によって、ガラス繊維から回収した。室温での3分間のインキュベーションに続いて、DNA含有溶出液を、96−ウェルサンプル保管トレー中に排出および回収した(ABI PRISM 4306737、Applied Biosystems)。第2の分離溶出液を、100μlの0.1N NaOHで実施した。
【0154】
回収の結果を、ラットの尾の組織(mg)あたりの回収されたDNA(ng)の関数として表13に示す。さらに、NaOHによる回収における実質的な増加から、回収されたDNAが、アルカリ性条件でより効率的に溶出したと考えられる。
【0155】
(実施例16)
GF/Bガラス繊維フィルターに可逆的に結合される精製DNAの能力を、評価した。ゲノムDNAの結合および放出を、2% Tween 20の存在下で、3つの異なるpHレベル(pH6、8および10)にて、3つの異なる塩(チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸グアニジニウム、および臭化ナトリウム)のうちの1つの存在下、および2つの異なるカチオン性界面活性剤(DTABおよびDTACl)のうちのいずれか1つの存在下またはいずれのカチオン性界面活性剤の非存在下で、試験した。8マイクログラムの部分剪断仔ウシ胸腺ゲノムDNA(実施例15にて調製されるような)を、600μlのDNA結合溶液に添加した。このDNA結合溶液は、5Mの1つの塩(NaSCN、NaBrまたはGuSCN)、20mMのEDTA、2%のTween 20、50mMの緩衝液(MES、pH6.0;Tris−HCl、pH8.0;またはAMP、pH10のうちの1つ)および1%のカチオン性界面活性剤(DTAB、DTACl、または界面活性剤を含まない水(コントロール「No Deterg(界面活性剤なし)」として))を含む。従って、27個の異なる組み合わせを試験した。ゲノムDNAを、ABI PRISM 6100 Nucleic Acid PrepStation(Applied Biosystems Product Number 6100−01)を使用する真空濾過によって、ガラスフィルター上に吸着させた。サンプル溶液を、ガラス繊維GF/Bフィルター(96ウェル形式)に移し、そして2.4psiの減圧下で脱気した。フィルターを、90% EtOHで3回洗浄した。最初に、DNAを、200μlのTE溶液を使用することによってガラス繊維から回収した。室温で3分のインキュベーション後、このDNA含有溶出物を、脱気し、そして96ウェルサンプルアーカイブトレイ(ABI Prism 4306737、Applied Biosystems)に収集した。2回目の別の溶出を、100μlの0.1N NaOHを用いて行った。
【0156】
ほとんどの条件下で、図14に示されるように、精製DNAの結合は、乏しかった。チオシアン酸グアニジニウムが結合塩である場合、カチオン性界面活性剤DTABおよびDTAClの存在は、DNAの回収を阻害するようであった。
【0157】
(実施例17)
DNA回収に対するTween−20の効果を、非イオン性界面活性剤(Tween 20)の非存在下で、実施例15に示される実験を繰り返して試験した。8マイクログラムの部分剪断仔ウシ胸腺ゲノムDNA(実施例15にて調製されるような)を、600μlのDNA結合溶液に添加した。このDNA結合溶液は、5Mの1つの塩(NaSCN、NaBrまたはGuSCN)、20mMのEDTA、50mMの緩衝液(MES、pH6.0;Tris−HCl、pH8.0;またはAMP、pH10のうちの1つ)および1%のカチオン性界面活性剤(DTAB、DTACl、または界面活性剤を含まない水(コントロール「No
Deterg(界面活性剤なし)」として))を含む。従って、27個の異なる組み合わせを試験した。ゲノムDNAを、ABI PRISM 6100 Nucleic Acid PrepStation(Applied Biosystems Product No.6100−01)を使用する真空濾過によって、ガラスフィルター上に吸着させた。サンプル溶液を、ガラス繊維GF/Bフィルター(96ウェル形式)に移し、そして2.4psiの減圧下で脱気した。フィルターを、90% EtOHで3回洗浄した。最初に、DNAを、200μlのTE溶液を使用することによってガラス繊維から回収した。室温で3分のインキュベーション後、このDNA含有溶出物を、脱気し、そして96ウェルサンプルアーカイブトレイ(ABI Prism 4306737、Applied Biosystems)に収集した。2回目の別の溶出を、100μlの0.1N NaOHを用いて行った。
【0158】
Tween 20の非存在下でさえ、アッセイした全ての条件は、DNAをガラス繊維GF/B膜に結合させた場合に、DNAの回収をほとんど示さなかった(図15)。チオシアン酸グアニジニウムおよびDTABの存在は、いくらかの回収を示した。カチオン性界面活性剤が、結合中に存在しない場合、DNAは、3つの全ての塩によってGF/Bから回収され得た(図15)。また、より多くのDNAが、pH8.0またはpH10.0よりもpH6.0にて、GF/Bから回収された。
【0159】
(実施例18)
カチオン性界面活性剤DTABの阻害効果をさらに試験した。DTABを、DNA結合が固相上で生じる前、DNA結合が固相上で生じる間、またはDNA結合が固相上で生じた後の、精製反応の種々の時点で導入した。DNA結合および精製手順を、ABI PRISM 6100上のGF/Bガラス繊維フィルター(96ウェル形式)を使用して行った。種々の精製条件を、図16において示されるように、A〜Dで示す。
【0160】
セットAにおいて、GF/B膜を、1% DTABを含まない(A−)かまたは含む(A+)、100μlの液体で前処理した。次いで、仔ウシ胸腺DNA(8μg)を、800μLの50mM MES、pH6.0、20mM EDTAおよび5M 塩(NaBrまたはGuSCNのいずれか)中で結合させた。次いで、膜を、90%エタノールで洗浄し、そして結合した核酸を、200μlのTEで最初に溶出し、次いで、100mM NaOHで溶出した。
【0161】
セットBにおいて、膜を前洗浄しなかった。仔ウシ胸腺DNA(8μg)を、800μLの50mM MES、pH6.0、20mM EDTAおよび5M 塩(NaBrまたはGuSCNのいずれか)中で、GF/Bガラス繊維フィルターに結合させた。結合後、膜を、1% DTABを含まない(B−)かまたは含む(B+)かのいずれかの、50mM MES、pH6.0、20mM EDTAおよび5M 塩(NaBrまたはGuSCNのいずれか)において洗浄した。次いで、膜を、90%エタノールで洗浄し、そして結合した核酸を、200μlのTEで最初に溶出し、次いで、100mM NaOHで溶出した。
【0162】
セットCにおいて、膜を前洗浄しなかった。仔ウシ胸腺DNA(8μg)を、1% DTABを含まない(C−)かまたは含む(C+)かのいずれかの、800μLの50mM MES、pH6.0、20mM EDTAおよび5M 塩(NaBrまたはGuSCNのいずれか)中で、GF/Bガラス繊維フィルターに結合させた。次いで、膜を、90%エタノールで洗浄し、そして結合した核酸を、200μlのTEで最初に溶出し、次いで、100mM NaOHで溶出した。
【0163】
セットDにおいて、GF/B膜を、1% DTABを含まない(A−)かまたは含む(A+)、100μlの5M 塩(NaBrまたはGuSCNのいずれか)で前処理した。次いで、仔ウシ胸腺DNA(8μg)を、800μLの50mM MES、pH6.0、20mM EDTAおよび5M 塩(NaBrまたはGuSCNのいずれか)中で結合させた。次いで、膜を、90%エタノールで洗浄し、そして結合した核酸を、200μlのTEで最初に溶出し、次いで、100mM NaOHで溶出した。これらの結果を、図16に示す。
【0164】
GF/B膜をDTABで前処理し(A+)、そしてDNAを、DTABを含まないGuSCNまたはNaBrの存在下で結合させた場合、GF/B膜からのDNA回収は、DTABで前処理しなかった(A−)GF/B膜からの回収と比較して、有意に減少されなかった。従って、この実験において、界面活性剤は、固相と直接的に相互作用して核酸の結合を阻害しないようであった。
【0165】
DNAを、塩の存在下であるがDTABの非存在下でGF/B膜に結合させ、DTABを、洗浄緩衝液としてカオトロピック溶液中に含ませた(B+)場合、膜からのDNA回収は、洗浄緩衝液中にDTABが存在しない(B−)GF/B膜からの回収と比較して、有意に減少された。これらの結果は、洗浄工程中のカチオン性界面活性剤の存在は、固相に結合したDNAを除去することを示唆する。
【0166】
この実験における固相への結合中のカチオン性界面活性剤の効果は、結合中に使用される塩の組成に関連するようであった。NaBrが結合塩である場合(NaBr C+とNaBr C−を比較して)、およびDTABを結合中に含ませた場合(C+)、DNAの回収は、結合中にDTABを含まない場合の回収と比較して、有意に減少された。しかし、GuSCNが結合塩である場合、回収の有意な減少は、見られなかった(GuSCN C+とGuSCN C−を比較して)。従って、この実験において、塩組成に依存して、結合中のカチオン性界面活性剤の存在は、固相へのDNA結合を阻害し得る。
【0167】
Aにおけるように、1% DTABの非存在下(D−)または存在下(D+)の5M 塩(NaBrまたはGuSCNのいずれか)でのGF/Bガラス繊維フィルターの前処理は、核酸のその後の結合に影響しないようであった。
【0168】
図16における結果は、この実験において、DTABが、GF/B膜と密接に相互作用してDNA結合をブロックしなかったことを示す。この研究において、カチオン性界面活性剤は、結合反応中に存在する場合、GF/B膜へのDNAの結合をブロックした。さらに、この研究において、一旦DNAを(カチオン性界面活性剤の非存在下で)結合させると、その後の洗浄工程中のカチオン性界面活性剤の存在は、結合されたDNAの膜から除去を生じた。
【0169】
(実施例19)
ガラス繊維GF/B膜へのDNA結合を干渉したプロテアーゼ消化反応の成分を同定することを試みるために、CaCl、アウリントリカルボン酸およびTween 20の各々を、DNA結合反応において別々に評価した。DNAの結合および回収は、サンプル中のタンパク質の存在によって影響され得るので、結合を、13% ウシ胎仔血清(FBS)の存在下または非存在下で行った。
【0170】
この研究において、より高い濃度でのCaCl(図20)、アウリントリカルボン酸(図18)およびTween 20(図19)の添加が、全て、GF/B膜からのDNAの回収を増加した。アウリントリカルボン酸を、10μM〜320μMまでの2倍増分の6つの濃度で評価し、DTABおよびTween 20の両方を、1%〜16%までの2倍増分の5つの濃度レベルで評価した。DNAを、200μlのTEで最初に溶出し、次いで、100μlの0.1N NaOHで別に溶出した。最大の増加が、10μMのアウリントリカルボン酸(図18)、20%のTween−20(図19)、および20mMのCaCl(図20)で見出された。
【0171】
対照的に、この研究において、カチオン性界面活性剤ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB)の存在は、DNAの回収を有意に減少させた(図17)。さらに、回収されたDNAは、GF/B膜に非常に密接に結合され、その結果、DNAのほとんどが、0.1N NaOHでのみ溶出されて回収された。
【0172】
(実施例20)
DNA回収を阻害する主要成分としてカチオン性界面活性剤を同定したので、阻害性効果を打ち消す非イオン性界面活性剤の能力を試験した。仔ウシ胸腺ゲノムDNA(8μg)を、漸増濃度のTween 20と共に0%、1%および4%のドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB)の存在下で、ガラス繊維GF/B膜に結合させた。
【0173】
結合緩衝液もまた、5M GuSCN、20mM EDTA、および50mMMES(pH6.0)を含んだ。DNAを、200μlのTEで最初に溶出し、次いで、100μlの0.1N NaOHで別に溶出した。全ての結合工程および溶出工程を、周囲温度で行った。
【0174】
カチオン性界面活性剤の非存在下(0% DTAB)であるが、漸増Tween 20濃度下で、DNA回収は、任意の非イオン性界面活性剤の非存在下で観察された(図21)。回収されたDNAの量は、Tween 20の濃度が少なくとも1%に増加された場合に、有意に増加した(図21)。
【0175】
1%のDTABの存在下で、繊維からのDNA回収は、Tween−20の非存在下で完全に阻害された(図22)。少なくとも2%の濃度へのTween 20の添加は、カチオン性界面活性剤の阻害効果を実質的にブロックした(図22)。4%のDTABの存在下で、少なくとも4%のTween−20の濃度が、カチオン性界面活性剤の阻害効果を実質的にブロックした(図23)。この研究において、適切な量のTween−20を結合反応に添加した場合、ガラス繊維GF/Bフィルターから回収されるゲノムDNAの量は、カチオン性界面活性剤の存在によって影響されなかった(図24)。さらに、結合されたDNAのほとんどは、TE溶出によって回収され、そしてアルカリ溶出緩衝液を必要としなかった(図25)。
【0176】
(実施例21)
組織解離方法の特定の成分の存在下でのガラス繊維GF/B膜へのゲノムDNAの結合を生じる条件が同定されたので、ラット尾組織由来のDNAを単離する能力を試験した。この実施例において、2つのガラス繊維膜GF/BおよびGF/Dを試験した。
【0177】
ラット尾切片(50mg)を、200μlの溶液(1mgのプロテイナーゼK、1%のDTAB、100mMのTris−HCl(pH8.0)、20μMのATAおよび20mMのCaClを含有する)を含む微量遠心チューブ中で消化した。反応チューブを、全てのサンプルが消化されるまで、混合しながら65℃でインキュベートした(Eppendorf Thermomixer Model 5436)。未消化の骨および毛を含む濁った溶液にまでラット尾切片を減少させるのに、45〜50分要した。次いで、消化物を、5M GuSCN、50mM MES(pH6.0)、20mM EDTAおよび6% Tween 20を含む600μlの結合溶液によって清澄化した。次いで、チューブの底に骨および未消化粒子を残して、GF/BフィルターまたはGF/Dフィルターにその溶液を移すことによって、放出されたDNAをこのフィルターに結合させた。ABI Prism 6100上でのサンプルの真空媒介脱気後、フィルターを、90%エタノールで洗浄した。ゲノムDNAを、150μlのTEまたは0.01NのNaOHの溶液いずれかの溶液で溶出した。回収されたDNAの完全性を可視化するために、得られた溶出液の20μlを、1%アガロースゲル上で電気泳動し、エチジウムブロミド染色した(図28)。
【0178】
この研究において、ガラス繊維フィルターGF/Bは、GF/Dよりも、ゲノムDNA回収に優れていた(図26)。TEと比較して、0.01N NaOHで溶出した場合に、より多くの量のDNAが回収された。ほとんどのDNAは、0.01N NaOHで膜から回収されたが、いくらかのDNAは、膜に残ったままであり、これは、0.1N NaOHでのさらなる溶出で確認された(図27)。回収されたDNAは、図28に示されるように、高分子量のDNAである。
【0179】
(実施例22)
実施例21からのプロセスを使用して、いくつかのラット組織およびマウス尾からゲノムDNAを単離した。ラット筋肉、肝臓、肺、膵臓、腎臓、脳、小腸および尾の50mgの切片、ならびにマウス尾の50mg切片を、200μlの消化溶液を含む微量遠心チューブに置いた。この消化溶液は、1mgのプロテイナーゼK、1%のDTAB、100mMのTris−HCl(pH8.0)、20μMのATAおよび20mMのCaClを含んだ。
【0180】
3つの同一のサンプルを、各組織型について処理した。これらの反応チューブを、混合しながら65℃で、60分間インキュベートした(Eppendorf
Thermomixer Model 5436)。各組織の消化時間を記録し、そして60分の終了時に、未消化組織の量を決定した。50mgの種々のげっ歯類組織を分解するのに要した時間量を、表14に示す。
表14
【0181】
【表14】

【0182】
1〜3mgの組織が、60℃での60分間のインキュベーション後に未消化のままであった。
【0183】
表14に示されるように、これらの組織のほとんどが、1時間未満で効果的に消化された。肝臓、脳および腎臓の消化は、1時間後に約95%完了した。
【0184】
60分間の消化後、次いで、600μlの結合溶液を各サンプルに加えた。結合溶液は、5M GuSCN、50mM MES(pH6.0)、20mM EDTAおよび6% Tween 20を含んだ。次いで、サンプルを、ABI Prism 6100上のGF/Bフィルター膜上に置いた。次いで、フィルターを、90%エタノールで洗浄した。ゲノムDNAを、100μlの0.01NのNaOH溶液で溶出し、そしてその最初の溶出物を、100μlの15mM Tris−HCL、pH7.0で中和した。得られた200μlの溶出物のうち、20μlを、1%アガロース上での電気泳動(10μl/レーン)に使用した(図30)。回収されたDNAは、図30に見られるように、高分子量のDNAであった。
【0185】
総ゲノムDNA回収率を、図29に示す。ゲノムDNAの総量(1ウェルあたりのgDNAのμg)を、グラフの左の目盛りによって測定されるように、棒グラフで示す。DNAの相対純度を、黒菱形で示し、そしてグラフの右の目盛りによって示される、280nmに対する260nmのUV吸収の比によって測定する。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】図1は、40fg/ml〜40ug/mlの範囲の濃度においてProteinase Kでインキュベートされた、色素標識されたカゼイン基質の蛍光強度(蛍光単位で測定される)を示す。
【図2A】図2は、色素標識されたカゼイン基質のProteinase K消化に対する、様々な界面活性剤の効果を図示する。図2Aは、20μg/mlのProteinase Kを含む反応組成物を示し;図2Bは、2.5μg/mlのProteinase Kを含む反応組成物を示し;図2Cは、1.25μg/mlのProteinase Kを含む反応組成物を示す。テトラアルキルアンモニウムハライドの記号(白抜きのダイヤ)は、カチオン性界面活性剤である、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、および混合された臭化アルキルトリメチルアンモニウムの平均データを示す。ベジルアルキルアンモニウムハライドの記号(白抜きの丸)は、カチオン性界面活性剤である、塩化ベンズアルコニウム、臭化ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、臭化ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウム、および塩化ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムの平均データを示す。Mackerniumの記号(×)は、カチオン性界面活性剤である、Mackernium SDC−85、Mackernium KP、Mackernium WLEおよびMackernium NLEの平均データを示す。ポリクオーターニウム(polyquaternum)の記号(黒塗りの丸)は、カチオンポリマーである、Mackernium 006、およびMackernium 007の平均データを示す。水(黒塗りのダイヤ)を使用して得られた結果、およびアニオン性の界面活性剤SDS(黒塗りの四角)を使用して得られた結果もまた示される。エラーバーは、各データセットの標準偏差を示す。
【図2B】図2は、色素標識されたカゼイン基質のProteinase K消化に対する、様々な界面活性剤の効果を図示する。図2Aは、20μg/mlのProteinase Kを含む反応組成物を示し;図2Bは、2.5μg/mlのProteinase Kを含む反応組成物を示し;図2Cは、1.25μg/mlのProteinase Kを含む反応組成物を示す。テトラアルキルアンモニウムハライドの記号(白抜きのダイヤ)は、カチオン性界面活性剤である、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、および混合された臭化アルキルトリメチルアンモニウムの平均データを示す。ベジルアルキルアンモニウムハライドの記号(白抜きの丸)は、カチオン性界面活性剤である、塩化ベンズアルコニウム、臭化ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、臭化ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウム、および塩化ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムの平均データを示す。Mackerniumの記号(×)は、カチオン性界面活性剤である、Mackernium SDC−85、Mackernium KP、Mackernium WLEおよびMackernium NLEの平均データを示す。ポリクオーターニウム(polyquaternum)の記号(黒塗りの丸)は、カチオンポリマーである、Mackernium 006、およびMackernium 007の平均データを示す。水(黒塗りのダイヤ)を使用して得られた結果、およびアニオン性の界面活性剤SDS(黒塗りの四角)を使用して得られた結果もまた示される。エラーバーは、各データセットの標準偏差を示す。
【図2C】図2は、色素標識されたカゼイン基質のProteinase K消化に対する、様々な界面活性剤の効果を図示する。図2Aは、20μg/mlのProteinase Kを含む反応組成物を示し;図2Bは、2.5μg/mlのProteinase Kを含む反応組成物を示し;図2Cは、1.25μg/mlのProteinase Kを含む反応組成物を示す。テトラアルキルアンモニウムハライドの記号(白抜きのダイヤ)は、カチオン性界面活性剤である、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、および混合された臭化アルキルトリメチルアンモニウムの平均データを示す。ベジルアルキルアンモニウムハライドの記号(白抜きの丸)は、カチオン性界面活性剤である、塩化ベンズアルコニウム、臭化ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、臭化ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウム、および塩化ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムの平均データを示す。Mackerniumの記号(×)は、カチオン性界面活性剤である、Mackernium SDC−85、Mackernium KP、Mackernium WLEおよびMackernium NLEの平均データを示す。ポリクオーターニウム(polyquaternum)の記号(黒塗りの丸)は、カチオンポリマーである、Mackernium 006、およびMackernium 007の平均データを示す。水(黒塗りのダイヤ)を使用して得られた結果、およびアニオン性の界面活性剤SDS(黒塗りの四角)を使用して得られた結果もまた示される。エラーバーは、各データセットの標準偏差を示す。
【図3】図3は、Proteinase Kおよび様々な界面活性剤を含む、反応組成物を使用して遊離された、μg核酸/mgサンプルで測定される、核酸の量を図示する。
【図4−1】図4は、表示された界面活性剤を含む反応組成物とのインキュベーションに続いて、遊離された核酸(上清)の量とサンプル中に残る核酸(ペレット)との間の比較を提供する、染色されたアガロースゲルを示す。
【図4−2】図4は、表示された界面活性剤を含む反応組成物とのインキュベーションに続いて、遊離された核酸(上清)の量とサンプル中に残る核酸(ペレット)との間の比較を提供する、染色されたアガロースゲルを示す。
【図5】図5は、2mg/mlのProteinase Kおよび示される界面活性剤を含む反応組成物中で、45℃で20分間、インキュベートされた肝臓片から、遊離および単離された核酸の量を図示する。これらの図において使用する場合、NMPは1−メチル−2−ピロリジノンである。
【図6】図6は、遊離および単離された、図5の核酸の品質(完全性)を実証する、臭化エチジウム染色されたアガロースゲルを示す。
【図7】図7は、1mg/mlのProteinase Kおよび表示された界面活性剤および添加剤を含む、反応組成物中で、45℃で30分間インキュベートされた肝臓片から、遊離および単離された核酸の量を図示する。これらの図において使用する場合、「無し」は、さらなる界面活性剤が添加されなかったことを意味する。
【図8】図8は、遊離および単離された、図7の核酸の品質(完全性)を実証する臭化エチジウム染色されたアガロースゲルを示す。
【図9】図9は、1mg/mlのProteinase Kおよび表示された界面活性剤および添加剤を含む、反応組成物中で、45℃で30分間インキュベートをする前の、前処理溶液に肝臓片を曝露する工程の効果を図示する。これらの図において使用される場合、HTSP 2Xは、核酸精製リジン溶液を意味し;AcrOrは、アクリジンオレンジを意味する。
【図10】図10は、界面活性剤:Proteinase K処置の前に、前処理溶液中でインキュベートされたサンプルから、遊離および単離された核酸の質を示す、染色されたアガロースゲルを示す。
【図11】図11は、可変量のアウリントリカルボン酸を含む反応組成物を使用して、遊離および単離された核酸の量を質を示す、染色されたアガロースゲルを示す。
【図12】図12は、様々なカチオン性化合物を用いて、遊離および単離された、核酸の量および完全性の比較を提供する、染色されたアガロースゲルを示す。
【図13】図13は、TE(10mMのTris、pH8.0、1mMのEDTA)を用いて初めに溶出し、続いて100mMのNaOHを用いて溶出した時の、5MのGuSCN、2%のTween 20中で、異なる種々の界面活性剤を使用した、Proteinase K消化されたラットの尾からのゲノムDNAの回収の平均有効性を示す。値は、核酸の累積的な遊離を示す。
【図14】図14は、TE(10mMのTris、pH8.0、1mMのEDTA)を用いて初めに溶出し、続いて100mMのNaOHを用いて溶出した時の、異なる多数のpH値、塩、および界面活性剤を使用した、2%のTween 20の存在下におけるグラスファイバーGF/BフィルターからのゲノムDNAの回収の有効性を示す。値は、核酸の累積的な遊離を示す。
【図15】図15は、TE(10mMのTris、pH8.0、1mMのEDTA)を用いて初めに溶離し、続いて100mMのNaOHを用いて溶離した時の、異なる多数のpHレベル、塩、および界面活性剤を使用した、Tween 20の非存在下におけるグラスファイバーGF/BフィルターからのゲノムDNAの回収の有効性を示す。値は、核酸の累積的な遊離を示す。
【図16】図16は、カチオン性界面活性剤、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTAB)を、DNA結合の前、結合の間、結合の後に添加した場合の、DNA回収に対する効果を示す。値は、核酸の累積的な遊離を示す。
【図17】図17は、TEを用いて初めに溶出し、続いて100mMのNaOHで溶出した時の、DTAB濃度の関数としての、1%のウシ胎仔血清を含む緩衝液からのゲノムDNAの回収を示す。値は、2つの溶出工程後の、核酸の累積的な遊離を示す。
【図18】図18は、TEを用いて初めに溶出し、続いて100mMのNaOHで溶出した時の、アウリントリカルボン酸(ATA)濃度の関数としての、1%のウシ胎仔血清を含む緩衝液からのゲノムDNAの回収を示す。値は、2つの溶出工程後の、核酸の累積的な遊離を示す。
【図19】図19は、TEを用いて初めに溶出し、続いて100mMのNaOHで溶出した時の、Tween 20濃度の関数としての、1%ウシ胎仔血清を含む緩衝液からのゲノムDNAの回収を示す。値は、2つの溶出工程後の、核酸の累積的な遊離を示す。
【図20】図20は、TEを用いて最初に溶出し、続いて100mM NaOHを用いて溶出した場合の、CaCl濃度の関数としての、1%胎仔ウシ血清を含む緩衝液からのゲノムDNAの回収を示す。値は、2つの溶出工程後の、核酸の累積した解離を示す。
【図21】図21は、DTABを欠く3.75M チオシアン酸グアニジニウムの存在下での、GF/BフィルターへのゲノムDNAの結合に対する、Tween20の濃度の効果を示す。値は、TE、100mM NaOHを用いて溶出された際に解離された核酸の量、および2つの条件下で溶出された正味の量を示す。
【図22】図22は、3.75M チオシアン酸グアニジニウムおよび1% DTABの存在下での、GF/BフィルターへのゲノムDNAの結合に対する、Tween20濃度の効果を示す。値は、TE、100mM NaOHを用いて溶出された際に解離された核酸の量、および2つの条件下で溶出された正味の量を示す。
【図23】図23は、3.75M チオシアン酸グアニジニウムおよび4% DTABの存在下での、GF/BフィルターへのゲノムDNAの結合に対する、Tween20濃度の効果を示す。値は、TE、100mM NaOHを用いて溶出された際に解離された核酸の量、および2つの条件下で溶出された正味の量を示す。
【図24】図24は、示されたDTAB濃度の存在下でのGF/BフィルターへのゲノムDNAの結合およびTEを用いた溶出、続くNaOHを用いた溶出に対する、Tween20の効果を示す。
【図25】図25は、示されたDTAB濃度の存在下でのGF/BフィルターへのゲノムDNAの結合およびTEを用いた溶出による回収に対する、Tween20濃度の効果を示す。
【図26】図26は、GF/BまたはGF/Dガラスフィルターのいずれか、および0.01N NaOHまたはTEのいずれかを用いた、ラット尾部(約50mg)からのゲノムDNAの回収を示す。
【図27】図27は、最初に0.01N NaOHまたはTEで溶出したGF/BまたはGF/Dガラスファイバーフィルターからの、0.1N NaOHを用いる第2溶出後の、ラット尾部(約50mg)から回収した総ゲノムDNAを示す。
【図28】図28は、1mgのプロテイナーゼKおよび1%のDTABを用いて消化し、3.75M GuSCNおよび4.5% Tween 20の存在下でGF/BまたはGF/Dフィルターに結合させた、50mgのラット尾部切片由来のゲノムDNAを示す。ゲノムDNAを、150μlのTEで溶出し、続いて0.01NのNaOHを用いて溶出した。この溶出物のうち、20μl(全サンプルの14%)を、1% アガロース上でのゲル電気泳動に使用した。
【図29】図29は、50mgの種々のげっ歯類組織から回収したゲノムDNAを示す。組織を、1% DTABの存在下で1mgのプロテイナーゼKで消化した。解離した核酸を、4.5% Tween 20を含む3.75M チオシアン酸グアニジニウムの存在下でGF/D膜に結合させた。
【図30】図30は、1mgのプロテイナーゼKおよび1%のDTABを用いて消化し、3.75M GuSCNおよび4.5% Tween 20の存在下でGF/Bフィルターに結合させた、50mgのラット組織切片および35mgのマウス尾部切片由来のゲノムDNAを示す。ゲノムDNAを、100μlの0.01N NaOHで溶出し、続いて100μlのTEを用いて溶出した。ゲル電気泳動(1%アガロース上)に関して、各溶出物の15μlを使用した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的サンプルから核酸を得て、そして該核酸を固相に結合させるための方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2006−197941(P2006−197941A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74844(P2006−74844)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【分割の表示】特願2002−587600(P2002−587600)の分割
【原出願日】平成13年11月28日(2001.11.28)
【出願人】(500069057)アプレラ コーポレイション (120)
【住所又は居所原語表記】850 Lincoln Centre Drive Foster City CALIFORNIA 94404 U.S.A.
【Fターム(参考)】