畦塗り機
【課題】土質に対応可能で、適切な畦塗り作業ができる畦塗り機を提供する。
【解決手段】畦塗り機1は、土を盛り上げる回転可能な盛土体3と、盛土体3による盛土を締め固めて畦を形成する回転可能な畦形成体4とを備える。また、この畦塗り機1は、盛土体3が正方向に回転する正転状態と盛土体3が逆方向に正転状態時に比べて速い回転速度で回転する逆転状態とに選択的に切り換え可能となっている。
【解決手段】畦塗り機1は、土を盛り上げる回転可能な盛土体3と、盛土体3による盛土を締め固めて畦を形成する回転可能な畦形成体4とを備える。また、この畦塗り機1は、盛土体3が正方向に回転する正転状態と盛土体3が逆方向に正転状態時に比べて速い回転速度で回転する逆転状態とに選択的に切り換え可能となっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土質に対応可能で、適切な畦塗り作業ができる畦塗り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された畦塗り機が知られている。
【0003】
この従来の畦塗り機は、土を盛り上げる回転可能な盛土体と、盛土体にて盛り上げられた土を締め固めて畦を形成する回転可能な畦形成体と、盛土体および畦形成体に動力を供給してこれら盛土体および畦形成体を所定方向に回転させる動力伝達手段とを備え、盛土体がその動力伝達手段からの動力で常に正方向(ダウンカット方向)に回転する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−262407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の畦塗り機のように盛土体が常に正方向に回転する構成では、土質に対応できず、例えば湿った土には適しているが、乾いた土には適さない問題がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、土質に対応可能で、適切な畦塗り作業ができる畦塗り機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の畦塗り機は、土を盛り上げる回転可能な盛土体と、この盛土体にて盛り上げられた土を締め固めて畦を形成する畦形成体とを備え、前記盛土体が正方向に回転する正転状態と前記盛土体が逆方向に回転する逆転状態とに選択的に切り換え可能となっているものである。
【0008】
請求項2記載の畦塗り機は、請求項1記載の畦塗り機において、盛土体に動力を供給して前記盛土体を回転させる動力伝達手段を備え、前記動力伝達手段の動力伝達経路の変更により、前記盛土体が正方向に回転する正転状態と前記盛土体が逆方向に正転状態時に比べて速い回転速度で回転する逆転状態とに選択的に切り換え可能となっているものである。
【0009】
請求項3記載の畦塗り機は、請求項2記載の畦塗り機において、動力伝達手段は、第1回転軸と、この第1回転軸に脱着可能に取り付けられた第1ギアと、前記第1回転軸と平行に位置する第2回転軸と、この第2回転軸に脱着可能に取り付けられ、前記第1ギアより径大な第2ギアと、前記第1回転軸と平行に位置する第3回転軸と、この第3回転軸に取り付けられた第3ギアとを有し、正転状態時には、前記第1回転軸に取り付けられた前記第1ギアと前記第2回転軸に取り付けられた前記第2ギアとが噛み合い、かつ前記第2回転軸に取り付けられた前記第2ギアと前記第3回転軸に取り付けられた前記第3ギアとが噛み合った状態で、前記第1ギア、前記第2ギアおよび前記第3ギアを経て動力が盛土体に供給されてこの盛土体が正方向に回転し、逆転状態時には、前記第1回転軸に取り付けられた前記第2ギアと前記第2回転軸に取り付けられた前記第1ギアとが噛み合い、かつ前記第1回転軸に取り付けられた前記第2ギアと前記第3回転軸に取り付けられた前記第3ギアとが噛み合った状態で、前記第2ギアおよび前記第3ギアを経て動力が盛土体に供給されてこの盛土体が逆方向に正転状態時に比べて速い回転速度で回転するものである。
【0010】
請求項4記載の畦塗り機は、請求項3記載の畦塗り機において、盛土体は、正転用取付部を軸方向一端側に有しかつ逆転用取付部を軸方向他端側に有する回転軸と、この回転軸に取り付けられた盛土爪とを有し、正転状態時には、前記回転軸の正転用取付部が動力伝達手段の第3回転軸に取り付けられ、逆転状態時には、前記回転軸の逆転用取付部が前記動力伝達手段の第3回転軸に取り付けられるものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、盛土体が正方向に回転する正転状態と盛土体が逆方向に回転する逆転状態とに選択的に切り換えることができるため、土質に対応可能で、適切な畦塗り作業ができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、動力伝達手段の動力伝達経路の変更により盛土体が正方向に回転する正転状態と盛土体が逆方向に正転状態時に比べて速い回転速度で回転する逆転状態とに選択的に切り換えることができるため、土質に適切に対応可能で、より一層適切な畦塗り作業ができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、正転状態時には第1ギアを第1回転軸に取り付けるとともに第2ギアを第2回転軸に取り付け、逆転状態時には第2ギアを第1回転軸に取り付けるとともに第1ギアを第2回転軸に取り付けることにより、簡単な構成で動力伝達手段の動力伝達経路を容易に変更でき、正転状態から逆転状態への切り換えおよび逆転状態から正転状態への切り換えを容易に行うことができる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、正逆回転に対応できる特殊な盛土爪を用いる必要がなく、特殊な盛土爪より安価な通常の盛土爪を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る畦塗り機の平面視断面図である。
【図2】同上畦塗り機の非作業時の平面図である。
【図3】同上畦塗り機の側面図である。
【図4】同上畦塗り機の正転状態時(ダウン回転時)のギヤ取付状態を示す側面視図である。
【図5】同上畦塗り機の逆転状態時(アップ回転時)のギヤ取付状態を示す側面視図である。
【図6】同上畦塗り機の逆転状態時(アップ回転時)のギヤ取付状態を示す平面視図である。
【図7】ダウンカット方向およびアップカット方向の両回転方向に対応できる特殊な盛土爪の一例を示す図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係る畦塗り機の前進作業時の平面図である。
【図9】同上畦塗り機のバック作業時の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の畦塗り機の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1ないし図3において、1は畦塗り機で、この畦塗り機1は圃場を走行可能な走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結されて使用される牽引式のものである。なお、図1に畦塗り機1の作業状態が示され、図2に畦塗り機1の非作業状態が示されている。
【0018】
畦塗り機1は、トラクタの後部の3点リンク(作業機昇降支持装置)に連結された機体2と、機体2に回転可能に設けられ水平な左右方向の軸線を中心として回転しながら田面および畦(元畦)の土を耕耘しこの耕耘土を元畦の畦側面および畦上面に盛り上げるロータリ式の盛土体3と、機体2に回転可能に設けられ水平な左右方向の軸線を中心として回転しながら盛土体3の進行方向後方で盛土体3にて盛り上げられた土を締め固めて新たな畦(新畦)を形成する畦形成体4とを備えている。
【0019】
また、畦塗り機1は、トラクタからの動力を伝達しこの動力を盛土体3および畦形成体4に供給してこれら盛土体3および畦形成体4を同時に回転させる動力伝達手段5を備え、この動力伝達手段5の動力伝達経路の変更により盛土体3が正方向であるダウンカット方向(トラクタの車輪の回転方向と同じ回転方向)に回転する正転状態と盛土体3が逆方向であるアップカット方向に正転状態時に比べて速い回転速度で回転する逆転状態とに選択的に切り換え可能となっている。
【0020】
機体2は、トラクタの後部の3点リンクに連結された固定機枠7を有している。固定機枠7は軸保持部8を有し、この軸保持部8にて入力軸10が回転可能に支持され、この入力軸10はトラクタのPTO軸にジョイントおよび伝動シャフト等を介して接続されている。
【0021】
また、固定機枠7には互いに平行な1対の回動アーム(平行リンク)11の一端部が回動可能に取り付けられ、これら回動アーム11の他端部には伝動ケース機能を有する可動機枠12が回動可能に取り付けられている。さらに、可動機枠12を作業位置および非作業位置に選択的に位置決めするための位置決め用アーム13の一端部が固定機枠7に回動可能に取り付けられ、この位置決め用アーム13の他端部が可動機枠12に回動可能に取り付けられている。
【0022】
可動機枠12は、ミッションケース等からなる軸保持部16を有し、この軸保持部16にて入力軸10にジョイント17を介して接続された中間入力軸18が回転可能に支持されている。
【0023】
また、可動機枠12は、畦形成体4を回転可能に支持する畦形成体側伝動ケース部21を有している。畦形成体側伝動ケース部21は、第1軸ケース22、チェーンケース23および第2軸ケース24を有している。
【0024】
第1軸ケース22内には伝動軸25が配設され、この伝動軸25の軸保持部16内に位置する一端部にはベベルギア26が固着され、このベベルギア26が中間入力軸18に固着されたベベルギア27と噛み合っている。伝動軸25のチェーンケース23内に位置する他端部にはスプロケット28が固着されている。
【0025】
第2軸ケース24内には伝動軸29が配設され、この伝動軸29のチェーンケース23内に位置する一端部にはスプロケット30が固着され、そのチェーンケース23内で互いに離間対向した両スプロケット28,30にはチェーン31が掛け渡されている。伝動軸29の他端部には畦形成体4の水平な左右方向の駆動軸である回転軸33が伝動軸29と同軸状に連結され、この回転軸33に畦形成部材34が取り付けられている。
【0026】
畦形成部材34は、回転軸33とともに所定方向に回転しながら盛土体3による盛土を締め固めて水平面に対して田面側に向って下り傾斜面状の畦側面を形成する略円錐台状の畦側面形成部(側面ディスク)35と、この畦側面形成部35の縮径側端側に設けられ回転軸33とともに所定方向に回転しながら盛土体3による盛土を締め固めて水平面状の畦上面を形成する略円柱状(中空でも中実でもよい)の畦上面形成部(上面ローラ)36とを有している。畦側面形成部35は、例えば略扇形状の複数枚の作用板等にて構成されている。
【0027】
さらに、可動機枠12は、盛土体3を回転可能に支持する盛土体側伝動ケース部41を有している。盛土体側伝動ケース部41は、軸ケース42およびチェーンケース(伝動ケース)43を有し、このチェーンケース43は第1ギア収納部44、チェーン収納部45および第2ギア収納部46にて構成されている。第2ギア収納部46は側面に開口部46aを有し、この開口部46aが開閉蓋47にて開閉可能に閉じられている。
【0028】
軸ケース42内には伝動軸48が配設され、この伝動軸48の軸保持部16内に位置する一端部にはベベルギア49が固着され、このベベルギア49が中間入力軸18に固着されたベベルギア27と噛み合っている。伝動軸48の第1ギア収納部44内に位置する他端部にはギア50が固着され、このギア50は第1ギア収納部44内の伝動軸51に固着されたギア52と噛み合っている。伝動軸51にはスプロケット53が固着されている。
【0029】
また、図4にも示されるように、チェーンケース43の第2ギア収納部46内には、水平な左右方向の第1回転軸(駆動軸)54、第1回転軸54に脱着可能に取り付けられた第1ギア55、第1回転軸54と平行に位置する第2回転軸(カウンター軸)56、第2回転軸56に脱着可能に取り付けられ第1ギア55より径大な第2ギア57、第1回転軸54と平行に位置する第3回転軸(従動軸)58、およびこの第3回転軸58に固着され第2ギア57より径大な第3ギア59がそれぞれ回転可能に配設されている。
【0030】
第1回転軸54にはスプロケット60が固着され、互いに離間対向した両スプロケット53,60にチェーン61が掛け渡され、このチェーン61はチェーン収納部45内に配設されている。そして、図4では第1回転軸54には第1ギア55が脱着可能に取り付けられているが、第1ギア55を第1回転軸54から取り外しこの第1ギア55に代えて第2ギア57を第1回転軸54に脱着可能に取り付けることが可能となっている。また同様に、図4では第2回転軸56には第2ギア57が脱着可能に取り付けられているが、第2ギア57を第2回転軸56から取り外しこの第2ギア57に代えて第1ギア55を第2回転軸56に脱着可能に取り付けることが可能である。
【0031】
そして、図4に示す正転状態時には、第1回転軸54に取り付けられた第1ギア55と第2回転軸56に取り付けられた第2ギア57とが噛み合い、かつ第2回転軸56に取り付けられた第2ギア57と第3回転軸58に固着された第3ギア59とが噛み合った状態で、第1ギア55、第2ギア57および第3ギア59を経て動力伝達手段5から動力が盛土体3に供給されてこの盛土体3がダウンカット方向に駆動回転する。なおこのとき、第1ギア55と第3ギア59とは噛み合っていない。
【0032】
また、図5および図6に示す逆転状態時には、第1ギヤ55および第2ギア57の位置替え(動力伝達手段5の動力伝達経路の変更)によって、第1回転軸54に取り付けられた第2ギア57と第2回転軸56に取り付けられた第1ギア55とが噛み合い、かつ第1回転軸54に取り付けられた第2ギア57と第3回転軸58に固着された第3ギア59とが噛み合った状態で、第1ギア55を経由することなく第2ギア57および第3ギア59を経て動力伝達手段5から動力が盛土体3に供給されてこの盛土体3がアップカット方向に正転状態時に比べて速い回転速度で駆動回転する。なおこのとき、第1ギア55と第3ギア59とは噛み合っておらず、第1ギア55は空回りしている。
【0033】
なお、入力軸10、ジョイント17、中間入力軸18、ベベルギア26,27,49、伝動軸25,29,48,51、スプロケット28,30,53,60、チェーン31,61、ギア50,52、第1ないし第3回転軸54,56,58および第1ないし第3ギア55,57,59等にて、トラクタからの動力を盛土体3および畦形成体4まで伝達する動力伝達手段5が構成されている。また、第1回転軸54の軸芯と第3回転軸58の軸芯との間の距離Aと第2回転軸54の軸芯と第3回転軸58の軸芯との間の距離Bとが同じである。さらに、可動機枠12には、図2に示されるように畦形成体の一部を覆うカバー体62やゲージ輪63等が取り付けられている。
【0034】
さらに、図1に示されるように、盛土体3は、正転用取付部65を軸方向一端側に有しかつ逆転用取付部66を軸方向他端側に有する水平な左右方向の駆動軸である回転軸67と、この回転軸67に取り付けられた複数の耕耘爪である盛土爪68とを有している。正転用取付部65にはボルト挿通用の正転用孔69が形成され、逆転用取付部にはボルト挿通用の逆転用孔70が形成されている。各盛土爪68は、略湾曲板状で一方向の回転にのみ対応する通常の爪にて構成されている。また、盛土体3の一部はカバー体72にて覆われている。
【0035】
そして、ボルトおよびナット等からなる取付手段71により、正転状態時には回転軸67の正転用取付部65が動力伝達手段5の第3回転軸58の第2ギア収納部46内から突出した突出端部に脱着可能に取り付けられ、その一方、逆転状態時には盛土体3の反転により回転軸67の逆転用取付部66が第3回転軸58の突出端部に脱着可能に取り付けられる。
【0036】
なお、図7にはダウンカット方向およびアップカット方向の正逆回転に対応できる特殊な盛土爪(正逆転爪)68が示され、この盛土爪68は略コ字状をなすうちわ形状の爪にて構成されている。この特殊な盛土爪68を用いる場合には盛土体3の反転が不要である。また、取付手段71は任意でボルトおよびナット以外に、ピン等でもよい。
【0037】
次に、上記畦塗り機1の作用等を説明する。
【0038】
例えば畦の土が水分を多く含む湿った土である場合は、図4に示すように、第1ギア55を第1回転軸54に取り付けかつ第2ギア57を第2回転軸56に取り付けることにより、盛土体3がダウンカット方向に回転する正転状態に設定する。また、取付手段71を用いて盛土体3の回転軸67の正転用取付部65を動力伝達手段5の第3回転軸58に取り付ける。
【0039】
そして、この状態で畦塗り機1をトラクタの走行により畦に沿って進行方向へ移動させると、ダウンカット方向に回転する盛土体3にて所望量の土が元畦の畦側面および畦上面に盛り上げられ、この盛土が畦形成体4にて締め固められて強固な新畦が形成される。
【0040】
このとき、盛土体3をダウンカット方向に回転させる動力は、動力伝達手段5の第1ギア55、第2ギア57および第3ギア59を順次経て第3回転軸58に伝達され、その結果、盛土体3が第3回転軸58とともに所定の正転回転速度で駆動回転する。
【0041】
また、例えば畦の土が水分の少ない乾いた土である場合は、図5に示すように、第1ギア55を第2回転軸56に取り付けかつ第2ギア57を第1回転軸54に取り付けることにより、盛土体3がアップカット方向に回転する逆転状態に設定する。また、取付手段71を用いて盛土体3の回転軸67の逆転用取付部66を動力伝達手段5の第3回転軸58に取り付ける。
【0042】
そして、この状態で畦塗り機1をトラクタの走行により畦に沿って進行方向へ移動させると、アップカット方向に回転する盛土体3にて所望量の土が元畦の畦側面および畦上面に盛り上げられ、この盛土が畦形成体4にて締め固められて強固な新畦が形成される。
【0043】
このとき、盛土体3をアップカット方向に回転させる動力は、第1ギア55を経由することなく、第2ギア57および第3ギア59を順次経て第3回転軸58に伝達され、その結果、盛土体3が第3回転軸58とともに所定の逆転回転速度で駆動回転する。この逆転回転速度は、正転回転速度よりも速い速度である。
【0044】
そして、畦塗り機1によれば、第1回転軸54および第2回転軸56に対する第1ギヤ55および第2ギア57の位置替えに基づく動力伝達手段5の動力伝達経路の変更により、盛土体3が左右方向の軸線を中心としてダウンカット方向(正方向)に回転する正転状態と盛土体3が左右方向の軸線を中心としてアップカット方向(逆方向)に正転状態時に比べて速い回転速度で回転する逆転状態とに選択的に切り換えることができるため、すべての土質に適切に対応可能で、適切な畦塗り作業ができる。
【0045】
また、正転状態時には第1ギア55を第1回転軸54に取り付けるとともに第2ギア57を第2回転軸56に取り付け、逆転状態時には第2ギア57を第1回転軸54に取り付けるとともに第1ギア55を第2回転軸56に取り付けることにより、変速レバー等が不要な簡単な構成で製造コストの低減および軽量化を図れるばかりでなく、動力伝達手段5の動力伝達経路を簡単に変更でき、正転状態から逆転状態への切り換えおよび逆転状態から正転状態への切り換えを簡単に行うことができ、しかも、逆転状態時に不要な第1ギア55は第2回転軸56に取り付けておけばよく、不要な第1ギア55の置き場所を別途設ける必要もない。
【0046】
なお、上記一実施の形態ではバック作業できない構成について説明したが、例えば図8および図9に示すバック作業可能な構成でもよい。
【0047】
例えば図8および図9に示す他の実施の形態の畦塗り機1では、1本の回動アーム11の一端部が固定機枠7に回動可能に取り付けられ他端部が可動機枠12に回動可能に取り付けられ、可動機枠12が前進作業位置とバック作業位置とに選択的に移動可能となっている。また、この畦塗り機1では、可動機枠12の第2ギア収納部46内に第1ないし第3回転軸54,56,58および第1ないし第3ギア55,57,59が配設されている。
【0048】
そして、この他の実施の形態の畦塗り機1でも、上記一実施の形態と同様、第1ギヤ55および第2ギア57の位置替えに基づく動力伝達手段5の動力伝達経路の変更により、盛土体3が前後方向の軸線を中心として正方向であるダウンカット方向(進行方向前方からみて左回りの回転方向)に回転する正転状態と盛土体3が前後方向の軸線を中心として逆方向であるアップカット方向(進行方向前方からみて右回りの回転方向)に正転状態時に比べて速い回転速度で回転する逆転状態とに選択的に切り換え可能となっており、上記一実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 畦塗り機
3 盛土体
4 畦形成体
5 動力伝達手段
54 第1回転軸
55 第1ギア
56 第2回転軸
57 第2ギア
58 第3回転軸
59 第3ギア
65 正転用取付部
66 逆転用取付部
67 回転軸
68 盛土爪
【技術分野】
【0001】
本発明は、土質に対応可能で、適切な畦塗り作業ができる畦塗り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された畦塗り機が知られている。
【0003】
この従来の畦塗り機は、土を盛り上げる回転可能な盛土体と、盛土体にて盛り上げられた土を締め固めて畦を形成する回転可能な畦形成体と、盛土体および畦形成体に動力を供給してこれら盛土体および畦形成体を所定方向に回転させる動力伝達手段とを備え、盛土体がその動力伝達手段からの動力で常に正方向(ダウンカット方向)に回転する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−262407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の畦塗り機のように盛土体が常に正方向に回転する構成では、土質に対応できず、例えば湿った土には適しているが、乾いた土には適さない問題がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、土質に対応可能で、適切な畦塗り作業ができる畦塗り機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の畦塗り機は、土を盛り上げる回転可能な盛土体と、この盛土体にて盛り上げられた土を締め固めて畦を形成する畦形成体とを備え、前記盛土体が正方向に回転する正転状態と前記盛土体が逆方向に回転する逆転状態とに選択的に切り換え可能となっているものである。
【0008】
請求項2記載の畦塗り機は、請求項1記載の畦塗り機において、盛土体に動力を供給して前記盛土体を回転させる動力伝達手段を備え、前記動力伝達手段の動力伝達経路の変更により、前記盛土体が正方向に回転する正転状態と前記盛土体が逆方向に正転状態時に比べて速い回転速度で回転する逆転状態とに選択的に切り換え可能となっているものである。
【0009】
請求項3記載の畦塗り機は、請求項2記載の畦塗り機において、動力伝達手段は、第1回転軸と、この第1回転軸に脱着可能に取り付けられた第1ギアと、前記第1回転軸と平行に位置する第2回転軸と、この第2回転軸に脱着可能に取り付けられ、前記第1ギアより径大な第2ギアと、前記第1回転軸と平行に位置する第3回転軸と、この第3回転軸に取り付けられた第3ギアとを有し、正転状態時には、前記第1回転軸に取り付けられた前記第1ギアと前記第2回転軸に取り付けられた前記第2ギアとが噛み合い、かつ前記第2回転軸に取り付けられた前記第2ギアと前記第3回転軸に取り付けられた前記第3ギアとが噛み合った状態で、前記第1ギア、前記第2ギアおよび前記第3ギアを経て動力が盛土体に供給されてこの盛土体が正方向に回転し、逆転状態時には、前記第1回転軸に取り付けられた前記第2ギアと前記第2回転軸に取り付けられた前記第1ギアとが噛み合い、かつ前記第1回転軸に取り付けられた前記第2ギアと前記第3回転軸に取り付けられた前記第3ギアとが噛み合った状態で、前記第2ギアおよび前記第3ギアを経て動力が盛土体に供給されてこの盛土体が逆方向に正転状態時に比べて速い回転速度で回転するものである。
【0010】
請求項4記載の畦塗り機は、請求項3記載の畦塗り機において、盛土体は、正転用取付部を軸方向一端側に有しかつ逆転用取付部を軸方向他端側に有する回転軸と、この回転軸に取り付けられた盛土爪とを有し、正転状態時には、前記回転軸の正転用取付部が動力伝達手段の第3回転軸に取り付けられ、逆転状態時には、前記回転軸の逆転用取付部が前記動力伝達手段の第3回転軸に取り付けられるものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、盛土体が正方向に回転する正転状態と盛土体が逆方向に回転する逆転状態とに選択的に切り換えることができるため、土質に対応可能で、適切な畦塗り作業ができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、動力伝達手段の動力伝達経路の変更により盛土体が正方向に回転する正転状態と盛土体が逆方向に正転状態時に比べて速い回転速度で回転する逆転状態とに選択的に切り換えることができるため、土質に適切に対応可能で、より一層適切な畦塗り作業ができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、正転状態時には第1ギアを第1回転軸に取り付けるとともに第2ギアを第2回転軸に取り付け、逆転状態時には第2ギアを第1回転軸に取り付けるとともに第1ギアを第2回転軸に取り付けることにより、簡単な構成で動力伝達手段の動力伝達経路を容易に変更でき、正転状態から逆転状態への切り換えおよび逆転状態から正転状態への切り換えを容易に行うことができる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、正逆回転に対応できる特殊な盛土爪を用いる必要がなく、特殊な盛土爪より安価な通常の盛土爪を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る畦塗り機の平面視断面図である。
【図2】同上畦塗り機の非作業時の平面図である。
【図3】同上畦塗り機の側面図である。
【図4】同上畦塗り機の正転状態時(ダウン回転時)のギヤ取付状態を示す側面視図である。
【図5】同上畦塗り機の逆転状態時(アップ回転時)のギヤ取付状態を示す側面視図である。
【図6】同上畦塗り機の逆転状態時(アップ回転時)のギヤ取付状態を示す平面視図である。
【図7】ダウンカット方向およびアップカット方向の両回転方向に対応できる特殊な盛土爪の一例を示す図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係る畦塗り機の前進作業時の平面図である。
【図9】同上畦塗り機のバック作業時の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の畦塗り機の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1ないし図3において、1は畦塗り機で、この畦塗り機1は圃場を走行可能な走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結されて使用される牽引式のものである。なお、図1に畦塗り機1の作業状態が示され、図2に畦塗り機1の非作業状態が示されている。
【0018】
畦塗り機1は、トラクタの後部の3点リンク(作業機昇降支持装置)に連結された機体2と、機体2に回転可能に設けられ水平な左右方向の軸線を中心として回転しながら田面および畦(元畦)の土を耕耘しこの耕耘土を元畦の畦側面および畦上面に盛り上げるロータリ式の盛土体3と、機体2に回転可能に設けられ水平な左右方向の軸線を中心として回転しながら盛土体3の進行方向後方で盛土体3にて盛り上げられた土を締め固めて新たな畦(新畦)を形成する畦形成体4とを備えている。
【0019】
また、畦塗り機1は、トラクタからの動力を伝達しこの動力を盛土体3および畦形成体4に供給してこれら盛土体3および畦形成体4を同時に回転させる動力伝達手段5を備え、この動力伝達手段5の動力伝達経路の変更により盛土体3が正方向であるダウンカット方向(トラクタの車輪の回転方向と同じ回転方向)に回転する正転状態と盛土体3が逆方向であるアップカット方向に正転状態時に比べて速い回転速度で回転する逆転状態とに選択的に切り換え可能となっている。
【0020】
機体2は、トラクタの後部の3点リンクに連結された固定機枠7を有している。固定機枠7は軸保持部8を有し、この軸保持部8にて入力軸10が回転可能に支持され、この入力軸10はトラクタのPTO軸にジョイントおよび伝動シャフト等を介して接続されている。
【0021】
また、固定機枠7には互いに平行な1対の回動アーム(平行リンク)11の一端部が回動可能に取り付けられ、これら回動アーム11の他端部には伝動ケース機能を有する可動機枠12が回動可能に取り付けられている。さらに、可動機枠12を作業位置および非作業位置に選択的に位置決めするための位置決め用アーム13の一端部が固定機枠7に回動可能に取り付けられ、この位置決め用アーム13の他端部が可動機枠12に回動可能に取り付けられている。
【0022】
可動機枠12は、ミッションケース等からなる軸保持部16を有し、この軸保持部16にて入力軸10にジョイント17を介して接続された中間入力軸18が回転可能に支持されている。
【0023】
また、可動機枠12は、畦形成体4を回転可能に支持する畦形成体側伝動ケース部21を有している。畦形成体側伝動ケース部21は、第1軸ケース22、チェーンケース23および第2軸ケース24を有している。
【0024】
第1軸ケース22内には伝動軸25が配設され、この伝動軸25の軸保持部16内に位置する一端部にはベベルギア26が固着され、このベベルギア26が中間入力軸18に固着されたベベルギア27と噛み合っている。伝動軸25のチェーンケース23内に位置する他端部にはスプロケット28が固着されている。
【0025】
第2軸ケース24内には伝動軸29が配設され、この伝動軸29のチェーンケース23内に位置する一端部にはスプロケット30が固着され、そのチェーンケース23内で互いに離間対向した両スプロケット28,30にはチェーン31が掛け渡されている。伝動軸29の他端部には畦形成体4の水平な左右方向の駆動軸である回転軸33が伝動軸29と同軸状に連結され、この回転軸33に畦形成部材34が取り付けられている。
【0026】
畦形成部材34は、回転軸33とともに所定方向に回転しながら盛土体3による盛土を締め固めて水平面に対して田面側に向って下り傾斜面状の畦側面を形成する略円錐台状の畦側面形成部(側面ディスク)35と、この畦側面形成部35の縮径側端側に設けられ回転軸33とともに所定方向に回転しながら盛土体3による盛土を締め固めて水平面状の畦上面を形成する略円柱状(中空でも中実でもよい)の畦上面形成部(上面ローラ)36とを有している。畦側面形成部35は、例えば略扇形状の複数枚の作用板等にて構成されている。
【0027】
さらに、可動機枠12は、盛土体3を回転可能に支持する盛土体側伝動ケース部41を有している。盛土体側伝動ケース部41は、軸ケース42およびチェーンケース(伝動ケース)43を有し、このチェーンケース43は第1ギア収納部44、チェーン収納部45および第2ギア収納部46にて構成されている。第2ギア収納部46は側面に開口部46aを有し、この開口部46aが開閉蓋47にて開閉可能に閉じられている。
【0028】
軸ケース42内には伝動軸48が配設され、この伝動軸48の軸保持部16内に位置する一端部にはベベルギア49が固着され、このベベルギア49が中間入力軸18に固着されたベベルギア27と噛み合っている。伝動軸48の第1ギア収納部44内に位置する他端部にはギア50が固着され、このギア50は第1ギア収納部44内の伝動軸51に固着されたギア52と噛み合っている。伝動軸51にはスプロケット53が固着されている。
【0029】
また、図4にも示されるように、チェーンケース43の第2ギア収納部46内には、水平な左右方向の第1回転軸(駆動軸)54、第1回転軸54に脱着可能に取り付けられた第1ギア55、第1回転軸54と平行に位置する第2回転軸(カウンター軸)56、第2回転軸56に脱着可能に取り付けられ第1ギア55より径大な第2ギア57、第1回転軸54と平行に位置する第3回転軸(従動軸)58、およびこの第3回転軸58に固着され第2ギア57より径大な第3ギア59がそれぞれ回転可能に配設されている。
【0030】
第1回転軸54にはスプロケット60が固着され、互いに離間対向した両スプロケット53,60にチェーン61が掛け渡され、このチェーン61はチェーン収納部45内に配設されている。そして、図4では第1回転軸54には第1ギア55が脱着可能に取り付けられているが、第1ギア55を第1回転軸54から取り外しこの第1ギア55に代えて第2ギア57を第1回転軸54に脱着可能に取り付けることが可能となっている。また同様に、図4では第2回転軸56には第2ギア57が脱着可能に取り付けられているが、第2ギア57を第2回転軸56から取り外しこの第2ギア57に代えて第1ギア55を第2回転軸56に脱着可能に取り付けることが可能である。
【0031】
そして、図4に示す正転状態時には、第1回転軸54に取り付けられた第1ギア55と第2回転軸56に取り付けられた第2ギア57とが噛み合い、かつ第2回転軸56に取り付けられた第2ギア57と第3回転軸58に固着された第3ギア59とが噛み合った状態で、第1ギア55、第2ギア57および第3ギア59を経て動力伝達手段5から動力が盛土体3に供給されてこの盛土体3がダウンカット方向に駆動回転する。なおこのとき、第1ギア55と第3ギア59とは噛み合っていない。
【0032】
また、図5および図6に示す逆転状態時には、第1ギヤ55および第2ギア57の位置替え(動力伝達手段5の動力伝達経路の変更)によって、第1回転軸54に取り付けられた第2ギア57と第2回転軸56に取り付けられた第1ギア55とが噛み合い、かつ第1回転軸54に取り付けられた第2ギア57と第3回転軸58に固着された第3ギア59とが噛み合った状態で、第1ギア55を経由することなく第2ギア57および第3ギア59を経て動力伝達手段5から動力が盛土体3に供給されてこの盛土体3がアップカット方向に正転状態時に比べて速い回転速度で駆動回転する。なおこのとき、第1ギア55と第3ギア59とは噛み合っておらず、第1ギア55は空回りしている。
【0033】
なお、入力軸10、ジョイント17、中間入力軸18、ベベルギア26,27,49、伝動軸25,29,48,51、スプロケット28,30,53,60、チェーン31,61、ギア50,52、第1ないし第3回転軸54,56,58および第1ないし第3ギア55,57,59等にて、トラクタからの動力を盛土体3および畦形成体4まで伝達する動力伝達手段5が構成されている。また、第1回転軸54の軸芯と第3回転軸58の軸芯との間の距離Aと第2回転軸54の軸芯と第3回転軸58の軸芯との間の距離Bとが同じである。さらに、可動機枠12には、図2に示されるように畦形成体の一部を覆うカバー体62やゲージ輪63等が取り付けられている。
【0034】
さらに、図1に示されるように、盛土体3は、正転用取付部65を軸方向一端側に有しかつ逆転用取付部66を軸方向他端側に有する水平な左右方向の駆動軸である回転軸67と、この回転軸67に取り付けられた複数の耕耘爪である盛土爪68とを有している。正転用取付部65にはボルト挿通用の正転用孔69が形成され、逆転用取付部にはボルト挿通用の逆転用孔70が形成されている。各盛土爪68は、略湾曲板状で一方向の回転にのみ対応する通常の爪にて構成されている。また、盛土体3の一部はカバー体72にて覆われている。
【0035】
そして、ボルトおよびナット等からなる取付手段71により、正転状態時には回転軸67の正転用取付部65が動力伝達手段5の第3回転軸58の第2ギア収納部46内から突出した突出端部に脱着可能に取り付けられ、その一方、逆転状態時には盛土体3の反転により回転軸67の逆転用取付部66が第3回転軸58の突出端部に脱着可能に取り付けられる。
【0036】
なお、図7にはダウンカット方向およびアップカット方向の正逆回転に対応できる特殊な盛土爪(正逆転爪)68が示され、この盛土爪68は略コ字状をなすうちわ形状の爪にて構成されている。この特殊な盛土爪68を用いる場合には盛土体3の反転が不要である。また、取付手段71は任意でボルトおよびナット以外に、ピン等でもよい。
【0037】
次に、上記畦塗り機1の作用等を説明する。
【0038】
例えば畦の土が水分を多く含む湿った土である場合は、図4に示すように、第1ギア55を第1回転軸54に取り付けかつ第2ギア57を第2回転軸56に取り付けることにより、盛土体3がダウンカット方向に回転する正転状態に設定する。また、取付手段71を用いて盛土体3の回転軸67の正転用取付部65を動力伝達手段5の第3回転軸58に取り付ける。
【0039】
そして、この状態で畦塗り機1をトラクタの走行により畦に沿って進行方向へ移動させると、ダウンカット方向に回転する盛土体3にて所望量の土が元畦の畦側面および畦上面に盛り上げられ、この盛土が畦形成体4にて締め固められて強固な新畦が形成される。
【0040】
このとき、盛土体3をダウンカット方向に回転させる動力は、動力伝達手段5の第1ギア55、第2ギア57および第3ギア59を順次経て第3回転軸58に伝達され、その結果、盛土体3が第3回転軸58とともに所定の正転回転速度で駆動回転する。
【0041】
また、例えば畦の土が水分の少ない乾いた土である場合は、図5に示すように、第1ギア55を第2回転軸56に取り付けかつ第2ギア57を第1回転軸54に取り付けることにより、盛土体3がアップカット方向に回転する逆転状態に設定する。また、取付手段71を用いて盛土体3の回転軸67の逆転用取付部66を動力伝達手段5の第3回転軸58に取り付ける。
【0042】
そして、この状態で畦塗り機1をトラクタの走行により畦に沿って進行方向へ移動させると、アップカット方向に回転する盛土体3にて所望量の土が元畦の畦側面および畦上面に盛り上げられ、この盛土が畦形成体4にて締め固められて強固な新畦が形成される。
【0043】
このとき、盛土体3をアップカット方向に回転させる動力は、第1ギア55を経由することなく、第2ギア57および第3ギア59を順次経て第3回転軸58に伝達され、その結果、盛土体3が第3回転軸58とともに所定の逆転回転速度で駆動回転する。この逆転回転速度は、正転回転速度よりも速い速度である。
【0044】
そして、畦塗り機1によれば、第1回転軸54および第2回転軸56に対する第1ギヤ55および第2ギア57の位置替えに基づく動力伝達手段5の動力伝達経路の変更により、盛土体3が左右方向の軸線を中心としてダウンカット方向(正方向)に回転する正転状態と盛土体3が左右方向の軸線を中心としてアップカット方向(逆方向)に正転状態時に比べて速い回転速度で回転する逆転状態とに選択的に切り換えることができるため、すべての土質に適切に対応可能で、適切な畦塗り作業ができる。
【0045】
また、正転状態時には第1ギア55を第1回転軸54に取り付けるとともに第2ギア57を第2回転軸56に取り付け、逆転状態時には第2ギア57を第1回転軸54に取り付けるとともに第1ギア55を第2回転軸56に取り付けることにより、変速レバー等が不要な簡単な構成で製造コストの低減および軽量化を図れるばかりでなく、動力伝達手段5の動力伝達経路を簡単に変更でき、正転状態から逆転状態への切り換えおよび逆転状態から正転状態への切り換えを簡単に行うことができ、しかも、逆転状態時に不要な第1ギア55は第2回転軸56に取り付けておけばよく、不要な第1ギア55の置き場所を別途設ける必要もない。
【0046】
なお、上記一実施の形態ではバック作業できない構成について説明したが、例えば図8および図9に示すバック作業可能な構成でもよい。
【0047】
例えば図8および図9に示す他の実施の形態の畦塗り機1では、1本の回動アーム11の一端部が固定機枠7に回動可能に取り付けられ他端部が可動機枠12に回動可能に取り付けられ、可動機枠12が前進作業位置とバック作業位置とに選択的に移動可能となっている。また、この畦塗り機1では、可動機枠12の第2ギア収納部46内に第1ないし第3回転軸54,56,58および第1ないし第3ギア55,57,59が配設されている。
【0048】
そして、この他の実施の形態の畦塗り機1でも、上記一実施の形態と同様、第1ギヤ55および第2ギア57の位置替えに基づく動力伝達手段5の動力伝達経路の変更により、盛土体3が前後方向の軸線を中心として正方向であるダウンカット方向(進行方向前方からみて左回りの回転方向)に回転する正転状態と盛土体3が前後方向の軸線を中心として逆方向であるアップカット方向(進行方向前方からみて右回りの回転方向)に正転状態時に比べて速い回転速度で回転する逆転状態とに選択的に切り換え可能となっており、上記一実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 畦塗り機
3 盛土体
4 畦形成体
5 動力伝達手段
54 第1回転軸
55 第1ギア
56 第2回転軸
57 第2ギア
58 第3回転軸
59 第3ギア
65 正転用取付部
66 逆転用取付部
67 回転軸
68 盛土爪
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土を盛り上げる回転可能な盛土体と、
この盛土体にて盛り上げられた土を締め固めて畦を形成する畦形成体とを備え、
前記盛土体が正方向に回転する正転状態と前記盛土体が逆方向に回転する逆転状態とに選択的に切り換え可能となっている
ことを特徴とする畦塗り機。
【請求項2】
盛土体に動力を供給して前記盛土体を回転させる動力伝達手段を備え、
前記動力伝達手段の動力伝達経路の変更により、前記盛土体が正方向に回転する正転状態と前記盛土体が逆方向に正転状態時に比べて速い回転速度で回転する逆転状態とに選択的に切り換え可能となっている
ことを特徴とする請求項1記載の畦塗り機。
【請求項3】
動力伝達手段は、
第1回転軸と、
この第1回転軸に脱着可能に取り付けられた第1ギアと、
前記第1回転軸と平行に位置する第2回転軸と、
この第2回転軸に脱着可能に取り付けられ、前記第1ギアより径大な第2ギアと、
前記第1回転軸と平行に位置する第3回転軸と、
この第3回転軸に取り付けられた第3ギアとを有し、
正転状態時には、前記第1回転軸に取り付けられた前記第1ギアと前記第2回転軸に取り付けられた前記第2ギアとが噛み合い、かつ前記第2回転軸に取り付けられた前記第2ギアと前記第3回転軸に取り付けられた前記第3ギアとが噛み合った状態で、前記第1ギア、前記第2ギアおよび前記第3ギアを経て動力が盛土体に供給されてこの盛土体が正方向に回転し、
逆転状態時には、前記第1回転軸に取り付けられた前記第2ギアと前記第2回転軸に取り付けられた前記第1ギアとが噛み合い、かつ前記第1回転軸に取り付けられた前記第2ギアと前記第3回転軸に取り付けられた前記第3ギアとが噛み合った状態で、前記第2ギアおよび前記第3ギアを経て動力が盛土体に供給されてこの盛土体が逆方向に正転状態時に比べて速い回転速度で回転する
ことを特徴とする請求項2記載の畦塗り機。
【請求項4】
盛土体は、
正転用取付部を軸方向一端側に有しかつ逆転用取付部を軸方向他端側に有する回転軸と、
この回転軸に取り付けられた盛土爪とを有し、
正転状態時には、前記回転軸の正転用取付部が動力伝達手段の第3回転軸に取り付けられ、
逆転状態時には、前記回転軸の逆転用取付部が前記動力伝達手段の第3回転軸に取り付けられる
ことを特徴とする請求項3記載の畦塗り機。
【請求項1】
土を盛り上げる回転可能な盛土体と、
この盛土体にて盛り上げられた土を締め固めて畦を形成する畦形成体とを備え、
前記盛土体が正方向に回転する正転状態と前記盛土体が逆方向に回転する逆転状態とに選択的に切り換え可能となっている
ことを特徴とする畦塗り機。
【請求項2】
盛土体に動力を供給して前記盛土体を回転させる動力伝達手段を備え、
前記動力伝達手段の動力伝達経路の変更により、前記盛土体が正方向に回転する正転状態と前記盛土体が逆方向に正転状態時に比べて速い回転速度で回転する逆転状態とに選択的に切り換え可能となっている
ことを特徴とする請求項1記載の畦塗り機。
【請求項3】
動力伝達手段は、
第1回転軸と、
この第1回転軸に脱着可能に取り付けられた第1ギアと、
前記第1回転軸と平行に位置する第2回転軸と、
この第2回転軸に脱着可能に取り付けられ、前記第1ギアより径大な第2ギアと、
前記第1回転軸と平行に位置する第3回転軸と、
この第3回転軸に取り付けられた第3ギアとを有し、
正転状態時には、前記第1回転軸に取り付けられた前記第1ギアと前記第2回転軸に取り付けられた前記第2ギアとが噛み合い、かつ前記第2回転軸に取り付けられた前記第2ギアと前記第3回転軸に取り付けられた前記第3ギアとが噛み合った状態で、前記第1ギア、前記第2ギアおよび前記第3ギアを経て動力が盛土体に供給されてこの盛土体が正方向に回転し、
逆転状態時には、前記第1回転軸に取り付けられた前記第2ギアと前記第2回転軸に取り付けられた前記第1ギアとが噛み合い、かつ前記第1回転軸に取り付けられた前記第2ギアと前記第3回転軸に取り付けられた前記第3ギアとが噛み合った状態で、前記第2ギアおよび前記第3ギアを経て動力が盛土体に供給されてこの盛土体が逆方向に正転状態時に比べて速い回転速度で回転する
ことを特徴とする請求項2記載の畦塗り機。
【請求項4】
盛土体は、
正転用取付部を軸方向一端側に有しかつ逆転用取付部を軸方向他端側に有する回転軸と、
この回転軸に取り付けられた盛土爪とを有し、
正転状態時には、前記回転軸の正転用取付部が動力伝達手段の第3回転軸に取り付けられ、
逆転状態時には、前記回転軸の逆転用取付部が前記動力伝達手段の第3回転軸に取り付けられる
ことを特徴とする請求項3記載の畦塗り機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2010−161958(P2010−161958A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5456(P2009−5456)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】
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