説明

異なる収着材料を含む冷凍機

本発明は、ヒートポンプ/冷凍機における凝縮器の代わりとしての吸着剤の使用と、脱着能力を向上させるための、ヒートポンプ/冷凍機における蒸気圧の低減時における該吸着剤の使用とに関する。本発明はさらに、好ましくは2つの段階において2つの異なる吸着剤を使用する冷凍方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着ヒートポンプにおける液化器の代わりとしての吸着剤(adsorbent)の使用と、脱着能力を向上させるための、吸着ヒートポンプにおける、圧力の低減時、特に中間圧力の低減時における吸着剤の使用とに関する。本発明はさらに、2つの吸着段階を使用する冷凍方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者には既知であるように、冷凍機は熱力学サイクルを実行するが、その際例えば熱は周囲温度未満では吸収され、高温では排出される。冷凍機におけるこれらのサイクルは、ヒートポンプにおけるサイクルと本質的に同一である。この理由のために、冷凍機はヒートポンプであると解釈することもできる。既知の冷凍機は、例えば、吸収冷凍器、拡散吸収冷凍機、吸着冷凍器又は固体収着ヒートポンプと、圧縮冷凍器とである。これらの機械の構造は、関連技術分野の熟練者(当業者)に既知である。全ての冷凍機に当てはまることだが、その性能及び効率は、周囲のヒートシンク及び熱源の温度に強く依存する。冷凍の際の、脱着のための駆動熱と、低温レベルで吸収された熱とが、吸着冷凍機に関する熱源である。吸着プロセスの進行を維持するためには、これらの熱流の両方が、この機械から戻ってこなければならない。通常、これは、環境中への凝縮熱及び吸着熱の再冷却により達成される。したがって、好ましくは、吸着ヒートポンプにおいて極めて重要な3つの温度レベルが存在する。(a)脱着プロセスを駆動する熱源の温度レベル、例えば80℃。(b)実際の冷凍の、又は吸着ヒートポンプにより吸収される熱の温度レベル、例えば冷媒の蒸発が起こる温度レベルである10℃。(c)再冷却又は環境中への熱放出の温度レベル、例えば40℃。吸着ヒートポンプにおいて発生する凝縮熱及び吸着熱が、環境中に消散し、その結果吸着ヒートポンプから引き出されるのは、この温度レベルである。
【0003】
当業者により、そのプロセスを駆動する脱着/液化の温度差は駆動温度(driving temperature)と呼ばれ、吸着/蒸発の温度差は温度リフト(temperaturelift)と呼ばれる。既知の熱力学の法則によれば、所定の「リフト(lift)」での「ドライブ(drive)」が増大すると、熱収着機の機能は向上する。すなわち、吸着材料をより良く乾燥又は脱着させられれば、蒸発する冷媒をより良く吸収することができ、結果として所望の冷凍を提供することができる。したがってそれ以外が同一の条件では、再冷却温度が50℃のヒートポンプは、30℃の再冷却温度のものと比較して性能において常に劣る。なぜなら、リフトが20K高いのでドライブが同様に20K小さいからである。
【0004】
例えば日本の企業である株式会社前川製作所により市販される、典型的な1段式吸着冷凍機は、本質的に、蒸発器と、液化器と、交互に吸着及び脱着する吸着体(adsorber)/脱着体対とから成る。吸着冷凍機では、使用される冷媒は、事前に脱着した(乾燥した)吸着材料に吸着される。すなわち、事前の脱着をより良く行えば、実際の吸着及び冷凍がより効率的となる。上述のように、このプロセスにおいて得られる吸着熱及び凝縮熱は、再冷却を必要とする。したがって、典型的な1段式吸着冷凍機においては、実現可能な再冷却温度は、ドライブ/リフト比に直接的な効果を有し、また、その装置の性能に顕著な影響を有する。したがって、特に再冷却温度が常に周囲大気温度を超える乾式再冷却器の場合に、吸着冷凍機の性能に対するプロセス境界条件の制限が、特に暖かい日及び暑い日には、生じている。この理由のために、例えば、40℃を超える周囲温度で乾式再冷却に供することができ、且つ100℃未満の駆動温度又は脱着温度を要する、市販の吸着冷凍機は存在しない。しかし、究極的には、冷凍機にとっての使用の本質的な条件、特に空調機能に関する条件を表わすのは、まさに暖かい日及び暑い日なのである。
【0005】
上述の事実からすると、現在までの吸着冷凍機は、湿式再冷却器(湿式冷却塔)を使用して操作することが通常であったということになる。しかし、低能力範囲において、民間セクターすなわち非工業的セクターにおいて、及び携帯使用においては、周囲大気中の水の蒸発を利用する(例えば発電所の冷却塔のような)湿式再冷却を乾式再冷却の代わりに使用するアプローチは、技術的、経済的及び政治的な観点から(水消費、湿式再冷却器の強度の維持、水パイプの付加、レジオネラ発生のリスク、これらによりかかる設備の地域的な禁止という結果がもたらされる)、ほとんど実現不可能である。
【0006】
したがって、既知の吸着冷凍機は、特に高い再冷却温度又は相対的に好ましくない再冷却温度が生じる場合には、多くの用途に関して求められる性能を有していない。
【0007】
先行技術は、複雑な構造的配置を通じて性能の欠如を克服しようと試みているが、その構造的配置は、冷凍機/ヒートポンプの製造時、初期立上げ時及び使用時において、途方もない努力を必要とする。
【0008】
例えば、特許文献1に係る株式会社デンソーの特許は、熟練を要する熱キャリア回路の相互接続が、通常の吸着設備と比較して低い熱キャリア温度を使用することにより、第1段階の吸着の向上を実現し得ることを示す。デンソーの発明では、再冷却循環における第1段階の吸着体の上流に第2段階の第2の蒸発器を接続することにより、これが達成される。すなわち、熱キャリア流体は、吸着体に入る前に第2の蒸発器により冷却されるので、吸着体に冷凍の向上をもたらすことができ、それにより吸着が向上する。
【0009】
このアプローチは、複数の蒸発器を必要とする。加えて、特許文献1における複数の蒸発器は、多数の蒸発器の間の凝縮器からの再循環凝縮物の分配さえも必要とするが、これは困難であるか、又は分離した機器を少なくとも必要とする。
【0010】
さらに特許文献1では、多数の構成部分、例えば吸着体、蒸発器及び再冷却器等、が直列に接続される。すなわち熱キャリア流体は、順次、複数の構成部分を通って流れる。これは、熱キャリア流体の高圧損失を示唆し、より大きなポンプと、これらのポンプのための電力消費の増大とを必要とする。
【0011】
別の事実としては、さまざまな吸着剤が、脱着、すなわち吸着剤から冷媒をはぎ取ることに高温又は低圧を必要とするというような特性を有する。これらの吸着剤では、通常の温度境界条件下におけるプロセスの過程において、吸着剤の十分な脱着は困難である。
【0012】
特許文献1の教示は、その記載において脱着よりむしろ吸着が支持されるので、この問題のいずれをも克服しない。
【0013】
より高い駆動温度(例えば100℃超)を使用する選択肢が存在する場合、例えば効率が増大する結果を得られるように、段階間の熱を回収することを目的として、多段階の吸着ヒートポンプも実行され得る。しかしかかる増大は、第1段階の放出される熱又は放出される熱の温度レベルが、第2段階を駆動するのに十分であるような高い駆動温度を常に必要とする。この多段階構造は、冷媒側の相互接続よりもむしろ熱キャリア媒体(例えば水又はブライン)の相互接続により実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0795725号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、先行技術の欠点を有しない単純且つ効率的な手段及び方法を提供することであった。より詳細には、要点は、従来の装置が全く機能しないか又は非常に限定的な範囲内でしか機能しない高い周囲大気温度においても、乾式再冷却を伴う吸着冷凍器の操作を可能とする方法を見出すことであった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに、ヒートポンプ/冷凍機において液化器の代わりに吸着剤を使用したときに、特に、圧力の低減、特に固体収着ヒートポンプにおける中間圧力の低減のために固体収着ヒートポンプにおいて吸着剤を使用したときに、先行技術の欠点を、克服することができる。本発明によれば、これは構成部分が吸着剤で置換されることを示唆するのではなく、むしろこの場合には、吸着剤における冷媒の吸着が、液化が通常起こる位置で進行することを意味する。冷媒の液化と吸着とのいずれかのプロセスが、冷媒の脱着時における圧力の低減をもたらす。しかし、吸着は、等温で液化よりも低い圧力をもたらす。第2段階がない場合、第1段階の脱着圧(pdes1)は液化圧(pliquf.)と一致する。脱着の結果として放出された冷媒が直ぐに液化せず、本発明により第2段階で吸着される場合、第1段階の脱着圧(pdes1)は第2段階の吸着圧(pads2)と一致する。吸着時における相対蒸気圧の低減のために、圧力pads2は常にpliquf.を下回る(等温の場合を除く)。したがって、以下の式が適用される。
【0017】
des1=pads2<pliquf.
【0018】
第2段階の脱着時には、以下の式が適用される。
【0019】
des2=pliquf.
【0020】
したがって、中間圧力pads2は、第1段階の脱着圧と液化圧との間である。
【0021】
この圧力は直近の液化時における圧力より低いので、第1段階の脱着能力は、本発明により増大する。
【0022】
別の態様では本発明は上記吸着剤の使用に関し、ここで中間圧力の低減は少なくとも2つの段階を介してもたらされるが、第1段階において事前に吸着されていた冷媒が第1段階で脱着し、このようにして形成したガス状の冷媒(特に水又は水蒸気)が第2段階における吸着のために別の吸着剤上に移る。
【0023】
本発明の意味において、形成したガス状の冷媒は事前に吸着されており、脱着時に吸着剤からガス状の状態で放出される。
【0024】
したがって、本発明の好ましい態様は、好ましくは異なる吸着材料を有する付加的な吸着/脱着体ユニットによる拡張的な1段式吸着冷凍機である。吸着剤は、例えばゼオライト又はシリカゲルである。本発明によれば、第1段階は吸着材料としてゼオライトを含み得るし、第2段階又は任意の付加的な段階はシリカゲルを含み得る。逆の配置も勿論可能である。同様に、それぞれの段階において異なるタイプ又はクラスのゼオライトを使用することも考えることができる。このように2段式吸着冷凍機が得られ、好ましい実施の形態における材料が、(a)第1段階の吸着剤はプロセス温度、特に蒸発及び吸着の温度に適切であるように、並びに(b)第2段階の吸着材料はプロセス温度、特に脱着及び凝縮の温度に適切であるように選択される。
【0025】
本発明によれば、先行技術においてはより高い駆動温度を使用することによってしか実現することができなかった第1段階における材料の脱着が、第2段階では吸着を介して実現されるように、吸着剤の異なる特性を組み合わせることができる。第1段階では、その他の通常の液化は起こらない。第1段階の脱着体は、第2段階の吸着体を乾燥する。したがって、先行技術において既知の冷媒液化の代わりに、中間圧力の低減と共に吸着が起こる。
【0026】
かかる吸着における圧力は、低減した再冷却温度での通常の凝縮/液化の圧力と一致する。換言すれば、先行技術における吸着冷凍機がもはや機能しない顕著に低い駆動温度でも、吸着冷凍機の操作が可能である。本出願による教示、特に以下に記載される好ましい変形形態に基づき、さまざまな利点が実現される。
【0027】
上記によれば、1つの特定の利点は、他では不可能な操作温度で吸着冷凍機の操作が進み得ることである。すなわち、例えば、乾式再冷却を伴う冷凍が、年中通じて、夏季でさえも可能である。本発明による教示に基づき、脱着のための非常に高い駆動温度を通常は必要とするゼオライト等の吸着性材料を利用することが可能である。特に有利な一様式では、本発明の設計に依存する第2段階は、貯蔵手段として使用することもできる。
【0028】
本発明の好ましい1つの実施の形態では、吸着剤は、ヒートポンプ/冷凍機での蒸気圧の低減時に使用され、脱着能力、特に第1段階の脱着能力を向上させる。
【0029】
本発明は、液化器の代わりに吸着剤を使用する、冷凍装置/ヒートポンプにおける冷凍の方法にも関する。例えば、該液化器は、低温学において既知の凝縮器の場合がある。
【0030】
本発明の意味における1つの段階は、第(n+1)段階は、第(n)段階から(例えば、第2段階は第1段階から)吸着することを示唆する。冷媒に関する限り、異なる段階が、プロセスの過程において直列に配置されることが好ましい。原則として、1つの段階は単一のユニットから構成される。どの段階であるかにかかわらず、これらのユニットは、さまざまな方法で、すなわち1つ又は複数の構成部分又は吸着体/脱着体(以下)の形態で、実行され得る。
(a)1つの吸着体/脱着体:1つの吸着体/脱着体のみが使用される場合、脱着フェーズ中には脱着がまさに進行しているため、吸着及び冷凍をすることができない。冷凍は、脱着が完了し吸着が始まるまでは開始しない。かかるアプローチは加熱システム技術においては、例えばヒータ支持ヒートポンプ(heater-supporting heat pump)としての操作においては、適切であろう。
(b)(単一の段階における)2つ以上の吸着体/脱着体:1つの吸着体/脱着体の脱着時に、同じ段階における別の吸着体/脱着体は、同時に吸着することができる。したがって冷凍を半連続的とすることができ、吸着ヒートポンプの場合のように、構成部分の間における熱の回収を利用することができる。
【0031】
本発明の好ましい実施の形態では、本発明の一態様における実行は本質的に第1段階の脱着を対象とするため、個々の段階が実行される方法は重要でない。したがって、有利には、第1段階からの脱着が半連続的であるの(2つの構成部分)か、又は第1段階の吸着の完了のみに関するの(単一の構成部分)かどうかは重要な点ではない。本発明による教示の他の実行も可能であることが理解されるだろう。
【0032】
先行技術における吸着機では、脱着体のガス状の冷媒は液化器に受け取られ、液化される。
【0033】
対照的に、本発明は、脱着体において放出されるガス状の冷媒を受け取るための、吸着剤を使用する。本発明は、付加的な脱着段階の冷媒を液化するために吸着剤に加えて液化器を含む吸着機と、液化器がなくとも完全に作動する機械とを包含する。
【0034】
本発明の好ましい1つの実施の形態では、液化器の代わりとしての吸着剤とは別に、少なくとも1つのさらなる液化器、好ましくは凝縮器が付加的に使用される。特に好ましい一様式では、付加的な液化器は、別の段階、特に第2段階又は最終段階の脱着のために使用される。冷凍装置が少なくとも2つの吸着ユニット及び脱着ユニットを有するように、本発明による方法を実行することが、好ましいことがある。当業者には既知であるように、材料はその特性により、ある時点で低温学的観点から飽和しているとみなされるはずであるため、吸着は連続的に進行し得ない。およそその時点で、脱着に切り替えることが可能であり、その後その材料は再び吸着することができる状態にある。したがって、本発明の別の好ましい実施の形態は、少なくとも2つの吸着ユニット及び脱着ユニットを有する冷凍装置に関する。
【0035】
有利には、本発明の好ましい実施の形態は、特許文献1に係る発明が複数の蒸発器を必要とするのに対して、1つの蒸発器のみを使用することを可能とする。複数の蒸発器の欠点の1つは、凝縮器からの凝縮物の再循環を、多数の蒸発器の間に均等に分配させなければならず、それにより、少なくとも1つの分離機器を必要とすることである。有利には、本発明によれば、これは必要とされない。この理由のために、本発明による教示は、特に、好ましい変形形態では1つの蒸発器しか含まれないので、先行技術の教示と比較してより単純で、より小さく且つより費用のかからない機器で実行することができる。本発明の教示による好ましい変形形態の別の利点は、脱着、すなわち吸着した材料(特に冷媒)を吸着剤からはぎ取ることが、高温又は低圧を必要とするという事実からもたらされる。かかる吸着剤では、通常の温度境界条件下では、プロセスの過程において吸着剤の十分な脱着を得ることが困難である。本発明によれば、吸着剤の脱着は、先行技術の教示と異なり、特に脱着体から第2段階の吸着体への吸着した材料の吸着により、支持される。したがって、本発明によれば、通常の温度境界条件下では十分に脱着することができない吸着剤を使用することも可能である。
【0036】
「冷媒」という用語は、好ましくは「吸着した材料」という用語と同義語として使用され、吸着機に添加される、又は吸着機において吸着剤により吸着される任意の薬品を含む。したがってそれは冷凍に使用される薬品に限定されない。
【0037】
したがって当業者は、本発明の開示が好ましくは、本発明の有利な実施の形態における冷凍装置が少なくとも2つの吸着ユニット及び脱着ユニットを有することを明らかにするので、本発明の教示を実行することができる。吸着ユニット及び脱着ユニット並びに第1段階又は第2段階という用語は、本発明の開示の全体との関連では当業者に既知であり、一般的な標準的知識である。また、当該技術分野の平均的な知識を有する者は、本発明の意味における構造的な観点から第1段階又は第2段階を実行することができる。当業者は、先行技術における「第2段階」という用語が、異なる温度レベルでの第1段階の繰返しを表すという事実に精通している。本発明の意味において、第2段階は2つの異なる吸着体の相互接続から得られ、第2段階は好ましくは同じ温度レベルで実行される。現在まで、先行技術には、2つの段階が同じ温度で操作される2段式吸着装置に関する記載がなかった。したがって、本発明の意味における第2段階は、当該技術分野の平均的な知識を有する者により、どちらかといえば付加的な段階又は拡張的な段階とみなされる。
【0038】
本発明の特に好ましい1つの実施の形態では、冷凍装置は付加的に貯蔵ユニットを有すると考えられる。特に固体収着ヒートポンプが、1つ又は複数の蒸気バリア又は1つの蒸気弁により固体収着ヒートポンプの残りの部分から遮断することができるような形態で、付加的に貯蔵ユニットを有するときには、有利である。
【0039】
本発明の特に好ましい1つの実施の形態では、上述の冷凍装置は、有利には、この段階で脱着した材料が他の段階の操作とは独立に自動的に再吸着されるのではなくこの段階の吸着が後の時点で進行してもよく、その結果脱着(取込み)及び吸着(排出=蒸発)が直ぐにお互いに時間内に続くのではなく、特に脱着状態が一時的な貯蔵時には変化しないか又はわずかに変化するのみである、というような形態で、付加的に貯蔵ユニットを有すると考えられる。
【0040】
本発明による教示を実行するときに、有利には、少なくとも2つの異なる吸着剤が使用され得る。好ましい一様式では、吸着剤は、ゼオライト、シリカゲル、ベントナイト、活性炭、酸化アルミニウムゲル、セルロース及び/又はデンプンを含む群から選択され得る。
【0041】
本発明の好ましい1つの実施の形態では、水蒸気又はメタノール−水混合物又はメタノールが、冷媒として使用される。もちろん、当業者に既知の任意の他の冷媒も使用され得る。
【0042】
構造的設計に基づき、冷媒(特に水/水蒸気)は、好ましくは、第1段階の脱着から発生するガス状の冷媒(特に水蒸気)が第2段階の吸着体中に移るように、冷凍装置に導入される。構造的設計の方法は、当業者には既知である。特に好ましい一様式では、第1段階ではゼオライトが、第2段階ではシリカゲルが、吸着剤として使用される。もちろん、第1段階でシリカゲルを使用し、第2段階でゼオライトを使用することが好ましいこともある。
【0043】
しかし、原則として、両方の段階において同じ吸着剤を使用することも可能である。
【0044】
本発明の別の好ましい実施の形態では、第1段階における吸着剤の脱着は、第2段階における吸着により実現される。
【0045】
本発明の別の実施の形態では、冷凍装置が、2つの吸着/脱着ユニットに加えて蒸気分配システムを含み、水蒸気の流れが全ての段階に導かれ得るように全ての段階が相互接続可能であることが特に好ましいことがある。
【0046】
特に好ましい一様式では、吸着段階は、脱着と、液化、すなわち好ましい一様式での凝縮との間に接続される。
【0047】
別の態様では、本発明は中間圧力の低減における本発明の方法の使用にも関し、別の好ましい実施の形態では、本発明は吸着体における冷媒の脱着のための本発明の方法の使用にも関する。本発明によれば、中間圧力の低減は、第1段階の脱着がより低い圧力で起こり、この段階の乾燥は低圧で向上し得るので、この段階の吸着能力の向上をもたらすことを示唆する。脱着した冷媒が液化される付加的な段階の液化圧との関連では、この圧力は液化圧より低い。また、一方では、この圧力は常に第1段階の吸着圧より高い。したがって本発明によれば、この圧力は、2段式又は多段式吸着ヒートポンプの操作時における、これらの異なる圧力の間である。
【0048】
本発明の好ましい実施の形態では、本発明の方法は、ヒートポンプ/冷凍機における2段階吸着を行うために使用することができ、上述の利点を有する。
【0049】
この方法の別の好ましい実施の形態では、第1段階の脱着圧の低減と、第2段階の凝縮圧/脱着圧からのこの圧力の分割(decoupling)がもたらされる。本発明の意味における分割は、通常、第1段階の脱着圧が常に液化圧に依存する、又は液化圧に支配されることを示唆する。本発明によれば、吸着は有利に液化の上流に接続されることがあり、その結果、液化圧はもはや第1段階の脱着圧に直接的な効果を有しない。
【0050】
本発明の別の好ましい実施の形態では、この方法は、吸着冷凍機において少なくとも2つの異なる相対蒸気圧の低減をもたらす。したがって本発明は、圧力の低減、特に第1段階の脱着の圧力の低減のための、固体収着ヒートポンプにおける脱着プロセスのための蒸気シンクとしての吸着剤の使用にも関する。本発明の意味における蒸気シンクは、蒸気が、各構成部分のチャンバーについてはもはや流れず、相転移により液体又は吸着した材料(吸着した相)に変換される又は変化することを示唆する。
【0051】
有利には、第2段階は常に第1段階の脱着の圧力の低減のために使用されるわけではなく、代わりに固体収着ヒートポンプの性能を増大させるために、又は第2段階を任意に操作するためにのみ、第1段階と同様に停止又は操作される。ここで本発明の意味における「同様に(analogy)」は、吸着が蒸発器から直接進行し、その結果脱着段階から吸着は起きないことを示唆する。
【0052】
したがって、別の態様における本発明は、吸着体と脱着体との間の全ての流路を、特に蒸発器から第2段階及び全てのさらなる段階への、並びに第1段階及び全てのさらなる段階から凝縮器への直接的な流れをも、促進する、蒸気分配システムが設けられる装置にも関する。本発明による教示の開示に基づき、当業者は、本発明の使用及び方法を達成及び実行するためにヒートポンプ/冷凍機のどの構造的設計を使用することができるかを認識するだろうし、装置において本発明による教示を実行する方法を知るだろう。本発明の特定の実施の形態は、第1段階における蒸発器からのみでなくそこ(there)からも、第2段階へ又は全てのさらなる段階を直列に通って最終的に液化器へ、冷媒が導かれるような形態で、冷媒側の相互接続を必要とする。貯蔵操作においては、この段階が本発明による貯蔵手段として設定された場合には、例えば、蒸発器から第2段階又はさらなる段階への、しかし第1段階へではない直接的な蒸発が、有利なことがある。しかし有利には、他の全ての冷媒側の蒸気の流れが必要となることがあり、その結果、本発明によれば、これを促進するために適切な蒸気誘導システムが必要となる。本発明による使用及び方法を実行するための装置は、本発明による教示に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は冷媒蒸気の流れ、熱流、乾式再冷却器への接続、及びそれらから生じる温度と共に、考え得る2段式吸着ヒートポンプを示す図である。
【図2】図2は本発明による2段式吸着ヒートポンプの、2つの考え得る操作フェーズを示す図である。
【図3】図3は第1段階の複数の能力を有する構成部分として設計され、それゆえに貯蔵手段として操作され得る第2段階を有する本発明による考え得る実施形態を示す図である。
【0054】
限定することを意図しないが、本発明の好ましい実施形態は、実施例、図面及び流れ図を参照して、以下で、より詳細に記載及び説明されるだろう。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0055】
図1は、冷媒蒸気の流れ、熱流、乾式再冷却器への接続、及びそれらから生じる温度と共に、考え得る2段式吸着ヒートポンプを示す図である。本実施例では、装置は80℃で運転される。すなわち、第1段階の脱着体と第2段階の脱着体とは、この温度レベルで脱着される。第2段階の脱着は、特に大気温度に依存し典型的にはこの温度より高い(ここで、Tair=40℃であり、Tliquefaction=50℃である)、液化温度又は再冷却温度に対応する液化圧で起こる。対照的に、第1段階の脱着は、第2段階の吸着圧で起こる。この圧力は、再冷却温度に依存するのみでなく、吸着プロセスの結果としてのこの温度での相対蒸気圧の低減にも特に依存する。
【0056】
図2は、本発明による2段式吸着ヒートポンプの、2つの考え得る操作フェーズを示す図である。例えば、両方の段階における典型的な交互の操作が、蒸発器からの蒸気が第1段階により交互に吸着され、液化される第2段階の蒸気が第2段階から液化器へ交互に流れることにおいて見られる。
【0057】
図3は、第1段階の複数の能力を有する構成部分として設計され、それゆえに貯蔵手段として操作され得る第2段階を有する本発明による考え得る実施形態を示す図である。能力の差異のために、第1段階は、第2段階よりも迅速な交互の操作を示す。また、単一の構成部分としての第2段階の設計のために、第2段階の脱着は、第1段階の同時脱着がない場合にのみ起こる。具体的には、4つの操作フェーズが例示される。
1.液化は起こらず、第2段階は第1段階から吸着する。
2.第1フェーズと同様だが、第1段階における操作は交換されている。
− 第2段階の吸着能力を使い果たすまで、第1フェーズと第2フェーズとを繰り返す。
3.第2段階が脱着し、冷凍は行われない。脱着が完了し、例えば蒸気弁により、この状態を維持した後、冷たさは収着により蓄えられる。
4.貯蔵の排出:第2段階への直接の蒸発により、駆動熱の供給なしに冷凍が行われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの脱着プロセスにおける圧力の低減、特に固体収着ヒートポンプにおける中間圧力の低減のための、ヒートポンプ/冷凍機、特に固体収着ヒートポンプにおける液化器の代わりとしての吸着剤の使用。
【請求項2】
中間圧力の低減が少なくとも2つの段階を介してもたらされ、第1段階において事前に吸着されていた冷媒が第1段階で脱着し、このようにして形成したガス状の冷媒、特に水/水蒸気が別の吸着剤における吸着のために第2段階に移ることを特徴とする、請求項1に記載の吸着剤の使用。
【請求項3】
前記第1段階の脱着能力を向上させるための、ヒートポンプ/冷凍機での蒸気圧の低減における、特に請求項1又は2に記載の吸着剤の使用。
【請求項4】
冷凍装置/ヒートポンプ、特に固体収着ヒートポンプにおける冷凍の方法であって、吸着剤を液化器の代わりに使用することを特徴とする、冷凍の方法。
【請求項5】
液化器としての前記吸着剤とは別に、少なくとも1つのさらなる液化器を付加的に使用することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記冷凍装置が少なくとも2つの吸着ユニット及び脱着ユニットを有することを特徴とする、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記固体収着ヒートポンプが、1つ又は複数の蒸気バリア又は1つの蒸気弁により該固体収着ヒートポンプの残りの部分から遮断することができるような形態で、付加的に貯蔵ユニットを有することを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも2つの異なる吸着剤を使用することを特徴とする、請求項4〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1段階における前記吸着剤の脱着を、前記第2段階における吸着により実現することを特徴とする、請求項4〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
吸着段階が脱着と液化との間に接続されることを特徴とする、請求項4〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、前記第1段階の脱着圧の低減と、前記第2段階の凝縮圧/脱着圧からのこの圧力の分割をもたらす、請求項4〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、吸着冷凍機において少なくとも2つの異なる相対蒸気圧の低減をもたらす、請求項4〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
同じ吸着剤を両方の段階において使用することを特徴とする、請求項4〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
中間圧力の低減における、請求項4〜13のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項15】
圧力の低減、特に第1段階の脱着の圧力の低減のための、固体収着ヒートポンプにおける脱着プロセスのための蒸気シンクとしての、特に請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸着剤の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−526983(P2010−526983A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507789(P2010−507789)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【国際出願番号】PCT/DE2008/000810
【国際公開番号】WO2008/138325
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509312499)インベンソール ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】