説明

異常予兆診断装置および異常予兆診断方法

【課題】異常予兆の有無の診断を適切に行うことができる異常予兆診断装置および異常予兆診断方法を提供する。
【解決手段】異常予兆診断装置1は、機械設備2に設置された複数のセンサによって測定された多次元センサデータを取得するセンサデータ取得手段11と、診断対象データについて、機械設備2が正常に稼動しているときのセンサデータを学習データとして作成された事例モデルからの乖離の度合いを示す異常度に基づいて異常予兆の有無を診断する第1診断手段16と、個別のセンサデータの値が、予め定められた所定の範囲内にあるか否かに基づいて、異常予兆の有無を診断する第2診断手段15とを備え、第1診断手段16によって異常予兆があると診断された場合に、第2診断手段15による異常予兆診断のために参照する個別のセンサデータを、異常度に対する寄与の大きさを示す寄与度に基づいて選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントや設備などの異常予兆を診断する異常予兆診断装置および異常予兆診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な機器から構成されるプラントや各種の設備は、長期間に渡り正常に稼動することが要求される。しかし、運転条件の変化などに基づく負荷の変動や多くの要因によって、プラントや設備を構成する機器には様々なトラブルが発生する。通常、これらの機器には、その稼働状態を把握することや異常状態を検知することを目的として、様々なセンサが設置され、運転状態を監視している。
【0003】
また、これらのセンサによる測定データに基づいてプラントや機械設備を遠隔から監視し、診断する方法が種々提案されている。一般的には、センサによる測定データに対して、経験的に上下限の閾値を定め、測定データが上下限の閾値の範囲から外れた場合に、そのセンサによって特定される部位の異常を検知する。例えば、特許文献1には、部位と、その部位の異常を検出するための複数のセンサを予め対応付けておき、対応付けられたセンサによる測定データに基づいて当該部位の異常を診断する診断方法が記載されている。
【0004】
一方、複数のセンサによる測定データに対して、統計的処理を施して異常予兆を検知するデータマイニングの手法を用いた診断方法が提案されている。例えば、特許文献2には、複数のセンサによる測定データから特徴量を抽出し、その特徴量の変化を監視することにより異常を診断する診断方法が記載されている。独自の特徴量を用い、過去の測定データを用いて学習した事例モデルからの乖離の度合いを監視することにより、個々のセンサによる測定データの監視のみの場合と比較して、早期に異常の検知を可能にするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−76334号公報
【特許文献2】特開2007−198918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された診断方法では、診断対象となる部位とセンサとの対応関係が予め定められており、予め部位と異常予兆を検知するためのセンサとの適切な対応が既知である必要がある。このため、新規なシステムなどでこの対応関係が十分に把握できていない場合には、適切な診断を行えない場合が生じるおそれがあった。
【0007】
また、特許文献2に記載された診断方法にように、複数のセンサによる測定データに対して統計的な処理を施して作成した事例モデルを用いるデータマイニング手法による診断方法では、個別のセンサによる測定データによっては検知が困難な異常予兆を早期に検知できる場合があるものの、検知した異常予兆に対応する異常内容の解釈が難しく、異常部位を特定したり、トリップ(異常による機械設備の停止)時期を適切に判断したりすることが難しかった。
【0008】
本発明は、前記した問題に鑑みて創案されたものであり、異常予兆の有無の診断を適切に行うことができる異常予兆診断装置および異常予兆診断方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するために、本発明の異常予兆診断装置は、機械設備に設置された複数のセンサによって測定された多次元センサデータを取得するセンサデータ取得手段と、異常予兆の診断対象となる多次元センサデータである診断対象データについて、そのプラントまたは設備が正常に稼動しているときに取得した多次元センサデータを学習データとして用い、当該学習データをクラスタ化して作成された事例モデルからの診断対象データの乖離の度合いを示す異常度の大きさに基づいて異常予兆の有無を診断する第1診断手段と、診断対象データを構成する1または2以上の個別(一次元)のセンサデータの値が、それぞれ予め定められた所定の範囲内にあるか否かに基づいて、異常予兆の有無を診断する第2診断手段と、を備え、第1診断手段によって異常予兆があると診断された場合に、第2診断手段による異常予兆診断のために参照する1または2以上の個別のセンサデータを、異常度に対する寄与の大きさを示す寄与度に基づいて診断対象データの中から選択する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異常予兆の有無の診断を適切に行うことができる異常予兆診断装置および異常予兆診断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る異常予兆診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る異常予兆診断装置のリモートモニタリング部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る異常予兆診断装置のデータマイニング部の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る異常予兆診断装置のデータマイニング部において、測定データをモードに対応した区間に分割した例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る異常予兆診断装置のデータマイニング部で用いるクラスタの説明をするための説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係る異常予兆診断装置のデータマイニング部において、診断データの属するクラスタの判定の方法を説明するための説明図である。
【図7】本発明の実施形態に係る異常予兆診断装置のデータマイニング部で用いる学習データおよびコードブックのデータ構成の例を示す図であり、(a)は学習データ、(b)はコードブックを示す。
【図8】本発明の実施形態に係る異常予兆診断装置のデータマイニング部による診断結果のデータ構成の例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る異常予兆診断装置による診断結果の表示例を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る異常予兆診断装置による寄与度の表示例を示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係る異常予兆診断装置による異常予兆診断の処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態に係る異常予兆診断装置による事例モデルの作成の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
[異常予兆診断装置の構成]
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る異常予兆診断装置の構成について説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の異常予兆診断装置1は、プラントなどの機械設備2と通信ネットワークNを介して接続され、機械設備2に設置された複数のセンサ(不図示)によって測定された多次元のセンサデータおよび保守情報を取得し、取得した多次元のセンサデータおよび保守情報に基づいて機械設備2の異常予兆の有無を診断するものである。なお、異常予兆の診断対象である機械設備2は、図1に示した例では複数台であるが、1台であってもよい。また、センサデータや保守情報は、機械設備2から直接取得するのではなく、機械設備2を管理するための管理用コンピュータが設けられている場合は、この管理用コンピュータから取得するようにしてもよい。なお、保守情報とは、機械設備2についての保守計画、保守履歴、機械設備2自体に備えられた異常検知手段(不図示)によって発報された警報履歴などの情報のことである。但し、この異常検知手段は、異常予兆診断装置1とは別個のものである。
【0014】
本実施形態に係る異常予兆診断装置1は、図1に示すように、通信手段10と、センサデータ取得手段11と、センサデータ記憶手段12と、保守情報取得手段13と、保守情報記憶手段14と、リモートモニタリング部15と、データマイニング部16と、モデルデータ記憶手段17と、診断結果記憶手段18と、表示制御手段19と、表示手段20と、を備えて構成されている。
【0015】
通信手段10は、通信ネットワークNを介して、機械設備2と通信するためのものである。通信手段10は、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)によって機械設備2と通信するものでもよく、電話回線によって機械設備2と直接に通信するものでもよい。また、機械設備2から入力する情報として、機械設備2のセンサデータのほかに、機械設備2の保守計画や保守履歴などの保守情報を入力する場合において、入力する情報によって通信経路が異なってもよい。この場合は、それぞれの情報を取得するために複数の異なる通信手段を備えればよい。
また、通信手段10は、機械設備2から入力したセンサデータをセンサデータ取得手段11に出力し、機械設備2から入力した保守情報を保守情報取得手段13に出力する。
【0016】
センサデータ取得手段11は、機械設備2から、通信手段10を介して、それぞれの機械設備2に設置されたセンサ(不図示)によって計測された多次元のセンサデータを取得し、その多次元のセンサデータの取得元である機械設備2に対応付けてセンサデータ記憶手段12に記憶する。なお、機械設備2から取得するセンサデータには、測定時刻とセンサ種別と測定値とが含まれるものとする。また、センサデータには、例えば、冷却水温度や回転速度のようなセンサによる測定値のほかに、機械設備2の運転状態を制御するための、例えば、冷却水温度設定値や回転速度設定値などの制御データを含めるようにしてもよい。
【0017】
また、各センサによる測定は、機械設備2が発電プラントの場合は、例えば、30秒周期とすることができる。この場合は、1日当りで、2880点の測定データを取得することになる。この測定周期は常に一定である必要はなく、起動や停止時のように機械設備2の状態が急激に変化する過渡期には短周期で測定し、運転中や運転休止中で状態が安定した定常期には長周期で測定するようにしてもよい。
【0018】
なお、本実施形態では、センサデータ取得手段11は、取得したセンサデータをセンサデータ記憶手段12に記憶するようにしたが、各機械設備2から送出されるセンサデータをセンサデータ収集用のサーバ(不図示)を設けて一括して蓄積するようにしてもよい。この場合は、センサデータ取得手段11は、随時に、このセンサデータ収集用サーバ(不図示)から通信手段10を介してセンサデータを取得し、取得したセンサデータをリモートモニタリング部15、データマイニング部16および表示制御手段19に出力するようにすればよい。
【0019】
また、センサデータ取得手段11は、通信手段10を介したオンラインでのセンサデータの取得に限定されず、オフラインでセンサデータを取得するようにしてもよい。例えば、光ディスク、磁気ディスク、フラッシュメモリなどの記録媒体に記録されたセンサデータを、異常予兆診断装置1にこれらの記録媒体に対応する読取装置(不図示)を接続して、当該読取装置を介してセンサデータを取得するようにしてもよい。
【0020】
センサデータ記憶手段12は、センサデータ取得手段11が取得したセンサデータを記憶するものであり、磁気ディスク装置、光ディスク装置、半導体記憶装置などを用いることができる。また、センサデータ記憶手段12に記憶されたセンサデータは、リモートモニタリング部15、データマイニング部16および表示制御手段19によって参照される。
【0021】
保守情報取得手段13は、機械設備2から、通信手段10を介して、それぞれの機械設備2についての保守計画、保守履歴、機械設備2自体に備えられた異常検知手段(不図示)によって発報された警報履歴などの保守情報を取得し、その保守情報の取得元である機械設備2に対応付けて保守情報記憶手段14に記憶する。
【0022】
なお、保守情報は、通信手段10を介して機械設備2から取得するものに限定されず、異常予兆診断装置1に接続されたキーボード(不図示)などの入力手段を介して取得するようにしてもよい。
【0023】
保守情報記憶手段14は、保守情報取得手段13が取得した保守情報を記憶するものであり、磁気ディスク装置、光ディスク装置、半導体記憶装置などを用いることができる。また、保守情報記憶手段14に記憶された保守情報は、データマイニング部16および表示制御手段19によって参照される。
【0024】
リモートモニタリング部(第2診断手段)15は、機械設備2から取得したセンサデータに対して、異常予兆の診断のための上限および下限の閾値を設定し、設定した上限または下限の閾値を超えた場合に、異常予兆があると診断する遠隔診断手段である。この閾値は個別(一次元)のセンサデータごとに予め定められる。なお、本実施形態におけるリモートモニタリング部15は、センサデータ記憶手段12に記憶されているセンサデータを参照して診断する。また、本実施形態においては、データマイニング部16によって算出される寄与度に基づいて、1または2以上の個別(一次元)のセンサデータを用いて診断された結果に基づく、リモートモニタリング部15における異常予兆の診断ルールが適宜に変更される。なお、寄与度の詳細については後記する。
【0025】
ここで、図2を参照して、リモートモニタリング部15の詳細な構成について説明する。
図2に示すように、本実施形態のリモートモニタリング部15は、多次元(N次元;Nは2以上の整数)のセンサデータを構成するN個の個別(一次元)のセンサデータのそれぞれに対応した個別診断手段15111〜1512Nと、総合診断手段152〜152とを備えている。なお、個別(一次元)のセンサデータとは、機械設備2における「冷却水圧力」、「冷却水温度」、「回転速度」などの、個々のセンサによる測定データのことであり、多次元のセンサデータとは、これらの個別のセンサデータを要素とするセンサデータのことである。
【0026】
個別診断手段15111〜1511Nおよび個別診断手段15121〜1512Nは、それぞれ対応する個別(一次元)のセンサデータを入力し、それぞれ予め定められた上限および下限の閾値と比較し、上限または下限の閾値を超えた場合、すなわち予め定められた正常範囲から外れた場合に異常予兆があり、上限および下限の閾値以内である場合に異常予兆なし、と個別に診断し、この個別診断結果をそれぞれ総合診断手段152および総合診断手段152に出力する。この上限および下限の閾値は、経験的に定めることができる。
【0027】
総合診断手段152および総合診断手段152は、それぞれ個別診断手段15111〜1511Nおよび個別診断手段15121〜1512Nから個別診断結果を入力し、それぞれ診断すべき異常種別に対応する異常予兆の有無を総合診断するものである。ここで、異常種別とは、例えば「冷却水圧力上昇」、「出力低下」、「回転速度低下」など、予め分類された異常事象の種類のことである。図2に示した例では、リモートモニタリング部15は、複数種類の異常種別(異常1、異常2など)を診断するため、それぞれの異常種別に対応する総合診断手段152〜152を備えている。
【0028】
なお、個別診断手段15111〜1511Nおよび総合診断手段152、個別診断手段15121〜1512Nおよび総合診断手段152は、それぞれを1組として、それぞれの異常種別に対応した異常予兆の有無を診断するものである。また、この組の数は特に限定されず、2個以上であっても、1つであってもよい。
また、同じセンサデータ(センサ1、センサ2など)に対応する個別診断手段15111と個別診断手段15121、個別診断手段15112と個別診断手段15122、個別診断手段1511Nと個別診断手段1512Nなどは、それぞれ、同じ閾値を用いて個別診断するようにしてもよく、組となる総合診断手段152〜152が診断すべき異常種別に応じて、異なる閾値を用いるようにしてもよい。また、総合診断手段152〜152は、診断すべき異常種別に応じて、それぞれ参照するセンサデータを選別するようにしてもよい。
【0029】
総合診断手段152〜152は、データマイニング部16(図1参照)によって算出されて診断結果記憶手段18(図1参照)に記憶されている寄与度を参照して、その寄与度に基づき複数の個別診断結果を用いた診断ルールを構築し、この診断ルールに基づいて異常予兆の有無を診断するものである。なお、診断ルールの詳細については後記する。
【0030】
総合診断手段152〜152による診断結果は、機械設備2に対応付けて、診断したセンサデータの測定時刻とともに診断結果記憶手段18(図1参照)に記憶される。なお、診断結果記憶手段18(図1参照)に記憶されるリモートモニタリング部15による診断結果としては、総合診断手段152〜152による最終的な異常予兆の有無に加えて、個別診断結果を記憶するようにしてもよい。
【0031】
なお、寄与度とは、学習した事例モデルからの乖離の度合いを示す指数である異常度に対する寄与の程度を示す指数である。詳細は後記する。
【0032】
また、総合診断手段152〜152は、データマイニング部16による異常予兆診断によって、異常予兆があると診断された場合に、その際にデータマイニング部16によって算出された寄与度に基づいて、複数の個別診断結果を用いた診断ルールを再構築する。
なお、総合診断手段152〜152における診断ルールは、データマイニング部16の診断結果に関わらず、キーボードやマウスなどの入力手段(不図示)を介した操作者の指示があった場合に、再構築するようにしてもよい。
【0033】
ここで、診断ルールとは、どの個別診断結果を用いて診断するか、あるいは、複数の個別診断結果からどのようにして診断を行うかを定めるルールである。例えば、総合診断手段152〜152は、異常度に対する寄与度の最も高いセンサデータによる個別診断結果を1個選択して、その結果を総合的な診断結果とすることができる。また、例えば、総合診断手段152〜152は、寄与度の高い上位の2個以上のセンサデータによる個別診断結果を用いて、個別診断結果の多数決によって異常予兆の診断を行ったり、選択した個別診断結果の内、2個以上で異常予兆があると診断した場合に、総合的に異常予兆があると診断したりするようにしてもよい。また、複数個の個別診断結果を選択する際に、予め定めた個数を選択してもよいし、累積寄与度が予め定めた値(例えば、0.8など)になるまでの、寄与度の高い順にセンサデータによる個別診断結果を選択するようにしてもよい。また、個別診断結果が異常予兆ありの場合を「1」、異常予兆なしの場合を「0」とした場合に、すべての個別診断結果に対して寄与度によって重み付けした平均値を算出し、その重み付き平均値が予め定めた閾値(例えば、0.5)を超えた場合に異常予兆があると診断するようにしてもよい。
【0034】
なお、総合診断手段152〜152は、それぞれ診断すべき異常種別に対応して、異なる診断ルールを構築してもよい。なお、データマイニング部16(図1参照)によって検知された異常予兆の異常種別は、例えば、各センサデータの寄与度の分布から特定することができる。また、機械設備2の本体に設けられたシーケンサ(不図示)によって、各種センサデータを用いて特定し、その特定結果を保守情報として、保守情報取得手段13(図1参照)によって取得するようにしてもよい。また、データマイニング部16(図1参照)やシーケンサ(不図示)などによって異常予兆や何らかの異常が検知されない場合でも、例えば、センサデータ記憶手段11(図1参照)に蓄積されたセンサデータや診断結果記憶手段18(図1参照)に蓄積された異常度のグラフ表示に基づいて、操作者が診断したい異常種別を経験的に選択し、診断すべき異常種別としてキーボードやマウスなどの入力手段(不図示)を介して入力するようにしてもよい。そして、特定(または選択)された異常種別に対応する総合診断手段152〜152が、その診断ルールを再構築するものとする。
【0035】
このように、異常度に対する寄与度に基づいて、総合診断手段152〜152における個別診断結果を用いた診断ルールを再構築することは、診断対象となる機械設備2(図1参照)が新規に設計されたシステムである場合に特に有用である。新規なシステムでは、機械設備2(図1参照)の異常内容(異常事象)とセンサデータとの対応が十分に把握されていないことも多く、複数のセンサデータが複雑に絡み合って関連する場合もある。このような場合において、異常内容とセンサデータとが固定されている場合は、当初に定めた診断ルールでは機械設備2(図1参照)がトリップする時期の予測や異常部位の特定を適切に行うことが困難となることもある。そこで、データマイニング部16(図1参照)で算出された寄与度に基づいて、寄与度の高いセンサデータによる個別診断結果を選択して、リモートモニタリング部15で異常予兆診断を行うことにより、適切にトリップ時期を予測でき、異常部位の特定も容易になる。
【0036】
例えば、前記した機械設備2(図1参照)に設けられたシーケンサ(不図示)によって、異常種別が特定された場合であっても、対応する異常種別に対応する総合診断手段152〜152の診断ルールを、寄与度に基づいて再構築し、異常予兆を診断することで、より適切にトリップ時期の予測や異常部位の特定を容易にすることができる。
【0037】
図1に戻って、異常予兆診断装置1の構成について説明を続ける。
データマイニング部(第1診断手段)16は、機械設備2から取得した多次元のセンサデータを参照して、統計的処理を施して事例モデルを作成し、作成した事例モデルを用いたデータマイニング手法により異常予兆の診断を行うものである。なお、本実施形態におけるデータマイニング部16は、センサデータ記憶手段12に記憶されているセンサデータを参照して診断する。また、データマイニング部16は、診断結果を機械設備2に対応付けて、診断したセンサデータの測定時刻とともに診断結果記憶手段18に記憶する。なお、本実施形態においては、データマイニング部16は、診断結果として異常予兆の有無に加えて、寄与度および異常度を含めて診断結果記憶手段18に記憶する。
【0038】
ここで、図3を参照(適宜図1参照)して、データマイニング部16の詳細な構成について説明する。
図3に示すように、本実施形態のデータマイニング部16は、学習部161と診断部162とを備えている。また、学習部161は、学習データ取得手段161aと、モード分割手段161bと、モデル作成手段161cとを備え、診断部162は、診断対象データ取得手段162aと、異常度算出手段162bと、診断手段162cと、寄与度算出手段162dとを備えている。
【0039】
学習部161は、センサデータ記憶手段12に記憶されている診断対象となる機械設備2に対応する過去に測定されたセンサデータを参照し、機械設備2の運転状態を示すモードごとに学習して事例モデルを作成する手段である。作成した事例モデルのデータであるコードブックは、モデルデータ記憶手段17に、機械設備2に対応付けて、モードごとに記憶される。
【0040】
学習データ取得手段161aは、センサデータ記憶手段12に記憶されているセンサデータから、事例モデル作成のための学習に用いる学習データとして、所定の期間のセンサデータを取得し、取得した学習データをモード分割手段161bに出力する。
【0041】
学習データとして用いるセンサデータの期間は、診断対象となる機械設備2の性質に応じて定められるものである。例えば、発電プラントにおけるガスタービンを診断対象とする場合には、1〜2週間程度の期間に蓄積されたセンサデータを学習データとして用いることができる。学習データとして用いるセンサデータの測定日が、診断対象となるセンサデータの測定日に近過ぎると、異常部位の劣化がゆっくりと進行するような場合、センサデータの変化が少なく、異常予兆を検知し難い場合がある。このような場合には、1週間前を最新データとして、それ以前の1週間ないし2週間程度の期間に測定されたセンサデータを学習データとして用いるようにすればよい。
【0042】
また、学習データ取得手段161aは、保守情報記憶手段14に記憶されている保守情報を参照して、これらの学習データの取得対象となる期間において、例えば、故障や異常警報の発報などの異常なイベントが発生した日がある場合には、その日のセンサデータは学習データからは除外し、機械設備2が正常に運転されていた日に取得されたセンサデータのみを選択するようにしてもよい。正常な状態におけるセンサデータのみを用いて事例モデルを作成することにより、異常予兆の診断の感度を向上することができる。
【0043】
モード分割手段161bは、学習データ取得手段161aから学習データを入力し、この学習データを、機械設備2の運転状態に応じてモード分割する。モード分割手段161bは、モード分割した学習データを、モードに対応付けて、モデルデータ記憶手段17に記憶する。
【0044】
ここで、モード分割について、図4を参照(適宜図3参照)して説明する。
図4は、3つのセンサデータ(センサ1〜センサ3)を例として、センサデータの値の変化の様子と、機械設備2の運転状態(モード)との関係を示したものである。
【0045】
図4に示すように、定常状態で運転中である「運転中モード」においては、各センサデータは若干の上下変動を伴うものの、狭い範囲で安定している。また、定常状態である「運転休止モード」においては、各センサデータは、急激な変化はないが、経時的になだらかに変化をし、「運転中モード」とは異なる値を示している。
【0046】
一方、「運転休止モード」から「運転中モード」への過渡状態である「起動モード」および「運転中モード」から「運転休止モード」への過渡状態である「停止モード」では、それぞれセンサデータの値が急激に変化している。
【0047】
このように、運転状態によってセンサデータの値が大きく異なるため、事例モデルを作成するに当り、運転状態に応じてモード分割をし、複数のセンサデータによって規定される多次元空間において、互いに近接したセンサデータを用いることが好ましい。
【0048】
そこで、本実施形態では、センサデータを運転状態に応じたモードごとに、学習データとして用いるセンサデータを分割し、モードごとに、対応するセンサデータを用いて学習し、事例モデルを作成する。図4に示した例では、運転状態を4つのモードに分割しているが、さらに細かくモード分割するようにしてもよい。特にセンサデータが急激に変化する起動モードおよび停止モードにおいては、さらに細かくモード分割することが好ましい。なお、センサデータが急激に変化するこれらの過渡状態においては、異常予兆の検知が難しく、誤診断をする可能性が高くなる。このため、過渡状態については、異常予兆の診断を行わないようにしてもよい。これによって、誤診断による誤報の発生を抑制することができる。
【0049】
また、機械設備2の起動や停止の操作をした時刻である起動時刻や停止時刻を基準として、予め定めた期間ごとにモード分割することができるが、センサデータの変化に基づいて、自動的にモード分割することもできる。
【0050】
例えば、区間開始を判断するために、起動時に早くに変化するセンサデータを参照する。そして、最も早くに変化するセンサデータの変化開始点を区間開始と判断することができる。
【0051】
また、区間終了を判断するために、定常状態になるのが遅いセンサデータを参照する。そして、最も定常状態になるのが遅いセンサデータを参照し、そのセンサデータが定常状態になった時点を区間終了と判断することができる。
【0052】
すなわち、モードの変わり目において変化の早いセンサデータおよび最も定常状態になるのが遅いセンサデータを参照することにより、自動的にモード分割をすることができる。
【0053】
図3に戻って、データマイニング部16の構成について説明を続ける。
モデル作成手段161cは、モデルデータ記憶手段17に記憶されているモード分割された学習データを用いて、モードごとに事例モデルを作成し、作成した事例モデルのデータであるコードブックをモデルデータ記憶手段17に記憶する。
【0054】
事例モデルの作成について詳細に説明すると、モデル作成手段161cは、まず、モード分割されたセンサデータを学習データとして、多次元のセンサデータによって規定される多次元空間において、互いに近接するセンサデータ同士をクラスタ化する。クラスタ化の方法としては、例えば、k−means法を用いることにより、学習データをk個のクラスタに分類することができる。次に、クラスタごとに、そのクラスタに属するセンサデータの代表値を算出し、クラスタの範囲を示す指標としてクラスタ半径を算出する。そして、全クラスタについてクラスタ代表値とクラスタ半径とを算出することで、事例モデルを構成するクラスタのクラスタ代表値とクラスタ半径とからなるコードの集合であるコードブックが作成される。
【0055】
ここで、図5を参照して、個々のクラスタの構成について説明する。図5に示すように、本実施形態では、個々のクラスタCはクラスタCの代表値μと、クラスタCの範囲を示す指標であるクラスタ半径rとによって規定される。代表値μとしては、例えば、そのクラスタに属する学習データの重心を用いることができる。また、クラスタ半径rとしては、例えば、そのクラスタに属する学習データの中で、代表値μから最も離れた学習データまでの距離とすることができる。また、そのクラスタに属する学習データの標準偏差σを求め、2σや3σをクラスタ半径rとして用いるようにしてもよい。
【0056】
図3に戻って、データマイニング部16の構成について説明を続ける。
診断部162は、モデルデータ記憶手段17に記憶されている事象モデルの学習結果であるコードブックを用いて、センサデータ記憶手段12に記憶されている診断対象となるセンサデータである診断対象データについて、異常度に基づいて異常予兆の有無を診断するものである。また、診断部162は、異常度に対する各センサデータの寄与度を算出する。診断部162は、異常予兆の有無、異常度、寄与度を含む診断結果を診断結果記憶手段18に、機械設備2に対応付けて、診断対象となるセンサデータの測定時刻とともに記憶する。
【0057】
診断対象データ取得手段162aは、センサデータ記憶手段12から、診断対象となる機械設備2についての診断対象日時のセンサデータを診断対象データとして取得し、同時刻に複数のセンサによって測定された一組のセンサデータである多次元センサデータごとに、順次に異常度算出手段162bおよび寄与度算出手段162dに出力する。
【0058】
なお、診断対象データ取得手段162aは、診断対象データを、前記した学習データのモード分割と同様に、モード分割することが好ましい。これによって、後記する異常度算出手段162bによって異常度を算出する際に、その診断対象データの属するモードに対応する事例モデルのクラスタの中から個々の診断対象データが属するクラスタを判定することができ、他のモードに対応する事例モデルのクラスタを参照することが不要となる。
【0059】
また、本実施形態では、診断対象データは、センサデータ記憶手段12から取得するようにしたが、センサデータ記憶手段12を介さずに、センサデータ取得手段11(図1参照)から直接取得するようにしてもよい。
【0060】
異常度算出手段162bは、診断対象データ取得手段162aから入力した診断対象データについて、モデルデータ記憶手段17に記憶されている診断対象となる機械設備2についてのコードブックを用いて、診断対象データの異常度を算出する。異常度算出手段162bは、算出した異常度を診断手段162cに出力するとともに、診断結果の一部として診断結果記憶手段18に記憶する。
【0061】
ここで、図5および図6を参照(適宜図3参照)して、異常度の算出方法について説明する。
異常度算出手段162bは、順次に診断対象データ取得手段162aから入力される個々の診断対象データについて、コードブックに含まれる複数のクラスタの何れに属するかを判定し、診断対象データが属するクラスタに対応するコードを用いて異常度を算出する。なお、診断対象データは、すべてのクラスタの中で、診断対象データとの距離が最も小さいクラスタに属するものと判定する。
【0062】
まず、図5を参照して、診断対象データとクラスタとの距離について説明する。図5に示すように、診断対象データpとクラスタCとの距離として、診断対象データpとクラスタCの代表値μとの距離である誤差距離dを定義する。そして、診断対象データpは、この誤差距離dが最小となるクラスタCに属するものとする。
【0063】
例えば、図6に示すように、3つのクラスタC〜Cがあったとして、それぞれのクラスタ重心μ〜μと診断対象データpとの距離である誤差距離d〜dの中で、誤差距離dが最も小さい場合は、クラスタCが診断対象データpの属するクラスタであると判定する。
【0064】
図5に戻って、診断対象データpがクラスタCに属すると判定された場合、クラスタCの代表値μで規定される点(クラスタ重心)と、診断対象データpで規定される点との距離を誤差距離dとして、異常度は式(1)によって算出される。
異常度 = (誤差距離d)/(クラスタ半径r) ・・・ 式(1)
異常度は、クラスタの代表値μで規定されるクラスタ重心から距離が大きいほど、すなわち、クラスタから乖離しているほど大きな値となる。
【0065】
また、図6に示したように、最近接のクラスタCとの誤差距離dおよびクラスタ半径に基づいて異常度を算出するため、異常度は診断対象データと事例モデルとの乖離の度合いを示すものということができる。
【0066】
図3に戻ってデータマイニング部16の構成について説明を続ける。
診断手段162cは、異常度算出手段162bから入力した異常度に基づいて、異常予兆の有無を診断するものである。診断手段162cは、診断した異常予兆の有無を診断結果の一部として、機械設備2に対応付けて診断結果記憶手段18に記憶する。
【0067】
診断手段162cは、異常度が予め定められた閾値を超える場合に異常予兆があると診断する。例えば、誤差距離dがクラスタ半径rより大きい場合は異常予兆がると診断する場合は、閾値は「1」となる。但し、閾値は「1」に限定されるものではなく、例えば、「2」や「5」など、異常予兆診断の感度や誤報の発生頻度などを勘案して定めることができる。
【0068】
また、診断手段162cによる異常予兆の有無の診断は、例えば、1日分のセンサデータについて診断を行う場合、一点でも異常度が所定の閾値を超えた場合に異常があると判断してもよく、時系列で取得したセンサデータに対して、時間方向に平滑化処理を施した後に、所定閾値と比較して診断するようにしてもよい。また、例えば、予め定めた一定の時間以上、連続して閾値を超えた場合に異常予兆があると診断するようにしてもよい。これによって、例えば、ノイズ発生によりスパイク状に異常度が上昇した場合に、誤診断を防ぐことができる。
【0069】
寄与度算出手段162dは、異常度算出手段162bで算出される異常度に対して、その異常度の算出に用いた診断対象データを構成する各センサデータの寄与の程度を示す寄与度を算出するものである。寄与度算出手段162dは、モデルデータ記憶手段17に記憶されているコードブックに含まれるクラスタの中で、異常度の算出に用いたクラスタと同じクラスタについての代表値μ(図5参照)を用いて寄与度を算出する。また、寄与度算出手段162dは、算出した寄与度を診断結果の一部として、機械設備2に対応付けて診断結果記憶手段18に記憶する。
【0070】
ここで、各センサデータの寄与度は、センサデータと、クラスタ代表値μの当該センサデータに対応する成分との誤差であるセンサ成分誤差を用いて、式(2)によって算出される。
寄与度 = (センサ成分誤差)/(誤差距離d) ・・・ 式(2)
【0071】
なお、異常度および寄与度の算出において、各センサデータは正規化されていることが好ましい。正規化することにより、各センサデータの取り得る値の範囲の違いに影響されることなく、適切に異常度および寄与度を算出することができる。
【0072】
また、寄与度の算出は、すべての診断対象データについて算出してもよく、診断手段162cによって異常予兆があると診断された診断対象データについてのみ算出するようにしてもよい。
【0073】
また、一定期間に蓄積されたセンサデータを学習データとして用いて事例モデルを作成する際に、この一定期間に蓄積されたセンサデータを、モードごとに一括して用いるようにしてもよいが、期間を分割して用いてもよい。例えば、2週間分のセンサデータを用いる場合は、1日ごとのセンサデータを用いて事例モデルを作成し、全部で14個の事例モデルを作成するようにしてもよい。そして、2週間分を一括して用いて事例モデルを作成した場合に比べて、14倍の個数のクラスタから、診断対象データが属するクラスタを判定し、そのクラスタを用いて異常予兆を診断することができる。
【0074】
2週間での経時変化がある程度大きい場合には、2週間分のセンサデータを一括して用いて事例モデルを作成すると、学習データのバラツキが大きくなるため、クラスタ半径rが大きくなる。そこで、1日ごとの学習データを用いて事例モデルを作成し、その中から最適な事例モデルを選択するようにする。こうすることで、1日分の学習データのバラツキは2週間分の学習データのバラツキに比べて小さいため、1日ごとの学習データを用いて作成される事例モデルに対応するクラスタ半径rが大きくなり過ぎない。従って、前記した式(1)によって算出される異常度の値が小さくなり過ぎず、異常予兆の感度を向上することができる。
【0075】
モデルデータ記憶手段17は、モード分割手段161bでモードごとに分割された学習データと、モデル作成手段161cで作成されたコードブックを記憶する記憶手段である。また、モデルデータ記憶手段17に記憶される学習データは、モデル作成手段161cによって参照され、コードブックは、異常度算出手段162bおよび寄与度算出手段162dによって参照される。
モデルデータ記憶手段17としては、磁気ディスク装置、光ディスク装置、半導体記憶装置などを用いることができる。
【0076】
ここで、図7を参照(適宜図1参照)して、モデルデータ記憶手段17に記憶される学習データおよびコードブックのデータ構造について説明する。
図7(a)に示すように、学習データは、個々の機械設備2を識別する識別情報である機械設備2が設置されたサイト(場所)およびそのサイトにおける機械No.(「サイト/機械No.」)に対応付けられて、機械設備2の運転状態を示す「モード」ごとの、各センサ(1〜N)のデータ(「センサ1」〜「センサN」)および「測定時刻」から構成されている。
【0077】
また、図7(b)に示すように、コードブックは、個々の機械設備2を識別する識別情報である機械設備2が設置されたサイト(場所)およびそのサイトにおける機械No.(「サイト/機械No.」)に対応付けられて、学習データ中の各センサデータの「最大値」および「最小値」、クラスタごとのクラスタの代表値であるクラスタ重心の各センサデータに対応する成分値(「センサ1」〜「センサN」)、学習に用いたセンサデータの中で、そのクラスタに属する「所属データ数」、クラスタごとの、所属する学習データのクラスタ重心からの距離の最大値である「最大誤差」などから構成されている。なお、本実施形態では、この「最大誤差」をクラスタ半径r(図4参照)として用いる。また、各センサデータの[最大値]は、対応するセンサデータをその「最大値」で除して各センサデータを正規化するために用いることができる。
【0078】
図1に戻って、診断結果記憶手段18は、リモートモニタリング部15およびデータマイニング部16による異常予兆の有無、異常度および寄与度を含む診断結果を記憶する記憶手段である。診断結果記憶手段18に記憶される診断結果は、表示制御手段19およびリモートモニタリング部15によって参照される。
診断結果記憶手段18としては、磁気ディスク装置、光ディスク装置、半導体記憶装置などを用いることができる。
【0079】
ここで、図8を参照(適宜図1参照)して、診断結果記憶手段18に記憶される診断結果の中の、データマイニング部16による診断結果のデータ構造について説明する。
図8に示すように、診断結果記憶手段18に記憶されるデータマイニング部16による診断結果は、個々の機械設備2を識別する識別情報である機械設備2が設置されたサイト(場所)およびそのサイトにおける機械No.(「サイト/機械No.」)に対応付けられて、「測定時刻」、データマイニング部16で学習データとして用いたセンサデータの測定日を示す「学習データ取得日」、診断対象データが属する「クラスタ番号」、異常予兆の有無を示す「異常フラグ」、機械設備2の運転状態を示す「モード」、「異常度」、各センサ(「センサ1」〜「センサN」)の「測定値」および「学習値」、および各センサ(「センサ1」〜「センサN」)の「寄与度」から構成されている。
【0080】
なお、「学習値」とは、診断対象データが属すると判定されたクラスタの代表値μ(図4参照)の各センサ成分のことである。
また、図8に示した例では、「学習データ取得日」は、クラスタごとに異なる場合がある。この例では、学習データとして、1〜2週間程度の期間のセンサデータを用いて作成する際に、前記したように、この期間のデータを1日ごとに分割し、1日分の学習データを用いて事例モデルをそれぞれ作成して、作成した複数日分の事例モデルの含まれるクラスタの中から、診断対象データが属するクラスタを判定して用いるようにした。「学習データ取得日」とは、診断対象データが属するクラスタの作成に学習データとして用いたセンサデータの測定日を示すものである。
【0081】
表示制御手段19は、リモートモニタリング部15およびデータマイニング部16による異常予兆の診断結果および診断に用いたセンサデータなどを表示手段20に表示させるための制御手段である。表示制御手段19は、診断結果記憶手段18に記憶されている診断結果を参照して、この診断結果を画像データに変換して表示手段20に出力する。
【0082】
ここで、図9および図10を参照して、診断結果の表示例について説明する。
図9は、上段および中段に、センサデータ選択メニューBで選択された2個のセンサデータについて、測定値(実線)、学習値(破線)および寄与度(点線)の変化の履歴をグラフ表示し、下段に異常度の変化の履歴をグラフ表示したものである。
【0083】
また、この表示画面では、操作者は、マウスなどの入力手段を介して、前記したセンサデータ選択メニューBのほか、機械設備が設置されたサイト選択(すなわち機械設備の選択)メニューB、表示開始日時指定Bおよび表示終了日時指定Bなどの設定をすることができるようになっている。また、操作者は、下段にグラフ表示した異常度の変化の履歴を参照ながら、マウスなどの入力手段を用いて、異常度の高い区間を指定することができ、指定した区間についての各センサデータの寄与度を算出して、図10に示すように寄与度を棒グラフ化して表示できるようになっている。
【0084】
なお、図9の画面を最初に表示する場合は、初期の選択値として、寄与度の高い上位2個のセンサデータを自動的に選択して表示するようにしてもよい。
【0085】
また、図10は、図9に示した表示画面において、下段の異常度グラフにおける指定範囲についての寄与度の計算結果を表示したものである。この例では、寄与度の高い上位5個のセンサデータについて、棒グラフとセンサ種別と寄与度の値とを表示したものである。操作者は、このグラフを参照して、図9に示した表示画面におけるセンサデータ選択メニューBを再設定して、所望のセンサデータの変化の履歴をグラフ表示させることができる。
【0086】
このように、寄与度を表示し、また、寄与度の高いセンサデータを選択して、そのセンサデータの変化の履歴をグラフ表示することで、異常予兆診断装置1(図1参照)の操作者は、視覚的にセンサデータの変化の傾向を把握しやすくなる。このため、操作者は、異常による機械設備2のトリップ時期を容易に予測できるようになり、事前に保守作業や部品交換を行うことができる。
【0087】
図1に示す表示手段20は、表示制御手段19から入力された診断結果などの情報を表示する画像表示手段である。表示手段20としては、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイなどを用いることができる。
【0088】
以上、異常予兆診断装置1の構成について説明したが、異常予兆診断装置1は、各構成手段を専用のハードウェアを用いて構成することができるが、これに限定されるものではない。例えば、異常予兆診断装置1は、一般的なコンピュータにプログラムを実行させ、コンピュータ内の演算装置や記憶装置を動作させることにより実現することができる。このプログラム(異常予兆診断プログラム)は、通信回線を介して配布することも可能であるし、CD−ROMなどの記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0089】
[異常予兆診断装置の動作]
次に、図11を参照(適宜図1ないし図3参照)して、本実施形態における異常予兆診断装置1による異常予兆診断の動作について説明する。
なお、ここでは、所定期間以上に渡って、機械設備2に設置された複数のセンサによって測定されたセンサデータおよび機械設備2の保守情報が、それぞれセンサデータ記憶手段12および保守情報記憶手段14に蓄積されているものとする。
また、この異常予兆診断処理を行うタイミングは、診断対象となる機械設備2の性質や運用状況に応じて定められるべきものである。例えば、発電プラントなどの機械設備2を診断するためには、この処理は、例えば、1日に1回、定められた時刻に行われるものである。
【0090】
図11に示すように、異常予兆診断装置1は、データマイニング部16の学習部161によって、センサデータ記憶手段12から、予め定められた所定期間に測定されたセンサデータを参照して、このセンサデータを学習データとして用いて事例モデルを作成し、作成した事例モデルのデータであるコードブックをモデルデータ記憶手段17に記憶する(ステップS10)。なお、事例モデルの作成処理の詳細については後記する。
【0091】
次に、異常予兆診断装置1は、診断対象データ取得手段162aによって、センサデータ記憶手段12から診断対象データを取得する(ステップS11)。例えば、1日に1回診断する場合は、前日のセンサデータを取得する。
【0092】
次に、異常予兆診断装置1は、異常度算出手段162bによって、ステップS11で取得した診断対象データについて、ステップS10で作成され、モデルデータ記憶手段17に記憶されている事例モデルのデータであるコードブックを用いて、異常度を算出する(ステップS12)。なお、異常予兆診断装置1は、異常度算出手段162bによって、算出した異常度を診断結果の一部として診断結果記憶手段18に記憶する。
【0093】
そして、異常予兆診断装置1は、診断手段162cによって、異常度が所定の閾値を超えているか否かによって異常予兆の有無を診断する(ステップS13)。また、異常予兆診断装置1は、診断手段162cによって、診断した異常予兆の有無を診断結果の一部として診断結果記憶手段18に記憶する。
【0094】
異常予兆診断装置1は、診断手段162cによって、異常予兆があると診断した場合は(ステップS13でYes)、寄与度算出手段162dによって、寄与度を算出する(ステップS14)。なお、異常予兆診断装置1は、寄与度算出手段162dによって、算出した寄与度を診断結果の一部として診断結果記憶手段18に記憶する。
【0095】
なお、本実施形態では、データマイニング部16の診断手段162cによって異常予兆があると診断した場合に、寄与度を算出(ステップS14)するようにしたが、診断結果に関わらず、異常度の算出(ステップS12)の後に、または並行して、寄与度を算出するようにしてもよい。
【0096】
次に、異常予兆診断装置1は、総合診断手段152〜152によって、ステップS14で算出した寄与度に基づいて、個別診断手段15111〜1511Nおよび個別診断手段15121〜1512Nよる個別診断結果を用いた異常予兆の総合診断のための診断ルールを修正する(ステップS15)。
なお、データマイニング部16によって異常予兆があると診断した場合に、診断すべき異常種別に係る総合診断手段152〜152における診断ルールを再構築するものとする。ここでは、診断すべき異常種別に対応する総合診断手段が、総合診断手段152であるとして以下の説明をする。
【0097】
次に、異常予兆診断装置1は、診断対象データ取得手段162aによって、センサデータ記憶手段12から診断対象データを取得する(ステップS16)。なお、ステップS16で取得する診断対象データは、ステップS11で取得する診断対象データと同様である。
【0098】
次に、異常予兆診断装置1は、個別診断手段15111〜1511Nによって、ステップS16で取得した診断対象データについて、それぞれ異常予兆の有無を個別診断する(ステップS17)。
【0099】
次に、異常予兆診断装置1は、総合診断手段152によって、ステップS17で診断された個別診断の結果に対してステップS15で修正された診断ルールを適用して、異常予兆の有無を総合診断する(ステップS18)。なお、異常予兆診断装置1は、総合診断手段152によって、総合診断の結果を診断結果の一部として診断結果記憶手段18に記憶する。
【0100】
そして、異常予兆診断装置1は、表示制御手段19によって、診断結果記憶手段18に記憶された診断結果を表示手段20に表示させる(ステップS19)。このとき、例えば、マウスやキーボードなどの入力手段(不図示)を介して入力される操作者の指示に応じて、診断結果として異常予兆の有無に加えて、あるいは異常予兆の有無に替えて、例えば、図9に示した表示例のように、寄与度を表示したり、図10に示した表示例のように、異常度や寄与度の高いセンサデータの変化の履歴をグラフ表示したりすることができる。
【0101】
一方、異常予兆診断装置1は、診断手段162cによって、例えば、診断対象となる1日分のセンサデータについて異常予兆がないと診断した場合は(ステップS13でNo)、リモートモニタリング部15の総合診断手段152における診断ルールを修正することなく、診断対象データ取得手段162aによって診断対象データを取得し(ステップS16)、個別診断手段15111〜1511Nよる個別診断(ステップS17)および総合診断手段152による(ステップS18)総合診断を行い、表示制御手段19により診断結果を表示手段20に表示させる(ステップS19)。なお、総合診断手段152による総合診断(ステップS18)では、前回までに設定された診断ルールに基づいて総合診断を行う。
【0102】
なお、本実施形態では、データマイニング部16の診断手段162cによって異常予兆があると診断した場合に、総合診断手段152〜152における診断ルールを修正するようにしたが、データマイニング部16の診断手段162cによって異常予兆があると診断した場合に加えて、保守情報記憶手段14に記憶された診断対象の期間における保守情報を参照し、機械設備2の故障や警報の発報がある場合にも診断ルールの変更を行うようにしてもよい。
【0103】
次に、図12を参照(適宜図1および図3参照)して、事例モデルの作成処理について説明する。なお、この処理は、図11におけるステップS10の処理に相当する。
図12に示すように、異常予兆診断装置1は、まず、学習データ取得手段161aによって、センサデータ記憶手段12から、予め定められた所定期間に測定されたセンサデータを学習データとして取得する(ステップS20)。
【0104】
この際に、異常予兆診断装置1は、学習データ取得手段161aによって、保守情報記憶手段14に記憶されている診断対象となる機械設備2についての保守情報を参照して、学習データを取得すべき期間において、故障や異常警報の発報などの異常を示すイベントが発生している区間がある場合は、その区間のセンサデータを学習データから除外する。すなわち、学習データ取得手段161aは、機械設備2が正常に運転されている状態において測定されたセンサデータのみを学習データとして用いるようにする。
【0105】
次に、異常予兆診断装置1は、モード分割手段161bによって、ステップS20で取得した学習データについて、機械設備2の運転状態を示すモードごとに分割して(ステップS21)、分割した学習データをモードごとにモデルデータ記憶手段17に記憶する(ステップS22)。
【0106】
次に、異常予兆診断装置1は、モデル作成手段161cによって、モードごとに学習データを用いて事例モデルを作成するために、最初に学習するモードを選択する(ステップS23)。なお、学習するモードの順序は任意に選択してよい。
【0107】
次に、異常予兆診断装置1は、モデル作成手段161cによって、ステップS23で選択したモードに対応する学習データを、モデルデータ記憶手段17から取得し、取得した学習データを用いて学習して事例モデルを作成する(ステップS24)。より具体的には、学習データをクラスタ化して、各クラスタの代表値とクラスタ半径とからなるコードの集合であるコードブックを作成する。
【0108】
次に、異常予兆診断装置1は、モデル作成手段161cによって、ステップS24で学習した結果であるコードブックをモデルデータ記憶手段17に記憶する(ステップS25)。
【0109】
次に、異常予兆診断装置1は、モデル作成手段161cによって、事例モデルを未作成の他のモードがあるかを確認し(ステップS26)、ある場合は(ステップS26でYes)、未作成の他のモードについて事例モデルの作成を選択する(ステップS23)。
【0110】
一方、未作成の他のモードがない場合は(ステップS26でNo)、異常予兆診断装置1は、処理を終了する。
【0111】
以上説明したように、データマイニング手法、すなわち、多次元センサデータを用いた学習により作成した事例モデルを用いて異常予兆を診断することにより、個別にセンサデータを用いた異常予兆の診断によるよりも早期に異常予兆を検知することができ、さらに、異常度に対する寄与度に応じて個別(一次元)のセンサデータによる個別診断結果を用いた診断ルールを修正することで、より適切に異常予兆を検知することができる。
【0112】
また、寄与度や、異常度に対する寄与度の高いセンサデータの変化の履歴をグラフ表示することにより、操作者は、異常部位の特定や異常による機械設備2のトリップ時期の予測を容易に行うことができるようになる。そのため、操作者は、機械設備2がトリップする前に保守作業や部品交換などを適切に行うことができる。
【符号の説明】
【0113】
1 異常予兆診断装置
2 機械設備
10 通信手段
11 センサデータ取得手段
12 センサデータ記憶手段
13 保守情報取得手段
14 保守情報記憶手段
15 リモートモニタリング部(第2診断手段)
16 データマイニング部(第1診断手段)
17 モデルデータ記憶手段
18 診断結果記憶手段
19 表示制御手段
20 表示手段
15111〜1512N 個別診断手段
152〜152 総合診断手段
161 学習部
161a 学習データ取得手段
161b モード分割手段
161c モデル作成手段
162 診断部
162a 診断対象データ取得手段
162b 異常度算出手段
162c 診断手段
162d 寄与度算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械設備の異常予兆の有無を診断する異常予兆診断装置であって、
前記機械設備に設置された複数のセンサによって測定された多次元センサデータを取得するセンサデータ取得手段と、
異常予兆の診断対象となる前記多次元センサデータである診断対象データについて、前記機械設備が正常に稼動しているときに取得した前記多次元センサデータを学習データとして用い、当該学習データをクラスタ化して作成された事例モデルからの前記診断対象データの乖離の度合いを示す異常度の大きさに基づいて、前記異常予兆の有無を診断する第1診断手段と、
前記診断対象データを構成する1または2以上の個別のセンサデータの値が、それぞれ予め定められた所定の範囲内にあるか否かに基づいて、前記異常予兆の有無を診断する第2診断手段と、を備え、
前記第1診断手段によって異常予兆があると診断された場合に、前記第2診断手段が異常予兆診断のために参照する前記1または2以上の個別のセンサデータを、前記異常度に対する前記個別のセンサデータの寄与の大きさを示す寄与度の大きさに基づいて、前記診断対象データの中から選択することを特徴とする異常予兆診断装置。
【請求項2】
前記第2診断手段が異常予兆診断のために参照するセンサデータは、前記寄与度が最も大きいセンサデータであることを特徴とする請求項1に記載の異常予兆診断装置。
【請求項3】
前記第1診断手段によって異常予兆があると診断された場合に、前記第2診断手段が診断のために参照したセンサデータの変化の履歴をグラフ表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の異常予兆診断装置。
【請求項4】
前記異常度は、前記診断対象データと、前記事例モデルを構成するクラスタの中で前記診断対象データとクラスタの重心との距離が最も近いクラスタである所属クラスタの重心と、の距離を、当該所属クラスタの広がりを示す指標であるクラスタ半径で除した値であることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の異常予兆診断装置。
【請求項5】
前記寄与度は、前記診断対象データを構成する個別のセンサデータと、前記所属クラスタの重心の当該個別のセンサデータに対応する成分との差の絶対値を、前記診断対象データと前記所属クラスタの重心との距離で除した値であることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の異常予兆診断装置。
【請求項6】
機械設備の異常予兆の有無を診断する異常予兆診断方法であって、
前記機械設備に設置された複数のセンサによって測定された多次元センサデータを取得するセンサデータ取得工程と、
異常予兆の診断対象となる前記多次元センサデータである診断対象データについて、前記機械設備が正常に稼動しているときに取得した前記多次元センサデータを学習データとして用い、当該学習データをクラスタ化して作成された事例モデルからの乖離の度合いを示す異常度の大きさに基づいて、前記異常予兆の有無を診断する第1診断工程と、
前記診断対象データを構成する1または2以上の個別のセンサデータの値が、それぞれ予め定められた所定の範囲内にあるか否かに基づいて、前記異常予兆の有無を診断する第2診断工程と、を含み、
前記第1診断工程において異常予兆があると診断された場合に、前記第2診断工程における異常予兆診断のために参照する前記1または2以上の個別のセンサデータを、前記異常度に対する前記個別のセンサデータの寄与の大きさを示す寄与度の大きさに基づいて、前記診断対象データの中から選択することを特徴とする異常予兆診断方法。
【請求項7】
前記第2診断工程において異常予兆診断のために参照するセンサデータは、前記寄与度が最も大きいセンサデータであることを特徴とする請求項6に記載の異常予兆診断方法。
【請求項8】
前記第1診断工程において異常予兆があると診断された場合に、前記第2診断工程で診断のために参照したセンサデータの変化の履歴をグラフ表示することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の異常予兆診断方法。
【請求項9】
前記異常度は、前記診断対象データと、前記事例モデルを構成するクラスタの中で前記診断対象データとクラスタの重心との距離が最も近いクラスタである所属クラスタの重心と、の距離を、当該所属クラスタの広がりを示す指標であるクラスタ半径で除した値であることを特徴とする請求項6ないし請求項8の何れか一項に記載の異常予兆診断方法。
【請求項10】
前記寄与度は、前記診断対象データを構成する個別のセンサデータと、前記所属クラスタの重心の当該個別のセンサデータに対応する成分との差の絶対値を、前記診断対象データと前記所属クラスタの重心との距離で除した値であることを特徴とする請求項6ないし請求項9の何れか一項に記載の異常予兆診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−8111(P2013−8111A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138941(P2011−138941)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【特許番号】特許第4832609号(P4832609)
【特許公報発行日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】