疎水性/疎水性ブロック共重合体表面の改質による抗血栓性材料
【課題】安価な市販の熱可塑性で且つ疎水性/疎水性ブロック共重合体のソフトセグメント表面のみを改質し、優れた抗血栓性材料およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】疎水性−疎水性ブロック共重合体の中のソフトセグメントをポリアルキレングリコールでグラフトした表面を構成成分として含有するポリマーからなる抗血栓性材料で、該材料は疎水性−疎水性ブロック共重合体熱可塑性エラストマーのソフトセグメント中の炭素−炭素二重結合を用いてポリアルキレングリコールをグラフトする工程により製造される。
【解決手段】疎水性−疎水性ブロック共重合体の中のソフトセグメントをポリアルキレングリコールでグラフトした表面を構成成分として含有するポリマーからなる抗血栓性材料で、該材料は疎水性−疎水性ブロック共重合体熱可塑性エラストマーのソフトセグメント中の炭素−炭素二重結合を用いてポリアルキレングリコールをグラフトする工程により製造される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性/疎水性ブロック共重合体表面のソフトセグメントにポリアルキレングリコールをグラフトした構成成分を含有するポリマーからなる抗血栓性材料ならびにその製造方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は炭素―炭素二重結合を有するソフトセグメントを構成成分とするポリマーを成形後、ポリアルキレングリコールをグラフトすることを特徴とする抗血栓性材料ならびにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴム状熱可塑性物質で親水性/疎水性のミクロ相分離表面を持つポリウレタンは抗血栓性が低い。しかし、これを抗血栓性材料として用いるには充分に低いものではないため、表面への血小板粘着性の低い物質としての2−メチタクリロイル オキシエチル ホスホリルコリン(非特許文献1)などのコーティングが必要であるが剥離の恐れがあり且つ高価である。
【0003】
親水性/疎水性のミクロ相分離表面は血小板粘着性が低く、抗血栓性が高いことが知られている。しかし、従来はこのような親水性/疎水性ミクロ相分離表面を得るために、親水性のポリマー部と疎水性ポリマー部が共重合したブロック共重合体を合成し用いている(非特許文献2参照)。
【0004】
現在開発されている親水性/疎水性ブロック共重合体は熱可塑性を示さない(非特許文献2参照)ため、溶液から脱溶媒により成形しなければならず、溶媒に制限があり且つ得られる形状は膜状物に限られる。
【0005】
疎水性/疎水性型熱可塑性ブロック共重合体エラストマーを親水性/疎水性型熱可塑性ブロック共重合体エラストマーに変換する方法としてソフトセグメントをジボランで処理して水酸化する方法が提供されている(特許文献1参照)が、その血小板粘着性は抗血栓性材料として用いるには充分とはいえない。
【0006】
ポリマー材料の全面にポリエチレングリコール(以下PEGと略記)をグラフトした材料が抗血栓性に優れていることが知られている(非特許文献3参照)が、使用されたポリマーがポリ塩化ビニールを用いており廃棄上問題がある。
【特許文献1】特開2005−168938号公報
【非特許文献1】石原一彦ら、ジャーナル バイオメディカル マテリアル リサーチ、24巻、p.1069−1077、1990年
【非特許文献2】岡野光夫ら、高分子論文集、36巻、p.209−216、1979年
【非特許文献3】森ら、トランス アメリカン ソサイティ アートフィシャル インターナショナル オルガン、28巻、p.459−462、1982年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、安価な市販の熱可塑性で且つ疎水性/疎水性ブロック共重合体のソフトセグメント表面のみを改質し、優れた抗血栓性材料およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記の問題点を鋭意検討した結果、本発明に到達した。本発明により以下の様な抗血栓性材料およびその製造方法が、上記課題を解決するための手段として提供される。
【0009】
(1)疎水性−疎水性ブロック共重合体中のソフトセグメントをポリアルキレングリコールでグラフトした表面を構成成分として含有するポリマーからなる抗血栓性材料。
【0010】
(2)前記疎水性−疎水性ブロック共重合体が、熱可塑性エラストマーである前記(1)に記載の抗血栓性材料。
【0011】
(3)前記疎水性−疎水性ブロック共重合体熱可塑性エラストマーのソフトセグメントが炭素−炭素二重結合を有する前記(2)に記載の抗血栓性材料。
【0012】
(4)前記疎水性−疎水性ブロック共重合体熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレン(以下SBSと略記)系、スチレン−ブタジエン系、スチレン−イソプレン−スチレン系、およびスチレン−イソプレン系より成る群から選択される少なくとも一つをキャストおよび加熱溶融成形した前記(2)または(3)に記載の抗血栓性材料。
【0013】
(5)ソフトセグメントを表面の構成成分として含有するポリマーを塩化パラジウムを触媒とし一酸化炭素と酸素とを接触させる工程、得られた試料のソフトセグメントを無水酢酸と接触させる工程、以上で得られた試料をポリアルキレングリコールと接触させる工程からなる抗血栓性材料の製造方法。
【0014】
(6)ソフトセグメントを表面の構成成分として含有するポリマーを臭素酸と接触させる工程、得られた試料をポリアルキレングリコールと接触させる工程からなる抗血栓性材料の製造方法。
【0015】
(7)ソフトセグメントを表面の構成成分として含有するポリマーを酸素存在下で紫外線を照射する工程、得られた試料のソフトセグメントを無水酢酸と接触させる工程、以上で得られた試料をポリアルキレングリコールと接触させる工程からなる抗血栓性材料の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
市販の熱可塑性で且つ疎水性・疎水性のブロック共重合体は加熱溶融成形し多様な形状の成形物が作製可能であり、この表面には数十nm程度の凹凸があるため炭素―炭素二重結合を有するソフトセグメントにポリアルキレングリコールを極めて多くグラフトした界面を形成可能である。この結果、優れたタンパク質排除効果が発現し高い抗凝血性を示し、且つ親水性/疎水性を有するために優れた抗血小板粘着性と血小板の活性化抑制効果を持つ。これらのことから、本法により優れた抗血栓材料を簡便に創製可能である。
創製された材料表面の抗血栓性は過去に開発された抗血栓性を示す材料として知られているポリマー材料の全面にPEGをグラフトした材料より優れており、また2−メチタクリロイル オキシエチル ホスホリルコリンとブチルメタクリレ−トとの共重合体をコーティングした表面に匹敵する抗血栓性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の抗血栓性材料は、ポリアルキレングリコールをグラフトしたソフトセグメント表面を構成成分として含有するポリマーからなる。
【0018】
本発明で使用されるポリアルキレングリコールはメチレン基数が2から5、好ましくは2である。
【0019】
本発明で使用されるポリアルキレングリコールは分子量が1000以下、好ましくは600のものである。
【0020】
本発明で使用されるラジカル反応開始剤は過酸化物一般、好ましくは1−ヒドロキシルヒドロエチルフェニルケトンである。
【0021】
本発明の材料は抗血栓性を有する。この抗血栓性の指標として血小板粘着性と全血の凝集性で評価することが出来る。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例1 白金触媒を用いたカルボキシル化を経たPEGのグラフト化
SBSブロック共重合体とポリブタジエンラバーをキャストおよび加熱溶融成形し、これらを白金触媒(塩化白金特級、0.13g) と触媒活性を進めるための塩化銅(0.26g)と塩酸(1000μl)を溶解し、得られたフィルムを溶解しないジメチルスルホオキシド(40ml)と水(500ml)との混合溶媒中に浸漬しながら、室温にて一酸化炭素および酸素ガスをそれぞれ15ml/minでバブリングを24時間行い、大量の蒸留水で1昼夜フィルムの洗浄後減圧乾燥を行うことでカルボキシル化表面を作製した。カルボキシル化処理を行ったフィルムを無水酢酸に60℃、3時間浸漬し、カルボン酸を無水マレイン酸に変換した。未反応の無水酢酸を軽く拭き取り、60℃のオーブンで3時間程度減圧乾燥した。無水マレイン酸付加膜を各種分子量のPEG液体中に浸漬し、80℃、24時間浸漬しグラフト反応を行ない、その後大量の蒸留水で長時間フィルムを洗浄し、減圧乾燥を行い試料とした。
【0024】
実施例2 臭素酸に依る臭素付加を経たPEGのグラフト化
SBSブロック共重合体とポリブタジエンラバーをキャストおよび加熱溶融成形し、これらを臭素水素酸に60秒間浸漬し臭素付加反応を行い、表面の臭化水素酸を軽く拭き取り、40℃のオーブンで減圧乾燥した。得られた臭素付加膜を各種分子量のPEG液体中に浸漬し80℃、24時間グラフト反応を行ない、大量の蒸留水で長時間洗浄後、減圧乾燥したものを試料とした。
【0025】
実施例3 酸素存在下で紫外線を照射するカルボキシル化を経たPEGのグラフト化
SBSブロック共重合体とポリブタジエンラバーをキャストおよび加熱溶融成形し、これらをラジカル反応開始剤としての1−ヒドロキシルヒドロエチルフェニルケトン0.35g、水40ml、エタノール60mlの溶液に浸漬し、酸素ガスをバブリングしながら加熱用白熱灯、ブラックライトを照射し30分間反応させ、大量の蒸留水で1昼夜洗浄その後減圧乾燥を行った。これを各種分子量のPEG液体中に浸漬し80℃、24時間グラフト反応を行ない、大量の蒸留水で長時間洗浄後、減圧乾燥したものを試料とした。
【0026】
実施例4 PEGのグラフト量
以下の式で算出した。
グラフト量=(Wg − Wu)/A
Wu:未処理試料の重量、Wg:PEGグラフト処理後の重量
A:フィルムの3辺の長さから算出した見かけの表面積
【0027】
図1にはPEGをグラフトしたときのグラフト量を示している。
【0028】
SBSブロック共重合体キャストフィルムと加熱溶融成形フィルム表面への塩化白金触媒によるカルボキシル化を経過するPEGのグラフト化、臭素付加によるPEGのグラフト化によって重量増加が観察された。 塩化白金触媒によるカルボン酸付加によるPEGのグラフト試料では、分子量400と600のグラフト量はほぼ等しいが、1000ではグラフト量は低下している。これは、PEG分子量が大きくなるにつれ、その分子鎖の体積も増すために、PEGそのものが立体的な障害として働き、高密度にグラフトできないのではないかと考えられる。臭素付加によるPEGグラフトの量は塩化白金触媒によるPEGグラフト試料より少ない。これは付加された臭素が水酸基に変換されるためPEGとの反応が阻害されたためと考えられる。
【0029】
対照試料のポリブタジエンゴムへの塩化白金触媒によるカルボキシル化を経過するPEGグラフト量はスチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体へのグラフト量に比べ少なく約20分の1であることがわかる。
【0030】
実施例5 表面の走査型プローブ顕微鏡観察
(株)島津製作所製走査型プローブ顕微鏡SPM-9500 J3を使用し、試料表面構造を観察した。またカンチレバーはSeiko InStruments Inc製SI-DF40を使用した。試料は乾燥状態ものを用い大気中にて測定した。測定モードはダイナミック・フォース・モード(DFM)により走査範囲:2×2 μm2または1×1μm2測定周波数1.0Hzにて形状像を得た。
【0031】
図2から図4は試料表面を走査型プローブ顕微鏡にて観察した三次元分布の写真である。
図2中の(a);SBSキャストフィルム、(b);カルボキシル化SBSキャストフィルム、PEGグラフトSBSキャストフィルム{(c);分子量400、(d);分子量600、図3中の(e);分子量1000、(f);
SBS臭素付加キャストフィルム、(g);臭素付加後PEG(分子量600)グラフトSBSキャストフィルム、(h);SBS加熱溶融成形フィルム、図4中の(i);カルボキシル化SBS加熱溶融成形フィルム、(j);PEG(分子量600)グラフトSBS加熱溶融成形フィルム、(k);ポリブタジエンラバーキャストフィルム(l);カルボキシル化ポリブタジエンラバーフィルム。
【0032】
SBSブロック共重合体のキャストフィルムのキャストの表面(a)、塩化白金触媒によるカルボキシル化試料(b)、カルボキシル化膜へのPEG分子量400(c),600(d)、1000(e)のグラフト処理を行った試料、臭素付加後(f)とPEGによりグラフト表面(g)、加熱溶融成形試料(h)、塩化白金触媒による反応によるカルボキシル化試料(i)、および分子量600のPEGによる処理試料(j)にはサブミクロンオーダーの大きな凹凸の中に数十nmサイズの円錐状に近い突起が無数に存在することが分かる。
【0033】
ポリブタジエンゴムのキャストフィルム(k)と塩化白金触媒によるカルボキシル化試料(l)の表面構造は、SBSブロック共重合体試料とは異なり試料作製条件に由来すると考えられるサブミクロンオーダーの大きな凹凸のみが存在している。
【0034】
従って、SBSブロック共重合体ブロック共重合体フィルムの表面積は見かけの表面積に対して、何倍もの表面積を持っていると考えられ、ポリブタジエンゴムゴム表面より多くのPEGとの反応サイトを有していると考えられる。このことがPEGグラフトによる重量増加がポリブタジエンゴム試料の方がスチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体試料より小さかった原因と考えられる。
【0035】
実施例6 血小板粘着試験
実施例1から3で得たPEGをグラフトした試料および対照試料としてポリスチレン膜と2−メタクリロイル オキシエチル ホスホリルコリンとブチルメタクリレ−トとの共重合体(以下PMBと略記)をコーティングしたスライドグラスを24穴培養用セル中に入れ、これらに健康人から採血した血液と抗凝固剤を9:1の体積比となるように混合し、室温にて1000回転/minで15分間遠心分離して得た多血小板血漿を500 μlずつ注入し、1時間培養した。培養後に粘着した血小板を2.5vol%グルタルアルデヒド水溶液中で架橋固定し、これを水とエタノールの混合溶液のエタノール濃度を順次高めた溶液に浸漬後、最終的にブタノールで置換し凍結乾燥を行い、更に白金蒸着後電子顕微鏡を用い1500倍で観測することにより評価した。
【0036】
図5から図11は走査型電子顕微鏡による血小板粘着状況の写真である。
図5中の(a);ポリスチレンフィルム、(b);SBSキャストフィルム、図6中の(c);カルボキシル化SBSキャストフィルム、PEGグラフトSBSキャストフィルム{(d);分子量400、図7中の(e);分子量600、(f);分子量1000}、図8中の(g);臭素付加後PEGグラフトSBSキャストフィルム、(h);PMB、図9中の(i);SBS加熱溶融成形フィルム、(j);カルボキシル化SBS加熱溶融成形フィルム、図10中の(k);PEG(分子量600)グラフトSBS加熱溶融成形フィルム、(l);ポリブタジエンラバーキャストフィルム、図11中の(m);カルボキシル化ポリブタジエンラバーフィルム、(n);PEGグラフトポリブタジエンラバーフィルム。
【0037】
ポリスチレン(a)には約2μmの直径の多数の血小板が粘着していることが分かる。SBSブロック共重合体のキャスト試料(b)の血小板粘着量はポリスチレンに近く且つ偽足を形成し、凝集しているのが見て取れる。カルボン酸付加試料(c)では僅かに粘着量は少ない。これはソフトセグメントのポリブタジエンゴム部に親水基であるカルボン酸が導入され、SBSブロック共重合体表面に親水性/疎水性型ミクロ相分離構造が形成されるために、若干の血小板粘着抑制効果を示していることが分かる。しかし、偽足を形成し凝集しているドメイン分も存在している。短い分子鎖の親水基による親水性/疎水性型ミクロ相分離構造を有した表面では、血小板の活性化を抑制する効果は少ないことが分かる。さらにPEGをグラフトした試料(d〜f)では、血小板粘着量が大きく減少し、高い血小板粘着抑制効果を示していることが分かる。中でも分子量600の表面は、ポリスチレン膜とPMBをコーティングした表面(h)と同等の抗血栓性を有している。また、全てのPEGグラフト表面では血小板の変形および偽足の形成が見られない。つまりPEGをグラフトした表面は血小板粘着を抑制すると共に、粘着血小板の活性化も抑制すると言える。
【0038】
分子量が600のPEGのグラフト化を臭素付加により行った試料(g)でも血小板はほとんど粘着せず且つ偽足は観察されない。このことは分子量600のPEGのソフトセグメントのポリブタジエンゴム部へのグラフトは血小板の粘着抑制効果に優れていることを意味している。
【0039】
SBSブロック共重合体は容易に各種形状に加熱溶融成形することが可能であり、各種医療用用途に応用可能である。そこで、加熱溶融成形フィルムにおいてもキャストフィルムと同様の改質処理を行い、その表面の抗血栓性を検討すること試みた。試料作製条件は、分子量600のPEGのみを使用した。加熱溶融成形試料(i)はキャスト試料(b)に比べると血小板粘着量は少ない。これは加熱溶融成形試料表面には加熱溶融成形の際にカルボン酸が導入されているために、親水性/疎水性型ミクロ相分離構造が形成され、若干の血小板粘着抑制効果があることが分かる。しかし、血小板は偽足を出しており活性化していることが分かる。カルボン酸付加試料(j)は加熱溶融成形試料とはあまり違いが見えない。さらに分子量600のPEGをグラフトした試料(k)表面はキャスト試料にPEGをグラフトした試料と同じようにソフトセグメントのポリブタジエンゴム部と類似した状況を示しており、溶融成形フィルムにおいても、血小板粘着抑制効果および血小板活性抑制効果を示し、抗血栓性材料になりうる可能性があることが分かる。
【0040】
対照試料として表面に親水性/疎水性型ミクロ相分離構造を有していない、ポリブタジエンゴムの結果を見ると、キャストフィルム(l)とカルボン酸付加試料(m)共に非常に多くの血小板が粘着していることが分かる。また粘着血小板は偽足を多く出しており血小板は活性化していることが分かる。一方、分子量600のPEGをグラフトした試料(n)ではカルボン酸付加試料より血小板の粘着を抑制していることが分かる。これはグラフトされたPEG分子鎖の体積排除効果によるものであると考えられる。しかし、SBSブロック共重合体のキャストのPEGグラフト試料や加熱溶融成形試料と比べると、血小板が多く粘着し且つ偽足を出していることが分かる。
SBSブロック共重合体表面のソフトセグメントのポリブタジエンゴム部に分子量600のPEGをグラフトした試料がポリブタジエンゴム表面にPEGをグラフトするよりも優れた血小板粘着抑制効果と活性化抑制効果を持つことは、SBSブロック共重合体表面には数十nmサイズの凹凸があり、これをもたないポリブタジエンゴムよりもソフトセグメントのポリブタジエンゴム部にPEG鎖が多くグラフト出来る、すなわちPEG密度が高くブラシ型のPEG鎖の存在はタンパク質分子の排除効果が高いとする研究結果を裏付ける結果といえる。同時に親水性/疎水性相分離表面による活性化抑制効果が働いたものと考えられる。
【0041】
実施例7 全血の凝集性試験
実施例6と同様に、実施例1から3で得たPEGをグラフトした試料および対照試料としてポリスチレン膜とPMBをコーティングしたスライドグラスを24穴培養用セル中に入れ、これらに蒸留水500mlに11gのクエン酸ナトリウム、クエン酸4g、ブドウ糖2.2gを溶解した溶液1.3mlに全血8.7mlを混合し、フィブリン凝集を早める為に0.1M塩化カルシウム水溶液50μl注ぎ、手で軽くゆすり血液と混ぜ合わせ、そのまま37℃ンキュベーターで1時間培養後、0.1Mクエン酸ナトリウム水溶液50μlを注ぎ凝血反応を停止させ、ピンセット等で凝血塊を取り除き洗浄を行った。これを実施例6と同様の条件で架橋固定・真空乾燥・白金蒸着・電子顕微鏡観測を行い評価した。
【0042】
図12から図18は全血の凝集状態を評価するために電子顕微鏡で観察した写真である。
図12中(a);ポリスチレンフィルム、(b);SBSキャストフィルム、図13中の(c);カルボキシル化SBSキャストフィルム、PEGグラフトSBSキャストフィルム{(d);分子量400、図14中の(e);分子量600、(f);分子量1000}、図15中の(g);臭素付加後PEGグラフトSBSキャストフィルム、(h);PMB、図16中の(i);SBS加熱溶融成形フィルム、(j);カルボキシル化SBS加熱溶融成形フィルム、図17中の(k);PEG(分子量600)グラフトSBS加熱溶融成形フィルム、(l);ポリブタジエンラバーキャストフィルム、図18中の(m);カルボキシル化ポリブタジエンラバーフィルム、(n);PEGグラフトポリブタジエンラバーフィルム。
【0043】
ポリスチレン表面には直径が数μmの中心付近が凹の扁平な赤血球、表面に凹凸を持った直径が数μmの白血球(補体系の活性の結果粘着した)、凝固因子系の活性を示す糸状のフィブリンのネットワークが見られ、血栓が形成されていることが明瞭に分かる。このことからポリスチレン表面は、血液成分が粘着しやすい表面を有しており、血液は凝結し易いことが分かる。一方、PMBをコーティングした表面(g)には、白血球が観察できるものの血栓形成を起こしていないことも分かる。従って、全血浸漬試験による抗凝血性評価は、血栓形成の主要プロセスを含んだ評価法として有用と考えられる。しかし、血液の主要成分である血小板を観察することができなかった。これは、小さな血小板の粘着速度は赤血球および白血球より速く表面に粘着しているため、大きな赤血球と白血球で覆い隠され且つ電子顕微鏡像の焦点深度上観測できなかったと考えられる。従って、前記の血小板粘着状況の観察と、全血浸漬試験による抗凝血性評価の両方を行うことが正確に材料表面の抗血栓性を評価するためには必要と考えられる。
【0044】
血小板粘着数も多いSBSブロック共重合体のキャスト表面(b)に粘着した血液成分は、フィブリンネットワークを形成し、血液成分の凝集が見られる。凝固因子系の活性抑制および補体活性の抑制効果も低い。これらのことは抗血栓性が低いことを意味している。カルボン酸付加表面(c)では、カルボン酸導入による親水化にもかかわらず、凝固因子系の活性化によるフィブリンネットワークの形成、および補体活性による白血球粘着が見受けられる。これは、分子鎖の短いカルボン酸では、凝固因子系にかかわるタンパク質を十分に排除することができず、さらに末端官能基の水酸基が補体活性を促したのではないかと考えられる。
【0045】
キャスト膜のPEGグラフト表面(d〜f)は、キャスト(b)およびカルボン酸付加膜表面(c)と比べ、血液成分の粘着量が大幅に減少し、PEGグラフト量の多い分子量400のグラフト表面においては、白血球のみが粘着しており、分子量600のグラフト試料表面で僅かに血液成分の凝集が見られるが明瞭なフィブリンネットワークは観察できない。これは、PEGがカルボン酸と比べ長い分子鎖を有し、大きな体積排除効果を発揮し、しかも数十nmの凹凸があることにより表面積が広がり多くのPEG鎖がグラフトしたことによりフィブリンの形成を伴う凝固因子系の活性を抑制できたのではないかと考えられる。
【0046】
分子量が600のPEGのグラフト化を臭素付加により行った試料(g)では赤血球と白血球の粘着と血液成分の凝集が僅かに観察される。血小板はほとんど粘着せず且つ偽足は観察されなかった(g)ことから、血小板の粘着抑制効果に優れているが補体系の活性と凝固因子系の活性の抑制効果は低いことを意味している。この理由は臭素付加によって表面に多くの水酸基が出来るためと考えられる。
【0047】
溶融成形フィルム(i)およびこのカルボン酸付加表面(j)には、キャスト(b)およびこれのカルボン酸付加(c)と同様に多量の血液成分が粘着し、抗血栓性を有していないことが分かる。一方、分子量600のPEGをグラフトした表面(k)は、白血球の粘着は見受けられるものの、その他の血液成分の粘着は見受けられず、キャスト膜のPEGグラフト表面と同様の理由によるフィブリンの形成を伴う凝固因子系の活性を抑制できたのではないかと考えられる。
【0048】
次に表面に親水性/疎水性型ミクロ相分離構造を有していない、ポリブタジエンゴムシリーズの結果を見ると、血小板粘着数はキャストフィルム(l)、カルボン酸付加試料(m)では多かったが、ポリブタジエンゴムに分子量600のPEGをグラフトした表面(n)では少なく且つ非常に多くの血液成分が粘着していることが分かる。従って、ポリブタジエンゴムにPEGをグラフトとしても抗血栓性は向上しないことを意味している。この理由はポリブタジエンゴム表面全体をPEGを均一グラフト出来るがその量はSBSブロック共重合体に比べ非常に少なく、PEG鎖の体積排除効果が不十分なためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の抗血栓性材料はカテーテル、人工血管、血液成分保存容器、人工腎臓、人工心臓、輸液バッグ、シリンジガスケット、などの材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】PEGをグラフトしたときのグラフト量を示す立体図。
【0051】
【図2】表面を走査型プローブ顕微鏡にて観察した結果の写真。
【0052】
【図3】表面を走査型プローブ顕微鏡にて観察した結果の写真。
【0053】
【図4】表面を走査型プローブ顕微鏡にて観察した結果の写真。
【0054】
【図5】血小板粘着状況を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0055】
【図6】血小板粘着状況を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0056】
【図7】血小板粘着状況を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0057】
【図8】血小板粘着状況を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0058】
【図9】血小板粘着状況を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0059】
【図10】血小板粘着状況を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0060】
【図11】血小板粘着状況を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0061】
【図12】全血の凝集状態を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0062】
【図13】全血の凝集状態を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0063】
【図14】全血の凝集状態を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0064】
【図15】全血の凝集状態を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0065】
【図16】全血の凝集状態を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0066】
【図17】全血の凝集状態を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0067】
【図18】全血の凝集状態を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性/疎水性ブロック共重合体表面のソフトセグメントにポリアルキレングリコールをグラフトした構成成分を含有するポリマーからなる抗血栓性材料ならびにその製造方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は炭素―炭素二重結合を有するソフトセグメントを構成成分とするポリマーを成形後、ポリアルキレングリコールをグラフトすることを特徴とする抗血栓性材料ならびにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴム状熱可塑性物質で親水性/疎水性のミクロ相分離表面を持つポリウレタンは抗血栓性が低い。しかし、これを抗血栓性材料として用いるには充分に低いものではないため、表面への血小板粘着性の低い物質としての2−メチタクリロイル オキシエチル ホスホリルコリン(非特許文献1)などのコーティングが必要であるが剥離の恐れがあり且つ高価である。
【0003】
親水性/疎水性のミクロ相分離表面は血小板粘着性が低く、抗血栓性が高いことが知られている。しかし、従来はこのような親水性/疎水性ミクロ相分離表面を得るために、親水性のポリマー部と疎水性ポリマー部が共重合したブロック共重合体を合成し用いている(非特許文献2参照)。
【0004】
現在開発されている親水性/疎水性ブロック共重合体は熱可塑性を示さない(非特許文献2参照)ため、溶液から脱溶媒により成形しなければならず、溶媒に制限があり且つ得られる形状は膜状物に限られる。
【0005】
疎水性/疎水性型熱可塑性ブロック共重合体エラストマーを親水性/疎水性型熱可塑性ブロック共重合体エラストマーに変換する方法としてソフトセグメントをジボランで処理して水酸化する方法が提供されている(特許文献1参照)が、その血小板粘着性は抗血栓性材料として用いるには充分とはいえない。
【0006】
ポリマー材料の全面にポリエチレングリコール(以下PEGと略記)をグラフトした材料が抗血栓性に優れていることが知られている(非特許文献3参照)が、使用されたポリマーがポリ塩化ビニールを用いており廃棄上問題がある。
【特許文献1】特開2005−168938号公報
【非特許文献1】石原一彦ら、ジャーナル バイオメディカル マテリアル リサーチ、24巻、p.1069−1077、1990年
【非特許文献2】岡野光夫ら、高分子論文集、36巻、p.209−216、1979年
【非特許文献3】森ら、トランス アメリカン ソサイティ アートフィシャル インターナショナル オルガン、28巻、p.459−462、1982年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、安価な市販の熱可塑性で且つ疎水性/疎水性ブロック共重合体のソフトセグメント表面のみを改質し、優れた抗血栓性材料およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記の問題点を鋭意検討した結果、本発明に到達した。本発明により以下の様な抗血栓性材料およびその製造方法が、上記課題を解決するための手段として提供される。
【0009】
(1)疎水性−疎水性ブロック共重合体中のソフトセグメントをポリアルキレングリコールでグラフトした表面を構成成分として含有するポリマーからなる抗血栓性材料。
【0010】
(2)前記疎水性−疎水性ブロック共重合体が、熱可塑性エラストマーである前記(1)に記載の抗血栓性材料。
【0011】
(3)前記疎水性−疎水性ブロック共重合体熱可塑性エラストマーのソフトセグメントが炭素−炭素二重結合を有する前記(2)に記載の抗血栓性材料。
【0012】
(4)前記疎水性−疎水性ブロック共重合体熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレン(以下SBSと略記)系、スチレン−ブタジエン系、スチレン−イソプレン−スチレン系、およびスチレン−イソプレン系より成る群から選択される少なくとも一つをキャストおよび加熱溶融成形した前記(2)または(3)に記載の抗血栓性材料。
【0013】
(5)ソフトセグメントを表面の構成成分として含有するポリマーを塩化パラジウムを触媒とし一酸化炭素と酸素とを接触させる工程、得られた試料のソフトセグメントを無水酢酸と接触させる工程、以上で得られた試料をポリアルキレングリコールと接触させる工程からなる抗血栓性材料の製造方法。
【0014】
(6)ソフトセグメントを表面の構成成分として含有するポリマーを臭素酸と接触させる工程、得られた試料をポリアルキレングリコールと接触させる工程からなる抗血栓性材料の製造方法。
【0015】
(7)ソフトセグメントを表面の構成成分として含有するポリマーを酸素存在下で紫外線を照射する工程、得られた試料のソフトセグメントを無水酢酸と接触させる工程、以上で得られた試料をポリアルキレングリコールと接触させる工程からなる抗血栓性材料の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
市販の熱可塑性で且つ疎水性・疎水性のブロック共重合体は加熱溶融成形し多様な形状の成形物が作製可能であり、この表面には数十nm程度の凹凸があるため炭素―炭素二重結合を有するソフトセグメントにポリアルキレングリコールを極めて多くグラフトした界面を形成可能である。この結果、優れたタンパク質排除効果が発現し高い抗凝血性を示し、且つ親水性/疎水性を有するために優れた抗血小板粘着性と血小板の活性化抑制効果を持つ。これらのことから、本法により優れた抗血栓材料を簡便に創製可能である。
創製された材料表面の抗血栓性は過去に開発された抗血栓性を示す材料として知られているポリマー材料の全面にPEGをグラフトした材料より優れており、また2−メチタクリロイル オキシエチル ホスホリルコリンとブチルメタクリレ−トとの共重合体をコーティングした表面に匹敵する抗血栓性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の抗血栓性材料は、ポリアルキレングリコールをグラフトしたソフトセグメント表面を構成成分として含有するポリマーからなる。
【0018】
本発明で使用されるポリアルキレングリコールはメチレン基数が2から5、好ましくは2である。
【0019】
本発明で使用されるポリアルキレングリコールは分子量が1000以下、好ましくは600のものである。
【0020】
本発明で使用されるラジカル反応開始剤は過酸化物一般、好ましくは1−ヒドロキシルヒドロエチルフェニルケトンである。
【0021】
本発明の材料は抗血栓性を有する。この抗血栓性の指標として血小板粘着性と全血の凝集性で評価することが出来る。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例1 白金触媒を用いたカルボキシル化を経たPEGのグラフト化
SBSブロック共重合体とポリブタジエンラバーをキャストおよび加熱溶融成形し、これらを白金触媒(塩化白金特級、0.13g) と触媒活性を進めるための塩化銅(0.26g)と塩酸(1000μl)を溶解し、得られたフィルムを溶解しないジメチルスルホオキシド(40ml)と水(500ml)との混合溶媒中に浸漬しながら、室温にて一酸化炭素および酸素ガスをそれぞれ15ml/minでバブリングを24時間行い、大量の蒸留水で1昼夜フィルムの洗浄後減圧乾燥を行うことでカルボキシル化表面を作製した。カルボキシル化処理を行ったフィルムを無水酢酸に60℃、3時間浸漬し、カルボン酸を無水マレイン酸に変換した。未反応の無水酢酸を軽く拭き取り、60℃のオーブンで3時間程度減圧乾燥した。無水マレイン酸付加膜を各種分子量のPEG液体中に浸漬し、80℃、24時間浸漬しグラフト反応を行ない、その後大量の蒸留水で長時間フィルムを洗浄し、減圧乾燥を行い試料とした。
【0024】
実施例2 臭素酸に依る臭素付加を経たPEGのグラフト化
SBSブロック共重合体とポリブタジエンラバーをキャストおよび加熱溶融成形し、これらを臭素水素酸に60秒間浸漬し臭素付加反応を行い、表面の臭化水素酸を軽く拭き取り、40℃のオーブンで減圧乾燥した。得られた臭素付加膜を各種分子量のPEG液体中に浸漬し80℃、24時間グラフト反応を行ない、大量の蒸留水で長時間洗浄後、減圧乾燥したものを試料とした。
【0025】
実施例3 酸素存在下で紫外線を照射するカルボキシル化を経たPEGのグラフト化
SBSブロック共重合体とポリブタジエンラバーをキャストおよび加熱溶融成形し、これらをラジカル反応開始剤としての1−ヒドロキシルヒドロエチルフェニルケトン0.35g、水40ml、エタノール60mlの溶液に浸漬し、酸素ガスをバブリングしながら加熱用白熱灯、ブラックライトを照射し30分間反応させ、大量の蒸留水で1昼夜洗浄その後減圧乾燥を行った。これを各種分子量のPEG液体中に浸漬し80℃、24時間グラフト反応を行ない、大量の蒸留水で長時間洗浄後、減圧乾燥したものを試料とした。
【0026】
実施例4 PEGのグラフト量
以下の式で算出した。
グラフト量=(Wg − Wu)/A
Wu:未処理試料の重量、Wg:PEGグラフト処理後の重量
A:フィルムの3辺の長さから算出した見かけの表面積
【0027】
図1にはPEGをグラフトしたときのグラフト量を示している。
【0028】
SBSブロック共重合体キャストフィルムと加熱溶融成形フィルム表面への塩化白金触媒によるカルボキシル化を経過するPEGのグラフト化、臭素付加によるPEGのグラフト化によって重量増加が観察された。 塩化白金触媒によるカルボン酸付加によるPEGのグラフト試料では、分子量400と600のグラフト量はほぼ等しいが、1000ではグラフト量は低下している。これは、PEG分子量が大きくなるにつれ、その分子鎖の体積も増すために、PEGそのものが立体的な障害として働き、高密度にグラフトできないのではないかと考えられる。臭素付加によるPEGグラフトの量は塩化白金触媒によるPEGグラフト試料より少ない。これは付加された臭素が水酸基に変換されるためPEGとの反応が阻害されたためと考えられる。
【0029】
対照試料のポリブタジエンゴムへの塩化白金触媒によるカルボキシル化を経過するPEGグラフト量はスチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体へのグラフト量に比べ少なく約20分の1であることがわかる。
【0030】
実施例5 表面の走査型プローブ顕微鏡観察
(株)島津製作所製走査型プローブ顕微鏡SPM-9500 J3を使用し、試料表面構造を観察した。またカンチレバーはSeiko InStruments Inc製SI-DF40を使用した。試料は乾燥状態ものを用い大気中にて測定した。測定モードはダイナミック・フォース・モード(DFM)により走査範囲:2×2 μm2または1×1μm2測定周波数1.0Hzにて形状像を得た。
【0031】
図2から図4は試料表面を走査型プローブ顕微鏡にて観察した三次元分布の写真である。
図2中の(a);SBSキャストフィルム、(b);カルボキシル化SBSキャストフィルム、PEGグラフトSBSキャストフィルム{(c);分子量400、(d);分子量600、図3中の(e);分子量1000、(f);
SBS臭素付加キャストフィルム、(g);臭素付加後PEG(分子量600)グラフトSBSキャストフィルム、(h);SBS加熱溶融成形フィルム、図4中の(i);カルボキシル化SBS加熱溶融成形フィルム、(j);PEG(分子量600)グラフトSBS加熱溶融成形フィルム、(k);ポリブタジエンラバーキャストフィルム(l);カルボキシル化ポリブタジエンラバーフィルム。
【0032】
SBSブロック共重合体のキャストフィルムのキャストの表面(a)、塩化白金触媒によるカルボキシル化試料(b)、カルボキシル化膜へのPEG分子量400(c),600(d)、1000(e)のグラフト処理を行った試料、臭素付加後(f)とPEGによりグラフト表面(g)、加熱溶融成形試料(h)、塩化白金触媒による反応によるカルボキシル化試料(i)、および分子量600のPEGによる処理試料(j)にはサブミクロンオーダーの大きな凹凸の中に数十nmサイズの円錐状に近い突起が無数に存在することが分かる。
【0033】
ポリブタジエンゴムのキャストフィルム(k)と塩化白金触媒によるカルボキシル化試料(l)の表面構造は、SBSブロック共重合体試料とは異なり試料作製条件に由来すると考えられるサブミクロンオーダーの大きな凹凸のみが存在している。
【0034】
従って、SBSブロック共重合体ブロック共重合体フィルムの表面積は見かけの表面積に対して、何倍もの表面積を持っていると考えられ、ポリブタジエンゴムゴム表面より多くのPEGとの反応サイトを有していると考えられる。このことがPEGグラフトによる重量増加がポリブタジエンゴム試料の方がスチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体試料より小さかった原因と考えられる。
【0035】
実施例6 血小板粘着試験
実施例1から3で得たPEGをグラフトした試料および対照試料としてポリスチレン膜と2−メタクリロイル オキシエチル ホスホリルコリンとブチルメタクリレ−トとの共重合体(以下PMBと略記)をコーティングしたスライドグラスを24穴培養用セル中に入れ、これらに健康人から採血した血液と抗凝固剤を9:1の体積比となるように混合し、室温にて1000回転/minで15分間遠心分離して得た多血小板血漿を500 μlずつ注入し、1時間培養した。培養後に粘着した血小板を2.5vol%グルタルアルデヒド水溶液中で架橋固定し、これを水とエタノールの混合溶液のエタノール濃度を順次高めた溶液に浸漬後、最終的にブタノールで置換し凍結乾燥を行い、更に白金蒸着後電子顕微鏡を用い1500倍で観測することにより評価した。
【0036】
図5から図11は走査型電子顕微鏡による血小板粘着状況の写真である。
図5中の(a);ポリスチレンフィルム、(b);SBSキャストフィルム、図6中の(c);カルボキシル化SBSキャストフィルム、PEGグラフトSBSキャストフィルム{(d);分子量400、図7中の(e);分子量600、(f);分子量1000}、図8中の(g);臭素付加後PEGグラフトSBSキャストフィルム、(h);PMB、図9中の(i);SBS加熱溶融成形フィルム、(j);カルボキシル化SBS加熱溶融成形フィルム、図10中の(k);PEG(分子量600)グラフトSBS加熱溶融成形フィルム、(l);ポリブタジエンラバーキャストフィルム、図11中の(m);カルボキシル化ポリブタジエンラバーフィルム、(n);PEGグラフトポリブタジエンラバーフィルム。
【0037】
ポリスチレン(a)には約2μmの直径の多数の血小板が粘着していることが分かる。SBSブロック共重合体のキャスト試料(b)の血小板粘着量はポリスチレンに近く且つ偽足を形成し、凝集しているのが見て取れる。カルボン酸付加試料(c)では僅かに粘着量は少ない。これはソフトセグメントのポリブタジエンゴム部に親水基であるカルボン酸が導入され、SBSブロック共重合体表面に親水性/疎水性型ミクロ相分離構造が形成されるために、若干の血小板粘着抑制効果を示していることが分かる。しかし、偽足を形成し凝集しているドメイン分も存在している。短い分子鎖の親水基による親水性/疎水性型ミクロ相分離構造を有した表面では、血小板の活性化を抑制する効果は少ないことが分かる。さらにPEGをグラフトした試料(d〜f)では、血小板粘着量が大きく減少し、高い血小板粘着抑制効果を示していることが分かる。中でも分子量600の表面は、ポリスチレン膜とPMBをコーティングした表面(h)と同等の抗血栓性を有している。また、全てのPEGグラフト表面では血小板の変形および偽足の形成が見られない。つまりPEGをグラフトした表面は血小板粘着を抑制すると共に、粘着血小板の活性化も抑制すると言える。
【0038】
分子量が600のPEGのグラフト化を臭素付加により行った試料(g)でも血小板はほとんど粘着せず且つ偽足は観察されない。このことは分子量600のPEGのソフトセグメントのポリブタジエンゴム部へのグラフトは血小板の粘着抑制効果に優れていることを意味している。
【0039】
SBSブロック共重合体は容易に各種形状に加熱溶融成形することが可能であり、各種医療用用途に応用可能である。そこで、加熱溶融成形フィルムにおいてもキャストフィルムと同様の改質処理を行い、その表面の抗血栓性を検討すること試みた。試料作製条件は、分子量600のPEGのみを使用した。加熱溶融成形試料(i)はキャスト試料(b)に比べると血小板粘着量は少ない。これは加熱溶融成形試料表面には加熱溶融成形の際にカルボン酸が導入されているために、親水性/疎水性型ミクロ相分離構造が形成され、若干の血小板粘着抑制効果があることが分かる。しかし、血小板は偽足を出しており活性化していることが分かる。カルボン酸付加試料(j)は加熱溶融成形試料とはあまり違いが見えない。さらに分子量600のPEGをグラフトした試料(k)表面はキャスト試料にPEGをグラフトした試料と同じようにソフトセグメントのポリブタジエンゴム部と類似した状況を示しており、溶融成形フィルムにおいても、血小板粘着抑制効果および血小板活性抑制効果を示し、抗血栓性材料になりうる可能性があることが分かる。
【0040】
対照試料として表面に親水性/疎水性型ミクロ相分離構造を有していない、ポリブタジエンゴムの結果を見ると、キャストフィルム(l)とカルボン酸付加試料(m)共に非常に多くの血小板が粘着していることが分かる。また粘着血小板は偽足を多く出しており血小板は活性化していることが分かる。一方、分子量600のPEGをグラフトした試料(n)ではカルボン酸付加試料より血小板の粘着を抑制していることが分かる。これはグラフトされたPEG分子鎖の体積排除効果によるものであると考えられる。しかし、SBSブロック共重合体のキャストのPEGグラフト試料や加熱溶融成形試料と比べると、血小板が多く粘着し且つ偽足を出していることが分かる。
SBSブロック共重合体表面のソフトセグメントのポリブタジエンゴム部に分子量600のPEGをグラフトした試料がポリブタジエンゴム表面にPEGをグラフトするよりも優れた血小板粘着抑制効果と活性化抑制効果を持つことは、SBSブロック共重合体表面には数十nmサイズの凹凸があり、これをもたないポリブタジエンゴムよりもソフトセグメントのポリブタジエンゴム部にPEG鎖が多くグラフト出来る、すなわちPEG密度が高くブラシ型のPEG鎖の存在はタンパク質分子の排除効果が高いとする研究結果を裏付ける結果といえる。同時に親水性/疎水性相分離表面による活性化抑制効果が働いたものと考えられる。
【0041】
実施例7 全血の凝集性試験
実施例6と同様に、実施例1から3で得たPEGをグラフトした試料および対照試料としてポリスチレン膜とPMBをコーティングしたスライドグラスを24穴培養用セル中に入れ、これらに蒸留水500mlに11gのクエン酸ナトリウム、クエン酸4g、ブドウ糖2.2gを溶解した溶液1.3mlに全血8.7mlを混合し、フィブリン凝集を早める為に0.1M塩化カルシウム水溶液50μl注ぎ、手で軽くゆすり血液と混ぜ合わせ、そのまま37℃ンキュベーターで1時間培養後、0.1Mクエン酸ナトリウム水溶液50μlを注ぎ凝血反応を停止させ、ピンセット等で凝血塊を取り除き洗浄を行った。これを実施例6と同様の条件で架橋固定・真空乾燥・白金蒸着・電子顕微鏡観測を行い評価した。
【0042】
図12から図18は全血の凝集状態を評価するために電子顕微鏡で観察した写真である。
図12中(a);ポリスチレンフィルム、(b);SBSキャストフィルム、図13中の(c);カルボキシル化SBSキャストフィルム、PEGグラフトSBSキャストフィルム{(d);分子量400、図14中の(e);分子量600、(f);分子量1000}、図15中の(g);臭素付加後PEGグラフトSBSキャストフィルム、(h);PMB、図16中の(i);SBS加熱溶融成形フィルム、(j);カルボキシル化SBS加熱溶融成形フィルム、図17中の(k);PEG(分子量600)グラフトSBS加熱溶融成形フィルム、(l);ポリブタジエンラバーキャストフィルム、図18中の(m);カルボキシル化ポリブタジエンラバーフィルム、(n);PEGグラフトポリブタジエンラバーフィルム。
【0043】
ポリスチレン表面には直径が数μmの中心付近が凹の扁平な赤血球、表面に凹凸を持った直径が数μmの白血球(補体系の活性の結果粘着した)、凝固因子系の活性を示す糸状のフィブリンのネットワークが見られ、血栓が形成されていることが明瞭に分かる。このことからポリスチレン表面は、血液成分が粘着しやすい表面を有しており、血液は凝結し易いことが分かる。一方、PMBをコーティングした表面(g)には、白血球が観察できるものの血栓形成を起こしていないことも分かる。従って、全血浸漬試験による抗凝血性評価は、血栓形成の主要プロセスを含んだ評価法として有用と考えられる。しかし、血液の主要成分である血小板を観察することができなかった。これは、小さな血小板の粘着速度は赤血球および白血球より速く表面に粘着しているため、大きな赤血球と白血球で覆い隠され且つ電子顕微鏡像の焦点深度上観測できなかったと考えられる。従って、前記の血小板粘着状況の観察と、全血浸漬試験による抗凝血性評価の両方を行うことが正確に材料表面の抗血栓性を評価するためには必要と考えられる。
【0044】
血小板粘着数も多いSBSブロック共重合体のキャスト表面(b)に粘着した血液成分は、フィブリンネットワークを形成し、血液成分の凝集が見られる。凝固因子系の活性抑制および補体活性の抑制効果も低い。これらのことは抗血栓性が低いことを意味している。カルボン酸付加表面(c)では、カルボン酸導入による親水化にもかかわらず、凝固因子系の活性化によるフィブリンネットワークの形成、および補体活性による白血球粘着が見受けられる。これは、分子鎖の短いカルボン酸では、凝固因子系にかかわるタンパク質を十分に排除することができず、さらに末端官能基の水酸基が補体活性を促したのではないかと考えられる。
【0045】
キャスト膜のPEGグラフト表面(d〜f)は、キャスト(b)およびカルボン酸付加膜表面(c)と比べ、血液成分の粘着量が大幅に減少し、PEGグラフト量の多い分子量400のグラフト表面においては、白血球のみが粘着しており、分子量600のグラフト試料表面で僅かに血液成分の凝集が見られるが明瞭なフィブリンネットワークは観察できない。これは、PEGがカルボン酸と比べ長い分子鎖を有し、大きな体積排除効果を発揮し、しかも数十nmの凹凸があることにより表面積が広がり多くのPEG鎖がグラフトしたことによりフィブリンの形成を伴う凝固因子系の活性を抑制できたのではないかと考えられる。
【0046】
分子量が600のPEGのグラフト化を臭素付加により行った試料(g)では赤血球と白血球の粘着と血液成分の凝集が僅かに観察される。血小板はほとんど粘着せず且つ偽足は観察されなかった(g)ことから、血小板の粘着抑制効果に優れているが補体系の活性と凝固因子系の活性の抑制効果は低いことを意味している。この理由は臭素付加によって表面に多くの水酸基が出来るためと考えられる。
【0047】
溶融成形フィルム(i)およびこのカルボン酸付加表面(j)には、キャスト(b)およびこれのカルボン酸付加(c)と同様に多量の血液成分が粘着し、抗血栓性を有していないことが分かる。一方、分子量600のPEGをグラフトした表面(k)は、白血球の粘着は見受けられるものの、その他の血液成分の粘着は見受けられず、キャスト膜のPEGグラフト表面と同様の理由によるフィブリンの形成を伴う凝固因子系の活性を抑制できたのではないかと考えられる。
【0048】
次に表面に親水性/疎水性型ミクロ相分離構造を有していない、ポリブタジエンゴムシリーズの結果を見ると、血小板粘着数はキャストフィルム(l)、カルボン酸付加試料(m)では多かったが、ポリブタジエンゴムに分子量600のPEGをグラフトした表面(n)では少なく且つ非常に多くの血液成分が粘着していることが分かる。従って、ポリブタジエンゴムにPEGをグラフトとしても抗血栓性は向上しないことを意味している。この理由はポリブタジエンゴム表面全体をPEGを均一グラフト出来るがその量はSBSブロック共重合体に比べ非常に少なく、PEG鎖の体積排除効果が不十分なためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の抗血栓性材料はカテーテル、人工血管、血液成分保存容器、人工腎臓、人工心臓、輸液バッグ、シリンジガスケット、などの材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】PEGをグラフトしたときのグラフト量を示す立体図。
【0051】
【図2】表面を走査型プローブ顕微鏡にて観察した結果の写真。
【0052】
【図3】表面を走査型プローブ顕微鏡にて観察した結果の写真。
【0053】
【図4】表面を走査型プローブ顕微鏡にて観察した結果の写真。
【0054】
【図5】血小板粘着状況を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0055】
【図6】血小板粘着状況を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0056】
【図7】血小板粘着状況を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0057】
【図8】血小板粘着状況を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0058】
【図9】血小板粘着状況を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0059】
【図10】血小板粘着状況を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0060】
【図11】血小板粘着状況を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0061】
【図12】全血の凝集状態を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0062】
【図13】全血の凝集状態を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0063】
【図14】全血の凝集状態を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0064】
【図15】全血の凝集状態を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0065】
【図16】全血の凝集状態を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0066】
【図17】全血の凝集状態を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【0067】
【図18】全血の凝集状態を評価するために電子顕微鏡で観察した写真。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性−疎水性ブロック共重合体の中のソフトセグメントをポリアルキレングリコールでグラフトした表面を構成成分として含有するポリマーからなる抗血栓性材料。
【請求項2】
前記疎水性−疎水性ブロック共重合体が、熱可塑性エラストマーである請求項1記載の抗血栓性材料。
【請求項3】
前記疎水性−疎水性ブロック共重合体熱可塑性エラストマーのソフトセグメントが炭素−炭素二重結合を有する請求項2に記載の抗血栓性材料。
【請求項4】
前記疎水性−疎水性ブロック共重合体熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレン系、スチレン−ブタジエン系、スチレン−イソプレン−スチレン系、およびスチレン−イソプレン系より成る群から選択される少なくとも一つをキャストおよび加熱溶融成形した請求項2または3に記載の抗血栓性材料。
【請求項5】
ソフトセグメントを表面の構成成分として含有するポリマーを触媒としての塩化パラジウム、一酸化炭素そして酸素の共存下で接触させる工程、得られた試料のソフトセグメントを無水酢酸と接触させる工程、以上で得られた試料をポリアルキレングリコールと接触させる工程からなる抗血栓性材料の製造方法。
【請求項6】
ソフトセグメントを表面の構成成分として含有するポリマーを臭素酸と接触させる工程、得られた試料をポリアルキレングリコールと接触させる工程からなる抗血栓性材料の製造方法。
【請求項7】
ソフトセグメントを表面の構成成分として含有するポリマーをラジカル反応開始剤と酸素共存下で紫外線を照射する工程、得られた試料のソフトセグメントを無水酢酸と接触させる工程、以上で得られた試料をポリアルキレングリコールと接触させる工程からなる抗血栓性材料の製造方法。
【請求項1】
疎水性−疎水性ブロック共重合体の中のソフトセグメントをポリアルキレングリコールでグラフトした表面を構成成分として含有するポリマーからなる抗血栓性材料。
【請求項2】
前記疎水性−疎水性ブロック共重合体が、熱可塑性エラストマーである請求項1記載の抗血栓性材料。
【請求項3】
前記疎水性−疎水性ブロック共重合体熱可塑性エラストマーのソフトセグメントが炭素−炭素二重結合を有する請求項2に記載の抗血栓性材料。
【請求項4】
前記疎水性−疎水性ブロック共重合体熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレン系、スチレン−ブタジエン系、スチレン−イソプレン−スチレン系、およびスチレン−イソプレン系より成る群から選択される少なくとも一つをキャストおよび加熱溶融成形した請求項2または3に記載の抗血栓性材料。
【請求項5】
ソフトセグメントを表面の構成成分として含有するポリマーを触媒としての塩化パラジウム、一酸化炭素そして酸素の共存下で接触させる工程、得られた試料のソフトセグメントを無水酢酸と接触させる工程、以上で得られた試料をポリアルキレングリコールと接触させる工程からなる抗血栓性材料の製造方法。
【請求項6】
ソフトセグメントを表面の構成成分として含有するポリマーを臭素酸と接触させる工程、得られた試料をポリアルキレングリコールと接触させる工程からなる抗血栓性材料の製造方法。
【請求項7】
ソフトセグメントを表面の構成成分として含有するポリマーをラジカル反応開始剤と酸素共存下で紫外線を照射する工程、得られた試料のソフトセグメントを無水酢酸と接触させる工程、以上で得られた試料をポリアルキレングリコールと接触させる工程からなる抗血栓性材料の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
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【図4】
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【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−273812(P2009−273812A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130246(P2008−130246)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】
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