説明

留置針の針抜け検出装置

【課題】留置針を用いて患者の血管内に液を投与中に、留置針の先端が血管から抜けてしまういわゆる留置針の針抜け状態が発生しているかどうかを、光学的に検知して容易に確実に知ることができる留置針の針抜け検出装置を提供すること。
【解決手段】留置針の針抜け検出装置1は、発光部3と、発光部3からの光Lを内部に通し血管内に留置するための先端12Bとを有する留置針本体を保持した留置針組立体2と、発光部3からの光を持続発光および/またはパルス発光させる発光駆動部4と、留置針組立体の先端12Bから放射される発光部3からの光を受光する受光部88と、受光部88が光を受光した受光信号Dを受け、受光信号Dと予め定めた受光信号のしきい値SHとを比較して、留置針組立体の先端12Bから血管100から抜けているか否かを判断する制御部5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、留置針の針抜け検出装置に関し、特に例えば血管内への薬液の点滴をする際に血管内から留置針が針抜けした状態を光学的に検出して容易に確実に知ることができる留置針の針抜け検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
留置針は、先端(針先)を血管内に留置することにより、例えば人工透析における対外循環に使用したり、点滴により血管内に薬液を投与する等に使用される。留置針の構造例は特許文献1に記載されており、留置針の先端(針先)が血管内に挿入され、薬液バッグから薬液が留置針内を通って血管内に投与されるようになっている。
【特許文献1】特開2003−720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、操作者が従来の留置針を用いて患者の血管内に薬液を投与中に、留置針の先端が血管から抜けてしまう、いわゆる留置針の針抜け状態が発生しているかどうかを、容易に確実に検出して知ることができることが望まれている。
そこで、上記課題を解消するために、本発明は、留置針を用いて患者の血管内に液を投与中に、留置針の先端が血管から抜けてしまういわゆる留置針の針抜け状態が発生しているかどうかを、光学的に検出して容易に確実に知ることができる留置針の針抜け検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の留置針の針抜け検出装置は、光を発生する発光部と、前記発光部からの前記光を内部に通し血管内に留置するための先端とを有する留置針本体を保持した留置針組立体と、前記発光部からの前記光を持続発光および/またはパルス発光させる発光駆動部と、前記留置針の前記先端から放射される前記発光部からの前記光を受光する受光部と、前記受光部が前記光を受光した受光信号を受け、前記受光信号と予め定めた受光信号のしきい値とを比較して、前記留置針の前記先端が前記血管から抜けているか否かを判断する制御部とを備える。
本発明の留置針の針抜け検出装置では、好ましくは前記制御部に電気的に接続されて、前記留置針本体の前記先端が前記血管から抜けている場合には報知する報知部を有することを特徴とする。
本発明の留置針の針抜け検出装置では、好ましくは前記制御部に電気的に接続されて、前記留置針本体の前記先端が前記血管から抜けている場合には、通知対象に対して通信する通信部を有することを特徴とする。
【0005】
本発明の留置針の針抜け検出装置は、好ましくは前記留置針組立体の少なくとも一部は、前記発光部からの前記光を前記留置針の前記先端に導く光案内部を構成していることを特徴とする。
本発明の留置針の針抜け検出装置は、好ましくは前記光案内部は、前記発光部からの前記光を反射する光反射部材であることを特徴とする。
【0006】
本発明の留置針の針抜け検出装置は、好ましくは前記光案内部は、塗布により形成される光反射膜であることを特徴とする。
本発明の留置針の針抜け検出装置は、好ましくは前記光案内部は、前記発光部からの前記光を遮蔽する光遮蔽部であることを特徴とする。
【0007】
本発明の留置針の針抜け検出装置は、好ましくは前記発光部は、前記留置針組立体に対して着脱可能であり、前記発光部は、前記薬液との接触を阻止する薬液阻止部材を有することを特徴とする。
本発明の留置針の針抜け検出装置は、好ましくは前記発光部からの前記光は、血液内の特定物質に吸収ピークを有する特定波長を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の留置針の針抜け検出装置は、好ましくは前記発光部は、前記血管が静脈である場合に、還元ヘモグロビンの光学的吸収ピークを有する前記特定波長である660nm付近の光を発生させることを特徴とする。
本発明の留置針の針抜け検出装置は、好ましくは前記発光駆動部には、前記発光部の発光パルス間隔の変更可能、および/または前記持続発光と前記パルス発光とを選択的に変更可能にするモード選択手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の留置針の針抜け検出装置によれば、留置針を用いて患者の血管内に液を投与中に、留置針の先端が血管から抜けてしまういわゆる留置針の針抜け状態が発生しているかどうかを、光学的に検出して容易に確実に知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の留置針の針抜け検出装置の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
図1は、本発明の留置針の針抜け検出装置の好ましい実施形態を示す図である。図2は、図1に示す留置針組立体に対して内針が挿入されている状態を示す留置針本体の軸方向の断面図であり、図3は、図2に示す留置針から内針が取り外されて、留置針組立体に対して発光部が着脱可能に装着された状態を示す留置針組立体の軸方向の断面図である。
【0011】
図1に示すように、留置針の針抜け検出装置1は、発光部3を備える留置針組立体と、発光駆動部4と、制御部5と、モード選択スイッチ(モード選択手段)6と、受光部88と、出力部90と、報知部91と、そして通信部92を備えている。報知部91は、例えば音で操作者等に報知するブザーであり、通信部92は通知対象である例えば離れた位置にあるナースステーション93に対して無線で知らせるようになっている。
図1に示す留置針組立体は、例えば図1に示す薬液バッグ200から血管100内へ薬液Wの点滴をする際に、血管100内に薬液Wを投与するのに用いられる。
留置針組立体2の構造は、図2に詳しく示すように、カテーテルハブ10と、コネクタ部11と、外筒としてのカテーテル12と、内針14を有している。カテーテル12は、例えば、点滴治療中には、患者の皮膚血管内に留置される留置針本体である。カテーテルハブ10は、ほぼ円筒状のケーシング部材であり、例えばプラスチックにより作られている。カテーテルハブ10の中間部分には、コネクタ部11がカテーテルハブ10の軸方向CLに対して直交する方向に突出して設けられている。
【0012】
図1に示すカテーテルハブ10の先端部10Bには、細い中空状のカテーテル12の後端部が接続して固定されている。カテーテル12は例えばプラスチックにより作られておりカテーテル12は先端(針先)12Bを有している。
図1と図2に示す薬液バッグ200は点滴用の輸液チューブ201に接続されており、チューブ201の先端部品205にはロックコネクタ部品202が取り付けられている。ロックコネクタ部品202はメネジ203を有し、コネクタ部11はオネジ204を有している。
【0013】
これにより、操作者がロックコネクタ部品202を回して、ロックコネクタ部品202のメネジ203をコネクタ部11のオネジ204に対してかみ合わせることで、チューブ201の先端部品205がコネクタ部11のフィルタ13を突き破りながらチューブ201とカテーテルハブ10とカテーテル12の内部を接続することができる。従って、薬液バッグ200内の薬液Wは、チューブ201とコネクタ部11を通じてカテーテルハブ10内に供給され、そしてカテーテル12を通してカテーテル12の先端12Bから血管100内に投薬することができる。
【0014】
図2に示すように、内針14は、カテーテルハブ10とカテーテル12の内部に挿入して配置されている。内針14は、金属製の細い棒状の部材であり、内針14の先端部分15は、患者の皮膚表面120と血管(静脈)100に挿入し易いようにするために、軸方向CLに対して斜めに切除されてなる尖鋭な先端が形成されている。内針14の後端部分14Cは、内針ハブ16に固定されている。内針ハブ16は、操作者が内針14をカテーテル12とカテーテルハブ10内から取り外すための把持部である。
【0015】
内針14の一部分17はカテーテル12の内部に配置されているが、内針14の先端部分15はカテーテル12の先端12Bから突出している。内針14の残りの部分18は、カテーテルハブ10内に配置されており止血弁19を通っている。操作者が、図2に示す内針ハブ16を持って軸方向CLに沿ってS方向に引くことにより、内針14をカテーテル12とカテーテルハブ10内から該カテーテルハブ10の取り付け端部20を経て取り外すことができる。
【0016】
次に、図3と図4を参照して、発光部3について説明する。図4は、発光部3とカテーテルハブ10の取り付け端部20の構造例を示す斜視図である。図3と図4では、留置針組立体2から内針14が除去されている。図2に示す内針14をカテーテル12とカテーテルハブ10内から取り外した後に、操作者は、図3と図4に示す発光部3をカテーテルハブ10の取り付け端部20側に対して着脱可能に装着することができる。図3と図4に示すように、発光部3は、円筒状の把持部30と、円筒状の差し込み部31と、発光素子32を有している。円筒状の把持部30と円筒状の差し込み部31は例えばプラスチックにより一体に形成されており、発光素子32は、把持部30の内部空間33に配置されている。発光素子32は、円筒状の把持部30の中心に形成した透孔である穴30Hに対応して配置されており、発光素子32が発生する光Lは、この穴30Hを通して軸方向CLに沿ってカテーテルハブ10とカテーテル12の内部を通して、カテーテル12の先端12Bから外部に放射できる。
【0017】
図4に示すように、カテーテルハブ10の取り付け端部20は、差し込み用の凹部34を有している。発光部3の差し込み部31は、取り付け端部20の凹部34に対して着脱可能にはめ込まれて保持される。発光部3の差し込み部31は、円筒部分35と、2つの凸形状部分36,36を有している。2つの凸形状部分36,36は、円筒部分35の外周面から半径方向に突出して、かつ互いに対向する位置に形成され、断面三角形状を有している。これに対して、差し込み用の凹部34は、内周面37と、断面三角形状の2つの凹形状部分38,38を有している。内周部37は、差し込み部31の円筒部分35を保持する部分であり、2つの凹形状部分38,38には、2つの凸形状部分36,36がそれぞれはめ込まれるようになっている。
【0018】
これにより、発光部3はカテーテルハブ10の取り付け端部20に対して着脱可能に保持でき、発光部3はカテーテルハブ10の取り付け端部20に対して軸方向CLを中心として回転しないように位置決めできる。このように、発光部3はカテーテルハブ10の取り付け端部20に対して着脱可能に保持できるので、留置針組立体2のプラスチック製のカテーテル12とカテーテルハブ10は衛生面等の観点から使い捨てとすることができ、他方、発光部3は何度でも再利用が可能である。このため、図示例の発光部3を備える留置針組立体2は、カテーテルとカテーテルハブと発光部のすべて廃棄処分をする場合に比べてコストダウンが図れる。しかも、発光部3の発光素子32が発生する光Lの光軸は、カテーテル12とカテーテルハブ10の軸方向CLに一致させることができ、発光の際の光軸のアライメントがずれない。
【0019】
図3に示すように、発光部3の差し込み部31の円筒部分35端部には、例えば、合成樹脂フィルム等でなる液密性の膜状の光透過部材38Pが配置されている。光透過部材38Pは、カテーテルハブ10内に供給されてくる薬液を発光部3側に漏れないようにして薬液Wとの接触を阻止する薬液阻止部材である。これにより、発光部3には薬液Wが接触することがないので、発光部3は薬液Wにより汚染されず発光部3の再利用が容易に行える。そして、光透過部材38Pは、発光素子32が発生する光Lを通過させて、この光Lはカテーテルハブ10とカテーテル12内を通ってカテーテル12の先端(針先)12Bの開口部から放射して発光する構造になっている。
【0020】
図3と図4に示す発光素子32は、例えば発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)を用いることができる。発光素子32は、例えば図1に示す血管200が静脈である場合には、還元ヘモグロビン等の血液の特定要素に吸収ピークを有する波長(660nm付近)の光を発生する。図1と図3に示すように、発光素子32は、発光駆動部4に対して電気的に接続され、図1に示すように光駆動部4は、制御部5と、モード選択スイッチ(モード選択手段)6に対して電気的に接続されている。
【0021】
図1に示すモード選択スイッチ6は、留置手技中モードと、点滴中モードの2モードを選択可能にするためのスイッチである。
操作者がモード選択スイッチ6により留置手技中モードを選択すると、制御部5からの指示により発光駆動部4から発光部3の発光素子32への駆動信号Rが供給され、発光素子32は持続発光する光Lを発生する。
また、操作者がモード選択スイッチ6により点滴中モードを選択すると、制御部5からの指示により発光駆動部4から発光部3の発光素子32への駆動信号R1が供給され、発光素子32はパルス発光(断続発光)する光Lを発生する。
【0022】
次に、図1に示す制御部5と出力部90と報知部91と通信部92について説明する。
図1に示す制御部5は、受光部88が光Lを受光すると、受光部88から受光信号Dを受け、受光信号Dと予め定めた受光信号Dのしきい値SHとを比較して、留置針組立体2のカテーテル12の先端12Bが、血管100内に留置されているか血管100から抜けているかを判断する機能を有する。制御部5が、受光信号Dと予め定めた受光信号Dのしきい値SHとを比較して、受光信号Dの値が予め定めた受光信号Dのしきい値SHの値に比べて同じかあるいは小さい場合には、留置針組立体2のカテーテル12の先端12Bが、血管100内に留置されていると判断する。また、制御部5が、受光信号Dと予め定めた受光信号Dのしきい値SHとを比較して、受光信号Dの値が予め定めた受光信号Dのしきい値SHの値に比べて大きい場合には、留置針組立体2のカテーテル12の先端12Bが、血管100内から外れていると判断する。図1に示す出力部5は、制御部5に電気的に接続されている。報知部91と通信部92は、制御部5に電気的に接続されている。制御部5が受光部88から受光信号Dを受け、受光信号Dと予め定めた受光信号Dのしきい値SHとを比較した結果、留置針組立体2のカテーテル12の先端12Bが血管100から外れている場合には、制御部5は出力部90に信号Tを与え、出力部90は信号Tに基づいて報知部91と通信部92を作動させることができる。従って、留置針組立体2のカテーテル12の先端12Bが血管100から外れている場合には、報知部91が音で操作者等に報知し、通信部92は通知対象である例えば離れた位置にあるナースステーション93に対して無線で知らせることができる。また、図3に示すように、カテーテル12の内面とカテーテルハブ10の内面には、光案内部としての光反射部材80が塗布または蒸着により形成されている。光反射部材80は、発光素子32が発生する光Lを、カテーテルハブ10とカテーテル12の外部に漏れないように、カテーテル12の先端12Bに案内するために形成されている。これにより、光反射部材80は、発光素子32が発生する光Lを効率よく反射してカテーテル12の先端(針先)12Bへ導くことができる。図3に示すように、この光反射部材80は、円筒部分35の内周面にも形成することが望ましい。ここで、図3に示す例では、上記したように、光案内部は、発光部3の発光素子32からの光Lを反射する光反射部材80である。この場合には、光反射部材80は例えば銀ペーストを塗布したり、金属蒸着をするなどして形成されている。しかしこれに限らず、カテーテルハブ10とカテーテル12に対して、光Lを外部には漏らさないで反射できる光反射部として機能する材料で成形しても良い。この光案内部は、留置針組立体2の少なくとも一部分、例えばカテーテルハブ10だけ、あるいはカテーテルハブ10に加えてカテーテル10にも形成できる。留置針組立体2のカテーテル12の内面とカテーテルハブ10の少なくとも一部が2色成形されることにより、光案内部である光反射部材を形成することもできる。
【0023】
次に、上述した留置針の針抜け検出装置1の使用例を説明する。図2に示すように、内針14は、軸方向CLに沿ってカテーテル12の内部に配置されているが、先端部分15はカテーテル12の先端12Bから突出している。内針14の残りの部分18は、カテーテルハブ10内に配置されており止血弁19を通っている。図1に示すように、薬液バッグ200は、点滴用のチューブ201を介して留置針組立体2のコネクタ部11に接続される。
【0024】
操作者が図1と図2に示すように、内針14の先端部分15と留置針本体であるカテーテル12の先端12Bを、患者の皮膚表面120と皮膚表面120の内部の血管100に通して血管100内に穿刺する。内針ハブ16内へのフラッシュバックを確認後、操作者が図2に示す内針ハブ16を持ってS方向に引くことにより、内針14をカテーテル12とカテーテルハブ10内から取り外すが、留置針本体2であるカテーテル12の先端12Bは血管100内に留置されている。
【0025】
図3と図4に示すように、発光部3はカテーテルハブ10の取り付け端部20に対して着脱可能に保持し、発光部3はカテーテルハブ10の取り付け端部20に対して軸方向CLを中心として回転しないように、しかも発光部3の発光素子32が発生する光Lの光軸をカテーテル12とカテーテルハブ10の軸方向CLに一致させることができ、発光の際の光軸のアライメントがずれないように位置決めできる。図1に示す薬液バッグ200内の薬液は、点滴用のチューブ201と留置針組立体2のコネクタ部11を通じて留置針組立体2のカテーテルハブ10に入り、カテーテル12を経てカテーテル12の先端12Bの開口から血管100内に送液される。
【0026】
図3に示す発光素子32が発生した光Lは、図5(A)に示すようにカテーテル12の先端12Bが血管100内に無い場合、すなわち血管100から外れてしまっている場合には、カテーテル12の先端12Bから放射する光Lは患者の組織の周辺部位および組織300に散乱して散乱光LMとなる。この散乱光LMは、図1に示す受光部88で受光される。留置針組立体2のカテーテル12の先端12Bが血管100の外にある場合には、発光部3の発光素子32が発生した光Lは、留置針組立体2のカテーテル12の先端12Bから照射されるが、血管100内に比べて組織の周辺部位および組織300には還元ヘモグロビンが少ないために、留置針組立体2のカテーテル12の先端12Bから散乱光LMが赤く光る。図1に示す受光部88は、カテーテル12の先端12Bの周囲において660nmの波長の赤色の散乱光LMを受光する。そこで、制御部5は、受光部88から受光信号Dを受け、制御部5が、受光信号Dと予め定めた受光信号Dのしきい値SHとを比較して、受光信号Dの値が予め定めた受光信号Dのしきい値SHの値に比べて大きい場合には、留置針組立体2のカテーテル12の先端12Bが、血管100から外れていると判断する。
このように、留置針組立体2のカテーテル12の先端12Bは血管100から外れていると、制御部5が判断すると、報知部91が音で報知し、通信部92は通知対象である例えば離れた位置にあるナースステーション93に対して無線で知らせることができる。これにより、留置針組立体2のカテーテル12の先端12Bが血管100から外れている状態は、確実に検出して報知することができる。
【0027】
これに対して、図3に示す発光素子32が発生した光Lは、図5(B)に示すようにカテーテル12の先端12Bが血管100内にある場合、すなわち血管100内に挿入されている場合には、カテーテル12の先端12Bから放射する光Lは血管100中の赤血球(ヘモグロビン)により660nmの波長の赤色の光が吸収されて、散乱光LPとなる。このため、図5(A)に示すようにカテーテル12の先端12Bが血管100外にある場合の散乱光LMの強度に比べて、図5(B)に示すようにカテーテル12の先端12Bが血管100内にある場合の散乱光LPの強度が低下する。そこで、制御部5が、受光信号Dと予め定めた受光信号Dのしきい値SHとを比較して、受光信号Dの値が予め定めた受光信号Dのしきい値SHの値に比べて同じかあるいは小さい場合には、留置針組立体2のカテーテル12の先端12Bが、血管100内に留置されていると判断する。この場合には、報知部91が報知せず、通信部92は通知対象である例えば離れた位置にあるナースステーション93に対して無線で知らせない。
【0028】
ところで、受光部88を用いるのと並行して、留置針組立体2のカテーテル12の先端12Bが血管100内に留置されているかどうかを、操作者が目視で判断しようとする場合には、図1に示すように、留置針組立体2が血管100内に留置する留置手技作業の場合には、常に留置針組立体2のカテーテル12の先端12Bからの発光状態を監視した方が、カテーテル12の先端12Bが血管100内から針抜けした状態であるか、あるいは針抜けはしていない状態(針抜け状態の有無)であるかを確認し易い。
しかし、いったんカテーテル12の先端12Bが血管100内に留置された場合には、カテーテル12の先端12Bが血管100内から針抜けした状態であるかあるいは針抜けはしていない状態であるかを確認する場合には、発光部2の発光素子32からの光信号がパルス的(断続的)に発光している方が、針抜け状態の確認がし易い場合がある。
【0029】
発光素子32が持続的に発光している(持続発光)場合には、散乱光の強度からその場ですぐに留置針組立体2のカテーテル12の先端12Bが血管100内から外れた状態であるか血管100内に留置されている状態かの認識がしにくいが、発光素子32がパルス的に発光(パルス発光)している場合には、パルス光の強弱の差でカテーテル12の先端12Bが血管100から外れたかどうかの確認が、持続(連続)発光に比べて、より行い易くなる。すなわち、操作者が患者の体表から目視した場合に、パルス光の強弱の差が大きい場合にはカテーテル12の先端12Bが血管100から外れて抜けている状態であり、これに対してパルス光の強弱の差が小さい場合にはカテーテル12の先端12Bが血管100内に留まっている状態であると判断できる。
【0030】
このため、操作者が図1に示すモード選択スイッチ6を操作して、留置手技中モードと、点滴中モードの2モードのいずれかを選択する。操作者がモード選択スイッチ6により留置手技中モードを選択すると、発光駆動部4から発光素子32へ駆動信号Rが送られて、発光素子32は持続発光する光Lを発生する。
また、操作者がモード選択スイッチ6により点滴中モードを選択すると、発光駆動部4から発光素子32へ駆動信号R1が送られて、発光素子32はパルス発光(断続発光)する光Lを発生する。従って、操作者は、留置手技中モードと点滴中モードにおいて、それぞれ針抜けの判断が容易にできる。
【0031】
以上のように、本発明の実施形態の留置針の針抜け検出装置1を用いることにより、比較的安価な構成でありながら、留置針の先端が血管内に留置されているか、血管から抜けているかを針抜け状態の検出を容易に行え、例えば点滴作業における医療インシデント(誤った医療の発生)の低減に役立つ。また、発光素子32がパルス状の光を発生することにより、常に持続光を発生する場合に比べて、省電力化が図れる。
【0032】
図6と図7は、本発明の別の実施形態を示している斜視図である。
図6に示す本発明の実施形態は、図4に示す本発明の実施形態に代えて用いることができる。発光部3は、円筒状の把持部30と、先細り状(テーパ状)の差し込み部31Gと、把持部30内に配置されている発光素子32とを有している。円筒状の把持部30と先細り状の差し込み部31Gは例えばプラスチックにより作られており、発光素子32は、把持部30の内部空間30Hに配置されている。
【0033】
図6に示すように、カテーテルハブ10の取り付け端部20は、差し込み用の凹部34Gを有している。差し込み用の凹部34Gは内側に入るに従って、次第に縮径されて先細りになっている。発光部3の差し込み部31Gは、取り付け端部20の凹部34Gに対して着脱可能にはめ込まれて保持される。
この場合、差し込み部31Gがテーパ状とされているので、挿入はめ込み作業における位置決め案内が容易にされる。
これにより、発光部3はカテーテルハブ10の取り付け端部20に対して着脱可能に保持でき、発光部3の発光素子32が発生する光Lの光軸とカテーテル12とカテーテルハブ10の軸方向CLに一致させることができ、発光の際の光軸のアライメントがずれないように位置決めできる。
【0034】
図7に示す本発明の実施形態は、図4に示す本発明の実施形態あるいは図6に示す本発明の実施形態に代えて用いることができる。発光部3は、円筒状の把持部30と、断面楕円形状の差し込み部31Hと、把持部30内に配置されている発光素子32とを有している。円筒状の把持部30と差し込み部31Hは例えばプラスチックにより作られており、発光素子32は、把持部30の内部空間30Hに配置されている。
【0035】
図7に示すように、カテーテルハブ10の取り付け端部20は、差し込み用の凹部34Hを有している。差し込み用の凹部34Hは断面楕円形状を有している。発光部3の差し込み部31Hは、取り付け端部20の凹部34Hに適合するように、断面楕円形に形成されている。これにより、発光部3の差し込み部31Hは、取り付け端部20の凹部34Hに対して着脱可能にはめ込まれて保持される。この場合、発光部3の差し込み部31Hが、取り付け端部20の凹部34Hに対して装着されるに当たり、カテーテルハブ10の軸方向CL回りに位置ずれすることがなく、しかも発光部3の発光素子32が発生する光Lの光軸とカテーテル12とカテーテルハブ10の軸方向CLに一致させることができ、発光の際の光軸のアライメントがずれないように位置決めできる。
【0036】
本発明の留置針の針抜け検出装置は、光を発生する発光部と、前記発光部からの前記光を内部に通し血管内に留置するための先端とを有する留置針本体を保持した留置針組立体と、前記発光部からの前記光を持続発光および/またはパルス発光させる発光駆動部と、前記留置針の前記先端から放射される前記発光部からの前記光を受光する受光部と、前記受光部が前記光を受光した受光信号を受け、前記受光信号と予め定めた受光信号のしきい値とを比較して、前記留置針の前記先端が前記血管から抜けているか否かを判断する制御部とを備える。これにより、発光部からの光が留置針の先端から放射されるので、留置針を用いて患者の血管内に液を投与中に、留置針の先端が血管から抜けてしまういわゆる留置針の針抜け状態が発生しているかどうかを、光学的に検出して容易に確実に知ることができる。なお、発光駆動部が持続発光および/またはパルス発光させるとは、持続発光だけを発生する、パルス光だけを発生する、あるいは持続発光とパルス発光の両方を発生する意味である。本発明の留置針の針抜け検出装置では、制御部に電気的に接続されて、留置針本体の先端が血管から抜けている場合には報知する報知部を有することを特徴とする。これにより、留置針の針抜け状態を報知でき、操作者が留置針の針抜け状態が発生していることを確実に知ることができる。本発明の留置針の針抜け検出装置では、制御部に電気的に接続されて、留置針の先端が血管から抜けている場合には、通知対象に対して通信する通信部を有することを特徴とする。留置針の針抜け状態が発生していることを確実に通知対象に知らせることができる。
【0037】
本発明の留置針の針抜け検出装置では、留置針組立体の少なくとも一部は、発光部からの光を留置針の先端に導く光案内部を構成している。これにより、発光部の光は、外部に漏れることなく留置針の先端から効率良く放射できる。本発明の留置針の針抜け検出装置では、光案内部は、発光部からの光を反射する光反射部材である。これにより、発光部の光は、留置針から外部に漏れることなく留置針の先端から効率良く放射できる。
【0038】
本発明の留置針の針抜け検出装置では、光案内部は、塗布により形成される光反射膜である。これにより、発光部の光は、留置針から外部に漏れることなく留置針の先端から効率良く放射できる。本発明の留置針の針抜け検出装置では、光案内部は、発光部からの光を遮蔽する光遮蔽部である。これにより、発光部の光は、留置針から外部に漏れることなく留置針の先端から効率良く放射できる。本発明の留置針の針抜け検出装置では、発光部は、留置針組立体に対して着脱可能であり、発光部は、薬液との接触を阻止する薬液阻止部材を有する。これにより、留置針を廃棄処分する際に、発光部は再利用可能でありコストダウンが図れ、薬液阻止部材が発光部に対する薬液の付着を防げるので、発光部の再利用が容易である。
【0039】
本発明の留置針の針抜け検出装置では、発光部からの光は、血液内の特定物質に吸収ピークを有する特定波長を有する。これにより、留置針の先端が血管内に留置されていると発光部からの光が血液内の特定物質により吸収され、留置針の先端から放射される散乱光の強度が、留置針の先端が血管から外れている場合に留置針の先端から放射される散乱光の強度に比べて小さくなるので、留置針の先端が血管内に留置されているか血管から外れているかを光学的に検出して容易に確実に知ることができる。
【0040】
本発明の留置針の針抜け検出装置では、発光部は、血管が静脈である場合に、還元ヘモグロビンの光学的吸収ピークを有する特定波長である660nm付近の光を発生させる。これにより、留置針の先端が血管内に留置されていると発光部からの光が血液内の還元ヘモグロビンにより吸収され、留置針の先端から放射される散乱光の強度が、留置針の先端が血管から外れている場合に留置針の先端から放射される散乱光の強度に比べて小さくなるので、留置針の先端が血管内に留置されているか血管から外れているかを光学的に検出して容易に確実に知ることができる。
【0041】
本発明の留置針の針抜け検出装置では、発光部の発光パルス間隔の変更可能、および/または持続発光とパルス発光とを選択的に変更可能にするモード選択手段を備える。これにより、留置針の先端を血管内に留置する留置手技作業の場合には、常に留置針の先端からの発光状態を監視した方が、先端が血管内から針抜けした状態であるかあるいは針抜けはしていない状態(針抜け状態の有無)であるかを、操作者が目視で確認し易い。また、いったん先端が血管内に留置された場合には、カテーテルの先端が血管内から針抜けした状態であるかあるいは針抜けはしていない状態であるかを確認する場合には、発光部からの光信号がパルス的(断続的)に発光している方が、操作者が目視で針抜け状態の確認をし易い。なお、モード選択手段が、発光部の発光パルス間隔の変更可能、および/または前記持続発光と前記パルス発光とを選択的に変更可能にするとは、発光部の発光パルス間隔の変更可能であること、持続発光と前記パルス発光とを選択的に変更可能であること、あるいは発光部の発光パルス間隔の変更可能であることと持続発光と前記パルス発光とを選択的に変更可能であることの両方を含む意味である。
【0042】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形例を採用することができる。本発明の実施形態の留置針の針抜け検出装置は、薬液を患者の血管内に点滴を行う例を示しているが、この他に例えば人工透析等の他の医療にも用いることができる。
図示例では、発光部3の差し込み部31、31G、31Hの形状と、カテーテルハブ10の取り付け端部20の差し込み用の凹部34,34G、34Hの形状としては、例えば長方形断面等の他の形状を採用することができる。これにより、発光素子の光軸のアライメントが保持できるようにする。
【0043】
図4に示す例においては、2つの凸形状部分36,36が円筒部分35の外周面から半径方向に突出して形成され、差し込み用の凹部34の内周面には2つの凹形状部分38,38が形成されている。しかし、逆に2つの凹形状部分が円筒部分35の外周面に形成され、差し込み用の凹部34の内周面には2つの凸形状部分が形成されていても良い。また、凸形状部分と凹形状部分の数は、それぞれ1つであってもあるいは3つ以上であっても良い。
【0044】
また、発光部3とカテーテルハブ10の取り付け端部20の形状は、図4、図6および図7の各実施形態を任意に組み合わせて形成することもできる。発光部側と留置針側にタップを設けて発光部側と留置針側はスクリューロック構造で固定するようにしても良い。 発光駆動部に対して電気的に接続されるモード選択手段は、発光部の発光素子の発光を持続発光(連続発光)と、パルス的に発光できるようにしても良い。また、モード選択手段は、発光素子の発光を持続発光(連続発光)できるようにしたり、任意のオンオフ間隔でパルス的に発光できることと、および/または持続発光とパルス発光とを選択的に変更可能にすることができるようにしても良い。図1に示す報知部91は、例えば音で操作者等に報知するブザーに限らず、音で報知するスピーカ、光で報知するためのランプであっても良い。
【0045】
図8は、発光駆動部4によるパルス発光/受光パターンの実施形態の一例を示す図である。図において、1秒程度発光し、0.5秒程度発光を停止させるというパターンを繰り返し、受光部88もそれに同期させている。こうすることで、留置針の先端12Bの外れを容易に確認でき、消費電力も低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の留置針の針抜け検出装置の好ましい実施形態を示す図である。
【図2】図1に示す留置針に対して内針が挿入されている状態を示す留置針の軸方向の断面図である。
【図3】図2に示す留置針から内針が取り外され留置針に対して発光部が着脱可能に装着されている状態を示す留置針の軸方向の断面図である。
【図4】発光部とカテーテルハブの取り付け端部の構造例を示す斜視図である。
【図5】図5(A)は、カテーテルの先端が血管内にない場合に、患者の組織の周辺部位および組織に散乱して生じた散乱光LMを示す図である。図5(B)は、カテーテルの先端が血管内にある場合に、血管中の赤血球(ヘモグロビン)により660nmの波長の赤色の光が吸収されて生じた散乱光LPを示す図である。
【図6】本発明の別の実施形態を示す斜視図である。
【図7】本発明の別の実施形態を示す斜視図である。
【図8】本発明のパルス発光/受光パターンの実施形態の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 留置針の針抜け検出装置
2 留置針
3 発光部
4 発光駆動部
5 制御部
6 モード選択スイッチ(モード選択手段)
10 カテーテルハブ
11 コネクタ部
12 カテーテル
12B カテーテルの先端(針先)
13 フィルタ
14 内針
16 内針ハブ
20 カテーテルハブの取り付け端部
30 把持部
31 差し込み部
32 発光素子
35 円筒部分
36 凸形状部分
38 凹形状部分
38P 光透過部材
88 受光部
90 出力部
91 報知部
92 通信部
93 通知対象
100 血管
200 薬液バッグ
201 チューブ
W 薬液
CL 軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発生する発光部と、前記発光部からの前記光を内部に通し血管内に留置するための先端とを有する留置針本体を保持した留置針組立体と、
前記発光部からの前記光を持続発光および/またはパルス発光させる発光駆動部と、
前記留置針の前記先端から放射される前記発光部からの前記光を受光する受光部と、
前記受光部が前記光を受光した受光信号を受け、前記受光信号と予め定めた受光信号のしきい値とを比較して、前記留置針の前記先端が前記血管から抜けているか否かを判断する制御部と
を備えることを特徴とする留置針の針抜け検出装置。
【請求項2】
前記制御部に電気的に接続されて、前記留置針本体の前記先端が前記血管から抜けている場合には報知する報知部を有することを特徴とする請求項1に記載の留置針の針抜け検出装置。
【請求項3】
前記制御部に電気的に接続されて、前記留置針本体の前記先端が前記血管から抜けている場合には、通知対象に対して通信する通信部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の留置針の針抜け検出装置。
【請求項4】
前記留置針組立体の少なくとも一部は、前記発光部からの前記光を前記留置針の前記先端に導く光案内部を構成していることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載の留置針の針抜け検出装置。
【請求項5】
前記光案内部は、前記発光部からの前記光を反射する光反射部材であることを特徴とする請求項4に記載の留置針の針抜け検出装置。
【請求項6】
前記光案内部は、塗布により形成される光反射膜であることを特徴とする請求項4に記載の留置針の針抜け検出装置。
【請求項7】
前記光案内部は、前記発光部からの前記光を遮蔽する光遮蔽部であることを特徴とする請求項4に記載の留置針の針抜け検出装置。
【請求項8】
前記発光部は、前記留置針組立体に対して着脱可能であり、前記発光部は、前記薬液との接触を阻止する薬液阻止部材を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の留置針の針抜け検出装置。
【請求項9】
前記発光部からの前記光は、血液内の特定物質に吸収ピークを有する特定波長を有することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1つの項に記載の留置針の針抜け検出装置。
【請求項10】
前記発光部は、前記血管が静脈である場合に、還元ヘモグロビンの光学的吸収ピークを有する前記特定波長である660nm付近の光を発生させることを特徴とする請求項9に記載の留置針の針抜け検出装置。
【請求項11】
前記発光駆動部には、前記発光部の発光パルス間隔の変更可能、および/または前記持続発光と前記パルス発光とを選択的に変更可能にするモード選択手段を備えることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1つの項に記載の留置針の針抜け検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−81953(P2010−81953A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250836(P2008−250836)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】