説明

疎水性シリカ微粒子及び電子写真用トナー組成物

【課題】トナーへの分散性やトナーの流動性低下の原因となる粗大な凝集粒子を含まず、また、トナーからの脱離を抑制することができ、従って、トナーへの均一分散性と流動性の付与効果に優れ、印刷画像上の白点の発生を抑制できる、トナー外添剤として好適な微細な一次粒子径を有するシリカ微粒子を提供する。
【解決手段】気相法により得られた平均一次粒子径が20〜100nmの親水性シリカ微粒子をヘキサメチルジシラザンで疎水化処理してなる疎水性シリカ微粒子であって、レーザー回折法による粒子の体積基準粒子径測定で粒子径1.5μm以上の凝集粒子の割合が8%未満であることを特徴とする疎水性シリカ微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体塗料や電子写真用トナー、化粧料等の粉体系材料において、流動性改善、固結防止、帯電調整等の目的で添加される疎水性シリカ微粒子と、この疎水性シリカ微粒子を用いた電子写真用トナー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
微細なシリカ、チタニア、アルミナなどの無機酸化物粉末の表面を有機物によって処理して帯電性や疎水性を改善したいわゆるシリカ微粒子は、複写機、レーザープリンタ、普通紙ファクシミリ等を含む電子写真において、トナー流動性改善剤、或いは帯電性調整剤として広く用いられている。
【0003】
従来、このような用途に用いられる無機酸化物粉末のうち、気相法シリカ(乾式法で製造されたシリカ)は、一次粒子径が小さく、その表面処理による帯電性の制御と疎水化処理で、トナー外添剤として優れた機能を奏することが期待され、最も一般的に使用されている(例えば特許文献1〜3)。
【0004】
しかし、気相法シリカは一次粒子径が小さいものの、一次粒子径が小さいゆえに、凝集し易く、凝集粒子を形成したものが多く、その凝集粒子径は、通常10μmから200μm以上にもなる。
【0005】
このような凝集粒子は、トナーへの分散工程において強い摩擦力を受けてほぐされながらトナー間に分散するが、強い凝集力で大きな凝集体を形成しているものは、トナーへの分散性も悪く、このような凝集粒子がトナー中に混入することで、流動性を低下させるほか、トナーからも容易に脱落し、紙面上で白点となって現れる異常画像の問題を引き起こす。
【0006】
なお、特許文献4には、「珪素化合物の燃焼によって得られるシリカ微粒子であって、平均粒子径が0.05μm以上0.1μm未満の範囲であり、且つ、ロジン−ラムラー線図で表示した粒度分布の勾配nが2以上であり、またレーザ回折・散乱法による測定で1μm以上の溶融粒子を含まないことを特徴とするシリカ微粒子。」が記載されているが、このようなシリカ微粒子ではトナー粒子への埋没を抑えることはできるものの、表面処理剤とシリカ微粒子を混合して疎水化などの表面処理を行う過程で凝集粒子が形成されるため、トナーへの十分な分散性および流動性を得ることができない。しかも、100nmを超える一次粒子径を持つシリカ微粒子ではトナーに十分な流動性を付与することができない。
【特許文献1】特開2004−145325号公報
【特許文献2】特開2006−99006号公報
【特許文献3】特開2007−34224号公報
【特許文献4】特開2006−206414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、トナーへの分散性やトナーの流動性低下の原因となる粗大な凝集粒子を含まず、また、トナーからの脱離を抑制することができ、従って、トナーへの均一分散性と流動性の付与効果に優れ、印刷画像上の白点の発生を抑制できる、トナー外添剤として好適な微細な一次粒子径を有するシリカ微粒子を提供することを目的とする。
【0008】
本発明はまた、このような高分散性疎水性シリカ微粒子を用いた電子写真用トナー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、気相法シリカ微粒子の平均一次粒子径と、この気相法シリカ微粒子に対して特定の疎水化処理を施してなる疎水性シリカ微粒子の凝集粒子の割合を制御することにより、トナーからの脱離の問題がなく、トナーへの均一分散性と流動性の付与効果に優れ、印刷画像上の白点の発生を抑制できる、トナー外添剤として好適な疎水性シリカ微粒子を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0011】
[1] 気相法により得られた平均一次粒子径が20〜100nmの親水性シリカ微粒子をヘキサメチルジシラザンで疎水化処理してなる疎水性シリカ微粒子であって、レーザー回折法による粒子の体積基準粒子径測定で粒子径1.5μm以上の凝集粒子の割合が8%未満であることを特徴とする疎水性シリカ微粒子。
【0012】
[2] [1]において、親水性シリカ微粒子の平均一次粒子径が50nm未満であることを特徴とする疎水性シリカ微粒子。
【0013】
[3] [2]又は[2]において、疎水率が95%以上であることを特徴とする疎水性シリカ微粒子。
【0014】
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、トナー外添用シリカ微粒子であることを特徴とする疎水性シリカ微粒子。
【0015】
[5] [1]ないし[4]のいずれかに記載の疎水性シリカ微粒子を外添したことを特徴とする電子写真用トナー組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明の疎水性シリカ微粒子は、気相法により得られた、平均一次粒子径が20〜100nmと非常に微細な一次粒子よりなる親水性シリカ微粒子をヘキサメチルジシラザンで疎水化処理してなり、しかも、レーザー回折法による粒子の体積基準粒子径測定において、粒子径1.5μm以上の凝集粒子の割合が8%未満と、粗大な凝集粒子を殆ど含まないため、トナー等への均一分散性に優れ、シリカ微粒子本来の流動性改善効果を有効に発揮することができ、また、トナーからの脱落の問題もないため、印刷画像上の白点の発生を抑制することができる。
このような本発明の疎水性シリカ微粒子は、粉体塗料や電子写真用トナー、化粧料等の粉体材料系において、流動性改善、固結防止、帯電調整等の目的で添加されるシリカ微粒子として工業的に極めて有用である。
【0017】
本発明に係る親水性シリカ微粒子の平均一次粒子径は50nm以下であることが好ましい(請求項2)。
【0018】
また、本発明の疎水性シリカ微粒子の疎水率は95%以上であることが好ましい(請求項3)。
【0019】
また、本発明の疎水性シリカ微粒子はトナー外添用シリカ微粒子として有効である(請求項4)。
【0020】
本発明の電子写真用トナー組成物は、このような本発明の疎水性シリカ微粒子を外添したものであり、流動性に優れ、白点画像等の画像欠陥を生じにくい、高特性電子写真用トナー組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の疎水性シリカ微粒子及び電子写真用トナー組成物の実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
[疎水性シリカ微粒子]
本発明の疎水性シリカ微粒子は、気相法により得られた平均一次粒子径が20〜100nmの親水性シリカ微粒子をヘキサメチルジシラザンで疎水化処理してなる疎水性シリカ微粒子であって、レーザー回折法による粒子の体積基準粒子径測定で粒子径1.5μm以上の凝集粒子の割合が8%未満であることを特徴とする。
【0023】
<気相法による親水性シリカ微粒子>
本発明に係る気相法による親水性シリカ微粒子は、乾式法シリカとも呼ばれ、その製法は珪素化合物の火炎加水分解、火炎中燃焼法による酸化、あるいはこれらの反応の併用による方法で製造されたものであれば良く、特に制限されない。中でも火炎加水分解法により製造された気相法シリカが好適に用いられる。市販されている製品としては、日本アエロジル社製あるいはエボニックデグサ社製の「アエロジル」、キャボット社製の「キャボジル」、ワッカー社製の「HDK」、トクヤマ社製の「レオロシール」等がある。
【0024】
火炎加水分解法による気相法シリカの製造方法は、例えば、四塩化ケイ素等の原料珪素化合物のガスを不活性ガスと共に燃焼バーナーの混合室に導入し、水素及び空気と混合して所定比率の混合ガスとし、この混合ガスを反応室で1000〜3000℃の温度で燃焼させて生成させ、冷却後、生成したシリカをフィルターで捕集する方法である。火炎加水分解法についてのより詳細な製造方法としては、ドイツ特許第974,793号、同第974,974号及び同第909,339号の各公報に記載の方法を参照することができる。
【0025】
火炎中燃焼法は、アルキルシラン、アルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物を火炎中で燃焼分解する方法である。すなわち、アルキルシラン、アルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物を加熱蒸発させて窒素ガスなどの不活性ガスに伴流させるか、又は噴霧させて、酸水素火炎などの火炎中に導入し、この火炎中で燃焼分解させる。
【0026】
気相法シリカの原料として用いられる珪素化合物としては、各種の無機珪素化合物、有機珪素化合物が挙げられる。例えば、四塩化珪素、三塩化珪素、二塩化珪素などの無機珪素化合物、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンなどのシロキサン、メチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、トリメチルブトキシシランなどのアルコキシシラン、テトラメチルシラン、ジエチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、或いはこれらのオリゴマー、ポリマーなどの有機珪素化合物が挙げられる。
【0027】
このような珪素化合物の火炎中での加水分解及び燃焼分解は、この珪素化合物を必要に応じて蒸留などで精製した後、加熱蒸発させてこれを窒素ガスなどの不活性ガスに伴流させる気流伴送法や、珪素化合物を霧化させて火炎中に供給する方法で、酸水素火炎などの火炎中に導入し、この火炎中で反応させて行えばよいが、この際には、水素ガス、メタンガスなどのような可燃性ガスを助燃ガスとしてもよい。この助燃ガスとしては残渣の残らないものであればいずれも使用することができ、特に制限はない。
【0028】
珪素化合物の加水分解又は燃焼分解で生成したシリカは、バグフィルター、サイクロンなど公知の方法で捕集される。
【0029】
このような気相法シリカは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0030】
<平均一次粒子径>
本発明において、気相法により得られ、疎水化処理に供される親水性シリカ微粒子は、平均一次粒子径が20〜100nmであることを特徴とする。親水性シリカ微粒子の平均一次粒子径が100nmより大きいと、得られる疎水性シリカ微粒子のトナーへの分散性が悪く、流動性向上効果に劣るものとなる。平均一次粒子径が20nmより小さい気相法シリカ微粒子は凝集し易く、凝集粒子の割合が多くなるため好ましくない。
【0031】
特に、流動性付与効果の面から、親水性シリカ微粒子の平均一次粒子径は50nm以下、例えば45nm以下であることが好ましい。
特に、凝集粒子割合の面から、親水性シリカ微粒子の平均一次粒子径は30nm以上であることが好ましい。
【0032】
なお、本発明に係る親水性シリカ微粒子の平均一次粒子径は、後述の実施例の項に示されるように、透過型電子顕微鏡観察により求められる。
【0033】
<BET比表面積>
気相法により得られる親水性シリカ微粒子のBET比表面積は主に平均一次粒子径に依存するが、本発明の実施において疎水化処理に供される親水性シリカ微粒子のBET比表面積は10〜120m/gが好ましく、さらには15〜90m/gが好ましい。親水性シリカ微粒子のBET比表面積が小さ過ぎると、得られる疎水性シリカ微粒子のトナーへの分散性が悪く、流動性向上効果に劣るものとなる。BET比表面積が大き過ぎる気相法シリカ微粒子は粉砕後に凝集し易く、また凝集力が強いため好ましくない。
【0034】
特に、流動性付与効果の面から、親水性シリカ微粒子のBET比表面積は25〜90m/gであることが好ましい。
【0035】
なお、本発明に係る親水性シリカ微粒子のBET比表面積は、後述の実施例の項に示されるように、BET法により求められる。
【0036】
<疎水化処理>
本発明の疎水性シリカ微粒子は、上述のような平均一次粒子径を有する気相法による親水性シリカ微粒子をヘキサメチルジシラザンで疎水化処理してなるものである。
【0037】
シリカ微粒子の疎水化処理の方法としては、例えば、特許第3229174号公報に記載されるような、シランカップリング剤とシリコーンオイルを用いる方法、特公昭61−50882号公報に記載されるようなオルガノハロゲンシランを用いる方法、特公昭57−2641号公報に記載されるようなオルガノポリシロキサンを用いる方法、特開昭62−171913号公報に記載されるようなシロキサンオリゴマーを用いる方法などが挙げられる。
【0038】
これらのうち、特に、本発明では、疎水性が高くトナーへの流動性の付与効果の高い表面処理方法であるヘキサメチルジシラザンによる方法を採用する。
【0039】
ヘキサメチルジシラザンによる疎水化処理は、具体的には次のようにして実施される。
【0040】
平均一次粒子径20〜100nmの気相法シリカ粉末100重量部を反応容器に入れ、窒素雰囲気下、水0.1〜20重量部と、ヘキサメチルジシラザン0.5〜30重量部をスプレーする。この反応混合物を50〜250℃で0.5〜3時間攪拌し、さらに140〜250℃にて0.5〜3時間程度、窒素気流下で攪拌して乾燥する。これを冷却することにより、疎水化シリカ微粒子を得る。
【0041】
このような疎水化処理において、親水性シリカ微粒子100重量部の疎水化処理に用いる水とヘキサメチルジシラザンの量は、疎水化処理に供する親水性シリカ微粒子のBET比表面積に対して、次のような式で算出される量であることが好ましい。
ヘキサメチルジシラザン(重量部)
=親水性シリカ微粒子のBET比表面積(m/g)/H
上記計算式において、Hは3〜30、特に5であることが好ましい。
水(重量部)=親水性シリカ微粒子のBET比表面積(m/g)/W
上記計算式において、Wは5〜200、特に18であることが好ましい。
上記範囲よりもヘキサメチルジシラザンの使用量が多いと疎水化処理後の生成物に凝集物が多く発生し、少ないとトナー外添剤として十分な疎水性が付与されない。また、水の使用量が多いと凝集物が多くなり、さらに十分な疎水性が得られない。水の使用量が少ないとヘキサメチルジシラザンとシリカ表面の反応が十分進行せず、やはり十分な疎水性が得られない。
【0042】
なお、ヘキサメチルジシラザンと水とは各々別々に親水性シリカ微粒子に対してスプレーしても良いが、アルコールなどの溶媒で希釈してそれぞれスプレーしても良く、またこのような溶媒にヘキサメチルジシラザンと水の両方を溶解させて同時にスプレーしても良い。
【0043】
本発明では、このような疎水化処理により、後述の実施例の項に記載される方法で測定される疎水率が95%以上、特に97%以上のシリカ微粒子とすることが好ましい。
【0044】
<凝集粒子の割合>
本発明の疎水性シリカ微粒子は、レーザー回折法による粒子の体積基準粒子径測定で粒子径1.5μm以上の凝集粒子の割合(以下、この割合を「レーザー回折法凝集粒子割合」と称す場合がある。)が8%未満であることを特徴とする。即ち、例えば、図1に示すレーザー回折法による粒子の体積基準粒子径測定における回折チャートにおいて、1.5μm以上の凝集粒子の分布割合が8%未満であることを特徴とする。
このレーザー回折法凝集粒子割合が8%以上では、大きな凝集粒子が多いことにより、トナーへの均一分散性に劣り、良好な流動性、白点の少ない良好な印刷画質を得ることができない。
【0045】
レーザー回折法凝集粒子割合は小さい程好ましく、特に6%以下、とりわけ3%以下であることが好ましい。
【0046】
なお、このレーザー回折法凝集粒子割合は後述の実施例の項に示されるように、堀場製作所社製レーザー回折式粒度分布計「LA920」を用いて、シリカ微粒子のエタノール分散液に対して測定することにより求められる。
【0047】
上述のレーザー回折法凝集粒子割合の本発明の疎水性シリカ微粒子は、前述の気相法により製造された親水性シリカ微粒子をヘキサメチルジシラザンを用いて疎水化処理したものを原料に用い、ピンミル、ジェットミル等の粉砕機で粉砕した後、気流式分級法などにより分級して微粉のみを回収し、この粉砕、分級を必要に応じて繰り返すことにより得ることができる。
この際、分級で分離された粗粒分は、粉砕工程へ循環させることが工程の効率において好ましい。
なお、分級と粉砕が同時に行われる機構を備えた粉砕機や、分級工程が粉砕機に組み込まれた粉砕機を用いる場合、分級が不十分であると判断された場合には、別途分級機を設置して、より高度な分級工程を行うようにすることが好ましい。
【0048】
前述の疎水化処理によりシリカ微粒子の凝集が起こることから、疎水化処理はこの粉砕・分級処理に先立ち行い、疎水化処理後に上述の粉砕・分級処理を行う。
【0049】
[電子写真用トナー組成物]
本発明の電子写真用トナー組成物は、上述の本発明の疎水性シリカ微粒子を外添したものであり、その組成やその製造方法には特に制限はなく、公知の組成及び方法を採用することができる。
【0050】
本発明の電子写真用トナー組成物の製造に当り、本発明の疎水性シリカ微粒子の添加量は、所望の特性向上効果が得られるような添加量であれば良く、特に制限されないが、電子写真用トナー組成物中に、本発明の疎水性シリカ微粒子が0.1〜6.0重量%含有されていることが好ましい。電子写真用トナー組成物中の本発明の疎水性シリカ微粒子の含有量が0.1重量%未満では、このシリカ微粒子を添加したことによる流動性の改善効果や帯電性の安定効果が十分に得られない。また、シリカ微粒子の含有量が6.0重量%を超えるとトナー表面から脱離してシリカ微粒子単独で行動するものが多くなり、画像やクリーニング性に問題が生じてくる。
【0051】
電子写真用トナー組成物中の本発明の疎水性シリカ微粒子の含有量S(重量%)はまた、疎水性シリカ微粒子の製造に用いた親水性シリカ微粒子の平均一次粒子径R(nm)に対して、R/40≦S≦R/7の範囲であることが好ましく、特にS=R/20であることが好ましい。
【0052】
トナーには一般に熱可塑性樹脂の他、少量の顔料及び電荷制御剤、その他の外添剤が含まれている。本発明では、上記シリカ微粒子が配合されていれば、他の成分は従来と同様で良く、磁性、非磁性の1成分系トナー、2成分系トナーのいずれでも良い。また、負帯電性トナー、正帯電性トナーのいずれでも良く、モノクロ、カラーのどちらでも良い。
【0053】
なお、本発明の電子写真用トナー組成物の製造に当り、外添剤としての本発明の疎水性シリカ微粒子は、単独で使用されるに限られず、目的に応じて、他の金属酸化物微粒子と併用しても良い。例えば、上記シリカ微粒子と、他の表面改質された乾式シリカ微粒子や表面改質された乾式酸化チタン微粒子や表面改質された湿式酸化チタン微粒子等を併用することができる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0055】
なお、以下の実施例及び比較例におけるシリカ微粒子及びトナー組成物の評価方法は次の通りである。
【0056】
[シリカ微粒子の評価]
<平均一次粒子径>
透過型電子顕微鏡像上で、シリカ微粒子サンプルから無作為の粒子2500個以上の粒子径を測定し、個数平均により平均一次粒子径を求めた。
【0057】
<BET比表面積>
BET法により測定した。
【0058】
<レーザー回折法凝集粒子割合>
凝集粒子割合の測定には、堀場製作所製レーザー回折式粒度分布計「LA920」を用いた。測定溶媒にはエタノールを用いた。疎水性シリカ微粒子サンプル約0.2gを用い、装置所定の方法に従って測定を行った。測定前処理として、強度30Wの超音波を5分間照射してサンプルを分散した。図1に示すような体積平均粒径の測定結果から、粒子径1.5μm以上の凝集粒子の割合を求めた。
【0059】
<疎水率>
疎水性シリカ微粒子サンプル1gを200mLの分液ロートに計り採り、これに純水100mLを加えて栓をし、ターブラーミキサーで10分間振盪した。振盪後、10分間静置した。静置後、下層の20〜30mLをロートから抜き取った後に、下層の混合液を10mm石英セルに分取し、純水をブランクとして比色計にかけ、その波長500nmの光の透過率を疎水率とした。
【0060】
[トナー組成物の評価]
<安息角>
トナー組成物の安息角は、パウダーテスターPT−S(ホソカワミクロン社製)を用いて測定した。約20gのトナーサンプルを目開き355μmの篩に載せ、振動により落下するトナーサンプルを漏斗を通して、この漏斗先端から約6.5cm下方に設置した直径8cmの円形テーブルに堆積させた。円錐状に形成された堆積トナーサンプルの、水平面に対する側面の角度を安息角とした。
測定されたトナー組成物の安息角が小さいほど、シリカ微粒子中の凝集粒子が小さく、流動性に優れる。
本発明においては、安息角39°以下で合格とした。
【0061】
<白点画像の評価方法>
トナー組成物を市販の複写機に充填し、1000枚の連続通紙で3cm×3cmのベタ画像を印刷し、その画像上に見られる、直径0.1mm以上の白点の個数をカウントし、1枚あたりの平均個数を計算した。
本発明においては、この白点画像の平均個数が4以下で合格とした。
【0062】
[実施例1]
気相法シリカ微粒子として日本アエロジル(株)製商品名「AEROSIL(登録商標)90」(BET比表面積90m/g、平均一次粒子径20nm)を用い、この気相法シリカ微粒子を、以下の条件で疎水化処理した後、以下の条件で粉砕、分級することにより、表1に示す平均一次粒子径及びレーザー回折法凝集粒子割合のシリカ微粒子を得た。
【0063】
<疎水化処理>
気相法シリカ微粒子100重量部を反応容器に入れ、窒素雰囲気下、水5重量部とヘキサメチルジシラザン18重量部をスプレーした。この反応混合物を150℃で2時間攪拌し、さらに220℃にて2時間、窒素気流下で攪拌して乾燥した。これを冷却することにより、疎水化シリカを得た。
【0064】
<粉砕・分級処理>
粉砕機としてカウンタージェットミル(ホソカワミクロン社製)を使用し、分級装置としてターボプレックス1000ATP(ホソカワミクロン社製)を用いて粉砕・分級処理を行った。分離した粗粉は配管を通じてジェットミルに連続的に循環導入して、再度粉砕・分級処理に供した。
【0065】
得られた疎水化・低凝集化シリカ微粒子について、凝集粒子割合及び疎水率の評価を行って結果を表1に示した。
【0066】
また、このシリカ微粒子を用いて、以下の配合でトナー組成物を調製し、その評価を行って結果を表1で示した。
【0067】
<トナー組成物の調製>
粉砕法により製造された平均粒子径8μmの負帯電スチレン−アクリル樹脂2成分トナー(三笠産業社製)を使用し、このトナーとシリカ微粒子との合計100重量部に対して、シリカ微粒子の配合量が以下の割合となるように混合した。
シリカ微粒子配合量(重量部)
=親水性シリカ微粒子の平均一次粒子径(nm)/20
上記混合物をヘンシェルタイプのミキサーに入れ、600回転/分で1分間攪拌し、さらに3000回転/分で3分間攪拌してシリカ微粒子をトナー表面に分散させることによって、トナー組成物を調製した。
【0068】
[実施例2〜4、比較例1〜4]
実施例1において、気相法シリカ微粒子として、表1に示すものを用い、疎水化、粉砕・分級条件を変えて疎水化・分級シリカ微粒子を製造し、このシリカ微粒子を用いて同様にトナー組成物を調製した。
【0069】
なお、疎水化処理におけるシリカ微粒子100重量部当たりのヘキサメチルジシラザンと水の使用量は、疎水化処理に供したシリカ微粒子のBET比表面積に応じて、次の式で算出される量とした。
ヘキサメチルジシラザン(重量部)
=親水性シリカ微粒子のBET比表面積(m/g)/5
水(重量部)=親水性シリカ微粒子のBET比表面積(m/g)/18
得られたシリカ微粒子及びトナー組成物の評価結果を表1に示した。
【0070】
なお、比較例4で得られた疎水化・分級シリカ微粒子のレーザー回折法による粒子の体積基準粒子径測定における粒度分布を図1に示した。
【0071】
【表1】

【0072】
表1より、本発明によれば、凝集粒子が小さくかつ少なく、トナーへの均一分散性に優れた均一粒子径のシリカ微粒子により、良好な流動性及び画像品質の高いトナー組成物を実現することができることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】レーザー回折法による粒子の体積基準粒子径測定における比較例4のシリカ微粒子の粒度分布を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相法により得られた平均一次粒子径が20〜100nmの親水性シリカ微粒子をヘキサメチルジシラザンで疎水化処理してなる疎水性シリカ微粒子であって、レーザー回折法による粒子の体積基準粒子径測定で粒子径1.5μm以上の凝集粒子の割合が8%未満であることを特徴とする疎水性シリカ微粒子。
【請求項2】
請求項1において、親水性シリカ微粒子の平均一次粒子径が50nm以下であることを特徴とする疎水性シリカ微粒子。
【請求項3】
請求項1又は2において、疎水率が95%以上であることを特徴とする疎水性シリカ微粒子。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、トナー外添用シリカ微粒子であることを特徴とする疎水性シリカ微粒子。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の疎水性シリカ微粒子を外添したことを特徴とする電子写真用トナー組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−85837(P2010−85837A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256383(P2008−256383)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(390018740)日本アエロジル株式会社 (14)
【Fターム(参考)】