説明

異常高温検出用素子、およびそれを備える異常高温検出用装置

【課題】本発明は、異常高温検出のための繰り返しの使用が可能であり、かつ迅速に異常高温を検出できる異常高温検出用素子、およびそれを備える異常高温検出用装置を提供することを目的とする。
【解決手段】第一の強誘電膜と、
前記第一の強誘電膜の一方の表面上に設けられた1以上の第一の電極と、
前記第一の強誘電膜の他方の表面上に設けられた1以上の第二の電極と
を備える異常高温検出用素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常高温検出用素子、およびそれを備える異常高温検出用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気機器などにおける異常高温を検出し、電流を遮断する目的で、異常温度が発生する可能性のある場所に、素子状の温度ヒューズ、およびサーミスタ等が用いられている。しかし、電気機器の構造が複雑化している現在においては、多数の温度ヒューズ等を用いる必要があるので、電気機器のサイズが大きくなってしまう問題、および電気機器の製造コストが高くなる問題があった。さらに、複雑な電気機器においては、異常温度になる可能性のある場所に、多数の温度ヒューズ等を用いてもなお、予想外の場所で、埃などが原因で、異常高温が生じる場合があった。
多数の温度ヒューズ等を用いない温度検知体として、例えば、特許文献1では、平面状の基材と、前記基材上に配置された第一の電極と、前記第一の電極上に配置された第二の電極と、前記第一の電極と前記第二の電極とを絶縁するように配置されたスペーサと、からなる面状温度検知体であって、前記スペーサは、所定の温度で溶融するとともに、該溶融したスペーサは基材へと移動することを特徴とする面状温度検知体が提案されている。
しかし、所定の温度で溶融するスペーサを用いた温度検知体の場合、原理的に、一度異常高温を検知した場合には、温度検知体を交換する必要があった。また、スペーサの溶融には一定時間を要するので、異常高温の迅速な検出が困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−227331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、異常高温検出のための繰り返しの使用が可能であり、かつ迅速に異常高温を検出できる異常高温検出用素子、およびそれを備える異常高温検出用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明の異常高温検出用素子は、
第一の強誘電膜と、
前記第一の強誘電膜の一方の表面上に設けられた1以上の第一の電極と、
前記第一の強誘電膜の他方の表面上に設けられた1以上の第二の電極と
を備える。
当該発明の異常高温検出用素子は、異常高温検出のための繰り返しの使用が可能であり、かつ迅速な異常高温の検出を可能にする。
【0006】
第2発明の異常高温検出用素子は、第1発明の異常高温検出用素子であって、
前記強誘電膜が、有機膜である。
前記強誘電膜が、有機膜であることにより、前記強誘電膜の薄膜の製造が容易になり、かつその厚さを薄くしても、誘電率温度係数(TCD)を高く維持できる。
【0007】
第3発明の異常高温検出用素子は、第2発明の異常高温検出用素子であって、
前記有機膜が、含フッ素ポリマーから形成された膜である。
前記有機膜が、含フッ素ポリマーから形成された膜であることにより、当該発明の異常高温検出用素子は、高い耐薬品性等の高い安定性を有する。
【0008】
第4発明の異常高温検出用素子は、第1発明〜第3発明のいずれかの異常高温検出用素子であって、
前記第一の電極の数、および前記第二の電極の数が、それぞれ2以上である。
前記第一の電極の数、および前記第二の電極の数が、それぞれ2以上であることによって、異常高温が発生した場所を、第一の電極2、および第二の電極3の位置に対応させて、特定することが可能になる。
【0009】
第5発明の異常高温検出装置は、
第1発明〜第4発明のいずれかの異常高温検出用素子と、
前記異常高温検出用素子に電気的に接続され、前記異常高温検出用素子の静電容量を測定する測定装置とを備える。
当該発明の異常高温検出装置は、異常高温検出のための繰り返しの使用が可能であり、かつ迅速な異常高温の検出を可能にする。
【0010】
第6発明の異常高温検出装置は、
第1発明〜第4発明のいずれかの異常高温検出用素子と、
第二の強誘電膜と、
前記強誘電膜の一方の表面上に設けられた第三の電極と、
前記強誘電膜の他方の表面上に設けられた第四の電極と
を備える参照用素子と、
前記異常高温検出用素子と前記参照用素子とにそれぞれ電気的に接続され、前記異常高温検出用素子と前記参照用素子との間の静電容量の差を測定する測定装置とを備える。
当該発明の異常高温検出装置は、異常高温検出のための繰り返しの使用が可能であり、かつ迅速な異常高温の検出を可能にする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、異常高温検出のための繰り返しの使用が可能であり、かつ迅速に異常高温を検出できる異常高温検出用素子、およびそれを備える異常高温検出用装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の異常高温検出装置における異常高温検出用素子の一例を示す側面図である。
【図2】図2は、本発明の異常高温検出装置の一例を示す上面図である。
【図3】図3は、本発明の異常高温検出装置における参照用素子の一例を示す側面図である。
【図4】図4は、本発明の異常高温検出装置の一例を示す上面図である。
【図5】図5は、VDF/TeFEコポリマーから形成された膜を用いた異常高温検出用素子の誘電率温度依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本発明の第一の形態)
図1を参照して、本発明の第一の形態を説明する。
本発明の第一の形態に係る異常高温検出用素子10は、
第一の強誘電膜1と、
前記第一の強誘電膜の一方の表面上に設けられた1以上の第一の電極2と、
前記第一の強誘電膜の他方の表面上に設けられた1以上の第二の電極3と
を備える。
【0014】
[強誘電膜]
第一の強誘電膜1は、強誘電体から形成される膜である。強誘電体は、キュリー点より僅かに低い温度で常誘電体へ相転移する際に、その誘電率が大きく変化することが知られており、この現象は誘電異常と呼ばれている。本発明の異常高温検出用素子は、強誘電体から形成される膜である強誘電膜もまた同様の性質を示すことを利用している。
なお、本明細書中、「強誘電膜」なる用語は、強誘電性を発現する膜、および分極処理することによって強誘電性を発現する膜の両方を包含することを意図して用いられる。
第一の強誘電膜としては、薄膜の製造が容易であり、かつその厚さを薄くしても、誘電率温度係数(TCD)を高く維持できることから、有機膜が好ましい。比誘電率の温度変化の大きさを示す誘電率温度係数(TCD)は、強誘電膜の性能を示す指標であり、誘電率温度係数(TCD)が高ければ、より正確に異常温度を検出することができる。したがって、有機膜を用いることで、異常温度を検出する性能に優れ、厚さが薄く、かつ製造コストが低い異常高温検出用素子を得ることができる。
当該強誘電膜の厚さは、好ましくは1000〜0.1μm、より好ましくは500〜0.1μmである。
【0015】
本明細書中、有機膜とは、有機ポリマーから形成された膜を意味する。
当該有機膜は、当該有機ポリマーを、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上含有する。さらに好ましくは、当該有機膜は、当該有機ポリマーからなる。
前記有機ポリマーとしては、例えば、
(1)ビニリデンフルオライド(VdF)ホモポリマー、VdF/トリフルオロエチレン(TrFE)コポリマー、VdF/TrFE/共重合可能なモノマーコポリマー、VdF/テトラフルオロエチレン(TFE)コポリマー、VdF/TFE/共重合可能なモノマーコポリマー、VdF/クロロトリフルオロエチレン(CTFE)コポリマー、VdF/CTFE/共重合可能なモノマーコポリマー、VdF/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)コポリマー、VdF/HFP/共重合可能なモノマーコポリマー等の含フッ素ポリマーが挙げられる。
(2)ポリシアン化ビニリデン、シアン化ビニリデンと酢酸ビニルとの共重合体、および奇数ナイロン(例、ナイロン7、ナイロン9、ナイロン11、およびナイロン13)等の非含フッ素ポリマーが挙げられる。
なかでも、高い耐薬品性等の高い安定性の観点から、含フッ素ポリマーが好ましく、高温での誘電率温度係数(TCD)が高いことら、VdF/TrFEコポリマー、およびVDF/TeFEコポリマーがより好ましい。
当該有機膜は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、有機ポリマーから形成される膜に通常用いられる、無機強誘電性材料、有機難燃剤、染料、顔料などの着色剤、結晶化促進剤、充填剤、補強充填剤、滑剤、可塑剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、発泡剤、増粘剤などの有機物質、無機物質等の添加剤を任意に含有してもよい。
【0016】
強誘電体は固有のキュリー点を有するので、用いる強誘電体によって、強誘電膜のキュリー点も異なる。このことを利用して、本発明に用いる強誘電膜を選択することで、検出される異常高温を選択することができる。
例えば、ビニリデンフルオライド(VdF)ホモポリマーから形成された強誘電膜のキュリー点は、160〜170℃であり、VdF/TrFEコポリマーから形成された強誘電膜のキュリー点は、125〜135℃であり、およびVdF/テトラフルオロエチレン(TFE)コポリマーから形成された強誘電膜のキュリー点は、135〜140℃である。これらの強誘電膜を用いた異常高温検出用素子は、それぞれ、これらのキュリー点から一定温度(例えば、10〜20℃)低い異常高温の検出に適している。また、このような温度は、通常、強誘電膜の融点より低いので、通常、強誘電膜は融解することなく、本発明の異常高温検出用素子を繰り返し使用しうる。
当該強誘電膜は、その材質に応じて、公知の方法により調製すればよい。例えば、当該強誘電膜が有機ポリマーから形成される膜である場合、有機ポリマーを適当な有機溶剤に溶解させて溶液を調製し、適当な基材に均一に塗布し、次いで、有機溶剤を分解または蒸発させればよい。なお、所望により、膜の結晶化度を向上させる目的で、膜の形成後に、膜の熱処理、または延伸処理等、公知の後処理を行ってもよい。
【0017】
[第一の電極2、およびび第二の電極3]
図1に示すように、第一の電極2と第二の電極3とは、第一の強誘電膜1を介して、相対するように配置される。
第一の電極2と第二の電極3は、導電体であればよく、その材質としては、鉄、銅、アルミ、ニッケル、クロム、およびこれらの合金(例、ニクロム)が挙げられるが、これらに限定されない。第一の電極2と第二の電極3は、好ましくは、箔状の形状を有する。
第一の電極2の数、および第二の電極3の数は、それぞれ2以上であることが好ましい。
この場合、下記で説明する静電容量の差の測定によって、異常高温が発生した場所を、第一の強誘電膜1を介して相対する1または2以上の組の第一の電極2と第二の電極3との位置に対応させて、特定することが可能になる。
第一の電極2の数と第二の電極3の数とが、それぞれ2以上である場合、2以上の第一の電極2、および2以上の第二の電極3は、前記強誘電膜の各表面上に、それぞれ互いに、絶縁されて、1次元または2次元に配列される。
第一の電極2、および第二の電極3は、例えば、真空蒸着、スパッタ法、および印刷法などの公知の方法によって第一の強誘電膜1の表面上に形成することができる。
【0018】
(本発明の第二の形態)
図1および図2を参照して、本発明の第二の形態を説明する。なお、第一の形態と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第二の形態に係る異常高温検出装置は、
本発明の第一の形態に係る異常高温検出用素子10と、
異常高温検出用素子10と電気的に接続され、異常高温検出用素子10の静電容量を測定する静電容量測定装置4とを備える。
図2に示すように、静電容量測定装置4は、異常高温検出用素子10の第一の電極2および第二の電極3(図2において図示せず)の両方に、電線5を介して、電気的に接続されている。
静電容量測定装置4は、異常高温検出用素子10の静電容量を測定する。
異常高温検出用素子10が、それぞれ2以上の第一の電極2および第二の電極3を備える場合、静電容量測定装置4は、マルチプレクサ(図示せず)等によって、第一の電極2および第二の電極3の各ペアについて、静電容量を測定する。
本実施形態の異常高温検出装置は、電気機器における、異常高温を検出する対象である電気回路等に、異常高温検出用素子10が接触または近接するようにして使用される。
異常高温を検出する対象である電気回路等において、異常高温が発生すると、異常高温発生部位に接触または近接する、第一の強誘電膜1の一部において、直ちに静電容量が高くなる。この高い静電容量が、当該「一部」を介して相対している第一の電極2と第二の電極3の組を通じて、静電容量測定装置4によって測定される。これによって、異常高温の発生、およびその位置が迅速に検出される。
なお、第一の電極2の数と第二の電極3の数とが、それぞれ2以上である場合、第一の強誘電膜1を介して相対する1組の第一の電極2と第二の電極3とを、参照用に用いてもよい。当該参照用の1組は、異常高温が発生しない場所に配置されていることが好ましい。この場合、静電容量測定装置4は、当該参照用の電極の1組についての静電容量と、その他の電極、すなわち検出用の電極の各組についての各静電容量と差を測定するように構成される。
静電容量測定装置4は、測定した静電容量の信号を、電気機器における、異常高温を検出する対象である電気回路の電流を遮断する電流遮断装置等に伝達する。異常高温が検出(測定)された場合、例えば、前記電流遮断装置によって異常高温の原因となった電流が遮断されることによって、更なる温度上昇が防止される。
なお、静電容量測定装置で測定され、電流遮断装置等に伝達される値は、静電容量であってもよく、または静電容量から求められる値、例えば、比誘電率の温度変化誘電率温度係数(TCD)であってもよい。
【0019】
(本発明の第三の形態)
図1、図3、および図4を参照して、本発明の第三の形態を説明する。なお、第一の形態または第二の形態と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第三の形態に係る異常高温検出装置は、
前記本発明の第一の形態に係る異常高温検出用素子10と、
第二の強誘電膜6と、
前記強誘電膜の一方の表面上に設けられた第三の電極7と、
前記強誘電膜の他方の表面上に設けられた第四の電極8と
を備える参照用素子20と、
異常高温検出用素子10と参照用素子20とにそれぞれ電気的に接続され、異常高温検出用素子10と参照用素子20との間の静電容量の差を測定する静電容量差測定装置4aとを備える。
【0020】
図1、図3および図4に示すように、本実施形態の異常高温検出装置は、異常高温検出用素子10として、第一の強誘電膜1と、第一の強誘電膜1の一方の表面上に設けられた1以上の第一の電極2と、第一の強誘電膜1の他方の表面上に設けられた1以上の第二の電極3とを備えている。また、図3に示すように、本実施形態の異常高温検出装置は、参照用素子20として、第二の強誘電膜6と、第二の強誘電膜6の一方の表面上に設けられた第三の電極7と、第二の強誘電膜6の他方の表面上に設けられた第四の電極8とを備えている。
図3に示すように、第三の電極7と第四の電極8とは、第二の強誘電膜6を介して、相対するように配置される。
第三の電極7と第四の電極8は、導電体であればよく、その材質としては、鉄、銅、アルミ、ニッケル、クロム、およびこれらの合金(例、ニクロム)が挙げられるが、これらに限定されない。第三の電極7と第四の電極8は、好ましくは、箔状の形状を有する。
第二の強誘電膜6は第一の強誘電膜1と同じ組成の膜であることが好ましい。また、第三の電極7と第四の電極8は、第一の電極2、および第二の電極3と同じ材質の電極であることが好ましい。
第三の電極7、およ第四の電極8は、第一の電極2、および第二の電極3と同様にして、形成することができる。
図1に示すように、静電容量差測定装置4aは、異常高温検出用素子10の第一の電極2および第二の電極3の両方に、および参照用素子20の第三の電極7および第四の電極8の両方に、電線5を介して、電気的に接続されている。
静電容量差測定装置4aは、異常高温検出用素子10と参照用素子20との間の静電容量の差を測定する。静電容量差測定装置4aとしては、例えば、
(1)静電容量差測定装置と、
(2)当該静電容量差測定装置によって測定された異常高温検出用素子10の静電容量と参照用素子20の静電容量との差の値を得る装置と
からなる。
異常高温検出用素子10が、それぞれ2以上の第一の電極2および第二の電極3を備える場合、静電容量測定装置4は、マルチプレクサ(図示せず)等によって、第一の電極2および第二の電極3の各ペアについて、参照用素子20との間の静電容量の差を測定する。
【0021】
本実施形態の異常高温検出装置は、電気機器における、異常高温を検出する対象である電気回路等に、異常高温検出用素子10が接触または近接するようにして使用される。参照用素子20は、当該電気回路等から隔離され、および断熱されていることが好ましい。当該電気回路等において、異常高温が発生すると、異常高温発生部位に接触または近接する、異常高温検出用素子10の部位において、直ちに静電容量が高くなる。この高い静電容量と参照用素子20の静電容量との差が、静電容量差測定装置4aによって測定されることにより、異常高温の発生、およびその位置が迅速に検出される。
【0022】
静電容量差測定装置4aは、測定した静電容量の差の信号を、電気機器における、異常高温を検出する対象である電気回路の電流を遮断する電流遮断装置等に伝達する。異常高温が検出(測定)された場合、例えば、前記電流遮断装置によって異常高温の原因となった電流が遮断されることによって、更なる温度上昇が防止される。
なお、静電容量差測定装置で測定され、電流遮断装置等に伝達される値は、一定の温度で測定された静電容量差自体であってもよく、または静電容量差から求められる値、例えば、比誘電率の差の温度による変化率であってもよい。
【実施例】
【0023】
[強誘電膜の製造]
VDF/TeFEコポリマーフィルムを恒温槽中にて、150℃、3時間保持し、冷却速度 15℃/Hrで25℃まで冷却させ、加熱処理済みVdF/TeFEコポリマー(モル比80:20)の膜(膜厚 36μm)を得た。
[異常高温検出用素子の製造]
そのフィルム両面に真空蒸着法によりAl電極(上部電極:直径20mm,下部電極:全面積ベタ打ち)を形成した。
[異常高温検出用素子の温度変化誘電率温度係数(TCD)の測定]
上記のように製造した異常高温検出用素子を温度可変ホットプレート上に固定し、下記の誘電率測定装置用いて、100Hz〜1kHzにおける温度変化誘電率温度係数(TCD)を求めた。高いTCDが観察される温度領域を特定した。
これにより、当該異常高温検出用素子を用いた検出に適した異常高温の温度領域を決定することができる。
誘電率測定装置:(株)エヌエフ回路設計ブロック LCR METER ZM2353
恒温槽:ヤマト科学(株)constant temperature oven DNF 610
膜厚計:Nikon MH-15M
その結果、誘電率は、測定開始の40℃での11から、135℃での26まで上昇し、特に120℃〜135℃の間で、10%/K(132℃、100Hz)という高いTCD値が観察された(図5)。
したがって、当該異常高温検出用素子は、高温を検出する対象である電気回路が加熱して120℃〜135℃の異常高温になったことを検出するのに適していることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、異常高温検出のための繰り返しの使用が可能であり、かつ迅速に異常高温を検出できる異常高温検出用素子、およびそれを備える異常高温検出用装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 第一の強誘電膜
2 第一の電極
3 第二の電極
4 静電容量測定装置
4a 静電容量差測定装置
5 電線
6 第二の強誘電膜
7 第三の電極
8 第四の電極
10 異常高温検出用素子
20 参照用素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の強誘電膜と、
前記第一の強誘電膜の一方の表面上に設けられた1以上の第一の電極と、
前記第一の強誘電膜の他方の表面上に設けられた1以上の第二の電極と
を備える異常高温検出用素子。
【請求項2】
前記第一の強誘電膜が、有機膜である
ことを特徴とする請求項1に記載の異常高温検出用素子。
【請求項3】
前記有機膜が、含フッ素ポリマーから形成された膜である
ことを特徴とする請求項2に記載の異常高温検出用素子。
【請求項4】
前記第一の電極の数と前記第二の電極の数とが、それぞれ2以上である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の異常高温検出用素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の異常高温検出用素子と、
前記異常高温検出用素子に電気的に接続され、前記異常高温検出用素子の静電容量を測定する測定装置とを備える
異常高温検出装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の異常高温検出用素子と、
第二の強誘電膜と、
前記第二の強誘電膜の一方の表面上に設けられた第三の電極と、
前記第二の強誘電膜の他方の表面上に設けられた第四の電極と
を備える参照用素子と、
前記異常高温検出用素子と前記参照用素子とにそれぞれ電気的に接続され、前記異常高温検出用素子と前記参照用素子との間の静電容量の差を測定する測定装置とを備える
異常高温検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−210400(P2010−210400A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56618(P2009−56618)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)