説明

異種ケーブルの導体接続部

【課題】ゴムプラスチックケーブルに装着されたストレスコーンに嵌合させる油止ユニットの嵌合部の表面を保護すると共に、その嵌合部に滴れたOF油を完全に除去する。
【解決手段】CVケーブル2の導体2aおよびOFケーブル1の導体1aを相互に接続する導体接続スリーブ3に対して電気的に接続されるシールド電極が内設された油止ユニット5と、CVケーブル2の絶縁層2bとの間に設けられるストレスコーン7に嵌合する油止ユニット5の嵌合部5aには、剥離可能なプラスチックフィルム10が被着されている。また、このプラスチックフィルム10を簡単に剥がすためのテープが、嵌合部5aおよびプラスチックフィルム10間に貼着されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は異種ケーブルの導体接続部に係り、特にケーブルの内部に設けられた油通路に低粘度油が充填されているOFケーブルと、ゴムプラスチックケーブルとを接続するための異種ケーブルの導体接続部に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、既設のOF(油入り)ケーブルルートの一部をCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ケーブル)に置き換えることが多く行われている。このような布設替えには、図5に示すような導体接続部が使用されている。この導体接続部は、接続すべきOFケーブル1の導体1aと、CVケーブル2の導体2aとが導体接続スリーブ3により圧縮接続され、このOFケーブル1の導体1aおよびCVケーブル2の導体2aを接続した導体接続スリーブ3の外側にシールド電極4を埋込んだ油止ユニット5が設けられている。また、OFケーブル1の絶縁層1bの端部には油浸絶縁紙による補助絶縁層6が設けられ、この補助絶縁層6にストレスコーン7′が装着され、さらにCVケーブル2の絶縁層2bの端部にもストレスコーン7が装着されている。このOFケーブル1側のストレスコーン7′は油止ユニット5の内周に形成された嵌合部5aに嵌合され、CVケーブル2側のストレスコーン7′は油止ユニット5の外周に形成された嵌合部5bに嵌合されている。そして、これら全体の外周に保護ケース8が覆設されている。
【0003】このように構成された導体接続部を使用してOFケーブル1とCVケーブル2とを導体接続するには、まず、布設替えのために絶縁層1bが段剥ぎされたOFケーブル1から滴れてくるOF油を受けるために、ビニール等のチューブ(図示せず)をOFケーブル1に被さるように装着しておく。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このチューブだけではOFケーブル1からの油漏れを完璧に防ぐことができないので、CVケーブル2に装着されたストレスコーン7に嵌合させる油止ユニット5の嵌合部5aに、OF油が滴れてしまうことがあった。また、油止ユニット5の嵌合部5aの隙間の狭い部分にOF油が滴れると、除去することが困難であった。
【0005】さらに、導体接続スリーブ3の最大外径と、油止ユニット5の嵌合部5aの内径との寸法差が少ないので、油止ユニット5の嵌合部5aの表面を傷付ける虞があった。本発明は、このような従来の難点を解決するためになされたもので、ゴムプラスチックケーブルに装着されたストレスコーンに嵌合させる油止ユニットの嵌合部の表面を保護すると共に、その嵌合部に滴れたOF油を完全に除去することができる異種ケーブルの導体接続部を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成する本発明の異種ケーブルの導体接続部は、ゴムプラスチックケーブルの導体およびOFケーブルの導体を相互に接続する導体接続スリーブと、導体接続スリーブに電気的に接続されるシールド電極が内設された油止ユニットと、各ケーブルの絶縁層および油止ユニット間それぞれに設けられたストレスコーンとを有する異種ケーブルの導体接続部において、ゴムプラスチックケーブル側に設けられたストレスコーンに嵌合する油止ユニットの嵌合部には剥離可能な保護層が設けられたものである。
【0007】このような異種ケーブルの導体接続部によれば、油止ユニットの嵌合部には剥離可能な保護層が設けられていることから、嵌合部表面を保護することができるので傷が付きにくくなり、また、導体接続部の組立て中に、嵌合部にOF油が滴れても組立工程の最後の方でこの保護層を剥ぎ取ることができるので、嵌合部の油汚れを防ぐことができる。
【0008】また、本発明の異種ケーブルの導体接続部において油止ユニットの嵌合部と当該嵌合部に設けられる保護層との間には、保護層を剥離するための剥離部材が油止ユニットの嵌合部から突出するように貼着されていることが好ましい。これにより、保護層を簡単に剥ぎ取ることができるようになる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の異種ケーブルの導体接続部の実施の一形態について図面を参照して説明する。なお、本発明の異種ケーブルの導体接続部は、主構成が従来の異種ケーブルの導体接続部と同じなので、従来の技術と同一の図面を用いて説明する。
【0010】本発明の異種ケーブルの導体接続部は図5に示すように、ゴムプラスチックケーブルであるCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ケーブル)2とOFケーブル1とを導体接続するもので、CVケーブル2の導体2aおよびOFケーブル1の導体1aを相互に接続する導体接続スリーブ3と、この導体接続スリーブ3に電気的に接続されるシールド電極4が内設された油止ユニット5と、CVケーブル2の絶縁層2b、油止ユニット5間に設けられたストレスコーン7およびOFケーブル1の絶縁層1b、油止ユニット5間に設けられたストレスコーン7′と、これら全体を覆設する保護ケース8とから構成されている。
【0011】導体接続スリーブ3は、絶縁層2bが段剥ぎされたCVケーブル2の導体2aと、絶縁層1bが段剥ぎされたOFケーブル1の導体1aとを差し込んで圧縮接続するためのものである。この導体接続スリーブ3に圧縮接続されたOFケーブル1の絶縁層1aの端部には油浸絶縁紙による補助絶縁層6が設けられ、OFケーブル1からのOF油漏れを防いでいる。
【0012】油止ユニット5は、CVケーブル2およびOFケーブル1が導体接続された導体接続スリーブ3を覆うもので、CVケーブル2側に設けられたストレスコーン7を嵌合させる嵌合部5aが内周に、OFケーブル1側に設けられたストレスコーン7′を嵌合させる嵌合部5bが外周にそれぞれ形成されている。このような油止ユニット5の一方の嵌合部5aには、図1に示すような剥離可能な保護層であるプラスチックフィルム10が被着されている。
【0013】このプラスチックフィルム10としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレン、またはトリアセテートなどが使用され、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、またはエチルセロソルブ等のエーテル系溶剤などのコーティング剤を用いて、油止ユニット5の一方の嵌合部5aにコーティング加工される。なお、コーティング加工されるプラスチックフィルム10の膜厚は剥がし易さや、嵌合部表面の保護の観点から0.5〜1.0mmが好ましい。
【0014】また、図2に示すように、一方の嵌合部5aと当該嵌合部5aに被着されるプラスチックフィルム10との間に剥離部材であるテープ11を、一方の嵌合部5aから突出するように貼着させておくとよい。これにより、図3に示すように、プラスチックフィルム10が油止ユニット5の嵌合部5aから剥がし易すくなる。なお、剥離部材は嵌合部5aに被着されたプラスチックフィルム10を簡単に剥がすことができればよいので、紐でもよい。
【0015】このように構成された異種ケーブルの導体接続部の組立てについて、図4の組立工程図を用いて説明する。なお、図4(d)、(e)は図面の内容を把握し易くするために、図4(b)、(c)より拡大して示してある。まず、布設替えのために絶縁層1bが段剥ぎされたOFケーブル1から滴れてくるOF油を受けるために、ビニール等のチューブ12をOFケーブル1に被さるように装着しておく(図4(a))。このチューブ12が装着されたOFケーブル1に油止ユニット5を装着させ、CVケーブル2にもストレスコーン7およびストレスコーン7用のストッパ13を装着させ、さらに、絶縁層1bが段剥ぎされたOFケーブル1の導体1aと、絶縁層2bが段剥ぎされたCVケーブル2の導体2aとを導体接続スリーブ3で圧縮接続させる(図4(b))。
【0016】次に、OFケーブル1および導体接続スリーブ3の接続部分を油浸絶縁紙により覆設して補助絶縁層6を設ける(図4(c))。そして、油止ユニット5を導体接続スリーブ3方向へ移動し、この油止ユニット5と導体接続スリーブ3とを締付金具14にて固定させる。この際、OFケーブル1に装着したチューブ12を剥がしておく。このように導体接続スリーブ3に固定された油止ユニット5に、CVケーブル2側からストレスコーン7、OFケーブル1側からストレスコーン7′をそれぞれ嵌合させる。ここで、油止ユニット5の一方の嵌合部5aにCVケーブル2側からストレスコーン7を嵌合させる際に接触させても、嵌合部5aの表面にプラスチックフィルム10が被着されているので、傷が付きにくくなる。また、油止ユニット5の一方の嵌合部5aとストレスコーン7とを嵌合させる直前に、テープ11にてプラスチックフィルム10を剥がすことができるので、嵌合部5aに滴れているOF油を簡単に除去できる。したがって、油止ユニット5のCVケーブル2側の嵌合部5aの油汚れを防ぐことができる。なお、油止ユニット5の一方の嵌合部5aからプラスチックフィルム10を剥離した後には、嵌合部5aの表面に潤滑剤としてのシリコーン油を塗布しておく(図4(d)、(e))。
【0017】最後に、これらを保護するための保護ケース8を覆設させて、導体接続部を構成させることができる。なお、本実施の一形態においては保護層としてプラスチックフィルムを使用したが、これに限らず、剥離可能で、且つ嵌合部表面を保護することができるものならば、どのような材質のものでもよい。
【0018】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明の異種ケーブルの導体接続部によれば、ゴムプラスチックケーブル側に設けられたストレスコーンに嵌合する油止ユニットの嵌合部に剥離可能な保護層を設けたので、この嵌合部表面を保護することができる。これにより、嵌合部表面には傷が付きにくくなる。また、嵌合部にOF油が滴れても組立工程の最後の方でこの保護層を剥ぎ取ることができるので、嵌合部の油汚れを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の異種ケーブルの導体接続部の実施の一形態を示す部分詳細図。
【図2】本発明の異種ケーブルの導体接続部の他の実施の一形態を示す部分詳細図。
【図3】図2の異種ケーブルの導体接続部におけるプラスチックフィルムを剥離する状態を示す作業説明図。
【図4】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は本発明の異種ケーブルの導体接続部の組立状態を示す組立工程図。
【図5】異種ケーブルの導体接続部を示す軸方向半載断面図。
【符号の説明】
1…OFケーブル
1a…導体
1b…絶縁層
2…CVケーブル(ゴムプラスチックケーブル)
3…導体接続スリーブ
4…シールド電極
5…油止ユニット
5a…嵌合部
7、7′…ストレスコーン
10…プラスチックフィルム(保護層)
11…テープ(剥離部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】ゴムプラスチックケーブルの導体およびOFケーブルの導体を相互に接続する導体接続スリーブと、前記導体接続スリーブに電気的に接続されるシールド電極が内設された油止ユニットと、前記各ケーブルの絶縁層および前記油止ユニット間それぞれに設けられたストレスコーンとを有する異種ケーブルの導体接続部において、前記ゴムプラスチックケーブル側に設けられた前記ストレスコーンに嵌合する前記油止ユニットの嵌合部には剥離可能な保護層が設けられたことを特徴とする異種ケーブルの導体接続部。
【請求項2】前記油止ユニットの前記嵌合部と当該嵌合部に設けられる前記保護層との間には、前記保護層を剥離するための剥離部材が前記油止ユニットの前記嵌合部から突出するように貼着されていることを特徴とする請求項1記載の異種ケーブルの導体接続部。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【公開番号】特開平11−41778
【公開日】平成11年(1999)2月12日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−194359
【出願日】平成9年(1997)7月18日
【出願人】(000002255)昭和電線電纜株式会社 (71)