説明

疎水性無機微粒子の製造方法及び疎水性無機微粒子

【課題】優れた流動性、帯電性、耐久性をトナーに付与できる疎水性無機微粒子の製造方法を提供することにある。
【解決手段】個数基準での粒度分布における平均1次粒径が5乃至25nmであり、個数基準での粒度分布における最大ピーク粒子径が20nm以下である小粒径無機微粒子と、個数基準での粒度分布における平均1次粒径が、該小粒径無機微粒子の個数基準での粒度分布における平均1次粒径の1.5乃至100倍である大粒径無機微粒子とを、同一の処理槽内で撹拌しながら疎水化処理を行う工程を有することを特徴とする疎水性無機微粒子の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電印刷法、及びトナージェット法の如き画像形成方法に用いられる疎水性無機微粒子、及び該疎水性無機微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーの帯電性、流動性の如きトナー特性を調整して良好な現像特性を得る目的で、トナー粒子に小粒径無機微粒子を外添することが一般に知られている。
【0003】
このような小粒径無機微粒子が外添されているトナーは、例えば二成分現像剤として用いられたときの、キャリアとのストレス、一成分現像剤として用いられた時の現像ブレード、現像スリーブからのストレス、あるいは現像器内壁、トナー撹拌羽根、トナー同士の衝突等により、トナー粒子の表面に小粒径無機微粒子が埋め込まれた状態になることが確認されている。
【0004】
この小粒径無機微粒子の埋没を低減させるには、特許文献1乃至5に開示されているように、大粒径無機微粒子を併用する方法が有効である。
【0005】
大粒径無機微粒子はスペーサーとしての効果を持つ為、小粒径無機微粒子が付着したトナー表面が、キャリア、現像ブレード、現像スリーブ、現像器内壁、トナー撹拌部材及び他のトナー等と直接接するのを防ぎ、ストレスを低減する。これにより、小粒径無機微粒子がトナー粒子の表面に埋没されることを抑え、トナーの長寿命化が達成される。
【0006】
特許文献1には、疎水性シリカ微粒子と疎水性酸化チタン微粒子又は疎水性酸化アルミニウム微粒子を有するトナーであり、疎水性酸化チタン微粒子又は疎水性酸化アルミニウム微粒子が一次粒径で10〜20μmと30〜60μmにピークを有することを特徴とするトナーが開示されている。
【0007】
特許文献2には、BET比表面積80m2/g未満のシリコーンオイル処理された無機微粉末とBET比表面積80m2/g以上のシランカップリング剤処理された無機微粉末を混合することを特徴とするトナーが開示されている。
【0008】
特許文献4には、トナー粒子と少なくとも二種類の外添剤とからなる電子写真用トナーであって、トナー粒子の粒度分布において、5μm以下のものが1乃至8vol%存在し、第一の外添剤の平均粒子径が、一次粒子の個数基準で0.1乃至0.5μmであり、第二の外添剤の平均粒子径が、一次粒子の個数基準で20nm以下であって疎水性であることを特徴とする電子写真用トナーについて開示されている。
【0009】
特許文献6には、外添剤として15乃至20nmの疎水性シリカ微粒子、13nm以下の疎水性シリカ微粒子、アルミナ微粒子を用いるトナーが提案されている。
【0010】
しかしながら、これらのトナーは、粒径の異なる2種類の疎水性無機微粒子を添加しているため、両者の混合性やトナー粒子の表面への分散に問題があり、現像耐久性や帯電安定性が不十分であった。
【0011】
特許文献7には、無機微粒子の個数一次粒径分布曲線において、一次粒径x〔nm〕(但し、20≦x≦50)および一次粒径y〔nm〕(但し、3x≦y≦6x)のそれぞれに個数割合の極大値があり、かつ、一次粒径(x+y)/2〔nm〕における個数割合が10個数%以下であり、(x+y)/2〔nm〕未満の一次粒径を有する小粒径側の無機微粒子の個数割合をX個数%、(x+y)/2〔nm〕以上の一次粒径を有する大粒径側の無機微粒子の個数割合をY個数%とするときに、「X/Y」の値が0.5〜2.0の範囲にあり、トナー粒子の体積平均粒径をz(nm)とするとき、「z/x」の値が150〜400であることを特徴とする現像剤について開示されている。
【0012】
しかしながらこの無機微粒子は、個数一次粒径分布で小粒径側の1次粒径のピークが20nm以上と比較的大きいうえに、大粒径側にもピークを持つ為、重量基準に換算すると小粒径無機微粒子に対して大粒径無機微粒子が非常に多く存在することになり、流動性や帯電性に問題がある。
【0013】
特許文献8乃至10には、転写部材にバイアスを印加する手段によりバイアスを印加し、潜像担持体上の少なくとも2種類の平均粒径の異なる外添剤をトナー粒子に外添混合したトナーを被転写体に転移させる接触転写装置において、トナーの緩み見かけ密度と転写部材硬度との関係を規定した接触転写装置について開示されている。しかしながら、ここで用いられている2種類の平均粒径の異なる外添剤は、それぞれが個別に疎水化処理されている為、両者の凝集性やトナー粒子表面への分散し易さなどが異なり、トナー粒子の表面に両者を均一に分散させることが難しかった。
【0014】
このような技術背景より、疎水化処理が施されていても小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子をトナー粒子表面に容易に均一に分散させられるような、新規疎水性無機微粒子の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平4−204751号公報
【特許文献2】特開平5−346682号公報
【特許文献3】特開平6−313980号公報
【特許文献4】特開平6−332235号公報
【特許文献5】特開平7−92724号公報
【特許文献6】特開平7−104501号公報
【特許文献7】特開平6−313980号公報
【特許文献8】特開平8−36316号公報
【特許文献9】特開2000−56595号公報
【特許文献10】特開2002−23414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、上述の如き問題点を解決した疎水性無機微粒子、及び疎水性無機微粒子の製造方法を提供することにある。
【0017】
すなわち、本発明の目的は、優れた流動性、帯電性、耐久性をトナーに付与できる疎水性無機微粒子を提供することにある。
【0018】
また、本発明の目的は、優れた流動性、帯電性、耐久性をトナーに付与できる疎水性無機微粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、個数基準での粒度分布における平均1次粒径が5乃至25nmであり、個数基準での粒度分布における最大ピーク粒子径が20nm以下である小粒径無機微粒子と、個数基準での粒度分布における平均1次粒径が、該小粒径無機微粒子の個数基準での粒度分布における平均1次粒径の1.5乃至100倍である大粒径無機微粒子とを、同一の処理槽内で撹拌しながら疎水化処理を行う工程を有することを特徴とする疎水性無機微粒子の製造方法に関する。
【0020】
また、本発明は、上記製造方法によって得られた疎水性無機微粒子に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、小粒径無機微粒子、大粒径無機微粒子ともに1次粒子としてトナー粒子表面に存在し得、これにより、少ない添加量で定着性を悪化させずに、トナーに優れた流動性、帯電性を与えることができ、さらにトナーの劣化を防止することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の疎水性無機微粒子の、メタノール濡れ性の測定結果を示す図である。
【図2】磁性トナーを用いて画像形成を行うのに好適な画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図3】磁性トナーを用いて画像形成を行うのに好適なプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明者らは、トナー粒子に添加する疎水性無機微粒子について鋭意研究したところ、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の混合物を同一の処理槽内で同時に疎水化処理した疎水性無機微粒子を使用することで、小粒径疎水性無機微粒子及び大粒径疎水性無機微粒子をトナー粒子の表面に均一に分散、付着させることが可能になり、耐久性に優れた、劣化しにくいトナーが得られることを見出した。
【0024】
小粒径無機微粒子は主にトナーに帯電性や流動性を付与する為に添加されており、大粒径無機微粒子はスペーサー粒子としてトナー粒子の表面に存在することで、トナーと撹拌部材、トナーと現像スリーブ、トナーと現像ブレード、トナーと現像器内壁、トナーとトナー等の接触時に小粒径無機微粒子にかかる負荷を軽減し、小粒径無機微粒子がトナー粒子表面に埋没したり、或いはトナー粒子表面から剥離する等の、トナーの劣化を抑止する働きを付与する為に添加されている。
【0025】
トナー粒子に添加する疎水性無機微粒子は、小粒径無機微粒子、大粒径無機微粒子ともに、凝集体としてではなく、1次粒子としてトナー粒子表面に存在している場合に、トナーの流動性、帯電性、及び劣化防止という働きを最も効果的に発揮できる。
【0026】
小粒径無機微粒子が凝集した状態でトナー粒子表面に存在した場合、トナーに優れた流動性や帯電性を与えにくくなるうえに、トナーの流動性や帯電性付与に有効に働く粒子数が減ってしまう為により多くの量を添加する必要がある。また、多くの量を添加することでトナー粒子の表面が無機微粒子で覆われてしまい、トナーの定着性が悪化することがある。
【0027】
大粒径無機微粒子が凝集した状態で存在すると、トナー粒子との付着力が弱くなりトナーから遊離した状態になりやすく、トナー粒子と挙動が異なってしまい、スペーサー粒子としての働きが弱く、劣化防止効果が得られにくくなる。また、無機微粒子の凝集体はトナーにかかる機械的負荷でほぐれてしまう場合もあるので、凝集状態を制御することが非常に難しく、長期にわたり安定したトナー性能を得ることが難しい。さらには、大粒径無機微粒子の凝集体が存在することでトナー粒子間の距離が大きくなりすぎ、やはり定着性が悪化しやすい。
【0028】
つまり、小粒径無機微粒子、大粒径無機微粒子ともに1次粒子としてトナー粒子表面に存在していることで、少ない添加量で定着性を悪化させずに、トナーに優れた流動性、帯電性を与え、さらにはトナーの劣化を防止することも可能となる。
【0029】
粒径の異なる疎水性無機微粒子をトナーに添加することは従来より行なわれているが、これまでは、粒径の異なる無機微粒子それぞれを個別に疎水化処理し、2種類以上の疎水性無機微粒子をトナー粒子に添加、混合することで所望のトナーを得ようと試みられてきた。疎水化処理された無機微粒子は、無機微粒子表面にカップリング剤やオイルなどの疎水化処理剤が存在するので粒子同士が付着しやすく、凝集しやすい。また、粒径や疎水化度が異なると、無機微粒子の凝集性も異なる為、複数の疎水性無機微粒子をトナー粒子の表面に均一に1次粒子の状態で分散・付着させることが非常に難しかった。さらに、均一に1次粒子の状態で分散・付着させようとすると、凝集性の高いものをまずトナー粒子に添加・混合後に、凝集性の低いものを再度添加して混合するといったように、トナー粒子への添加方法や混合方法を2段階、あるいは3段階に分割する必要があり、各工程でそれぞれ最適な混合強度、混合時間などの条件合わせが必要になり、生産性が低下する等の問題があった。
【0030】
本発明で用いられる疎水性無機微粒子は、小粒径無機微粒子と、大粒径無機微粒子の混合物を同一の処理槽内で同時に疎水化処理を行なう為、疎水化された小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子が1次粒子のレベルで均一に混合されており、また、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の疎水化処理が同一の処理槽内で同時に行なわれるために、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の表面性、凝集性が非常に近い状態になり、トナー粒子に添加混合した場合も、トナー粒子表面に1次粒子の状態で均一に分散させることができ、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子それぞれが持つ効果を十分に発揮することが可能になる。また、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の処理条件が同一である為に粒子毎の処理状態も均一となり、トナーの帯電が非常に安定しやすく、環境による帯電の変動が少な
くなったり、低湿環境でのカブリが改善されたりする。さらには、トナー粒子表面に均一に分散させることが可能になり、無機微粒子の添加量が少量で済む為、定着性も悪化しにくい。
【0031】
この効果は、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子を別々に疎水化処理したものでは、疎水化処理の種類や処理量、処理条件を合わせても達成困難であることがわかった。
【0032】
本発明の疎水性無機微粒子は、個数基準での粒度分布における平均1次粒径が5乃至25nmであり、個数基準での粒度分布における最大ピーク粒子径が20nm以下である小粒径無機微粒子と、該小粒径無機微粒子の個数基準での粒度分布における平均1次粒径の1.5乃至100倍の個数基準での粒度分布における平均1次粒径を持つ大粒径無機微粒子の少なくとも2種以上の無機微粒子を混合する必要がある。
【0033】
小粒径無機微粒子の個数基準での粒度分布における平均1次粒径が5乃至25nm、好ましくは5乃至20nm、より好ましくは10乃至20nmである場合に、トナーに最も高い帯電性と流動性を持たせることができる。小粒径無機微粒子の個数基準での粒度分布における平均1次粒径が5nmより小さい場合は、疎水化した際に小粒径無機微粒子同士の付着力が大きくなりすぎて凝集しやすくなる為、トナー粒子表面に均一に分散させることが難しくなる。小粒径無機微粒子の個数基準での粒度分布における平均1次粒径が25nmより大きくなるとトナーの流動性や帯電性が低くなり、現像性やカブリが悪化する。また、小粒径無機微粒子の個数基準での粒度分布における最大ピーク粒子径が20nm以下、好ましくは15nm以下である場合に大粒径無機微粒子を組み合わせた効果が最も得られやすい。
【0034】
小粒径無機微粒子の個数基準での粒度分布における最大ピーク粒子径が20nmより大きいと、小粒径無機微粒子の粒度分布がブロードになりやすく、トナーの帯電性や流動性が低下しやすい。
【0035】
大粒径無機微粒子の個数基準での粒度分布における平均1次粒径が、小粒径無機微粒子の個数基準での粒度分布における平均1次粒径の1.5乃至100倍、好ましくは1.5乃至30倍、より好ましくは1.5乃至10倍、さらに好ましくは1.5乃至5倍であることも、本発明における重要な因子である。
【0036】
小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の粒径差がこの範囲にある時に、大粒径無機微粒子がスペーサーとしての効果を最も発揮しやすい。
【0037】
大粒径無機微粒子の個数基準での粒度分布における平均1次粒径が、小粒径無機微粒子の個数基準での粒度分布における平均1次粒径の1.5倍より小さい場合には、粒径差が小さすぎて、大粒径無機微粒子のスペーサーとしての効果が得にくくなる。粒径差が100倍よりも大きい場合には、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の流動性やかさ比重等の物性差が大きくなりすぎ、疎水化処理する際に両者を均一に混合するのが難しくなり、大粒径無機微粒子が偏析して、均一な疎水性無機微粒子が得られない場合があり、現像性やカブリが悪化することがある。本発明の疎水性無機微粒子は、該小粒径無機微粒子と該大粒径無機微粒子との含有する比率が質量比(小粒径無機微粒子の質量:大粒径無機微粒子の質量)で1:5乃至50:1であることが好ましい。より好ましくは1:1乃至30:1、さらに好ましくは3:1乃至20:1の質量比で混合したものである。1:5よりも小粒径無機微粒子の質量比が少ないと、小粒径無機微粒子の含有量が少なすぎて、トナーの帯電性や流動性が悪化しやすい。50:1よりも大粒径無機微粒子が少ないと、大粒径無機微粒子のスペーサーとしての効果が小さくなり、トナーが劣化しやすくなる。
【0038】
本発明の疎水性無機微粒子は、疎水化処理前の小粒径無機微粒子のBET比表面積が100m2/g以上500m2/g以下であることが好ましく、より好ましくは100m2/g以上400m2/g以下、さらに好ましくは150m2/g以上350m2/g以下である。また、本発明の疎水性無機微粒子は、疎水化処理前の大粒径無機微粒子のBET比表面積が5m2/g以上100m2/g未満であることが好ましく、より好ましくは20m2/g以上100m2/g未満、さらに好ましくは30m2/g以上80m2/g未満である。
【0039】
小粒径無機微粒子のBET比表面積が100m2/gより小さいと無機微粒子の粒径分布がブロードになる傾向があり、トナーの帯電性や流動性を高める働きが小さくなり、耐久による濃度薄やカブリが悪化しやすい。小粒径無機微粒子のBET比表面積が500m2/gより大きいと、均一に疎水化処理をすることや疎水性を高めることが難しく、無機微粒子間の疎水性に差が出やすくなる。その結果、特に高温高湿環境における現像性が悪化しやすい。
【0040】
大粒径無機微粒子のBET比表面積が5m2/gより小さいと、トナー粒子の表面への付着力が弱くなり、大粒径無機微粒子がトナーから遊離しやすくなるため、トナーの劣化防止効果が小さくなる。大粒径無機微粒子のBET比表面積が100m2/g以上だと、劣化防止に効果を示す粒径の無機微粒子が少なくなる為、劣化防止の効果が得られにくくなる。また、効果を得る為に多くの量を添加する必要が生じ、定着性を悪化させやすくなる。
【0041】
本発明で用いられる無機微粒子としては、湿式製法シリカ、乾式製法シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛及び酸化スズの如き酸化物;チタン酸ストロンチウムやチタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウムやジルコン酸カルシウムの如き複酸化物;炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムの如き炭酸塩化合物等があるが、現像性、流動性向上のために、シリカ、酸化チタン、アルミナ、あるいはそれらの副酸化物から選ばれることが好ましい。また、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の組成を同一にすることが、疎水化処理時に両者を均一に混合するという点で好ましい。
【0042】
特に好ましいのは、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉末であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のようなものである。
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
【0043】
この製造工程において、塩化アルミニウム又は塩化チタン等の他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、本発明に用いられるシリカとしてはそれらも包含する。
【0044】
本発明において、小粒径無機微粒子及び大粒径無機微粒子が、シリカであることが好ましく、より好ましくは乾式法シリカであることが、両者を均一に混合し、疎水化処理するし易さ、また、トナーに帯電性や流動性を与えやすいという観点で特に好ましい。
【0045】
本発明に用いられる無機微粒子は、ネガトナー、ポジトナーのどちらにも適用可能であり、無機微粒子と反応或いは物理吸着する、シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物の如き処理剤の一種又は二種以上により疎水化処理されていることが必要である。
【0046】
特にシラン化合物,シリコーンオイルで処理されたものが好ましく、中でも両者で処理されたものが特に好ましい。すなわち、この2つのタイプの処理剤で表面処理することで疎水化度分布を高疎水性のものに揃え、しかも均質に処理でき、優れた流動性,均一帯電性,耐湿性を付与できるようになり、トナーに良好な現像性、特に高湿下での現像性,耐久安定性を与えることができる。
【0047】
シラン化合物としては、メトキシシラン,エトキシシラン,プロポキシシラン等のアルコキシシラン類、クロルシラン,ブロモシラン,ヨードシラン等のハロシラン類、シラザン類、ハイドロシラン類、アルキルシラン類、アリールシラン類、ビニルシラン類、アクリルシラン類、エポキシシラン類、シリル化合物類、シロキサン類、シリルウレア類、シリルアセトアミド類、及びこれらのシラン化合物類が有する異種の置換基を同時に有するシラン化合物類があげられる。これらのシラン化合物を用いることにより、流動性,転写性,帯電安定化が得られる。これらのシラン化合物は複数用いても良い。
【0048】
具体例として、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン、及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を含有するジメチルポリシロキサン等がある。これらは1種或いは2種以上の混合物として用いても良い。
【0049】
本発明に好ましく用いられるシリコーンオイルとしてはアミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、異種官能基変性の如き反応性シリコーン;ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、脂肪酸変性、アルコキシ変性、フッ素変性の如き非反応性シリコーン;ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ジフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーンの如きストレートシリコーンがあげられる。
【0050】
これらのシリコーンオイルの中でも、置換基として、アルキル基、アリール基、水素原子の一部または全部がフッ素原子に置換されたアルキル基、水素を置換基として有するシリコーンオイルが好ましい。具体的には、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルである。
【0051】
これらのシリコーンオイルは、25℃における粘度が5乃至2,000mm2/sであることが好ましく、より好ましくは10乃至1,000mm2/s、さらに好ましくは30〜100mm2/sである。5mm2/s未満では十分な疎水性が得られないことがあり、2,000mm2/sを超える場合には無機微粒子処理時に均一に処理しずらくなったり、凝集物ができやすく十分な流動性が得られないことがある。
【0052】
また、本発明の疎水性無機微粒子は、窒素含有のシラン化合物Nで処理したものを用いてもよく、特にポジトナーに適用する場合に好ましい。そのような処理剤の例としては、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジプロピルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、モノブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジオクチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルモノメトキシシラン、ジメチルアミノフェニルトリメトキシシラン、トリメトキシシリル−γ−プロピルフェニルアミン、トリメトキシシリル−γ−プロピルベンジルアミン、トリメトキシシリル−γ−プロピルピペリジン、トリメトキシシリル−γ−プロピルモルホリン、トリメトキシシリル−γ−プロピルイミダゾール等がある。これらの処理剤は1種あるいは2種以上の混合物あるいは併用や多重処理して用いられる。
【0053】
さらには他の有機処理として側鎖に窒素原子を有するシリコーンオイルNで処理することも可能であり、特にポジトナーに適用する場合は好ましい。そのようなシリコーンオイルとしては、少なくとも下記式(3)及び/または(4)で示されるユニットを具備するシリコーンオイルがある。
【0054】
【化1】

[式中、R1は水素原子,アルキル基,アリール基またはアルコキシ基を示し、R2はアルキレン基またはフェニレン基を示し、R3及びR4は水素原子,アルキル基またはアリール基を示し、R5は含窒素複素環基を示す。]
【0055】
なお、上記アルキル基、アリール基、アルキレン基、フェニレン基は窒素原子を有するオルガノ基を有していても良いし、ハロゲン原子の如き置換基を有していても良い。
【0056】
これらのシリコーンオイルは1種あるいは2種以上の混合物あるいは併用や多重処理して用いられる。また、シラン化合物による処理と併用しても構わない。
【0057】
上記無機微粒子のシラン化合物処理は、無機微粒子を撹拌によりクラウド状としたものに気化したシラン化合物を反応させる乾式処理又は、無機微粒子を溶媒中に分散させ、シラン化合物を滴下反応させる湿式法の如き一般に知られた方法で処理することができる。
【0058】
無機微粒子のシラン化合物処理は、無機微粒子原体100質量部に対し、処理剤を5〜40質量部、好ましくは5〜35質量部、より好ましくは10〜30質量部添加して処理することが好ましい。
【0059】
オイルによる処理量としては、無機微粒子100質量部に対し3〜35質量部である場合に、トナーに添加した場合に均一に分散しやすく、高温高湿での濃度薄も発生しにくいために好ましい。
【0060】
特に本発明では、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理後に、さらにシリコーンオイルで処理された疎水性無機微粒子が特に好ましく用いられる。ヘキサメチルジシラザンによる処理は、処理の均一性に優れ、流動性の良いトナーが得られるが、ヘキサメチルジシラザンによる処理だけでは高温高湿環境での帯電が安定しにくい。逆にシリコーンオイルによる処理は、高温高湿環境での帯電は高く保てるが、均一な処理が難しく、均一に処理しようとすると処理に必要なシリコーンオイルの量が多くなり、流動性が悪化しやすくなる。ヘキサメチルジシラザンで処理後にシリコーンオイルで処理を行なうと、少ないオイルの量で均一な処理が可能になる為、高い流動性と高温高湿環境での帯電安定性の両立が可能になる。
【0061】
本発明の疎水性無機微粒子は、たとえば以下のようにして疎水化処理を行なうことができる。
【0062】
小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の原体を、任意の質量比であらかじめヘンシェルミキサーの如き混合機で混合したものを処理槽に投入、あるいは混合せずに任意の質量比でそれぞれを処理槽に直接投入して、処理槽内を撹拌翼の如き撹拌部材で撹拌することで小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子を混合しながら、ヘキサメチルジシラザンを所定量滴下或いは噴霧して充分に混合する。このとき、ヘキサメチルジシラザンをアルコールの如き溶媒で希釈して処理することも出来る。混合分散した処理剤を含む無機微粒子原体はパウダーリキッドを形成しており、このパウダーリキッドを窒素雰囲気中でヘキサメチルジシラザンの沸点以上の温度(好ましくは、150乃至250℃)に加熱し、0.5乃至5時間、撹拌しながら還流する。その後、必要に応じて余剰の処理剤の如き余剰物を除去することも可能である。
【0063】
シリコーンオイルによる原体無機微粒子の表面の疎水化処理方法には、公知の技術が用いられ、例えば、ヘキサメチルジシラザン処理と同様に、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の原体を、任意の質量比であらかじめヘンシェルミキサーの如き混合機で混合したものを処理槽に投入、あるいは混合せずに任意の質量比でそれぞれを処理槽に直接投入して、処理槽内を撹拌翼の如き撹拌部材で撹拌することで小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子を混合しながら、無機微粒子とシリコーンオイルとを混合する。シリコーンオイルとの混合はヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合させてもよいし、原体無機微粒子へシリコーンオイルを噴霧する方法によってもよい。或いは、適当な溶剤に、シリコーンオイルを溶解或いは分散せしめた後、ベースの無機微粒子と混合し、その後、溶剤を除去して作製してもよい。
【0064】
シラン化合物及びシリコーンオイルで処理する場合には、原体無機微粒子をシラン化合物で処理後、シリコーンオイルを噴霧し、その後、200℃以上で加熱処理する方法が好適に用いられる。
【0065】
本発明で使用する疎水性無機微粒子の作製に良好に用いられる方法としては、未処理の小粒径無機微粒子と未処理の大粒径無機微粒子、未処理の小粒径無機微粒子とシラン化合物処理した大粒径無機微粒子、シラン化合物処理した小粒径無機微粒子と未処理の大粒径無機微粒子、シラン化合物処理した小粒径無機微粒子とシラン化合物処理した大粒径無機微粒子、のうちから選ばれるいずれかの組み合わせの小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子を、同一の処理槽内で同時にシラン化合物又はシリコーンオイルで処理、あるいはシラン化合物およびシリコーンオイルにより処理するものである。
【0066】
特に、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の均一混合性という観点で、未処理の小粒径無機微粒子と未処理の大粒径無機微粒子の組み合わせが最も好ましい。
【0067】
本発明に係る疎水性無機微粒子の疎水化処理方法としては、小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の原体を所定量バッチ内に仕込み、高速で撹拌することで小粒径無機微粒子と大粒径無機微粒子の原体を均一に混合し、混合しながら混合物の処理をバッチ内で行なうバッチ式処理方法が好ましく、バッチ式処理方法によって得られた疎水性無機微粒子は、均一に処理が施され、品質的にも安定したものが再現性良く得られる。
【0068】
疎水化処理方法として特に好ましいのは、未処理の小粒径無機微粒子と未処理の大粒径無機微粒子をバッチ式処理槽でシラン化合物処理し、処理物を取り出さずにその後さらに同じ処理槽でシリコーンオイル処理を行なう方法が、均一処理、均一分散という点で優れている。
【0069】
本発明では、このように疎水化処理された無機微粒子の中でも、疎水性無機微粒子のメタノール濡れ性が60%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上)であるものを用いることが好ましい。メタノール濡れ性は疎水性無機微粒子の疎水化度をあらわし、メタノール濃度が高いものほど疎水性が高いことを示す。疎水性無機微粒子のメタノール濡れ性が60%未満であると、無機微粒子が吸湿しやすくなる為、高温高湿環境でトナーを長期にわたって使用した場合に帯電量の低下による濃度薄が発生しやすい。
【0070】
本発明の疎水性無機微粒子は、カラートナー、モノクロトナー、磁性トナー、非磁性トナー等いずれのトナーにも適用可能であり、現像方式に関しても、一成分現像、二成分現像、接触現像、非接触現像等、いずれの現像方式においても効果が得られる。
【0071】
なかでも、本発明の疎水性無機微粒子は、現像剤担持体と該現像剤担持体に当接してトナー層厚を規制するトナー層厚規制部材を有する画像形成方法に特に好ましく適用され、さらには、プロセススピードが300mm/秒以上である画像形成方法に用いられるトナーに添加した場合に特に優れた効果を発揮する。現像剤担持体に当接してトナー層厚を規制すると、トナーはトナー層厚規制部材により現像剤担持体に強く押し付けられる為、トナーにかかる機械的な負荷が非常に大きくなる。特にプロセススピードが300mm/秒以上である場合には、当接部位が摩擦により局所的にかなり昇温するので、トナーも温度が高い状態で摩擦されて、トナー粒子表面に付着した無機微粒子が埋め込まれやすく、劣化して濃度薄を発生しやすい。本発明の疎水性無機微粒子は、トナー粒子表面に均一に分散されやすく、大粒径無機微粒子の劣化防止効果が発揮されやすい為、現像剤担持体に当接してトナー層厚を規制するトナー層厚規制部材を有する現像器の高速化に対応することができる。
【0072】
トナー層厚規制部材は、板状のシリコン、ウレタンなどのゴム材料や、SUS、リン青銅などの金属弾性体や、或は、ゴム材料に金属材料を裏打ちしたものを用いることができるが、特にウレタン製の現像ブレードが好ましい。
【0073】
本発明が適用できるトナーは、少なくとも結着樹脂及び着色剤を有するトナー粒子と疎水性無機微粒子を少なくとも有するトナーである。このとき、該トナーは、該トナー全質量に対して該疎水性無機微粒子を0.3乃至5.0質量%含有することが好ましい。該トナー全質量に対する該疎水性無機微粒子の含有量が0.3質量%未満になると、トナーの流動性や帯電性が悪くなることがある。また、該トナー全質量に対する該疎水性無機微粒子の含有量が5.0質量%より越えてしまうと、疎水性無機微粒子を均一に分散させにくくなることや、トナーの定着性が悪くなることがある。
【0074】
トナー粒子に使用される結着樹脂の種類としては、スチレン系樹脂、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニール、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂が挙げられるが、帯電性の環境変動が小さく、定着性に優れるポリエステル樹脂やスチレン系共重合樹脂が好ましく用いられる。
【0075】
スチレン系共重合体のスチレンモノマーに対するコモノマーとしては、ビニルトルエンの如きスチレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチルの如きメタクリル酸エステル;マレイン酸;マレイン酸ブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチルの如き二重結合を有するジカルボン酸エステル;アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン;塩化ビニル;酢酸ビニル、安息香酸ビニルの如きビニルエステル;エチレン、プロピレン、ブチレンの如きエチレン系オレフィン;ビニルメチルケトン、ビ
ニルヘキシルケトンの如きビニルケトン;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテルが挙げられる。これらのビニル系単量体が単独もしくは2つ以上用いられる。
【0076】
トナーにおける結着樹脂は、酸価を有していてもよい。結着樹脂の酸価を調整するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸、ビニル酢酸、イソクロトン酸、アンゲリカ酸などのアクリル酸及びそのα−或いはβ−アルキル誘導体、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、アルケニルコハク酸、イタコン酸、メサコン酸、ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸などの不飽和ジカルボン酸及びそのモノエステル誘導体又は無水物などがあり、このようなモノマーを単独、或いは混合して、他のモノマーと共重合させることにより所望の重合体を作ることができる。この中でも、特に不飽和ジカルボン酸のモノエステル誘導体を用いることが酸価値をコントロールする上で好ましい。
【0077】
より具体的には、例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノアリル、マレイン酸モノフェニル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノフェニルなどのようなα,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステル類;n−ブテニルコハク酸モノブチル、n−オクテニルコハク酸モノメチル、n−ブテニルマロン酸モノエチル、n−ドデセニルグルタル酸モノメチル、n−ブテニルアジピン酸モノブチルなどのようなアルケニルジカルボン酸のモノエステル類などが挙げられる。
【0078】
以上のようなカルボキシル基含有モノマーは、結着樹脂を構成している全モノマー100質量部に対し0.1乃至20質量部、好ましくは0.2乃至15質量部添加すればよい。
【0079】
トナーに係る樹脂組成物は、保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が45乃至80℃、好ましくは50乃至70℃であり、Tgが45℃より低いと高温雰囲気下でのトナーの劣化や定着時でのオフセットの原因となる。また、Tgが80℃を超えると、定着性が低下する傾向にある。
【0080】
トナーの結着樹脂の合成方法として用いることの出来る重合法として、溶液重合法、乳化重合法や懸濁重合法が挙げられる。
【0081】
このうち、乳化重合法は、水にほとんど不溶の単量体(モノマー)を乳化剤で小さい粒子として水相中に分散させ、水溶性の重合開始剤を用いて重合を行う方法である。この方法では反応熱の調節が容易であり、重合の行われる相(重合体と単量体からなる油相)と水相とが別であるから停止反応速度が小さく、その結果重合速度が大きく、高重合度のものが得られる。更に、重合プロセスが比較的簡単であること、及び重合生成物が微細粒子であるために、トナーの製造において、着色剤及び荷電制御剤その他の添加物との混合が容易であること等の理由から、トナー用バインダー樹脂の製造方法として有利な点がある。しかし、添加した乳化剤のため生成重合体が不純になり易く、重合体を取り出すには塩析などの操作が必要で、この不便を避けるためには懸濁重合が好都合である。
【0082】
懸濁重合においては、水系溶媒100質量部に対して、モノマー100質量部以下(好ましくは10乃至90質量部)で行うのが良い。使用可能な分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分ケン化物、リン酸カルシウム等が用いられ、一般に水系溶媒100質量部に対して0.05乃至1質量部で用いられる。重合温度は50乃至95℃が適当であるが、使用する開始剤、目的とするポリマーによって適宜選択される。
【0083】
トナーに用いられる結着樹脂は、以下に例示する様な多官能性重合開始剤単独あるいは単官能性重合開始剤と併用して生成することが好ましい。
【0084】
多官能構造を有する多官能性重合開始剤の具体例としては、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−t−ブチルパーオキシオクタン及び各種ポリマーオキサイド等の1分子内に2つ以上のパーオキサイド基などの重合開始機能を有する官能基を有する多官能性重合開始剤、及びジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート及びt−ブチルパーオキシイソプロピルフマレート等の1分子内に、パーオキサイド基などの重合開始機能を有する官能基と重合性不飽和基の両方を有する多官能性重合開始剤から選択される。
【0085】
これらの内、より好ましいものは、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート及び2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、及びt−ブチルパーオキシアリルカーボネートである。
【0086】
これらの多官能性重合開始剤は、トナー用バインダーとして要求される種々の性能を満足する為には、単官能性重合開始剤と併用されることが好ましい。特に該多官能性重合開始剤の半減期10時間を得る為の分解温度よりも低い半減期10時間を有する重合開始剤と併用することが好ましい。
【0087】
具体的には、ベンゾイルパーオキシド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシクメン、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノアゾベンゼン等のアゾおよびジアゾ化合物等が挙げられる。
【0088】
これらの単官能性重合開始剤は、前記多官能性重合開始剤と同時にモノマー中に添加しても良いが、該多官能性重合開始剤の効率を適正に保つ為には、重合工程において該多官能性重合開始剤の示す半減期を経過した後に添加するのが好ましい。
【0089】
これらの開始剤は、効率の点からモノマー100質量部に対し0.05乃至2質量部で用いるのが好ましい。
【0090】
結着樹脂は架橋性モノマーで架橋されていることも好ましい。
【0091】
架橋性モノマーとしては主として2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーが用いられる。具体例としては、芳香族ジビニル化合物(例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等);アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び、以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);更には、ポリエステル型ジアクリレート化合物類(例えば、商品名MANDA(日本化薬))が挙げられる。多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート;等が挙げられる。
【0092】
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.00001乃至1質量部、好ましくは0.001乃至0.05質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0093】
これらの架橋性モノマーのうち、トナーの定着性,耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
【0094】
その他の合成方法としては、塊状重合方法、溶液重合方法を用いることができる。しかし、塊状重合法では、高温で重合させて停止反応速度を速めることで、低分子量の重合体を得ることができるが、反応をコントロールしにくい問題点がある。その点、溶液重合法は、溶媒によるラジカルの連鎖移動の差を利用して、また、開始剤量や反応温度を調整することで、所望の分子量の重合体を温和な条件で容易に得ることができるので好ましい。特に、開始剤使用量を最小限に抑え、開始剤が残留することによる影響を極力抑えるという点で、加圧条件下での溶液重合法も好ましい。
【0095】
本発明に用いられるポリエステル樹脂の組成は以下の通りである。
【0096】
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また(A)式で表わされるビスフェノール及びその誘導体;
【0097】
【化2】

(式中、Rはエチレン基またはプロピレン基であり、x及びyはそれぞれ独立して0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0〜10である。)
【0098】
また(B)式で示されるジオール類;
【0099】
【化3】

【0100】
2価の酸成分としては、例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸などのアルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類、又はその無水物、低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;等のジカルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
【0101】
また架橋成分として働く3価以上のアルコール成分や3価以上の酸成分を単独で使用するか、もしくは併用することが好ましい。
【0102】
3価以上の多価アルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等が挙げられる。また、本発明における三価以上の多価カルボン酸成分としては、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル;次式(C)
【0103】
【化4】

(式中、Xは炭素数3以上の側鎖を1個以上有する炭素数5乃至30のアルキレン基又はアルケニレン基を示す)
で表わされるテトラカルボン酸等、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル等の多価カルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
【0104】
アルコール成分としては40乃至60mol%、好ましくは45乃至55mol%、酸成分としては60乃至40mol%、好ましくは55乃至45mol%であることが好ましい。また三価以上の多価の成分は、全成分中の5乃至60mol%であることが好ましい。
【0105】
該ポリエステル樹脂は通常一般に知られている縮重合によって得られる。
【0106】
トナーは、ワックスを含有してもよい。
【0107】
トナーに用いられるワックスには次のようなものがある。例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;又は、それらのブロック共重合物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろうの如き植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろうの如き動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムの如き鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの如き脂肪族エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪族エステルを一部又は全部を脱酸化したものが挙げられる。更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、或いは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類の如き飽和直鎖脂肪酸;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カウナビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、或いは更に長鎖のアルキル基を有するアルキルアルコールの如き飽和アルコール;ソルビトールの如き多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪族アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪族ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
【0108】
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は融液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
【0109】
離型剤として使用できるワックスの具体的な例としては、ビスコール(登録商標)330−P、550−P、660−P、TS−200(三洋化成工業社)、ハイワックス400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学社)、サゾールH1、H2、C80、C105、C77(シューマン・サゾール社)、HNP−1、HNP−3、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12(日本精鑞株式会社)、ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋ペトロライト社)、木ろう、蜜ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス(株式会社セラリカNODAにて入手可能)等があげられる。
【0110】
トナーは更に磁性材料を含有させ磁性トナーとしても使用しうる。この場合、磁性材料は着色剤の役割をかねることもできる。
【0111】
磁性トナー中に含まれる磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或はこれらの金属アルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金及びその混合物等が挙げられる。
【0112】
これらの強磁性体は平均粒子径が2μm以下、好ましくは0.05乃至0.5μmのものが好ましい。トナー中に含有させる量としては樹脂成分100質量部に対し約20乃至200質量部、特に好ましくは樹脂成分100質量部に対し40乃至150質量部が良い。
【0113】
トナーに用いられる着色剤は、黒色着色剤としてカーボンブラック,グラフト化カーボンや以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用可能である。
【0114】
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物,イソインドリノン化合物,アンスラキノン化合物,アゾ金属錯体,メチン化合物,アリルアミド化合物に代表される化合物等が用いられる。
【0115】
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物,ジケトピロロピロール化合物,アントラキノン,キナクリドン化合物,塩基染料レーキ化合物,ナフトール化合物,ベンズイミダゾロン化合物,チオインジゴ化合物,ペリレン化合物等が用いられる。
【0116】
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体,アントラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物等が利用できる。これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。本発明の着色剤は、色相角,彩度,明度,耐候性,OHP透明性,トナー中への分散性の点から選択される。該着色剤の添加量は、樹脂100質量部に対し1乃至20質量部添加して用いられる。
【0117】
次にトナーを製造するための方法について説明する。トナーは、粉砕トナー製法及び重合トナー製法を用いて製造することが可能である。
【0118】
トナーは、キャリアと併用して二成分現像剤として用いることができ、二成分現像方法に用いる場合のキャリアとしては、従来知られているものを用いることができる。具体的には、表面酸化又は未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属及びそれらの合金又は酸化物等の、平均粒径20乃至300μmの粒子が使用される。
【0119】
また、それらキャリア粒子の表面に、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂等の物質を付着又は被覆させたもの等が好ましく使用される。
【0120】
トナーには、荷電制御剤を含有させることが好ましい。トナーを負荷電性に制御するものとして下記物質がある。
【0121】
例えば有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属化合物がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類などがある。
【0122】
また、次に示した下記式(1)で表わされるアゾ系金属化合物が好ましい。
【0123】
【化5】

〔式中、Mは中心金属を示し、具体的にはSc、Ti、V、Cr、Co、Ni、MnまたはFe等があげられる。Arはアリーレン基を示し、フェニレン基、ナフチレン基などがあげられ、置換基を有してもよく、置換基としては、ニトロ基、ハロゲン基、カルボキシル基、アニリド基および炭素数1〜18のアルキル基、アルコキシ基などがある。X、X’、Y及びY’はそれぞれ独立して−O−、−CO−、−NH−、−NR−(Rは炭素数1〜4のアルキル基)である。A+はカウンターイオンを示し、具体的には水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンあるいは脂肪族アンモニウムイオンを示す。〕
【0124】
特に、上記式(1)中の中心金属としてはFe又はCrが好ましい。また、上記式(1)中のアリーレン基に置換される置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、またはアニリド基が好ましい。上記式(1)中のカウンターイオンとしては水素イオン、アルカリ金属アンモニウムイオン、脂肪族アンモニウムイオンが好ましい。またカウンターイオンの異なる化合物の混合物も好ましく用いられる。
【0125】
あるいは、下記式(2)に示した塩基性有機酸金属化合物も負帯電性を与えるものであり、使用できる。
【0126】
【化6】

(式中、Rは水素原子、炭素数1乃至18のアルキル基または炭素数2乃至18のアルケニル基を示す。)を示す。A’+は、カウンターイオンを示し、具体的には水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンあるいは脂肪族アンモニウムイオンを示す。〕
【0127】
特に、上記式(2)中の中心金属としてはFe,Cr,Si,Zn,ZrまたはAlが好ましい。また、上記式(2)中のアリーレン基に置換される置換基としてはアルキル基、アニリド基、アリール基、ハロゲン原子が好ましい。また、上記式(2)中のカウンターイオンは水素イオン、アンモニウムイオン、脂肪族アンモニウムイオンが好ましい。
【0128】
そのうちでも、式(1)で表されるアゾ系金属化合物がより好ましく、とりわけ、下記式(3)で表されるアゾ系鉄化合物が最も好ましい。
【0129】
【化7】

【0130】
次に、該化合物の具体例を示す。
【0131】
【化8】

【0132】
【化9】

【0133】
トナーを正荷電性に制御するものとして下記の物質がある。ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変成物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など)、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートなどのジオルガノスズボレート類;グアニジン化合物、イミダゾール化合物。これらを単独で或いは2種類以上組合せて用いることができる。これらの中でも、トリフェニルメタン化合物、カウンターイオンがハロゲンイオンでない四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。また、下記式(4)
【0134】
【化10】

〔式中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2及びR3は置換または未置換のアルキル基(好ましくは、炭素数が1乃至4)を示す。〕
で表わされるモノマーの単重合体;前述したスチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの如き重合性モノマーとの共重合体を正荷電性制御剤として用いることができる。この場合これらの荷電制御剤は、結着樹脂(の全部または一部)としての作用をも有する。
【0135】
特に下記式(5)で表わされる化合物が本発明の構成においては好ましい。
【0136】
【化11】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、各々互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基または、置換もしくは未置換のアリール基を表し、R7、R8及びR9は、各々互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、またはアルコキシ基を表し、A-は、硫酸イオン、硝酸イオン、ほう酸イオン、りん酸イオン、水酸イオン、有機硫酸イオン、有機スルホン酸イオン、有機りん酸イオン、カルボン酸イオン、有機ほう酸イオン及びテトラフルオロボレートから選択される陰イオンを示す。]
【0137】
負帯電用として好ましいものは、例えばSpilon Black TRH、T−77、T−95(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)S−34、S−44、S−54、E−84、E−88、E−89(オリエント化学社)があげられ、正帯電用としては好ましいものとしては、例えばTP−302、TP−415(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)N−01、N−04、N−07、P−51(オリエント化学社)、コピーブルーPR(クラリアント社)が例示できる。
【0138】
電荷制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー内部に添加する方法と外添する方法がある。これらの電荷制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1乃至10質量部、より好ましくは0.1乃至5質量部の範囲で用いられる。
【0139】
本発明のトナーを作製するには、粉砕トナーにおいては結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有する混合物が材料として用いられるが、必要に応じて磁性体やワックス、荷電制御剤、その他の添加剤等が用いられる。これらの材料をヘンシェルミキサー又はボールミルの如き混合機により十分混合してから、ロール、ニーダー及びエクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融、捏和及び混練して樹脂類を互いに相溶せしめた中に、ワックスや磁性体を分散せしめ、冷却固化後、粉砕及び分級を行ってトナーを得ることができる。
【0140】
本発明のトナーは、公知の製造装置を用いて製造することができ、例えば、状況に応じて以下の製造装置を用いることができる。
【0141】
トナー製造装置としては、例えば混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)等が挙げられる。
【0142】
混練機としては、例えばKRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)等が挙げられる。
【0143】
粉砕機としては、例えばカウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)等が挙げられる。
【0144】
分級機としては、例えばクラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラッシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボジェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)等が挙げられる。
【0145】
粗粒等をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、例えばウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
【0146】
本発明において、重合トナーの製造方法は、特公昭56−13945号公報等に記載のディスク又は多流体ノズルを用い溶融混合物を空気中に霧化し球状トナーを得る方法や、特公昭36−10231号公報,特開昭59−53856号公報,特開昭59−61842号公報に述べられている懸濁重合法を用いて直接トナーを生成する方法や、単量体には可溶で得られる重合体が不溶な水系有機溶剤を用い直接トナーを生成する分散重合法又は水溶性極性重合開始剤存在下で直接重合しトナーを生成するソープフリー重合法に代表される乳化重合法や、予め1次極性乳化重合粒子を作った後、反対電荷を有する極性粒子を加え会合させるヘテロ凝集法等を用いトナーを製造することが可能である。
【0147】
比較的容易に粒度分布がシャープな微粒子トナーが得られる常圧下での、または、加圧下での懸濁重合法が特に好ましい。一旦得られた重合粒子に更に単量体を吸着せしめた後、重合開始剤を用い重合せしめる所謂シード重合方法も本発明に好適に利用することができる。
【0148】
トナー製造方法に直接重合方法を用いる場合においては、以下の如き製造方法によって具体的にトナーを製造することが可能である。
【0149】
単量体中に低軟化点物質,着色剤,荷電制御剤,重合開始剤その他の添加剤を加え、ホモジナイザー,超音波分散機等によって均一に溶解又は分散せしめた単量体系を、分散安定剤を含有する水相中に通常の撹拌機またはホモミキサー,ホモジナイザー等により分散せしめる。好ましくは単量体液滴が所望のトナー粒子のサイズを有するように撹拌速度・時間を調整し、造粒する。その後は分散安定剤の作用により、粒子状態が維持され、且つ粒子の沈降が防止される程度の撹拌を行えば良い。重合温度は40℃以上、一般的には50乃至90℃の温度に設定して重合を行う。また、重合反応後半に昇温しても良く、更に、トナー定着時の臭いの原因等となる未反応の重合性単量体、副生成物等を除去するために反応後半、又は、反応終了後に一部水系媒体を留去しても良い。反応終了後、生成したトナー粒子を洗浄・濾過により回収し、乾燥する。懸濁重合法においては、通常単量体系100質量部に対して水300乃至3000質量部を分散媒として使用するのが好ましい。
【0150】
重合法によりトナーを製造する場合に用いられるラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体あるいは多官能性重合性単量体を使用することができる。
【0151】
単官能性重合性単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンなどのスチレン系重合性単量体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートなどのアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートなどのメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン等のビニルケトン類などのビニル系重合性単量体等が挙げられる。
【0152】
多官能性重合性単量体としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス[4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス[4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等を挙げること
ができる。
【0153】
前記単官能性重合性単量体を単独あるいは2種以上組み合わせて、また、単官能性重合性単量体と多官能性重合性単量体を組み合わせて使用することができる。また、前記多官能性重合性単量体を架橋剤として使用することも可能である。
【0154】
トナーにコアーシェル構造を形成せしめるためには、極性樹脂を併用することが好ましい。本発明に使用できる極性重合体及び極性共重合体の如き極性樹脂を以下に例示する。
【0155】
極性樹脂としては、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如き含窒素単量体の重合体もしくは含窒素単量体とスチレン−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体;アクリロニトリルの如きニトリル系単量体;塩化ビニルの如き含ハロゲン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸の如き不飽和カルボン酸;不飽和二塩基酸;不飽和二塩基酸無水物;ニトロ系単量体の重合体もしくはそれとスチレン系単量体との共重合体;ポリエステル;エポキシ樹脂;が挙げられる。より好ましいものとして、スチレンと(メタ)アクリル酸の共重合体、マレイン酸共重合体、飽和または不飽和のポリエステル樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0156】
重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクシルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、2,2−ビス(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジンなどの過酸化物系開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素などが使用される。
【0157】
重合開始剤は重合性単量体100質量部当り0.5乃至20質量部の添加量が好ましく、単独で又は、併用しても良い。
【0158】
また、分子量をコントロールするために、公知の架橋剤、連鎖移動剤を添加しても良く、好ましい添加量としては0.001乃至15質量部である。
【0159】
乳化重合,分散重合,懸濁重合,シード重合,ヘテロ凝集法を用いる重合法等によって、重合法トナーを製造する際に用いられる分散媒には、いずれか適当な安定剤を使用する。例えば、無機化合物として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が挙げられる。有機化合物として、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸及びその塩、デンプン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリ(ハイドロオキシステアリン酸−g−メタクリル酸メチル−eu−メタクリル酸)共重合体やノニオン系或はイオン系界面活性剤などが使用される。
【0160】
また、乳化重合法及びヘテロ凝集法を用いる場合には、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤及びノニオン系界面活性剤が使用される。これらの安定剤は重合性単量体100質量部に対して0.2乃至30質量部を使用することが好ましい。
【0161】
これら安定化剤の中で、無機化合物を用いる場合、市販のものをそのまま用いても良いが、細かい粒子を得るために、分散媒中にて該無機化合物を生成させても良い。
【0162】
また、これら安定化剤の微細な分散の為に、0.001乃至0.1質量部の界面活性剤を使用してもよい。これは上記分散安定化剤の所期の作用を促進する為のものであり、その具体例としては、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等が挙げられる。
【0163】
以下に、本発明の無機微粒子の物性の測定方法を示す。
【0164】
(無機微粒子の平均1次粒径の測定)
本発明の無機微粒子の平均一次粒径は電子顕微鏡により判定される。具体的に粒径の測定は、透過型電子顕微鏡(TEM)により20万倍で無機微粒子像を撮影し、その拡大写真を測定対象として行う。任意の1000個の粒子の粒径を測定した平均値を平均一次粒径とする。なお、微粒子の平均一次粒子の輪郭に接する様に引いた平行線の内、その平行線間距離が最大となるものを粒径とする。
【0165】
(無機微粒子のメタノール濡れ性)
本発明において、疎水性無機微粒子のメタノール濡れ性、すなわち疎水性無機微粒子の疎水特性は、メタノール滴下透過率曲線を用いて測定する。具体的には、その測定装置として、例えば(株)レスカ社製の粉体濡れ性試験機WET−100Pが挙げられ、具体的な測定操作としては、以下に例示する方法が挙げられる。
【0166】
まず、メタノール60体積%と水40体積%とからなる含水メタノール液70mlを容器中に入れ、その測定用サンプル中の気泡等を除去するために超音波分散器で5分間分散を行う。この中に検体である疎水性無機微粒子を0.06g精秤して添加し、疎水性無機微粒子の疎水特性を測定するためのサンプル液を調製する。
【0167】
次に、この測定用サンプル液を6.67s-1の速度で撹拌しながら、メタノールを1.3ml/min.の滴下速度で連続的に添加し、波長780nmの光で透過率を測定し、図1に示したようなメタノール滴下透過率曲線を作製する。このメタノール滴下透過率曲線より、透過率が80%となるメタノール濃度をメタノール濡れ性とする。疎水性無機微粒子がメタノール濃度が60体積%未満で濡れる場合は、混合溶媒中に疎水性無機微粒子を添加し、撹拌しただけで波長780nmの光での透過率が急激に低下し0%に近づいてしまう。
【0168】
尚、この測定において、フラスコとしては、直径5cmの円形で、1.75mmのガラス製のものを用い、マグネティックスターラーとしては、長さ25mm、最大径8mmの紡錘形でありフッ素樹脂コーティングを施されたものを用いた。
【0169】
(無機微粒子のBET比表面積)
BET法に従って、比表面積測定装置「ジェミニ2375 Ver.5.0」(島津製作所社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いてBET比表面積(m2/g)を算出する。
【実施例】
【0170】
以下に、実施例をあげて本発明をより具体的に説明するが、これは本発明を何ら限定するものではない。以下、微粒子の平均1次粒径は個数基準での粒度分布における平均1次粒径を意味し、微粒子の最大ピーク粒子径は個数基準での粒度分布における最大ピーク粒子径を意味することとする。
【0171】
(疎水性無機微粒子製造例1)
撹拌機付きオートクレーブに、小粒径無機微粒子として未処理の乾式シリカ(平均1次粒径=15nm、最大ピーク粒子径=13nm、BET比表面積200m2/g)と大粒径無機微粒子として未処理の乾式シリカ(平均1次粒径=36nm、BET比表面積50m2/g)を10:1の質量比で投入し、撹拌による流動化状態において、200℃に加熱した。
【0172】
反応器内部を窒素ガスで置換して反応器を密閉し、シリカ原体100質量部に対し、25質量部のヘキサメチルジシラザンを内部に噴霧し、シリカの流動化状態でシラン化合物処理を行なった。この反応を60分間継続した後、反応を終了した。反応終了後、オートクレーブを脱圧し、窒素ガス気流による洗浄を行い、疎水性シリカから過剰のヘキサメチルジシラザン及び副生物を除去した。
【0173】
さらに、反応槽内を撹拌しながらシリカ原体100質量部に対し、10質量部のジメチルシリコーンオイル(粘度=100mm2/s)を噴霧し、30分間撹拌を続けた後、撹拌しながら300℃まで昇温させてさらに2時間撹拌して後に取り出し、本発明で使用した疎水性無機微粒子1を得た。得られた疎水性無機微粒子の物性を表1に示した。
【0174】
(疎水性無機微粒子製造例2乃至16)
表1に示したように、無機微粒子や表面処理剤を変更して、疎水性無機微粒子製造例2乃至16を調製した。
【0175】
【表1】

【0176】
(結着樹脂製造例1)
反応槽中に、下記式(A)
【0177】
【化12】

で示されるビスフェノールAのPO2モル付加物(Rはプロピレン基を示し、x+yの平均値は2である)50質量部、上記式(A)で示されるビスフェノールAのEO2モル付加物(Rはエチレン基を示し、x+yの平均値は2である)20質量部、テレフタル酸20質量部、フマル酸5質量部、無水トリメリット酸5質量部、およびジブチルチンオキサイド0.5質量部を入れ、220℃でこれらを縮合重合し、ポリエステルの結着樹脂1を得た。この樹脂のメインピーク分子量は8300、重量平均分子量(Mw)は68万、酸価は24mgKOH/g、Tgは59℃、THF不溶分21質量%であった。
【0178】
(結着樹脂製造例2)
4つ口フラスコ内にキシレン300質量部を投入し、昇温して還流させ、スチレン75質量部、アクリル酸−n−ブチル25質量部、及びジ−tert−ブチルパーオキサイド2質量部の混合液を5時間かけて滴下して、低分子量重合体(L−1)溶液を得た。L−1のピーク分子量は12000、重量平均分子量(Mw)は15400であった。
【0179】
4つ口フラスコ内に脱気水180質量部とポリビニルアルコールの2質量%水溶液20質量部を投入した後、スチレン70質量部、アクリル酸−n−ブチル30質量部、ジビニルベンゼン0.005質量部、及び2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(半減期10時間温度;92℃)0.1質量部の混合液を加え、撹拌し懸濁液とした。フラスコ内を十分に窒素で置換した後、85℃まで昇温して重合し、24時間保持した後、ベンゾイルパーオキサイド(半減期10時間温度;72℃)0.1質量部を追加添加し、さらに、12時間保持して高分子量重合体(H−1)の重合を完了した。H−1のピーク分子量は114万、重量平均分子量(Mw)は166万であった。
【0180】
上記低分子量重合体(L−1)の均一溶液300質量部に上記高分子量重合体(H−1)25質量部を投入し、還流下で十分に混合した後、有機溶剤を留去して、結着樹脂2を得た。この結着樹脂は、メインピーク分子量=12000、サブピーク分子量=114万、酸価=0mgKOH/gであった。
【0181】
(トナー粒子1の製造)
・結着樹脂1: 100質量部
・ワックス: 4質量部
(低分子量ポリエチレン、DSCピーク=102℃、Mn=850)
・磁性酸化鉄(球状、粒径0.2μm): 100質量部
・例示アゾ系鉄化合物(1): 2質量部
上記原材料をヘンシェルミキサーで予備混合した後、130℃、200rpmに設定した二軸混練押し出し機によって混練した。得られた混練物を冷却し、カッターミルで粗粉砕した後、得られた粗粉砕物を、ターボミル(ターボ工業社製)を用いて、排気温度が47℃になるようエアー温度を調整して微粉砕し、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均径(D4)6.4μmの負帯電性磁性トナー粒子1を得た。
【0182】
(トナー粒子2の製造)
・結着樹脂2: 100質量部
・磁性酸化鉄(八面体、粒径0.2μm): 90質量部
・トリフェニルメタン系レーキ顔料: 2質量部
・ワックス: 4質量部
(低分子量ポリエチレン、DSCピーク=102℃、Mn=850)
上記材料を予備混合した後、110℃、混練軸回転数150rpmに設定した二軸混練押出機にて混練した。得られた混練物を冷却し、カッターミルで粗粉砕した後、ジェット気流を用いた微粉砕機を用いて微粉砕し、さらに風力分級機を用いて分級し、重量平均粒径(D4)7.3μmの正帯電性磁性トナー粒子2を得た。
【0183】
[実施例1]
トナー粒子1の100質量部に対し、疎水性無機微粒子1を1.1質量部添加し、ヘンシェルミキサーで外添混合しトナー1を得た。
【0184】
このトナー1を、市販のLBPプリンタ(Laser Jet 4300、HP社製)を改造して、A4サイズ55枚/分(プロセススピード325mm/sec)とし、これを画出し試験機として、15℃,10%RHの低温低湿環境、23℃,60%RHの常温常湿環境、35℃,80%RHの高温高湿環境で、印字率1%となる横線パターンを2枚/1ジョブとして、ジョブとジョブの間にマシンがいったん停止してから次のジョブが始まるように設定したモードで3万枚のプリント試験を行った。3万枚プリント後の画像濃度及びカブリでトナーの耐久性を評価した。画出し試験に用いた画像形成装置の概略図を図2に、プロセスカートリッジの概略図を図3に示す。
【0185】
画像濃度は、マクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して、5mm角のベタ黒画像を反射濃度測定することにより測定した。カブリは、低温低湿環境でプリントしたベタ白画像を、反射濃度計(リフレクトメーター モデル TC−6DS 東京電色社製)を用いて画像形成前後の転写材を測定し、画像形成後の反射濃度最悪値をDs、画像形成前の転写材の反射平均濃度をDrとし、Ds−Drを求め、これをカブリ量として評価した。数値の少ない方がカブリが抑制されていることを示す。
【0186】
さらに、定着性の評価として前記改造機を7.5℃の環境に放置して、定着機が環境の温度まで冷えた状態から、コールドスタートで5mm角のベタ黒画像をプリントアウトした。転写材としてはボンド紙(Fox River Bond紙:90g/m2)を用い、プリントアウトしたうちの1、3、5、10、20、30枚目の画像を用い、先端、中央、後端で、左端、中央、右端の9点の5mm角のベタ黒画像(9点/枚×6枚=計54点)を4.9kPaの荷重をかけたシルボン紙で5往復摺擦し、摺擦前後の画像濃度の濃度低下率が最も高い点(最悪値)を以下の基準で評価し、定着性を判断した。濃度低下率が低いほど定着性に優れていることを示す。
【0187】
(定着性評価基準)
A:濃度低下率0%以上5%未満
B:濃度低下率5%以上10%未満
C:濃度低下率10%以上15%未満
D:濃度低下率15%以上25%未満
E:濃度低下率25%以上
【0188】
さらに、トナー1に外添された疎水性無機微粒子の、トナー粒子表面への均一分散性を確認する為、疎水性無機微粒子の遊離量を測定した。遊離疎水性無機微粒子量は、疎水性無機微粒子を外添したトナー約2gを精秤し、このトナー中に含まれる疎水性無機微粒子の質量を算出する(これをAgとする)。次にこのトナーを目開きが30μmのメッシュにとり、メッシュ下部を吸引し、メッシュ上に残留した疎水性無機微粒子量(これをBgとする)を測定し、以下の式で算出した。
遊離疎水性無機微粒子量=B/A×100(質量%)
【0189】
さらに疎水性無機微粒子のトナー耐久劣化防止剤としての働きを確認する為に、疎水性無機微粒子を外添したトナーと、高温高湿環境で3万枚プリントアウト後のトナー容器に残ったトナーの流動性を測定した。
【0190】
トナー流動性を示す指標として、トナーの凝集度をパウダテスタP−100(ホソカワミクロン社製)を使用し、測定した。具体的には、振動台の上に、上から目開き250μm、150μm、75μmの順でふるいをセットし、振動振り幅を1mm、振動時間を20秒として、トナー5gを静かにのせて振動させる。振動停止後、それぞれのふるいに残った質量を測定する。
【0191】
a=(上段のふるいに残ったトナー量)÷5(g)×100
b=(中段のふるいに残ったトナー量)÷5(g)×100×0.6
c=(下段のふるいに残ったトナー量)÷5(g)×100×0.2
a+b+c=凝集度(%)として算出した。凝集度が小さいほど流動性の良いトナーであり、耐久後にも凝集度が変化しないものほど劣化が抑止されていることを示す。
【0192】
[実施例2乃至7、及び比較例1乃至6]
表2に示したように疎水性無機微粒子の種類、量を変化させる以外は実施例1と同様にして、トナー2〜13を得て、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0193】
【表2】

【0194】
[実施例8]
トナー粒子2の100質量部に対し、疎水性無機微粒子8を0.8質量部添加し、ヘンシェルミキサーで外添混合しトナー14を得た。
【0195】
このトナー14を、市販の電子写真複写機GP−605(キヤノン株式会社製)を画出し試験機として、15℃,10%RHの低温低湿環境、23℃,60%RHの常温常湿環境、35℃,80%RHの高温高湿環境で、印字率1%となる横線パターンを200万枚プリントし、画像濃度及びカブリにより、トナーの耐久性を実施例1と同様に評価した。また、疎水性無機微粒子がトナーに与える性能を、定着性、流動性、疎水性無機微粒子の遊離量で実施例1と同様に評価した。評価結果を表3に示す。
【0196】
【表3】

【符号の説明】
【0197】
1 現像装置、2 現像剤容器、3 潜像担持体、4 転写手段、5 レーザー光又はアナログ光、6 現像スリーブ、7 加熱加圧定着手段、8 クリーニングブレード、9 弾性ブレード、11 帯電器、12 バイアス印加手段、13 磁性現像剤、14 クリーニング手段、15 磁界発生手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個数基準での粒度分布における平均1次粒径が5乃至25nmであり、個数基準での粒度分布における最大ピーク粒子径が20nm以下である小粒径無機微粒子と、個数基準での粒度分布における平均1次粒径が、該小粒径無機微粒子の個数基準での粒度分布における平均1次粒径の1.5乃至100倍である大粒径無機微粒子とを、同一の処理槽内で撹拌しながら疎水化処理を行う工程を有することを特徴とする疎水性無機微粒子の製造方法。
【請求項2】
該疎水化処理はシラン化合物による処理であることを特徴とする請求項1に記載の疎水性無機微粒子の製造方法。
【請求項3】
該疎水化処理はシリコーンオイルによる処理であることを特徴とする請求項1に記載の疎水性無機微粒子の製造方法。
【請求項4】
該疎水化処理はシラン化合物及びシリコーンオイルによる処理であることを特徴とする請求項1に記載の疎水性無機微粒子の製造方法。
【請求項5】
該小粒径無機微粒子のBET比表面積が100m2/g以上500m2/g以下であり、該大粒径無機微粒子のBET比表面積が5m2/g以上100m2/g未満であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の疎水性無機微粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の疎水性無機微粒子の製造方法によって得られた疎水性無機微粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−184863(P2010−184863A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86732(P2010−86732)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【分割の表示】特願2004−152974(P2004−152974)の分割
【原出願日】平成16年5月24日(2004.5.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】