説明

略半球状建築物およびその建築方法ならびに三角形構造体

【課題】組立作業にクレーン等の重機を必要とせず、少人数で作業を行うことができる略半球状建築物の建築方法と、当該建築方法による建築物と、その三角形構造体を提供する。
【解決手段】略半球状建築物Aは、各壁面構築工程により第1層壁面1ないし第5層壁面5を構築する。第1層壁面1ないし第5層壁面5は、第1の三角形構造体T1又は第2の三角形構造体T2により構成される。上記建築方法によれば、三角形構造体を単位として組み立てるので、比較的軽量となり、吊り上げるためのクレーン等の重機が不要となり、少人数の作業者で建築作業をすることができる。また、上記方法による建築物は、三角形構造体により、正五角錐状壁面と正六角錐状壁面が組み合わされた構造となり、略半球状の建築物が構築される。また、三角形構造体は、正五角錐状壁面及び正六角錐状壁面を複数に分割した状態の部材とすることができるので、部材を軽量化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略半球状建築物いわゆるドーム型建築物とその建築方法、および当該建築方法に使用する三角形構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のドーム形の建築物の建築方法としては、三角形の枠に平板が貼り付けられた三角形パネルを組み合わせて、五角形パネルあるいは六角形パネルを地組し、これらの五角形パネルおよび六角形パネルによりドーム形を形成していくものがあった(特許文献1)。
【0003】
また、三角形枠を6つ接合して正六角形のユニットを構成し、このユニットをクレーンで吊り上げて移動させ、ユニット同士を接合してドーム形に建築するものもあった(特許文献2)。
【0004】
屋根部がドーム形となっている建築物には、三角形を組み合わせた五角形パネルと六角形パネルにより構築されており、合成樹脂やガラス繊維強化プラスチックで一体的に成形されているドーム形の建築物があった(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−224464号公報(3頁、図9)
【特許文献2】特開平7−119208号公報(3頁、図5)
【特許文献3】特開平7−18744号公報(3頁、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記発明にあっては、最初に三角形の枠を地組した後に五角形パネルや六角形パネルを構築していくので、全体の組立工程は少なくなるものの、パネル1枚当たりの面積は大きくなり、かつ、パネルの重量も増加するものであった。また、これに伴い、組立作業には、多人数またはクレーン等の重機が必要となるものであった。
【0007】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、組立作業にクレーン等の重機を必要とせず、少人数で作業を行うことができる略半球状建築物の建築方法と、当該建築方法による建築物と、そのための三角形構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、略半球状建築物の建築方法にかかる本発明は、第1の二等辺三角形の各辺を形成する3本の部材を備える第1の三角形構造体を集合して構成される正六角錐状壁面と、上記第1の二等辺三角形の底辺と同じ長さの底辺を有する第2の二等辺三角形の各辺を形成する3本の部材を備える第2の三角形構造体を集合して構成される正五角錐状壁面とを、適宜組み合わせて構築される略半球状建築物であって、上記第1の三角形構造体を、水平面上に立設かつ連続させつつ略円筒状に整列させ、隣接する三角形構造体を連結することにより、第1層壁面を構築する第1層壁面構築工程と、上記第1または第2の三角形構造体を、上記第1層壁面を構成する上記第1の三角形構造体の上方に連続させつつ、上記第1層壁面よりも内向きに傾斜するような略円筒状に整列させ、隣接する三角形構造体を連結することにより、第2層壁面を構築する第2層壁面構築工程と、上記第2層壁面の一部を構成する上記第1の三角形構造体の上方に上記第1の三角形構造体を、上記第2層壁面の一部を構成する上記第2の三角形構造体の上方に上記第2の三角形構造体を、それぞれ連続させつつ、上記第2層壁面よりもさらに内向きに傾斜するような略円筒状に整列させ、隣接する三角形構造体を連結することにより、第3層壁面を構築する第3層壁面構築工程と、上記第1の三角形構造体を、上記第3層壁面を構成する上記第1の三角形構造体の上方に連続させつつ、上記第3層壁面よりもさらに内向きに傾斜するような略円筒状に整列させ、隣接する三角形構造体を連結することにより、第4層壁面を構築する第4層壁面構築工程と、上記第4層壁面を構成する上記第1の三角形構造体の端縁に沿って上記第2の三角形構造体を連続させつつ配置し、隣接する三角形構造体を連結することにより、第5層壁面を構築する第5層壁面構築工程とを含むことを特徴とする略半球状建築物の建築方法を要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、正六角錐状壁面を構成し得る第1の三角形構造体と、正五角錐状壁面を構成し得る第2の三角形構造体を適宜組み合わせることにより、略半球状建築物を建築することができる。このとき、正六角錐状壁面および正五角錐状壁面を単位として組み立てるのではなく、第1層壁面から第5層壁面までを、三角形構造体により順次底部から組み立てることができるものである。
【0010】
また、上記発明において、第1層壁面構築工程は、30個の前記第1の三角形構造体を連続するとともに、隣接する3個の該三角形構造体を一組として連続させることにより、上記正六角錐状壁面の2分の1を構築してなる第1層壁面構築工程とすることもできる。
このとき、隣接する3個の前記第1の三角形構造体を一組として連続させることにより、上記正六角錐状壁面の2分の1を構築する場合において、該3個の中間に位置する上記第1の三角形構造体は、底辺部分を下位にしてなる下半分六角錐状壁面構成部と、底辺部分を上位にしてなる上半分六角錐状壁面構成部とを、交互に構築するものとすることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、第1層壁面は30個の第1の三角形構造体によって、正六角錐状壁面の2分の1を10個構築させることができる。これらの正六角錐状壁面の2分の1の構築部分のうち、その半分(5個)が第2層壁面を構成する第1の三角形構造体によって、正六角錐状壁面を構築でき、残余の半分(5個)は、第2層壁面において、正五角錐状壁面を構築すべき範囲を形成することができる。
【0012】
また、上記発明において、第2層壁面構築工程は、上記第1層壁面を構成する上記下半分六角錐状壁面構成部の上方に、上記第1の三角形構造体による上半分六角錐状壁面構成部を構築し、この上半分六角錐状壁面構成部の両側に位置する三角形構造体の底辺部分、および、上記第1層壁面を構成する上半分六角錐状壁面構成部の中央に位置する三角形構造体の底辺部分のそれぞれに、上記第2の三角形構造体の底辺部分を当接させつつ連続させることによって正五角錐状壁面の一部を構築する第2層壁面構築工程とすることもできる。
【0013】
上記構成によれば、第1層壁面の一部とともに正六角錐状壁面を構築することができ、第1層壁面の上部に第2の三角形構造体を連続させることができる。そして、第2層壁面に使用される第1の三角形構造体は、次工程である第3層壁面構築工程における三角形構造体の設置範囲を確定させることができる。
【0014】
また、上記発明において、第3層壁面構築工程は、上記第2層壁面を構成する第2の三角形構造体の端縁にさらに第2の三角形構造体を連続して正五角錐状壁面を構築し、上記第2層壁面を構成する上記上半分六角錐状壁面構成部の上方に、下半分六角錐状壁面構成部を構築する第3層壁面構築工程とすることもできる。
【0015】
上記構成によれば、第2層壁面の一部と、第3層壁面の一部とによって、正五角錐状壁面を構築することができる。また、第1の三角形構造体を設けた部分は、次工程である第4層壁面構築工程によって正六角錐状壁面を構築し得る状態とすることができる。
さらに、上記発明において、第4層壁面構築工程は、上記第3層壁面を構成する上記下半分六角錐状壁面構成部の上方に、上半分六角錐状壁面構成部を構築する第4層壁面構築工程とすることもできる。
【0016】
上記構成によれば、第4層壁面により、第3層壁面の一部とともに正六角錐状壁面を構築することができる。さらに、第4層壁面の上端縁は、上記第4層壁面を構成する三角形構造体の5個の底辺部分によって五角形が形成されることから、残る非構築部分は五角形となり、最終工程において、第2の三角形構造体により、正五角錐状壁面を構築することができる。
【0017】
また、上記各発明において、上記第1または第2の三角形構造体の配置を部分的に省略することにより、出入り口用開口部または窓用開口部を形成することもできる。このような構成により、三角形構造体を単位として、開口部を設けることができる。
略半球状建築物に係る本発明は、上記建築方法に係る各発明により構築される略半球状建築物であって、正六角錐状壁面と正五角錐状壁面とで構築されたことを特徴とする略半球状建築物を要旨とする。
【0018】
上記構成によれば、三角形構造体を組み合わせることによって構築される正六角錐状壁面および正五角錐状壁面を適宜配置してなる建築物を設けることができ、この建築物全体を略半球状とすることができる。
【0019】
略半球状建築物の建築方法において使用される三角形構造体に係る本発明は、上記第1または第2の二等辺三角形の底辺部分を形成する底辺部構成部材と、上記二等辺三角形の斜辺部分を形成する第1および第2の斜辺部構成部材とを備え、上記底辺部構成部材は、所定の幅寸法および厚さ寸法を有する長尺部材により平面視において台形に形成され、その台形の底辺が上記二等辺三角形の底辺部分の長さ寸法に合致するとともに、上記台形の両斜辺が上記二等辺三角形の斜辺部分の一部を構成するように形成された底辺部構成部材であり、上記第1の斜辺部構成部材は、所定の幅寸法および厚さ寸法を有する長尺部材により平面視において台形に形成され、その台形の底辺が上記二等辺三角形の斜辺部分の長さ寸法から上記底辺部構成部材の斜辺の長さを減算して得た寸法であるとともに、上記台形の斜辺のうち一方が上記二等辺三角形の残りの斜辺部分の一部を構成するように形成された第1の斜辺部構成部材であり、上記第2の斜辺部構成部材は、所定の幅寸法および厚さ寸法を有する長尺部材により平面視において台形に形成され、その台形の底辺が上記二等辺三角形の斜辺部分の長さ寸法から上記底辺部構成部材の斜辺の長さおよび上記第1の斜辺部構成部材の一方の斜辺の長さをそれぞれ減算して得た寸法である第2の斜辺部構成部材であることを特徴とする三角形構造体を要旨とする。
【0020】
上記構成によれば、三種類の平面視台形の部材によって三角形を構成することができ、各部材(平面視台形の部材)の底辺によって所定寸法の二等辺三角形を形成させることができる。これにより、当該二等辺三角形を組み合わせることによって、正六角形または正五角形を形成させ得ることとなる。
【0021】
また、上記発明において、三角形構造体は、上記底辺部構成部材ならびに第1および第2の斜辺部構成部材によって形成される三角形状の枠体の少なくとも片面に、三角形状の板状部材を貼設してなる三角形構造体とすることもできる。
【0022】
上記構成によれば、三角形状の枠体に板状部材が貼設されて壁構造体とすることができる。これにより、三角形状の枠体を組み合わせた後に板状部材を貼設しなくとも、三角形構造体を組み立てることにより、壁面が形成されることとなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の建築方法によれば、五角形パネルや六角形パネルのユニットを地組して組み立てるのではなく、三角形構造体を単位として組み立てることから、比較的軽量となり、吊り上げるためのクレーン等の重機が不要となる。また、半球形状の組み立てでは、二種類の三角形構造体を使用して一段ずつ積み上げて組み立てていくので、少人数の作業者で建築作業をすることができる。
【0024】
また、本発明の建築物は、上記三角形構造体により、正五角錐状壁面と正六角錐状壁面が組み合わされた構造となり、略半球状の建築物が構築され得るものである。この略半球形状の建築物には、妻行方向や桁行方向といった方向差がないので、地震による振動や強風による風の抵抗が1個所に集中することがない。また、この建築物は屋根や壁面全体として曲面を有する構造となっているので、風の進行方向に対して垂直な面がなく、風の抵抗を少なくすることができる。
【0025】
さらに、本発明の三角形構造体によれば、正五角錐状壁面および正六角錐状壁面を複数に分割した状態の部材とすることができ、部材を軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態を示す部材説明図である。
【図3】本発明の実施形態を示す部材説明図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて、略半球状建築物Aの建築方法について説明する。略半球状建築物Aは、第1層壁面構築工程ないし第5層壁面構築工程により構築されている。
【0028】
第1層壁面構築工程は、図1(a)に示すように、30個の第1の三角形構造体T1を使用し、隣接する3個の第1の三角形構造体T1を一組として、水平面上に立設かつ連続させつつ略円筒状に整列させ、隣接する第1の三角形構造体T1を連結させることにより第1層壁面1を構築するものである。隣接する3個の第1の三角形構造体T1を一組として連続させることにより、正六角錐状壁面の2分の1を構築するようになっている。このとき、隣接する3個の第1の三角形構造体T1の中間に位置する上記第1の三角形構造体T1の底辺部分が下位の場合には、下半分六角錐状壁面構成部を構築し、底辺部分が上位の場合には、上半分六角錐状壁面構成部を構築することになる。そして、第1層壁面1は、下半分六角錐状壁面構成部と上半分六角錐状壁面構成部を交互に連結していくことで構築することができる。なお、三角形構造体T1には、連結用の貫通孔111,112,121,122,131,132が設けられており、隣接する三角形構造体の当接部において、上記貫通孔を同時に貫通するボルトおよびこれに螺合するナットによって締着することで連結するものである。
【0029】
また、第2層壁面構築工程は、図1(b)に示すように、15個の第1の三角形構造体T1および15個の第2の三角形構造体T2を使用し、隣接する3個の第1の三角形構造体T1または隣接する3個の第2の三角形構造体T2を一組として、上記第1層壁面1を構成する上記第1の三角形構造体T1の上方に連続させつつ、上記第1層壁面1よりも内向きに傾斜するような略円筒状に整列させ、隣接する第1の三角形構造体T1または第2の三角形構造体T2を連結することにより、第2層壁面2を構築するものである。詳細には、上記第1層壁面1を構成する上記下半分六角錐状壁面構成部の上方に、隣接する3個の第1の三角形構造体T1による上半分六角錐状壁面構成部を構築し、この上半分六角錐状壁面構成部の両側に位置する三角形構造体T1の底辺部分と、上記第1層壁面1を構成する上半分六角錐状壁面構成部の中央に位置する三角形構造体T1の底辺部分のそれぞれに、上記第2の三角形構造体T2の底辺部分を当接させつつ連続させることによって正五角錐状壁面の一部を構築し、上記上半分六角錐状壁面構成部と正五角錐状壁面の一部である3個一組の第2の三角形構造体T2を交互に構築していくことで、第2層壁面2とすることができる。なお、三角形構造体T1と同様に、三角形構造体T2にも、連結用の貫通孔211,212,221,222,231,232が設けられており、隣接する三角形構造体の当接部において、上記貫通孔を同時に貫通するボルトおよびこれに螺合するナットによって締着することで連結するものである。
【0030】
また、第3層壁面構築工程は、図1(c)に示すように、15個の第1の三角形構造体T1および10個の第2の三角形構造体T2を使用し、隣接する3個の第1の三角形構造体T1または隣接する2個の第2の三角形構造体T2を一組として、第2層壁面2の一部を構成する第1の三角形構造体T1の上方に上記第1の三角形構造体T1を、上記第2層壁面2の一部を構成する上記第2の三角形構造体T2の上方に上記第2の三角形構造体T2を、それぞれ連続させつつ、上記第2層壁面2よりもさらに内向きに傾斜するような略円筒状に整列させ、隣接する三角形構造体を連結することによって、第3層壁面3を構築するものである。詳細には、上記第2層壁面2を構成する第2の三角形構造体T2の端縁にさらに第2の三角形構造体T2を連続して正五角錐状壁面を構築し、上記第2層壁面2を構成する上記上半分六角錐状壁面構成部の上方に、下半分六角錐状壁面構成部を構築し、上記下半分六角錐状壁面構成部と2個一組の第2の三角形構造体T2を交互に構築していくことで、第3層壁面3とすることができる。
【0031】
また、第4層壁面構築工程は、図1(d)に示すように、15個の第1の三角形構造体T1を使用し、隣接する3個の第1の三角形構造体T1を一組として、上記第3層壁面3を構成する上記第1の三角形構造体T1の上方に連続させつつ、上記第3層壁面よりもさらに内向きに傾斜するような略円筒状に整列させ、隣接する三角形構造体T1を連結することにより第4層壁面を構築するものである。詳細には、上記第3層壁面を構成する上記下半分六角錐状壁面構成部の上方に、上半分六角錐状壁面構成部を構築していくことで、第4層壁面4とすることができる。
【0032】
また、第5層壁面構築工程は、図1(e)に示すように、5個の第2の三角形構造体T2を使用し、第4層壁面4を構成する第1の三角形構造体T1の端縁に沿って第2の三角形構造体T2を連続させつつ配置し、隣接する三角形構造体T2を連結することにより、第5層壁面5を構築するものである。なお、図1(e)は、五角錐状壁面が設けられているように示されているが、ここにおいても、5個の第2の三角形構造体T2が順次設置されるものである。
【0033】
以上のように、第5層壁面構築工程を終了した時点により、図1(e)に示されているように、略半球状の建築物が構築されるものである。そこで、このように構築された建築物は、正六角錐状の壁面と、正五角錐状の壁面とで構成されることとなる。このように構築された建築物は、いずれの方角に対しても均等な強度を有するため、耐震性にも優れるものである。
【0034】
次に、第1層壁面1ないし第5層壁面5に使用される第1の三角形構造体T1および第2の三角形構造体T2の実施形態について説明する。
【0035】
第1の三角形構造体T1は、図2に示すように、第1の二等辺三角形を形成する枠体10と、同形状の板状部材14から構成されている。この枠体10は、3本の角形材料から構成され、第1の二等辺三角形の底辺部分を形成する底辺部構成部材11、上記二等辺三角形の斜辺部分を形成する第1の斜辺部構成部材12および第2の斜辺部構成部材13で構成されている。
【0036】
底辺部構成部材11は、所定の幅寸法および厚さ寸法を有する長尺部材により平面視において台形に形成されている。このとき、上記台形の底辺は、二等辺三角形の底辺部分の長さ寸法に合致されるとともに、上記台形の両斜辺は、上記二等辺三角形の斜辺部分の一部を構成するように形成されている。このとき、底辺部構成部材11には、一定の間隔で貫通孔111,112が設けられており、隣接する部材の当接部において、上記貫通孔111,112を同時に貫通するボルトおよびこれに螺合するナットによって締着することで連結するものである。
【0037】
また、第1の斜辺部構成部材12は、所定の幅寸法および厚さ寸法を有する長尺部材により平面視において台形に形成されている。このとき、上記第1の斜辺部構成部材12の台形の底辺は、二等辺三角形の斜辺部分の長さ寸法から上記底辺部構成部材11の斜辺の長さを減算して得た寸法であるとともに、上記台形の斜辺のうち一方が上記二等辺三角形の残りの斜辺部分の一部を構成するように形成されている。このとき、第1の斜辺部構成部材12には、一定の間隔で貫通孔121,122が設けられており、隣接する部材の当接部において、上記貫通孔121,122を同時に貫通するボルトおよびこれに螺合するナットによって締着することで連結するものである。
【0038】
また、第2の斜辺部構成部材13は、所定の幅寸法および厚さ寸法を有する長尺部材により平面視において台形に形成されている。このとき、第2の斜辺部構成部材13の台形の底辺は、二等辺三角形の斜辺部分の長さ寸法から上記底辺部構成部材11の斜辺の長さおよび上記第1の斜辺部構成部材の一方の斜辺の長さをそれぞれ減算して得た寸法となっている。このとき、第2の斜辺部構成部材13には、一定の間隔で貫通孔131,132が設けられており、隣接する部材の当接部において、上記貫通孔131,132を同時に貫通するボルトおよびこれに螺合するナットによって締着することで連結するものである。
【0039】
上記三つの構成部材11,12,13の長さは、底辺部構成部材11が最も長尺で、続いて第1の斜辺部構成部材12、最後に第2の斜辺部構成部材13の順序となっている。
ここで、枠体10の組立方法について説明すると、図2に示すように、第1の斜辺部構成部材12の傾斜した端面12Aと、第2の斜辺部構成部材13の傾斜した端面13Bを、底辺部構成部材11の台形の上底面にそれぞれ当接させつつ、第1の斜辺部構成部材12の台形の上底面と第2の斜辺部構成部材13の傾斜した端面13Aを当接させて二等辺三角形の枠状に組み立てる。そして、各当接部分を釘等の固着部材で固着させることで三角形状の枠体10が完成する。ここで、上述のように、第1の斜辺部構成部材12の台形の底辺は、底辺部構成部材11の斜辺の長さを減算した寸法となっており、また、第2の斜辺部構成部材13の台形の底辺は、底辺部構成部材11の斜辺の長さおよび第1の斜辺部構成部材11の台形の一方の斜辺の長さをそれぞれ減算した寸法となっていることから、三つの部材11,12,13を上記のように組み立てることにより、各部材の台形の底辺によって、所定寸法の二等辺三角形を形成させることができるようになっている。このように組み立てられた枠体10の片面に、枠の形状に合わせた板状部材14が貼設されることにより、第1の三角形構造体T1とすることができる。
【0040】
また、三角形構造体T1同士を連結する場合には、各部材に設けられた貫通孔111,112,121,122,131,132により、隣接する部材の当接部において、上記貫通孔を同時に貫通するボルトおよびこれに螺合するナットによって締着することで連結することができる。
【0041】
また、第2の三角形構造体T2は、図3に示すように、第2の二等辺三角形を形成する枠体20と、同形状の板状部材24から構成されている。この枠体20は、3本の角形材料から構成され、第2の二等辺三角形の底辺部分を形成する底辺部構成部材21、上記二等辺三角形の斜辺部分を形成する第1の斜辺部構成部材22および第2の斜辺部構成部材23で構成されている。
【0042】
上記各構成部材は、第1の三角形構造体T1の場合と同様に、底辺部構成部材21、第1の斜辺部構成部材22および第2の斜辺部構成部材23のいずれもが、所定の幅寸法および厚さ寸法を有する長尺部材により平面視において台形に形成されている。このとき、上記台形の底辺は、第1の三角形構造体T1と同様に、二等辺三角形の底辺部分の長さ寸法に合致されるとともに、上記台形の両斜辺は、上記二等辺三角形の斜辺部分の一部を構成するように形成されている。
【0043】
また、第1の斜辺部構成部材22の台形の底辺は、二等辺三角形の斜辺部分の長さ寸法から上記底辺部構成部材21の斜辺の長さを減算して得た寸法であるとともに、上記台形の斜辺のうち一方が上記二等辺三角形の残りの斜辺部分の一部を構成するように形成されている。
【0044】
さらに、第2の斜辺部構成部材23の台形の底辺は、二等辺三角形の斜辺部分の長さ寸法から上記底辺部構成部材21の斜辺の長さおよび上記第1の斜辺部構成部材22の一方の斜辺の長さをそれぞれ減算して得た寸法となっている。
また、三角形構造体T2同士を連結する場合には、各部材に設けられた貫通孔211,212,221,222,231,232により、隣接する部材の当接部において、上記貫通孔を同時に貫通するボルトおよびこれに螺合するナットによって締着することで連結することができる。
【0045】
なお、底辺部構成部材11および21の底辺部分の長さは、同じであるため、底辺部構成部材11と21をボルト、ナット等の締着部材で締着することで、第1の三角形構造体T1と第2の三角形構造体T2を連結させることも可能である。
【0046】
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様をとることは可能である。例えば、本実施形態では、略半球状建築物Aの壁面を全て覆う構成で説明しているが、図4に示すように、第1層において出入り口用開口部を形成する場合や、適宜位置に窓用開口部を形成する場合には、第1または第2の三角形構造体T1,T2を部分的に省略することもできる。
【符号の説明】
【0047】
1 第1層壁面
2 第2層壁面
3 第3層壁面
4 第4層壁面
5 第5層壁面
10,20 枠体
11,21 底辺部構成部材
12,22 第1の斜辺部構成部材
13,23 第2の斜辺部構成部材
14,24 板状部材
111,112,121,122,131,132 貫通孔
211,212,221,222,231,232 貫通孔
A 略半球状建築物
T1 第1の三角形構造体
T2 第2の三角形構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の二等辺三角形の各辺を形成する3本の部材を備える第1の三角形構造体を集合して構成される正六角錐状壁面と、上記第1の二等辺三角形の底辺と同じ長さの底辺を有する第2の二等辺三角形の各辺を形成する3本の部材を備える第2の三角形構造体を集合して構成される正五角錐状壁面とを、適宜組み合わせて構築される略半球状建築物であって、
上記第1の三角形構造体を、水平面上に立設かつ連続させつつ略円筒状に整列させ、隣接する三角形構造体を連結することにより、第1層壁面を構築する第1層壁面構築工程と、
上記第1または第2の三角形構造体を、上記第1層壁面を構成する上記第1の三角形構造体の上方に連続させつつ、上記第1層壁面よりも内向きに傾斜するような略円筒状に整列させ、隣接する三角形構造体を連結することにより、第2層壁面を構築する第2層壁面構築工程と、
上記第2層壁面の一部を構成する上記第1の三角形構造体の上方に上記第1の三角形構造体を、上記第2層壁面の一部を構成する上記第2の三角形構造体の上方に上記第2の三角形構造体を、それぞれ連続させつつ、上記第2層壁面よりもさらに内向きに傾斜するような略円筒状に整列させ、隣接する三角形構造体を連結することにより、第3層壁面を構築する第3層壁面構築工程と、
上記第1の三角形構造体を、上記第3層壁面を構成する上記第1の三角形構造体の上方に連続させつつ、上記第3層壁面よりもさらに内向きに傾斜するような略円筒状に整列させ、隣接する三角形構造体を連結することにより、第4層壁面を構築する第4層壁面構築工程と、
上記第4層壁面を構成する上記第1の三角形構造体の端縁に沿って上記第2の三角形構造体を連続させつつ配置し、隣接する三角形構造体を連結することにより、第5層壁面を構築する第5層壁面構築工程と
を含むことを特徴とする略半球状建築物の建築方法。
【請求項2】
前記第1層壁面構築工程は、30個の前記第1の三角形構造体を連続するとともに、隣接する3個の該三角形構造体を一組として連続させることにより、前記正六角錐状壁面の2分の1を構築してなる第1層壁面構築工程である請求項1記載の略半球状建築物の建築方法。
【請求項3】
隣接する3個の前記第1の三角形構造体を一組として連続させることにより、前記正六角錐状壁面の2分の1を構築する場合において、該3個の中間に位置する上記第1の三角形構造体は、底辺部分を下位にしてなる下半分六角錐状壁面構成部と、底辺部分を上位にしてなる上半分六角錐状壁面構成部とを、交互に構築するものである請求項2記載の略半球状建築物の建築方法。
【請求項4】
前記第2層壁面構築工程は、前記第1層壁面を構成する前記下半分六角錐状壁面構成部の上方に、前記第1の三角形構造体による上半分六角錐状壁面構成部を構築し、この上半分六角錐状壁面構成部の両側に位置する三角形構造体の底辺部分、および、前記第1層壁面を構成する上半分六角錐状壁面構成部の中央に位置する三角形構造体の底辺部分のそれぞれに、前記第2の三角形構造体の底辺部分を当接させつつ連続させることによって正五角錐状壁面の一部を構築する第2層壁面構築工程である請求項3記載の略半球状建築物の建築方法。
【請求項5】
前記第3層壁面構築工程は、前記第2層壁面を構成する第2の三角形構造体の端縁にさらに第2の三角形構造体を連続して正五角錐状壁面を構築し、前記第2層壁面を構成する前記上半分六角錐状壁面構成部の上方に、下半分六角錐状壁面構成部を構築する第3層壁面構築工程である請求項4記載の略半球状建築物の建築方法。
【請求項6】
前記第4層壁面構築工程は、前記第3層壁面を構成する前記下半分六角錐状壁面構成部の上方に、上半分六角錐状壁面構成部を構築する第4層壁面構築工程である請求項5記載の略半球状建築物の建築方法。
【請求項7】
前記第1または第2の三角形構造体の配置を部分的に省略することにより、出入り口用開口部または窓用開口部を形成してなる請求項1ないし6のいずれか1項に記載の略半球状建築物の建築方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の略半球状建築物の建築方法により構築される略半球状建築物であって、正六角錐状壁面と正五角錐状壁面とで構築されたことを特徴とする略半球状建築物。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の略半球状建築物の建築方法において使用される三角形構造体であって、
前記第1または第2の二等辺三角形の底辺部分を形成する底辺部構成部材と、上記二等辺三角形の斜辺部分を形成する第1および第2の斜辺部構成部材とを備え、
上記底辺部構成部材は、所定の幅寸法および厚さ寸法を有する長尺部材により平面視において台形に形成され、その台形の底辺が上記二等辺三角形の底辺部分の長さ寸法に合致するとともに、上記台形の両斜辺が上記二等辺三角形の斜辺部分の一部を構成するように形成された底辺部構成部材であり、
上記第1の斜辺部構成部材は、所定の幅寸法および厚さ寸法を有する長尺部材により平面視において台形に形成され、その台形の底辺が上記二等辺三角形の斜辺部分の長さ寸法から上記底辺部構成部材の斜辺の長さを減算して得た寸法であるとともに、上記台形の斜辺のうち一方が上記二等辺三角形の残りの斜辺部分の一部を構成するように形成された第1の斜辺部構成部材であり、
上記第2の斜辺部構成部材は、所定の幅寸法および厚さ寸法を有する長尺部材により平面視において台形に形成され、その台形の底辺が上記二等辺三角形の斜辺部分の長さ寸法から上記底辺部構成部材の斜辺の長さおよび上記第1の斜辺部構成部材の一方の斜辺の長さをそれぞれ減算して得た寸法である第2の斜辺部構成部材である
ことを特徴とする三角形構造体。
【請求項10】
前記底辺部構成部材ならびに第1および第2の斜辺部構成部材によって形成される三角形状の枠体の少なくとも片面に、三角形状の板状部材を貼設してなる請求項9記載の三角形構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−76299(P2013−76299A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217901(P2011−217901)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(511237922)株式会社武蔵精工 (1)