説明

畜糞用敷料及びそのリサイクル使用方法

【課題】 家畜用敷料を家畜舎で多量に発生する家畜の畜糞を用いて製造でき且つ繰り返し生産できることで安価な敷料を提供でき、しかも家畜の病原菌を抑止でき、更に産業廃棄物の家畜糞を利用することでその産業廃棄物処理量を減らすことができる。
【解決手段】 原料の鶏糞を加熱装置の加熱室に投入して、バーナー排気熱で加熱室の外周を加熱し、その後加熱室に導入して、原料を90〜110℃程で加熱して1時間撹拌し、これに枯草菌・酵母菌・麹菌等の分解発酵菌と、病原菌の増殖を抑止する枯草菌・乳酸菌を投入し、併せてキトサンとケイ酸水溶液を主成分とする分解発酵促進剤も投入し、投入後1時間程撹拌して混合し、その後間欠的撹拌と間欠的送気を2日間程行い、発酵させた後、排気熱でもって乾燥して敷料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豚・にわとり・牛・馬等の飼育舎の床に敷かれる床材(敷料)を、家畜から排泄される畜糞から安価に製造し、しかも家畜の病原菌の増殖を抑止し、家畜の病気を少なくできる有用な敷料に関する。又畜糞の有用の利用技術でもある。
【背景技術】
【0002】
家畜用敷料は、特開2003−116390号公報に知られるように床の上にのこくず・牧草等植物質の敷料を敷いて床・畜舎の保温・床湿りの改善(乾燥化)を目的として使用されているが、長日数使用すると家畜の糞尿が多量に積もって湿ってくるとともに病原性の有害菌(大腸菌群等)が増殖し、悪臭・ガスも発生して弊害が発生する。
【0003】
従来、使用した敷料には畜糞が多量に積もる。約1tonの敷料に対し、50ton前後の糞尿が積もる。積もった糞と敷料は次の使用のため除去され、洗滌されて新しい床敷が敷かれて床は再使用される。除去された糞と使用済みの敷料の処理には堆肥化処分・焼却処分あるいは炭化装置で炭化する処分が採用されていた。それらのいずれの処分も手間・費用がかかるものであった。又のこくず・牧草等の新しい敷料に交換することは、床材料費がかかって費用が嵩むものとなっていた。
【0004】
旧来からなされてきた安価な野積みによる堆肥化方法は現在法律で禁止され、機械・設備で堆肥化せねばならず高価になっている。又焼却にも焼却設備を新設せねばならず難しいものであった。
更に炭化する処分は炭化設備が必要となってコストもかかって、これも採用しにくいものであった。
【特許文献1】特開2003−116390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、家畜舎に多量に発生する家畜の畜糞を主原料として敷料を製造し、畜糞の有効利用を図るとともに繰り返し使用できる安価な敷料を提供することにある。しかも家畜の病原菌の増殖を抑止できるという優れた特性を有する家畜用敷料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 畜糞を主たる原料とし、同原料を撹拌しながら高温で加熱して殺菌処理し、その後有機物の分解発酵菌と家畜の病原菌を抑止する有用菌とを投入し、撹拌しながら畜糞の有機成分を分解発酵させるとともに、家畜の病原菌を抑止する有用菌を増殖させ、その後粉粒状に乾燥させて製造する、家畜用敷料
2) 殺菌処理が、90〜110℃で1〜2時間以上持続させて行うものである、前記1)記載の家畜用敷料
3) 有用菌が枯草菌・乳酸菌のいずれかを含むか又はその組み合わせの菌である、前記1)又は2)記載の家畜用敷料
4) 発酵させるときに、キトサンとケイ酸水溶液とを主成分とする分解促進剤を撹拌されている原料に混入させる、前記1)〜3)記載の家畜用敷料
5) おがくず又は牧草等の使用済み敷料を家畜の畜糞の原料に混入して一緒に分解発酵させる、前記1)〜4)いずれか記載の家畜用敷料
6) 前記1)〜5)いずれかで製造された家畜用敷料を畜舎で実際に敷料として使用し、その使用された敷料とその上に積もった家畜の糞とを原料とし、同原料を撹拌しながら高温で加熱して殺菌処理し、その後撹拌しながら畜糞の有機成分を分解発酵させるとともに家畜の病原菌を抑止する有用菌を有機物の分解発酵菌と家畜の病原菌を抑止する有用菌とを投入し、撹拌しながら畜糞の有機成分を分解発酵させるとともに、家畜の病原菌を抑止する有用菌を増殖させ、その後粉粒状に乾燥させて家畜用敷料として再利用する、家畜用敷料のリサイクル使用方法
にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、家畜飼育で発生する畜糞、又は敷料の上に敷料の数十〜五十倍程の多量に積もる畜糞を原料として敷料を製造するので、従来のおがくず・牧草に比べて安価な敷料を提供でき、しかも病原菌を抑止でき家畜の病気の発生を低下させることができ、又敷料は繰り返し使用できるという効果がある。更に畜糞の廃棄処分負担を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の加熱殺菌処理は、密閉した室中に畜糞を投入し、撹拌装置で撹拌しながら、その室の内外からバーナー等を使用して加熱する装置を使用するのが好ましい。又その加熱温度を90〜110℃として1〜2時間以上持続させれば、殺菌が充分にできるものとなる。
本発明の有機物分解発酵菌としては、枯草菌(Bacillus.subtilis),酵母菌(Sacchromyces.cerevisiae)、麹菌(Aspergillus.oryzae)等がある。
又、本発明の家畜の病原菌の増殖を抑止する有用菌としては、枯草菌(Bacillus.subtilis),乳酸菌(Lactobacillus.acidophillus)等がある。そのうち枯草菌は有機物分解発酵菌としても働くものである。
【実施例】
【0009】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。実施例の家畜用敷料は、鶏糞を主原料とする鶏舎用敷料の例である。
図1は、実施例の処理工程の説明図である。
図2は、実施例の畜舎内の家畜用敷料のアンモニア臭抑止効果を示す説明図である。
図3は、実施例の使用した家畜用敷料中の分解発酵菌・有用菌と有害菌の菌体数の日齢変化を示す説明図である。
図4は、実施例の敷料を使用したときの肥育成績比較図である。
【0010】
本実施例の家畜用敷料の製造工程を図1に示す。
(1) 殺菌工程
原料は、鶏糞を使用し、その鶏糞を加熱装置の加熱室(図示せず)に投入し、その内部に設けた撹拌羽根を回動して撹拌する。加熱室の外周はバーナー排気熱(加熱空気)で加熱され、又その排気熱は加熱室内にも導入され、直接加熱するようにしている。原料温度は90〜110℃程で少なくとも1時間以上撹拌される。これによって鶏糞中の雑菌・有害菌・病原菌を殺菌する。
(2) 分解発酵工程
次に、この加熱室に原料の糞尿中の有機物の分解発酵する分解発酵菌として、枯草菌(Bacillus.subtilis)、酵母菌(Sacchromyces.cerevisiae)、麹菌(Aspergillus.oryzae)を、又病原菌の増殖を抑止する有用菌として枯草菌(Bacillus.subtilis)、乳酸菌(Lactobacillus.acidophillus)を投入する。併せてキトサンとケイ酸(珪酸)水溶液を主成分とする分解発酵促進剤も投入する。投入して1時間程度撹拌混合する。その後加熱室内の間欠的撹拌と間欠的な送気を行って大略2日間程かけて発酵させる。キトサンとケイ酸(珪酸)水溶液を主成分とする分解発酵促進剤(水65重量%,キトサン10重量%,ケイ酸(珪酸)10重量%,竹酢20重量%配合)も投入することで、分解の促進とアンモニア臭の発生が抑止される。又鶏糞はこの工程で分解発酵して粉状となる。麹菌の分解発酵は乳酸菌によって強められる。
(3) 乾燥工程
発酵後に、撹拌羽根による撹拌をしながらバーナーで排気熱を送り込んで2時間程加熱して乾燥させる。水分は20%程となる。
【0011】
このように(1)〜(3)の工程は5日間の作業で実施例1の鶏糞利用の敷料ができる。この敷料は、水分は20%程で粉粒状のものとなっている。この鶏糞敷料を床敷材として敷いた試験区の鶏舎と、従来ののこくず牧草の敷料の対照区鶏舎に、ひなを入れて使用した場合の、鶏舎の敷料のアンモニア臭の発生状態を日齢とともに測定した。その測定結果を図2に示す。
図2から分かるように、アンモニア臭は、従来ののこくず、牧草と同等かそれ以上に抑えることができる。単に加熱乾燥させた畜糞を敷料とする場合では水分が加わると、敷料中の成分からアンモニア臭が発生することが発生していたが、この問題点は解消された。
【0012】
又、各区の鶏糞の中の微生物とその菌体数を測定した。その結果を図3に示している。これから分かるように、本実施例の敷料では、鶏舎の鶏糞に含まれる病原菌の大腸菌は日齢とともに大巾に低くなることが分かる。これは病原菌抑止の多数の有用菌による効果が発現したことを示している。尚試験区では他の雑多な菌が共存していることが分かる。図3の図中の数字は対数表示で、その下表の数値が個体数である。
【0013】
両区のひなの肥育成績を図4に示している。
図4から分かるように、肥育成績は、従来ののこくず・牧草の敷料との差異は僅かであるが、本実施例の方がやや優れていた。
本実施例の敷料は、鶏舎の鶏糞を使用するので原料費は不要であり、かつ廃棄物の鶏糞の有効利用となっている。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明の家畜の畜糞による敷料製品は、敷料として使用しないときは、堆肥として使用したり、あるいは完熟させることにして、畜糞の廃棄処理に使える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例の処理工程の説明図である。
【図2】実施例の畜舎内家畜用敷料のアンモニア臭抑止効果を示す説明図である。
【図3】実施例の使用した家畜用敷料中の分解発酵菌・有用菌と有害菌の菌体数の日齢変化を示す説明図である。
【図4】実施例の敷料を使用したときの肥育成績比較図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜糞を主たる原料とし、同原料を撹拌しながら高温で加熱して殺菌処理し、その後有機物の分解発酵菌と家畜の病原菌を抑止する有用菌とを投入し、撹拌しながら畜糞の有機成分を分解発酵させるとともに、家畜の病原菌を抑止する有用菌を増殖させ、その後粉粒状に乾燥させて製造する、家畜用敷料。
【請求項2】
殺菌処理が、90〜110℃で1〜2時間以上持続させて行うものである、請求項1記載の家畜用敷料。
【請求項3】
有用菌が枯草菌・乳酸菌のいずれかを含むか又はその組み合わせの菌である、請求項1又は2記載の家畜用敷料。
【請求項4】
発酵させるときに、キトサンとケイ酸水溶液とを主成分とする分解促進剤を撹拌されている原料に混入させる、請求項1〜3記載の家畜用敷料。
【請求項5】
おがくず又は牧草等の使用済み敷料を家畜の畜糞の原料に混入して一緒に分解発酵させる、請求項1〜4いずれか記載の家畜用敷料。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかで製造された家畜用敷料を畜舎で実際に敷料として使用し、その使用された敷料とその上に積もった家畜の糞とを原料とし、同原料を撹拌しながら高温で加熱して殺菌処理し、その後撹拌しながら畜糞の有機成分を分解発酵させるとともに家畜の病原菌を抑止する有用菌を有機物の分解発酵菌と家畜の病原菌を抑止する有用菌とを投入し、撹拌しながら畜糞の有機成分を分解発酵させるとともに、家畜の病原菌を抑止する有用菌を増殖させ、その後粉粒状に乾燥させて家畜用敷料として再利用する、家畜用敷料のリサイクル使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−238820(P2006−238820A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60583(P2005−60583)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(593018378)株式会社ジャパンファーム (2)
【出願人】(596106744)株式会社サンコー・テクノ (4)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】