説明

異種管の接合構造および接合方法

【課題】ポリエチレン管などの合成樹脂管と可撓管を含む金属管とを止水性および抜け出し強度を高めて接合することができる異種管の接合構造および接合方法を提供すること。
【解決手段】金属管11の端部に設けられて合成樹脂管12の端部を嵌挿する受口部13と、この受口部13の端部内周に数箇所固定される芯だし兼用軸力受部材17と、受口部13の内周面に取り付けられるブチルゴムまたは水膨張ゴムによる止水部材18と、受口部13と受口部13に嵌挿された合成樹脂管12との隙間部21に充填固化される無収縮モルタルや樹脂モルタルなどのコーキング材22とからなり、受口部13の内周に固定した芯だし兼用軸力受部材17によって合成樹脂管12を挿入する場合の移動を防止して短時間に作業性良く芯出して接合する。また、止水部材を、隙間部に充填固化されたコーキング材と化学反応により完全密着させ、止水性の確保および接着強度の向上を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は異種管の接合構造および接合方法に関し、農業用水路や下水道管路などに使用されるポリエチレン管などの合成樹脂管と可撓管を含む金属管とを止水性および抜け出し強度を高めて接合できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
最近の農業用水路や下水道管路などに使用される管種に合成樹脂管があり、例えばポリエチレン管が使用されているが、ポリエチレン管は材料特性により、金属管などの各種材料の管と接着性が悪く、異種管との接合方法も確立されておらず、可撓管との接合も含めて十分な接合方法がなかった。
【0003】
特に、土圧などの外圧が加わる場合には、ポリエチレン管の管剛性が低く容易に変形し、接合部に生じる隙間から漏水などが生じる可能性があった。
【0004】
これまでの一般的なポリエチレン管と金属管との接合は、例えば図7に示すように、金属管1の端部に鋼製の受口(ソケット)2を設けておき、数箇所に木材などの芯だし用のくさび3を挟んで芯あわせをしながらポリエチレン管4を受口2に挿入し、ポリエチレン管4の外周面と受口2との隙間部5にモルタルや樹脂モルタル6をコーキングして止水と抜け出しを防止して接合するようにしている。
【0005】
また、比較的小径のポリエチレン管と金属管の接続方法として、特許文献1には、金属管の端部に設けた受口に合成樹脂管の端部を嵌挿するとともに、受口と対応する合成樹脂管の端部内周面に金属製スリーブをセットし、金属製スリーブを拡径具で拡径して外周側に膨張させて合成樹脂管の端部外周を受口の内周面に設けた凹凸に食い込ませて接続するようにし、金属製スリーブに形成したつばを合成樹脂管の端面に予め係止することでスリーブの移動を防止して確実に接続できるようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−9574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、鋼製の受口にポリエチレン管を挿入し、ポリエチレン管の外周面と受口との隙間部にモルタルや樹脂モルタルを充填固化する接続方法では、モルタルや樹脂モルタルとポリエチレン管とが接着せず、接着力不足による漏水や地震などの外力による抜けが生じるという問題があり、鋼製の受口との間でもモルタルや樹脂モルタルの接着強度はあまり期待できず同様の問題が生じている。
【0008】
また、鋼製の受口にポリエチレン管を挿入する場合に木材などの芯だし用のくさびを挟むようにているが、管の挿入に伴ってくさびが移動して芯合せに手間取るなど作業性が悪いという問題がある。
さらに、鋼製の受口の隙間部にモルタルコーキングをする場合に、コーキング材料の充填量の管理が難しく、作業者の経験と勘によるため充填不足が生じて漏水する恐れがある。
【0009】
また、金属スリーブを拡径具で膨張させて凹凸に食い込ませる接続方法では、拡径できる小口径の合成樹脂管に適用できるに過ぎず、大口径の合成樹脂管に適用することができないという問題がある。
【0010】
この発明は、かかる従来技術の問題に鑑みてなされたものであって、ポリエチレン管などの合成樹脂管と可撓管を含む金属管とを止水性および抜け出し強度を高めて接合することができる異種管の接合構造および接合方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためこの発明の請求項1記載の異種管の接合構造は、金属管の端部に設けられて合成樹脂管の端部を嵌挿する受口部と、この受口部の端部内周に数箇所設けられる芯だし兼用軸力受部材と、前記受口部の内周面に取り付けられるブチルゴムまたは水膨張ゴムによる止水部材と、前記受口部と受口部に嵌挿された合成樹脂管との隙間部に充填固化されるコーキング材とからなることを特徴とするものである。
【0012】
また、この発明の請求項2記載の異種管の接合構造は、請求項1記載の構成に加え、前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿端部外周に接着剤を塗布しその表面に砂を散布した砂巻部を形成してなることを特徴とするものである。
【0013】
さらに、この発明の請求項3記載の異種管の接合構造は、請求項1または2記載の構成に加え、前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿先端面を平坦面にする合成樹脂コーキングを設けてなることを特徴とするものである。
【0014】
また、この発明の請求項4記載の異種管の接合構造は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿先端部外周に、ブチルゴムまたは水膨張ゴムによる止水部材を取り付けてなることを特徴とするものである。
【0015】
さらに、この発明の請求項5記載の異種管の接合構造は、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿先端部内周と金属管の内周との接合部に止水用シートを跨るように設けてなることを特徴とするものである。
【0016】
また、この発明の請求項6記載の異種管の接合構造は、請求項1〜5のいずれかに記載の構成に加え、前記合成樹脂管には、当該合成樹脂管が嵌挿される受口部を備えた金属管を介して可撓管を接合してなることを特徴とするものである。
【0017】
さらに、この発明の請求項7記載の異種管の接合構造は、請求項6記載の構成に加え、前記可撓管の端部に、金属製の前記受口部を形成して前記合成樹脂管と接合してなることを特徴とするものである。
【0018】
また、この発明の請求項8記載の異種管の接合方法は、金属管の端部に合成樹脂管の端部を嵌挿する受口部を形成し、この受口部の端部内周に数箇所芯だし兼用軸力受部材を溶接固定するとともに、この受口部の内周面にブチルゴムまたは水膨張ゴムによる止水部材を取り付けたのち、この受口部に合成樹脂管の端部を嵌挿し、受口部と合成樹脂管との隙間部にコーキング材を充填固化させて接合するようにしたことを特徴とするものである。
【0019】
さらに、この発明の請求項9記載の異種管の接合方法は、請求項8記載の構成に加え、前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿端部外周に接着剤を塗布した後その表面に砂を散布するようにしたことを特徴とするものである。
【0020】
また、この発明の請求項10記載の異種管の接合方法は、請求項8または9記載の構成に加え、前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿先端面を予め合成樹脂コーキングにより平坦面とするようにしたことを特徴とするものである。
【0021】
さらに、この発明の請求項11記載の異種管の接合方法は、請求項8〜10のいずれかに記載の構成に加え、前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿先端部外周に、ブチルゴムまたは水膨張ゴムによる止水部材を取り付けるようにしたことを特徴とするものである。
【0022】
また、この発明の請求項12記載の異種管の接合方法は、請求項8〜11のいずれかに記載の構成に加え、前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿先端部内周と金属管の内周との接合部に跨るように止水用シートを設けるようにしたことを特徴とするものである。
【0023】
さらに、この発明の請求項13記載の異種管の接合方法は、請求項8〜12のいずれかに記載の構成に加え、前記合成樹脂管には、当該合成樹脂管が嵌挿される受口部を備えた金属管を介して可撓管を接合するようにしたことを特徴とするものである。
【0024】
また、この発明の請求項14記載の異種管の接合方法は、請求項13記載の構成に加え、前記可撓管の端部に、金属製の前記受口部を形成して前記合成樹脂管と接合するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
この発明の請求項1記載の異種管の接合構造によれば、金属管の端部に設けられて合成樹脂管の端部を嵌挿する受口部と、この受口部の端部内周に数箇所固定される芯だし兼用軸力受部材と、前記受口部の内周面に取り付けられるブチルゴムまたは水膨張ゴムによる止水部材と、前記受口部と受口部に嵌挿された合成樹脂管との隙間部に充填固化されるコーキング材とからなるので、受口部の内周に固定した芯だし兼用軸力受部材によって合成樹脂管を挿入する場合の移動を防止して短時間に作業性良く芯出して接合することができる。また、受口部の内周面に取り付けたブチルゴムまたは水膨張ゴムによる止水部材を、受口部と合成樹脂管との隙間部に充填固化されたコーキング材と化学反応により完全密着させることができ、止水性の確保および接着強度の向上を図ることができる。さらに、隙間部に充填固化したコーキング材の抜け出しを芯だし兼用軸力受部材で抑えることができ、抜け出し強度や接合強度を高めることができる。
【0026】
また、この発明の請求項2記載の異種管の接合構造によれば、前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿端部外周に接着剤を塗布しその表面に砂を散布した砂巻部を形成したので、砂巻部によって合成樹脂管と隙間部に充填固化されたコーキング材との接着力を一層向上することができ、止水性を一層高めることもできる。
【0027】
さらに、この発明の請求項3記載の異種管の接合構造によれば、前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿先端面を平坦面にする合成樹脂コーキングを設けたので、合成樹脂管の先端面がスパイラル状などであっても合成樹脂コーキングによって平坦面にすることで、先端面により生じる隙間を無くすことができ、隙間部に充填固化されるコーキング材を空洞を生じることなく完全に充填することができ、止水性や接合強度を高めることができる。
【0028】
また、この発明の請求項4記載の異種管の接合構造によれば、前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿先端部外周に、ブチルゴムまたは水膨張ゴムによる止水部材を取り付けたので、受口部の内周面の止水部材と協働して合成樹脂管の外周でも隙間部に充填固化されるコーキング材との接着性を一層高めることができ、止水性や接合強度を高めることができる。
【0029】
さらに、この発明の請求項5記載の異種管の接合構造によれば、前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿先端部内周と金属管の内周との接合部に止水用シートを跨るように設けたので、地震などの地盤変動による外力が所定以上に加わった場合に隙間部に充填固化されたコーキング材が損傷することがあっても、止水用シートの柔軟性によって止水性を確保することができ、信頼性を大幅に向上することができる。
【0030】
また、この発明の請求項6記載の異種管の接合構造によれば、前記合成樹脂管には、当該合成樹脂管が嵌挿される受口部を備えた金属管を介して可撓管を接合したので、受口部を備えた金属管を介することで合成樹脂管に可撓管を接合することができ、地震などの地盤変動による外力が所定以上に加わった場合でも可撓管によって外力を吸収することができ、止水性や抜け出し強度を一層高めることができる。
【0031】
さらに、この発明の請求項7記載の異種管の接合構造によれば、前記可撓管の端部に、金属製の前記受口部を形成して前記合成樹脂管と接合したので、可撓管に一体形成した金属製の受口部によって合成樹脂管と可撓管とを直接接合することができ、これによっても地震などの地盤変動による外力が所定以上に加わった場合でも可撓管によって外力を吸収して止水性や抜け出し強度を一層高めることができる。
【0032】
また、この発明の請求項8記載の異種管の接合方法によれば、金属管の端部に合成樹脂管の端部を嵌挿する受口部を形成し、この受口部の端部内周に数箇所芯だし兼用軸力受部材を溶接固定するとともに、この受口部の内周面にブチルゴムまたは水膨張ゴムによる止水部材を取り付けたのち、この受口部に合成樹脂管の端部を嵌挿し、受口部と合成樹脂管との隙間部にコーキング材を充填固化させて接合するようにしたので、受口部の内周に固定した芯だし兼用軸力受部材によって合成樹脂管を挿入する場合の移動を防止して短時間に作業性良く芯出して接合することができる。また、受口部の内周面に取り付けたブチルゴムまたは水膨張ゴムによる止水部材を、受口部と合成樹脂管との隙間部に充填固化されたコーキング材と化学反応により完全密着させることができ、止水性の確保および接着強度の向上を図ることができる。さらに、隙間部に充填固化したコーキング材の抜け出しを芯だし兼用軸力受部材で抑えることができ、抜け出し強度や接合強度を高めることができる。
【0033】
さらに、この発明の請求項9記載の異種管の接合方法によれば、前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿端部外周に接着剤を塗布した後その表面に砂を散布するようにしたので、砂巻部によって合成樹脂管と隙間部に充填固化されたコーキング材との接着力を一層向上することができ、止水性を一層高めることもできる。
【0034】
また、この発明の請求項10記載の異種管の接合方法によれば、前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿先端面を予め合成樹脂コーキングにより平坦面とするようにしたので、合成樹脂管の先端面がスパイラル状などであっても合成樹脂コーキングによって平坦面にすることで、先端面により生じる隙間を無くすことができ、隙間部に充填固化されるコーキング材を空洞を生じることなく完全に充填することができ、止水性や接合強度を高めることができる。
【0035】
さらに、この発明の請求項11記載の異種管の接合方法によれば、前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿先端部外周に、ブチルゴムまたは水膨張ゴムによる止水部材を取り付けるようにしたので、受口部の内周面の止水部材と協働して合成樹脂管の外周でも隙間部に充填固化されるコーキング材との接着性を一層高めることができ、止水性や接合強度を高めることができる。
【0036】
また、この発明の請求項12記載の異種管の接合方法によれば、前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿先端部内周と金属管の内周との接合部に跨るように止水用シートを設けるようにしたので、地震などの地盤変動による外力が所定以上に加わった場合に隙間部に充填固化されたコーキング材が損傷することがあっても止水用シートの柔軟性によって止水性を確保することができ、信頼性を大幅に向上することができる。
【0037】
さらに、この発明の請求項13記載の異種管の接合方法によれば、前記合成樹脂管には、当該合成樹脂管が嵌挿される受口部を備えた金属管を介して可撓管を接合するようにしたので、受口部を備えた金属管を介することで合成樹脂管に可撓管を接合することができ、地震などの地盤変動による外力が所定以上に加わった場合でも可撓管によって外力を吸収することができ、止水性や抜け出し強度を一層高めることができる。
【0038】
また、この発明の請求項14記載の異種管の接合方法によれば、前記可撓管の端部に、金属製の前記受口部を形成して前記合成樹脂管と接合するようにしたので、可撓管に一体形成した金属製の受口部によって合成樹脂管と可撓管とを直接接合することができ、これによっても地震などの地盤変動による外力が所定以上に加わった場合でも可撓管によって外力を吸収して止水性や抜け出し強度を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の異種管の接合構造および接合方法の一実施の形態にかかり、(a)は接合前の部分縦断面図、(b)は接合状態の部分縦断面図、(C)は(b)図のA矢視図である。
【図2】この発明の異種管の接合構造および接合方法の他の一実施の形態にかかる接合状態の部分縦断面図である。
【図3】この発明の異種管の接合構造および接合方法のさらに他の一実施の形態にかかる接合状態の部分縦断面図である。
【図4】この発明の異種管の接合構造および接合方法の一実施の形態を適用した可撓管との接続例にかかる接合状態の部分断面図である。
【図5】この発明の異種管の接合構造および接合方法の一実施の形態を適用した可撓管との他の接続例にかかる接合状態の部分断面図である。
【図6】この発明の異種管の接合構造および接合方法の一実施の形態を適用した可撓管とのさらに他の接続例にかかる接合状態の部分断面図である。
【図7】従来の異種管の接合構造および接合方法にかかる接合状態の部分断面図およびA矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、この発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
この異種管の接合構造および接合方法では、農業用水路や下水道管路などに使用される比較的大口径の合成樹脂管、たとえば内径が500mm程度ポリエチレン管と、可撓管を含む金属管とを止水性および抜け出し強度を高めて接合できるとともに、作業性にも優れるようにしたものである。
【0041】
この異種管の接続構造10では、金属管11の端部に合成樹脂管12の端部を嵌挿する受口部13が形成され、金属管11は内径が接合される合成樹脂管12の内径と略同一の内径のものが用いられ、接合後に段差が生じないようにする。
【0042】
この金属管11の端部に形成される受口部13は合成樹脂管12の外径に対してかなり大きい内径(例えば、直径で80mm程度大きい)の金属製の円筒体14を、リング状の金属板15を介して溶接することで2段円筒状に形成され、金属管11の受口部13と反対の端部には、フランジ16が溶接されて他の配管が接続できるようにしてある。
【0043】
この金属管11の受口部13の円筒体14は、その長さが合成樹脂管12の接合に必要な長さに対応する長さとされ、例えば100mm程度とする。なお、金属管11の長さは、フランジ16を介して他の配管を接続したり、受口部13の内周側からの作業に支障のない長さであれば良く、配管の一部と兼用して長くすることもできる。
【0044】
また、この金属管11の受口部13の開放端側の端部内周には、合成樹脂管12を金属管11に芯だし状態で接合できるよう芯だし兼用軸力受部材17が円周複数箇所に溶接固定してあり、図示例では、円周等間隔に4個の芯だし兼用軸力受部材17が配置され、例えば金属製丸棒を受口部13の端部の僅かに内側から1/4の深さ程度までの長さとされ、溶接してある。
【0045】
そして、この金属管11の受口部13の芯だし兼用軸力受部材17より奥側の受口部13の内周面には、ブチルゴムまたは水膨張ゴムによる止水部材18が全面に接着して取り付けてあり、接合作業開始までは、離型紙が貼られ、異物が接着しないようにしてある。
【0046】
一方、金属管11の受口部13に嵌挿される合成樹脂管12には、接合強度の向上を図るため、受口部13への嵌挿端部外周に接着剤を塗布し、接着剤の表面に砂を散布した砂巻部19を形成してある。
【0047】
また、合成樹脂管12には、必要に応じて、受口部13への嵌挿先端面を平坦面にするための合成樹脂コーキング20が施してあり、例えばポリエチレン管のようにスパイラル構造のため先端面が斜めになっていてもこれを軸方向に垂直な平坦面にしてリング状の金属板15に密着できるようにエポキシ樹脂によるコーキングが施してある。
【0048】
このような金属管11と合成樹脂管12との接合は、受口部13が付いた金属管11を管路の所定位置に設置固定し、受口部13の内周面に貼り付けてある止水部材18の離型紙を剥がす。なお、この金属管11には、他端部のフランジ16に他の配管が接続されている場合もある。
【0049】
こののち、合成樹脂管12の嵌挿先端部外周に砂巻部19を形成するとともに、合成樹脂コーキング20により先端を平坦面とした合成樹脂管12を芯だし兼用軸力受部材17をガイドとして芯だしをしながら受口部13に挿入し、先端面をリング状の金属板15に押し当てるようにする。
【0050】
この状態を保持しておき、合成樹脂管12の外周面と金属管11の受口部13の内周面との隙間部21に無収縮モルタルや樹脂モルタルなどのコーキング22を施すとともに、芯だし兼用軸力受部材17の外側までコーキング22を施し、硬化養生をする。
【0051】
さらに、ここでは、合成樹脂管12には、受口部13への嵌挿先端部内周と金属管11の内周との接合部の全周に止水用シート23を跨るように設け、接着剤で貼り付けてあり、合成樹脂コーキング20の表面を覆うようにしてある。
【0052】
このような異種管の接合構造10および接合方法によれば、金属管11の端部に設けられて合成樹脂管12の端部を嵌挿する受口部13と、この受口部13の端部内周に数箇所固定される芯だし兼用軸力受部材17と、受口部13の内周面に取り付けられるブチルゴムまたは水膨張ゴムによる止水部材18と、受口部13と受口部13に嵌挿された合成樹脂管12との隙間部21に充填固化される無収縮モルタルや樹脂モルタルなどのコーキング材22とからなるので、受口部13の内周に固定した芯だし兼用軸力受部材17によって合成樹脂管12を挿入する場合の移動を防止して短時間に作業性良く芯出して接合することができる。また、受口部13の内周面に取り付けたブチルゴムまたは水膨張ゴムによる止水部材18を、金属管11と合成樹脂管12との隙間部21に充填固化されたコーキング材22と化学反応により完全密着させることができ、止水性の確保および接着強度の向上を図ることができる。さらに、隙間部21に充填固化したコーキング材22の抜け出しを芯だし兼用軸力受部材17で抑えることができ、抜け出し強度や接合強度を高めることができる。
【0053】
また、この異種管の接合構造10および接合方法によれば、合成樹脂管12には、受口部13への嵌挿端部外周に接着剤を塗布しその表面に砂を散布した砂巻部19を形成したので、砂巻部19によって合成樹脂管12と隙間部21に充填固化された無収縮モルタルなどのコーキング材22との接着力を一層向上することができ、止水性を一層高めることもできる。
【0054】
さらに、この異種管の接合構造10および接合方法によれば、合成樹脂管12には、受口部13への嵌挿先端面を平坦面にするエポキシ樹脂などによる合成樹脂コーキング20を設けたので、合成樹脂管12の先端面がスパイラル状などであっても合成樹脂コーキング20によって平坦面にすることで、先端面により生じる隙間を無くすことができ、隙間部21に充填固化されるコーキング材22を空洞を生じることなく完全に充填することができ、止水性や接合強度を高めることができる。
【0055】
さらに、この異種管の接合構造10および接合方法によれば、合成樹脂管12には、受口部13への嵌挿先端部内周と金属管12の内周との接合部に柔軟性を備えた特殊ゴムシートからなる止水用シート23を跨るように設けたので、地震などの地盤変動による外力が所定以上に加わった場合に隙間部21に充填固化されたコーキング材22が損傷することがあっても、止水用シート23の柔軟性によって止水性を確保することができ、信頼性を大幅に向上することができる。
【0056】
なお、柔軟性を備えた止水用シート23は、接着剤を使用し、ローラーなどで圧着しながら貼り付けるようにすれば良く、例えば、止水用シートの片面は加硫ゴムで反対側の面は未加硫ゴムで粘着性の優れた特殊ゴムシートを使用している。
また、片面接着のできる軟質の合成樹脂シートを使用する場合もある。
【0057】
また、金属管11の受口部13の内周と合成樹脂管12の外周との隙間部21に充填固化されるコーキング材22との接着性を一層高めるため、図3に示すように、予め合成樹脂管12の受口部13への嵌挿先端部外周に、砂巻部19の一部を覆うようにブチルゴムまたは水膨張ゴムによる止水部材24を全周に取り付けることで、コーキング材22と合成樹脂管12との接着性を更に高めることができ、止水部材18と協働して一層止水性や接合強度を高めることができる。
【0058】
次に、このような異種管の接合構造10および接合方法を適用した可撓管との接続例について説明する。
農業用水路や下水道管路において、例えば図4に示すように、貯水槽の管路壁30から可撓管31を介してポリエチレン管等の合成樹脂管12に接続する場合、この接続例では、管路壁30に金属管32が取り付けられ、この金属管32の端部にフランジ33が設けてあることから、このフランジ33を介して可撓管31および合成樹脂管12を接合する。
【0059】
そこで、ここでは、可撓管31として、その両端部にフランジ34,34を設けたものを用意し、管路壁30側では、金属管32のフランジ33と可撓管31の一端のフランジ34とをフランジ接合する一方、可撓管31の他方のフランジ34には、すでに説明した異種管の接合構造10および接合方法に用いる受口部13を備えた金属管11のフランジ16をフランジ接合する。
【0060】
そして、この金属管11の受口部13に合成樹脂管12をすでに説明したように接合することで、管路壁30に取り付けられた金属管32のフランジ33に、可撓管31および合成樹脂管12を接続して管路を構成することができる。
【0061】
また、他の接続例としては、図5に示すように、可撓管31の一端に直接受口部13を一体に形成したものであっても良く、可撓管31のフランジ34と金属管11の受口部13のフランジ16とのフランジ接合を省略でき、接合箇所の減少により漏洩の可能性を低くできるとともに、作業工数を減らすことができる。
【0062】
さらに、可撓管に一体形成した金属製の受口部13によって合成樹脂管12と可撓管31とを直接接合することで、地震などの地盤変動による外力が所定以上に加わった場合でも可撓管31によって外力を吸収して止水性や抜け出し強度を一層高めることができる。
【0063】
さらに、他の接続例としては、図6に示すように、合成樹脂管36が外周に砂巻部37が形成され、貯水槽などの管路壁30にモルタルコーキング38を介して取り付けられており、この合成樹脂管36に可撓管31を介して合成樹脂管12と接続する必要がある場合がある。
【0064】
この場合には、管路壁30の合成樹脂管36に、すでに説明した受口部13を備えた金属管11を接合し、金属管11のフランジ16に可撓管31の一方のフランジ34をフランジ接合する。そして、可撓管31の他方のフランジ34にすでに説明した受口部13を備えた金属管11のフランジ16をフランジ接合することで、この受口部13を介して合成樹脂管12を、すでに説明した接合構造および接合方法で接合する。
【0065】
これにより、管路壁30の合成樹脂管36と水路の合成樹脂管12との間に可撓管31を接続することができ、地震などの地盤変動による外力が所定以上に加わった場合でも可撓管31によって外力を吸収することができ、止水性や抜け出し強度を一層高めることができる。
【符号の説明】
【0066】
10 異種管の接合構造
11 金属管
12 合成樹脂管
13 受口部
14 円筒体
15 金属板
16 フランジ
17 芯だし兼用軸力受部材
18 止水部材
19 砂巻部
20 合成樹脂コーキング
21 隙間部
22 コーキング
23 止水用シート(特殊ゴムシート)
24 止水部材
30 管路壁
31 可撓管
32 金属管
33 フランジ
34 フランジ
36 合成樹脂管
37 砂巻部
38 モルタルコーキング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属管の端部に設けられて合成樹脂管の端部を嵌挿する受口部と、この受口部の端部内周に数箇所設けられる芯だし兼用軸力受部材と、前記受口部の内周面に取り付けられるブチルゴムまたは水膨張ゴムによる止水部材と、前記受口部と受口部に嵌挿された合成樹脂管との隙間部に充填固化されるコーキング材とからなることを特徴とする異種管の接合構造。
【請求項2】
前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿端部外周に接着剤を塗布しその表面に砂を散布した砂巻部を形成してなることを特徴とする請求項1記載の異種管の接合構造。
【請求項3】
前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿先端面を平坦面にする合成樹脂コーキングを設けてなることを特徴とする請求項1または2記載の異種管の接合構造。
【請求項4】
前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿先端部外周に、ブチルゴムまたは水膨張ゴムによる止水部材を取り付けてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の異種管の接合構造。
【請求項5】
前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿先端部内周と金属管の内周との接合部に止水用シートを跨るように設けてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の異種管の接合構造。
【請求項6】
前記合成樹脂管には、当該合成樹脂管が嵌挿される受口部を備えた金属管を介して可撓管を接合してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の異種管の接合構造。
【請求項7】
前記可撓管の端部に、金属製の前記受口部を形成して前記合成樹脂管と接合してなることを特徴とする請求項6記載の異種管の接合構造。
【請求項8】
金属管の端部に合成樹脂管の端部を嵌挿する受口部を形成し、この受口部の端部内周に数箇所芯だし兼用軸力受部材を溶接固定するとともに、この受口部の内周面にブチルゴムまたは水膨張ゴムによる止水部材を取り付けたのち、この受口部に合成樹脂管の端部を嵌挿し、受口部と合成樹脂管との隙間部にコーキング材を充填固化させて接合するようにしたことを特徴とする異種管の接合方法。
【請求項9】
前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿端部外周に接着剤を塗布した後その表面に砂を散布するようにしたことを特徴とする請求項8記載の異種管の接合方法。
【請求項10】
前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿先端面を予め合成樹脂コーキングにより平坦面とするようにしたことを特徴とする請求項8または9記載の異種管の接合方法。
【請求項11】
前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿先端部外周に、ブチルゴムまたは水膨張ゴムによる止水部材を取り付けるようにしたことを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の異種管の接合方法。
【請求項12】
前記合成樹脂管には、受口部への嵌挿先端部内周と金属管の内周との接合部に跨るように止水用シートを設けるようにしたことを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の異種管の接合方法。
【請求項13】
前記合成樹脂管には、当該合成樹脂管が嵌挿される受口部を備えた金属管を介して可撓管を接合するようにしたことを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の異種管の接合方法。
【請求項14】
前記可撓管の端部に、金属製の前記受口部を形成して前記合成樹脂管と接合するようにしたことを特徴とする請求項13記載の異種管の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−180906(P2010−180906A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22551(P2009−22551)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000196624)西武ポリマ化成株式会社 (60)
【Fターム(参考)】