説明

異型交差防御を誘導するロタウイルスワクチン

本発明により、ロタウイルス株に対する免疫応答を誘導する方法が提供され、該方法はGxPy型の弱毒化ロタウイルス株を含んでなる組成物を被験体に投与するステップを含み、該組成物はGx型およびPy型のいずれでもないロタウイルス株に対する免疫応答を生起するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロタウイルスワクチン製剤に関する。本発明は、1つのロタウイルス型の弱毒化ロタウイルス集団の使用であって、別のロタウイルス型のロタウイルス感染に関連した疾患の予防における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
急性感染性下痢は世界の多数の地域における疾患および死亡の主要原因である。発展途上国においては下痢疾患の影響は計り知れない。アジア、アフリカおよびラテンアメリカにおいては、毎年30億〜40億の下痢の症例があり、それらの症例のうちの約500万〜1000万が死を招いていると見積られている(Walsh, J.A.ら: N. Engl. J. Med., 301:967-974 (1979))。
【0003】
ロタウイルスは乳児および小児における重症下痢の最も重要な原因の1つであると認識されている(Estes, M.K. Rotaviruses and Their Replication in Fields Virology, Third Edition, Fieldsら編, Raven Publishers, Philadelphia, 1996)。ロタウイルス疾患は毎年100万人以上の死を招いていると見積られている。ロタウイルスにより引き起こされる疾患は、最も一般には、6〜24月齢の小児を冒し、該疾患の流行のピークは一般に、温帯地方においては冷涼な月に、熱帯地方においては年間を通じて生じる。ロタウイルスは典型的には糞便−経口経路によりヒトからヒトへ感染し、潜伏期間は約1〜約3日である。6〜24月齢の群における感染とは異なり、新生児では一般に無症状であるか、または軽症であるに過ぎない。小児で通常見られる重症な疾患とは対照的に、ほとんどの成人は過去のロタウイルス感染の結果として防御されているため、ほとんどの成人の感染は軽症または無症状である(Offit, P.A.ら, Comp. Ther., 8(8):21-26, 1982)。
【0004】
ロタウイルスは一般には球状であり、その名称は、その特徴的な外層および内層または二重殻カプシド構造に由来する。典型的には、ロタウイルスの二重殻カプシド構造は、ゲノムを含有する内層タンパク質殻またはコアを包囲する。ロタウイルスのゲノムは、少なくとも11個の異なるウイルスタンパク質をコードする11セグメントの二本鎖RNAから構成される。VP4およびVP7と称される、これらのウイルスタンパク質のうちの2つが、二重殻カプシド構造の外部に配置されている。ロタウイルスの内層カプシドは1つのタンパク質を示し、これは、VP6と称されるロタウイルスタンパク質である。ロタウイルス感染後の免疫応答の惹起におけるこれらの3つの特定のロタウイルスタンパク質の相対的重要性は未だ明らかではない。それでも、VP6タンパク質は群および亜群を決定し、VP4およびVP7タンパク質は血清型(中和アッセイにより決定される型)および遺伝子型(非血清学的アッセイにより決定される型)特異性の決定因子である。G血清型およびG遺伝子型に関する名称は同一である。一方、P血清型および遺伝子型に割り当てられる数字は異なる(Santos N. et Hoshino Y., 2005, Reviews in Medical Virology, 15, 29-56)。したがって、P血清型はPおよびそれに続く割り当てられた数字で示され、P遺伝子型はPおよびそれに続く大括弧内の割り当てられた数字で示される。
【0005】
現在のところ、少なくとも14個のロタウイルスG血清型および14個のロタウイルスP血清型が特定されている(Santos N. et Hoshino Y., 2005, Reviews in Medical Virology, 15, 29-56)。これらのうち、10個のG(G1〜6、G8〜10およびG12)血清型および9個のP(P1、P2A、P3、P4、P5A、P7、P8、P11およびP12)血清型がヒトロタウイルスにおいて特定されている。23個のP遺伝子型が記載されており、そのうちの10個がヒトから回収されている(P[3]〜[6]、P[8]〜[11]、P[14]およびP[19])。
【0006】
VP7タンパク質は、株に応じてゲノムセグメント7、8または9の翻訳産物である分子量38,000(非グリコシル化体の場合には分子量34,000)の糖タンパク質である。このタンパク質はロタウイルス感染後に中和抗体の生成を刺激する。VP4タンパク質は、ゲノムセグメント4の翻訳産物である分子量約88,000の非グリコシル化タンパク質である。このタンパク質もロタウイルス感染後に中和抗体を刺激する。
【0007】
VP4およびVP7タンパク質は、中和抗体の生成対象となるウイルスタンパク質であるため、それらは、ロタウイルス疾患に対する防御をもたらすロタウイルスワクチンの開発のための主要候補であると考えられる。
【0008】
小児期早期における自然ロタウイルス感染は防御免疫を惹起することが知られている。したがって、生弱毒化ロタウイルスワクチンが非常に望ましい。好適には、これは経口ワクチンであるべきである。なぜなら、これが該ウイルスの感染の自然経路だからである。
【0009】
ロタウイルス感染に対する初期ワクチン開発は該ウイルスの発見後の1970年代に開始された。当初は、動物およびヒトからの弱毒化株が研究され、様々な結果または失望させるような結果が得られた。その後の研究はヒト−動物再集合体に焦点が合わせられ、より成功した結果が得られている。
【0010】
89−12として公知のロタウイルス株がWardにより記載されている。米国特許第5,474,773号およびBernstein, D.L.ら, Vaccine, 16 (4), 381-387, 1998を参照されたい。89−12株は、1988年に、自然ロタウイルス疾患に罹患した14月齢の小児から集められた便試料から分離された。米国特許第5,474,773号によれば、ついでHRV89−12ヒトロタウイルスが、Ward, J. Clin. Microbiol., 19, 748-753, 1984に記載のとおり初代アフリカミドリザル腎(AGMK)細胞における2継代およびMA−104細胞における4継代により培養馴化された。ついでそれはMA−104細胞において3回プラーク精製され(9継代まで)、これらの細胞における更に2継代の後で増殖に付された。ATCCへの寄託(受託番号ATCC VR2272)のために更に1継代に付された(12継代)。寄託株は89−12C2として公知である。
【0011】
Bernsteinら, Vaccineの1998年の論文を以下、Vaccine (1998)論文と称する。該論文は経口投与生ヒトロタウイルスワクチン候補の安全性および免疫原性を記載している。このワクチンは株89−12から得られたものであり、プラーク精製無しで初代AGMK細胞において26回継代、ついで樹立AGMK細胞系において更に7回継代することにより(合計33継代)弱毒化されたものである。
【0012】
以下、26回連続継代された前記物質をP26と称することとし、33回連続継代された物質をP33と称することとする。一般に、89−12をn回継代することにより得られたロタウイルスをPnと称することとする。
【0013】
以下の具体例(実施例)においては、P33物質をVero細胞において更に5回継代した。これをP38と称することとする。
【0014】
Vaccine (1998)論文に記載のP26およびP33分離体はカルチャーコレクションに寄託されておらず、遺伝的特徴づけを確立するための分析もなされていない。
【0015】
該文献に記載のP26集団は変異体の混合物を含むことが本発明において見出された。これは後記(実施例を参照されたい)の遺伝的特徴づけにより確認されている。したがって、P26は、更なる継代のための、特にワクチンロットの製造のための信頼しうる程度に一貫した集団ではない。同様に、P33は変異体の混合物を含み、ワクチンロットの製造のための信頼しうる程度に一貫したものではない。
【0016】
P26物質は少なくとも3つのVP4遺伝子変異体の混合物であることが見出されている。同様に、P33およびP38は2つの変異体の混合物である。これらの変異体は、これらの変異体に対してP33でワクチン接種された乳児からの血清の中和抗体価を評価した場合、ATCCに寄託されている89−12C2株とは中和エピトープの点で抗原的に異なっているらしい。
【0017】
さらに、P33物質を乳児に投与した場合、2つの特定されている変異体が複製され排泄されることが見出されている。ワクチン接種された100人の乳児のうち、2人だけがロタウイルス感染による胃腸炎の徴候を示し、プラセボ群の20%が感染した。これらの知見は、特定されている変異体がロタウイルス感染の防御に関連していることを示唆している。
【0018】
WO01/12797は、ロタウイルス変異体の分離方法、およびクローン化(均一)ヒトロタウイルス株から誘導された改良された生弱毒化ロタウイルスワクチンを開示している。VP4およびVP7と称される主要ウイルスタンパク質の少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列により定められる単一の変異体または実質的に単一の変異体を含むことを特徴とする弱毒化ロタウイルス集団(分離体)も開示されている。ラテンアメリカの乳児におけるG9異種株に対するそのような経口弱毒化ヒトロタウイルスワクチンの防御効力が報告されている(Perezら, 42nd Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy (ICAAC 2002) 27-30 September 2002, San Diego)。WO05/021033は、1つのロタウイルス血清型を使用して、別の血清型により引き起こされる疾患を防御しうることを開示している。特に、WO05/021033は、G1および少なくとも1つの非G1ロタウイルス血清型(限定的なものではないが例えばG2、G3、G4およびG9ロタウイルス血清型)の両方により引き起こされる疾患を予防するための、G1ロタウイルス集団[例えば、ブダペスト条約の条項に従いEuropean Collection of Animal Cell Cultures (ECACC), Vaccine Research and Production Laboratory, Public Health Laboratory Service, Centre for Applied Microbiology and Research, Porton Down, Salisbury, Wiltshire, SP4 0JG, United Kingdomに受託番号99081301として1999年8月13日に寄託されているもの;P43またはRIX4414とも称される]の使用を開示している。
【0019】
WO01/12797およびWO05/021033の全内容を参照により本明細書に組み入れることとする。
【発明の開示】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明において、本発明者らは、弱毒化ロタウイルス集団、例えばWO01/12797において特徴づけされているものをワクチンとして使用して、該ワクチンにおいて使用されているものとは異なる型(血清型および/または遺伝子型)のロタウイルス感染により引き起こされる疾患に対する交差防御を得ることが可能であることを確認した。VP7タンパク質はG型(血清型)を特定し、VP4タンパク質はP型株(血清型または遺伝子型)を特定する。
【0021】
特に、本発明は、1つのP型の弱毒化ロタウイルス集団の、異なるP型のロタウイルス感染に関連した疾患の予防における使用、特に、Gx型およびPy型のいずれでもないロタウイルス株により引き起こされるロタウイルス感染に関連した免疫応答の誘導および/または疾患の予防における、GxPy型の弱毒化ロタウイルス集団または株の使用に関する。
【0022】
免疫は、該ワクチンに対する中和抗体応答により、または血清ロタウイルスIgA抗体応答、例えばセロコンバージョン因子(すなわち、Wardら, 1990, J. Infect. Disease, 161, 440-445に記載されているとおり、ワクチン接種後の血清抗体IgAレベルにおける3倍以上の増加)により測定されうる。
【0023】
本発明においては、当技術分野における一般的な理解(Santos N. et Hoshino Y., 2005, Reviews in Medical Virology, 15, 29-56)に合致して、Gxは特定のG型、すなわち、G遺伝子型またはG血清型(両方の専門用語は同一である)を意味し、Pyなる語は一般には、P血清型(例えば、P8、P4)またはP遺伝子型(例えば、P[4]、P[8])のいずれかの特定のP型を意味する。特定のP遺伝子型を示す場合には、Pおよびそれに続く大括弧内の割り当てられた数字が用いられ、その他の場合には、P型は血清型または遺伝子型のいずれかを意味する。
【0024】
本明細書の全体にわたり、ロタウイルス疾患の予防のためのワクチン組成物の製造における本発明のワクチン組成物の使用、または該ワクチン組成物の使用を含む治療方法のような表現は、互換的に用いられる。
【0025】
本発明者らは本発明において、GxP[8]ロタウイルス集団[例えば、ブダペスト条約の条項に従いEuropean Collection of Animal Cell Cultures (ECACC), Vaccine Research and Production Laboratory, Public Health Laboratory Service, Centre for Applied Microbiology and Research, Porton Down, Salisbury, Wiltshire, SP4 0JG, United Kingdomに受託番号99081301として1999年8月13日に寄託されているもの]が、GxP[8](例えば、G1P[8])ならびにGx型およびPy型のいずれでもない少なくとも1つのロタウイルス株の両方により引き起こされる疾患を予防するために使用されうることを確認した。特に、本発明者らは、G1P[8]ロタウイルス集団が、1つのG1P[8]および少なくとも1つの非G1P[8]遺伝子型、例えばG2P[4]ロタウイルス遺伝子型の両方により引き起こされる疾患を予防するために使用されうることを確認した。
【0026】
したがって、本発明は、1つのロタウイルス型(ここで、該型は、好適には、ロタウイルスVP4タンパク質(P型)の配列に基づいて定められる)由来の弱毒化ロタウイルス集団の、別のロタウイルス型のロタウイルス感染に関連した疾患の予防における使用に関する。
【0027】
本発明はまた、1つのロタウイルス株(特定のG型およびP型の両方により定められる)(ここで、該株は、好適には、ロタウイルスVP4タンパク質(P型)およびVP7タンパク質(G型)の両方の配列に基づいて定められる)由来の弱毒化ロタウイルス集団の、別のロタウイルス株のロタウイルス感染に関連した疾患の予防における使用に関する。特に、本発明は、Gx型およびPy型のいずれでもないロタウイルス株により引き起こされるロタウイルス感染に対する免疫応答を誘導するための医薬の製造における、GxPy型由来の弱毒化ロタウイルス株の使用に関する。換言すれば、本発明のロタウイルス株は、G型およびP型のいずれとも異なる別のロタウイルスの感染により引き起こされる疾患を予防するために使用されうる。
【0028】
特に、特許を受けようとする本発明のすべての態様において、該免疫応答は防御免疫応答である。好適には、該ロタウイルス集団は、交差防御効果をもたらすのに適したECACC受託番号99081301のVP4および/またはVP7ウイルスタンパク質を含む。
【0029】
本明細書の全体にわたり、交差防御は、あるロタウイルス型によりもたらされる、異なる型のロタウイルスにより引き起こされる感染に対する防御を意味する。交差防御は同型または異型でありうる。同型交差防御は、G型またはP型のいずれかの株に対する、ロタウイルス株によりもたらされる防御である。例えば、G1P[8]株は非G1の[P8]株(例えば、G2P[8]型)に対する交差防御をもたらす。同型交差防御のもう1つの例は、G1型を介して、G1非P[8]株(例えば、G1P[4])に対して、G1P[8]株によりもたらされるものである。異型交差防御は、異なるP型およびG型のロタウイルス株に対して、ロタウイルス株によりもたらされる防御、例えば、非G1非P[8]株(例えば、G2P[4])に対してG1P[8]によりもたらされる防御(G型およびP型の両方を介してもたらされる異型防御)である。
【0030】
好適には、弱毒化ロタウイルス血清型はG1であり、G1ロタウイルス血清型ならびに非G1ロタウイルス血清型、例えばG2、G3、G4、G5、G6、G7、G8、G9、G10、G11、G12、G13およびG14からなる群より選択される血清型により引き起こされる疾患に対する交差防御をもたらしうる。
【0031】
特に、G1弱毒化ロタウイルス集団[例えば、ブダペスト条約の条項に従いEuropean Collection of Animal Cell Cultures (ECACC), Vaccine Research and Production Laboratory, Public Health Laboratory Service, Centre for Applied Microbiology and Research, Porton Down, Salisbury, Wiltshire, SP4 0JG, United Kingdomに受託番号99081301として1999年8月13日に寄託されているもの]は、G1ならびにG2、G3、G4、G5、G6、G7、G8、G9、G10、G11、G12、G13およびG14からなる群より選択される少なくとも1つ、好適には少なくとも2つ、好適には少なくとも3つ、好適には少なくとも4つの非G1ロタウイルス血清型により引き起こされる疾患を予防するために使用されうる。したがって、G1型由来ではないロタウイルス株により引き起こされるロタウイルス感染に対する免疫応答を誘導するためのワクチン組成物の製造における、G1型由来の弱毒化ロタウイルス株の使用を提供する。特定の態様においては、免疫応答は、少なくとも1つ、少なくとも2つまたはそれ以上のロタウイルス非G1血清型に対して、典型的には、G2、G3、G4、G5、G6、G7、G8、G9、G10、G11、G12、G13およびG14からなる群より選択される任意の血清型に対して誘導される。典型的には、同型(G1)防御に加えて、G2、G3、G4およびG9の非G1型の少なくとも1つ、好適には少なくとも2つ、好適には少なくとも3つに対して免疫応答が誘導される。好適には、該組成物はG1ロタウイルス株を含み、G1型およびG2型に対する免疫応答を誘導するために使用される。
【0032】
好適には、ロタウイルス弱毒化株型はP[8]であり、P[8]ロタウイルス型ならびに非P[8]ロタウイルス型、例えばP[1]、P[2]、P[3]、P[4]、P[5]、P[6]、P[7]、P[9]、P[10]、P[11]、P[12]、P[14]およびP[19]からなる群より選択される型により引き起こされる疾患に対する交差防御をもたらしうる。
【0033】
特に、P[8]弱毒化ロタウイルス集団[例えば、ブダペスト条約の条項に従いEuropean Collection of Animal Cell Cultures (ECACC), Vaccine Research and Production Laboratory, Public Health Laboratory Service, Centre for Applied Microbiology and Research, Porton Down, Salisbury, Wiltshire, SP4 0JG, United Kingdomに受託番号99081301として1999年8月13日に寄託されているもの]は、P[8]ならびにP[1]、P[2]、P[3]、P[4]、P[5]、P[6]、P[7]、P[9]、P[10]、P[11]、P[12]、P[14]およびP[19]からなる群より選択される非P[8]ロタウイルス型の少なくとも1つにより引き起こされる疾患を予防するために使用されうる。特に、好適には、P[8]ロタウイルス型に加えて、少なくともP[4]型に対して免疫応答が誘導される。
【0034】
好適には、本発明の使用のためのワクチン組成物はG1P[8]ロタウイルス株を含み、G2P[4]ロタウイルス株に対する免疫応答を誘導しうる。
【0035】
特定の態様においては、本発明は、ロタウイルス株に対する免疫応答を誘導する方法であって、GxPy型の弱毒化ロタウイルス株を含んでなる組成物を被験体に投与するステップを含み、該組成物はGx型およびPy型のいずれでもないロタウイルス株に対する免疫応答を生起するものである、上記方法に関する。
【0036】
特に、本発明は、ロタウイルスG1血清型ワクチンを含んでなる組成物を被験体に投与するステップを含む、ロタウイルスG1および非G1血清型に対する免疫応答を誘導する方法に関する。好適には、非G1ロタウイルス血清型は、G2、G3、G4、G5、G6、G7、G8、G9、G10、G11、G12、G13およびG14からなる群より選択される。好適には、該組成物はG1ロタウイルス株を含み、G1およびG2型に対する免疫応答を誘導するために使用される。
【0037】
好適には、本発明の使用のためのワクチン組成物はG1P[8]ロタウイルス株を含み、G2P[4]ロタウイルス株に対する免疫応答を誘導しうる。
【0038】
好適には、該ワクチン組成物中のロタウイルス集団はG1P1A(すなわち、現在の命名法によればG1P[8])株特異性のものである。適切には、該ロタウイルス集団は、免疫応答を惹起し典型的には交差防御効果をもたらすのに適したECACC受託番号99081301からのVP4および/またはVP7ウイルスタンパク質を含む。好適には、本発明は、前記の方法または使用におけるG1P[8]ロタウイルス株に関する。典型的には、使用するロタウイルスワクチンはECACC受託番号99081301であり、あるいは該寄託物から誘導される。
【0039】
特定の態様においては、該ワクチンは、ワクチン接種されていない個体(プラセボ群)と比較した場合にワクチン接種された個体において胃腸炎に対する交差防御免疫応答または交差防御を誘導する。好適には、該ワクチンはロタウイルス感染症状、例えば下痢または胃腸炎に対する交差防御をもたらす。例えば、胃腸炎は、水様性または正常より軟らかい1日3回以上の排便により特徴づけられる下痢または強制的(forceful)嘔吐および検便試料におけるロタウイルスの検出と定義されうる。
【0040】
当業者に理解されるとおり、疾患の重症度、およびワクチン接種された個体またはワクチン接種された集団における防御免疫応答を誘導するワクチン接種の効力は、いくつかの手段により評価されうる。防御免疫は、ロタウイルス感染に関連した臨床症状の重症度の軽減をもたらすまたはロタウイルス感染に対する感受性の軽減をもたらす免疫応答を意味する。ワクチン接種されていない個体またはワクチン接種された個体における疾患の重症度は、公開されている評価系、例えば20ポイントVesikari尺度または該方法の若干の修正形態(Ruuska Tら, Scand. J. Infect. Dis. 1990, 22, 259-267)に従い、あるいはロタウイルス感染の特異的症状を報告し評価する任意の他の好適な系(例えば、Clark HF, Borian EF, Bell LM. Protective effect of WC3 vaccine against rotavirus diarrhea in infants during a predominantly serotype 1 rotavirus season. J Infect Dis. 1988:570-86に報告されている方法)に従い評価されうる。Vesikari法によれば、重症RVGEは通常、11以上のスコアとして定義される。
【0041】
防御はワクチン効力(VE)により集団または群のレベルで評価されうる。ワクチン効力は、以下の式を用いて計算される:
VE(%)=1−RR=1−(ARV/ARU)、ここで、
RR=相対リスク=ARV/ARU
ARU=(プラセボ群から推定される)ワクチン接種されていない集団における疾患罹患率=少なくとも1つのRV GEエピソードを報告した被験体の数/対照群における被験体の総数
ARV=ワクチン接種された群における疾患罹患率=少なくとも1つのRV GEエピソードを報告した被験体の数/HRVワクチン群における被験体の総数。
【0042】
したがって、本発明の1つの態様においては、GxPy型の弱毒化ロタウイルス株を含んでなる前記組成物が、Gx型およびPy型のいずれでもないロタウイルス株の感染により引き起こされる、ロタウイルス誘発性胃腸炎、好適には重症ロタウイルス誘発性胃腸炎に対する防御および/または交差免疫防御を誘導する、前記の方法または使用を提供する。特定の実施形態においては、前記防御免疫応答は、任意の好適な評価系により測定した場合に、該疾患の重症度を軽減しうる、またはロタウイルス誘発性疾患を排除しうる。
【0043】
さらにもう1つの実施形態においては、該疾患、例えば胃腸炎の重症度を軽減するための、またはロタウイルス誘発性疾患を排除するための方法または本発明の組成物の使用であって、該疾患重症度または疾患が前記の任意の好適な評価系により記録される、上記方法または組成物を提供する。
【0044】
特定の実施形態においては、該組成物は、ワクチン接種された個体集団において、該組成物中に存在する弱毒化ロタウイルスの型とは異なる型のロタウイルスの感染により引き起こされる下痢に対して60%までの防御力、好適には81%までの防御力を示す。もう1つの特定の実施形態においては、該組成物は、ワクチン接種された個体集団において、Gx型およびPy型のいずれでもないロタウイルス株により引き起こされる下痢に対して少なくとも40%の防御力、好適には少なくとも45%の防御力、好適には少なくとも50%の防御力、好適には少なくとも60%の防御力を示す。特定の態様においては、該組成物は、Gx型およびPy型のいずれでもないロタウイルス株により引き起こされる下痢に対して40%〜80%の防御力、好適には50%〜70%の防御力を示す。特定の態様においては、該組成物は、G2P[4]型のロタウイルス株の感染により引き起こされる胃腸炎に対して前記の防御のレベルを与えるG1P[8]ロタウイルス株を含む。
【0045】
好適には、Gx型およびPy型のいずれでもないロタウイルス株に感染したワクチン接種された個体集団において達成される、下痢および/または胃腸炎および/または重症胃腸炎に対する防御力は、10〜90%、好適には20〜80%、好適には40%〜80%、好適には45%〜75%の防御力を示す。典型的には、重症胃腸炎に対する防御のレベルは少なくとも40%、好適には少なくとも50%である。
【0046】
特定の態様においては、該組成物は、ワクチン接種された個体集団において、G2P[4]血清型を有するロタウイルスの感染により引き起こされた重症胃腸炎に対してVesikariスコアによる測定で40%〜80%の防御力、好適には45%〜75%の防御力を示すG1P[8]ロタウイルス株を含む。
【0047】
好適には、該ワクチンは2用量または3用量レジメンで投与される。
【0048】
交差防御を得るために使用されるロタウイルスワクチンは以下の好適な特徴を有する。
【0049】
1つの態様においては、本発明の使用のための組成物のロタウイルスは、以下のもの:開始コドンから始めて788位のアデニン塩基(A)、802位のアデニン塩基(A)および501位のチミン塩基(T)のうち少なくとも1つを含むヌクレオチド配列を含むVP4遺伝子を有する。
【0050】
もう1つの態様においては、本発明の使用のための組成物のロタウイルスは、以下のもの:開始コドンから始めて605位のチミン(T)、897位のアデニン(A)または897位のグアニン(G)のうち少なくとも1つを含むヌクレオチド配列を含むVP7遺伝子を有する。好適には、897位にアデニン(A)が存在する。
【0051】
特定の態様においては、本発明の使用のための組成物のロタウイルスは、開始コドンから始めて788位および802位のアデニン(A)ならびに501位のチミン(T)をVP4遺伝子配列中に有する。
【0052】
もう1つの特定の態様においては、本発明の使用のための組成物のロタウイルスは、開始コドンから始めて605位のチミン(T)および897位のアデニン/グアニン(A/G)をVP7配列中に有する。最も好適には、VP7配列中の897位にアデニン(A)が存在する。
【0053】
特に好適な態様においては、本発明の使用のための組成物のロタウイルスは、開始コドンから始めて788位および802位のアデニン(A)ならびに501位のチミン(T)をVP4遺伝子配列中に有し、開始コドンから始めて605位のチミン(T)および897位のアデニン/グアニン(A/G)をVP7配列中に有する。好適には、VP7配列中の897位にアデニン(A)が存在する。
【0054】
もう1つの態様においては、本発明の使用のための組成物のロタウイルスは、図1A(配列番号1)もしくは図1B(配列番号2)に示す、VP4タンパク質をコードするヌクレオチド配列、および/または図2A(配列番号3)もしくは図2B(配列番号4)に示す、VP7タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。もう1つの実施形態においては、本発明の使用のための組成物のロタウイルスは、図3(配列番号5)に記載のVP4タンパク質および/または図4(配列番号6)に記載のVP7タンパク質を含む。もう1つの実施形態においては、本発明の使用のための該ロタウイルス集団は更に、図5(配列番号7)に記載されている、もしくは図6(配列番号8)に記載のヌクレオチド配列によりコードされるNSP4タンパク質、および/または図7(配列番号9)に記載されている、もしくは図8(配列番号10)に記載のヌクレオチド配列によりコードされるVP6タンパク質を含む。
【0055】
本発明における使用のための好適なロタウイルス集団は、
ロタウイルス集団を好適な細胞タイプで継代し、
場合によっては、
a)限界希釈または
b)個々のプラークの単離
のいずれかのステップを用いて均一な培養物を選択し、
VP4および/またはVP7遺伝子配列の適当な領域の配列決定を行うことにより実質的に単一の変異体の存在を調べることを含む方法により入手可能である。
【0056】
好適には、該ロタウイルス集団は、前記のとおりP43(RIX4414)、P33またはP26株から誘導される。
【0057】
該配列決定は、好適には、スロットブロットハイブリダイゼーションまたはプラークハイブリダイゼーションのような定量的または半定量的ハイブリダイゼーション技術により行われうる。
【0058】
本発明の方法により得られたクローン化ウイルス集団は、好適な細胞株で更に継代することにより増幅されうる。
【0059】
前記の方法におけるロタウイルス集団を継代するための好適な細胞タイプにはアフリカミドリザル腎(AGMK)細胞が含まれ、これは樹立細胞株または初代AGMK細胞でありうる。好適なAGMK細胞株には、例えばVero(ATCC CCL−81)、DBS−FRhL−2(ATCC CL−160)、BSC−1(ECACC 85011422)およびCV−1(ATCC CCL−70)が含まれる。MA−104(アカゲザル)およびMRC−5(ヒト−ATCC CCL−171)細胞株も含まれる。Vero細胞は増幅目的に特に好適である。Vero細胞での継代は高いウイルス収率を与える。
【0060】
該方法から得られたウイルス集団内に単一の変異体が存在するかどうかを調べるための、およびその単一の変異体の性質を決定するための技術は、当技術分野で公知の標準的な配列決定またはハイブリダイゼーション法を含み、これらは後記で説明されている。
【0061】
特定の態様においては、本発明の方法は、好適なロタウイルス、特に89−12株またはその継代誘導体の特性を有するロタウイルスを使用して行われる。
【0062】
特に好適な単一の変異体の集団はP43であり、これは、一連のエンドポイント希釈クローニング工程、およびそれに続く、増幅のためのVero細胞上での該クローン化体の継代により、P33(好適な細胞型上の培養内で33回継代された分離ヒトロタウイルス)から得られた。
【0063】
P43集団は、ブダペスト条約の条項に従いEuropean Collection of Animal Cell Cultures (ECACC), Vaccine Research and Production Laboratory, Public Health Laboratory Service, Centre for Applied Microbiology and Research, Porton Down, Salisbury, Wiltshire, SP4 0JG, United Kingdomに受託番号99081301として1999年8月13日に寄託されており、WO01/12797に開示されている。
【0064】
この示されている公的な入手可能性は、ヒトロタウイルスP43を入手する最も簡便な方法であるが、本発明の教示を考慮して、これらのまたは他の方法により、同様の機能的に実質的に同一のロタウイルスが製造されうる。そのような機能的に実質的に同一のロタウイルスは本発明のヒトロタウイルスP43と生物学的に同等であるとみなされ、したがって、本発明の全体的な範囲に含まれる。したがって、本発明は、本明細書に記載のP43変異体の特性を有するロタウイルス集団を包含すると理解されるであろう。
【0065】
また、本発明は、寄託されているP43 ECACC 99081301を更なる操作に付すことにより(例えば、該生ウイルスを使用する更なる継代、クローニングまたは他の方法によりそれを増殖させることにより、あるいは遺伝子操作技術または再集合技術を含むいずれかの方法でP43を修飾することにより)それから誘導された物質を包含すると理解されるであろう。そのような工程および技術は当技術分野でよく知られている。
【0066】
本発明に含まれる寄託されたP43から誘導される物質にはタンパク質および遺伝物質が含まれる。特に関心が持たれるのは、P43の少なくとも1つの抗原または少なくとも1つのセグメントを含む再集合ロタウイルス、例えば、11ゲノムセグメントの1つまたは1つの一部分がP43のゲノムセグメントまたはその一部分により置換されているロタウイルスのビルレント株を含む再集合体である。特に、NSP4をコードするセグメントまたは部分セグメントがP43セグメントまたは部分セグメントであるロタウイルス再集合体は有用な特性を有しうる。再集合ロタウイルスおよびそれを製造するための技術はよく知られている(Foster, R. H.およびWagstaff, A. J. Tetravalent Rotavirus Vaccine, a review. ADIS drug evaluation, BioDrugs, Gev, 9 (2), 155-178, 1998)。
【0067】
特に関心が持たれる物質はP43の後代およびP43の免疫学的に活性な誘導体である。免疫学的に活性な誘導体は、宿主動物内に注入された場合にロタウイルスに対して反応性である免疫応答を惹起しうる、P43ウイルスからまたはP43ウイルスを使用して得られた物質、特に該ウイルスの抗原を意味する。
【0068】
ロタウイルスを適当な細胞株、例えばVero細胞に馴化させる際には、潜在的混入物(例えば、存在する可能性がある、そうでなければ混入を引き起こす外来性物質)を除去するために該ウイルスを処理することが必要かもしれない。エーテル感受性外来性ウイルスの場合、これは後記のエーテル処理により行われうる。本発明はまた、弱毒化生ロタウイルスまたはそれを使用して製剤化されるワクチンを得るための全体的操作における随意的ステップとして、そのようなエーテル処理を含めることに関する。
【0069】
本発明の交差防御性ロタウイルスは、ロタウイルス感染または疾患に対する追加的な防御または交差防御を得るために、他のロタウイルス株と組合わされうる。
【0070】
本発明はまた、好適なアジュバントまたは製薬用担体と混合された、前記で定義されているとおりの交差防御をもたらしうる生弱毒化ロタウイルスワクチンを提供する。
【0071】
1つの実施形態においては、本発明の使用のためのロタウイルスワクチンは、単一のロタウイルス株、例えばG1P[8]を含有する単価ロタウイルスワクチンである。
【0072】
本発明は、生弱毒化ロタウイルスがヒトロタウイルスであり腸重積症を引き起こさない生ロタウイルスワクチンの提供において特に有利である。
【0073】
本発明の弱毒化ロタウイルス株と共に使用するための好適な製薬用担体には、特に乳児への経口投与に好適であるものとして当技術分野で公知の製薬用担体が含まれる。そのような担体には、限定的なものではないが、炭水化物、多価アルコール、アミノ酸、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、タルク、酸化チタン、水酸化鉄、ステアリン酸マグネシウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微晶質セルロース、ゼラチン、植物性ペプトン、キサンタン、カラギーナン、アラビアゴム、β−シクロデキストリンが含まれる。
【0074】
本発明はまた、ロタウイルスワクチンの製造方法であって、例えば、該ウイルスを好適な安定化剤の存在下で凍結乾燥させ、または本発明のウイルスを好適なアジュバントまたは製薬用担体と混合することによる上記製造方法を提供する。
【0075】
脂質に基づくビヒクル、例えばビロゾームもしくはリポソーム中、または水中油型エマルション中、または担体粒子を使用して、本発明のウイルスを製剤化するのが有利かもしれない。その代わりに、またはそれに加えて、免疫刺激物質(例えば、経口ワクチン用の当技術分野で公知のもの)を該製剤中に含有させることが可能である。そのような免疫刺激物質には、細菌毒素、特に完全毒素(全分子)の形態のコレラ毒素(CT)またはB鎖のみの形態のコレラ毒素(CTB)、および大腸菌(E. coli)の易熱性エンテロトキシン(LT)が含まれる。天然LTと比べて活性化形態へ変換されにくい突然変異LT(mLT)がWO96/06627、WO93/13202およびUS5,182,109に記載されている。
【0076】
有利に含有されうる他の免疫刺激物質として、サポニン誘導体、例えばQS21およびモノホスホリルリピドA、特に3−デ−O−アセチル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)が挙げられる。経口アジュバントとしての精製サポニンがWO98/56415に記載されている。サポニンおよびモノホスホリルリピドAは、別々に、または組合せて(例えば、WO94/00153)使用することが可能であり、他の物質と共にアジュバント系中で製剤化することが可能である。3D−MPLは、Ribi Immunochem, Montanaにより製造されたよく知られたアジュバントであり、その製造はGB2122204に記載されている。
【0077】
経口免疫用のビヒクルおよびアジュバントに関する全般的な考察がVaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach, PowellおよびNewman編, Plenum Press, New York, 1995に見出されうる。
【0078】
本発明はまた、ヒト被験体、特に乳児にワクチン接種するための方法であって、それを要する被験体に本発明のワクチン組成物の有効量を投与することによる上記方法を提供する。好適には、該生弱毒化ワクチンは経口投与される。
【0079】
特定の態様においては、本発明の弱毒化ロタウイルス株は、胃内の酸による該ワクチンの不活性化を最小限に抑えるための制酸剤と共に製剤化される。好適な制酸成分には、無機制酸剤、例えば水酸化アルミニウムAl(OH)および水酸化マグネシウムMg(OH)が含まれる。本発明での使用に好適な商業的に入手可能な制酸剤には、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムを含有するMylanta(商標)が含まれる。これらは水に不溶性であり、懸濁状態で投与される。
【0080】
水酸化アルミニウムは、制酸効果だけでなくアジュバント化効果をももたらしうるため、本発明のワクチン組成物の特に好適な成分である。
【0081】
有機制酸剤、例えば有機酸カルボン酸塩も、本発明のワクチン中の制酸剤として使用するのに好適である。本発明のワクチン組成物中の好適な制酸剤には、有機酸カルボン酸塩、特にクエン酸の塩、例えばクエン酸ナトリウムまたはクエン酸カリウムが含まれる。
【0082】
本発明のワクチン組成物中で使用されうる特に好適な制酸剤は、不溶性無菌塩である炭酸カルシウム(CaCO)である。炭酸カルシウムはロタウイルスと会合することが可能であり、ロタウイルスの活性は炭酸カルシウムとの会合中に維持される。
【0083】
最終工程中の炭酸カルシウムの沈降を防ぐために、好適には該製剤中に粘性物質を存在させる。
【0084】
使用されうる考えられうる粘性物質には擬似塑性賦形剤(pseudoplastic excipient)が含まれる。擬似塑性溶液は、攪拌下の粘度より高い粘度を静置時に有する溶液と定義される。このタイプの賦形剤は、天然ポリマー、例えばアラビアゴム、アドラガンテ(adragante)ガム、アルギナート、ペクチン、または半合成ポリマー、例えばカルボキシメチルセルロース(Tyloses C(登録商標))、メチルセルロース(Methocels A(登録商標)、Viscotrans MC(登録商標)、Tylose MH(登録商標)およびMB(登録商標))、ヒドロキシプロピルセルロース(Klucels(登録商標))およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocels E(登録商標)およびK(登録商標)、Viscontrans MPHC(登録商標))である。一般に、それらの擬似塑性賦形剤はチキソトロピー物質と共に使用される。使用されうる他の粘性物質としては、低い流動能を有する擬似塑性賦形剤が挙げられる。十分な濃度のそれらのポリマーは、静置時に低い流動能を有する高粘度溶液を与える構造流体配置(structural fluid arrangement)を与える。流動および移動を可能にするためには、ある量のエネルギーが該系に与えられる必要がある。流体溶液を得るために構造流体配置を一時的に破壊するためには、外的エネルギー(攪拌)が必要とされる。そのようなポリマーの具体例として、Carbopols(登録商標)およびキサンタンガムが挙げられる。
【0085】
チキソトロピー賦形剤は静置時にはゲル構造体になるが、攪拌下では流体溶液を形成する。チキソトロピー賦形剤の具体例としては、Veegum(登録商標)(マグネシウム−アルミニウムシリカート)およびAvicel RC(登録商標)(約89%微晶質セルロースおよび11%カルボキシメチルセルロースNa)が挙げられる。
【0086】
本発明のワクチン組成物は、好適には、キサンタンガムまたはデンプンから選ばれる粘性物質を含む。
【0087】
したがって、本発明のワクチン組成物は、典型的には、炭酸カルシウムとキサンタンガムとの組合せと共に製剤化される。
【0088】
本発明において使用される組成物の他の成分には、好適には、糖、例えばスクロースおよび/またはラクトースが含まれる。
【0089】
本発明のワクチン組成物は、例えば香味剤(特に経口ワクチン用)および静菌剤などの追加的成分を含有しうる。
【0090】
本発明のワクチン組成物の種々の形態が想定される。
【0091】
1つの好適な実施形態においては、該ワクチンは液体製剤として投与される。好適には、該液体製剤は、少なくとも以下の2つの成分:
i)ウイルス成分、
ii)液体成分
から、投与前に再調製(reconstitute;還元)される。
【0092】
この実施形態においては、該ウイルス成分および該液体成分は通常、別々の入れ物内に存在し、これは簡便には、単一の容器の別々の区画、または最終ワクチン組成物が空気にさらされることなく再調製されるよう連結されうる別々の容器でありうる。
【0093】
還元前には、該ウイルスは乾燥形態または液体形態でありうる。好適には、該ウイルス成分は凍結乾燥される。凍結乾燥ウイルスは水溶液中のウイルスより安定である。凍結乾燥ウイルスは、好適には、液体ワクチン製剤を得るために液体制酸組成物を使用して再調製されうる。あるいは、凍結乾燥ウイルスは、水または水溶液で再調製されうる。この場合、凍結乾燥ウイルスは、好適には、制酸成分を含有する。
【0094】
好適には、該ワクチン製剤は、1つの区画または容器内に、炭酸カルシウムおよびキサンタンガムと共に製剤化されたウイルス成分を含み、これは、第2の区画または容器内に存在する水または水溶液で再調製される。
【0095】
もう1つの実施形態においては、該ワクチン組成物は、固体製剤、好適には、口内に配置された場合の即座の溶解に好適な凍結乾燥ケークである。凍結乾燥製剤は、簡便には、医薬ブリスター包装内の錠剤の形態で提供されうる。
【0096】
もう1つの態様においては、本発明は経口投与用の急速溶解性錠剤の形態のロタウイルスワクチンを提供する。
【0097】
もう1つの態様においては、本発明は、生弱毒化ロタウイルス株、特にヒトロタウイルス株を含む組成物を提供し、ここで、該組成物は、口内に配置された場合に即座に溶解しうる凍結乾燥固体である。
【0098】
好適には、本発明の急速溶解性錠剤は被験体の口内で、未溶解錠剤の嚥下を防ぐのに十分な程度に急速に溶解する。このアプローチは小児用ロタウイルスワクチンに特に有利である。
【0099】
好適には、該ウイルスは、無機制酸剤、炭酸カルシウム、および粘性物質、例えばキサンタンガムと共に製剤化された生弱毒化ヒトロタウイルスである。
【0100】
本発明のもう1つの態様は、ウイルス成分が、炭酸カルシウムおよびキサンタンガムと共に製剤化されたいずれかのロタウイルス株である、凍結乾燥製剤を提供することである。
【0101】
本発明のワクチンは、典型的なワクチン被接種者において有意な有害な副作用を伴うことなくロタウイルス感染に対する有効な防御をもたらすための好適な量の生ウイルスを使用して、公知技術により製剤化され投与される。生ウイルスの好適な量は通常は10〜10フォーカス形成単位(ffu)/用量である。ワクチンの典型的な用量は10〜10ffu/用量を含み、ある期間にわたって数回の用量で投与され、例えば、2用量が2ヶ月間隔で投与されうる。しかし、特に発展途上国においては、2用量を超える用量、例えば3または4用量レジメンで投与するのが有利かもしれない。投与間の間隔は2ヶ月より長いまたは短いことが可能である。単一用量(1回量)または複数用量レジメンのための生ウイルスの最適量および投与の最適な時機は、被験体における抗体価の観察および他の応答を含む標準的な研究により確認されうる。
【0102】
本発明のワクチンは、他の疾患、例えばポリオウイルスに対する防御のための他の好適な生ウイルスをも含みうる。あるいは、経口投与のための他の好適な生ウイルスワクチンは、本発明のロタウイルスワクチン組成物と異なる用量で、しかしそれと同じ機会に投与されうる。
【0103】
Vaccine (1998)論文P33物質でワクチン接種された12人の4〜6月齢の乳児からの血清をP33、P38、P43および89−12C2の中和に関して試験した。
【0104】
試験された血清のすべての中和力価の範囲はP33、P38およびP43に関して類似している。統計解析は全3種のウイルスに対する全体的な中和力価における有意差を示していない。このことは、P33、P38およびP43のコンホメーション中和エピトープおよび非コンホメーション中和エピトープがP33ワクチン接種乳児の抗P33血清により同等に良く認識されることを示唆している。この観察は、このin vitroアッセイにおいて示された中和エピトープがP33、P38およびP43の間で変わらなかったことを間接的に示唆している。
【0105】
しかし、P89−12C2の中和力価の範囲はP33、P38およびP43と有意に異なる。この観察は、P33、P38およびP43のコンホメーション中和エピトープおよび非コンホメーション中和エピトープがP33ワクチン接種乳児の抗P33血清により同等に良くは認識されないことを示唆している。この観察は、このin vitroアッセイにおいて示された中和エピトープが89−12C2とP33、P38およびP43との間で変わっていたことを間接的に示唆している。
【0106】
本発明の特に好適な実施形態には以下のものが含まれる。
【0107】
1.ワクチン組成物の製造における、P型由来の弱毒化ロタウイルス株の使用であって、該ワクチン組成物が、該ワクチン組成物のものとは異なるP型のロタウイルスに対する免疫応答の誘導のためのものである、上記使用。
【0108】
2.P[8]ではないロタウイルスに対する免疫応答の誘導のためのワクチン組成物の製造における、P[8]型由来の弱毒化ロタウイルス株の使用。
【0109】
3.G1P[8]ではないロタウイルスに対する免疫応答の誘導のためのワクチン組成物の製造における、G1P[8]型由来の弱毒化ロタウイルス株の使用。
【0110】
4.免疫応答が更に、G1P[8]型によるロタウイルス感染に対して誘導される、前記1〜3のいずれか1つに記載の使用。
【0111】
5.免疫応答が2以上のロタウイルス血清型に対して誘導され、これらの血清型がGまたはP型に基づいて定められる、前記1〜4のいずれか1つに記載の使用。
【0112】
6.ワクチン株の血清型がG1血清型であり、非G1血清型が、G2、G3、G4、G5、G6、G7、G8、G10、G11、G12、G13およびG14からなる群より選択される、前記1〜5のいずれか1つに記載の使用。
【0113】
7.免疫応答がG1型およびG2型の両方に対して誘導される、前記6に記載の使用。
【0114】
8.ワクチン株の型がP[8]型であり、非P[8]型が、P[1]、P[2]、P[3]、P[4]、P[5]、P[6]、P[7]、P[9]およびP[11]型からなる群より選択される、前記1〜5のいずれか1つに記載の使用。
【0115】
9.免疫応答がP[8]型およびP[4]型の両方に対して誘導される、前記8に記載の使用。
【0116】
10.前記組成物が、以下のもの:開始コドンから始めて788位のアデニン塩基(A)、802位のアデニン塩基(A)および501位のチミン塩基(T)のうち少なくとも1つをヌクレオチド配列中に含むVP4遺伝子を有するロタウイルスを含んでなる、前記1〜9のいずれか1つに記載の使用。
【0117】
11.VP4遺伝子が、開始コドンから始めて788位および802位のアデニン塩基(A)ならびに501位のチミン塩基(T)を含むヌクレオチド配列を含む、前記10に記載の使用。
【0118】
12.前記組成物が、以下のもの:開始コドンから始めて605位のチミン(T)、897位のアデニン(A)および897位のグアニン(G)のうち少なくとも1つをヌクレオチド配列中に含むVP7遺伝子を有するロタウイルスを含んでなる、前記11に記載の使用。
【0119】
13.VP7遺伝子が、開始コドンから始めて605位のチミン(T)および897位のアデニン(A)またはグアニン(G)を含むヌクレオチド配列を含む、前記12に記載の使用。
【0120】
14.該組成物が、開始コドンから始めて788位および802位のアデニン(A)ならびに501位のチミン(T)をヌクレオチド配列中に含むVP4遺伝子を有するロタウイルスを含んでなり、VP7遺伝子が、開始コドンから始めて605位のチミン(T)および897位のアデニンをヌクレオチド配列中に含む、前記1〜13のいずれか1つに記載の使用。
【0121】
15.該組成物が、該組成物中に存在する弱毒化ロタウイルスのG型および/またはG型に基づいて定められるものとは異なる型のロタウイルスによる感染により引き起こされる胃腸炎および/または下痢を軽減しまたはそれらに対して防御する、前記1〜14のいずれか1つに記載の使用。
【0122】
16.前記組成物が、ワクチン接種された個体集団において、G型および/またはP型に基づいて定められる少なくとも2つの株のロタウイルスの感染により引き起こされる重症胃腸炎に対して少なくとも40%の防御力を示すG1P[8]ロタウイルス株を含んでなり、これらの型が、該組成物中に存在する弱毒化ロタウイルスのG1P[8]型とは異なる、前記15に記載の使用。
【0123】
17.重症胃腸炎が、少なくとも3つ、少なくとも4つの非G1血清型のロタウイルスの感染により引き起こされる、前記16に記載の使用。
【0124】
18.非G1血清型がG2、G3、G4およびG9血清型のいずれかである、前記17に記載の使用。
【0125】
19.重症胃腸炎が少なくとも2つの非P[8]型のロタウイルスの感染により引き起こされる、前記18に記載の使用。
【0126】
20.重症胃腸炎がP[4]型のロタウイルスの感染により引き起こされる、前記9に記載の使用。
【0127】
21.前記ロタウイルス株が、ECACC受託番号99081301であるか、またはECACC受託番号99081301から取得可能もしくは誘導可能である、前記1〜20のいずれか1つに記載の使用。
【0128】
23.前記ワクチンを、2用量レジメンで投与する、前記1〜20のいずれか1つに記載の使用。
【0129】
もう1つの態様においては、本発明はまた、ロタウイルス株によるロタウイルス感染に対する免疫応答を誘導する方法であって、異なる株由来の弱毒化ロタウイルスワクチンを含んでなる組成物を被験体に投与するステップを含む方法に関する。特に、本発明は、1つのP型のロタウイルスに対する免疫応答を誘導する、および/または1つP型のロタウイルス感染に関連した疾患を予防するための方法であって、異なるP型の弱毒化ロタウイルス集団を、それを要する患者に投与するステップを含む方法に関する。
【0130】
本発明の特定の態様においては、ロタウイルスP[8]型ワクチンを含んでなる組成物を被験体に投与するステップを含んでなる、P[8]ロタウイルス型ならびにP[1]、P[2]、P[3]、P[4]、P[5]、P[6]、P[7]、P[9]、P[11]、P[12]、P[14]およびP[19]型、好適にはP[4]ロタウイルス型からなる群より選択される非P[8]型の少なくとも1つに対する免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0131】
本発明のもう1つの態様においては、(i)図5(配列番号7)に示す単離された非構造タンパク質4(NSP4)タンパク質配列またはその免疫原性断片、(ii)該NSP4ポリペプチドまたはその免疫原性断片をコードする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチド配列、(iii)図6(配列番号8)に示す核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチド配列を提供する。
【0132】
本発明の更にもう1つの態様においては、(i)図7(配列番号9)に示す単離されたロタウイルスタンパク質6(VP6)タンパク質配列またはその免疫原性断片、(ii)該VP6ポリペプチドまたはその免疫原性断片をコードする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチド配列、(iii)図8(配列番号10)に示す核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチド配列を提供する。
【0133】
免疫原性断片は、本発明においては、(単独でまたは担体結合ハプテンとして)有効量で投与された場合にロタウイルス感染に対する防御免疫応答を惹起する断片と定義されうる。
【0134】
以下の非限定的な実施例は本発明を例示するものである。
【実施例1】
【0135】
継代26(P26)の株89−12が変異体の混合物であることの証明
種々の継代ロットからのVP4およびVP7遺伝子の配列決定
継代P26(初代AGMK細胞)、継代P33((初代に対立するものとしての)樹立AGMK細胞株)、継代P41および継代P43からのVP4およびVP7遺伝子の配列決定を行った。全RNA抽出物を逆転写し、PCRにより増幅した(1チューブ/1工程)。
【0136】
プライマーRota5bisおよびRota29bisはVP4遺伝子全体を増幅し、プライマーRota1およびRota2bisはVP7遺伝子全体を増幅した。該PCR物質は種々のプライマー(表1を参照されたい)を使用して配列決定されている。
【0137】
継代P26配列は継代P33配列と、VP4においては3塩基(開始コドンから501、788および802bpの位置)、VP7においては3塩基(開始コドンから108、605および897bp)異なっていた。
【0138】
VP4およびVP7の継代P26配列スキャンは、突然変異点において、バックグラウンドとしての継代P33配列の存在を示している。したがって、継代P26は少なくとも2つの変異体の混合物であることが認められうる。
【0139】
継代P33配列スキャンはVP4においては均一であり、VP7においては不均一であるらしい(表2を参照されたい)。
【0140】
継代P38(継代33から誘導)はVero細胞で5回継代され、継代P33(AGMK細胞株)と同じ組合せのVP4およびVP7配列を示した。したがって、P33とP38との間で集団において大きな変化は存在しなかった。
【表1】

【表2】

【0141】
表2において太字で示されている塩基はVP4およびVP7における特異的配列変異の部位である。
【表3】

【0142】
表3.1において、特定の位置において二者択一の塩基が存在する場合、それらの2つのうちの最初の塩基は、主要集団に存在する塩基を表し、2番目の塩基は、副次的集団に存在する塩基である。主要および副次的変異体集団は配列決定におけるシグナルの強度により判定される。
【表4】

【0143】
表3.2は、変異体間のヌクレオチドの相違により生じたアミノ酸の変化を示す。
【表5】

【0144】
スロットブロットハイブリダイゼーション
AGMK細胞での継代P26〜P33の間の集団における変化を更に、スロットブロットハイブリダイゼーションにより確認した。RT/PCRにより作製されたVP4およびVP7遺伝子断片を、各変異体(表3.1および表3.2を参照されたい)に特異的なオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズさせた。Rota16、Rota35およびRota36とはハイブリダイズしたがRota15とはハイブリダイズしなかったP26とは対照的に、P33物質のVP4 PCR断片は、788位および802位において、Rota16のみとハイブリダイズし、Rota15およびRota35およびRota36のいずれともハイブリダイズしなかった。これらの結果はP26における少なくとも3つの変異体の存在を確証するものであった(表4を参照されたい)。
【0145】
P33物質のVP7 PCR断片に関しては、897位はRota41およびRota42とハイブリダイズした。これらの結果はP33物質における少なくとも2つの変異体の存在を確証するものであった。
【実施例2】
【0146】
P43クローンの単離および特徴づけ
P33成分を均一ウイルス集団として単離するために、Vero細胞上でのP33/AGMKの3回のエンドポイント希釈を行い、得られたウイルスを使用してVero細胞に感染させた。
【0147】
以下の2つの基準を用いて陽性ウェルを選択した:該ウェルにおいて検出された最大数のフォーカスにより示された増殖、および古典的な方法で行った場合に該プレート上で最もよく単離された陽性ウェル。96ウェルマイクロタイタープレートにおける3回のエンド希釈継代の後、10個の陽性ウェルをVero細胞で連続的に増殖させ、それらの収量に関して評価した。収量に基づき、3個のクローンを製造用ロットの継代レベルへに進めた。ポリクローナル抗体による免疫認識は、それらの3つのクローン間およびそれらのクローンとP33との間の両方で類似していることが示された。それらのクローンの均一性をスロットブロットハイブリダイゼーションにより評価した。単一クローンの最終選択は収量および配列に基づくものであった。
【0148】
選択されたクローンをVero細胞での連続継代により増幅させて、マスターシード、実施用シード、そして最終的な製造用ロットを得た。
【0149】
これらの選択されたクローンを、PCR増幅物質のVP4およびVP7の特異的スロットブロットハイブリダイゼーション(均一性)ならびにVP4およびVP7の配列決定(同一性)により種々の継代レベルで遺伝的に特徴づけした。P43物質のVP4およびVP7遺伝子の配列を、それぞれ図1および図2に示す。それらはP41と同じである。
【0150】
選択されたクローンの均一性を、P26/初代AGMKの配列決定中に特定された各変異体に関して、VP4および/またはVP7領域におけるヌクレオチドの変化を識別するオリゴヌクレオチドプローブを使用する選択的ハイブリダイゼーションにより評価した(表4を参照されたい)。
【0151】
VP4断片はRota16にはハイブリダイズしたが、Rota15、Rota35およびRota36のいずれにもハイブリダイズしなかった。VP7断片はRota41にはハイブリダイズしたが、Rota42にはハイブリダイズしなかった。
【0152】
これらの結果は、P43が均一集団であることを証明した。
【実施例3】
【0153】
潜在的外来ウイルスの除去
P33(AGMK増殖体)にエーテルを20%の最終濃度まで1時間加えた。ついで窒素を35分間通気させてエーテルを除去した。P33シードの力価に対する影響は観察されなかった。
【実施例4】
【0154】
生弱毒化ワクチンの製剤化
前記の製造用ロットを、以下の方法により、乳児への経口投与用に製剤化する。
【0155】
1.凍結乾燥ウイルス
ウイルス用量を調製するためには標準的な技術を用いる。凍結精製ウイルスバルクを解凍し、適当な培地組成物、この場合はダルベッコ変法イーグル培地で、所望の標準的なウイルス濃度、この場合は106.2ffu/mlまで希釈する。ついで、希釈されたウイルスを凍結乾燥安定剤(スクロース4%、デキストラン8%、ソルビトール6%、アミノ酸4%)で、目標ウイルス力価、この場合は105.6ffu/用量まで、更に希釈する。安定化ウイルス組成物の0.5mlアリコートを3mlバイアルへ無菌的に移す。ついで各バイアルをゴム栓で部分的に閉じ、該サンプルを真空下で凍結乾燥させ、ついで該バイアルを完全に閉じ、該栓を所定の位置に維持するために該バイアルの周囲に適所にアルミニウムキャップをクリンプ(crimp)する。
【0156】
使用する際には、以下の制酸再調製剤の1つを使用して該ウイルスを再調製する。
【0157】
(a)クエン酸塩再調製剤
クエン酸ナトリウムを水に溶解し、濾過滅菌し、544mg クエン酸Na.2HO/1.5ml用量の濃度で1.5mlの量で再調製容器内に無菌的に移す。該再調製容器は、例えば3mlバイアルまたは4mlバイアルまたは2mlシリンジ、または経口投与用の軟プラスチック圧搾可能カプセルでありうる。無菌条件下で無菌成分を維持する代わりに、最終容器を高圧滅菌することが可能である。
【0158】
(b)Al(OH)再調製剤
無菌水酸化アルミニウム懸濁液(Mylanta−商標)を無菌水中で無菌的に希釈し、48mgのAl(OH)をそれぞれ含む2mlの量で再調製容器(例えば、2mlシリンジまたは軟プラスチック圧搾可能カプセル)へ無菌的に移す。無菌条件下で無菌成分を使用する代替手段は、該水酸化アルミニウム懸濁液に(好ましくは希釈段階で)γ線照射することである。
【0159】
該懸濁液の沈降を防ぐための標準的な成分を含有させる。そのような標準的な成分には、例えば、ステアリン酸マグネシウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微晶質セルロースおよびシリコーンポリマーが含まれる。静菌剤、例えばブチルパラベン、プロピルパラベン、または食品中で使用される他の標準的な静菌剤、および香味剤も含有させることが可能である。
【0160】
2.液体製剤中のAl(OH)の存在下の凍結乾燥ウイルス
ウイルス用量を調製するためには標準的な技術を用いる。凍結精製ウイルスバルクを解凍し、適当な培地組成物、この場合はダルベッコ変法イーグル培地で、所望の標準的なウイルス濃度、この場合は106.2ffu/mlまで希釈する。水酸化アルミニウム懸濁液を加えて48mg/用量の最終量とし、該ウイルス組成物を凍結乾燥安定剤(スクロース4%、デキストラン8%、ソルビトール6%、アミノ酸4%)で、目標ウイルス力価、この場合は105.6ffu/用量まで希釈する。安定化ウイルス組成物の0.5mlアリコートを3mlバイアルへ無菌的に移す。ついで、第1部に記載されているとおりに、凍結乾燥、および該バイアルの密封を行う。
【0161】
3.ブリスター形態のためのAl(OH)の存在下の凍結乾燥ウイルス
ウイルス用量を調製するためには標準的な技術を用いる。凍結精製ウイルスバルクを解凍し、適当な培地組成物、この場合はダルベッコ変法イーグル培地で、所望の標準的なウイルス濃度、この場合は106.2ffu/mlまで希釈する。水酸化アルミニウム懸濁液を加えて48mg/用量の最終量とし、該ウイルス組成物を、スクロース、デキストランまたはアミノ酸4%、またはゼラチン、または植物性ペプトン、またはキサンタンでありうる凍結乾燥安定剤で、105.6ffu/用量の目標ウイルス力価まで希釈する。0.5mlまたは好ましくはそれ未満の用量をブリスター腔へ移すために、無菌的充填操作を用いる。該組成物を凍結乾燥し、加熱密封(ヒートシール)によりブリスター腔を密封する。
【0162】
場合によっては、水酸化アルミニウム懸濁液の沈降を防ぐために標準的な成分を含有させる。そのような標準的な成分には、例えば、ステアリン酸マグネシウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微晶質セルロースおよびシリコーンポリマーが含まれる。香味剤を含有させることも可能である。
【実施例5】
【0163】
種々の製剤のロタウイルスウイルス力価
5.1:ラクトースおよびスクロースに基づく製剤の間の比較
【表6】

【0164】
前記表に示すとおり、P43ロタウイルスをスクロースまたはラクトースと共に製剤化した。凍結乾燥前のウイルス力価は、凍結乾燥工程に付されていない完全製剤液(スクロース、デキストラン、ソルビトール、アミノ酸を含有する)中のウイルス力価である。
【0165】
良好な結果は、凍結乾燥工程において0.5 log未満の減少および「37℃で1週間」(促進安定性試験)において0.5 log未満の減少が達成されたものである。ウイルス力価測定の精度は約+または−0.2 logである。
【0166】
結果は、ラクトースの代わりにスクロースが使用可能であることを示している。
【0167】
5.2:アルギニンの効果およびマルチトールによるソルビトールの置換の効果
【表7】

【0168】
結果は、アルギニン(これは凍結乾燥中の該ウイルスの安定性を改善し、胃の酸性を相殺するために塩基性環境をも付与することが公知である)の添加がウイルス力価を維持することを示している。
【0169】
ソルビトールは凍結乾燥ケークのガラス転移温度を著しく減少させる傾向にある。前記で示されているとおり、これは、ソルビトールの代わりにマンニトールを使用することにより克服可能であり、ウイルス力価は尚も維持される。
【0170】
5.3:種々の製剤組成物
この実験は、多数の製剤が可能であることを示すものである。
【表8】

【0171】
5.4:ロタウイルスとAl(OH)制酸剤との会合
【表9】

【0172】
制酸剤としてAl(OH)を使用する。これは、ロタウイルスが不溶性無機塩(Al(OH))と会合することを示している。なぜなら、それはAl(OH)と共に遠心分離されたからである(上清におけるウイルス活性の低下)。
【0173】
5.5:ウイルス力価測定前のクエン酸ナトリウムによる制酸剤Al(OH)の溶解
【表10】

【0174】
ロタウイルスがAl(OH)と会合している場合、(Al(OH)を含む)全体を凍結乾燥することが可能である。凍結乾燥後、Al(OH)をクエン酸ナトリウムに溶解させることによりロタウイルスを回収することが可能である。この工程はロタウイルスを損なわず、この溶解工程後にもその活性が維持される。
【0175】
5.6:Al(OH)−ロタウイルス会合体の解離後のロタウイルスの感染力
(担体の溶解による)ウイルス遊離のメカニズムはin vivoで非常によく働きうる。実際、pH6未満で水酸化アルミニウムは完全に溶解性になり、したがってロタウイルスは胃内で遊離するであろう。
【0176】
Al(OH) + 3H −−−→ Al+++(水溶性) + 3H
胃内では、Al+++イオンは吸収されない(J.J. Powell, R.JugdaohsinghおよびR.P.H. Thompson, The regulation of mineral adsorption in the gastrointestinal track, Proceedings of the Nutrition Society (1999), 58, 147-153)。腸内では、pHの上昇のため、アルミニウムの不溶性形態(Al(OH)またはAlPO)が析出し、天然様態により排出される。新たに生じたAl(OH)(またはAlPO)析出物が遊離ロタウイルスと再会合可能かどうかは不明である。これはAl(OH)−ロタウイルス会合体自体の感染力の問題を提議するものである。
【0177】
他のメカニズムによるAl(OH)−ロタウイルス会合体からのロタウイルスの遊離も考えられうる。例えば、リシンはAl(OH)へのウイルス吸着を妨げる。ボラート、スルファート、カルボナートおよびホスファートのような他のアニオンは水酸化アルミニウムに特異的に吸着されることが知られている。したがって、理論的には、(吸着部位に関する競合により)Al(OH)−ロタウイルス会合体からロタウイルスを脱離させることが可能なはずである。
【0178】

【0179】
したがって、ロタウイルスはロタウイルス−Al(OH)会合体から遊離可能であり、遊離したロタウイルスは活性なままである。この遊離は、(胃内のHClまたはin vitroでのクエン酸Naにより)Al(OH)を溶解させることにより、あるいは塩基性アミノ酸(リシン)によりロタウイルスを脱離させることにより行われうる。
【0180】
5.7:Al(OH)−ロタウイルス会合体の感染力
凍結乾燥ロタウイルスの単一用量を水で再調製し、2つの部分に分割した。参照体とみなされる第1の部分には追加容量の水を加えた。第2の部分には、0.240mlの水に懸濁させた24mgのAl(OH)を加えた(前臨床ウイルス力価測定)。
【0181】

【0182】
Al(OH)が存在する場合、ロタウイルスは活性であり、ウイルス力価測定値は参照サンプルと比べて高かった。
【0183】
該凍結乾燥用量を分割することなく、12mgのAl(OH)または24mgのAl(OH)を加えることにより、この実験を繰返した。
【0184】
この場合、参照サンプルは、クエン酸−重炭酸バッファーで再調製されたものであった。したがって、この場合も、ウイルス力価は、Al(OH)の存在下で、より高い。
【0185】

【0186】
前記の実施例と同様に、ロタウイルスはAl(OH)粒子と会合する。なぜなら、該ウイルスは遠心分離により除去されうるからである。DRVC003A46は凍結乾燥製剤化ロタウイルス(スクロース:2%、デキストラン:4%、ソルビトール:3%、アミノ酸:2%)である。
【0187】

【0188】
SDSAA=スクロース2%、デキストラン4%、ソルビトール3%、アミノ酸2%。
【0189】
上清に関して行ったウイルス力価測定によれば、ロタウイルスを吸着させるのに要するAl(OH)の量は少ないようである(1つの凍結乾燥用量5.7 logから開始し、ウイルス力価測定の規模を拡大させる)。
【表11】

【0190】
Al(OH)にロタウイルスを吸着させるのに要する時間は短いようである。1用量の凍結乾燥ロタウイルスを24mgのAl(OH)の存在下で再調製し、0分、15分、60分および24時間後に遠心分離した。「凝集塊(Culot)」は、ウイルス力価測定前にSDSAAに再懸濁させた。
【表12】

【0191】
5.8:制酸剤としてのCaCOの使用
該ワクチン中のアルミニウムの使用を避けるために、制酸剤Al(OH)の代わりに別の不溶性無機塩であるCaCO(炭酸カルシウム)を使用した。CaCOで観察される現象は、Al(OH)に関して記載されているものに対応する:
・該無機塩とのロタウイルスの会合;
・該無機塩と会合した場合のロタウイルス活性の維持;
・酸による該無機塩基の溶解による該会合体からのロタウイルスの遊離が可能であること;
・該制酸剤とロタウイルスとの同時凍結乾燥が可能であること。
【0192】
CaCOとロタウイルスとの会合
最初の試験では、凍結乾燥ロタウイルス(ウイルス力価5.7)を水中のCaCOの懸濁液(1.5ml中、50mg)で再調製し、ついで遠心分離し、該上清のウイルス力価をペレットと比較した。
【0193】

【0194】
これは、該ロタウイルスの90%以上がCaCOと会合していることを示している。
【0195】
また、該ウイルスが会合した場合、力価測定を行い元のウイルス量を回収することが可能であった。また、ウイルス力価は、CaCOの非存在下で得られたものより若干高い。
【0196】
CaCOとロタウイルスとの会合体の量

【0197】
凍結乾燥ロタウイルスを水(1.5ml)中のCaCO(10mg、50mg、100mg)の懸濁液で再調製し、ついで遠心分離し、上清のウイルス力価を凝集塊(culot)と比較した。
【表13】

【0198】
したがって、明らかに、より多くのCaCOおよびより多くのウイルスが会合し、上清中で見出されるものは、より少ない。しかし、全用量が完全に回収されるわけではない(少なくとも合計5.3、またはより早く得た場合には更には5.8と予想される;前記を参照されたい)。
【0199】
ベービー・ロゼット・ライス制酸剤力価測定中のロタウイルスのCaCO防御
10用量の凍結乾燥ロタウイルス(DRVC003A46)および50mgのCaCOを使用して、2つのタイプのベービー・ロゼット・ライス(baby Rossett-Rice)力価測定を行った。
【0200】
古典的なロゼット・ライス力価測定においては、制酸剤をロタウイルスと混合し、HClをこの培地内に注ぐ。
【0201】
「逆」ベービー・ロゼット・ライスにおいては、状況は逆であり、(in vivoで生じるのと同様に)制酸剤をHClプール内に滴下する。
【表14】

【0202】
これより、このin vitro実験においては、炭酸カルシウムはロタウイルスの約20%をHClの存在から防御することが可能であるが、水酸化アルミニウムはそれが不可能である。
【0203】
5.9:CaCO制酸剤の存在下のロタウイルスの凍結乾燥
【表15】

【0204】
これは「すべてが一緒になった形態(all in one)」である(すなわち、ロタウイルスおよび制酸剤(CaCO)が同一バイアル内で一緒に凍結乾燥される)。充填工程中のCaCOの沈降を防ぐためには、粘性物質が必要である。そのような粘性物質の具体例には、キサンタンガムおよびデンプンが含まれる。ロタウイルス活性はキサンタンガムおよびデンプンの存在下においても維持される。
【0205】
5.10 口内に配置された場合の急速崩壊のための凍結乾燥錠剤
以下の製剤は、「lyoc」概念(すなわち、口内での凍結乾燥ケークの急速溶解)を示すものである。
【表16】

【0206】
「lyoc」概念においては、(凍結乾燥ケークの急速溶解特性を維持しつつ)キサンタンおよびデンプンの両方を使用することが可能である。
【実施例6】
【0207】
ロタウイルスワクチン組成物用の制酸剤としての炭酸カルシウムの使用
水中のCaCOの懸濁液をロタウイルス用の制酸剤として使用する場合、炭酸カルシウム粒子が、水中に配置された場合に急速に沈降するという問題が生じる。なぜなら、粉末密度値が2.6に近く、平均粒径が30μmであるからである。この沈降は、
1.周囲の媒体の密度を増加させる、
2.周囲の媒体の粘度を増加させる、
3.粒径を減少させる、
4.粒子をお互いから離れた状態で維持する
ことにより遅くすることが可能である。
【0208】
6.1:周囲の媒体の密度を増加させる
CaCO−水懸濁液(シリンジ内に配置されている場合)を凍結乾燥ケーク(スクロース2%、デキストラン4%、ソルビトール3%、アミノ酸2%を含有するもの)上に配置すると、周囲の媒体の密度は増加するが、CaCO沈降の速度は該CaCO−水懸濁液とそれほど変わらない。
【0209】
6.2 周囲の媒体の粘度を増加させる:擬似塑性賦形剤(Pseudoplastic excipient)
擬似塑性溶液は、攪拌下の粘度より高い粘度を静置時に有する溶液と定義される。このタイプの通常の賦形剤としては以下のものが挙げられる。
【0210】
天然ポリマー、例えば
アラビアゴム、
アドラガンテ(adragante)ガム、
寒天、
アルギナート、
ペクチン。
【0211】
半合成ポリマー、例えば
カルボキシメチルセルロース(Tyloses C(登録商標))、
メチルセルロース(Methocels A(登録商標)、Viscotrans MC(登録商標)、Tylose MH(登録商標)およびMB(登録商標))、
ヒドロキシプロピルセルロース(Klucels(登録商標))、
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocels E(登録商標)およびK(登録商標)、Viscontrans MPHC(登録商標))。
【0212】
一般に、それらの擬似塑性賦形剤はチキソトロピー物質と共に使用される。
【0213】
低い流動能を有する擬似塑性賦形剤
十分な濃度のそれらのポリマーは、静置時に低い流動能を有する高粘度溶液を与える構造流体配置(structural fluid arrangement)を与える。流動および移動を可能にするためには、ある量のエネルギーが該系に与えられる必要がある。流体溶液を得るために構造流体配置を一時的に破壊するためには、外的エネルギー(攪拌)が必要とされる。そのようなポリマーの具体例として、Carbopols(登録商標)およびキサンタンガムが挙げられる。
【0214】
チキソトロピー賦形剤
これらのチキソトロピー賦形剤では、静置時にはゲル構造体が得られるが、攪拌下では流体溶液が得られる。
【0215】
チキソトロピー賦形剤の具体例としては、Veegum(登録商標)(マグネシウム−アルミニウムシリカート)およびAvicel RC(登録商標)(約89%微晶質セルロースおよび11%カルボキシメチルセルロースNa)が挙げられる。
【0216】
6.3 粒径を減少させる
CaCOの粒径の減少は該化合物の制酸能の低下を招いた。
【0217】
6.4 粒子をお互いから離れた状態で維持する
これはVeegum(登録商標)およびAvicel(登録商標)の場合に該当し、この場合、凝集を防ぐために、CaCO粒子より小さい(約1μm)不溶性粒子がCaCO粒子間に配置される。
【実施例7】
【0218】
製造設計
以下のスキームは、考えられうる製造設計の具体例を示す。
【0219】
7.1 シリンジ内のCaCO
ロタウイルスの臨床バッチが凍結乾燥バイアル内に既に入っている場合、シリンジ内に入れる再調製液中に該制酸剤を入れることが可能である。
【0220】

この製品形態では、充填工程だけでなく該製品の全体的な貯蔵寿命中(少なくとも2年間)においてもCaCOの沈降が抑制されていなければならない。
【0221】
7.2 凍結乾燥バイアル内のCaCO

7.3 ブリスターにおける凍結乾燥
この場合、ロタウイルス、CaCOおよびキサンタンガムをブリスター内で直接的に一緒に凍結乾燥させる。
【0222】

【実施例8】
【0223】
異なるロタウイルス株の凍結乾燥
【表17】

【0224】
株DS−1、PおよびVA70は、“Fields” Raven press 1990, second edition, p. 1361に、それぞれ血清型G2、G3およびG4に関するヒトロタウイルス参考株として記載されている。
【0225】
この実験においては、種々のロタウイルス株を凍結乾燥した。すべての場合に、凍結乾燥中にウイルス力価が維持されており、かつ、促進安定性(37℃で1週間)が示されている。
【実施例9】
【0226】
成人におけるロタウイルスワクチンの1回の経口投与のフェーズI安全性試験
18〜45歳の健康な成人におけるP43ワクチンの106.0ffuの単一経口用量の安全性および反応生成性(reactogenicity)を評価するために、フェーズI試験を行った。該臨床試験は無作為化二重盲検法であった。それはプラセボ対照法であり、自己充足的(self-contained)なものであった。この研究はベルギーの1つの単一施設において行われた。
【0227】
9.1.研究集団
合計33人の被験者(被験体)(11人はプラセボ群、22人はワクチン群)を登録した。全員が該研究を完了した。すべてのボランティアは白人であった。ワクチン接種時の彼らの平均年齢は35.3歳であり、18〜44歳の範囲であった。該試験は1月に開始され、ちょうど1ヵ月にわたって実施された。
【0228】
9.2.材料
ワクチン
Good Manufacturing Practicesに従い、P43ワクチンの臨床ロットを調製し、精製し、製剤化し、凍結乾燥した。該ロットはQuality ControlおよびQuality Assuranceによりリリース(release)された。ワクチンの各バイアルは以下の成分を含有していた。
【0229】
有効成分:
P43株 最小で105.8ffu。
【0230】
賦形剤、安定剤:
スクロース 9mg
デキストラン 18mg
ソルビトール 13.5mg
アミノ酸 9mg。
【0231】
プラセボ
プラセボのバイアルを調製し、リリース(release)した。プラセボの各バイアルは以下の成分を含有していた。
【0232】
賦形剤、安定剤:
スクロース 9mg
デキストラン 18mg
ソルビトール 13.5mg
アミノ酸 9mg。
【0233】
希釈剤
ワクチンおよびプラセボを再調製するための希釈剤として、注射用水を使用した。
【0234】
9.3.投与
ワクチンまたはプラセボの投与の約10〜15分前に、両方の群の被験者に10mlのMylanta(登録商標)を経口投与した。Mylanta(登録商標)は、登録された制酸剤である。該制酸剤は胃内のpHを上昇させ、ロタウイルスが胃を通過する際の該ロタウイルスの不活性化を防ぐ。ワクチンを調製するために、105.8ffu/バイアルを含有する凍結乾燥P43の2本のバイアルを、希釈剤である1.5mlの注射用水で再調製した。これにより106.1ffu/用量のウイルス力価理論値が得られた。再調製されたワクチンを即座に単一経口用量として投与した。プラセボを調製するために、凍結乾燥プラセボの2本のバイアルを1.5mlの注射用水で再調製し、単一用量として経口投与した。
【0235】
9.4.安全性および反応生成性
安全性および反応生成性の以下の基準を適用した。請願される(solicited)全身症状は発熱、下痢、嘔吐、悪心、腹痛および食欲不振であった。それらを投与後の8日間にわたって記録した。非請願(unsolicited)症状は、投与後の30日間にわたって記録した。重篤な有害事象は全研究期間を通じて記録した。下痢サンプルは、投与後の8日間にわたって集められることになっていた。
【0236】
結果は以下のとおりであった。それぞれの観察期間中に請願症状、非請願症状および重篤な有害事象のいずれも報告されなかった。下痢のケースは報告されなかった。
【0237】
9.5.結論
SB Biologicals P43ワクチンは、18〜44歳の健康な成人ボランティアに106.1ffuの用量の単一用量として二重盲検法で経口投与された場合に、プラセボとの比較において安全なものであった。
【実施例10】
【0238】
G1および非G1(G9)ロタウイルスによる胃腸炎の予防における、RIX 4414を含有するヒト単価ロタウイルスワクチンの2用量の効力
10.1.方法
乳児への免疫のためのG1P[8]ヒト株89−12由来のワクチン(RIX4414ヒトロタウイルス株)の防御効力を評価するために、無作為化二重盲検プラセボ対照フェーズII試験をラテンアメリカにおいて行った。RIX4414ワクチンは、ECACC受託番号99081301(WO01/12797)として寄託されている弱毒化G1P[8]ヒト株をロタウイルス成分として含む。
【0239】
ワクチン組成(表17)
炭酸カルシウムバッファーを含有する予め充填された1本のシリンジの全内容物を凍結乾燥産物(ワクチンまたはプラセボ)のバイアル内に注入することにより、投与用のHRVワクチンまたはプラセボを調製した。該ワクチン/プラセボを再懸濁させるために該バイアルを振とうした。該再懸濁産物の全容量を同一シリンジ内に回収し、針を捨て、該懸濁産物を即座に単一経口用量(約1.0ml)として投与した。
【表18】

【0240】
ワクチン投与
健康な乳児(493人)に2用量のRIX4414−ロタウイルスワクチン(濃度:105.8ffu/用量)、またはプラセボ(504人)を、2および4月齢で、DTPw−HBVおよびHibワクチンと共に投与した。3用量のOPV(経口ポリオウイルスワクチン)は、研究ワクチンから2週間の間隔で投与され、すなわち、研究ワクチンの各用量投与の2週間前から2週間後までの期間中には投与されないこととされた。2つの他の群には2用量のRIX4414−ロタウイルスワクチンを、異なるウイルス濃度(104.7ffuおよび105.2ffu)で投与した。下痢サンプルをロタウイルスの存在に関して試験し(ELISA)、陽性サンプルにおいて血清型を決定した(RT−PCR)。第2用量投与の2週間後以降に報告された下痢エピソードを効力分析において考慮した。20ポイント尺度(RuuskaおよびVesikari, 1990)を用いて重症度を決定した。この研究において各下痢エピソードの重症度を評価するために用いた20ポイントスコア系を以下の表18に示す。11以上のスコアが重症疾患と定義された。
【表19】

【0241】
10.2.結果
前記の群において効力の中間分析を行った。単離された血清型は主としてG1およびG9であり、ほぼ均等に分布していた。プラセボ群における全侵襲率は、6ヶ月の観察期間中、G1に関する4.8%からG9に関する3.6%まで様々であった。105.8ffuの2用量のRIX4414ロタウイルスワクチンは、G1により引き起こされる全ての型の下痢に対しては83%の効力[95%CI:50.4〜95.7]で、重症胃腸炎に対しては92.1%の効力[95%CI:47〜99.8]で防御した。下痢がG9により引き起こされた場合には、全ての型の下痢に対する防御力は60.2%[95%CI:0.2〜86.0]、重症胃腸炎に対しては80.8%[95%CI:33.0〜96.4]であった。これらの効力エンドポイント(G1およびG9に関して任意および重症)のそれぞれに関して、HRV群においては、プラセボ群と比較して下痢エピソードにおける統計的に有意な減少が認められた(p<0.05;両側フィッシャー正確確率検定)。
【0242】
その他の2つのワクチン群において得られた結果(異なるロタウイルス濃度)は、本実施例において報告されている結果と一致しており、最終分析において記載されている(実施例11)。G2、G3およびG4に関する効力データも分析した。G2、G3およびG4交差防御に関しては、報告されているケースが少なすぎたため、この研究からの結論は導き出されなかった。しかし、より重要なサンプルサイズに関して、G2、G3およびG4に対する効力のデータが最終分析において記載されている(実施例11)。
【0243】
10.3.結論
これらの結果は、G1株に対する若い乳児の防御およびG9株に対する交差防御における2用量の単価HRVワクチン、RIX4414ロタウイルスワクチンの効力を強く支持するものである。
【実施例11】
【0244】
3つの異なるウイルス濃度で投与されるRIX4414株を含有する2用量のヒト単価ロタウイルスワクチンの、G1および非G1(G2、G3、G4、G9)ロタウイルスによる胃腸炎の予防における効力
11.1.方法
乳児への免疫のためのG1P[8]ヒト株89−12由来のワクチンの防御効力および入院に対する効力を評価するために、無作為化二重盲検プラセボ対照フェーズII試験をラテンアメリカにおいて行った。具体的には、使用したワクチンはRIX4414ロタウイルスワクチンと称され、ECACC受託番号99081301として寄託されている弱毒化G1ヒト株をロタウイルス成分として含む。
【0245】
健康な乳児に2用量のRIX4414ロタウイルスワクチンを3つの異なるウイルス濃度で投与した。効力分析のためのコホートは2〜4月齢の1846人の被験者(104.7ffu HRVワクチン群においては468人の被験者、105.2ffu HRVワクチン群においては460人の被験者、105.8ffu HRVワクチン群においては464人の被験者、およびプラセボ群においては454人の被験者)からなり、DTPw−HBVおよびHibワクチンと共に投与を行った。3用量のOPVは、研究ワクチンから2週間の間隔で投与され、すなわち、研究ワクチンの各用量投与の2週間前から2週間後までの期間中には投与されないこととされた。下痢サンプルをロタウイルスの存在に関して試験し(ELISA)、陽性サンプルにおいて血清型を決定した(RT−PCR)。第2用量投与の2週間後から被験者が1歳になるまでに報告された下痢エピソードを、効力分析において考慮した。20ポイント尺度(RuuskaおよびVesikari, 1990)を用いて重症度を決定した。11以上のスコアが重症疾患と定義された(20ポイントスコア系に関しては実施例10を参照されたい)。
【0246】
11.2.結果
実施例10に記載のデータの最終分析である結果を以下の表に示す。ワクチン群の乳児は、プラセボ群の小児より有意に少ないロタウイルス胃腸炎エピソードを示した(p<0.001;両側フィッシャー正確確率検定)(表19)。投与量に応じて、重症ロタウイルス胃腸炎に対する防御効力(防御力)は85.6%(95%CI:63.0%〜95.6%)、いずれかのロタウイルス胃腸炎に対しては70%(95%CI、45.7%〜84.4%)に達した(表20)。これらの効力エンドポイントのそれぞれに関して、HRV群においては、プラセボ群と比較して下痢エピソードにおける統計的に有意な減少が認められた(p<0.001;両側フィッシャー正確確率検定)。複数のロタウイルス血清型(G1、G2、G3、G4およびG9)が胃腸炎便から特定され(ELISAおよびRT−PCR)、非G1血清型に対するワクチン効力の計算をも可能にした。表21から認められうるとおり、特に、非G1血清型(G1、G2、G3、G4およびG9)に関して、投与量に応じて、重症ロタウイルス胃腸炎に対する効力は82.7%(95%CI:40.3%〜96.8%)に達し、これは、G1に基づく単価G1P1A P[8]ヒトロタウイルスワクチンが異型(すなわち、非G1および非P[8])株に対する交差防御を惹起するという見解の証明を与えるものであった。
【表20】

【表21】

【表22】

【0247】
11.3.結論
これらの結果は、G1株により引き起こされる任意および重症のロタウイルス胃腸炎に対する若い乳児の防御ならびに他のRV G型、すなわちG2、G3、G4およびG9に対する広範な交差防御における2用量のRIX4414含有単価HRVワクチンの効力を強く支持するものである。
【実施例12】
【0248】
2用量のヒト弱毒化ロタウイルスワクチンRIX4414ワクチンはラテンアメリカおよび欧州において異型防御を示す
RIX4414株を含有する2用量の経口生弱毒化G1P[8]ヒトロタウイルス(RV)ワクチンの効力をフィンランドおよびラテンアメリカの乳児においてフェーズII/III臨床試験において分析した。RIX4414ロタウイルスワクチンは、ECACC受託番号99081301として寄託されている弱毒化G1ヒト株をロタウイルス成分として含む。
【0249】
12.1.方法
実施例12の結果の一部は実施例10および11に既に示されている。フィンランドにおける1つのフェーズII研究およびラテンアメリカ(ブラジル、メキシコおよびベネズエラ)における1つのフェーズII研究(実施例10および11)ならびに11カ国のラテンアメリカ諸国における1つのフェーズIII研究(実施例13)から、同じ方法および効力基準を用いて、データをプール(pool)した。2および4月齢で2用量のRIX4414ワクチンまたはプラセボでワクチン接種された合計20081人の健康な乳児(効力に関するコホート)を、Vesikari(Ruuska Tら, Scand. J. Infect. Dis. 1990, 22, 259-267)重症度尺度で11以上のスコアを示す重症胃腸炎(GE)に関して、1歳まで追跡調査した。GEサンプルをロタウイルスに関して(ELISAにより)試験し、RT−PCRにより型決定した。
【0250】
前記の3つの研究に関してメタ分析を行った。重症RV GE(11以上のVesikari重症度スコアとして定義される)に関するプールされた効力を、第2用量投与の2週間後から1歳までについて計算した(Mantel−Haenszel近似を用いた研究効果に関して補正)。
【0251】
12.2.結果
効力に関するコホートにおいて、ワクチン群では、11以上のVesikariスコアを有する、5つのG2P[4]型重症ロタウイルスGEエピソードが検出され、プラセボ群では13のエピソードが検出された。G2P[4]型に対するワクチン効力は67.2%(95%CI:14.8;87.1)であった。これは、同型株(G1P[8]、G3P[8]およびG4P[8])に対する防御に加えて、RIX4414ワクチンが、異型非P[8]非G1であるG2P[4]株により引き起こされる重症ロタウイルスGEに対しても防御することを示している。
【0252】
それらの種々の研究を通じて得られた型特異的効力を以下に示す(表22)。
【表23】

【0253】
全部で3つの試験において僅か3つのG4ケース(ワクチン被投与群において1つおよびプラセボ被投与群において2つ)が認められたに過ぎなかった。
【0254】
12.3.結論
この分析は、RIX4414ワクチンが、同型G1ロタウイルス株(これは、該ワクチンに抗原的に類似している2つの外層カプシドタンパク質(VP4およびVP7)および1つの内層カプシドタンパク質(VP6)を有する)に対して高レベルの防御をもたらすことに加えて、異なるG型(例えばG3、G9)、異なるP型(例えばP[4])または異なるG型およびP型の両方(G2P[4]に対する効力により示されるとおり)のいずれかを有する他の株に対しても高度に防御性であることを示している。
【実施例13】
【0255】
2用量のヒト弱毒化ロタウイルスワクチンRIX4414が異型防御を示すことを示すメタ分析
より多くのデータがシンガポールおよび欧州の研究から入手可能になるにつれて、実施例12に記載の研究に加えてこれらの研究を含めるための追加的なメタ分析を行った。
【0256】
13.1.方法
3つのフェーズII研究(フィンランドおよびラテンアメリカおよびシンガポール)および2つのフェーズIII研究(ラテンアメリカおよび欧州)を該メタ分析に含めた。0、1〜2ヶ月のスケジュールに従い、第1用量投与時に6〜14週齢の健康な乳児に2経口用量を投与した。すべての研究において、重症RVGEは20ポイントVesikari尺度において11以上のスコアと定義された。下痢サンプルをRVの存在に関してELISAにより分析し、RT−PCRに基づく方法により型決定した。フェーズIIIラテンアメリカ研究においては重症RV GEのみが記録されたため、3つのフェーズII研究およびフェーズIII欧州研究のみにおいて、いずれかのRV GEに対する効力を評価した。
【0257】
研究層化正確ポアソン率比(exact Poisson rate ratio stratified by study)(Proc StatXact4 for SAS Users, 1999, cytel software corporation, exact Confidence Interval for common relative risk, p298)を用いて、VEおよびその95%CIはプラセボに対して率(rate)1のRVGEと評価された。
【0258】
13.2.結果
2用量のRIX4414またはプラセボでワクチン接種された合計8221人の乳児において、RIX4414群(N=5783)ではいずれかのG2P[4]RVGEの4エピソードが検出され、プラセボ群(N=2438)では9エピソードが検出された。これはG2P[4]株によるいずれかの重症度のRVGEに対する81.0%(95%CI:31.6;95.8)のVEを示している。
【0259】
2用量のRIX4414またはプラセボでワクチン接種された合計26088人の健康な乳児において、RIX4414群(N=14792)ではG2P[4]型による重症RVGEの6エピソードが検出され、プラセボ群(N=11296)では15エピソードが検出された。これはG2P[4]株による重症RVGEに対する71.4%(95%CI:20.1;91.1)のVEを示している。結果を表23に示す。
【表24】

【0260】
13.3.結論:
G2P[4]RV型に対するワクチン効力に関するこのメタ分析は、G2P[4]型による任意のRV GEに対する81.0%(95%CI:31.6%;95.8%)のワクチン効力、およびG2P[4]型による重症RV GEに対する71.4%(95%CI:20.1%;91.1%)のワクチン効力を示している。
【実施例14】
【0261】
複数国のフェーズIII試験におけるヒト弱毒化ロタウイルスワクチンRotarix(商標)の効力
14.1.方法
11ヶ国のラテンアメリカ諸国からの20169人の健康な乳児に、約2および4月齢の時点で、2経口用量のHRVワクチン(10159)またはプラセボ(10010)を投与した。糞便試料をロタウイルス(RV)に関してELISAにより試験し、適切なプライマーおよび型特異的プローブを使用してRT−PCRにより型決定した。重症胃腸炎エピソードの捕捉(capture)に関する臨床ケースの定義は、病院、クリニックまたは監督された地方医療機関のような医療施設におけるWHOプランB(経口再水化(rehydration)療法)またはWHOプランC(静脈内再水化療法)と同等の一晩の入院および/または再水化療法を要する嘔吐を伴うまたは伴わない下痢(24時間以内に3回以上の正常より軟らかいまたは水様性の排便)のエピソードであった(http://www.who.int/child-adolescent-health/New_Publications/CHILDHEALTH/textrev4.htm)。疾患の重症度は、20ポイントVesikari尺度を用いて等級分けされ、重症RVGEは11以上のスコアと定義された。Vesikariスコアは修飾された。脱水はeCRFにおいて記録されなかったため、以下の規則が適用された。重症GEエピソードを示した被験者は、この被験者が経口再水化療法を受けた場合には、1%から5%脱水したとみなされた。被験者が入院し、および/または静脈内(IV)再水化療法を受けた場合には、該被験者は6%以上脱水したとみなされた。
【0262】
14.2.ワクチン効力
重症ロタウイルス胃腸炎に対するワクチン効力(表24)
効力に関するコホートは、HRVワクチンでワクチン接種された9009人の被験者、およびプラセボの投与を受けた8858人の被験者からなるものであった。ワクチン群においては12人の小児、およびプラセボ群においては77人の小児が、該臨床定義による重症ロタウイルス胃腸炎を示し(それぞ、小児1,000人年当たり1以上のエピソードを示す小児2.0人対13.3人;p<0.001,両側フィッシャー正確確率検定)、これは、第2用量投与の15日後から1歳までにおける重症ロタウイルス胃腸炎に対する84.7%のワクチン効力であった(表24に示す)。第1用量投与から1歳までにおいて全ワクチン接種コホートで同様の結果が得られた(81.1%のワクチン効力;95%C.I.68.5−89.3;p<0.001,両側フィッシャー正確確率検定)。ワクチン接種群における9人の小児およびプラセボ群における59人の小児において、少なくとも一晩の入院が必要であり(それぞれ、小児1000人年当たり入院1.5回対10.2回)、重症ロタウイルス胃腸炎による入院に対するワクチン効力は85%であった(p<0.01,両側フィッシャー正確確率検定)(表24)。
【表25】


【0263】
Vesikariスコアによるワクチン効力
ワクチン群における重症ロタウイルスエピソードを示した12人中11人の小児およびプラセボ群における77人中71人の小児が11以上のVesikariスコアを有し、これは84.7%(P<0.001,両側フィッシャー正確確率検定)のワクチン効力を与えた。11〜20スコアで疾患重症度が上昇すると、ワクチン効力は次第に高くなり、より重症のロタウイルス胃腸炎に対しては100%に達した。11以上のVesikariスコアを有する合計16人の重症ロタウイルス胃腸炎エピソードが第1用量投与から第2用量投与までに報告された(ワクチン群で6人およびプラセボ群で10人)。
【0264】
ロタウイルス型ごとのVesikariスコアによるワクチン効力
野生型株に対する型特異的ワクチン効力を表24に示す。ワクチン株と同種(homologous)であるG1P[8]型株により引き起こされる、11以上のVesikariスコアを示す重症ロタウイルスエピソードに対するワクチン効力は、91.8%(P<0.001,両側フィッシャー正確確率検定)であった。P[8]抗原を共有する株(G3P[8]、G4P[8]およびG9P[8])に対するワクチン効力は86.9%(P<0.001,両側フィッシャー正確確率検定)であった。G抗原およびP抗原のいずれをもワクチン株と共有していないG2P[4]ロタウイルス型が、ワクチン群における5エピソードおよびプラセボ群における9エピソードにおいて検出され、これは45%(P=0.298,両側フィッシャー正確確率検定)の効力を与えた。この研究で観察されたG2エピソードの数が少なかったため、5つの研究のメタ分析(実施例13)を行い、この研究で観察された傾向が、それらの5つの研究の結果をプールした場合に有意値となった(実施例13)。
【0265】
下痢疾患の負荷に対するワクチン効力
WHOプランB/Cによる入院および/または再水化を要する、いずれかの原因による胃腸炎を示す小児は、ワクチン群においては疾患発生率30.9/小児1,000人年を示し、一方、プラセボ群においては51.7を示し、ワクチン被投与者におけるあらゆる原因による重症下痢エピソードにおける、全体で40%(P<0.001,両側フィッシャー正確確率検定)の減少を示した。同様に、いずれかの原因による下痢による入院が有意に、42%減少した(P<0.001,両側フィッシャー正確確率検定)(表24、あらゆる原因によるGE)。
【0266】
14.3.結果の要約
重症ロタウイルス胃腸炎(RV GE)に対するおよびロタウイルス関連入院に対するワクチン効力は85%(P<0.001,両側フィッシャー正確確率検定)であり、19以上のVesikariスコアを示すRV GEを有する集団においては100%に達した。G1P[8]、およびP[8]エピトープのみをHRVと共有する株に対する効力は、それぞれ92%(95%C.I.74,98)および87%(95%C.I.64,97)(P<0.001,両側フィッシャー正確確率検定)であった。あらゆる原因の下痢による入院は42%減少した(95%C.I.29,53;P<0.001,両側フィッシャー正確確率検定)。
【実施例15】
【0267】
欧州6ヶ国におけるヒト弱毒化ロタウイルスワクチンRotarix(商標)の効力
15.1.方法
欧州6ヶ国における3,994人の小児を、通常の小児用ワクチン接種と共に投与される106.5CCID50 HRV(ヒトロタウイルス)ワクチンRotarix(商標)(組成を参照されたい)またはプラセボの投与を受けるよう無作為化した。第1の効力追跡期間は第2用量投与の2週間後から開始し、2005年6月〜7月に終了した。合計3874人の被験者が第1年効力コホートの一部であった。
【表26】

【0268】
15.2.ワクチン効力
HRVワクチンは該第1効力期間におけるRV GEに対する防御に非常に有効であった。ワクチン効力はRV GEのいずれかのエピソードに対しては87.1%(95%CI:79.6%;92.1%)、重症RV GEエピソードに対しては95.8%(95%CI:89.6%;98.7%)であった。疾患重症度が上昇(11〜20のVesikariスコア)すると、ワクチン効力は次第に高くなり、17ポイント以上のVesikariスコアを示すRV GEを有する集団では100%に達した。RV GEによる入院に対するワクチン効力は100%(95%CI:81.8%;100%)であり、医学的注意を要するRV GEエピソードに対するワクチン効力は91.8%(95%CI:84.0%;96.3%)であった(表26および27)。
【表27】

【表28】

【0269】
HRVワクチンは、G1P[8]、G3P[8]、G4P[8]およびG9P[8]株により引き起こされる任意および重症のRV GEに対して非常に防御性が高かった(表28)。HRVワクチンの外層カプシド抗原のいずれをも共有しないG2P[4]RV型に対する防御は、この研究では、より低かったが、フェーズIIおよびフェーズIIIの効力研究を考慮したメタ分析の結果は、G2P[4]による任意および重症のGEに対する有意な防御効力を示した(実施例13を参照されたい)。
【表29】

【0270】
15.3.結果の要約
小児用ワクチン接種と共に投与された2経口用量のHRV Rotarix(商標)ワクチンは、G1P[8]野生型RVによりおよび非G1P[8]RV型により引き起こされる任意のRV GEに対する乳児の防御において、プラセボと比較して該第1効力期間中に非常に有効であった。ワクチン効力はそれぞれ95.6%(95%CI:87.9%;98.8%)および79.3%(95%CI:64.6%;88.4%)であった。G1P[8]野性型RVによりおよび非G1P[8]RV型により引き起こされる重症RV GEに対する効力はそれぞれ96.4%(95%CI:85.7%;99.6%)および95.4%(95%CI:85.3%;99.1%)であった。
【0271】
これらの結果は、HRVワクチンが循環RV株に対する広範な防御をもたらすという結論を強く支持するものである(表28を参照されたい:G1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]、G9P[8])。特異的なG2P[4]に対するワクチン効力に関するメタ分析を行った。実施例13を参照されたい。
【0272】
全体的な結論
入院および再水化に焦点を合わせたケース捕捉(case capture)に関する臨床的定義により、ならびに下痢、嘔吐、発熱、脱水および入院に関連した定量可能な罹患結果を含む、妥当性が立証されたVesikari尺度により計測すると、ロタウイルス胃腸炎エピソードに対して、RIX4414ロタウイルスワクチンは非常に防御性であることが判明した。2経口用量のHRVワクチンは、複数の循環ロタウイルス株による任意および重症のRVGEおよび入院に対する乳児の防御において非常に有効であった。
【0273】
HRVワクチンに抗原的に類似している2つの外層カプシドタンパク質(VP4およびVP7)および1つの内層カプシドタンパク質(VP6)を有する同種(homologous)G1P[8]ロタウイルスに対して高レベルの防御が実証された。それは、遺伝子型P[8](VP4抗原)およびVP6抗原のみを共有する株に対しても十分に防御した。フィンランド、シンガポールおよびラテンアメリカからの3つのフェーズII研究(すべて、同一の方法および効力基準を用いている)ならびにラテンアメリカおよび欧州からの2つのフェーズIII研究の結果を含むメタ分析において、HRVワクチンの外層カプシド抗原のいずれをも共有しないロタウイルス株に対する防御も実証された。これは実施例13に示した。いずれかの重症度のG2P[4]型に対するワクチン効力は81%(95%C.I.31.6−95.8)であり、G2P[4]型による重症GEに対するワクチン効力は71.4%(95%C.I.20.1−91.1)であった。このことは、該ワクチンが、該ワクチン株と同一のGまたはPタンパク質を共有しない株に対しても防御しうることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0274】
【図1A】図1A(配列番号1)は、P43のVP4タンパク質をコードする配列を含むP43(RIX4414)VP4遺伝子のヌクレオチド配列である。
【図1B】図1B(配列番号2)は、該遺伝子の両末端からの追加的ヌクレオチド、および配列決定技術によるヌクレオチド置換(太字−18位のCがGにより置換されて、TCAの代わりにTCGとなっているが、得られるコード化タンパク質に対する影響を伴わない)を有する。非コード配列は小文字で示されている。図1BはP43寄託物の正式な配列を示す。
【図2】図2A(配列番号3)は、P43のVP7タンパク質をコードする配列を含むP43(RIX4414)VP7遺伝子のヌクレオチド配列である。図2B(配列番号4)は、該遺伝子の両末端からの追加的ヌクレオチド、および配列決定技術によるヌクレオチド置換(太字−58位のCがAにより置換されて、イソロイシンをコードするCTTの代わりにロイシンをコードするATTとなっている)を有する。非コード配列は小文字で示されている。図2BはP43寄託物の正式な配列を示す。
【図3】図3(配列番号5)はRIX4414 VP4のポリペプチド配列である。
【図4】図4(配列番号6)はRIX4414 VP7のポリペプチド配列である。
【図5】図5(配列番号7)はRIX4414のNSP4タンパク質のポリペプチド配列を示す。
【図6】図6(配列番号8)はRIX4414のNSP4タンパク質をコードするヌクレオチド配列を示す。非コード配列は小文字で示されている。
【図7】図7(配列番号9)はRIX4414のVP6タンパク質のポリペプチド配列を示す。
【図8】図8(配列番号10)はRIX4414のVP6タンパク質をコードするヌクレオチド配列を示す。非コード配列は小文字で示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロタウイルス株に対する免疫応答を誘導する方法であって、GxPy型の弱毒化ロタウイルス株を含んでなる組成物を被験体に投与するステップを含み、該組成物はGx型およびPy型のいずれでもないロタウイルス株に対する免疫応答を生起するものである、上記方法。
【請求項2】
Gx型およびPy型のいずれでもないロタウイルス株により引き起こされるロタウイルス感染に対する免疫応答を誘導するための医薬の製造における、GxPy型由来の弱毒化ロタウイルス株の使用。
【請求項3】
前記組成物が、以下のもの:開始コドンから始めて788位のアデニン塩基(A)、802位のアデニン塩基(A)および501位のチミン塩基(T)のうち少なくとも1つをヌクレオチド配列中に含むVP4遺伝子を有するロタウイルスを含んでなる、請求項1または2に記載の方法または使用。
【請求項4】
VP4遺伝子が、開始コドンから始めて788位および802位のアデニン塩基(A)ならびに501位のチミン塩基(T)を含むヌクレオチド配列を含む、請求項3に記載の方法または使用。
【請求項5】
前記組成物が、以下のもの:開始コドンから始めて605位のチミン(T)、897位のアデニン(A)および897位のグアニン(G)のうち少なくとも1つをヌクレオチド配列中に含むVP7遺伝子を有するロタウイルスを含んでなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項6】
VP7遺伝子が、開始コドンから始めて605位のチミン(T)および897位のアデニン(A)またはグアニン(G)を含むヌクレオチド配列を含む、請求項5に記載の方法または使用。
【請求項7】
前記組成物が、開始コドンから始めて788位および802位のアデニン(A)ならびに501位のチミン(T)をヌクレオチド配列中に含むVP4遺伝子を有するロタウイルスを含んでなり、VP7遺伝子が、開始コドンから始めて605位のチミン(T)および897位のアデニン(A)をヌクレオチド配列中に含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項8】
前記組成物が、G1ロタウイルス株を含んでなり、G1ならびにG2、G3、G4、G5、G6、G7、G8、G9、G10、G11、G12、G13およびG14血清型からなる群より選択される非G1血清型のうち少なくとも1つに対する免疫応答を誘導するために用いられる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項9】
前記組成物が、G1ロタウイルス株を含んでなり、G1およびG2血清型に対する免疫応答を誘導するために用いられる、請求項8に記載の方法または使用。
【請求項10】
前記組成物が、さらに、G3、G4およびG9からなる群より選択される非G1血清型のうち少なくとも1つに対する免疫応答を誘導することが可能である、請求項9に記載の方法または使用。
【請求項11】
前記組成物が、P[8]ロタウイルス株を含んでなり、P[8]ならびにP[1]、P[2]、P[3]、P[4]、P[5]、P[6]、P[7]、P[9]、P[11]、P[12]、P[14]およびP[19]型からなる群より選択される非P[8]型のうち少なくとも1つに対する免疫応答を誘導するために用いられる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項12】
前記組成物が、P[4]型に対する免疫応答を誘導するために用いられる、請求項11に記載の方法または使用。
【請求項13】
前記組成物が、G1P[8]ロタウイルス株を含んでなり、G2P[4]ロタウイルス株に対する免疫応答を誘導する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項14】
GxPy型の弱毒化ロタウイルス株を含んでなる前記組成物が、Gx型およびPy型のいずれでもないロタウイルス株の感染により引き起こされる、ロタウイルス誘発性重症胃腸炎への防御をもたらすものである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項15】
GxPy型の弱毒化ロタウイルス株を含んでなる前記組成物が、ワクチン接種された個体集団において、Gx型およびPy型のいずれでもないロタウイルス株により引き起こされる下痢に対して少なくとも40%の防御力を示す、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項16】
前記組成物が、少なくとも50%の防御力を示す、請求項15に記載の方法または使用。
【請求項17】
前記組成物が、少なくとも60%の防御力を示す、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項18】
前記組成物が、40%〜80%の防御力を示す、請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項19】
前記組成物が、50%〜70%の防御力を示す、請求項18に記載の方法または使用。
【請求項20】
前記組成物が、G1P[8]ロタウイルス株を含んでなり、ワクチン接種された個体集団において、G2P4血清型を有するロタウイルスの感染により引き起こされる重症胃腸炎に対して40%〜75%の防御力を示す、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項21】
前記組成物中のロタウイルス株が、ECACC受託番号99081301であるか、またはECACC受託番号99081301から取得可能もしくは誘導可能である、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項22】
前記組成物を、2用量レジメンで投与する、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項23】
前記弱毒化ロタウイルス株を、好適な製薬用担体を用いて、または制酸剤を用いて、またはその両者を用いて製剤化する、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法または使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−504701(P2009−504701A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526443(P2008−526443)
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008094
【国際公開番号】WO2007/020078
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】