説明

疎水性物質の回収方法、および基材およびそれを備えたレンジフード

【課題】レンジフードなどに使用される油脂汚れ回収フィルターにおいて、油煙中の油脂汚れを効率よく捕集し、かつ強アルカリ洗浄剤などを必要とせず、水のみで容易にフィルターに捕集された油脂汚れをフィルターから分離、回収できる基材の提供を目的とする。
【解決手段】アルマイト処理によりその表面に多数の細孔6が形成された油脂汚れ回収フィルター1とそのフィルター表面及び細孔6に温度応答性ポリマーであるPNIPAAm7を備えたレンジフードにおいて、調理時は油脂汚れを捕集し、手入れ時は水によって油脂汚れを分離、回収することにより、油脂汚れなどの疎水性物質の捕集と分離、回収のいずれにも優れた基材が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厨房や台所などにおいて調理時に生じる油煙により、基材表面に付着する油脂汚れの捕集、分離、そしてその回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
厨房や台所などには、調理時に生じる油煙などを排気するレンジフードや換気扇が設けられており、快適な調理空間を保っている。しかしその一方で、食品に由来する油脂汚れは熱、日光、空気中の酸素の作用などにより変質している場合が多く、粘着性の樹脂状ないしは半固化した状態でレンジフードのフィルターや排気口及び周辺の壁などに強固に付着している。強固に付着した油脂汚れを除去するには多大な洗浄作業労力を要し、また排気口からの油煙で建築物の外観を極端に悪化させるという問題がある。油脂汚れの屋外への流出を防止するため、油脂捕集用のフィルターがレンジフードに組み込まれている。一般的なレンジフードの構造を示したものが図3である。
【0003】
以下、レンジフードの構造について図3を参照しながら説明する。
【0004】
図3は深型レンジフードの断面図を示している。調理時に生じる油煙などの汚れは、シロッコファン101の気流にのって吸引口102を通過し、フードケース103内部に設置されているフィルター104に接触する。フィルター104は前面パネル105内部に取りつけられたフィルター支持部材106によって固定されている。フィルター104の原料としては、金属板をパンチング又はルーバー加工したものが一般的であるが、油捕集能力を向上させるために金属繊維や多孔質金属からなるフィルター104も知られている。このフィルター104によって油煙中の油脂汚れを捕集した後、排気口107より排管を通って屋外に排気される。なお、フィルター104表面に溜まった油脂汚れは、重力によってフィルター下部に設置されている油回収器108に集められる。またシロッコファン101を駆動させるモーター109はモーター支持部材110によって固定されている。
【0005】
図3のレンジフードに備えられているフィルター104は、油脂汚れを付着させる加工は可能であるが、反対に油脂汚れを除去するには、多大な洗浄作業労力が必要となり、場合によっては強アルカリ性の強力な洗剤を用いることもあり、人体への安全性、もしくは環境への影響を考慮すると、一般家庭では扱いにくい洗剤である。
【0006】
この問題を解決する手段として、光触媒を利用した油脂汚れ分解能力を有するレンジフードフィルターが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0007】
以下、そのレンジフードフィルターについて図4を参照しながら説明する。
【0008】
図4(a)は調理時におけるレンジフードの断面図、図4(b)はフィルターに付着した油脂汚れを光触媒で分解時のレンジフード断面図を示す。フードケース103の内面とシロッコファン101のそれぞれに光触媒であるTiO2をコーティングし、セラミックスフィルター111にはTiO2を担持させる。調理時に発生する油煙が強制的にフードケース103の内面とセラミックスフィルター111へ流入され、フードケース103の内面とセラミックスフィルター111に付着する。また、セラミックスフィルター111を通過した油煙は、シロッコファン101に付着する。光源112及び反射板113は揺動可能に取りつけられており、調理時には図4(a)のように前面パネル105の内面側に収容されている。セラミックスフィルター111面に付着している油脂汚れを分解する時は、図4(b)に示すように光源112及び反射板113をセラミックスフィルター111に接触させる。続いて、光源112より紫外線が放出されることにより、光触媒作用によってフードケース103やシロッコファン101もしくはセラミックスフィルター111に付着している油脂汚れを分解できる。
【特許文献1】特開平9−4900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような従来の光触媒作用を持つレンジフードフィルターは、油脂汚れを分解するために紫外光を照射させる必要があり、別途紫外線を照射する光源を設けなくてはならない。紫外線は人体に対して悪影響があるばかりでなく、レンジフード内を通過する微生物等の突然変異率が高くなり、有害な変異を遂げた微生物が光触媒で殺菌されないまま屋外へ放出されることが憂慮される。また光触媒を担持していないフィルターで使用する洗浄液は、水酸化ナトリウムなどを主成分とした強アルカリ性の特殊な洗浄液であり、洗浄力が非常に高い。しかし一方でその高い洗浄力から、肌が荒れたり、目に入ったりする可能性もあり、また廃棄の問題もあり、一般の家庭では取り扱うことが非常に難しいものである。すなわち、油脂汚れを容易に除去できるだけではなく、人体に対して安全で、環境負荷の低い疎水性物質(油脂汚れ)回収方法及び疎水性物質回収基材が求められている。
【0010】
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、人体に対して安全で環境負荷の低い疎水性物質の回収方法および回収基材を提供するものである。
【0011】
また、従来の光触媒では、油煙の発生率が高い場合には光触媒分解速度が油脂汚れの付着に追いつかず、油脂汚れが蓄積してしまい、光触媒機能がついていても油脂汚れが強固に付着してしまうことが考えられる。つまり、光触媒を担持していても油脂汚れが蓄積してしまえば、手入れをする必要が生じ、洗浄作業労力は既存のレンジフードフィルターと変わらないことになってしまう。従って、洗浄作業労力ができるだけ少ない疎水性物質(例えば油脂汚れなど)の回収方法及び回収基材が求められている。
【0012】
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、基材表面に油脂汚れが蓄積しても、温度応答性ポリマーを親水性して水洗することによって、ポリマー上の蓄積物全体を浮き上がらせ、容易に油脂汚れを除去する基材を提供するものである。
【0013】
また従来のレンジフードフィルターは金属製のため、浮遊する油脂の捕集効率が低く、フィルター表面に溜まった油が徐々に垂れてしまうという課題がある。同様に、光触媒を担持したフィルターでも油脂汚れの捕集能力が低く、運良くフィルターに衝突した油脂に対して作用する。従って、油脂汚れを強固に捕集し、かつ容易に洗浄可能な基材が求められている。
【0014】
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、温度応答性ポリマーを基材に担持し、温度応答性ポリマーが疎水性の時は油脂汚れを強く捕集して、親水性時はすばやく水分子と水和することによって油脂汚れを浮き上がらせ、疎水性物質を容易に回収できる基材を提供するものである。
【0015】
また光触媒は紫外線を吸収すると非常に強い酸化剤となるため、汚れ成分を分解するだけでなく、光触媒がコーティングされている基材をも分解してしまい、基材の寿命が長続きしないという課題がある。
【0016】
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、基材であるアルミニウムに酸化皮膜を形成させるアルマイト処理は、アルミニウム表面に多数の細孔を形成させ、表面の活性が上昇し、吸着力が大きくなる。その微細な穴に温度応答性ポリマーを担持させることによって、温度応答性ポリマーの吸着力が増し、連続使用が可能な基材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の疎水性物質回収方法は上記目的を達成するために、まず基材表面に温度応答性ポリマーを担持させる。温度応答性ポリマーは、下限臨界温度以下においてポリマー中のアミド基が水分子と水素結合を形成するため、ポリマー全体としては親水性になり、下限臨界温度を超えるとアミド基と水分子の水素結合が切断されてしまうため、疎水性になる。つまり、疎水性時には油脂汚れなどの疎水性物質を捕集し、親水性時には水中にて疎水性物質を分離することを可能としたものである。
【0018】
この手段により、レンジフードフィルターに担持させた温度応答性ポリマーは、下限臨界温度以上では調理時に生じる油煙中の油脂汚れを疎水結合で捕集し、下限臨界温度以下では水分子と水和して、水とともに油脂汚れを浮き上がらせ、油脂汚れなどを分離、回収することができる疎水性物質(油脂汚れ)回収基材が得られる。なお、温度応答性ポリマーを換気扇のファンや空気清浄機の集塵フィルター
本発明の疎水性物質回収方法は上記目的を達成するために、温度応答性ポリマー上に油脂成分が蓄積しても、下限臨界温度以下にてポリマーと水を接触させれば、強アルカリ性洗剤などの特別な洗剤を使うことなく、水のみで高い洗浄効果が得られる基材である。
この手段により、レンジフードフィルターに付着した油脂汚れを容易に分離、回収できるだけではなく、人体に安全でかつ環境負荷の低い疎水性物質回収基材が得られる。
【0019】
また、本発明の疎水性物質回収方法は上記目的を達成するために、基材であるアルミニウムをアルマイト処理し、微細な細孔を形成させ、その細孔に温度応答性ポリマーを担持させる。細孔中に担持することによってより強固に温度応答性ポリマーを基材に付着させることができる。
【0020】
この手段により、基材に担持された温度応答性ポリマーが剥離されるのを防ぎ、連続使用が可能な基材が得られる。また、真空蒸着法によってキノリノールを配位子としたアルミニウム錯体を作製して、基材表面にアモルファス性の膜を形成させた後、温度応答性ポリマーを担持しても同様の効果が得られるものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、温度によって疎水性−親水性を示す温度応答性ポリマーの利用によって、温度応答性ポリマーが疎水性の時は油脂汚れなどの疎水性物質を強固に捕集することができ、油煙浄化能力の高い疎水性回収方法、及び回収基材が得られる。
【0022】
また本発明によれば、温度によって疎水性−親水性を示す温度応答性ポリマーの利用によって、温度応答性ポリマーが親水性の時は、流水洗浄や浸漬洗浄によって、捕集した油脂汚れなどの疎水性物質を水とともに容易に基材から分離、回収することができ、強アルカリ性洗浄剤などの特別な洗浄剤を使用することなく、容易に油脂汚れなどを基材から分離することができる。従って人体に安全で、なおかつライフサイクルアセスメントの観点からも環境負荷の低い疎水性物質回収方法及び回収基材が得られる。
【0023】
また本発明によれば、熱源によって温度応答性ポリマーの温度制御を行い、自在に疎水性−親水性の可逆的な性質を制御することで、用途に応じて疎水性物質の捕集と分離、回収という性質を切り替えることができるという効果のある疎水性物質回収方法及び回収基材が得られる。
【0024】
また本発明によれば、基材原料のアルミ二ウムをアルマイト処理して、その表面に多数の細孔を形成させ、その表面に温度応答性ポリマーを担持させるため、温度応答性ポリマーが剥離しにくく、連続使用ができ、長期にわたって効果が持続する、疎水性物質回収方法及び回収基材を提供できる。
【0025】
また本発明によれば、基材原料のアルミニウムに対して、キノリノールを配位子としたアルミニウム錯体を作製して、基材表面にアモルファス性の膜を形成させた後、温度応答性ポリマーを担持することにより、温度応答性ポリマーが剥離しにくく、連続使用でき、長期にわたって効果が持続する、疎水性物質回収方法及び回収基材が得られる。
【0026】
また本発明によれば、空気中の油脂汚れなどの疎水性汚染物質を捕集した後、容易に分離、回収して洗浄できる基材を備えたレンジフードフィルター、及び換気扇のファン、空気清浄機の集塵フィルターが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の請求項1記載の発明は、空気中に浮遊する疎水性物質を基材に捕集し、捕集した疎水性物質を基材から分離することにより、疎水性物質を回収することを特徴としたものであり、空気中の油脂汚れなどを強く捕集し、分離、回収するという作用を有する。
【0028】
また、本発明の請求項2乃至5記載の発明は、温度応答性ポリマーを基材に担持させることを特徴としたものであり、温度応答性ポリマーの疎水性−親水性の可逆的な性質を利用し、疎水性にて油脂汚れを捕集し、親水性で捕集した物質を分離するという作用を有する。
【0029】
また、本発明の請求項6または7記載の発明は、温度応答性ポリマーの温度制御を特徴とするものである。温度応答性ポリマー、例えばポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIPAAm)は32℃以上では水分子と水素結合を形成できないため疎水性となるが、32℃以下では水分子と水素結合を形成し、親水性となる。したがって、熱源によって温度制御を行うことで、ポリマーの疎水性−親水性の可逆的な性質を制御するという作用を有する。
【0030】
また、本発明の請求項8乃至11記載の発明は、基材の原料をアルミニウムとし、アルマイト処理してその表面に酸化被膜を形成させた後、酸化被膜表面及び酸化被膜に生じる多数の細孔に温度応答性ポリマーを担持することを特徴としたものであり、アルマイト処理によって形成される細孔に対して温度応答性ポリマーを担持することで、温度応答性ポリマーの基材への付着を持続させるという作用を有する。なお、アルミニウム表面の処理法として、真空蒸着法によりキノリノールを配位子としたアルミニウム錯体を作製して、基材表面にアモルフォス性の膜を形成させた後、温度応答性を担持しても同様の効果が得られる。
【0031】
また、本発明の請求項12記載の発明は、請求項3、5、7または9記載の基材を備えたレンジフードとしたものであり、調理時の疎水性物質である油粒子を温度応答性ポリマーを担持した基材、例えばレンジフードのフィルターに捕集し、温度応答性ポリマーの疎水性−親水性の温度による可逆的な性質を利用して、油粒子の基材への捕集と、基材からの分離、除去を行い、油粒子を回収することを特徴としたものであり、調理時に空気中に発生する油脂汚れなどの油煙、油粒子を強く捕集し、分離、回収するという作用を有する。
【0032】
また、本発明の請求項13または14記載の発明は、油脂汚れなどの疎水性物質を捕集した基材を25℃以下の水で流水洗浄及び浸漬洗浄することを特徴としたものであり、25℃以下の水で洗浄することで、温度応答性ポリマーの親水性を発現させ、温度応答性ポリマーの溶解とともに油脂などの汚れを浮き上がらせるという作用を有する。
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0034】
(実施の形態1)
図1は疎水性物質を回収する基材を備えたレンジフードの断面図を示している。温度応答性ポリマーを担持させた油脂汚れ回収フィルター1からなる深型レンジフードは、油脂汚れ回収フィルター1の下部に油捕集カードリッジ2を備え、油脂汚れ回収フィルター1で捕集した油脂を重力の作用により下部に移動し、油脂捕集カードリッジ2に集まるように構成され、油脂捕集カードリッジ2は容易に取り出して、洗浄できるものとする。また油脂汚れ回収フィルター1はフィルター支持部材106によって支えられており、容易に取り外しが可能である。
【0035】
また温度応答性ポリマーが温度によって疎水性もしくは親水性の性質を発現することから、その性質を制御するためにニクロム線ヒーター3を用いる。ニクロム線ヒーター3は油脂汚れ回収フィルター1後方部に平行し、かつ油粒子、油煙等の油脂汚れ回収フィルター1の外枠に沿って設置されており、レンジフード使用時にのみ、温度応答性ポリマーが疎水性を発現する下限臨界温度、好ましくは25〜35℃程度の熱を保つことにより、油脂汚れ回収フィルター1に担持されている温度応答性ポリマーは疎水性となり、油脂汚れなどの疎水性物質を捕集する働きをもつ。またニクロム線ヒーター3の温度制御は前面パネル105内側に設置されたサーミスター4による。なお熱源は、ハロゲンヒーターやセラミックヒーターでも同様の効果が得られるものである。
【0036】
また図2(a)は油脂汚れ回収フィルター1の断面図、図2(b)は油脂汚れ回収フィルター1上面を示している。図2(a)において油脂汚れ回収フィルター1はアルミニウム製であり、パンチング加工により、多数のパンチング穴9を形成している。この油脂汚れ回収フィルター1は、アルマイト処理によりその表面に酸化被膜5が生じて、多数の細孔6が形成され、油脂汚れ回収フィルター1表面及び細孔6にPNIPAAm7を担持させるように構成され、PNIPAAm7が基材に持続的に担持され、温度応答性ポリマーの効果を長期間にわたって発現することができる。
【0037】
なお、基材としては、フィルター等がある。
【0038】
なお、基材としてアルミニウムをルーバー加工したものでも同様の効果が得られるものである。
【0039】
なお、銅、アルミニウム、ステンレスなどの金属繊維、また多孔質金属からなる基材でも同様の効果が得られるものである。
【0040】
なお、基材に担持させる温度応答性ポリマーとしては、単独で重合したときに水中の転移温度が10〜37℃の温度応答性ポリマーでも同様の効果が得られるものである。このような温度応答性ポリマーを与えるモノマーとしては、例えばN‐n‐プロピルアクリルアミド、N‐n‐プロピルメタクリルアミド、N‐イソプロピルアクリルアミド、N‐イソプロピルメタクリルアミド、N,N‐ジエチルアクリルアミド、N‐メチル‐N‐n‐プロピルアクリルアミド、N‐メチル‐N‐イソプロピルアクリルアミド、N‐テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、N‐テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド、N‐エトキシプロピルアクリルアミド、N‐エトキシプロピルメタクリルアミド、N‐エトキシエチルアクリルアミド、N‐1‐メチル‐2‐メトキシエチルアクリルアミド、N‐モルホリノプロピルアクリルアミド、N‐メトキシプロピルアクリルアミド、N‐メトキシプロピルメタクリルアミド、N‐イソプロポキシプロピルアクリルアミド、N‐イソプロポキシプロピルメタクリルアミド、N‐イソプロポキシエチルアクリルアミド、N‐イソプロポキシエチルメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0041】
また、単独で重合させた時には10℃〜37℃の温度応答性ポリマーを与えないが、単独重合で温度応答性ポリマーを与えるモノマーとともに共重合させることで、温度による疎水性−親水性という性質を発現するモノマーも存在する。このような共重合に用いられるモノマーとしては、例えばN‐エチルアクリルアミド、N‐シクロプロピルアクリルアミド、N‐シクロプロピルメタクリルアミド、N‐メチル‐N‐エチルアクリルアミド、N‐アクリロイルピペリジン、N‐アクリロイルピロリジン、N‐エトキシエチルメタクリルアミド、N‐(2,2‐ジメトキシエチル)‐N‐メチルアクリルアミド、N‐1‐メチル‐2‐メトキシエチルメタクリルアミド、N‐1‐メトキシメチルプロピルアクリルアミド、N‐1‐メトキシメチルプロピルメタクリルアミド、N‐(1,3‐ジオキソラン‐2‐イルメチル)‐N‐メチルアクリルアミド、N‐8‐アクリロイル‐1,4‐ジオキサ‐8‐アザ‐スピロ[4,5]デカンなどが挙げられ、同様の効果が得られるものである。
【0042】
なお、アルマイト処理後の封孔処理を行えば、さらに温度応答性ポリマーの効果を長期間にわたって発現できる効果が得られるものである。
【0043】
さらに真空蒸着法によってキノリノールを配位子としたアルミニウム錯体を作製して、基材表面にアモルファス性の膜を形成させた後、温度応答性ポリマーを担持しても、同様の効果が得られるものである。
【0044】
図2(b)に示すように、油脂汚れ回収フィルター1の両端には取り出しが容易になるように取っ手8が設置されている。油脂汚れ回収フィルター1の裏面には、油脂汚れ回収フィルター1の外枠に沿うようにニクロム線ヒーター3が設置されている。
【0045】
また油脂汚れなどの疎水性物質を捕集した油脂汚れ回収フィルター1は、25℃以下の水で流水洗浄及び浸漬洗浄することによって、PNIPAAm7が親水性を発現し、水への溶解とともに油脂汚れを分離、回収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
レンジフード用フィルターに担持させた温度応答性ポリマーを用いて容易に油煙中の油脂汚れを捕集することができ、なおかつフィルターに捕集した油脂汚れは、洗剤を使用ぜず、水での流水洗浄及び浸漬洗浄によって簡単に分離、回収することができる。さらに換気扇のファンや空気清浄機のフィルターにおいて、空気中の油脂汚れやタバコ煙などの疎水性物質を捕集し、容易に分離、回収および洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態1の疎水性物質回収基材を備えたレンジフードを示す全体断面図
【図2】疎水性物質回収フィルターを示す模式図
【図3】従来の油捕集フィルターを備えたレンジフードの断面図
【図4】従来の光触媒を担持させたレンジフードを示す模式図
【符号の説明】
【0048】
1 油脂汚れ回収フィルター
2 油捕集カードリッジ
3 ニクロム線ヒーター
4 サーミスター
5 酸化被膜
6 細孔
7 PNIPAAm
8 取っ手
9 パンチング穴
101 シロッコファン
102 吸引口
103 フードケース
104 フィルター
105 前面パネル
106 フィルター支持部材
107 排気口
108 油回収器
109 モーター
110 モーター支持部材
111 セラミックスフィルター
112 光源
113 反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中に浮遊する疎水性物質を基材に捕集し、捕集した疎水性物質を基材から分離することにより、疎水性物質を回収することを特徴とする疎水性物質回収方法。
【請求項2】
温度応答性ポリマーを基材に担持させることを特徴とする請求項1記載の疎水性物質回収方法。
【請求項3】
温度応答性ポリマーを担持させることを特徴とする疎水性物質を回収する基材。
【請求項4】
請求項2記載の温度応答性ポリマーがポリ−N−イソプロピルアクリルアミドであることを特徴とする請求項2記載の疎水性物質回収方法。
【請求項5】
請求項3記載の温度応答性ポリマーがポリ−N−イソプロピルアクリルアミドであることを特徴とする請求項3記載の疎水性物質を回収する基材。
【請求項6】
温度応答性ポリマーの温度制御を特徴とする請求項2または4記載の疎水性物質回収方法。
【請求項7】
温度応答性ポリマーの温度制御を特徴とする請求項3または5記載の疎水性物質を回収する基材 。
【請求項8】
請求項1、2、4または6記載の基材の原料をアルミニウムとし、アルマイト処理して表面に酸化皮膜を形成させた後、酸化皮膜表面及び酸化皮膜に生じる多数の細孔に温度応答性ポリマーを担持することを特徴とする請求項1、2、4または6記載の疎水性物質回収方法。
【請求項9】
請求項3、5または7記載の基材の原料をアルミニウムとし、アルマイト処理して表面に酸化皮膜を形成させた後、酸化皮膜表面及び酸化皮膜に生じる多数の細孔に温度応答性ポリマーを担持することを特徴とする3、5または7記載の疎水性物質を回収する基材。
【請求項10】
請求項1、2、4または6記載の基材の原料をアルミニウムとし、キノリノールを配位子としたアルミニウム錯体を作製して、前記基材表面にアモルファス性の膜を形成させた後、温度応答性ポリマーを担持することを特徴とする請求項1、2、4または6記載の疎水性物質回収方法。
【請求項11】
請求項3、5または7記載の基材の原料をアルミニウムとし、キノリノールを配位子としたアルミニウム錯体を作製して、前記基材表面にアモルファス性の膜を形成させた後、温度応答性ポリマーを担持することを特徴とする請求項3、5または7記載の疎水性物質を回収する基材。
【請求項12】
請求項3、5、7または9記載の基材を備えたレンジフード。
【請求項13】
基材を水で流水洗浄または水で浸漬洗浄することを特徴とする請求項1、2、4、6、8または10記載の疎水性物質回収方法。
【請求項14】
請求項3、5、7、9または11記載の基材を水で流水洗浄または水で浸漬洗浄することを特徴とする疎水性物質回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−130464(P2006−130464A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324835(P2004−324835)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】