説明

疑似餌

【課題】水中で動くことのできる新たな手段を備えた疑似餌を提供する。
【解決手段】気体が充填され自然状態で所定の形状となるバルーンアクチュエータ1と、このバルーンアクチュエータ1を強制的に変形させた状態で拘束している拘束材2とを備えている。この拘束材2は、水に濡れることで軟らかくなり前記拘束を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、魚釣り用の疑似餌に関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣り用の餌として、生き餌に換えて疑似餌が広く用いられている。従来知られている疑似餌は、樹脂製や木製のものや羽毛が使用されたもの等があり、使用者が釣り竿及び釣り糸を操作することによって疑似餌に動きを与え、魚を釣ろうとするものである。このように、釣り竿及び釣り糸の操作によって、水中の疑似餌に微妙な動きを与えることは、高度で熟練した技能が必要である。そこで、疑似餌自身が生き餌に似た動きを行うように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平3−43034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の疑似餌は、水中に投入されると、水溶性の繊維からなる表層糸が溶解することにより中間糸がほどけ、これにより複合糸条の全体がくねるようにして動作する。この特許文献1の疑似餌は、複雑で活発な運動を持続させることができるように改良されたものであるが、釣る魚の種類によっては、より一層活発に動くことのできる疑似餌が望まれている。
【0005】
この発明は、釣り竿及び釣り糸を操作することによって動きを与えようとしなくても、水中で動くことのできる新たな手段を備えた疑似餌を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するためのこの発明の疑似餌は、膨張したバルーン本体と、膨張状態にある前記バルーン本体を強制的に変形させた状態で拘束していると共に、水に濡れることにより状態が変化することで前記拘束を解除する拘束材とを備えているものである。
この疑似餌によれば、拘束材が水に濡れるとその状態が変化することにより、強制的に変形させた状態としたバルーン本体の拘束を解除することができるので、この疑似餌が水中にある状態で、バルーン本体は自然状態へと復帰することができる。これにより、水中で自動的に動く疑似餌が得られる。
【0007】
また、前記疑似餌において、前記拘束材は、乾いている状態では前記バルーン本体が自然状態に復帰する力に抗する硬さがあり濡れることで軟らかくなる硬さ変化部を有している構成とすることができる。
これによれば、拘束材の前記状態の変化は、拘束材の硬さ変化部における硬さの変化である。この硬さ変化部は、乾いている状態では、バルーン本体が自然状態に復帰する復元力に抗する硬さ(保持力)があるが、濡れることで軟らかくなり、前記復元力が保持力に勝ってバルーン本体は自然状態に復帰することができる。
【0008】
または、前記疑似餌において、前記拘束材は、乾いている状態では前記バルーン本体が自然状態に復帰する力に抗する保持力を発揮させることができ濡れることで溶ける溶解部を有している構成とすることができる。
これによれば、拘束材の前記状態の変化は、拘束材の溶解部が溶けた状態となることである。この溶解部は、乾いている状態では、バルーン本体が自然状態に復帰する復元力に抗する保持力を発揮することができるが、濡れることで溶け、前記保持力が減少乃至消滅し、前記復元力によってバルーン本体は自然状態に復帰することができる。
【0009】
また、前記疑似餌は、前記バルーン本体を複数備えており、前記拘束材は、これらバルーン本体のそれぞれを拘束していると共に、濡れることによる前記状態の変化の時期がそれぞれ相違する部分を有しているのが好ましい。
これによれば、動く部分を複数の有した構造となり、また、拘束材が濡れることにより各部分についての状態が変化する時期がそれぞれ相違するので、水中において、複数のバルーン本体のそれぞれは時間差を有して自然状態に戻ることができる。これにより、複数回にわたって疑似餌を動かすことができる。
【0010】
また、前記疑似餌において、前記バルーン本体は複数の空間部を有しており、前記拘束材は、前記空間部のそれぞれを変形させた状態として拘束していると共に、濡れることによる前記状態の変化の時期がそれぞれ相違する部分を有しているのが好ましい。
これによれば、バルーン本体が複数の関節を有した構造となり、また、拘束材が濡れることにより各部分の状態が変化する時期がそれぞれ相違するので、水中において、バルーン本体のうちの複数の空間部の部分はそれぞれ時間差を有して自然状態に戻ることができる。これにより、複数回にわたってバルーン本体を動かすことができる。
【0011】
また、この発明の疑似餌は、給気することによって変形するバルーンアクチュエータと、このバルーンアクチュエータに給気を行う給気手段とを備えたものである。この構成によれば、給気手段がバルーンアクチュエータに給気を行うことにより、疑似餌は水中で動くことができる。
【0012】
また、前記疑似餌は、前記バルーンアクチュエータとチューブを介してつながっている錘部を更に備え、前記給気手段はこの錘部に設けられているのが好ましい。
これによれば、動く部分となるバルーンアクチュエータと給気手段との距離を離すことができるので、バルーンアクチュエータの部分のみを疑似餌の本体乃至本体の一部として構成することができる。これにより、疑似餌が供給手段によって不自然な形状となることを防止できる。
【0013】
また、前記疑似餌において、前記給気手段は、水に濡れることにより発泡する発泡剤を有しており、この発泡剤によって生じた気体を前記バルーンアクチュエータに供給するのが好ましい。これによれば、この疑似餌を水中に投じることで発泡剤が発泡し、バルーンアクチュエータに気体を自動的に供給し、疑似餌を自動的に動かすことができる。
【0014】
また、前記疑似餌において、前記給気手段は、給気することで前記バルーンアクチュエータの高くなった内圧を逃がすリリーフ弁を有しているのが好ましい。
これによれば、給気手段がバルーンアクチュエータに給気を行い、バルーンアクチュエータの内圧が高まって当該バルーンアクチュエータを膨張変形させた後、リリーフ弁によって、その内圧を逃がすことによりバルーンアクチュエータが収縮変形する。そして、給気手段の給気により、バルーンアクチュエータを再び膨張変形させることができる。このように、水中において、バルーンアクチュエータの膨張と収縮とを自動的に繰り返して行わせることができる。
【0015】
前記各疑似餌において、前記バルーンアクチュエータは一方向に長い形状であると共に曲がる変形が可能である本体部を有し、この本体部を胴部とした海老形であるのが好ましい。これによれば、本物の海老に近似した胴部が動く疑似餌とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明の疑似餌によれば、バルーン本体(バルーンアクチュエータ)が動くことによって、釣り竿及び釣り糸を操作することによって疑似餌に動きを与えようとしなくても、疑似餌は水中で動くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1はこの発明の疑似餌の実施の一形態を示している側面図である。図2はこの疑似餌が動いた後の状態を示している。この疑似餌は、頭部10と胴部11とを有した海老形である。
【0018】
頭部10は例えば樹脂製や木製とすることができ、この頭部10に釣り針12が取り付けられている。なお、この発明では、胴部11において、先端部(先部)とは海老の尻尾に相当する側であり、基端部(基部)とは頭部10側である。
胴部11は、動く部分となるバルーン本体(以下、バルーンアクチュエータという)1と、このバルーンアクチュエータ1の形状を拘束した状態とするための拘束材2とを備えている。図1は、拘束材2がバルーンアクチュエータ1を拘束した状態であり、図2はこの拘束が解除された状態を示している。この実施形態の疑似餌は、複数(三つ)のバルーンアクチュエータ1a,1b,1cを有している。なお、以下の説明において、これらバルーンアクチュエータ1a,1b,1cをまとめてバルーンアクチュエータ1として説明していることもある。
【0019】
拘束材2は、側面視において略J字形のベース部7、及び、後に詳しく説明する硬さ変化部3を有するものとできる。または、略J字形のベース部7、及び、後に詳しく説明する溶解部4を有するものとできる。
バルーンアクチュエータ1は、気体(流体)が充填されることで膨張した状態となっており、その膨張した自然状態で所定の形状となるものである。具体的には、バルーンアクチュエータ1は膨張した自然状態で、図2に示しているように、ベース部7の湾曲形状に沿わない形状として設けられている。バルーンアクチュエータ1は、その基部側の取付部8と本体部6とを有しており、この本体部6は、一方向に長い形状(矩形)であると共に、図1に示しているように、その先端部が前記取付部8側に曲がる(湾曲する)変形が可能となる部分である。
【0020】
図3と図4とはバルーンアクチュエータ1を説明する断面図である。バルーンアクチュエータ1は、複数の膜体を積層して構成されており、具体的には、シリコンラバーフィルムからなる第1膜体16と、同じくシリコンラバーフィルムからなる第2膜体17とを積層して構成されており、薄くて柔軟な構造となっている。第1膜体16と第2膜体17との間には、流路部18と、この流路部18よりも断面が拡大している空間部5a,5b,5cとが形成されている。
【0021】
流路部18及び空間部5a,5b,5cは、第1膜体16に凹溝を形成することによって構成できる。流路部18は入口部19とつながっており、この入口部19からバルーンアクチュエータ1内に気体を供給することができ、供給された気体により空間部5a,5b,5cは膨らむ(図4参照)。第1膜体16と第2膜体17とはともに伸縮自在な素材によって形成されているため、図4に示しているように、バルーンアクチュエータ1の空間部5a,5b,5cのある部分は、供給された気体の圧力によって風船のようにその表面積を拡げつつ伸びて膨張することができる。そして、この第1の実施形態に係る疑似餌では、気体を充填し膨張させた状態で入口部19を封止し、バルーンアクチュエータ1内を閉塞空間としている。
【0022】
このバルーンアクチュエータ1において、第1膜体16は第2膜体17よりも薄くなっており、同じ圧力下でも、第1膜体16は第2膜体17よりも大きく膨張することができる。すなわち、第2膜体17は第1膜体16よりも厚く剛性が高いため、同じ圧力下では第1膜体16よりも小さくしか膨張することができない。これにより、図4に示しているように、膨張した状態にあるバルーンアクチュエータ1は、下方への曲がった状態となることができる。そして、バルーンアクチュエータ1(空間部5a,5b,5c)の内圧を変化させることにより、バルーンアクチュエータ1の曲がり角度(曲がり度合い)を変更、調整することができ、様々な形状(図2のバルーンアクチュエータ1a,1b,1c)を構成することができる。
【0023】
図1と図2とにおいて、拘束材2のベース部7は樹脂製や木製であり、側面視略J字形に形成されている。そして、このベース部7の基部7a側にバルーンアクチュエータ1の前記取付部8が固定されている。この固定された状態では、自然状態にあるバルーンアクチュエータ1はベース部7の湾曲形状に沿わない。この状態から、バルーンアクチュエータ1をベース部7の湾曲形状に沿って強制的に変形させ、拘束材2はこの変形をさせた状態でバルーンアクチュエータ1を拘束することができる。この拘束している状態(図1)では、バルーンアクチュエータ1は自然状態(図2)に復帰しようとする弾性的な復元力が生じた状態にある。
【0024】
拘束材2についてさらに説明する。拘束材2は前記のとおり硬さ変化部3を有している。硬さ変化部3は、乾いている状態(水を含んでいない状態)ではバルーンアクチュエータ1が自然状態に復帰しようとする復元力に抗する硬さがあるが、水に濡れることで軟らかくなる。具体的には、硬さ変化部3はポリビニルアルコールからなるバインダ9である。そして、このバインダ9が、バルーンアクチュエータ1(の先端部)とベース部7(の先端部)とにわたって設けられている。そして、バインダ9は、乾いている状態では、バルーンアクチュエータ1が自然状態に復帰しようとする復元力に抗する硬さ(保持力)を有しており、この保持力によって、バルーンアクチュエータ1がベース部7から離れようとするのを規制している。これにより、拘束材2は、バルーンアクチュエータ1をベース部7に沿って強制的に変形させた状態で拘束することができる。
【0025】
しかし、この疑似餌が水中に投入されると、水に濡れることでバインダ9はその親水性により徐々に軟らかくなり、バルーンアクチュエータ1の前記復元力が前記保持力に勝って、バルーンアクチュエータ1は自然状態に復帰することができる。このように、拘束材2は、水に濡れることにより硬さ変化部3の状態が変化することで、バルーンアクチュエータ1の拘束を解除する。
【0026】
拘束材2の別の形態として、拘束材2は前記のとおり溶解部4を有しているものがある。溶解部4は、乾いている状態ではバルーンアクチュエータ1が自然状態に復帰する復元力に抗する保持力を発揮させることができるが、水に濡れることで溶ける。具体的には、溶解部4はポリビニルアルコールからなるバインダ9である。そして、このバインダ9が、バルーンアクチュエータ1(の先端部)とベース部7(の先端部)とにわたって設けられている。そして、バインダ9は、乾いている状態では、バルーンアクチュエータ1が自然状態に復帰する復元力に抗する保持力を発揮することができ、バルーンアクチュエータ1がベース部7から離れようとするのを規制している。これにより、拘束材2は、バルーンアクチュエータ1をベース部7に沿って強制的に変形させた状態で拘束することができる。
【0027】
しかし、この疑似餌が水中に投入されると、水に濡れることでバインダ9は溶け、前記保持力が徐々に減少乃至消滅し、バルーンアクチュエータ1の前記復元力によってバルーンアクチュエータ1は自然状態に復帰することができる。このように、拘束材2は、水に濡れることにより溶解部4の状態が変化することで、バルーンアクチュエータ1の拘束を解除する。
【0028】
また、図1と図2との形態において、この疑似餌は、複数のバルーンアクチュエータ1a,1b,1cを備えている。そして、バインダ9は、これらバルーンアクチュエータ1a,1b,1cのそれぞれを拘束している複数の部分を有した拘束部2aを備えている。この拘束部2aの各部分は、水に濡れることによりその状態が変化する時期(例えば溶ける時期)がそれぞれ相違している。
【0029】
すなわち、図1において、拘束部2aは、ベース部7と第1のバルーンアクチュエータ1aとの間に介在している第1部9aと、第1のバルーンアクチュエータ1aと第2バルーンアクチュエータ1bとの間に介在している第2部9bと、第2のバルーンアクチュエータ1bと第3バルーンアクチュエータ1cとの間に介在している第3部9cとを有している。そして、この疑似餌が水中に投入されると、第3部9cは第1部9a及び第2部9bよりも水が浸入し易く、第2部9bは第1部9aよりも水が浸入し易い構成となっている。
【0030】
これにより、まず、第3部9cが第2部9b及び第1部9aよりも先に溶ける(軟らかくなる)ことで、第3のバルーンアクチュエータ1cが自然状態へと復帰するように動く。そして、所定時間が経過すると、第2部9bが第1部9aよりも先に溶ける(軟らかくなる)ことで、第2のバルーンアクチュエータ1bが自然状態へと復帰するように動く。そして、さらに所定時間が経過すると、第1部9aが溶ける(軟らかくなる)ことで、第1のバルーンアクチュエータ1aが自然状態へと復帰するように動く。
【0031】
この疑似餌によれば、動く部分を複数の有した構造となり、また、水に濡れることにより、バインダ9の各部分が溶け、前記復元力が前記保持力を越える時期がそれぞれ相違するので、水中において、複数のバルーンアクチュエータ1a,1b,1cのそれぞれは時間差を有して自然状態に戻ることができる。これにより、複数回にわたって疑似餌を動かすことができる。
【0032】
また、前記拘束材2が、硬さ変化部3又は溶解部4として水溶性のあるバインダ9を有している形態の変形例として、図5に示しているものがある。図1ではバインダ9をバルーンアクチュエータ1の先端部に設けたが、図5の形態では、バルーンアクチュエータ1の長手方向に沿ってバインダ13を設けている。バルーンアクチュエータ1をベース部7に沿って強制的に湾曲変形させた状態として、このバインダ13は本体部6をその長手方向の全長にわたって固めている。これにより、バルーンアクチュエータ1を変形させた状態に拘束することができる。そして、この疑似餌を水中に投入すると、このバインダ13が徐々に溶けることにより、バルーンアクチュエータ1の拘束を解除することができる。
【0033】
また、この図5の形態において、バルーンアクチュエータ1a,1b,1cのそれぞれは複数(三つ)の空間部5a,5b,5cを有している。外側の第3のバルーンアクチュエータ1cについて説明すると、先端部側から第1空間部5a、第2空間部5b、第3空間部5cを有している。そして、バインダ13が、これら空間部5a,5b,5cのそれぞれの外側部分に設けられることによって、これら各部を変形させた状態として拘束している。つまり、このバインダ9は、第1空間部5aの部分を拘束している第1部13aと、第2空間部5bの部分を拘束している第2部13bと、第3空間部5cの部分を拘束している第3部13cとを有している。そして、第1部13aと第2部13bと第3部13cとは、水に濡れることによりその状態が変化する時期(例えば溶ける時期)がそれぞれ相違している。
【0034】
これを具体的に説明すると、第1部13aは第2部13bと第3部13cよりもバインダ13のボリュームが少なく、第2部13bは第3部13cよりもバインダ13のボリュームが少ない構成となっている。これにより、まず、第1部13aが第2部13b及び第3部13cよりも先に溶ける(軟らかくなる)ことで、バルーンアクチュエータ1cの先端部が自然状態へと復帰するように動く。そして、所定時間が経過すると、第2部13bが第3部13cよりも先に溶ける(軟らかくなる)ことで、バルーンアクチュエータ1cの中間部が自然状態へと復帰するように動く。そして、最後に、さらに所定時間が経過すると、第3部13cが溶ける(軟らかくなる)ことで、バルーンアクチュエータ1cの基端部が自然状態へと復帰するように動く。
【0035】
この疑似餌によれば、一つのバルーンアクチュエータ1cが複数の関節を有した構造となり、また、水に濡れることにより、バインダ13の各部分が溶け、前記復元力が前記保持力を越える時期がそれぞれ相違するので、水中において、バルーンアクチュエータ1cのうちの複数の空間部5a,5b,5cの部分のそれぞれは、時間差を有して自然状態に戻ることができる。これにより、複数回にわたって一つのバルーンアクチュエータ1cを動かすことができる。さらに、この第3バルーンアクチュエータ1cに対するバインダ13の構成を、第2バルーンアクチュエータ1b及び第1バルーンアクチュエータ1aに適用することができる。さらに、この構成を、図1のバインダ9を有した疑似餌に適用することもできる。
【0036】
以上の各実施形態によれば、拘束材2が水に濡れるとその状態が変化する(軟らかくなる又は溶ける)ことにより、強制的に変形させた状態としたバルーンアクチュエータ1の拘束を解除することができるので、この疑似餌が水中にある状態で、バルーンアクチュエータ1は自然状態へと復帰することができる。これにより、水中で自動的に動く疑似餌が得られる。さらに、このバルーンアクチュエータ1が自然状態へと復帰する動作は、弾性的な復元力によるものであるため、急な動作となる。したがって、この発明の疑似餌は、急な動作を行うことができる構成を有している。また、この発明は、餌の急な動作に反応して魚はこれに飛びつくという習性を考慮したものであるため、このような急な動作を行うことができる構成は疑似餌として好適である。なお、従来、水中で自動的に動く疑似餌があるが、この疑似餌の動きは緩やかな動きであり、魚の反応は鈍い。
【0037】
図6は、この発明の疑似餌の他の実施形態を示している側面図である。図7は、この疑似餌が動作した後の状態を示している。この疑似餌は、前記実施形態と同様に、頭部10と胴部11とを有した海老形である。そして、この疑似餌は、動く部分となる胴部11として給気することによって変形するバルーンアクチュエータ1と、このバルーンアクチュエータ1に給気を行う給気手段26とを備えている。
【0038】
バルーンアクチュエータ1は、図3と図4とに示した前記実施形態のものと同じであるが、図6と図7とに示しているように、入口部19に、チューブ28を介して前記給気手段26が接続されており、バルーンアクチュエータ1内に積極的に給気が行われる。
バルーンアクチュエータ1は、空間部5a,5b,5cの内圧の変化によって動作量(曲がり角度)が変わる。つまり、空間部5a,5b,5cの内圧が高くなると空間部5a,5b,5cにおける部分が膨張変形し(図7)、バルーンアクチュエータ1は大きく曲がる。そして、空間部5a,5b,5cの内圧が低くなると図6に示しているように、膨張していた空間部5a,5b,5cにおける部分が収縮変形し(図6)、バルーンアクチュエータ1は給気前の状態又はこれに近い状態に戻る。
【0039】
給気手段26は、水に濡れることにより発泡する発泡剤29を有しており、この発泡剤29によって生じた気体をバルーンアクチュエータ1へ供給するようになっている。発泡剤29としては、二酸化炭素を出す炭酸水素ナトリウムがある。発泡剤29は例えば容器等の収容部31内に収容された状態にあり、この収容部31に形成した開口部に前記チューブ28がつながっている。そして、収容部31には弁部(図示せず)が設けられており、給気手段26が水中にある状態で、この弁部は、水を収容部31内に浸入させるが、収容部31内で発生した気体がチューブ28以外から外部へ出ることを防止している。
【0040】
また、この疑似餌は錘部27を更に備えている。この錘部27はチューブ28を介してバルーンアクチュエータ1とつながっている。そして、給気手段26はこの錘部27に設けられている。具体的に説明すると、錘部27は球形であり外殻(ケース)を有しているそして、その内部に空間部がある。この空間部に前記発泡剤29が設けられている。つまり、図6と図7とに示しているように、錘部27の外殻が前記収容部31となっている。
【0041】
この疑似餌によれば、水中に投じると、錘部27の収容部31内に浸入した水によって発泡剤29が発泡し、これによって生じた気体がチューブ28を介してバルーンアクチュエータ1へ自動的に供給される。さらに、この構成によれば、この疑似餌のうちの動く部分となるバルーンアクチュエータ1と、給気手段26が設けられた錘部27との距離を離すことができ、このバルーンアクチュエータ1の部分のみを疑似餌の本体乃至本体の一部とした構成となる。つまり、疑似餌の本体乃至本体の一部に、餌の形状として不自然となりそうな給気手段26が取り付けられることを防ぐことができる。この構成によれば、給気手段26を疑似餌の本体と比べて大きくすることができ、気体の発生量を多くすることができるものとなる。
【0042】
さらに、この疑似餌において、給気手段26はリリーフ弁30を有している。このリリーフ弁30は前記収容部31に設けられており、給気手段26がバルーンアクチュエータ1に対して給気を行うことで当該バルーンアクチュエータ1の高くなった内圧を逃がすことができる。なお、リリーフ弁30の取り付け位置の変形例として、リリーフ弁30がチューブ28の一部につながっている構成(図示せず)であってもよい。
【0043】
このリリーフ弁30の機能について図8により説明する。リリーフ弁30は、設定圧Pの内圧が生じると開動作することで当該内圧を逃がすことができるものである。
給気手段26がバルーンアクチュエータ1に給気を行うと、バルーンアクチュエータ1の内圧が高まって当該バルーンアクチュエータ1は膨張し変形する(図7の状態)。バルーンアクチュエータ1の内圧(なお、この内圧はチューブ28の内圧及び収容部31の内圧と等しくなる)がリリーフ弁30の設定圧Pに達すると、リリーフ弁30がその内圧を逃がすことによりバルーンアクチュエータ1は収縮し変形する(図6の状態)。内圧が低下するとリリーフ弁30は閉状態となり、給気手段26の給気によりバルーンアクチュエータ1は再び膨張し変形する。このように、水中において、バルーンアクチュエータ1は膨張と収縮とを自動的に繰り返して行うことができる。なお、リリーフ弁30が開状態になると、気体を排出することによって内圧を低下させるが、この気体の排出は水中であってもよく、または錘部27に設けたタンク部(図示せず)またはこれとは別に設けたタンク部(図示せず)内に排出してもよい。
【0044】
図6と図7とに示している実施の形態によれば、給気手段26及びバルーンアクチュエータ1を備えた疑似餌が水中に投入されると、給気手段26の発泡剤29が発泡し、自動的にバルーンアクチュエータ1へ給気が行われる。これにより、バルーンアクチュエータ1が膨張することで変形する。そして、バルーンアクチュエータ1の内圧がある程度高まると、リリーフ弁30によってその内圧が低下し、バルーンアクチュエータ1が収縮して膨張前の状態に変形する。このように、疑似餌が水中に投入されると、給気手段26がバルーンアクチュエータ1に自動的に給気を行い、水中で自動的に疑似餌は動くことができる。なお、頭部10と錘部27とが釣り糸32につながっている。
【0045】
さらに、図8において、内圧が下がる際(排気)の単位時間あたりの圧力変化量は、内圧が上昇する際(給気)の単位時間あたりの圧力変化量よりも大きく、迅速に排気を行っている。さらにバルーンアクチュエータ1が膨張前の状態(又はこれに近い状態)へと戻る動作は、弾性的な復元力を含むものであるため急な動作となる。したがって、この発明の疑似餌は、急な動作を行うことができる構成を有している。また、この発明は、餌の急な動作に反応して魚はこれに飛びつくという習性を考慮したものであるため、このような急な動作を行うことができる構成は疑似餌として好適である。
【0046】
また、図1に示した疑似餌及び図6に示した疑似餌のそれぞれにおいて、バルーンアクチュエータ1は、本体部6が一方向に長い形状であると共に、その本体部6は本物の海老の胴部の如く曲がる変形が可能となる。そして、疑似餌を、この本体部6を胴部11として有した海老形としているので、本物の海老に近似した胴部11が動く疑似餌とすることができる。さらに、複数の空間部5a,5b,5cを有したバルーンアクチュエータ1を胴部11に有しているため、この空間部5a,5b,5cの間が節部となり、本物の海老の胴部に近似した形状を得ることができる。
【0047】
また、胴部11は頭部10から取り外し可能であり、胴部11を好みに応じて変更することができる。具体的な構成は、図1において、胴部11(ベース部7)と頭部10とのうちの一方に凸部22が形成されており、他方にこの凸部22と嵌合する凹部23が形成されたものとすればよい。
【0048】
また、この発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、バルーンアクチュエータ1に充填される流体は気体以外に液体であってもよく、水とすることができる。また、図6と図7との実施形態において、給気手段26を錘部27内に設けた場合を説明したが、給気手段26を図示しないが頭部10内に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明の疑似餌の実施の一形態を示している側面図である。
【図2】図1の疑似餌が動いた後の状態を示している側面図である。
【図3】バルーンアクチュエータを説明する断面図である。
【図4】膨張後のバルーンアクチュエータを説明する断面図である。
【図5】拘束材の変形例を説明する側面図である。
【図6】この発明の疑似餌の他の実施形態を示している側面図である。
【図7】図6の疑似餌が動作した後の状態を示している側面図である。
【図8】給気手段が有しているリリーフ弁の機能について説明する説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 バルーン本体(バルーンアクチュエータ)
1a,1b,1c バルーンアクチュエータ
2 拘束材
3 硬さ変化部
4 溶解部
5a,5b,5c 空間部
6 本体部
26 給気手段
27 錘部
28 チューブ
29 発泡剤
30 リリーフ弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張したバルーン本体と、
膨張状態にある前記バルーン本体を強制的に変形させた状態で拘束していると共に、水に濡れることにより状態が変化することで前記拘束を解除する拘束材と、
を備えていることを特徴とする疑似餌。
【請求項2】
前記拘束材は、乾いている状態では前記バルーン本体が自然状態に復帰する力に抗する硬さがあり濡れることで軟らかくなる硬さ変化部を有している請求項1に記載の疑似餌。
【請求項3】
前記拘束材は、乾いている状態では前記バルーン本体が自然状態に復帰する力に抗する保持力を発揮させることができ濡れることで溶ける溶解部を有している請求項1に記載の疑似餌。
【請求項4】
前記バルーン本体を複数備えており、
前記拘束材は、これらバルーン本体のそれぞれを拘束していると共に、濡れることによる前記状態の変化の時期がそれぞれ相違する部分を有している請求項1〜3のいずれか一項に記載の疑似餌。
【請求項5】
前記バルーン本体は複数の空間部を有しており、
前記拘束材は、前記空間部のそれぞれを変形させた状態として拘束していると共に、濡れることによる前記状態の変化の時期がそれぞれ相違する部分を有している請求項1〜4のいずれか一項に記載の疑似餌。
【請求項6】
給気することによって変形するバルーンアクチュエータと、このバルーンアクチュエータに給気を行う給気手段と、を備えたことを特徴とする疑似餌。
【請求項7】
前記バルーンアクチュエータとチューブを介してつながっている錘部を更に備え、
前記給気手段はこの錘部に設けられている請求項6に記載の疑似餌。
【請求項8】
前記給気手段は、水に濡れることにより発泡する発泡剤を有しており、この発泡剤によって生じた気体を前記バルーンアクチュエータに供給する請求項6又は7に記載の疑似餌。
【請求項9】
前記給気手段は、給気することで前記バルーンアクチュエータの高くなった内圧を逃がすリリーフ弁を有している請求項6〜8のいずれか一項に記載の疑似餌。
【請求項10】
前記バルーンアクチュエータは一方向に長い形状であると共に曲がる変形が可能である本体部を有し、
この本体部を胴部とした海老形である請求項1〜9のいずれか一項に記載の疑似餌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−182995(P2008−182995A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21506(P2007−21506)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】