説明

留め金具に掛け止めする落下防止用のフック

【課題】様々な部材に設けられている環状の留め金具に、紐状部材の先端部に取り付けたフックを掛け止めしたときに、当該フックが留め金具から外れてフックが落下してしまう事態の発生を確実に防止することにより、高所作業における作業員の安全を確保すると共に、種々の作業を円滑に進行することができる、留め金具に掛け止めする落下防止用のフックを提供する。
【解決手段】本発明に係る留め金具に掛け止めする落下防止用のフックは、環状の留め金具に掛け止めする鉤状のフック部と、軸支部を介してフック部に取り付けたフック部の外れ防止金具から構成され、外れ防止金具は、フック部が閉じた状態を維持するように付勢された状態でフック部に軸支されている落下防止用のフックであり、フック部の鉤底部分から、外れ防止金具の軸支部までの長さを、留め金具の環径幅以下にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な部材に設けられている環状の留め金具に、紐状部材の先端部に取り付けたフックを掛け止めしたときに、当該フックが留め金具から外れてフックが落下してしまう事態の発生を確実に防止した、留め金具に掛け止めする落下防止用のフックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、作業員が送電鉄塔に昇って行う種々の高所作業、また、作業員が架空送電線に沿って移動しながら行う種々の高所作業等においては、作業員が不安定な状態で作業を行うことが多い。
【0003】
その為、作業員が片手で所定の部材に掛け止めすることができるフックを備えた紐状部材が、様々な現場において数多く使用されている。
【0004】
このフックを備えた紐状部材は、例えば、作業員が誤って落下してしまう事態の発生を防止して、高所作業における作業員の安全を確保する安全ベルトとして使用されることが多い。
【0005】
例えば、作業員が架空送電線Eに沿って移動しながら行う種々の高所作業においては、図4に示すような宙乗機Sが使用される。この宙乗機Sは、図4(a)に示すように、それぞれ上部に二連滑車Aを支持している矩形枠状の縦フレームF1・F2の上端部同士を棒状の横架部材F3により連結し、縦フレームF1・F2の下方に板状の腰掛部Bを配置している。また、縦フレームF1・F2の縦片における略中央部には、環状の留め金具30がそれぞれ付設されている。
【0006】
そして、図4(b)に示すように、作業員が宙乗機Sの腰掛部Bに乗り込んだときに、作業員の背もたれとなると共に、作業員が背中側から落下してしまう事態の発生を防止するものとして、宙乗機Sに紐状部材Hが取り付けられている。
【0007】
この紐状部材Hは、両端部にフック1を備えており、紐状部材Hの両フック1を、縦フレームF1・F2の留め金具30に掛け止めしている。
【0008】
さらに、紐状部材Hは、図5に示すように、作業員が紐状部材Hを腹側に配置し、宙乗機Sを背負うようにして所定の梯子等を昇降するような場合にも使用されている。
【0009】
この他にも、紐状部材Hとそのフック1は、作業員の落下を防止する一措置として使用される等、様々な作業現場において適宜使用されている。
【0010】
そして、紐状部材Hのフック1を掛け止めする留め金具30は、例えば、図6(a)に示すように、半径t(直径2×t)の丸棒を、外径D1=2×d1の円環状(ドーナッツ型)に成形している。尚、図中のL2は、円環の外径D1から丸棒の半径tを引いた長さ(L2=D1−t)である。
【0011】
また、留め金具30に掛け止めするフック1は、図6(b)に示すように、鉤状のフック部2と、当該フック部2に取り付けたフック部2の外れ防止金具10から構成されている。
【0012】
フック部2は、所定の長さを有する矩形状の垂設部材2bと、垂設部材2bの先端部側に連設した鉤部材3により形成されている。この鉤部材3は、先端側部分が垂設部材2bの内側面2aに沿うように、垂設部材2bの基端部側に向けて折り返されている。そして、垂設部材2bの内側面2aと鉤部材3の内側面3aにより、留め金具30を導入する空間を形成している。
【0013】
また、フック部2は、垂設部材2bの内側面2aと鉤部材3の内側面3aが接合している部分を湾曲させて、鉤底部分4を形成している。
【0014】
フック部2の外れ防止金具10は、図6(b)に示すように、先端部が鉤部材3の内側面3aに当接する直線状の当接面10aと、当接面10aの基端部から斜め上方に延設した短尺な傾斜面10bと、傾斜面10bの頂部から当接面10aの先端部に向けて延設した長尺な傾斜面10cを備え、全体として横長の略三角形状に形成されている。
【0015】
この外れ防止金具10は、軸支部11を介して、フック部2における垂設部材2bの内側面2a寄りの基端部側に取り付けられている。また、軸支部11は、外れ防止金具10において、当接面10aと傾斜面10bが接合している位置の近傍に設けられている。
【0016】
外れ防止金具10は、不図示のバネ機構により、フック部2が閉状態を維持するように付勢された状態で、フック部2に軸支されている。具体的には、外れ防止金具10の先端部が、鉤部材3の内側面3aに当接して、鉤部材3の内側面3aと垂設部材2bの内側面2aにより形成されているフック部2の空間を、外れ防止金具10の傾斜面10cにより閉鎖するのである。
【0017】
この様な従来のフック1は、図6(b)に示すように、フック部2の鉤底部分4から、外れ防止金具10の軸支部11までの長さL1を、留め金具30の円環の外径D1から丸棒の半径tを引いた長さL2よりも長く(L1>L2)している場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特になし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
このように、従来のフック1は、図6(b)に示すように、フック部2の鉤底部分4から、外れ防止金具10の軸支部11までの長さL1を、留め金具30の円環の外径D1から丸棒の半径tを引いた長さL2よりも長く(L1>L2)している場合があることから、留め金具30による外れ防止金具10への作用点が、軸支部11の位置よりも鉤底部分4に近い箇所に存在する。
【0020】
その為、作業員が意図することなく、フック部2の外れ防止金具10が軸支部11を介して移動し、フック部2の空間が開放されてしまうことがある。具体的には、外れ防止金具10の先端部が、鉤部材3の先端部側の内側面3aから離れてしまうのである。
【0021】
例えば、作業員による種々の作業中において、図7(a)に示すように、留め金具30の上部に鉤底部分4を引っ掛けた状態で、軸支部11が存在しているフック部2の基端部側が矢印αで示す時計回り方向に略180度回転すると、図7(b)に示すように、外れ防止金具10の当接面10aが、留め金具30の下部に当接する。この当接部分は、外れ防止金具10の当接面10aにおいて、中央部分よりもやや鉤底部分4寄りに位置して、外れ防止金具10の軸支部11から離れている。
【0022】
この状態で、図7(b)に示すように、フック部2の基端部側が矢印αで示す時計回り方向に更に回転すると、図8(c)に示すように、外れ防止金具10の当接面10aが、留め金具30の下部に押されて、軸支部11を支点として矢印βで示す時計回り方向に移動し、フック部2が開いた状態となる。
【0023】
具体的には、外れ防止金具10の先端部が、鉤部材3の先端部側の内側面3aから離れて、鉤部材3の内側面3aと、垂設部材2bの内側面2aの間に形成されている空間が開放された状態となる。
【0024】
この状態で、図7(d)に示すように、フック1自体が矢印γで示す斜め上方に移動すると、フック部2が留め金具30から外れてしまうのである。
【0025】
この様に、作業員が意図することなく、フック部2が留め金具30から外れてしまうと、フック1を備えた紐状部材Hは、例えば、高所作業における作業員の安全を確保する安全ベルトとしての機能を発揮することができない。
【0026】
この他、様々な作業現場において適宜使用されているフック1と紐状部材Hが、作業の円滑な進行を阻害することにもなってしまう。
【0027】
そこで、本発明は、如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、様々な部材に設けられている環状の留め金具に、紐状部材の先端部に取り付けたフックを掛け止めしたときに、当該フックが留め金具から外れてフックが落下してしまう事態の発生を確実に防止することにより、高所作業における作業員の安全を確保すると共に、種々の作業を円滑に進行することができる、留め金具に掛け止めする落下防止用のフックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、環状の留め金具に掛け止めする鉤状のフック部と、軸支部を介してフック部に取り付けたフック部の外れ防止金具から構成され、外れ防止金具は、フック部が閉じた状態を維持するように付勢された状態でフック部に軸支されている落下防止用のフックであり、フック部の鉤底部分から、外れ防止金具の軸支部までの長さを、留め金具の環径幅以下にしていることで、上述した課題を解決した。
【0029】
また、フック部の鉤底部分から、外れ防止金具の軸支部までの長さL1は、留め金具の円環内径2×d2および円環外径2×d1、丸棒の半径t(=(d1−d2)÷2)、フックの厚み幅Tとして、式L1=√(2×d2×t+t×t)+√{d1×d1−(d2−T)×(d2−T)}から算出されることで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、環状の留め金具に掛け止めする鉤状のフック部と、軸支部を介してフック部に取り付けたフック部の外れ防止金具から構成され、外れ防止金具は、フック部が閉じた状態を維持するように付勢された状態でフック部に軸支されている落下防止用のフックであり、フック部の鉤底部分から、外れ防止金具の軸支部までの長さを、留め金具の環径幅以下にしていることから、作業員が意図することなく、フック部が留め金具から外れてしまう事態の発生を確実に阻止している。
【0031】
具体的には、フック部の鉤底部分から、外れ防止金具の軸支部までの長さを、留め金具の環径幅以下にしていることから、留め金具による外れ防止金具への作用点が、略軸支部の位置に存在することになる。
【0032】
この様に、留め金具による外れ防止金具への作用点が、従来のフックのように軸支部の位置よりも鉤底部分に近い箇所に存在するのではなく、略軸支部の位置に存在することにより、留め金具の下部が外れ防止金具の当接面に強く当たった場合であっても、軸支部を支点として外れ防止金具が移動することが無く、フック部が閉じている状態が維持されるのである。
【0033】
また、本発明においては、フック部の鉤底部分から、外れ防止金具の軸支部までの長さL1は、留め金具の円環内径2×d2および円環外径2×d1、丸棒の半径t(=(d1−d2)÷2)、フックの厚み幅Tとして、式L1=√(2×d2×t+t×t)+√{d1×d1−(d2−T)×(d2−T)}から算出して求められ、このL1の値に基づいて、フック部が留め金具から外れてしまう事態の発生を確実に阻止できるフックを製作することができる。
【0034】
すなわち、フック部の鉤底部分から、外れ防止金具の軸支部までの長さL1は、上記した式に基づいて、丸棒を円環状に形成した留め金具の円環外径D1から丸棒半径(t)を引いた長さL2(=D1−t)よりも短く(L1≦L2)なることから、留め金具による外れ防止金具への作用点が、外れ防止金具の軸支部の位置よりもフック部の鉤底部分に近い位置に存在していない。
【0035】
その為、外れ防止金具が180度反転して留め金具に強い力で突き当たった場合であっても、軸支部を支点として外れ防止金具が内側に移動せず、フック部が閉じている状態(フック部が閉じた状態を維持するように付勢されている状態)が維持される。
【0036】
しかも、このような外れ防止金具の180度反転時において、留め金具による外れ防止金具への作用点が、軸支部の位置を超えた位置(フック部の鉤底部分から、外れ防止金具の軸支部までの長さL1よりも大きな位置)に存在する場合には、フック部が閉じている状態がより確実に維持される。
【0037】
即ち、留め金具による外れ防止金具への作用点が、軸支部の位置を超えた位置(フック部の鉤底部分から、外れ防止金具の軸支部までの長さL1よりも大きな位置)に存在する場合において、留め金具が外れ防止金具に突き当たると、外れ防止金具が軸支部を支点として外側へ回転する方向に付勢されるため、フック部が閉じている状態(外れ防止金具の先端部が、鉤部材の先端部側の内側面に当接している状態)が常に維持されるのである。
【0038】
そして、留め金具による外れ防止金具への作用点が、軸支部の位置を超えた位置を常に維持することから、フック部が留め金具の環片側に寄せられた場合であっても、この留め金具からフック部が外れることが無い。
【0039】
この様に、本発明によれば、作業員が意図することなく、フック部が留め金具から外れてしまう事態の発生を確実に阻止しているため、例えば、高所作業における作業員の安全を確保する安全ベルト等としての機能を充分に発揮することができる。
【0040】
また、様々な作業現場において適宜使用されているフックにより、作業を円滑に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】フックと留め金具の構成を示すもので、(a)は留め金具の側面図、(b)は留め金具に掛け止めしているフックを回転させた状態を示す側面図である。
【図2】フックが留め金具から外れない状態を説明したもので、(a)は留め金具の上部に鉤底部分を引っ掛けた状態で、軸支部が存在しているフック部の基端部側が矢印αで示す時計回り方向に略180度回転する状態の側面図、(b)は外れ防止金具の当接面と留め金具の当接している部分が、軸支部の近傍に存在している状態の側面図である。
【図3】フックが留め金具から外れない状態を説明したもので、環状の留め金具に掛け止めしているフックが、留め金具の片側に寄せられた場合において、フックの外れ防止のための最小寸法計算を説明するための概略図である。
【図4】宙乗機の構成を示すもので、(a)は二連滑車を支持している矩形枠状の縦フレームの上端部同士を棒状の横架部材により連結し、板状の腰掛部を配置している宙乗機の斜視図、(b)は宙乗機に作業員が乗り込んでいる状態を示す斜視図である。
【図5】作業員が紐状部材を腹側に配置し、宙乗機を背負うようにして梯子を昇降している状態を示す斜視図である。
【図6】従来のフックと留め金具の構成を示すもので、(a)は留め金具の側面図、(b)は留め金具に掛け止めしているフックを回転させた状態を示す側面図である。
【図7】フックが留め金具から外れてしまう状態を説明したもので、(a)は留め金具の上部に鉤底部分を引っ掛けた状態で、軸支部が存在しているフック部の基端部側が矢印αで示す時計回り方向に略180度回転する状態を示す側面図、(b)は外れ防止金具の当接面と留め金具の当接している部分が、外れ防止金具の当接面において、中央部分よりもやや鉤底部分寄りに位置して、外れ防止金具の軸支部から離れている状態の説明図、(c)は外れ防止金具の側面が留め金具に押されて、フック部が開いている状態を示す側面図、(d)はフック部が留め金具から外れてしまう状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に、本発明を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0043】
本発明は、様々な部材に設けられている環状の留め金具30に掛け止めする、落下防止用のフック1である。この落下防止用のフック1は、留め金具30に掛け止めする鉤状のフック部2と、軸支部11を介してフック部2に取り付けたフック部2の外れ防止金具10から構成されている。
【0044】
また、外れ防止金具10は、フック部2が閉じた状態を維持するように付勢された状態で、フック部2に軸支されている。
【0045】
尚、フック部2や、外れ防止金具10等の構成は、図6・図7等を参照して説明済みであることから、これらと同一の部材には、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0046】
フック1を掛け止めする環状の留め金具30は、図1(a)に示すように、直径2tの丸棒を、外径D1(=2×d1:d1は円環外径の半分)の円環状(ドーナッツ型)に成形している。尚、L2は、円環の外径D1=2×d1から丸棒の半径tを引いた長さ(L2=D1−t)である。
【0047】
環状の留め金具30に掛け止めするフック1は、図1(b)に示すように、フック部の鉤底部分4から、外れ防止金具10の軸支部11までの長さL1を、留め金具30の環径幅以下にしている。
【0048】
具体的には、図1(b)に示すように、フック部1の鉤底部分4から、外れ防止金具10の支軸部11までの長さL1を、前記した留め金具30の円環の外径D1(=2×d1:d1は円環外径の半分)から丸棒の半径tを引いた長さL2(=D1−t)と略同じか、或いは、長さL2よりも短く(L1≦L2)なるように構成されている。
【0049】
これにより、図1(b)に示すように、留め金具30による外れ防止金具10への作用点が、略軸支部11の位置に存在することになる。
【0050】
この様に、留め金具30による外れ防止金具10への作用点が、従来のフック1のように軸支部11の位置よりも鉤底部分4に近い箇所に存在するのではなく、略軸支部11の位置に存在することにより、留め金具30の下部が外れ防止金具10の当接面10aに強く当たった場合であっても、外れ防止金具10の移動が阻止されている。
【0051】
その為、フック部2が閉じている状態(外れ防止金具10の先端部が、鉤部材3の先端部側の内側面3aに当接している状態)が維持されるのである。
【0052】
具体的には、作業員による種々の作業中において、図2(a)に示すように、留め金具30の上部にフック部2の鉤底部分4を引っ掛けた状態で、軸支部11が存在しているフック部2の基端部側が矢印αで示す時計回り方向に略180度回転すると、図2(b)に示すように、外れ防止金具10の当接面10aが、留め金具30の下部に当接する。この当接部分は、外れ防止金具10の当接面10aの下方に位置して、外れ防止金具10の軸支部11に並んでいる位置に存在している。
【0053】
この状態で、図2(b)に示すように、フック部2の基端部側が矢印αで示す時計回り方向に更に回転しようとしても、外れ防止金具10の移動が阻止されており、結果としてフック部2自体も移動することができない状態となっている。
【0054】
即ち、従来のフック1のように、留め金具30による外れ防止金具10への作用点が、軸支部11の位置よりも鉤底部分4に近い箇所に存在するときは、図6(c)に示すように、外れ防止金具10の当接面10a側面が留め金具30の下部に押されて、軸支部11を支点として矢印βで示す時計回り方向に移動してしまい、フック部2が開いた状態となってしまう。
【0055】
これに対し、本発明によるフック1では、留め金具30の下部が、外れ防止金具10の略軸支部11に並んでいる位置の当接面10aに突き当たるため、軸支部11を支点として外れ防止金具10が移動しないのである。
【0056】
この様に、留め金具30の下部が、外れ防止金具10の略軸支部11に並んでいる位置の当接面10aに強い力で突き当たった場合であっても、外れ防止金具10が軸支部11を支点として移動しないことから、フック部2が閉じている状態(外れ防止金具10の先端部が、鉤部材3の先端部側の内側面3aに当接している状態)が維持されるのである。
【0057】
そして、フック部1の鉤底部分4から、外れ防止金具10の支軸部11までの長さL1を、前記した留め金具30の円環の外径D1(=2×d1:d1は円環外径の半分)から丸棒の半径tを引いた長さL2(=D1−t)よりも短く(L1≦L2)して、留め金具30による外れ防止金具10への作用点が、鉤底部分4から離れて軸支部11の位置を超えて外れ防止金具10の当接面10aに突き当たるようにした場合には、外れ防止金具10が留め金具4により押されて、閉じる方向に付勢されたような状態となる。
【0058】
この他、図3に示すように、環状の留め金具30に掛け止めしているフック1が、当該留め金具30の環状平面内において環片側に寄せられるのに伴い、留め金具30と外れ防止金具10との各接触点、すなわち外れ防止金具10と留め金具30との接触点P1、および、鉤底部分4と留め金具30との接触点P2同士の間隔が狭められて行く。
【0059】
この接触点P1,P2同士の間隔Rが最小幅Rminとなった状態で、留め金具30が外れ防止金具10に強い力で突き当たっても留め金具30からフック部1が外れることが無いように当該最小幅Rminが設定されている。すなわち、このような外れ防止となるような最小幅Rminの条件は、フック1の鉤底部分4が留め金具30に接し、外れ防止金具10の軸支部11が留め金具30(の肉厚中心)に接するときである。
【0060】
フック1の外れ防止のための具体的な最小寸法計算について説明すると、図3に示すように、接触点P1,P2同士の間隔Rの最小幅Rminは、以下に示すように、留め金具30の円環内径2×d2および円環外径2×d1、丸棒の半径t(=(d1−d2)÷2)、フック1の厚み幅Tそれぞれと所定の関係となるように構成される。
【0061】
すなわち、図3に示すように、留め金具30の円環中心を原点Oとする(X,Y)座標軸を設定した場合において、留め金具30の円環外径の半分d1、留め金具30の円環内径の半分d2、フック1の厚み幅Tそれぞれが既知であれば、接触点P1,P2同士の間隔R=R1+R2の最小幅Rminが求められる。
【0062】
具体的には、軸支部11が位置するP1の座標を(X,Y=R1)とすると、原点OからP1までの長さは√(X×X+Y×Y)=√(d2×d2+R1×R1)=(d2+t)となり、これから、R1=√(2×d2×t+t×t)となる。
【0063】
また、鉤底部分4が位置するP2の座標を(X,Y=R2)とすると、原点OからP2までの長さは√(X×X+Y×Y)=√{(d2−T)×(d2−T)+(R2×R2)}=d1となり、これから、R2=√{d1×d1−(d2−T)×(d2−T)}となる。
【0064】
故に、Rmin=R1+R2=√(2×d2×t+t×t)+√{d1×d1−(d2−T)×(d2−T)}となる。このR=R1+R2がRminとなった時点で、Rminの値を、フック部1の鉤底部分4から、外れ防止金具10の支軸部11までの長さL1に対応させている。すなわち、L1(=Rmin)≦R(=R1+R2)≦L2(=D1−t)の関係となる。
【0065】
そして、既設の留め金具30の円環内径2×d2および円環外径2×d1、丸棒の半径t(=(d1−d2)÷2)、フック1の厚み幅Tそれぞれの値が予め解っていれば、フック部1の鉤底部分4から、外れ防止金具10の支軸部11までの長さL1を、上式のL1=Rmin=R1+R2=√(2×d2×t+t×t)+√{d1×d1−(d2−T)×(d2−T)}から算出して求め、このL1の値に基づいてフック1を製作する。
【0066】
このRminの式に、d1,d2,t,Tの具体的な数値として、例えば、d1=28.5mm、d2=21.5mm、t=3.5mm、T=7mmを代入すれば、R1=12.8mm、R2=24.5mm、Rmin=37.3mmとなる。このとき、留め金具30の円環外径D1の半分d1と丸棒の半径tとの和(d1+t)は32mmであり、Rmin=37.3mmよりも5.3mmだけ小さい。
【0067】
このように接触点P1(軸支部11が位置する点),P2(鉤底部分4が位置する点)同士の間隔R=R1+R2の最小幅Rminが、留め金具30の円環外径の半分d1と丸棒の半径tとの和(d1+t)と略同じ値かあるいは若干大きな値となるように構成されていることから、フック部1が留め金具30の環片側に寄せられても、当該留め金具30からフック部1が外れることが無い。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る留め金具に掛け止めする落下防止用のフックは、作業員が送電鉄塔に昇って行う高所作業や、作業員が架空送電線に沿って移動しながら行う高所作業の他に、様々な作業現場において作業員の安全を確保する部材として、また、円滑に作業を実施する部材として、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
S…宙乗機
A…二連滑車
B…腰掛部
E…架空送電線
F1…縦フレーム
F2…横フレーム
F3…横架部材
H…紐状部材

1…フック
2…フック部
2b…垂設部材
2a…内側面
3…鉤部材
3a…内側面
4…鉤底部分

10…外れ防止金具
10a…当接面
10b…傾斜面
10c…傾斜面
11…軸支部
30…留め金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の留め金具に掛け止めする鉤状のフック部と、軸支部を介してフック部に取り付けたフック部の外れ防止金具から構成され、外れ防止金具は、フック部が閉じた状態を維持するように付勢された状態でフック部に軸支されている落下防止用のフックであり、フック部の鉤底部分から、外れ防止金具の軸支部までの長さを、留め金具の環径幅以下にしていることを特徴とする、留め金具に掛け止めする落下防止用のフック。
【請求項2】
フック部の鉤底部分から、外れ防止金具の軸支部までの長さL1は、留め金具の円環内径2×d2および円環外径2×d1、丸棒の半径t(=(d1−d2)÷2)、フックの厚み幅Tとして、式L1=√(2×d2×t+t×t)+√{d1×d1−(d2−T)×(d2−T)}から算出される請求項1に記載の留め金具に掛け止めする落下防止用のフック。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−236990(P2011−236990A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109697(P2010−109697)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】