説明

異なる親水コロイド組成物を有する接着剤層を含む層状接着構造体

【課題】医療器具、例えば造瘻器具を患者の皮膚に貼り付けるのに有用な接着剤構造体を提供する。
【解決手段】支持層と第一および第二の親水コロイド接着剤を含む層状接着剤構成体であって、親水コロイド接着剤の第一および第二の層は異なる組成物を有し、また親水コロイド接着剤の第二の層は、少なくとも部分的に親水コロイドの第一の層と支持層との間に入っており、第一および第二の接着剤層は連続相と不連続相からなっており、第一の接着剤層の不連続相は、第二の接着剤層の不連続相中の親水コロイドよりも、より高い水分吸収能力とより高い初期吸収速度を与える親水コロイドを含み、また接着剤の第二の層の不連続相は、第一の接着剤層の不連続相の親水コロイドに比べてより高い凝集性を与える親水コロイドを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる組成物を有する少なくとも2層の親水コロイド接着剤を含む接着剤構造体に関する。これらの接着剤構造体は医療器具、例えば造瘻製品(ostomy applicances)を患者の皮膚に取り付けるのに有用である。
【0002】
特に本発明は2つの接着剤層を備えた接着剤構造体に関し、ここで第一の接着剤層中の親水コロイドは、第二の接着剤層中の親水コロイドよりも高い初期水分吸収能力および水分吸収速度を与え、一方で、第二の層は、第一の接着剤層中の親水コロイドと比較して、水分吸収後に接着剤に改善された凝集力を与える親水コロイドを含んでいる。高い水分吸収能力および高い水分吸収速度を与える親水コロイドを含む第一の接着剤層は、皮膚に接触する表面に用いられ、一方、改善された凝集力と共に水分吸収を与える親水コロイドを含む第二の接着剤層は、少なくとも部分的に皮膚から離れて配置される。
【背景技術】
【0003】
ワンピース型およびツーピース型と呼ばれる造瘻製品は、通常は着用者の瘻孔周囲の皮膚に、製品を接着剤で固定するための接着剤面板を提供し、そして水分を吸収する皮膚に優しい親水コロイドを含む接着剤が、これらの面板用の接着剤として用いられる。
【0004】
皮膚に優しい接着剤の1つの初期の型が、米国特許第3339546号明細書に開示されており、それは水溶性の親水コロイドおよび水膨潤性の親水コロイド、例えばポリビニルアルコール、ペクチン、ゼラチン、および/もしくはカルボキシメチルセルロース、および水に不溶性の弾性結合剤、例えばポリイソブチレンとの混合物からなっている。親水コロイドが水分を吸収すると、このような組成物は膨潤し、そしてその元の姿から離れ始める。溶解や崩壊に耐えるために、新規な親水コロイド処方が提案されており、それは物理的に架橋した弾性体、例えばスチレン−オレフィン−スチレンブロック共重合体および粘着付与剤を含んでいる(米国特許第4867748号明細書参照)。
【0005】
米国特許第6451883号明細書には、ポリブテン(特にポリイソブチレン)およびスチレンブロック共重合体(特にSIS)からなるポリマー混合物、および親水コロイドの混合物、特にゼラチン、ペクチンおよびカルボキシメチルセルロースの混合物、を含む親水コロイド接着剤が記載されている。本発明によれば、ポリブテンおよびスチレンブロック共重合体の適切な混合物を選択することによって、粘着付与剤もしくはオイルを少しも含まない接着剤を調製することができる。
【0006】
本発明による接着剤構造体は、少なくとも2層の親水コロイド接着剤、高い水分吸収能力および速い初期水分吸収を与える親水コロイドを含む1つの接着剤層を皮膚接触層として、そして第一の接着剤層よりもより良い凝集力を与える親水コロイドを含む第二の接着剤層を含んでいる。
【0007】
親水コロイド接着剤の層を含む接着剤構造体は、当技術分野では良く知られている。
欧州特許出願公開第1527789号明細書には、膜層および異なる組成物を含む親水コロイド接着剤の少なくとも2つの層を含む構造体が記載されている。
【0008】
そこに記載されている接着剤構造体の主要な目的は、皮膚に隣接して用いられる、皮膚に優しい湿式で粘着性の感圧接着剤、また皮膚から離れて用いられる、柔軟で、快適で、耐湿性の接着剤であって、消毒の後で分解に耐えるもの、そして瘻孔の周りを管理された方法で密封することのできる接着剤、の特性を有する多層の接着性の医療製品を提供することである。
【0009】
皮膚に隣接して用いる接着剤は、ポリイソブチレンおよび水溶性もしくは水膨潤性の親水コロイドを含む接着剤として記載されている。
【0010】
皮膚から離れて用いられる接着剤は、ポリイソブチレンまたは1つもしくはそれ以上のポリイソブチレンとブチルゴムとの混合物、1つもしくはそれ以上の放射状またはブロック型の共重合体、鉱物油、1つもしくはそれ以上の水溶性親水コロイドゴムおよび粘着付与剤を含む接着剤として記載されている。
【0011】
公知の、皮膚に隣接して用いられる皮膚に優しい接着剤の不都合は、それらは厚くなった場合に、幾分か固くなる傾向にあることであることが記載されている。従って、皮膚に隣接する接着剤層は、皮膚から離れて用いられる、より柔軟で、快適な、耐湿性の接着剤よりもより薄いことが好ましい。
【0012】
本発明による層状接着剤構造体は、欧州特許出願公開第1527789号明細書に記載された構造体とは、親水コロイドの特性が2つの層で異なっていること、また連続相(下記参照)が2つの層中で同一もしくは本質的に同一であること、が相違している。
【0013】
欧州特許第686381号明細書には、異なる組成物を含む親水コロイド接着剤の2つの層を備えた同様の接着剤構造体が記載されている。この特許によれば、接着剤構造体を皮膚に固定する接着剤層は、瘻孔液に接触したときに溶解および/または崩壊への比較的低い抵抗力を有している皮膚に優しい親水コロイド含有接着剤からできており、一方で、皮膚から離れて置かれた他の接着剤は、皮膚に接触する接着剤の材料よりも瘻孔液による溶解もしくは崩壊により抵抗力のある、比較的柔らかく、変形の容易な、そして押出し可能な、接着剤封止材料でできている。その図面から、皮膚に隣接する接着剤層は、皮膚から離れて配置された接着剤層よりも、より薄いことが明らかである。
【0014】
更に、本発明による層状接着剤構造体は、欧州特許第686381号明細書に記載された構造体とは、2つの層中で親水コロイドの特性が異なっていること、また接着剤の2つの層中で連続相が同一もしくは本質的に同一であること、が相違している。
【0015】
欧州特許出願公開第413250号明細書には、例えば造瘻装置の一部として使用される接着剤構造体が記載されており、それは支持層および親水コロイド接着剤の2つの層を含んでいる。この文献によれば、両方の接着剤層が皮膚に接触し、該装置の中心部で皮膚に接触する接着剤層は、構造体の周辺部において皮膚に接触する接着剤層の2倍以上の厚さである。
【0016】
2つの接着剤層の連続相は、同じでも異なっていてもよいことが示されている。2つの異なる組成物、すなわち、ポリマー相もしくは連続相が異なっており、そして親水コロイドの混合物は同じであるが、但し、異なる量で存在する2つの組成物が、接着剤層用に言及されている。
【0017】
米国特許第4538603号明細書にはまた、異なる組成物であり、そして皮膚に接触することを意図した接着剤層が、皮膚から離れて置かれる接着剤層よりもより厚い、2つの接着剤層を含む接着剤構造体が記載されている。皮膚から離れて置かれる接着剤層は比較的薄く、またこの接着剤層の反対側の面に膜を保持する発泡層に結合している。ここに記載されている接着剤構造体は、浸出液のある傷または潰瘍の被覆用に有用であるように構成されている。比較的に厚い皮膚接触層は、接着剤構造体が数日間にわたり皮膚上の変わらない位置にあるように、成分が構成されている。接着剤層の全体にわたって分布する、水に分散可能な親水コロイド、水膨潤性の凝集強化剤および水和性ポリマーは、時間と共に徐々に水和する。いずれは、接着剤層は傷口の周りの皮膚を剥ぎ取ったり、または浸軟することなく、取り除くことが可能なほどに水和される。皮膚上に配置される比較的に厚い接着剤層は、熱可塑性弾性体、例えば低分子量ポリイソブチレン、および親水コロイド、水膨潤性凝集強化剤および水和性ポリマーを含み、一方で、皮膚から離れて配置され、発泡層に結合する比較的に薄い接着剤層はまた、可塑剤および粘着付与剤を含むことができる。
【0018】
更に、親水コロイド接着剤の2つの層は、異なる連続相を有している。
【0019】
国際公開第94/15562号パンフレットには、2つの接着剤からなる接着剤構造体が記載されており、そこでは1つの接着剤が、他の接着剤層中に埋め込まれた島の形で層を構成している。島を形成する付加的な物質単位が、構造体の残りを形成する接着剤物質よりも、いかにより凝集性でない物質であることができるか、が記載されている。
【0020】
2つの接着剤に異なる連続相を用いることによって、一方で2つの層中で親水コロイドは同じままでありながら、用いられる2つの接着剤における凝集力の違いが如何に達成されるかも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第3339546号明細書
【特許文献2】米国特許第4867748号明細書
【特許文献3】米国特許第6451883号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1527789号明細書
【特許文献5】欧州特許第686381号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第413250号明細書
【特許文献7】米国特許第4538603号明細書
【特許文献8】国際公開第94/15562号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、医療器具、例えば造瘻製品を患者の皮膚に取り付けるのに有用な接着剤構造体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明による層状接着剤構造体は、公知の層状接着剤構造体とは、不連続相(または親水コロイド)が2つの層中で異なること、接着剤の連続相が親水コロイド接着剤の2つの層で同じか、もしくは本質的に同じであること、および/または皮膚に接触する接着剤層が、支持層と皮膚に接触する接着剤層との間に配置された接着剤層よりも薄いこと、が相違している。
【0024】
本発明による接着剤構造体は、少なくとも2つの接着剤層、皮膚に接触する層として、接着剤に高い初期の水分吸収能力、および早い水分吸収を与える親水コロイドを含む1つの第一の接着剤層、および良好な水分吸収能力と、第一の接着剤層に比べて水分吸収後に改善された凝集性を与える親水コロイドを含む第二の接着剤層、を含んでいる。第二の接着剤層は少なくとも一部は第一の接着剤層の背後に、また皮膚から離れて配置される。接着剤のより厚い第二の層は、水分吸収能力と共に、第一の接着剤層から、そして第二の接着剤層中へ効果的な水分の移動を与え、それによって、崩壊や皮膚と第一の接着剤層との間での崩壊した接着剤の液溜りの形成が軽減される。
【0025】
第二の接着剤層の水分吸収能力によって、一旦第一の接着剤層または可能性のある他の水分の出所から水分を吸収し始めると、第二の接着剤層は膨潤する。本発明の接着剤構造体が、瘻孔を受け入れる孔を有し、また造瘻製品の面板として用いられる場合に、このことは特に利点となる、何故ならば、瘻孔の周りの領域で第一の接着剤層が部分的に崩壊する状況下において、第二の接着剤層が膨潤することができ、そして封止を与えるように作用することができるからである。
【0026】
2つの接着剤層に同じ連続相を選択することによって、これらの相は互いに完全に相溶性があり、そして1つの層から他の層中への成分の移動が回避される。
【0027】
従って、本発明は、支持層および親水コロイド接着剤の第一と第二の層を含む層状接着剤構造体に関し、親水コロイド接着剤の第一および第二の層は異なる組成を有し、そして親水コロイド接着剤の第二の層は、少なくとも一部は親水コロイド接着剤の第一の層と支持層の間に配置され、第一および第二の接着剤層は、連続相と不連続相からなり、
a)第一の接着剤層の不連続相は、第二の接着剤層の不連続相中の親水コロイドに比べて、接着剤により高い水分吸収能力およびより高い初期水分吸収速度を与える親水コロイドを含んでおり、また
b)第二の接着剤層の不連続相は、第一の接着剤層の不連続相中の親水コロイドよりも、水分吸収後により高い凝集性を与える親水コロイドを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の1つの実施態様を示しており、支持層(1)、第二の接着剤層(2)および第一の接着剤層(3)を示している。
【図2】本発明の他の実施態様を示しており、支持層(1)、第二の接着剤層(2)および第一の接着剤層(3)を示している。
【図3】本発明の他の実施態様を示しており、支持層(1)、第二の接着剤層(2)および第一の接着剤層(3)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
「不連続相」は、ここでは、接着剤層中の、単一もしくは複数の親水コロイドまたは親水コロイドの混合物および他のいずれかの微粒子状の固体、例えば充填剤(天然澱粉)、顔料などを意味する。
【0030】
「連続相」は、ここでは、上記で定義した不連続相を除く接着剤組成物全体を意味する。
【0031】
「水分吸収後のより高い凝集性」は、ここでは、2つの親水コロイド接着剤の関係において、これらの接着剤が同じ条件で水に暴露された場合に、接着剤の崩壊もしくは溶解の程度がより低いことを意味する。
【0032】
接着剤の凝集性における差異は、接着剤の寸法的に同じ試料を、37℃の温度で、一定時間(18時間が適当)生理食塩水(0.9%)で覆い、そして次いで、目視で、また崩壊もしくは溶解が起こったか、またどの程度起こったかを調べるためにその試料に触れ、またその試料を扱うことによって凝集性を評価することで評価することができる。
【0033】
「吸収能力」は、接着剤が水で飽和されたときの吸収された水の量である。吸収能力は、寸法的に同じ試料(例えば、25×25mmで1mm厚の試料)をガラス板の上に取り付け、そしてこの試料を37℃±2℃で、生理食塩水(0.9%)で覆い、5分後、10分後、20分後、30分後、60分後、そして120分後、もしくは質量の増加がもはやなくなるまで、試料の質量を(試料の表面上の液体を拭き取った後に)測り、そして次いで接着剤が水で飽和された時に、吸収能力を、接着剤の単位質量当たり、もしくは接着剤の単位面積当たりの吸収された水の質量として計算することができる。
【0034】
「初期の吸収速度」は、ここでは、5分間の吸収速度である。初期の吸収速度は、寸法的に同じ試料(例えば、25×25mmで1mm厚の試料)をガラス板の上に取り付け、そしてこの試料を37℃±2℃で、生理食塩水(0.9%)で5分間覆い、そして試料の表面上の液体を拭き取った後にこの試料の質量を測り、そして次いで、接着剤の単位質量当たり、もしくは接着剤の単位面積当たりの質量の増分を計算し、そして5で割り算することによって、最初の5分間の吸収速度を計算する。
【0035】
「造瘻製品の面板」はここでは、患者の瘻孔周囲の皮膚にバッグを取り付けるため、また瘻孔周囲の皮膚を保護するために有用な平面の接着剤構造体を意味する。
【0036】
接着剤層中の親水コロイドは、単一の型の親水コロイドまたは親水コロイドの混合物であることができる。
【0037】
適切には、第一のおよび第二の接着剤層中の親水コロイド(もしくは親水コロイドの混合物)は、異なっている。
【0038】
第一および第二の接着剤層の連続相は、同じであるか、または本質的に同じであることが適当である。
【0039】
「本質的に同じ」は、ここでは、1つの連続相中に、他の連続相と比較して、他の成分が少量存在することができることを意味しており(1つの連続相と他の連続相とでの成分当たりの偏差が0.5%未満である)、および/または2つの連続相の組成の偏差が小さいこと、例えば1つの連続相の各構成成分が他の相中に±0.5%で存在していることを意味している。
【0040】
本発明の好ましい実施態様によれば、親水コロイド接着剤の第一の層は、高い初期吸収速度で大量の水分を吸収することができる親水コロイドを含んでおり、すなわち、カルボキシメチルセルロース(特にカルボキシメチルセルロースナトリウム)などの親水コロイドまたは同様の吸収能力および高い初期吸収速度を接着剤に与える他の親水コロイドである。このような接着剤組成物の欠点は、特に水分が効果的に接着剤層を通して、また接着剤層から移されなければ、接着剤が水分吸収の後に崩壊する傾向を有することである。
【0041】
本発明の接着剤構造体の第二の層は、水分吸収の後に、高い凝集性を接着剤に与える親水コロイドを含んでおり、例えばグアーガムまたは接着剤に同様の良好な吸収および吸収の後の凝集性を与える他の親水コロイドである。好ましくは、接着剤の第二の層は第一の層よりも厚く、それによって該接着剤層の吸収能力自体は増加する。
【0042】
皮膚上で水分と接触しており、高くそして速い初期水分吸収を有する第一の接着剤層と、大量の水分を吸収することができ、それと同時にその元の形を保つ(高い凝集性)親水コロイド接着剤の層との2つの層の組み合わせが、接着剤構造体では、水分が効果的に第一の接着剤層によって吸収され、そして接着剤の第一の層を通して、そして接着剤の第二の層へと移される、接着剤構造体を与える。このことは、第一の接着剤層のウエットタックが保持され、またその崩壊が低減されることを意味している。
【0043】
第一の接着剤層は特別に厚い必要はなく、そして好ましくは第二の接着層よりも薄い。
【0044】
本発明の接着剤構造体の層中の親水コロイドは、天然の、合成のおよび半合成の親水コロイドから選択することができる。接着剤において有用な親水コロイドは当技術分野ではよく知られている。適切な水溶性の、および水膨潤性の親水コロイドとしてはカルボキシメチルセルロース(例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム)、ペクチン、ゼラチン、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤゴムなどが挙げられる。
【0045】
本発明の1つの実施態様によれば、第一の接着剤層の不連続相は、40〜50質量%、好ましくは45質量%(不連続相の質量を基準として)のカルボキシメチルセルロースナトリウムまたは同様の吸収能力と初期吸収速度を接着剤に与える親水コロイドを含んでおり、また第二の接着剤層中の不連続相は、35〜45質量%、好ましくは40質量%(不連続相の質量を基準として)のグアーガムもしくは同様の吸収能力および水分吸収後の凝集性を接着剤に与える親水コロイドを含んでいる。
【0046】
好ましくは、第一の接着剤層の不連続相は、40〜50質量%の範囲、好ましくは45質量%のカルボキシメチルセルロース(適切にはカルボキシメチルセルロースナトリウム)を含み、また第二の接着剤層の不連続相は、35〜45質量%の範囲、好ましくは40質量%のグアーガムおよび、15〜25質量%、好ましくは20質量%のカルボキシメチルセルロース(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム)を含んでいる。
【0047】
上記のいずれの実施態様においても、第一の接着剤層中の親水コロイドは、適切にはペクチン、ゼラチンおよびカルボキシメチルセルロース(適切にはカルボキシメチルセルロースナトリウム)の混合物であり、また第二の接着剤層中の親水コロイドは、適切にはグアーガム、ゼラチンおよびカルボキシメチルセルロース(適切にはカルボキシメチルセルロースナトリウム)の混合物である。
【0048】
第一の接着剤層の不連続相中の親水コロイドは、適切には以下の混合物を含んでいる。
不連続相の質量を基準として、
40〜50質量%、好ましくは45質量%のカルボキシメチルセルロース(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム)、
15〜25質量%、好ましくは20質量%のペクチン、および
30〜40質量%、好ましくは33〜35質量%のゼラチン。
【0049】
第二の接着剤層の不連続相中の親水コロイドは、適切には以下の混合物を含んでいる。
不連続相の質量を基準として、
35〜45質量%、好ましくは40質量%のグアーガム、
15〜25質量%、好ましくは20質量%のカルボキシメチルセルロース(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム)、および
35〜45質量%、好ましくは40質量%のゼラチン。
【0050】
第一の接着剤層は、適切には45〜55質量%の不連続相、好ましくは50質量%の不連続相を含んでいる。
【0051】
第二の接着剤層はまた、適切には45〜55質量%の不連続相、好ましくは50質量%の不連続相を含んでいる。
【0052】
第一および第二の接着剤層のポリマーマトリックスの組成は、好ましくは同じであるか、または本質的に同じである。
【0053】
2つの接着剤層の連続相は、皮膚への貼着に適切な感圧接着剤を与えるいずれの知られたポリマー組成物でもよい。
【0054】
好ましくは、連続相は、スチレンブロック共重合体と液体の粘調なポリオレフィン、例えばポリイソブチレンとの混合物からなっている。スチレンブロックを柔軟化するためのオイルおよび連続相の接着特性を改善するための粘着付与剤の必要性は、スチレンブロック共重合体の適切な混合物を、液体の粘調なポリマーの量に関して、選択することによって無くすることができる(米国特許第6451883号明細書を参照)。
【0055】
本発明の他の実施態様によれば、上記の連続相は、15質量%以下の粘着付与剤、オイル等を含むことができる。
【0056】
本発明の好ましい実施態様によれば、連続相は、15〜25質量%、好ましくは約20%のスチレンブロック共重合体、例えばクレイトンD1107、クレイトンD−1161NUまたは同様のスチレンブロック共重合体、および75〜85質量%、好ましくは80質量%の液体の粘調なポリイソブチレン、例えばオパノールB12SFNを含んでいる。
【0057】
このような組成物が米国特許第6541883号明細書に記載されている。
【0058】
本発明の1つの実施態様では、第二の接着剤層は、第一の接着剤層の周辺縁部を越えて広がり、そして第一の接着剤層が皮膚に接触する領域を越えて、皮膚に接触することができる。本発明のこの実施態様によれば、第一の接着剤層は第二の接着剤層よりも薄くてよく、そして第一の接着剤層は第二の接着剤層中に埋め込まれていてもよい。この実施態様は図1に示されており、支持層(1)、第二の接着剤層(2)および第一の接着剤層(3)を示している。
【0059】
「埋め込まれた」は、ここでは、1つの層が他の層の中に埋め込まれていて、埋め込まれた層の表面のうちの一方だけが他の層によって覆われていないように埋め込まれていることを意味している。これらの接着剤構造体は、国際公開第00/18554号パンフレット中に記載されているように調製することができる。
【0060】
本発明の他の実施態様では、第二の接着剤層は第一の接着剤層の表面上に付着しており、そして第二の接着剤層は第一の接着剤層の周辺縁部を越えて広がっており、そして第一の接着剤層が皮膚に接触する領域を越えて皮膚に接触することができる。このことは図2に示されており、支持層(1)、第二の接着剤層(2)および第一の接着剤層(3)を示している。適切には、第一の接着剤層は第二の接着剤層よりも薄い。
【0061】
第一および第二の接着剤層は、同じ面積および形状を有し、そして互いの表面上に合わさっていてもよい。更に、第一の接着剤層は、好ましくは第二の接着剤層よりも薄い。図3を参照。支持層(1)、第二の接着剤層(2)および第一の接着剤層(3)を示している。これらの接着剤構造体は、これらの層を別々に調製し、そして第二の接着剤層を支持層と第一の接着剤層の間に積層することによって調製される。
【0062】
適切には、第一の接着剤層の厚さは、適切には0.1〜0.4mm、好ましくは0.25〜0.35mm、またはより好ましくは0.3mmであり、また支持層と第一の接着剤層の間に配置される第二の接着剤層の厚さは、適切には0.5〜1mm、好ましくは0.5〜0.9mm、より好ましくは0.5〜0.8mm、または更に好ましくは0.5〜0.7mmである。
【0063】
本発明による接着剤構造体は、傾斜した周辺縁部を有していてもよく、そこでは両方の接着剤層が傾斜しているか、または場合によっては、第二の接着剤層が第一の接着剤層の周辺縁部を越えて広がっており、第二の接着剤層だけが傾斜していてもよい。これは図1に示してある。示されているように、第二の接着剤層は傾斜した周辺縁部においては、第一の接着剤層よりも薄くなってきていてもよい。
【0064】
支持層に付着している接着剤層の表面は(例えば第二の接着剤層)、適切には完全に支持層によって被覆されている。
【0065】
支持層は、薄いポリマー膜、複数のポリマー層を有する膜、不織布、または所望によりその外側表面を膜によって被覆された開放気泡もしくは独立気泡の発泡体層であることができる。
【0066】
薄いポリマー膜用の適切な物質は、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンアクリル酸、エチレン酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリウレタンなどが挙げられる。ポリマー膜は、適切には液体の水は不浸透性であり、そして様々な程度の水蒸気透過性を有することができる。適切な不織布としては、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、複合オレフィン繊維、またはセルロースから作られた不織布が挙げられる。
【0067】
支持層の厚さは、それが作られた物質によって異なっていてよい。支持層の厚さは、適切には30〜100μm、好ましくは40〜70μmである。
【0068】
支持層はまた、米国特許第4538603号明細書に記載されているように発泡層であることができる。
支持層は溶着(weldable)可能な物質であることができ、それによって他の品物または器具を支持層上に溶着することができる。
【0069】
本発明によれば、当技術分野でよく知られた種類の剥離ライナーを接着剤構造体の接着剤表面に適用することができる。このような剥離ライナーは当技術分野ではよく知られている。
【0070】
本発明による接着剤構造体は、更なる接着剤層、更なる膜層または他の層、を含んでいても良い。
【0071】
本発明の更なる実施態様によれば、層状接着剤構造体は、支持層を与えられる表面に、溝(grooves)の形のくぼみの模様を有している。
【0072】
これらの溝は接着剤構造体の柔軟性を向上させ、支持層に最も近い接着剤層(例えば第二の接着剤層)中に形成され、支持層と皮膚に接触する接着剤層はそのままにしておく。溝の深さは好ましくは支持層に最も近い接着剤層、例えば第二の接着剤層の厚さよりも薄い。
【0073】
1つの実施態様によれば、くぼみは層状接着剤構造体の中心から層状接着剤構造体の周辺に向かって放射状に広がっている。
所望により、接着剤構造体はまた、曲線をなすくぼみを有しており、これは放射状のくぼみと交差している。
【0074】
接着剤構造体の柔軟性を向上させるのにくぼみを用いることは国際公開第04/087004号パンフレット中に記載されている。
【実施例】
【0075】
物質
オパノールB12SFN、BASFのポリイソブチレン、分子量=60000〜80000
クレイトンD−1161NU、クレイトンポリマーのSISブロック共重合体
アクセルAF2881、AKZOのカルボキシメチルセルロースナトリウム
PBゼラチンのゼラチンUF220
ノルディスクゼラチンのグアーガムFG−200
コペンハーゲンペクチンのペクチンポモシン(Pectin Pomosin)LM12CG−Z/200
バイフェロックス、バイエルから入手可能なFe
【0076】
実施例1
第二の接着剤層の組成物
【0077】
【表1】

【0078】
実施例2
第一の接着剤層の組成物
【0079】
【表2】

【0080】
実施例3
親水コロイド接着剤は、当技術分野でよく知られた方法に従ってZ−混合機中で成分を加熱することによって調製することができ、また層状接着剤構造体は国際公開第00/18545号パンフレット中に記載された方法に従って調製することができる。
【0081】
4つの臨床研究を、層状接着剤構造体を用いて行った。
【0082】
実施例4
研究DK151OS(フライブルグ倫理委員会(Freiburger ethic-kommision)によって承認された。研究コード:DK145OS、Feciコード:05/1609)において、64人の回腸造瘻術を受けたドイツ人が排出可能なバッグの付いた層状接着剤構造体を、対照製品、ホリスターインク(Hollister Inc.)の単層接着剤、モデルマフレックス「エアースペース技術」、と比較して試験した。この研究は、開かれた、無作為に選ばれた、比較に基づく、横断的な多施設研究である。この研究は、参加者は、層状接着剤では糜爛の体験がより少なかったことを示しており、層状接着剤では77%が少しの糜爛を体験したかもしくは糜爛がなく、そして対照製品では55%がそうであった。また、皮膚への即時の接着(粘着)は、層状接着剤では著しく良好であると思われることが83%によって体験されたが、一方対照製品では55%であり、同様に、層状接着剤を取り除くときの痛みは、対照製品に比べてより少なかった。
【0083】
実施例5
実施可能性研究DK153OS(2005年12月8日のオートノルマンディーでの生物医学における人間の保護諮問委員会(Comite Consulatatif de Protection des Personnes dans la Recherche Biomedicale de haute Normandie)によって、No.2005/031として承認された。)において、59人の回腸造瘻術を受けたフランス人が排出可能なバッグの付いた層状接着剤構造体を、対照製品、コンバテックのインビジクローズ付きエスティーム、と比較して試験した。この研究は、開かれた、無作為に選ばれた、比較に基づく、横断的な研究である。この研究は、皮膚への即時の接着(粘着)は、層状接着剤では「良好」もしくは「非常に良好」であることが93%の参加者によって認識されたが、これに比べてエスティーム接着剤では66%であった。使用中の接着はまた、層状接着剤では76%によって「良好」もしくは「非常に良好」であるとことが体験され、これはエスティーム接着剤で体験された45%に比べて著しく良好であった。即時の接着と使用中の接着は、初期の水分吸収速度と120分後の水分吸収に結びついている。この研究はまた、参加者が層状接着剤を使用した場合には、皮膚に残った接着剤残渣が顕著に少ないことを体験した。また、顕著に良好な安心感が、層状接着剤構造体で体験された。
【0084】
実施例6
実施可能性研究DK109OS(東地域科学倫理委員会(Regionale Videnskabsetiske Komite ΦST)によって承認され、資料番号:2005−2−07G)において、68人の結腸瘻造設術を受けたデンマーク人が閉じたバッグの付いた層状接着剤構造体を試験した。この製品を比較品である、ダンサック社の単層接着剤付きのノバ1に対して試験した。この研究は、無作為に選ばれた、比較に基づく、横断的な研究である。この研究は、皮膚への即時の接着(粘着)および使用中の接着は、層状接着剤構造体を用いた場合には、対照製品に比較して著しく良好であった(即時の接着p<0.0001および使用中の接着p<0.0175)。即時の接着と使用中の接着は、初期の水分吸収速度と120分後の水分吸収に結びついている。取り外す時の痛みはまた、対照製品に比べて顕著に少ないと認識され、全般的な安心感も良好であった。
【0085】
実施例7
研究DK145OS(フライブルグ倫理委員会によって承認された。研究コード:DK145OS、Feciコード:05/1609)において、69人の結腸瘻造設術を受けたドイツ人が閉じたバッグの付いた層状接着剤構造体を試験した。この製品を比較品である、ホリスターのモデルマフレックスに対して試験した。この研究は、無作為に選ばれた、比較に基づく、横断的な研究である。この研究は、皮膚への即時の接着(粘着)は、層状接着剤構造体を用いた場合には、対照製品に比較して著しく良好であった(p<0.0001)ことを示していた。
【0086】
先に述べたように、高い水分吸収能力と高い吸収速度を与える親水コロイドを含む第一の接着剤層は、皮膚に接触する表面に用いられ、一方、改善された凝集力と共に水分吸収を与える親水コロイドを含む第二の接着層は、少なくとも部分的には皮膚から離れて配置される。層状接着剤では、凝集性が、0.9%のNaClを含む水で18時間覆われた後により強くなることが、デンマーク技術協会誌の番号1220519−02fgu/etaの試験報告書中に示されている。このことは、コンバテック、ダンサック社およびホリスターの接着剤のそれぞれについて示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層および親水コロイド接着剤の第一および第二の層を含む層状接着剤構造体であって、親水コロイド接着剤の第一および第二の層は異なる組成を有し、そして親水コロイド接着剤の第二の層は、少なくとも一部は親水コロイド接着剤の第一の層と支持層の間に配置され、第一および第二の接着剤層は、連続相と不連続相からなり、
a)第一の接着剤層の不連続相は、第二の接着剤層の不連続相中の親水コロイドに比べて、より高い水分吸収能力およびより高い初期吸収速度を接着剤に与える親水コロイドを含んでおり、また
b)第二の接着剤層の不連続相は、第一の接着剤層の不連続相の親水コロイドと比べて、水分吸収後により高い凝集性を接着剤に与える親水コロイドを含んでいる、層状接着剤構造体。
【請求項2】
第一および第二の接着剤層の不連続相中の親水コロイドまたは親水コロイド混合物が異なっている、請求項1記載の層状構造体。
【請求項3】
第一および第二の接着剤層の連続相が同じかまたは本質的に同じである請求項1または2記載の層状構造体。
【請求項4】
第一の接着剤層の不連続相が40〜50質量%のカルボキシメチルセルロースまたは同様の水分吸収能力と初期吸収速度を接着剤に与える親水コロイドを含んでおり、また第二の接着剤層中の不連続相が35〜45質量%のグアーガムもしくは同様の凝集性を接着剤に与える親水コロイドを含んでいる、請求項1〜3のいずれか1項記載の層状接着剤構造体。
【請求項5】
第一の接着剤層の不連続相が40〜50質量%の範囲、好ましくは45質量%のカルボキシメチルセルロースを含んでいる請求項4記載の層状構造体。
【請求項6】
第二の接着剤層の不連続相は、35〜45質量%の範囲、好ましくは40質量%のグアーガムおよび、15〜25質量%、好ましくは20質量%のカルボキシメチルセルロースを含んでいる請求項4または5記載の層状接着剤構造体。
【請求項7】
第一の接着剤層中の不連続相が、ペクチン、ゼラチンおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムを含み、また第二の接着剤層中の不連続相がグアーガム、ゼラチンおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の層状構造体。
【請求項8】
第一の接着剤層が、不連続相の質量を基準として、
40〜50質量%、好ましくは45質量%のカルボキシメチルセルロース、
15〜25質量%、好ましくは20質量%のペクチン、および
30〜40質量%、好ましくは33〜35質量%のゼラチンの混合物を含んでおり、また、第二の接着剤層が、不連続相の質量を基準として、
35〜45質量%、好ましくは40質量%のグアーガム、
15〜25質量%、好ましくは20質量%のカルボキシメチルセルロース、および、
35〜45質量%、好ましくは40質量%のゼラチン、の混合物を含んでいる請求項7記載の層状接着剤構造体。
【請求項9】
第一の接着剤層が、45〜55質量%の不連続相、好ましくは50質量%の不連続相を含んでいる請求項1〜8のいずれか1項記載の層状構造体。
【請求項10】
第二の接着剤層が、45〜55質量%の不連続相、好ましくは50質量%の不連続相を含んでいる請求項1〜9のいずれか1項記載の層状構造体。
【請求項11】
第一の接着剤層が、少なくとも第二の接着剤層が支持層と第一の接着剤層の間に入っている領域では、第二の接着剤層よりも薄い、請求項1〜10のいずれか1項記載の層状構造体。
【請求項12】
第二の接着剤層が第一の接着剤層の周辺縁部を越えて広がっている請求項11記載の層状構造体。
【請求項13】
第一の接着剤が第二の接着剤層よりも薄く、そして第二の接着剤層中に埋め込まれている請求項12記載の層状接着剤構造体。
【請求項14】
第二の接着剤層が第一の接着剤層の表面上に配置されている請求項12記載の層状接着剤構造体。
【請求項15】
第一および第二の接着剤層は、同じ面積および形状を有し、そして互いの表面上に合わさっている請求項11記載の層状構造体。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項記載の接着剤構造体を含む造瘻製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−75934(P2012−75934A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−281578(P2011−281578)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【分割の表示】特願2008−550637(P2008−550637)の分割
【原出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(500085884)コロプラスト アクティーゼルスカブ (153)