説明

疎水性シリカ微粒子、静電荷像現像用トナー及び疎水性シリカ微粒子の製造方法

【課題】優れた分散性を実現しつつ帯電量の十分な経時安定性を実現し、且つ画像形成装置のクリーニングの作業性を向上することができる疎水性シリカ微粒子を提供する。
【解決手段】本発明の疎水性シリカ微粒子は、シリコーンオイルで疎水化処理された疎水性シリカ微粒子であり、粉末表面に残存する炭素含有量が5.0〜10wt%であり、疎水率が95%以上であって、平均一次粒子経が7〜25nm、遊離炭素量が3.0〜5.0wt%であるもの又は平均一次粒子経が25〜40nm、遊離炭素量が1.0〜3.0wt%であるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散性の優れた疎水性シリカ微粒子と、本疎水性シリカ微粒子が外添剤として添加され、主にデジタル複写機等の画像形成装置で用いられる静電荷像現像用トナーと、疎水性シリカ微粒子の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
フュームドシリカ(以下、単に「シリカ」という)は、ハロゲン化ケイ素の燃焼加水分解によって製造され、主に粉末の流動化剤や樹脂の充填・補強材として多分野で使用されている物質である。シリカを上記用途に使用するためにはシリカの表面を疎水性にすることがしばしば必要とされており、その効果として、粉末の流動化剤として用いた場合にはその流動性を著しく向上させること、また、シリコーン樹脂の充填・補強材として使用した場合にはシリカの分散性を高めてシリコーン樹脂の伸びや機械的強度を向上させること等が挙げられる。
【0003】
上記のような効果を得るべく、従来、シリカの表面を高度に疎水化する試みが広く行われており、メチルクロロシランやシランカップリング剤などが疎水化処理剤として用いられている。このような疎水化処理剤のうち、例えば、分子量の大きい疎水化処理剤であるシリコーンオイルでシリカ表面を処理すると、疎水性の程度のより高いシリカが得られることが分かっている。
【0004】
疎水性シリカの用途として、例えばシリカをトナーの外添剤として用いた場合には、トナーの流動性を向上させると共に、バインダー樹脂同士の融着(ブロッキング)を防止することができる。また、この外添剤は、トナーの静電気帯電の制御に大きく寄与することが知られている。デジタル複写機等の画像形成装置では、レーザ光を変調して担持体上を走査することで静電荷像を形成し、該静電荷像をトナーで現像して紙等の記録媒体に転写することで画像形成を行っている。したがって、トナーに添加される疎水性シリカを最適化してトナーの良好な静電気帯電を得ることは重要な課題である。
【0005】
そこで、平均一次粒子経が70〜150nmの範囲内であって、シリコーンオイルで疎水化処理され、且つ着色粒子100質量部に対し、外添剤としてシリカ微粒子1〜10質量部が添加されたトナーが提案されている(特許文献1)。本特許文献では、平均一次粒子経の比較的大きいシリカ微粒子をトナーに添加することによって、トナーの表面経時変化を抑制し、弱帯電トナーの発生を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−204436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の疎水性シリカ微粒子では、弱帯電トナーの発生をある程度防ぐことが可能となるものの、近年の印刷技術の高速化、高画質化に伴い、トナー樹脂も変化するにつれ、画像安定性がまだ十分ではないという問題があった。具体的には、多数枚数印刷した際、印字にドットや抜け等が見られる場合があり、これはこの微粒子シリカの帯電量の経時安定性が十分ではなかったこと、及びトナーが定着する部分のクリーニング性が不十分なことに由来するものであると予想される。一般的にシリコーンオイル処理した疎水性シリカはこのクリーニング性に優れると言われているが、それでも近年の高画質化には不十分であり上記の問題は完全には解決されていない。
【0008】
本発明の目的は、優れた分散性を実現しつつ帯電量の十分な経時安定性を実現し、且つ画像形成装置のクリーニングの作業性を向上することができる疎水性シリカ微粒子、静電荷像現像用トナー及び疎水性シリカ微粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る疎水性シリカ微粒子は、シリコーンオイルで疎水化処理された疎水性シリカ微粒子であって、粉末表面に残存する炭素含有量が5.0〜10wt%であり、平均一次粒子経が7〜25nm、疎水率が95%以上、遊離炭素量が1.0〜3.0wt%であることを特徴とする。
【0010】
また、疎水性シリカ微粒子からの揮発性有機化合物量が40ppm以上120ppm以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る疎水性シリカ微粒子は、疎水性シリカ微粒子及び粉末表面に残存する炭素含有量が5.0〜10wt%であり、平均一次粒子経が25〜40nm、疎水率が95%以上、遊離炭素量が3.0〜5.0wt%であることを特徴とする。
【0012】
また、上記疎水性シリカ微粒子からの揮発性有機化合物量が5ppm以上50ppm以下であることを特徴とする。
【0013】
さらに、上記疎水性シリカ微粒子を0.1〜4.0wt%含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーが提供される。
【0014】
本発明に係る疎水性シリカ微粒子の製造方法は、粉末表面に残存する炭素含有量が5.0〜10wt%となるように、シリカ微粒子に粘度10〜500csのシリコーンオイルを塗付後200℃以上400℃以下で熱処理し、平均一次粒子経7〜25nm、疎水率が95%以上、遊離炭素量が1.0〜3.0wt%である疎水性シリカ微粒子を製造することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る疎水性シリカ微粒子の製造方法は、粉末表面に残存する炭素含有量が5.0〜10wt%となるように、シリカ微粒子に粘度10〜500csのシリコーンオイルを塗付後200℃以上400℃以下で熱処理し、平均一次粒子経25〜40nm、疎水率が95%以上、遊離炭素量が3.0〜5.0wt%である疎水性シリカ微粒子を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、疎水化処理剤であるシリコーンオイルの量を最適化することにより、疎水性シリカ微粒子の優れた分散性を実現しつつ帯電量の十分な経時安定性を実現することができる。また、本疎水性シリカ微粒子を外添剤として静電荷像現像用トナーに含有させることにより、トナーの流動性の向上及びバインダー樹脂同士の融着の防止を実現しつつ、トナーの安定した静電気帯電を得ることができ、更には画像形成装置のクリーニングの作業性を向上することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、疎水化処理剤であるシリコーンオイルの量と疎水性シリカ微粒子の帯電量の経時変化との関連性に着目し、シリカ微粒子を所定量のシリコーンオイルで疎水化処理すると帯電量の十分な経時安定性を実現できることを見出した。特に、従来考えられているよりも多量のシリコーンオイルで表面処理しかつある一定量のシリコーンオイルが遊離する疎水性シリカを製造した場合、その帯電量の経時変化を大幅に減少することが可能となる事に加え、この疎水性シリカ微粒子を外添剤としてトナーに含有させると、画像形成装置におけるクリーニング性を格段に向上できることを見出したのである。
【0018】
本願発明は、上記研究結果に基づいてなされたものである。
【0019】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0020】
本発明のシリカ微粒子は、そのシリコーンオイル量を疎水化処理の最適値とするものである。具体的には、所定量の疎水性シリカ微粒子に対して粉末表面に残存する炭素含有量が5.0〜10wt%となるように疎水化処理され、平均一次粒子経が7〜25nmとなるもの及び平均一次粒子経が25〜40nmとなるものである。粉末表面に残存する炭素含有量が5.0wt%未満であるとシリカ微粒子に帯電量の十分な経時安定性を付与することができず、10wt%より大きいとコスト高となる。
【0021】
(シリカ微粒子)
本発明の無機酸化物微粒子としては、特にシリカ微粒子が使用され、好ましくはフュームドシリカが使用される。フュームドシリカとしては、平均一次粒子経が7〜40nmであるものが使用される。
【0022】
このシリカ微粒子の平均粒子径によりその作用効果が異なる。平均一次粒子経が7〜25nmのシリカ微粒子は、主にトナー表面でいわゆる「ころ」の役目によりトナーの流動性改善剤として作用する効果が大きい。また、この効果は乾式法で製造されたいわゆるフュームドシリカが大きい。フュームドシリカの場合、平均一次粒子経が7nm未満のものはコスト高になる、あるいは取扱が不便である等の理由より一般的ではない。一方、平均一次粒子経が25〜40nmのシリカ微粒子は、流動性改善効果も併せ持つが、より大きな効果はシリカのトナー表面の埋め込みを防止できることである。これは、これら疎水性シリカ微粒子は、粒子径が大きいためトナー表面で一部樹脂中に埋めこまれても粉末の一部がトナー表面に露出する事により、トナー粒子の粘着(いわゆるブロッキング)防止効果を示す効果が大きい。以上より、シリカ微粒子はその粒子径により役割を分担しているので、この2種の粉末を混合で用いる事も行われる。また上記は大まかな作用傾向であり、用いるトナー樹脂の種類、粒径等により効果は千差万別な為、その作用に関しては特に限定されない。
【0023】
(シリコーンオイル)
シリカ微粒子の疎水化処理剤であるシリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルといったストレートシリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、片末端反応性変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイルを用いることができる。また、用途に応じて上記シリコーンオイルのうち2種以上を混合しても良い。また、ここで特に好ましいのはジメチルシリコーンオイルである。その理由は定かではないが、構造が単純な為、帯電安定性に優れる為であると予想される。また、シリコーンオイルの粘度は、10〜500cs、より好ましくは30〜100csのシリコーンオイルを用いるのが好ましい。シリコーンオイルの粘度が10cs未満の場合、その表面処理中に揮発するシリコーンオイルが多く、結果として添加量に比例する効果が得られにくい。また、製造工程上で排ガス処理設備等の環境、安全対策も必要となる。一方、粘度が500csより大きい場合、シリコーンオイル処理後の粉末の凝集が激しく、それをトナーに添加した後に上手く分散する事が難しく、結果として疎水性シリカ微粒子をトナー表面に均一に分散する事が困難となり十分な添加効果が得られにくいという問題がある。
【0024】
(疎水率)
疎水率は、疎水性シリカ微粒子の疎水性の程度を示す値であり、本実施形態では95%以上である。疎水率は高いほど好ましく、その上限は100%である。また、疎水率が95%未満では、本発明では、疎水性の優れたシリカ微粒子とは言わない。疎水性は後述する帯電量と相関しており、高い疎水性を示す粉末の方が結果として高い帯電安定を示す傾向がある。
【0025】
(遊離炭素量)
遊離炭素量は、疎水化処理後のシリカ微粒子から遊離するシリコーンオイル量を示す値であり、本実施形態では、疎水性シリカ微粒子の平均一次粒子経が25〜40nmで3.0〜5.0wt%、平均一次粒子経が7〜25nmで1.0〜3.0wt%である。本発明において、この遊離炭素量が最も重要な因子となる。具体的には、疎水性シリカ微粒子の平均一次粒子経により、それぞれ遊離炭素量が上記記載の範囲以下では、良好なクリーニング特性を得る事ができない。一方、遊離炭素量が上記記載の範囲以上の場合、結果として粉末の凝集性が増大し、その疎水性シリカ微粒子をトナーに添加しても良好な画像特性を得る事ができない。
【0026】
(静電荷像現像用トナー)
本発明の静電荷像現像用トナーは、上記疎水化処理が施された疎水性シリカ微粒子を外添剤として含有するものである。具体的には、本発明のトナーは、平均一次半径が7〜40nmの疎水性シリカ微粒子を外添剤として0.1〜4.0wt%含有する。疎水性シリカ微粒子が0.1wt%未満であるとトナー表面への疎水性シリカ微粒子の被覆が不十分となり、良好なクリーニング特性を得る事ができない。また、4.0wt%より大きいと過剰分の疎水性シリカ微粒子がトナー表面から脱離し、画像形成装置の部材を汚染することで画像出力に悪影響を与える。
【0027】
静電荷像現像用トナーは画像形成装置で使用され、主に周面上に静電荷像が形成される感光ドラム等の担持体と、該担持体上に形成された静電荷像をトナーを用いて現像する現像装置とを備えるデジタル複写機で使用される。
【0028】
(VOC)
VOCは、疎水性シリカ微粒子から発生する環状シロキサンの量を示す値である。本実施形態において、平均一次粒子経25〜40nmの疎水性シリカ微粒子では、VOCが5ppm以上50ppm以下、平均一次粒子経7〜25nmの疎水性シリカ微粒子では、VOCが40ppm以上120ppm以下である。VOCが少ないと良好なクリーニング性を得ることができない。また、VOCが多いと経時的に複写機外へ排出され環境によくない。
【0029】
本発明の疎水性シリカ微粒子を得る方法としては、該当するシリコーンオイルにてシリカ微粒子をコーティングする事で達成されるが、このコーティング方法としては特に限定されない。具体的なコーティング方法としては、該当シリコーンオイルを適当な溶媒で希釈して原料シリカ微粒子に吹きつけ、ついで熱処理する事によって得られる。ここで、熱処理する時の雰囲気は安全上不活性ガス雰囲気で行う事が好ましい。不活性ガスとしてはヘリウム、窒素、アルゴン等が用いられるが、コスト面等を考慮して窒素ガスが好ましい。熱処理温度に関しては、好ましくは200℃以上400℃以下、より好ましくは250℃以上350℃以下の温度が用いられる。150℃より低い温度であればシリコーンオイルの無機微粒子への固定化が十分に行われず、十分な疎水性が得られない。またシリコーンオイルの十分な固定化率も得られない。熱処理温度が400℃より高い場合、疎水性、固定化率は得られるが、それをトナーの流動性改善剤として用いた時に十分なクリーニング特性が得られにくいという問題点がある。この理由は定かではないが、熱処理により一部シリコーンオイルの分解が生じ、それが結果としてクリーニング特性に悪影響を及ぼしている事が予想される。希釈する溶媒は該当シリコーンオイルを溶解するものであれば特に限定されない。ただし、極性の高い溶媒は疎水性シリカ微粒子がその表面処理中に凝集する傾向が見られる為、凝集性の少ない疎水性シリカ微粒子を得たい場合は非極性の溶媒を用いるほうが好ましいがこれも特に限定されない。具体的な溶媒としては、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、アセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン等その他溶媒が上げられる。溶媒による希釈割合も特に限定されないが、粘度の高いシリコーンオイルを使用する場合、無機粉末のコーティングにいわゆる「むら」が発生しやすくなるので、この場合一般的に希釈割合は高くなる傾向にある。より具体的には、該当シリコーンオイルと溶媒との割合は一般的には1/0.3〜1/5程度の割合で用いられる。無機粉末へ該当シリコーンオイルをコーティングする手法も特に限定されず、無機粉末を攪拌しながら該当シリコーンオイルをスプレーにて吹き付ける方法、流動層にて流動化状態にしながら該当シリコーンオイルを導入する方法等種々の方法を用いる事ができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0031】
先ず、実施例1として、平均一次粒子経が40nmであって、BET比表面積が50m2/gのフュームドシリカ(日本アエロジル社製 商品名:「AEROSIL(商標登録)OX50」)100重量部を反応容器に入れ、窒素雰囲気の下、攪拌しながら約30重量部のシリコーンオイル(信越化学工業社製 KF−96 50cs)を25重量部のノルマルヘキサンで希釈した溶液をスプレーした。そして、この反応混合物を300℃で60分、窒素気流化で攪拌して乾燥し、その後冷却して、疎水性シリカ粉末を作製した。
【0032】
また、実施例2〜5、比較例1〜8の疎水性シリカについて、実施例1と同様の操作でシリコーンオイルの種類、量(全て信越化学工業社製)、および熱処理温度を変えることでサンプルを作成した。
【0033】
次に、上記で作製した各疎水性シリカ粉末を以下の方法にて測定、評価した。
【0034】
(疎水率)
疎水性シリカ粉末1.0gを分液ロートに計り採り、これに純水100mlを加えて栓をし、ターブラーミキサーで10分間振とうした後、10分間放置した。その後、下層の20〜30mlをロートから抜き取った後に、下層の混合液を10mm石英セルに分取し、純水をブランクとして比色計にかけ、その500nmの透過率の測定値を疎水率とした。
【0035】
(帯電量)
ガラス容器にフェライトキャリア50gと疎水性シリカ粉末0.1gを入れ、ターブラーミキサーで5分間振とうした後、この無機酸化物微粉末と鉄粉の混合粉末を0.1g採取し、ブローオフ帯電量測定装置(京セラケミカル社製 TB−200型)を用い、1分間窒素ブローした後の測定値を帯電量とした。
【0036】
(遊離炭素量)
BUCHI社製ソックスレー抽出装置を用い、疎水性シリカ粉末0.7gを直径28mmの円筒濾紙に入れ、抽出溶媒にはヘキサンを使用し、抽出時間60分、リンス時間30分の条件で疎水性シリカ粉末上の遊離シリコーンオイルを抽出して炭素量(カーボン量)を測定した。抽出前の疎水性シリカ粉末の炭素量に対する抽出後の疎水性シリカ粉末の炭素量の百分率を算出し、抽出処理で失われた炭素量を遊離炭素量とした。なお、疎水性シリカ粉末の炭素量は、元素分析装置(株式会社住友分析センター製 SUMIGRAPH NC−22F)を用いて測定した。
【0037】
(VOC)
22mlのバイアル瓶に疎水性シリカ粉末0.2gのサンプルを秤量し、ヘッドスペースオートサンプラー(パーキンエルマー製TurboMatrix HS)を用い150℃10分間保管後、ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS(島津製作所製CGMS-QP2010))を用いVOC成分の測定を行った。また同様の条件にて各種環状シロキサンサンプル(D3、D4、D5、D6)の検量線を作成し、測定サンプルの定量を行った。各シロキサンで定量された総量(ppm)をサンプルのVOC成分とした。なおGCMS条件を下記の通りに設定した。
Flow rate, 4.8ml/min、initial temp, 40℃、final temp, 250℃ (keep 0.5min)、heatup rate, 20℃/min、column:RESTEK Rtx-1 (Crossbond 100%dimethylpolysioxane) 30meter 0.25mmID 0.25μmdf
【0038】
(帯電量の経時安定性)
ガラス容器にフェライトキャリア50gと疎水性シリカ粉末0.1gを入れ、温度40℃及び湿度80%の環境下で30日間放置した。その後、この混合粉末をターブラーミキサーで5分振とうした後、混合粉末を0.1g採取し、ブローオフ帯電量測定装置を用い、1分間窒素ブローした後の帯電量を測定した。そして、放置前の疎水性シリカ微粒子の帯電量を100%とした場合における放置後の帯電量(%)を求め、その変化(%)を求めた。
【0039】
(クリーニング性)
先ず上記で作成した疎水性シリカ微粒子を1.5wt%含有するトナー組成物を作製する。その際、7〜25nmの平均一次粒子径の疎水性シリカの場合は1.5wt%のHMDS処理した一次平均粒径40nmのシリカ(AEROSIL(登録商標)RX50)と、25〜40nmの平均一次粒子径の疎水性シリカの場合は1.5wt%のHMDS処理した一次平均粒子径12nmのシリカ(AEROSIL(登録商標)RX200)をそれぞれ併用し、合計3.0%の添加量として、実施例6、7とした。
【0040】
そして、クリーニング性の評価として、リコー社製イプシオSPC411を使用して、クリーニング性のテストを行なった。まず、5000枚ランニングして、この最初と最後にクリーニングテストを行なった。
【0041】
テスト原稿(A3サイズ)としては、コピー紙の搬送方向に細長の幅3cm×42cmの黒帯(画像濃度1.40)を使用し、10枚連続コピーをとり、10枚目のコピーの途中で機械を停止させて、感光体上で、クリーニング性を確認した。
【0042】
上記方法にて測定、評価した結果を表1〜3に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
実施例1〜5では、温度40℃−湿度80%の環境下で30日間放置した場合でも、疎水性シリカ粉末の帯電量の変化は−20%以下と小さく、帯電量の十分な経時安定性を示すことが分かった。
【0047】
また、実施例1〜7のシリカを含有するトナーを使用した場合、初期及び5000枚時点でクリーニング不良は全く見られず、デジタル複写機のクリーニング性が良好であった。また画像濃度と全く変わらない高画質が維持されていた。
【0048】
一方、比較例1〜8では、同環境下で30日間放置すると、疎水性シリカ粉末の帯電量の変化が−25〜−50%と大きく、経時安定性が不十分であることが分かった。また、デジタル複写機のクリーニング性も良好ではなかった。
【0049】
この結果、シリコーンオイルで疎水化処理された疎水性シリカ微粒子であって、粉末表面に残存する炭素含有量が5.0〜10wt%であり、(1)平均一次粒子経が25〜40nm、疎水率が95%以上、遊離炭素量が3.0〜5.0wt%である疎水性シリカ微粒子、或いは(2)平均一次粒子経7〜25nm、疎水率が95%以上、遊離炭素量が1.0〜3.0wt%の疎水性シリカ微粒子を作製することにより、帯電量の経時変化が小さい疎水性シリカ微粒子を得られることが分かった。また、本疎水性シリカ微粒子を外添剤とするトナーを作製すると、画像形成装置のクリーニングの作業性を向上できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の疎水性シリカ微粒子は、帯電量の経時安定性に優れており、トナーの流動性に加え帯電安定性が大きく改善される。すなわち、本発明の疎水性シリカ微粒子をトナーに添加することにより、湿度や温度の環境条件に左右されず経時的に非常に安定した帯電性が実現される。このため、本シリカ微粒子を画像形成装置のトナー或いは現像剤に用いることにより、多数枚数の出力を繰り返しても良好な画像再現性が維持される。更に、本トナー或いは現像剤を用いて画像形成を行う場合に、画像形成装置においてトナーや現像剤が付着する可能性のある部材等を容易にクリーニングすることができ、メンテナンス性を向上することができ、コスト低減に繋がる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンオイルで疎水化処理された疎水性シリカ微粒子であって、粉末表面に残存する炭素含有量が5.0〜10wt%であり、平均一次粒子経が7〜25nm、疎水率が95%以上、遊離炭素量が1.0〜3.0wt%であることを特徴とする疎水性シリカ微粒子。
【請求項2】
揮発性有機化合物量が40ppm以上120ppm以下であることを特徴とする請求項1記載の疎水性シリカ微粒子。
【請求項3】
シリコーンオイルで疎水化処理された疎水性シリカ微粒子であって、粉末表面に残存する炭素含有量が5.0〜10wt%であり、平均一次粒子経が25〜40nm、疎水率が95%以上、遊離炭素量が3.0〜5.0wt%であることを特徴とする疎水性シリカ微粒子。
【請求項4】
揮発性有機化合物量が5ppm以上50ppm以下であることを特徴とする請求項3記載の疎水性シリカ微粒子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の疎水性シリカ微粒子を0.1〜4.0wt%含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
シリコーンオイルで疎水化処理された疎水性シリカ微粒子の製造方法であって、シリカ微粒子に粘度10〜500csのシリコーンオイルを塗付後200℃以上400℃以下で熱処理し、粉末表面に残存する炭素含有量が5.0〜10wt%であり、平均一次粒子経が7〜25nm、疎水率が95%以上、遊離炭素量が1.0〜3.0wt%である疎水性シリカ微粒子を製造することを特徴とする製造方法。
【請求項7】
シリコーンオイルで疎水化処理された疎水性シリカ微粒子の製造方法であって、シリカ微粒子に粘度10〜500csのシリコーンオイルを塗付後200℃以上400℃以下で熱処理し、粉末表面に残存する炭素含有量が5.0〜10wt%であり、平均一次粒子経が25〜40nm、疎水率が95%以上、遊離炭素量が3.0〜5.0wt%である疎水性シリカ微粒子を製造することを特徴とする製造方法。

【公開番号】特開2012−236752(P2012−236752A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108573(P2011−108573)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(390018740)日本アエロジル株式会社 (14)
【Fターム(参考)】