疾患の処置における細胞毒性物質、薬物プレ増感剤および化学増感剤としてのヒアルロナン
【課題】本発明は、疾患の処置に関する化学治療剤のバイオアベイラビリティーを高めることに関する。特に本発明は、化学治療剤のバイオアベイラビリティーを高める方法であって、それを必要としている患者に治療有効量のヒアルロナンを投与する工程を含む方法に関する。
【解決手段】本発明は、処置を必要としている被験体の処置方法であって、化学治療剤が単独で投与された場合よりもより有効であるように該化学治療剤と組み合わせて、該被験体に治療有効量のヒアルロナンを投与する工程を含む方法を提供する。
【解決手段】本発明は、処置を必要としている被験体の処置方法であって、化学治療剤が単独で投与された場合よりもより有効であるように該化学治療剤と組み合わせて、該被験体に治療有効量のヒアルロナンを投与する工程を含む方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は疾患処置のために化学治療剤のバイオアベイラビリティーを高めることに関する。特に、本発明は、疾患処置用の化学治療剤のバイオアベイラビリティーを高めるため、ヒアルロナンを単独で、あるいは化学治療剤と組み合わせて使用することに関する。本発明はまた、薬物耐性疾患の処置であって、これにより、ヒアルロナンを単独で、あるいは化学治療剤と組み合わせて用いてその薬物耐性が克服されるか、あるいは軽減されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒトを含む動物を苦しめる多くの疾患は化学治療剤を用いて処置される。例えば化学治療剤は、結合性または自己免疫疾患、代謝障害、および皮膚科学的疾患を含む腫瘍性疾患の処置において有益であることが示され、多くのこれらの物質は非常に有効であり、全くバイオアベイラビリティーの問題を被らない。
【0003】
化学治療剤の適正な使用には、化学治療剤の選択、用量の決定、および治療の着手の前に、疾患の性質の履歴および病態生理学を徹底的に熟知することが必要とされる。各被験体は、毒性を増強するかもしれない要因、例えば明らかあるいは隠れた感染、出血性障害、栄養失調状態、深刻な代謝障害などに注意して、注意深く評価されなければならない。さらに、特定の主要器官、例えば肝臓、腎臓、および骨髄の機能状態は非常に重要である。したがって、適当な化学治療剤の選択および有効な治療方法の工夫は被験体の現状に影響される。このような考察は投与される薬物の用量およびタイプに影響する。
【0004】
不幸なことに、すべての化学治療剤が容易に使用可能であるわけではない。例えば、いくつかの化学治療剤は先天的に抗療性であり、ここでは動物細胞はこれらの物質に対して容易には応答せず、また他の化学治療剤は後天的耐性を被る。例えば、よく認識されているように、長い化学治療時には、時間が経過するにつれて化学治療剤の効果が減少するため、その変更を強要される被験体もいる。さらに、いくつかの化学治療剤は、本質的に先天的または後天的耐性によって影響されないが、それらがバイオアベイラビリティーに伴う本質的問題を有しているために、特定の疾患の処置において有効でない。細胞の耐性とバイオアベイラビリティーの問題の両者によく影響される一疾患は癌である。
【0005】
癌は西洋社会における四大死の1つである。米国およびカナダにおいて、癌および癌による死の新規ケースの割合は1990〜1994年の間減少したが、米国において2,604,650人が1990〜1994年の間に癌で死亡したことがデータによって示されている(そのうち男性(53%)は女性(47%)より多かった)。最も一般的な癌による死の原因は、肺癌(728,641)、大腸および直腸癌(285,724)、乳癌(218,786)、および前立腺癌(169,943)であった。
【0006】
女性の間で最も一般的な癌は、乳癌(31%)、肺癌(12%)、大腸および直腸癌(12%)、子宮癌(6%)、卵巣癌(4%)であり、乳癌および卵巣癌は女性に見られるすべての癌の約35%を占める。これらの型の癌であると診断された女性の大多数は外科手術、放射腺治療または化学治療を組み合わせて受ける。
【0007】
癌の処置に用いられる化学治療剤は、(1)アルキル化剤、例えばメクロレタミン、クロロホスファミド、メルファラン、ウラシルムスタード、クロラムブシル、ブサルファン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾチシン、およびデクラバジン;(2)抗代謝産物、例えばメトトレキセート、フルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、シタラビン、アザラビン、イドキシウリジン、メルカプトプリン、アザチオプリン、チオグアニン、およびアデニンアラビノシド;(3)天然産物誘導体、例えばビンブラスチン、ビンクリスチン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ミトラマイシン、タキサン(例えばパクリタキセル)、ブレオマイシン、エトポシド、テニポシド、およびミトマイシンC;および(4)その他の物質、例えばヒドロキシ尿素、プロカルベジン、ミチタン、およびシスプラチナムを含むいくつかの広いカテゴリーに細分される。
【0008】
(通常有効量において)臨床の多剤耐性が観察された重要な癌化学治療剤には、ビンブラスチン(0.1mg/キログラム/週)、ビンクリスチン(0.01mg/キログラム/週)、エトポシド(35〜50mg/平方メートル/日)、ダクチノマイシン(0.15mg/キログラム/日)、ドキソルビシン(500〜600mg/平方メートル/週)、ダウノルビシン(65〜75mg/平方メートル/週)、およびミトラマイシン(0.025mg/キログラム/日)が含まれる。
【0009】
現在、化学治療剤に対する細胞の耐性を克服する有効な手段がないことは当業者によく理解されていることである。もっと重要なのは、毒性または副作用の付随する増大を伴なわずに化学治療剤のバイオアベイラビリティーを増大させる実際的な手段が存在しないことである。したがって、後天的または先天的な細胞の耐性に付随する問題を克服するか、あるいは少なくとも軽減する手段、ならびに化学治療剤のバイオアベイラビリティーを増大させる手段が必要がある。
【0010】
発明者らは以前に、化学治療剤のための薬物デリバリービヒクルとしてのヒアルロナン(HA)の有用性を研究し、HAがこれらの薬物と同時投与された場合に有用であることを発見した。この発明をカバーする国際特許出願PCT/AU00/00004を出願した(これは引用によりその全開示内容が本明細書中に包含される)。HAはまたヒアルロン酸として既知であり、これは直鎖のポリマーを含む天然に存在する多糖類であり、動物界中に遍在することがわかっている。HAは非常に水溶性であり、これにより生物系に関する理想的薬物デリバリービヒクルになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
国際特許出願PCT/AU00/00004の出願後、発明者らは驚くべきことに、HAが単独の物質として作用することを発見した。HAはヒト乳癌細胞、およびプレ感作細胞に対して細胞毒性効果を発揮し、それらを化学治療剤に対してより感受性にする。したがって本発明は、化学治療剤に対して耐性であったか、あるいは耐性になった細胞を有効に処置できる方法を提供する。さらに重要なことに、開示される方法を用いて、被験体に対する効力を減少させることなく化学治療剤の用量を減少させることができる。本発明の方法は、ヒアルロナンを単独で、あるいは化学治療剤と組み合わせて投与することを含む。
【0012】
本発明は、ヒアルロナン、その誘導体、アナログ、および塩がそれ自身細胞を阻害するだけでなく、標準的または、有効性が低いと思われる、より少ない用量の選択化学治療剤の安全な投与により、ヒト被験者を含む被験体を処置することを可能にするという発見に基づく。ヒアルロナンを化学治療剤と組み合わせてインビボ投与すると、難治性の細胞に対するこれらの物質の治療効果が高められ、これによりその後の多剤耐性の発生を防ぐ。
【0013】
疾患細胞、例えば癌細胞はしばしば、膜電位の変化のせいで、より透過性の膜を有するか、あるいはその細胞内分子輸送の調節を変更でき、その結果細胞膨張を生じさせ得る増大した受容体ステータスを有する(Lang et al., 1993)。発明者らは、いかなる理論によって結び付けられることをも望まないが、彼らは、HAが単独の物質として、ならびに治療剤の前処置として発揮する細胞性作用を説明できるいくつかの機構が存在することを仮定する:
1)HAがCD44、RHAMMおよび結合したスカベンジャー受容体に結合すると、HAの正味の負の電荷は細胞の膜電位を変化させ、細胞の透過性を増大させ、結果として疾患細胞へのより大量の薬物流入を可能にする。
2)HAが疾患細胞、例えば腫瘍細胞と結合し、内在化すると、細胞溶解を導く高浸透圧性が存在し得る。
3)HAは酸化的膜損傷を発揮し、アポトーシスを生じさせる。
4)HA内在化はミトコンドリア膜電位を高め、細胞死または増大した薬物保持を生じさせ得る。
【0014】
HAは飽和レベルで投与されるため、そのグリコサミノグリカンのコンスタントな内在化が存在し、これはHAの容量ドメイン内で平衡状態にある任意の治療剤を同時に内在化させ、薬物の濃縮された細胞内放出を生じさせることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の要旨
その最も広い側面では、本発明は、処置を必要としている被験体の処置方法であって、化学治療剤が単独で投与された場合よりもより有効であるように該化学治療剤と組み合わせて、該被験体に治療有効量のヒアルロナンを投与する工程を含む方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、化学治療剤のバイオアベイラビリティーを高める方法であって、それを必要としている患者に有効量のヒアルロナンを投与する工程を含む方法を提供する。
【0017】
ヒアルロナンを用いて、任意の投与される化学治療剤のバイオアベイラビリティーを大きく高めることができる。好ましくは、投与される化学治療剤は、カルマスチン(BCNU)、クロラムブシル(ロイケラン)、シスプラチン(プラチノール)、シタラビン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、フルオロウラシル(5−FU)、メトキセトレート(メキサート)、CPT111、エトポシド、プリカマイシン(plicamycin、ミトラシン)およびタキサン例えばパクリタキセルからなる群から選択されるものである。
【0018】
さらに別の態様では、本発明は、多剤耐性または薬物耐性細胞を処置または予防する方法であって、化学治療剤の投与前か、その投与といっしょにか、あるいはその投与後に、治療有効量のヒアルロナンを投与する工程を含む方法を提供する。
【0019】
以下により完全に記載されるように、ヒアルロナンおよび化学治療剤を投与すると、少なくとも50%まで;好ましくは60%;さらにより好ましくは70%以上の腫瘍生育の抑制が生じる。したがって、腫瘍生育および増殖の排除は、多剤耐性細胞の産生を排除し、癌の再発を減少させ、化学治療処置の効果を増大させる。
【0020】
本発明はさらに、ヒアルロナンを含む、化学治療剤に対する細胞の感受性を増大させる医薬組成物を提供する。ヒアルロナンおよび/または化学治療剤は、さらなる医薬的担体とともに投与してもよい。
【0021】
本発明はまた、癌細胞を処置する方法であって、その患者に治療有効量のヒアルロナンを投与する工程を含む方法を提供する。
【0022】
典型的に、その癌細胞は化学治療剤に耐性である。
【0023】
本発明のさらなる側面では、細胞の耐性を克服する方法であって、治療有効量のHAを投与する工程を含む方法を提供する。
【0024】
本明細書の詳細な説明および請求の範囲を通じて、用語「含む」およびそのバリエーション、例えば「含んでいる」などは「含むが、それらに制限されない」を意味し、他の追加物、成分、整数または工程を排除することを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、750,000ダルトンHAに24時間暴露され、その時点で写真撮影された、指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。10ng/mLでは、細胞数の減少が生じたが、形態の変化は見られなかった。100ng/mLおよび1μg/mLでは、細胞は浸透圧応答を受ける頂点を示し、細胞は膨張した。2mg/mLおよび5mg/mLでは、細胞は顆粒状になり、原形質膜が「へこみ」、浸透圧応答および/または細胞死の開始を示す可能性がある。
【図2a】図2a−2fは、750,000ダルトンHAに30分、1時間、または24時間暴露され、その時点でアドリアマイシンの濃度を変化させた、指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。これらの図はまた、1または3日間のHA/薬物同時インキュベーションの効果を示す。これらの図は、HAが細胞を「プレ感作」し、ならびに/あるいは治療薬に対して細胞を化学感作させることができることを示す。
【図2b】図2a−2fは、750,000ダルトンHAに30分、1時間、または24時間暴露され、その時点でアドリアマイシンの濃度を変化させた、指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。これらの図はまた、1または3日間のHA/薬物同時インキュベーションの効果を示す。これらの図は、HAが細胞を「プレ感作」し、ならびに/あるいは治療薬に対して細胞を化学感作させることができることを示す。
【図2c】図2a−2fは、750,000ダルトンHAに30分、1時間、または24時間暴露され、その時点でアドリアマイシンの濃度を変化させた、指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。これらの図はまた、1または3日間のHA/薬物同時インキュベーションの効果を示す。これらの図は、HAが細胞を「プレ感作」し、ならびに/あるいは治療薬に対して細胞を化学感作させることができることを示す。
【図2d】図2a−2fは、750,000ダルトンHAに30分、1時間、または24時間暴露され、その時点でアドリアマイシンの濃度を変化させた、指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。これらの図はまた、1または3日間のHA/薬物同時インキュベーションの効果を示す。これらの図は、HAが細胞を「プレ感作」し、ならびに/あるいは治療薬に対して細胞を化学感作させることができることを示す。
【図2e】図2a−2fは、750,000ダルトンHAに30分、1時間、または24時間暴露され、その時点でアドリアマイシンの濃度を変化させた、指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。これらの図はまた、1または3日間のHA/薬物同時インキュベーションの効果を示す。これらの図は、HAが細胞を「プレ感作」し、ならびに/あるいは治療薬に対して細胞を化学感作させることができることを示す。
【図2f】図2a−2fは、750,000ダルトンHAに30分、1時間、または24時間暴露され、その時点でアドリアマイシンの濃度を変化させた、指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。これらの図はまた、1または3日間のHA/薬物同時インキュベーションの効果を示す。これらの図は、HAが細胞を「プレ感作」し、ならびに/あるいは治療薬に対して細胞を化学感作させることができることを示す。
【図3a】図3a−3dは、種々の濃度の750,000ダルトンヒアルロナンに1時間、24時間または3日間暴露された後、1時間、24時間または3日間の種々の時間、40nMアドリアマイシンで処理された指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。これらの図は、広い濃度範囲のヒアルロナンが化学感作剤として作用するか、あるいは細胞毒性作用を発揮することができることを示す。
【図3b】図3a−3dは、種々の濃度の750,000ダルトンヒアルロナンに1時間、24時間または3日間暴露された後、1時間、24時間または3日間の種々の時間、40nMアドリアマイシンで処理された指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。これらの図は、広い濃度範囲のヒアルロナンが化学感作剤として作用するか、あるいは細胞毒性作用を発揮することができることを示す。
【図3c】図3a−3dは、種々の濃度の750,000ダルトンヒアルロナンに1時間、24時間または3日間暴露された後、1時間、24時間または3日間の種々の時間、40nMアドリアマイシンで処理された指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。これらの図は、広い濃度範囲のヒアルロナンが化学感作剤として作用するか、あるいは細胞毒性作用を発揮することができることを示す。
【図3d】図3a−3dは、種々の濃度の750,000ダルトンヒアルロナンに1時間、24時間または3日間暴露された後、1時間、24時間または3日間の種々の時間、40nMアドリアマイシンで処理された指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。これらの図は、広い濃度範囲のヒアルロナンが化学感作剤として作用するか、あるいは細胞毒性作用を発揮することができることを示す。
【図4】図4は、6週間の実験を通じて観察された非処理の毒性が存在することを示す。5−FU処理群と比較して、単独の物質または化学感作剤としてのHA治療を受けたマウスは高められた健康を示し、ここでは動物は体重を失わず、その体重量を維持した。
【図5】図5は、6週間の実験の終了時点で、腫瘍重量を測定したところ、HA化学感作治療が食塩水群、HAおよび5−FU群より有意に小さい腫瘍を生じた(p=0.005)ことを示す。単独物質としてのHAはまた、食塩水コントロールと比べて主な腫瘍重量を減少させることによりその作用を示した。処置の最初の2週間は、腫瘍応答の大きな差異が観察されなかったが、その後、HA次いで5−FU腫瘍増殖は、他の処置群と比べて妨げられた。6週間の処置の間、腫瘍倍増サイクル数において興味深い差異が観察された。食塩水処置を受けたマウスは平均4腫瘍倍増を受けたが、一方、処置計画にHAを包含させると、腫瘍倍増時間が有意に増大し、ここにHA/5−FU動物が1腫瘍倍増サイクルの平均を受け、これは5−FU細胞毒性に対するHAの効果を再び際立たせる。
【図6】図6は、HAを同時投与すると、非リンパ性転移の有意な減少が生じることを示す。HA治療を受けたマウスを除き、初期腫瘍の近傍部分の頚部または腕下領域まわりに新規腫瘍が観察された。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本発明の方法および組成物は、化学治療剤、例えば、パクリタキセルのような抗癌剤、鎮痛薬、鎮静剤、ホルモンまたは抗生物質などに対する細胞の感受性を増大させるのに有用である。特に、本発明の方法および組成物は、細胞増殖性障害(例えば新生物)に関する細胞の感受性を増大させるのに有用である。非癌細胞への付随する毒性を伴わなずに効力を増大させることによって、本発明は、腫瘍を処置し、細胞毒性の結果としての再発および死亡の機会を予防するか、あるいは減少させるのに有用な方法および組成物を提供する。さらに、本発明は、多剤耐性表原型を導く任意の突然変異の前に癌細胞を排除することによって、多剤耐性細胞の数を排除または減少させる。したがって、多剤耐性腫瘍細胞が生じるのを減少させることにより、本発明は現在の治療様相の不十分な箇所を満足させる。
【0027】
本明細書中で用いられる用語「被験体」とは、化学治療剤での処置を必要とする疾患または症状であって、ここにこの化学治療剤は望ましいものと比較して減少した効力を有している疾患または症状を有する任意の動物を表す。好ましくはこの被験体は細胞増殖性障害(例えば新生物障害)を患っている。本発明の目的の被験体には、哺乳類(例えばウシ、イヌ、ウマ、ネコ、ブタ)および、好ましくはヒトが含まれるがこれらに制限されない。
【0028】
「細胞増殖性障害」とは、細胞または細胞群が正常でない増殖、典型的には異常型増殖を示すことを意味し、これにより新生物、腫瘍または癌が導かれる。
【0029】
細胞増殖性障害には、例えば乳癌、肺癌、前立腺癌、腎臓癌、皮膚癌、神経癌、卵巣癌、子宮癌、肝臓癌、膵臓癌、内皮癌、胃癌、腸癌、外分泌腺癌、内分泌腺癌、リンパ性癌、造血系の癌または頭部および頚部組織の癌が含まれる。
【0030】
一般には、新生物性疾患は正常でない細胞増殖が新生物または腫瘍と称される組織塊を生じさせる症状である。新生物は構造および行動における種々の程度の異常性を有する。良性の新生物があり、また他のものは悪性あるいは癌性である。新生物疾患の有効な処置は、癌予防性または治療用手法に関する調査に対して貴重な貢献をすると考えられるだろう。
【0031】
本発明の方法には、一態様において、(1)化学治療剤の投与前、その投与と同時、あるいはその投与後のヒアルロナンの投与;または(2)ヒアルロナンおよび化学治療剤の組み合わせの投与が関与する。
【0032】
本明細書中で用いられる用語「治療有効量」とは、所望の治療応答を生じさせるのに有効な本発明の化合物量を意味する。例えば癌を予防するか、あるいは宿主における癌の徴候を処置するため、あるいは癌を処置するのに有効な量。
【0033】
具体的な「治療有効量」は、明らかなように、処置されるべき具体的な症状、患者の身体状態、処置される哺乳類のタイプ、処置期間、(存在すれば)同時治療の性質、および用いられる具体的製剤およびその化合物またはその誘導体の構造などの要因に応じて変化する。
【0034】
本明細書中で用いられる用語「医薬的担体」とは、ヒアルロナンおよび/または化学治療剤を動物またはヒトにデリバリーするための、製薬的に許容される溶媒、懸濁化剤またはビヒクルである。担体は液状物または固形物であってよく、計画される投与様式に応じて選択される。
【0035】
本明細書中で用いられる用語「癌」とは、哺乳類に見られるすべてのタイプの癌または新生物または悪性腫瘍を表す。癌には、肉腫、リンパ腫および他の癌が含まれる。例は以下のタイプであるが、これらの具体的タイプの癌に制限することを意図しない:
前立腺癌、大腸癌、乳癌、MX−1およびMCFライン、膵臓癌、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、ホーム、肺癌、マウス癌、黒色腫、白血病、膵臓癌、黒色腫、卵巣癌、脳の癌、頭部および頚部の癌、腎臓癌、中皮腫、肉腫、カポジ肉腫、胃癌および子宮癌。
【0036】
本明細書中で用いられる用語「細胞」とは、哺乳類細胞(例えばマウス細胞、ラット細胞またはヒト細胞)を含むがこれらに制限されない。
【0037】
ヒアルロナンおよび/または化学治療剤は、慣用の製薬的に許容される非毒性担体、アジュバント、およびビヒクルを含有する単位投与製剤として、経口、局所、または非経口投与することができる。本明細書中で用いられる用語「非経口」には、皮下注射、エアロゾル、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、頭蓋内、胸骨内注射または注入技術が含まれる。
【0038】
本発明はまた、本発明の処置の新規方法において用いるための、適当な局所、経口、および非経口医薬製剤を提供する。本発明の化合物は、錠剤、水性または油性懸濁剤、ロゼンジ剤、トローチ剤、粉末剤、顆粒剤、エマルジョン、カプセル剤、シロップ剤またはエリキシル剤として経口投与することができる。経口使用のための組成物には、医薬的に質が高く、快適な調製物を製造するために、甘味料、香料、着色料および保存剤からなる群から選択される1またはそれ以上の物質を含ませることができる。錠剤には、活性成分を、錠剤の製造に適する無毒の製薬的に許容される賦形剤と混合して含ませる。
【0039】
これらの賦形剤は、例えば、(1)不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;(2)顆粒化剤および崩壊剤、例えばコーンスターチまたはアルギン酸;(3)結合剤、例えばデンプン、ゼラチンまたはアカシア;および(4)滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクであってよい。これらの錠剤はコーティングしなくてもよいし、既知の技術によりコーティングして、胃腸管における崩壊および吸収を遅延させ、これにより、より長い期間にわたって持続した活性を提供してもよい。例えば、時間遅延物質、例えば一ステアリン酸グリセロールまたは二ステアリン酸グリセロールを用いることができる。また米国特許第4,256,108号;第4,160,452号;および第4,265,874号に記載の技術を用いてコーティングを行い、コントロール放出用の浸透圧性治療錠剤を形成させてもよい。
【0040】
本発明方法に有用なヒアルロナンならびに化学治療剤は、インビボ適用に関して、注射によるか、あるいは独立にあるいはいっしょに、経時的段階的灌流により、非経口的に投与することができる。投与は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、または経皮的であってよい。インビトロ研究では、この物質を適当な生物学的に許容されるバッファーに加えるか、あるいは溶解させ、細胞または組織に加えることができる。
【0041】
非経口投与用の調製物には、滅菌水性または非水性溶液剤、懸濁剤、およびエマルジョンが含まれる。非水性溶媒の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブオイル、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルエステルがある。水性担体には、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョンまたは懸濁液(食塩水および緩衝化溶媒を含む)が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンガー静脈内ビヒクル(液体および栄養補充物を含む)、電解液補充物(例えばリンガーデキストロースに基づくもの)などが含まれる。また保存剤および他の添加剤、例えば抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、成長因子および不活性ガスなどが存在してもよい。
【0042】
本発明を用いて、例えば新生物、癌(乳癌、肺癌、腎臓癌、皮膚癌、神経癌、卵巣癌、子宮癌、肝臓癌、膵臓癌、内皮癌、胃癌、腸癌、外分泌腺癌、内分泌腺癌、リンパ系の癌、造血系の癌または頭部および頚部組織の癌)、線維性障害などを含む細胞増殖障害に関連する病因を処置できることが想定される。
【0043】
また本発明の方法および化合物は、化学治療剤処置に関連する他の疾患、例えば神経退化障害、ホルモン不均衡などの処置に用いることができる。したがって、本発明は、細胞増殖、新生物、癌などに関連する障害を改善する方法であって、この障害を有する被験体の障害部位において、細胞増殖またはその障害を阻害または改善するのに十分な量のヒアルロナンおよび化学治療剤で処置することを含む方法を含む。
【0044】
一般に、本明細書中で用いられる用語「処置する」、「処置」などは、被験体、組織または細胞に影響し、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味する。この効果は、完全にあるいは部分的に細胞増殖性障害またはその徴候または症状を妨害するか、ならびに/あるいは障害および/または、例えば異常細胞増殖に帰する有害作用を部分的または完全に治療するという点で、治療的であってよい。本明細書中で用いられる「処置する」とは、脊椎動物、哺乳類、特にヒトにおける細胞増殖性障害の任意の処置または予防を包含し、これには以下が含まれる:
(a)障害にかかりやすいかもしれないが、まだその障害を有すると診断されたことがない被験体において障害が発生するのを防ぐこと;
(b)障害を阻害する、すなわちその発達を休止させること;または
(c)障害を救出するか、あるいは改善する、すなわち障害の退行を生じさせること。
【0045】
本発明は、新生物、癌などを含む細胞増殖性障害の改善に有用な種々の医薬組成物を含む。本発明の一態様にしたがう医薬組成物は、担体、賦形剤および添加剤または補助剤を用い、被験体への投与に適当な剤型としたヒアルロナン、そのアナログ、誘導体または塩および1またはそれ以上の化学治療剤を用いて調製する。よく用いられる担体または補助剤には、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトールおよび他の糖、タルク、ミルクプロテイン、ゼラチン、デンプン、ビタミン、セルロースおよびその誘導体、動物性および植物性油、ポリエチレングリコールおよび溶媒、例えば滅菌水、アルコール、グリセロールおよび多価アルコールが含まれる。静脈内ビヒクルには、液体および栄養素補充物が含まれる。保存剤には、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスが含まれる。他の製薬的に許容される担体には、水性溶液、無毒の賦形剤(塩、保存剤、バッファーなどを含む)が含まれる(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th ed. Easton: Mack Publishing Co., 1405-1412, 1461-1487 (1975) および The National Formulary XIV., 14th ed. Washington: American Pharmaceutical Association (1975)(これらの内容は引用により本明細書中に包含される)に記載されている)。医薬組成物のpHおよび種々の成分の正確な濃度は、当分野の慣用技術にしたがって調節する。Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis for Therapeutics (7th ed.) を参照。
【0046】
医薬組成物は好ましくは投与単位で製造し、投与する。固形投与単位は錠剤、カプセル剤および坐剤である。被験体の処置では、化合物の活性、投与様式、障害の性質および重篤度、被験体の年齢および体重に応じて、種々の毎日の用量を用いることができる。しかし、特定の環境下では、より大量またはより少量の毎日の用量が適当であり得る。毎日の用量の投与は、個別の投与単位またはいくつかのより少量の投与単位の剤型における単一投与および特定の間隔で細分された用量の複数回投与の両者によって行うことができる。
【0047】
本発明に記載の医薬組成物は、治療有効用量を局所性投与あるいは全身性投与することができる。この使用に関する有効量は、もちろん、疾患の重篤度および被験体の重量および全体的状態に依存する。典型的には、インビトロで用いられる投与量は、この医薬組成物のインサイチュ投与に有用な量の指標を提供することができ、動物モデルを用いて具体的障害の処置に関する有効量を決定することができる。種々の考察は、例えば Langer, Science, 249: 1527, (1990) に記載されている。経口使用用の製剤は、活性成分が不活性固形希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合されているゼラチン硬カプセルの剤型であってよい。これらはまた、活性成分が水または油状溶媒、例えば落花生油、液状パラフィンまたはオリーブ油と混合されているゼラチン軟カプセルの剤型としてもよい。
【0048】
水性懸濁剤は通常、活性物質を水性懸濁剤の製造に適当な賦形剤と混合して含む。このような賦形剤は、(1)懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガム;(2)分散剤または湿潤剤(これらは(a)天然に存在するホスファチド、例えばレシチン;(b)酸化アルキレンと脂肪酸の縮合産物、例えばポリオキシエチレンステアラート;(c)酸化エチレンと長鎖脂肪族アルコールの縮合産物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール;(d)酸化エチレンと、脂肪酸およびヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合産物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート、または(e)酸化エチレンと、脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導された部分エステルの縮合産物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートであってよい)であり得る。
【0049】
医薬組成物は滅菌注射用水性懸濁液または油性懸濁液の剤型であってよい。この懸濁液は、上記適当な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いる既知の方法にしたがって製剤化することができる。この滅菌注射用調製物はまた、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液剤または懸濁剤、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液剤であってよい。使用可能な許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンガー溶液、および等張性塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌、固定油は溶媒または懸濁媒体として慣用的に用いられる。この目的のため、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の低刺激性固定油を用いることができる。さらに、オレイン酸のような脂肪酸は注射剤の製造に用途がある。
【0050】
本発明の、化学治療剤と組み合わされたヒアルロナンはまた、リポソームデリバリー系、例えば小単層性小胞、大単層性小胞、および多層性小胞の剤型で投与することができる。リポソームは種々のリン脂質、例えばコレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンから形成することができる。
【0051】
本発明化合物の投与量は、約0.5mg〜約10mg/kg体重のオーダーであり、好ましい投与量は、約5mg〜約20mg/kg体重/日(約0.3gm〜約1.2gm/患者/日)の範囲である。担体物質と混合されて、単一の用量を生じさせることができる活性成分の量は、処置される宿主および具体的な投与様式に応じて変化するだろう。例えば、ヒトへの経口投与に関して意図される製剤には、約5mg〜1gの活性化合物を、適当かつ好都合な量の担体物質(これは全組成物の約5〜95パーセントまで変化し得る)とともに含ませることができる。単位投与剤型は一般に、約5mg〜500mgの活性成分を含むだろう。
【0052】
しかし、任意の特定の患者に関する具体的用量レベルは、用いられる具体的化合物の活性、年齢、体重、全体的健康、性別、食事、投与期間、投与経路、排泄頻度、薬物コンビネーション、および治療を受ける具体的疾患の重篤度を含む種々の要因に依存することが理解されよう。
【0053】
さらに、本発明の化合物には、水または一般的有機溶媒と溶媒和物を形成し得るものがある。このような溶媒和物は本発明の範囲内に含まれる。
【0054】
本発明の化合物は、さらに他の化合物と混合することができ、効力のある混合物を提供できる。その組み合わせが本発明のヒアルロナンの活性を排除しない限り、化学治療剤の化学的にコンパチブルな任意の組み合わせを含むことが意図される。
【0055】
単に以下の非制限的実施例に言及し、本発明をさらに記載する。しかし、以下の実施例は単に例示的であり、いかなる意味においても上記本発明の一般性を制限するものとして理解されるべきでない。特に、本発明は癌に関連して詳細に記載されているが、本明細書中の発見は癌の処置に制限されないことが明らかに理解されよう。例えばHAは他の症状の処置に用いることができる。
【実施例】
【0056】
実施例1
ヒアルロナンおよび5−フルオロウラシル溶液の製造
すべてのインビトロおよびインビボ実験で用いるHAは Kyowa Hakko Kogyo (Yamaguchi, Japan) から入手した。5−FUは Sigma,St. Louis, USA から入手した。アドライマイシン (Adraimycin) は Cytomix, Northcote, Melbourne, Australia から入手した。用いたHAの標準的プロファイルは表1に示すものである。
表1
ヒアルロナンバルク乾燥粉末に関する説明シート
【表1】
【0057】
ピロゲンを含まない注射用等級水に乾燥HA(様式上、Mr 7.5×105kDa)を溶解することによって、HA溶液の10mg/mLストックを製造した。均質の溶液を保証するため、HAを4℃で一晩の後、ボルテックスして溶解した。ストック溶液の製造中、HAがその分子量を維持していることを保証するために、この溶液を Sepacryl S-1000 サイズ排除ゲル(カラム仕様、1.6cm×70cm、サンプルサイズ2mL、フロー速度18mL/hおよび2mL フラクションサイズ)で分析した。カラムフラクション中、ウロン酸アッセイによってヒアルロナンを検出した。
【0058】
ウロン酸アッセイを用いて、ゲルろ過クロマトグラフィー手順より収集したフラクションからヒアルロナンの存在を定性的に検出した。次いで各フラクションの25μL量を96ウェルプレートに移した。次いでカルバゾール試薬(3M カルバゾール/0.025M ボレート(H2SO4中))250μLをこれらのフラクションに加えた。96ウェルプレートを80℃で45〜60分インキュベートした。550nmフィルターを有する Dynatech MR7000 プレートリーダーを用いて96ウェルプレートを読み取った。吸光度がバックグラウンド吸光度より>3標準偏差になった時点で有意であると考えた。バックグラウンドは、V0およびVt前後の同数のサンプルポイントをとる(ここでとった平均数は16)ことによって計算した(Fraser et al. 1998)。
【0059】
粉末にした5−FUを0.1M NaOH(pH8.9)中に溶解して5−FUのストック溶液を調製し、ピロゲンを含まない注射等級0.9%w/v NaClを用いて濃度1mg/mLにした。この保存溶液を0.22μmフィルターに通してろ過し、確実に滅菌した。必要量のストック溶液を上記のセルライン特異的生育培地に加えて、5−FUを希釈した。
【0060】
Cytomix から0.9%NaCl中のアドリアマイシンの10mg/mL溶液を得た。
【0061】
実施例2
癌細胞形態に対するヒアルロナンの影響の試験
HA結合親和力(Culty et al, 1994)およびCD44およびRHAMMのHA受容体の発現(Wang et al, 1996)に基づいてヒト胸腺癌セルラインMDA−MB−468、MDA−MB−435およびMDA−MB−231を選択した。これらのセルラインの特徴を表2に示す。
表2
ヒト乳癌セルラインのヒアルロナン結合および受容体発現
【表2】
a:Culty et al, 1994
b:Wang et al, 1996
【0062】
セルラインMDA−MB−468、MDA−MB−435およびMDA−MB−231を慣用的に培養し、175cm2培養フラスコ中の10%胎児ウシ血清(FCS)および抗生物質/抗真菌性試薬を補充した Leibovitz L−15培地において、100%(v/v)空気が入った湿度コントロールインキュベーター中37℃で、単層として、サブクローニングした。
【0063】
グルタミンを含む Leibovitz-L-15(10×濃縮物)、RPMI(10×濃縮物)、イーグル基本培地(Eagle basal medium, EBM、10×濃縮物)、20mM HEPES、0.09% w/v ビカルボナート、ハンク平衡塩類溶液(HBSS、10×濃縮物)および、カルシウムおよびマグネシウムを含まないダルベッコリン酸緩衝塩類溶液(PBS、10×濃縮物)はSigma(St Louis, Mo., USA)から購入した。粉末濃縮物を必要量の逆浸透脱イオン化ピロゲン不含蒸留水に溶解し、単一強度溶液を作成し、0.22μm高圧ろ過(Millipore Corporation, MA. U.S.A.)によって滅菌し、4℃で保存した。FCSは CSL Ltd., Australia から購入した。FCSは−20℃で保存した。10,000ユニットのペニシリン、ストレプトマイシン10mgおよびアンホテリシン25μg U/mLを含む抗生物質/抗真菌性試薬溶液(100×濃縮物)はSigma(St Louis, USA)から得た。0.9% w/v 塩化ナトリウム中、ブタトリプシン5gおよびEDTA2g/Lを含むトリプシン/EDTA溶液(10×濃縮物)はSigma(St Louis, Mo., USA)から得た。すべての乳癌セルラインはAmerican tissue culture collection (Rockville, USA) から購入した。すべてのプラスチック製使い捨て培養容器は Greiner (Austria) から購入した。8ウェル、組織培養顕微鏡スライドグラスは Linbro (Flow Laboratories, VA, USA) から得た。
【0064】
この試験では、MDA MB−468、MDA MB−231およびMDA MB−435セルラインを、10% FCSを補充した90% Leibovitz L−15培地で培養した。集密した後、培養をHBSS中で1×洗浄し、0.25% トリプシン/0.05% EDTA中でトリプシン処理した。塩類溶液15mL+細胞懸濁液0.2mLを加えて、この細胞懸濁液を自動細胞カウンター(ZM-2 Coulter Counter)を用いてカウントした。
【0065】
細胞を多数の
MDA MB−468:25,000細胞/mL培地
MDA MB−231:12,000細胞/mL培地
MDA MB−435:12,000細胞/mL培地
に再懸濁した。ウェル当たり細胞懸濁液1mLを加えて細胞を48ウェルプレート(1cm2表面領域)にプレートした。細胞を24時間付着させた後、培地を除去し、単層を洗浄した。試験培地は;0〜1μM アドリアマイシンまたは5−フルオロウラシルを含む培養培地であって、0〜1μMのHA(形式上Mw 750,000)を加えるか、あるいは加えないものであった。この細胞をいくつかの組み合わせのHAおよび薬物に、種々の時間および種々の濃度で暴露した(表3)。
【0066】
表3
ヒアルロナンおよび薬物に関する、ヒト乳癌セルラインとのインキュベーション条件
【表3】
【0067】
インキュベーションおよび培養期間の後、細胞単層をHBSSで洗浄し、0.25% トリプシン/0.05% EDTA中でトリプシン処理した。塩類溶液15mL+細胞懸濁液0.2mLを加えることによってこの細胞懸濁液を自動細胞カウンター(ZM-2 Coulter Counter)を用いてカウントした。結果は以下のように計算し、薬物なしコントロールの%として記載した:
【数1】
。
あるいは実験に基づいて以下のように計算し、薬物コントロールの%として記載した:
【数2】
。
【0068】
実施例2に記載の指数関数的に生育するヒト乳癌細胞MDA MB 231を0−5mg/mL(形式上Mr 750,000D)と24時間インキュベートした。24時間の時点で、細胞をカウントし、CPR(1600フィルムは Eastman Kodak Company, Rochester, USA より得た)を用いて写真撮影した。
【0069】
HAを乳癌細胞と30分、1時間、24時間または3日間インキュベートすると、変化した応答が観察され、乳癌細胞数の減少は0〜29%の範囲であった(表4参照)。
【0070】
表4
ヒト乳癌セルラインに対するHAの細胞毒性作用
【表4】
*値は2〜3回の測定の平均である。
【0071】
また、ヒト乳癌細胞をHAとインキュベートすると、特定の形態変化(図1参照)、例えば原形質膜の膨張、サイトゾル成分のより多大な顆粒化が観察された。
【0072】
ヒト乳癌細胞をHAに30分、1時間、24時間または3日間暴露した後、アドリアマイシンに暴露すると、HAは薬物の細胞毒性を高めることがはっきりわかった(図3および表5)。
【0073】
表5
乳癌セルラインのアドリアマイシンの細胞毒性に対するHAの作用
【表5】
すべての値は2〜3回の実験の範囲を表し、ここに数値は、薬物にHAを加えるか、あるいは薬物添加前に癌細胞をHAでプレ感作することによって達成されるIC50減少の倍率である。
【0074】
実施例3
ヒアルロナンのインビボ効力
実施例2のインビトロ薬物感受性実験の結果に基づいて、ヒト乳癌のインビボ処置において、単独物質として、および化学増感剤としてのヒアルロナンの処置効力を評価した。
【0075】
実施例2の結果から、癌セルラインMDA−MB−468を任意のヌードマウスヒト腫瘍異種移植片の作成に関する接種源として選択した。細胞を慣用の手順で培養し、上記実施例2に記載のようにサブカルチャーした。マウスへの注射用に、細胞を100%集密まで培養し、0.025%トリプシン/0.01% EDTA溶液中でトリプシン処理し、Beckman TJ-6 bench centrifuge 中、400gavで10分間遠心分離して2回洗浄し、Model-ZM Coulter カウンターを用いてカウントし、血清を含まない Leibovitz L-15 培地中、1×108細胞/mLで再懸濁した。
【0076】
Walter and Eliza Hall Research Institute, Melbourne Australia から購入した6〜8週齢胸腺欠損CBA/WEHIヌード雌性マウスを特定の病原を含まない条件下、無菌のえさおよび水を自由に摂取できるようにして維持した。各マウスは50μL中に5×106細胞を含む1回の注射を受けた。この細胞は、26ゲージ針を用いて乳脂肪床(mammary fat pad)内へ第一乳頭下に直接注射した(Lamszus et al, 1997)。腫瘍測定は毎週行い、3垂直直径(d1d2d3)を測定した。腫瘍容量は、式:
【数3】
を用いて評価した。
癌細胞接種約4〜8週間後に5−FU+HAでの処理を開始した。各実験において用いたマウスに関する平均腫瘍サイズを表6にまとめる。
【0077】
表6
各実験の開始時のヒト乳癌腫瘍のまとめ
【表6】
【0078】
腫瘍誘導の約8週間後、腫瘍を有する2マウスに致死量のネンブタールを与えた。マウスを犠牲にし、3分以内に、腫瘍を外科的に取り出し、直ちに10%緩衝化ホルマリン中で12時間固定した。固定された腫瘍を一連の70〜100%エタノールで一晩脱水し、次いでパラフィン包埋し、これから2〜4μmセクションをカットした。このセクションをスライドグラスに載せ、脱ワックスし、水に入れた。スライドグラスをPBS中3×5分洗浄した。異種親和性タンパク質を10%胎児ウシ血清と10分間インキュベートし、次いでPBS洗浄することによってブロックした。
【0079】
HAおよびHAシンターゼ抗体の視覚化に用いられる二次抗体は Dako (California, U.S.A.) から購入した。3,3'−ジアミノベンジジン(Sigma Fast DAB)錠は Sigma, St. Louis, USA から得た。
【0080】
検出抗体は室温で60分間適用した。検出抗血清または抗体はRHAMM、CD44HおよびCAEに対するものであった。スライドグラスをPBS中で3×5分間洗浄し、メタノール中の0.3%H2O2に浸漬して内因性ペルオキシダーゼ活性をブロックした。さらにPBSで洗浄した後、ペルオキシダーゼコンジュゲート化ブタ抗ウサギ二次抗血清を室温で60分間適用し、次いでPBS中で3×5分間洗浄した。Sigma Fast 3,3'−ジアミノベンジジン錠(DAB)を製造元の指示書にしたがって調製し、DAB溶液を室温で5〜10分間適用した。スライドグラスをtap水で10分間洗浄し、ヘマトキシリンで対比染色し、脱水し、マウントした。
【0081】
個々のマウス体重に応じて、50μL中30mg/kgの5−FU(平均体重60kgに関するヒト治療用量10.5mg/kgに相当;Inaba et al, 1988)をデリバリーするように個々の5−FU注射を調製した。12.5mg/マウス体重kgに相当する最終HA濃度を含むHA注射は50μL中12.5mg/kgのHAをデリバリーするように調製した。この量のHAを体内に注射すると、実験期間中、飽和キネティクスが観察されるだろう(Fraser et al, 1983)。
【0082】
ヒト乳癌に関して最も一般に用いられる処置療法の1つはシクロホスファミド、メトトレキセートおよび5−フルオロウラシルであり、これを28日サイクルの1および8日に投与する。ヒト乳癌では、初期の処置療法は6サイクル間であり、この時点で患者の症状を再評価し、したがってマウスを長期間効力実験における6サイクル(6月)の処置および6サイクル(6週)短期間効力実験に暴露することによってできるだけ綿密にヒト処置療法をシミュレーションすることを試みた。マウスのライフサイクルが約2年巻であることを考慮し、短期間および長期間処置プロトコルを開始した(表7を参照)。
【0083】
表7
処置投与プロトコル
【表7】
【0084】
マウスを無作為に、短期間実験用には群当たり8動物の7群に分け、長期間実験用には8動物の5群に分けた(用量および処置投与計画に関しては表7を参照)。
【0085】
6月以上続く化学治療が一般により大きな効果に結び付かないことが示されていた(Harris et al, 1992)ので、処置は6月計画を越えて延長しなかった。
【0086】
長期間実験に関して処置適用の日に、動物の体重を量り、腫瘍容量を測定した。6週間実験では、毎日、動物の体重を量り、腫瘍容量を測定した。動物を個別に注射用ボックスに入れ、尾静脈を介して注射を投与した。ストレスが化学療法に応答する患者の主要な要因であり得ることが実験的に証明されていた(Shackney et al, 1978)ので、それぞれのおりに同数のマウスを入れ、実験の段階に応じており当たりの動物数が5〜8で変化するようにした。
【0087】
実験終了時点は、疾患進行程度のせいで動物を安楽死させなければならない時または6月(長期間)または6週(短期間)処置計画が完了した時であった。動物倫理ガイドラインに応じて、疾患進行の程度を評価する独立した動物倫理職員が動物を2週間に1回モニターした。以下の範疇を用いて、動物が死を必要とする実験終了時点の段階に達したかどうかを決定した:
1)動物が動けないほど腫瘍重量が大きくなった場合;
2)動物が飲食しなくなり、劇的な体重喪失を経験した場合;
3)腫瘍サイズが体重の10%以上になった場合。
【0088】
実験終了時点では、ネンブタール(60mg/mL)の0.1mL腹腔内注射によって動物を麻酔し、血液を集めた後、頸部脱臼によって動物を犠牲にした。
【0089】
マウスを犠牲にした後すぐに、腫瘍、肝臓、心臓、脾臓、膀胱、左および右腎臓、子宮、肺、胃、腸、脳およびリンパ節を切り出し、0.06Mホスフェート(pH7.5)で緩衝化された4%ホルマリンおよびセチルピリジニウムクロライド1.0%w/vに入れた。この組織を16〜24時間固定した後、組織学的に処理した。固定された組織を段階的に100%エタノールまで脱水し、パラフィンブロックに包埋し、ここから2〜4μmのセクションを顕微鏡スライドグラスに置いた。ヘマトキシリン核染色およびエオシン細胞質染色を用いてこの組織セクションを染色し、処置毒性を示し得るすべての病理学的特徴を強調した。
【0090】
9〜11のリンパ節を動物ごとに集め、腫瘍領域を排出するすべての節が確実に収集されるようにした。現在、リンパ節転移の検出に用いられる2つの方法が存在する:
i)総器官構造の慣用的ヘマトキシリンおよびエオシン染色;および、
ii)癌マーカー、例えば癌胎児性抗原を用いる免疫組織化学。
【0091】
転移検出の両方法をこの実験において用いた。すべての市販CEA抗体がヒト乳癌細胞と反応するわけではないため、5つの異なる抗体の反応性を試験した(DAKO, Amersham and KPL)。
【0092】
ヘマトキシリンおよびエオシン染色されたリンパ節は Dr P. Allen (免許を有する病理学者)が試験し、各節は顕微鏡下で腫瘍細胞の存在に関して試験された。CEA免疫染色されたリンパ節は顕微鏡下で試験し、すべての正に染色された節をカウントし、リンパ節転移に関して正のものを考慮した。
【0093】
腫瘍容量はキャピラリー測定によって毎日あるいは毎週モニターし、前記のように計算した。6週実験の最後に、腫瘍重量を測定した。ここでは、図6に示されるように、HA化学感作治療は食塩水群、HAおよび5−FU群より有意に小さい腫瘍を有した(p=0.005)。処置の最初の2週間は腫瘍応答に有意な差異は見られなかったが、その後、HA次いで5−FU腫瘍生育は他の処置群と比較して妨げられた。6週間の処置の間、腫瘍倍増サイクル数に興味深い差異が見られた。食塩水処置を受けたマウスは平均4腫瘍倍増を経験し、HAを処置計画に包含すると腫瘍倍増時間が有意に増加し、HA/5−FU動物は平均1腫瘍倍増サイクルを経験し、5−FU細胞毒性に対するHAの効果が再び強調される。
【0094】
すべての動物は、初期腫瘍に隣接するリンパ節におけるリンパ節転移を表した。リンパ節関与(動物当たりの転移性節数)のパーセンテージは、HA次いで5−FU、5−FUおよびHA処置によって大きく減少し、食塩水群はリンパ節関与量の6倍増加を示した。他の処置群は12.2〜14.3%の有意に少ないパーセンテージを示した(Dunnett's Multiple Comparison Test, p=<0.001)。
【0095】
HAを同時に投与すると、非リンパ系転移の有意な減少が生じた。HA治療を受けたマウスを除き、初期腫瘍に隣接する領域の頸または腕の下領域のまわりに新規腫瘍が観察された。
【0096】
胃腸管毒性:
5−FUの最も一般的な毒性作用の1つは胃腸管に対するものであり、出血性腸炎および出血性穿孔が生じ得る(Martindale, 1993)。動物をGI管不調、例えば下痢に関して毎日モニターし、より深刻な毒性現象、例えば体重喪失に関して毎週モニターした。体重喪失は、Shibamoto et al, 1996 に引用されるように1g×腫瘍容量(cm3)として計算された腫瘍重量を差し引くことによって見積もった正味の体重を計算することによってモニターした。すべての重量変化を示すために、以下のように動物の体重を処置開始の時点での体重に対して標準化した:
【数3】
。
【0097】
6週実験を通して処置毒性は見られなかった。5−FU処置群と比較して、HA治療を単独物質としてか、あるいは化学増感剤として受けたマウスは、高められた健康状態を示し、動物は体重を喪失せず、その体重を維持した(図4)。
【0098】
血液髄抑制
5−FU処置に付随する主要な毒性の1つとしては、骨髄の抑制およびそれに続く白血球細胞の低下であり、任意の処置関連の血液毒性を評価する必要があった。動物を麻酔した時点で、心臓または大血管から針およびシリンジで血液を収集した。マウステナシティー(tenacity)食塩水(M)中で血液を1/50希釈し、血球計算器でカウントすることによって白血球細胞数を見積もった。好中球、リンパ球、および赤血球をカウントすることによって示差血球カウントを行った。血球細胞サブ集団のトータルの見積もりを、マウス血液に関して公開されているデータと比較した。
【0099】
トータル白色細胞カウントおよびサブ集団差は処置にかかわらず、有意に異なっていなかった。
【0100】
器官重量に対する処置の効果
処置が器官萎縮症または肥大症を誘導しなかったことを確認するため、器官を取り出し、死後重量を測定した。各器官の重量は全体の正味の体重の%として計算し、食塩水のみの群(群1)の器官重量と比較した。
【0101】
全体の患者の生存時間は処置の開始後動物が生存した時間(日数または週数)として計算した。各処置群のすべての動物は6週処置プログラムを完了した。
【0102】
器官重量に関して、HA治療は劇的な毒性を全く生じなかった。5−FUを受けたマウスは肥大した脾臓(重量において61%増加)を示し、HAおよび5−FUを同時に投与すると、この肥大を31%まで有意に打ち消した(student t-test, p<0.001)。5−FU治療は子宮の縮小(22%)を生じ、HA/5−FU治療はこの毒性作用を再び10%まで減少させた(student t-test, p=0.04)。同時投与または処置日前に投与することによって処置計画にHAを加えると、食塩水処置群と比較して、初期腫瘍の重量が有意に減少することが明らかに示された(student t-test, p=0.006)。処置間に器官重量の他の差異は見られなかった。
【0103】
実施例4
5−FUのインビトロ効力に対するヒアルロナン濃度の効果
実施例2に記載のように、MDA−MB 468、MDA−MB 435およびMDA−MB 231細胞を培養した。この培養が70〜80%集密に達した時点で、これを37℃の1×HBSS中で洗浄し、0.25% トリプシン/0.05% EDTA10mL中で細胞が完全に剥がれるまでトリプシン処理した。1mL FCSを加えてトリプシンを中和した後、細胞をカウントし、1,200rpmで5分間遠心分離し、以下のように再懸濁した:
MDA−MB 231:12,000細胞/培地mL;
MDA−MB 468:25,000細胞/培地mL;および、
MDA−MB 435:12,000細胞/培地mL。
次いで細胞を48ウェルプレートにまき、供給元の指示書にしたがってインキュベートした。24時間後に培地を除去し、以下の試験培地で置換した:
MDA−MB 468:40nM アドリアマイシン;
MDA−MB 231:50nM アドリアマイシン;および、
MDA−MB 435:10nM アドリアマイシン。
40nM アドリアマイシン培地:450mL(ストックアドリアマイシンは1.7mMであり、したがって1,700,000/40=42,500;450,000/42500=10.6uLの1.7mM アドリアマイシン+培地450mL)。
ストックHAは14.3μMで700,000ダルトンであった。
【0104】
結論
この実験では、HAがインビトロおよびインビボ両方において抗癌薬物、5−FUおよびアドリアマイシンの細胞毒性を高めることができることが明確に示された。より詳細には:
1)単独物質として、HAは、インビトロおよびインビボの両方において癌細胞に対する細胞毒性作用を発揮する(図5);
2)HA単独治療または化学感作治療の治療効力を評価すると、これは正常組織に対して毒性ではなく、薬物の毒性プロファイルを高めなかったことが示された。実際、この治療を受けたマウスは6週間の処置期間にわたって有意な重量増加およびリンパ節転移の減少を示した。HAおよび5−FUの同時投与は、最初の腫瘍容量の減少に対して劇的な作用を有した;ならびに、
3)処置計画に組み込まれたHAを有するマウスは二次的な腫瘍の形成を全く示さなかった(図6)。
【0105】
将来の実験
乳癌のインビボ処置に関するHAの使用に対して現在実験が行われている。これらの実験はHA濃度および分子量の効果およびアドリアマイシンの細胞毒性に対して焦点が当てられている。これらの実験の目的はまた、薬物およびHA暴露時間および投与計画、ならびにHAの作用の機構、すなわち受容体媒介性輸送および/または細胞膜に対する作用を確立することである。また薬物耐性癌細胞の化学感作におけるHAの役割に対するさらなるデータを収集する。
【0106】
セクション1:
すべての実験は、種々のレベルのHA受容体、CD44およびRHAMMを発現する乳癌セルラインに対して行う。試験されるセルラインは、MDA−MB 435、MDA−MB 231、MDA−MB 468、ZRL−751およびいくつかのMDR−1発現乳癌セルラインである。
【0107】
薬物耐性および薬物感受性乳癌細胞に対するHA/アドリアマイシン暴露時間および濃度の作用を調査する。4 MDR−1ポジティブおよび4 MDR−1ネガティブセルラインを、1、2.5、5、10、20、40、60、80および100nMのアドリアマイシンに暴露し、以下の変化型を試験する:
1)1h 薬物±100nM HA暴露、次いで3日間の薬物を含まない培養;
2)一定の薬物暴露±100nM HA(3日間)、30分100nM HA暴露、次いで薬物(1h)、薬物を含まない細胞培養(3日間);および、
3)24時間100nM HA暴露、次いで薬物(1時間)、薬物を含まない細胞培養(3日間)。
【0108】
これらの実験は、最適なHA暴露時間および投与計画、HAと組み合わせた場合のアドリアマイシン細胞毒性増加の振り幅およびHAが乳癌細胞内の流出ポンプ耐性を克服可能であるかどうかを確立する。
【0109】
現在までのところ、アドリアマイシンのIC50は90nMと測定された。90nMのアドリアマイシンを用い、HA(700kD)濃度を1、3、10、30、100、300nM、1μM、3μM、10μM、30μMおよび100μMに変化させる。試験されるインキュベーションの変化型は以下である:
1)30分間HA暴露、次いで1h薬物暴露、薬物を含まない細胞培養(3日間);
2)24HA暴露、次いで1h薬物暴露、薬物を含まない細胞培養(3日間);および、
3)HA±薬物暴露(1hr)、薬物を含まない細胞培養(3日間)。
【0110】
HAが癌細胞剥離および移動において中枢の役割を果たすことができることが示唆されているため、すべての剥離細胞を細胞生存に関して試験する。剥離細胞が生存する場合、FACS表面エピトープ同定を用いてHA受容体状態を測定する。短いHAオリゴ糖、すなわち4糖、6糖、12糖、5600Da、50,000Da、100,000Da、250,000Daを用いて同様の実験を行う。
【0111】
これらの実験はインビトロでの最適なHA:薬物比、最適なHA暴露時間および投与計画、アドリアマイシン細胞毒性に対するHA分子量の効果を示す。
【0112】
最適なHA濃度を測定した後、一連の時間経過実験においてIC50のアドリアマイシンを用い、アドリアマイシン代謝に対するHAのすべての効果を観察する。
【0113】
[14C]アドリアマイシンを細胞に、30分間、1時間、2時間、4時間、8時間、16時間および24時間暴露する。実験条件は以下である:
1)細胞を30分間HA、次いで薬物に暴露;ならびに、
2)細胞を24間HA、次いで薬物に暴露、HA/アドリアマイシンの同時暴露。
【0114】
細胞を取り出し、低張溶解し、113,000gavで1時間遠心分離する。HPLCを用い、膜ペレットおよび上清を代謝産物に関してカウントし、分析する。
【0115】
細胞をガバーガラス上で培養し、ここで細胞はアドリアマイシン±HAに暴露され(上記暴露計画)、共焦点写真タイムコースを用いてサイトゾル摂取および薬物移動を追跡する。
【0116】
MDR−1ポジティブおよびネガティブ乳癌セルラインに対するHA受容体の同定、CD44s、CD44v6、CD44v10およびRHAMM受容体のFACS定量を行う。また、FITC/HAおよびFACS分析を用いるHA/受容体の結合および飽和キネティクスの定量を行う。
【0117】
細胞を以下に暴露することによる:
1)HA(30分間)、次いで薬物;
2)HA(24時間)、次いで薬物;ならびに、
3)HA/アドリアマイシン。
これらのうち任意のものがCD44sおよびRHAMM受容体をブロックすることを決定することができる。表面エピトープFACS分析を用いて任意の生存細胞のこの受容体の状態を定量する。HA受容体のブロッキングがアドリアマイシンおよびHA間の通常観察される相乗作用を減少させるならば、膜結合およびサイトゾル性アドリアマイシンを±HA受容体ブロッキングで定量する。
【0118】
セルラインによるHA分解は[3H]HAおよびゲルろ過クロマトグラフィー±受容体ブロッキングを用いて実験する。
【0119】
分子量4sacc、6sacc、12sacc、5600Da、50,000Da、100,000Da、250,000Da、750,000Daおよび1,500,000DaのHAを、あらかじめ決められた「効果が観察された」濃度で乳癌セルラインとインキュベートし、以下のパラメータを調査する:
細胞外および細胞内カルシウム流動(細胞プローブアッセイ)。細胞骨格成分の調節(細胞骨格遺伝子のマイクロアレイ)、細胞の容量に対する作用(細胞サイズ分析)および癌細胞移動度(Boyden Chamber matrigel アッセイ)を行った。
【0120】
HAのセルサイクルに対する作用は、分子量4sacc、6sacc、12sacc、5600Da、50,000Da、100,000Da、250,000Da、750,000Daおよび1,500,000DaのHAを、あらかじめ決められた「効果が観察された」濃度で乳癌セルラインとインキュベートすることによって行う。細胞をヨウ化カリウムでラベルし、FACS分析に付する。セルサイクルの各段階の細胞数を測定する。
【0121】
最適なHA/ドキソルビシン調製物およびリポソーム性ドキソルビシンの前臨床試験において Liposome Company によって用いられる用量範囲を用いてリポソーム性ドキソルビシンおよびHA/ドキソルビシン調製物のインビトロ効果を比較する。
【0122】
セクション2:
HA/アドリアマイシン抗癌治療が第一相ヒト乳癌細胞試験に進行する前に、予備毒性実験を行う必要がある。この実験は以下に焦点を当てる:
1)マウス体器官および体液へのアドリアマイシン取り込みに対するヒアルロナンの効果;
2)アドリアマイシンに関する予備用量範囲の確立
ヌードマウスにおいてHAがアドリアマイシンをヒト乳癌異種移植片に標的化するかどうかの測定;
3)市販のリポソーム性ドキソルビシンの、マウスにおけるHA/ドキソルビシン取り込みとの比較;ならびに、
4)リポソーム性ドキソルビシンおよびHA/ドキソルビシンの短期間効果の比較。
【0123】
Inaba et al, (1988) より、ヌードマウスにおけるアドリアマイシンの用量は、4mg/kgであり、これは60mg/m2のヒト用量と等しい。ヒト腫瘍を保持するヌードマウスにアドリアマイシン±HAを注射する。4mg/kg±12.5mg/kg HAのアドリアマイシン濃度を用いる。実験プロトコルは以下の処置群を含む:
1)4mg/kg アドリアマイシン;
2)4mg/kg アドリアマイシン+12.5mg/kg HA;ならびに、
3)4mg/kg リポソーム性ドキソルビシン。
【0124】
アドリアマイシン±HAを、マウスの尾部静脈に定量的に注射する。
【0125】
2、15、30、60分および1.5、2、4、8、24および48時間(4動物/時点)の時間間隔で、マウスにネンブタール0.1mLをIP注射して犠牲にした。全ての体器官、骨格筋、リンパ節、骨髄、尿および血液を取り出し、HPLCおよび蛍光を用いてアドリアマイシン含量を測定する。
【0126】
ヒト乳癌をヌードマウス(WEHI CBA 株)内に作成する。このマウスに以下を注射する:
1)マウスLD50 10mg/kg;
2)4mg/kg アドリアマイシン;
3)4mg/kg アドリアマイシン+12.5mg/kg HA;
4)8mg/kg アドリアマイシン;
5)8mg/kg アドリアマイシン+12.5mg/kg HA;
6)4mg/kg リポソーム性ドキソルビシン;
7)食塩水;ならびに、
8)12.5mg/HA。
【0127】
毎週のサイクルで2日目、4日目、6日目に、上記をマウス(8動物/群)の尾部静脈に定量的に注射する。
【0128】
マウスの腫瘍用量、体重、えさ摂取および機能を毎日モニターする。
【0129】
8週実験の完了時に、ネンブタール0.1mLをIP注射してマウスを犠牲にする。全ての体器官、腫瘍、骨格筋、リンパ節、骨髄、尿および血液を取り出し、病理学的評価用に処理する。
【0130】
セクション3:
大腸癌細胞に対するHA抗癌治療の効果についてのいくつかの基本的な疑問に答えるために、以下の実験を行うべきである。
HA/5−FU暴露時間および濃度の、薬物耐性および薬物感受性大腸癌細胞に対する効果を調査する。
3耐性および3感受性セルラインを、1、2.5、5、10、20、40、60、80および100nMの5−FUに暴露し、以下の変数を試験する:
1)1h 薬物±100nM HA 暴露、次いで薬物を含まない培養(3日間);
2)一定量薬物暴露±100nM HA(3日間);
3)30分 100nM HA 暴露、次いで薬物(1h)、薬物を含まない細胞培養(3日間);ならびに、
4)24h 100nM HA 暴露、次いで薬物(1h)、薬物を含まない細胞培養(3日間)。
【0131】
上記のように測定したIC50の5−FUを用いて、HA(700kD)濃度を、1、3、10、30、100、300nM、1μM、3μM、10μM、30μMおよび100μMに変化させる。試験するインキュベーション変数:
1)30分 HA 暴露、次いで1h 薬物暴露、薬物を含まない細胞培養(3日間);
2)24 HA 暴露、次いで1h 薬物暴露、薬物を含まない細胞培養(3日間);ならびに、
3)HA±薬物暴露(1hr)、薬物を含まない細胞培養(3日間)。
【0132】
任意の剥離細胞を細胞生存能に関して試験する。これはHAが癌細胞の剥離および移動に中心的役割を果たし得ることが示されているからである。剥離細胞が生存可能であれば、HA受容体状態をFACS表面エピトープ同定を用いて測定する。
【0133】
短いHAオリゴ糖、すなわち:4sacc、6sacc、12sacc、5600Da、50,000Da、100,000Da、250,000Daを用いて同様の実験を行う。
【0134】
最適HA濃度を測定後、一連のタイムコース実験でIC50の5−FUを用い、アドリアマイシン代謝に対するHAの任意の作用を観察する。
【0135】
30分、1h、2h、4h、8h、16h、および24hの間、[3H]5−FUを細胞に暴露する。実験条件は以下である:
1).細胞をHA(30分)、次いで薬物に暴露する;ならびに、
20.細胞をHA(24)次いで薬物に暴露、HA/5−FUの同時暴露。
【0136】
細胞を取り出し、低浸透圧下で溶解し、113,000gavで1時間遠心分離する。HPLCを用い、代謝産物に関して膜ペレットおよび上清をカウントし、分析する。
【0137】
また、細胞をカバーグラス上で培養し、これを5−FU±HAに暴露(上記暴露方法)し、共焦点写真タイムコースを用いて、薬物のサイトゾル摂取および移動を追跡する。
【0138】
耐性および感受性大腸癌セルラインに対するHA受容体の同定、CD44s、CD44v6、CD44v10およびRHAMM受容体のFACS定量、FITC/HAおよびFACS分析を用いる、HA/受容体の結合および飽和キネティクスの定量。
【0139】
CD44sおよびRHAMM受容体を阻害抗体でブロッキングし、以下のプロトコルにしたがって5−FU±HAを適用する:
1).細胞をHA(30分)、次いで薬物に暴露する;ならびに、
2).細胞をHA(24)、次いで薬物に暴露、HA/5−FUの同時暴露。
【0140】
細胞をカウントする。表面エピトープFACS分析を用いて任意の生存細胞の受容体状態を定量する。
【0141】
HA受容体のブロッキングが5−FUとHA間の通常観察される相乗作用を減少させるならば、膜結合およびサイトゾル性5−FUを±HA受容体ブロッキングで定量する。
【0142】
[3H]HAおよびゲルろ過クロマトグラフィー±受容体ブロッキングを用いるセルラインによるHA分解を実験する。
【0143】
原形質膜に対するHAの作用
分子量4sacc、6sacc、12sacc、5600Da、50,000Da、100,000Da、250,000Da、750,000Daおよび1,500,000Daのヒアルロナンを、あらかじめ決められた「効果が観察された」濃度で乳癌セルラインとインキュベートし、以下がパラメータを調査する:
1).細胞外および細胞内カルシウム流動(細胞プローブアッセイ);
2).細胞骨格成分の調節(細胞骨格遺伝子のマイクロアレイ);
3).細胞容量に対する作用( Coulter サイズ分析);
4).癌細胞の移動度(Boyden Chamber matrigel アッセイ);
5).HA受容体の定量(FACS);ならびに、
6).膜電位(決定すべき方法)。
【0144】
HAネオ−アジュバント治療の器官転移の阻害に対する役割を調査する。他の処置群と比較して、HA治療を受けたマウスは以下を示した:
1).他の処置群と比較したリンパ節転移の減少;
2).新規腫瘍形成の阻害;
3).体重増加;および、
4).健康の増大。
【0145】
これらの結果は、癌の拡大を減少させる効果的な手段としてのHA抗癌治療の可能性ある役割を強調する。前臨床モデルの環境選択を通じて、制限が存在し、これにより二次的な癌の拡大は通常リンパ節の周りで生じる。各器官および骨への癌の拡大を試験可能なモデルを用いることは有益であろう。BAGベクター転移モデルとして既知のモデルを用いることによって、各器官および骨への癌の拡大をモニターできるだろう。
【0146】
簡単には、BAGベクターはネオマイシン耐性LacZ遺伝子から構成され、これはヒト乳癌細胞内に安定にトランスフェクトできる。ヌードマウスへの心臓内注射、次いで6週間処置計画の後、任意の転移細胞/器官におけるLacZ遺伝子をPCR検出することが可能である。骨損傷の検出を伴う Faxitron スキャニングによりすべての骨転移が検出されるだろう。
【0147】
6週間の間、週サイクルの第1日目、第2日目に以下の処置を行う。処置群(5動物/群)は以下から構成される:
1.食塩水
2.30mg/kg 5−FU(第1日目、第2日目);
3.12.5mg/kg HA(第1日目、第2日目);
4.30mg/kg 5−FU + 12.5mg/kg HA(第1日目、第2日目に同時投与);
5.12.5mg/kg HA(第1日目)、30mg/kg 5−FU(第2日目)、12.5mg/kg HA(第3日目)、30mg/kg 5−FU(第4日目);
6.12.5mg/kg HA(第1日目、第3日目);
7.30mg/kg 5−FU(第2日目、第4日目);
8.15mg/kg MTX(第1日目、第2日目);
9.15mg/kg MTX + 12.5mg/kg HA(第1日目、第2日目に同時投与);
10.12.5mg/kg HA(第1日目)、15mg/kg MTX(第2日目)、12.5mg/kg HA(第3日目)、15mg/kg MTX(第4日目);
11.15mg/kg MTX(第2日目、第4日目);
12.15mg/kg MTX、30mg/kg 5−FU、30mg/kg シクロホサミド(cyclophosamide)(第1日目、第2日目);ならびに、
13.15mg/kg MTX、30mg/kg 5−FU、30mg/kg シクロホサミド + 12.5mg/kg HA(第1日目、第2日目);
12.5mg/kg HA(第1日目)、(15mg/kg MTX、30mg/kg 5−FU、30mg/kg シクロホサミド)(第2日目)、12.5mg/kg HA(第3日目)、(15mg/kg MTX、30mg/kg 5−FU、30mg/kg シクロホサミド)(第4日目)。
【0148】
ネオアジュバント治療:
心臓内注射直前に以下を投与する:
1).12.5mg/kg HA;
2).15mg/kg MTX;
3).15mg/kg MTX、12.5mg/kg HA;
4).30mg/kg 5−FU;
5).30mg/kg 5−FU、12.5mg/kg HA;
6).15mg/kg MTX、30mg/kg 5−FU、30mg/kg シクロホサミド;ならびに、
7).15mg/kg MTX、30mg/kg 5−FU、30mg/kg シクロホサミド + 12.5mg/kg HA。
【0149】
マウスの体重および健康状態を6週間毎日モニターする。処置サイクルの完了時に、各マウスを骨損傷に関してスキャンする。スキャンした後、各器官および体液を採り出す。器官の十分なクロスセクションを可能な将来の病理学的分析用に保存し、残りの組織をホモジナイズし、LacZ遺伝子の検出のために拮抗PCRに付する。
【0150】
転移を示したすべての器官を組織学的に処理し、LacZ遺伝子のガラクトシダーゼ染色を用いて癌細胞のコロニー形成のパターンを示す。
【0151】
参考文献
【表8】
【技術分野】
【0001】
本発明は疾患処置のために化学治療剤のバイオアベイラビリティーを高めることに関する。特に、本発明は、疾患処置用の化学治療剤のバイオアベイラビリティーを高めるため、ヒアルロナンを単独で、あるいは化学治療剤と組み合わせて使用することに関する。本発明はまた、薬物耐性疾患の処置であって、これにより、ヒアルロナンを単独で、あるいは化学治療剤と組み合わせて用いてその薬物耐性が克服されるか、あるいは軽減されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒトを含む動物を苦しめる多くの疾患は化学治療剤を用いて処置される。例えば化学治療剤は、結合性または自己免疫疾患、代謝障害、および皮膚科学的疾患を含む腫瘍性疾患の処置において有益であることが示され、多くのこれらの物質は非常に有効であり、全くバイオアベイラビリティーの問題を被らない。
【0003】
化学治療剤の適正な使用には、化学治療剤の選択、用量の決定、および治療の着手の前に、疾患の性質の履歴および病態生理学を徹底的に熟知することが必要とされる。各被験体は、毒性を増強するかもしれない要因、例えば明らかあるいは隠れた感染、出血性障害、栄養失調状態、深刻な代謝障害などに注意して、注意深く評価されなければならない。さらに、特定の主要器官、例えば肝臓、腎臓、および骨髄の機能状態は非常に重要である。したがって、適当な化学治療剤の選択および有効な治療方法の工夫は被験体の現状に影響される。このような考察は投与される薬物の用量およびタイプに影響する。
【0004】
不幸なことに、すべての化学治療剤が容易に使用可能であるわけではない。例えば、いくつかの化学治療剤は先天的に抗療性であり、ここでは動物細胞はこれらの物質に対して容易には応答せず、また他の化学治療剤は後天的耐性を被る。例えば、よく認識されているように、長い化学治療時には、時間が経過するにつれて化学治療剤の効果が減少するため、その変更を強要される被験体もいる。さらに、いくつかの化学治療剤は、本質的に先天的または後天的耐性によって影響されないが、それらがバイオアベイラビリティーに伴う本質的問題を有しているために、特定の疾患の処置において有効でない。細胞の耐性とバイオアベイラビリティーの問題の両者によく影響される一疾患は癌である。
【0005】
癌は西洋社会における四大死の1つである。米国およびカナダにおいて、癌および癌による死の新規ケースの割合は1990〜1994年の間減少したが、米国において2,604,650人が1990〜1994年の間に癌で死亡したことがデータによって示されている(そのうち男性(53%)は女性(47%)より多かった)。最も一般的な癌による死の原因は、肺癌(728,641)、大腸および直腸癌(285,724)、乳癌(218,786)、および前立腺癌(169,943)であった。
【0006】
女性の間で最も一般的な癌は、乳癌(31%)、肺癌(12%)、大腸および直腸癌(12%)、子宮癌(6%)、卵巣癌(4%)であり、乳癌および卵巣癌は女性に見られるすべての癌の約35%を占める。これらの型の癌であると診断された女性の大多数は外科手術、放射腺治療または化学治療を組み合わせて受ける。
【0007】
癌の処置に用いられる化学治療剤は、(1)アルキル化剤、例えばメクロレタミン、クロロホスファミド、メルファラン、ウラシルムスタード、クロラムブシル、ブサルファン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾチシン、およびデクラバジン;(2)抗代謝産物、例えばメトトレキセート、フルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、シタラビン、アザラビン、イドキシウリジン、メルカプトプリン、アザチオプリン、チオグアニン、およびアデニンアラビノシド;(3)天然産物誘導体、例えばビンブラスチン、ビンクリスチン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ミトラマイシン、タキサン(例えばパクリタキセル)、ブレオマイシン、エトポシド、テニポシド、およびミトマイシンC;および(4)その他の物質、例えばヒドロキシ尿素、プロカルベジン、ミチタン、およびシスプラチナムを含むいくつかの広いカテゴリーに細分される。
【0008】
(通常有効量において)臨床の多剤耐性が観察された重要な癌化学治療剤には、ビンブラスチン(0.1mg/キログラム/週)、ビンクリスチン(0.01mg/キログラム/週)、エトポシド(35〜50mg/平方メートル/日)、ダクチノマイシン(0.15mg/キログラム/日)、ドキソルビシン(500〜600mg/平方メートル/週)、ダウノルビシン(65〜75mg/平方メートル/週)、およびミトラマイシン(0.025mg/キログラム/日)が含まれる。
【0009】
現在、化学治療剤に対する細胞の耐性を克服する有効な手段がないことは当業者によく理解されていることである。もっと重要なのは、毒性または副作用の付随する増大を伴なわずに化学治療剤のバイオアベイラビリティーを増大させる実際的な手段が存在しないことである。したがって、後天的または先天的な細胞の耐性に付随する問題を克服するか、あるいは少なくとも軽減する手段、ならびに化学治療剤のバイオアベイラビリティーを増大させる手段が必要がある。
【0010】
発明者らは以前に、化学治療剤のための薬物デリバリービヒクルとしてのヒアルロナン(HA)の有用性を研究し、HAがこれらの薬物と同時投与された場合に有用であることを発見した。この発明をカバーする国際特許出願PCT/AU00/00004を出願した(これは引用によりその全開示内容が本明細書中に包含される)。HAはまたヒアルロン酸として既知であり、これは直鎖のポリマーを含む天然に存在する多糖類であり、動物界中に遍在することがわかっている。HAは非常に水溶性であり、これにより生物系に関する理想的薬物デリバリービヒクルになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
国際特許出願PCT/AU00/00004の出願後、発明者らは驚くべきことに、HAが単独の物質として作用することを発見した。HAはヒト乳癌細胞、およびプレ感作細胞に対して細胞毒性効果を発揮し、それらを化学治療剤に対してより感受性にする。したがって本発明は、化学治療剤に対して耐性であったか、あるいは耐性になった細胞を有効に処置できる方法を提供する。さらに重要なことに、開示される方法を用いて、被験体に対する効力を減少させることなく化学治療剤の用量を減少させることができる。本発明の方法は、ヒアルロナンを単独で、あるいは化学治療剤と組み合わせて投与することを含む。
【0012】
本発明は、ヒアルロナン、その誘導体、アナログ、および塩がそれ自身細胞を阻害するだけでなく、標準的または、有効性が低いと思われる、より少ない用量の選択化学治療剤の安全な投与により、ヒト被験者を含む被験体を処置することを可能にするという発見に基づく。ヒアルロナンを化学治療剤と組み合わせてインビボ投与すると、難治性の細胞に対するこれらの物質の治療効果が高められ、これによりその後の多剤耐性の発生を防ぐ。
【0013】
疾患細胞、例えば癌細胞はしばしば、膜電位の変化のせいで、より透過性の膜を有するか、あるいはその細胞内分子輸送の調節を変更でき、その結果細胞膨張を生じさせ得る増大した受容体ステータスを有する(Lang et al., 1993)。発明者らは、いかなる理論によって結び付けられることをも望まないが、彼らは、HAが単独の物質として、ならびに治療剤の前処置として発揮する細胞性作用を説明できるいくつかの機構が存在することを仮定する:
1)HAがCD44、RHAMMおよび結合したスカベンジャー受容体に結合すると、HAの正味の負の電荷は細胞の膜電位を変化させ、細胞の透過性を増大させ、結果として疾患細胞へのより大量の薬物流入を可能にする。
2)HAが疾患細胞、例えば腫瘍細胞と結合し、内在化すると、細胞溶解を導く高浸透圧性が存在し得る。
3)HAは酸化的膜損傷を発揮し、アポトーシスを生じさせる。
4)HA内在化はミトコンドリア膜電位を高め、細胞死または増大した薬物保持を生じさせ得る。
【0014】
HAは飽和レベルで投与されるため、そのグリコサミノグリカンのコンスタントな内在化が存在し、これはHAの容量ドメイン内で平衡状態にある任意の治療剤を同時に内在化させ、薬物の濃縮された細胞内放出を生じさせることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の要旨
その最も広い側面では、本発明は、処置を必要としている被験体の処置方法であって、化学治療剤が単独で投与された場合よりもより有効であるように該化学治療剤と組み合わせて、該被験体に治療有効量のヒアルロナンを投与する工程を含む方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、化学治療剤のバイオアベイラビリティーを高める方法であって、それを必要としている患者に有効量のヒアルロナンを投与する工程を含む方法を提供する。
【0017】
ヒアルロナンを用いて、任意の投与される化学治療剤のバイオアベイラビリティーを大きく高めることができる。好ましくは、投与される化学治療剤は、カルマスチン(BCNU)、クロラムブシル(ロイケラン)、シスプラチン(プラチノール)、シタラビン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、フルオロウラシル(5−FU)、メトキセトレート(メキサート)、CPT111、エトポシド、プリカマイシン(plicamycin、ミトラシン)およびタキサン例えばパクリタキセルからなる群から選択されるものである。
【0018】
さらに別の態様では、本発明は、多剤耐性または薬物耐性細胞を処置または予防する方法であって、化学治療剤の投与前か、その投与といっしょにか、あるいはその投与後に、治療有効量のヒアルロナンを投与する工程を含む方法を提供する。
【0019】
以下により完全に記載されるように、ヒアルロナンおよび化学治療剤を投与すると、少なくとも50%まで;好ましくは60%;さらにより好ましくは70%以上の腫瘍生育の抑制が生じる。したがって、腫瘍生育および増殖の排除は、多剤耐性細胞の産生を排除し、癌の再発を減少させ、化学治療処置の効果を増大させる。
【0020】
本発明はさらに、ヒアルロナンを含む、化学治療剤に対する細胞の感受性を増大させる医薬組成物を提供する。ヒアルロナンおよび/または化学治療剤は、さらなる医薬的担体とともに投与してもよい。
【0021】
本発明はまた、癌細胞を処置する方法であって、その患者に治療有効量のヒアルロナンを投与する工程を含む方法を提供する。
【0022】
典型的に、その癌細胞は化学治療剤に耐性である。
【0023】
本発明のさらなる側面では、細胞の耐性を克服する方法であって、治療有効量のHAを投与する工程を含む方法を提供する。
【0024】
本明細書の詳細な説明および請求の範囲を通じて、用語「含む」およびそのバリエーション、例えば「含んでいる」などは「含むが、それらに制限されない」を意味し、他の追加物、成分、整数または工程を排除することを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、750,000ダルトンHAに24時間暴露され、その時点で写真撮影された、指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。10ng/mLでは、細胞数の減少が生じたが、形態の変化は見られなかった。100ng/mLおよび1μg/mLでは、細胞は浸透圧応答を受ける頂点を示し、細胞は膨張した。2mg/mLおよび5mg/mLでは、細胞は顆粒状になり、原形質膜が「へこみ」、浸透圧応答および/または細胞死の開始を示す可能性がある。
【図2a】図2a−2fは、750,000ダルトンHAに30分、1時間、または24時間暴露され、その時点でアドリアマイシンの濃度を変化させた、指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。これらの図はまた、1または3日間のHA/薬物同時インキュベーションの効果を示す。これらの図は、HAが細胞を「プレ感作」し、ならびに/あるいは治療薬に対して細胞を化学感作させることができることを示す。
【図2b】図2a−2fは、750,000ダルトンHAに30分、1時間、または24時間暴露され、その時点でアドリアマイシンの濃度を変化させた、指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。これらの図はまた、1または3日間のHA/薬物同時インキュベーションの効果を示す。これらの図は、HAが細胞を「プレ感作」し、ならびに/あるいは治療薬に対して細胞を化学感作させることができることを示す。
【図2c】図2a−2fは、750,000ダルトンHAに30分、1時間、または24時間暴露され、その時点でアドリアマイシンの濃度を変化させた、指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。これらの図はまた、1または3日間のHA/薬物同時インキュベーションの効果を示す。これらの図は、HAが細胞を「プレ感作」し、ならびに/あるいは治療薬に対して細胞を化学感作させることができることを示す。
【図2d】図2a−2fは、750,000ダルトンHAに30分、1時間、または24時間暴露され、その時点でアドリアマイシンの濃度を変化させた、指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。これらの図はまた、1または3日間のHA/薬物同時インキュベーションの効果を示す。これらの図は、HAが細胞を「プレ感作」し、ならびに/あるいは治療薬に対して細胞を化学感作させることができることを示す。
【図2e】図2a−2fは、750,000ダルトンHAに30分、1時間、または24時間暴露され、その時点でアドリアマイシンの濃度を変化させた、指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。これらの図はまた、1または3日間のHA/薬物同時インキュベーションの効果を示す。これらの図は、HAが細胞を「プレ感作」し、ならびに/あるいは治療薬に対して細胞を化学感作させることができることを示す。
【図2f】図2a−2fは、750,000ダルトンHAに30分、1時間、または24時間暴露され、その時点でアドリアマイシンの濃度を変化させた、指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。これらの図はまた、1または3日間のHA/薬物同時インキュベーションの効果を示す。これらの図は、HAが細胞を「プレ感作」し、ならびに/あるいは治療薬に対して細胞を化学感作させることができることを示す。
【図3a】図3a−3dは、種々の濃度の750,000ダルトンヒアルロナンに1時間、24時間または3日間暴露された後、1時間、24時間または3日間の種々の時間、40nMアドリアマイシンで処理された指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。これらの図は、広い濃度範囲のヒアルロナンが化学感作剤として作用するか、あるいは細胞毒性作用を発揮することができることを示す。
【図3b】図3a−3dは、種々の濃度の750,000ダルトンヒアルロナンに1時間、24時間または3日間暴露された後、1時間、24時間または3日間の種々の時間、40nMアドリアマイシンで処理された指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。これらの図は、広い濃度範囲のヒアルロナンが化学感作剤として作用するか、あるいは細胞毒性作用を発揮することができることを示す。
【図3c】図3a−3dは、種々の濃度の750,000ダルトンヒアルロナンに1時間、24時間または3日間暴露された後、1時間、24時間または3日間の種々の時間、40nMアドリアマイシンで処理された指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。これらの図は、広い濃度範囲のヒアルロナンが化学感作剤として作用するか、あるいは細胞毒性作用を発揮することができることを示す。
【図3d】図3a−3dは、種々の濃度の750,000ダルトンヒアルロナンに1時間、24時間または3日間暴露された後、1時間、24時間または3日間の種々の時間、40nMアドリアマイシンで処理された指数関数的に増殖する乳癌細胞を示す。これらの図は、広い濃度範囲のヒアルロナンが化学感作剤として作用するか、あるいは細胞毒性作用を発揮することができることを示す。
【図4】図4は、6週間の実験を通じて観察された非処理の毒性が存在することを示す。5−FU処理群と比較して、単独の物質または化学感作剤としてのHA治療を受けたマウスは高められた健康を示し、ここでは動物は体重を失わず、その体重量を維持した。
【図5】図5は、6週間の実験の終了時点で、腫瘍重量を測定したところ、HA化学感作治療が食塩水群、HAおよび5−FU群より有意に小さい腫瘍を生じた(p=0.005)ことを示す。単独物質としてのHAはまた、食塩水コントロールと比べて主な腫瘍重量を減少させることによりその作用を示した。処置の最初の2週間は、腫瘍応答の大きな差異が観察されなかったが、その後、HA次いで5−FU腫瘍増殖は、他の処置群と比べて妨げられた。6週間の処置の間、腫瘍倍増サイクル数において興味深い差異が観察された。食塩水処置を受けたマウスは平均4腫瘍倍増を受けたが、一方、処置計画にHAを包含させると、腫瘍倍増時間が有意に増大し、ここにHA/5−FU動物が1腫瘍倍増サイクルの平均を受け、これは5−FU細胞毒性に対するHAの効果を再び際立たせる。
【図6】図6は、HAを同時投与すると、非リンパ性転移の有意な減少が生じることを示す。HA治療を受けたマウスを除き、初期腫瘍の近傍部分の頚部または腕下領域まわりに新規腫瘍が観察された。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本発明の方法および組成物は、化学治療剤、例えば、パクリタキセルのような抗癌剤、鎮痛薬、鎮静剤、ホルモンまたは抗生物質などに対する細胞の感受性を増大させるのに有用である。特に、本発明の方法および組成物は、細胞増殖性障害(例えば新生物)に関する細胞の感受性を増大させるのに有用である。非癌細胞への付随する毒性を伴わなずに効力を増大させることによって、本発明は、腫瘍を処置し、細胞毒性の結果としての再発および死亡の機会を予防するか、あるいは減少させるのに有用な方法および組成物を提供する。さらに、本発明は、多剤耐性表原型を導く任意の突然変異の前に癌細胞を排除することによって、多剤耐性細胞の数を排除または減少させる。したがって、多剤耐性腫瘍細胞が生じるのを減少させることにより、本発明は現在の治療様相の不十分な箇所を満足させる。
【0027】
本明細書中で用いられる用語「被験体」とは、化学治療剤での処置を必要とする疾患または症状であって、ここにこの化学治療剤は望ましいものと比較して減少した効力を有している疾患または症状を有する任意の動物を表す。好ましくはこの被験体は細胞増殖性障害(例えば新生物障害)を患っている。本発明の目的の被験体には、哺乳類(例えばウシ、イヌ、ウマ、ネコ、ブタ)および、好ましくはヒトが含まれるがこれらに制限されない。
【0028】
「細胞増殖性障害」とは、細胞または細胞群が正常でない増殖、典型的には異常型増殖を示すことを意味し、これにより新生物、腫瘍または癌が導かれる。
【0029】
細胞増殖性障害には、例えば乳癌、肺癌、前立腺癌、腎臓癌、皮膚癌、神経癌、卵巣癌、子宮癌、肝臓癌、膵臓癌、内皮癌、胃癌、腸癌、外分泌腺癌、内分泌腺癌、リンパ性癌、造血系の癌または頭部および頚部組織の癌が含まれる。
【0030】
一般には、新生物性疾患は正常でない細胞増殖が新生物または腫瘍と称される組織塊を生じさせる症状である。新生物は構造および行動における種々の程度の異常性を有する。良性の新生物があり、また他のものは悪性あるいは癌性である。新生物疾患の有効な処置は、癌予防性または治療用手法に関する調査に対して貴重な貢献をすると考えられるだろう。
【0031】
本発明の方法には、一態様において、(1)化学治療剤の投与前、その投与と同時、あるいはその投与後のヒアルロナンの投与;または(2)ヒアルロナンおよび化学治療剤の組み合わせの投与が関与する。
【0032】
本明細書中で用いられる用語「治療有効量」とは、所望の治療応答を生じさせるのに有効な本発明の化合物量を意味する。例えば癌を予防するか、あるいは宿主における癌の徴候を処置するため、あるいは癌を処置するのに有効な量。
【0033】
具体的な「治療有効量」は、明らかなように、処置されるべき具体的な症状、患者の身体状態、処置される哺乳類のタイプ、処置期間、(存在すれば)同時治療の性質、および用いられる具体的製剤およびその化合物またはその誘導体の構造などの要因に応じて変化する。
【0034】
本明細書中で用いられる用語「医薬的担体」とは、ヒアルロナンおよび/または化学治療剤を動物またはヒトにデリバリーするための、製薬的に許容される溶媒、懸濁化剤またはビヒクルである。担体は液状物または固形物であってよく、計画される投与様式に応じて選択される。
【0035】
本明細書中で用いられる用語「癌」とは、哺乳類に見られるすべてのタイプの癌または新生物または悪性腫瘍を表す。癌には、肉腫、リンパ腫および他の癌が含まれる。例は以下のタイプであるが、これらの具体的タイプの癌に制限することを意図しない:
前立腺癌、大腸癌、乳癌、MX−1およびMCFライン、膵臓癌、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、ホーム、肺癌、マウス癌、黒色腫、白血病、膵臓癌、黒色腫、卵巣癌、脳の癌、頭部および頚部の癌、腎臓癌、中皮腫、肉腫、カポジ肉腫、胃癌および子宮癌。
【0036】
本明細書中で用いられる用語「細胞」とは、哺乳類細胞(例えばマウス細胞、ラット細胞またはヒト細胞)を含むがこれらに制限されない。
【0037】
ヒアルロナンおよび/または化学治療剤は、慣用の製薬的に許容される非毒性担体、アジュバント、およびビヒクルを含有する単位投与製剤として、経口、局所、または非経口投与することができる。本明細書中で用いられる用語「非経口」には、皮下注射、エアロゾル、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、頭蓋内、胸骨内注射または注入技術が含まれる。
【0038】
本発明はまた、本発明の処置の新規方法において用いるための、適当な局所、経口、および非経口医薬製剤を提供する。本発明の化合物は、錠剤、水性または油性懸濁剤、ロゼンジ剤、トローチ剤、粉末剤、顆粒剤、エマルジョン、カプセル剤、シロップ剤またはエリキシル剤として経口投与することができる。経口使用のための組成物には、医薬的に質が高く、快適な調製物を製造するために、甘味料、香料、着色料および保存剤からなる群から選択される1またはそれ以上の物質を含ませることができる。錠剤には、活性成分を、錠剤の製造に適する無毒の製薬的に許容される賦形剤と混合して含ませる。
【0039】
これらの賦形剤は、例えば、(1)不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;(2)顆粒化剤および崩壊剤、例えばコーンスターチまたはアルギン酸;(3)結合剤、例えばデンプン、ゼラチンまたはアカシア;および(4)滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクであってよい。これらの錠剤はコーティングしなくてもよいし、既知の技術によりコーティングして、胃腸管における崩壊および吸収を遅延させ、これにより、より長い期間にわたって持続した活性を提供してもよい。例えば、時間遅延物質、例えば一ステアリン酸グリセロールまたは二ステアリン酸グリセロールを用いることができる。また米国特許第4,256,108号;第4,160,452号;および第4,265,874号に記載の技術を用いてコーティングを行い、コントロール放出用の浸透圧性治療錠剤を形成させてもよい。
【0040】
本発明方法に有用なヒアルロナンならびに化学治療剤は、インビボ適用に関して、注射によるか、あるいは独立にあるいはいっしょに、経時的段階的灌流により、非経口的に投与することができる。投与は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、または経皮的であってよい。インビトロ研究では、この物質を適当な生物学的に許容されるバッファーに加えるか、あるいは溶解させ、細胞または組織に加えることができる。
【0041】
非経口投与用の調製物には、滅菌水性または非水性溶液剤、懸濁剤、およびエマルジョンが含まれる。非水性溶媒の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブオイル、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルエステルがある。水性担体には、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョンまたは懸濁液(食塩水および緩衝化溶媒を含む)が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンガー静脈内ビヒクル(液体および栄養補充物を含む)、電解液補充物(例えばリンガーデキストロースに基づくもの)などが含まれる。また保存剤および他の添加剤、例えば抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、成長因子および不活性ガスなどが存在してもよい。
【0042】
本発明を用いて、例えば新生物、癌(乳癌、肺癌、腎臓癌、皮膚癌、神経癌、卵巣癌、子宮癌、肝臓癌、膵臓癌、内皮癌、胃癌、腸癌、外分泌腺癌、内分泌腺癌、リンパ系の癌、造血系の癌または頭部および頚部組織の癌)、線維性障害などを含む細胞増殖障害に関連する病因を処置できることが想定される。
【0043】
また本発明の方法および化合物は、化学治療剤処置に関連する他の疾患、例えば神経退化障害、ホルモン不均衡などの処置に用いることができる。したがって、本発明は、細胞増殖、新生物、癌などに関連する障害を改善する方法であって、この障害を有する被験体の障害部位において、細胞増殖またはその障害を阻害または改善するのに十分な量のヒアルロナンおよび化学治療剤で処置することを含む方法を含む。
【0044】
一般に、本明細書中で用いられる用語「処置する」、「処置」などは、被験体、組織または細胞に影響し、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味する。この効果は、完全にあるいは部分的に細胞増殖性障害またはその徴候または症状を妨害するか、ならびに/あるいは障害および/または、例えば異常細胞増殖に帰する有害作用を部分的または完全に治療するという点で、治療的であってよい。本明細書中で用いられる「処置する」とは、脊椎動物、哺乳類、特にヒトにおける細胞増殖性障害の任意の処置または予防を包含し、これには以下が含まれる:
(a)障害にかかりやすいかもしれないが、まだその障害を有すると診断されたことがない被験体において障害が発生するのを防ぐこと;
(b)障害を阻害する、すなわちその発達を休止させること;または
(c)障害を救出するか、あるいは改善する、すなわち障害の退行を生じさせること。
【0045】
本発明は、新生物、癌などを含む細胞増殖性障害の改善に有用な種々の医薬組成物を含む。本発明の一態様にしたがう医薬組成物は、担体、賦形剤および添加剤または補助剤を用い、被験体への投与に適当な剤型としたヒアルロナン、そのアナログ、誘導体または塩および1またはそれ以上の化学治療剤を用いて調製する。よく用いられる担体または補助剤には、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトールおよび他の糖、タルク、ミルクプロテイン、ゼラチン、デンプン、ビタミン、セルロースおよびその誘導体、動物性および植物性油、ポリエチレングリコールおよび溶媒、例えば滅菌水、アルコール、グリセロールおよび多価アルコールが含まれる。静脈内ビヒクルには、液体および栄養素補充物が含まれる。保存剤には、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスが含まれる。他の製薬的に許容される担体には、水性溶液、無毒の賦形剤(塩、保存剤、バッファーなどを含む)が含まれる(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th ed. Easton: Mack Publishing Co., 1405-1412, 1461-1487 (1975) および The National Formulary XIV., 14th ed. Washington: American Pharmaceutical Association (1975)(これらの内容は引用により本明細書中に包含される)に記載されている)。医薬組成物のpHおよび種々の成分の正確な濃度は、当分野の慣用技術にしたがって調節する。Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis for Therapeutics (7th ed.) を参照。
【0046】
医薬組成物は好ましくは投与単位で製造し、投与する。固形投与単位は錠剤、カプセル剤および坐剤である。被験体の処置では、化合物の活性、投与様式、障害の性質および重篤度、被験体の年齢および体重に応じて、種々の毎日の用量を用いることができる。しかし、特定の環境下では、より大量またはより少量の毎日の用量が適当であり得る。毎日の用量の投与は、個別の投与単位またはいくつかのより少量の投与単位の剤型における単一投与および特定の間隔で細分された用量の複数回投与の両者によって行うことができる。
【0047】
本発明に記載の医薬組成物は、治療有効用量を局所性投与あるいは全身性投与することができる。この使用に関する有効量は、もちろん、疾患の重篤度および被験体の重量および全体的状態に依存する。典型的には、インビトロで用いられる投与量は、この医薬組成物のインサイチュ投与に有用な量の指標を提供することができ、動物モデルを用いて具体的障害の処置に関する有効量を決定することができる。種々の考察は、例えば Langer, Science, 249: 1527, (1990) に記載されている。経口使用用の製剤は、活性成分が不活性固形希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合されているゼラチン硬カプセルの剤型であってよい。これらはまた、活性成分が水または油状溶媒、例えば落花生油、液状パラフィンまたはオリーブ油と混合されているゼラチン軟カプセルの剤型としてもよい。
【0048】
水性懸濁剤は通常、活性物質を水性懸濁剤の製造に適当な賦形剤と混合して含む。このような賦形剤は、(1)懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガム;(2)分散剤または湿潤剤(これらは(a)天然に存在するホスファチド、例えばレシチン;(b)酸化アルキレンと脂肪酸の縮合産物、例えばポリオキシエチレンステアラート;(c)酸化エチレンと長鎖脂肪族アルコールの縮合産物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール;(d)酸化エチレンと、脂肪酸およびヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合産物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート、または(e)酸化エチレンと、脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導された部分エステルの縮合産物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートであってよい)であり得る。
【0049】
医薬組成物は滅菌注射用水性懸濁液または油性懸濁液の剤型であってよい。この懸濁液は、上記適当な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いる既知の方法にしたがって製剤化することができる。この滅菌注射用調製物はまた、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液剤または懸濁剤、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液剤であってよい。使用可能な許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンガー溶液、および等張性塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌、固定油は溶媒または懸濁媒体として慣用的に用いられる。この目的のため、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の低刺激性固定油を用いることができる。さらに、オレイン酸のような脂肪酸は注射剤の製造に用途がある。
【0050】
本発明の、化学治療剤と組み合わされたヒアルロナンはまた、リポソームデリバリー系、例えば小単層性小胞、大単層性小胞、および多層性小胞の剤型で投与することができる。リポソームは種々のリン脂質、例えばコレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンから形成することができる。
【0051】
本発明化合物の投与量は、約0.5mg〜約10mg/kg体重のオーダーであり、好ましい投与量は、約5mg〜約20mg/kg体重/日(約0.3gm〜約1.2gm/患者/日)の範囲である。担体物質と混合されて、単一の用量を生じさせることができる活性成分の量は、処置される宿主および具体的な投与様式に応じて変化するだろう。例えば、ヒトへの経口投与に関して意図される製剤には、約5mg〜1gの活性化合物を、適当かつ好都合な量の担体物質(これは全組成物の約5〜95パーセントまで変化し得る)とともに含ませることができる。単位投与剤型は一般に、約5mg〜500mgの活性成分を含むだろう。
【0052】
しかし、任意の特定の患者に関する具体的用量レベルは、用いられる具体的化合物の活性、年齢、体重、全体的健康、性別、食事、投与期間、投与経路、排泄頻度、薬物コンビネーション、および治療を受ける具体的疾患の重篤度を含む種々の要因に依存することが理解されよう。
【0053】
さらに、本発明の化合物には、水または一般的有機溶媒と溶媒和物を形成し得るものがある。このような溶媒和物は本発明の範囲内に含まれる。
【0054】
本発明の化合物は、さらに他の化合物と混合することができ、効力のある混合物を提供できる。その組み合わせが本発明のヒアルロナンの活性を排除しない限り、化学治療剤の化学的にコンパチブルな任意の組み合わせを含むことが意図される。
【0055】
単に以下の非制限的実施例に言及し、本発明をさらに記載する。しかし、以下の実施例は単に例示的であり、いかなる意味においても上記本発明の一般性を制限するものとして理解されるべきでない。特に、本発明は癌に関連して詳細に記載されているが、本明細書中の発見は癌の処置に制限されないことが明らかに理解されよう。例えばHAは他の症状の処置に用いることができる。
【実施例】
【0056】
実施例1
ヒアルロナンおよび5−フルオロウラシル溶液の製造
すべてのインビトロおよびインビボ実験で用いるHAは Kyowa Hakko Kogyo (Yamaguchi, Japan) から入手した。5−FUは Sigma,St. Louis, USA から入手した。アドライマイシン (Adraimycin) は Cytomix, Northcote, Melbourne, Australia から入手した。用いたHAの標準的プロファイルは表1に示すものである。
表1
ヒアルロナンバルク乾燥粉末に関する説明シート
【表1】
【0057】
ピロゲンを含まない注射用等級水に乾燥HA(様式上、Mr 7.5×105kDa)を溶解することによって、HA溶液の10mg/mLストックを製造した。均質の溶液を保証するため、HAを4℃で一晩の後、ボルテックスして溶解した。ストック溶液の製造中、HAがその分子量を維持していることを保証するために、この溶液を Sepacryl S-1000 サイズ排除ゲル(カラム仕様、1.6cm×70cm、サンプルサイズ2mL、フロー速度18mL/hおよび2mL フラクションサイズ)で分析した。カラムフラクション中、ウロン酸アッセイによってヒアルロナンを検出した。
【0058】
ウロン酸アッセイを用いて、ゲルろ過クロマトグラフィー手順より収集したフラクションからヒアルロナンの存在を定性的に検出した。次いで各フラクションの25μL量を96ウェルプレートに移した。次いでカルバゾール試薬(3M カルバゾール/0.025M ボレート(H2SO4中))250μLをこれらのフラクションに加えた。96ウェルプレートを80℃で45〜60分インキュベートした。550nmフィルターを有する Dynatech MR7000 プレートリーダーを用いて96ウェルプレートを読み取った。吸光度がバックグラウンド吸光度より>3標準偏差になった時点で有意であると考えた。バックグラウンドは、V0およびVt前後の同数のサンプルポイントをとる(ここでとった平均数は16)ことによって計算した(Fraser et al. 1998)。
【0059】
粉末にした5−FUを0.1M NaOH(pH8.9)中に溶解して5−FUのストック溶液を調製し、ピロゲンを含まない注射等級0.9%w/v NaClを用いて濃度1mg/mLにした。この保存溶液を0.22μmフィルターに通してろ過し、確実に滅菌した。必要量のストック溶液を上記のセルライン特異的生育培地に加えて、5−FUを希釈した。
【0060】
Cytomix から0.9%NaCl中のアドリアマイシンの10mg/mL溶液を得た。
【0061】
実施例2
癌細胞形態に対するヒアルロナンの影響の試験
HA結合親和力(Culty et al, 1994)およびCD44およびRHAMMのHA受容体の発現(Wang et al, 1996)に基づいてヒト胸腺癌セルラインMDA−MB−468、MDA−MB−435およびMDA−MB−231を選択した。これらのセルラインの特徴を表2に示す。
表2
ヒト乳癌セルラインのヒアルロナン結合および受容体発現
【表2】
a:Culty et al, 1994
b:Wang et al, 1996
【0062】
セルラインMDA−MB−468、MDA−MB−435およびMDA−MB−231を慣用的に培養し、175cm2培養フラスコ中の10%胎児ウシ血清(FCS)および抗生物質/抗真菌性試薬を補充した Leibovitz L−15培地において、100%(v/v)空気が入った湿度コントロールインキュベーター中37℃で、単層として、サブクローニングした。
【0063】
グルタミンを含む Leibovitz-L-15(10×濃縮物)、RPMI(10×濃縮物)、イーグル基本培地(Eagle basal medium, EBM、10×濃縮物)、20mM HEPES、0.09% w/v ビカルボナート、ハンク平衡塩類溶液(HBSS、10×濃縮物)および、カルシウムおよびマグネシウムを含まないダルベッコリン酸緩衝塩類溶液(PBS、10×濃縮物)はSigma(St Louis, Mo., USA)から購入した。粉末濃縮物を必要量の逆浸透脱イオン化ピロゲン不含蒸留水に溶解し、単一強度溶液を作成し、0.22μm高圧ろ過(Millipore Corporation, MA. U.S.A.)によって滅菌し、4℃で保存した。FCSは CSL Ltd., Australia から購入した。FCSは−20℃で保存した。10,000ユニットのペニシリン、ストレプトマイシン10mgおよびアンホテリシン25μg U/mLを含む抗生物質/抗真菌性試薬溶液(100×濃縮物)はSigma(St Louis, USA)から得た。0.9% w/v 塩化ナトリウム中、ブタトリプシン5gおよびEDTA2g/Lを含むトリプシン/EDTA溶液(10×濃縮物)はSigma(St Louis, Mo., USA)から得た。すべての乳癌セルラインはAmerican tissue culture collection (Rockville, USA) から購入した。すべてのプラスチック製使い捨て培養容器は Greiner (Austria) から購入した。8ウェル、組織培養顕微鏡スライドグラスは Linbro (Flow Laboratories, VA, USA) から得た。
【0064】
この試験では、MDA MB−468、MDA MB−231およびMDA MB−435セルラインを、10% FCSを補充した90% Leibovitz L−15培地で培養した。集密した後、培養をHBSS中で1×洗浄し、0.25% トリプシン/0.05% EDTA中でトリプシン処理した。塩類溶液15mL+細胞懸濁液0.2mLを加えて、この細胞懸濁液を自動細胞カウンター(ZM-2 Coulter Counter)を用いてカウントした。
【0065】
細胞を多数の
MDA MB−468:25,000細胞/mL培地
MDA MB−231:12,000細胞/mL培地
MDA MB−435:12,000細胞/mL培地
に再懸濁した。ウェル当たり細胞懸濁液1mLを加えて細胞を48ウェルプレート(1cm2表面領域)にプレートした。細胞を24時間付着させた後、培地を除去し、単層を洗浄した。試験培地は;0〜1μM アドリアマイシンまたは5−フルオロウラシルを含む培養培地であって、0〜1μMのHA(形式上Mw 750,000)を加えるか、あるいは加えないものであった。この細胞をいくつかの組み合わせのHAおよび薬物に、種々の時間および種々の濃度で暴露した(表3)。
【0066】
表3
ヒアルロナンおよび薬物に関する、ヒト乳癌セルラインとのインキュベーション条件
【表3】
【0067】
インキュベーションおよび培養期間の後、細胞単層をHBSSで洗浄し、0.25% トリプシン/0.05% EDTA中でトリプシン処理した。塩類溶液15mL+細胞懸濁液0.2mLを加えることによってこの細胞懸濁液を自動細胞カウンター(ZM-2 Coulter Counter)を用いてカウントした。結果は以下のように計算し、薬物なしコントロールの%として記載した:
【数1】
。
あるいは実験に基づいて以下のように計算し、薬物コントロールの%として記載した:
【数2】
。
【0068】
実施例2に記載の指数関数的に生育するヒト乳癌細胞MDA MB 231を0−5mg/mL(形式上Mr 750,000D)と24時間インキュベートした。24時間の時点で、細胞をカウントし、CPR(1600フィルムは Eastman Kodak Company, Rochester, USA より得た)を用いて写真撮影した。
【0069】
HAを乳癌細胞と30分、1時間、24時間または3日間インキュベートすると、変化した応答が観察され、乳癌細胞数の減少は0〜29%の範囲であった(表4参照)。
【0070】
表4
ヒト乳癌セルラインに対するHAの細胞毒性作用
【表4】
*値は2〜3回の測定の平均である。
【0071】
また、ヒト乳癌細胞をHAとインキュベートすると、特定の形態変化(図1参照)、例えば原形質膜の膨張、サイトゾル成分のより多大な顆粒化が観察された。
【0072】
ヒト乳癌細胞をHAに30分、1時間、24時間または3日間暴露した後、アドリアマイシンに暴露すると、HAは薬物の細胞毒性を高めることがはっきりわかった(図3および表5)。
【0073】
表5
乳癌セルラインのアドリアマイシンの細胞毒性に対するHAの作用
【表5】
すべての値は2〜3回の実験の範囲を表し、ここに数値は、薬物にHAを加えるか、あるいは薬物添加前に癌細胞をHAでプレ感作することによって達成されるIC50減少の倍率である。
【0074】
実施例3
ヒアルロナンのインビボ効力
実施例2のインビトロ薬物感受性実験の結果に基づいて、ヒト乳癌のインビボ処置において、単独物質として、および化学増感剤としてのヒアルロナンの処置効力を評価した。
【0075】
実施例2の結果から、癌セルラインMDA−MB−468を任意のヌードマウスヒト腫瘍異種移植片の作成に関する接種源として選択した。細胞を慣用の手順で培養し、上記実施例2に記載のようにサブカルチャーした。マウスへの注射用に、細胞を100%集密まで培養し、0.025%トリプシン/0.01% EDTA溶液中でトリプシン処理し、Beckman TJ-6 bench centrifuge 中、400gavで10分間遠心分離して2回洗浄し、Model-ZM Coulter カウンターを用いてカウントし、血清を含まない Leibovitz L-15 培地中、1×108細胞/mLで再懸濁した。
【0076】
Walter and Eliza Hall Research Institute, Melbourne Australia から購入した6〜8週齢胸腺欠損CBA/WEHIヌード雌性マウスを特定の病原を含まない条件下、無菌のえさおよび水を自由に摂取できるようにして維持した。各マウスは50μL中に5×106細胞を含む1回の注射を受けた。この細胞は、26ゲージ針を用いて乳脂肪床(mammary fat pad)内へ第一乳頭下に直接注射した(Lamszus et al, 1997)。腫瘍測定は毎週行い、3垂直直径(d1d2d3)を測定した。腫瘍容量は、式:
【数3】
を用いて評価した。
癌細胞接種約4〜8週間後に5−FU+HAでの処理を開始した。各実験において用いたマウスに関する平均腫瘍サイズを表6にまとめる。
【0077】
表6
各実験の開始時のヒト乳癌腫瘍のまとめ
【表6】
【0078】
腫瘍誘導の約8週間後、腫瘍を有する2マウスに致死量のネンブタールを与えた。マウスを犠牲にし、3分以内に、腫瘍を外科的に取り出し、直ちに10%緩衝化ホルマリン中で12時間固定した。固定された腫瘍を一連の70〜100%エタノールで一晩脱水し、次いでパラフィン包埋し、これから2〜4μmセクションをカットした。このセクションをスライドグラスに載せ、脱ワックスし、水に入れた。スライドグラスをPBS中3×5分洗浄した。異種親和性タンパク質を10%胎児ウシ血清と10分間インキュベートし、次いでPBS洗浄することによってブロックした。
【0079】
HAおよびHAシンターゼ抗体の視覚化に用いられる二次抗体は Dako (California, U.S.A.) から購入した。3,3'−ジアミノベンジジン(Sigma Fast DAB)錠は Sigma, St. Louis, USA から得た。
【0080】
検出抗体は室温で60分間適用した。検出抗血清または抗体はRHAMM、CD44HおよびCAEに対するものであった。スライドグラスをPBS中で3×5分間洗浄し、メタノール中の0.3%H2O2に浸漬して内因性ペルオキシダーゼ活性をブロックした。さらにPBSで洗浄した後、ペルオキシダーゼコンジュゲート化ブタ抗ウサギ二次抗血清を室温で60分間適用し、次いでPBS中で3×5分間洗浄した。Sigma Fast 3,3'−ジアミノベンジジン錠(DAB)を製造元の指示書にしたがって調製し、DAB溶液を室温で5〜10分間適用した。スライドグラスをtap水で10分間洗浄し、ヘマトキシリンで対比染色し、脱水し、マウントした。
【0081】
個々のマウス体重に応じて、50μL中30mg/kgの5−FU(平均体重60kgに関するヒト治療用量10.5mg/kgに相当;Inaba et al, 1988)をデリバリーするように個々の5−FU注射を調製した。12.5mg/マウス体重kgに相当する最終HA濃度を含むHA注射は50μL中12.5mg/kgのHAをデリバリーするように調製した。この量のHAを体内に注射すると、実験期間中、飽和キネティクスが観察されるだろう(Fraser et al, 1983)。
【0082】
ヒト乳癌に関して最も一般に用いられる処置療法の1つはシクロホスファミド、メトトレキセートおよび5−フルオロウラシルであり、これを28日サイクルの1および8日に投与する。ヒト乳癌では、初期の処置療法は6サイクル間であり、この時点で患者の症状を再評価し、したがってマウスを長期間効力実験における6サイクル(6月)の処置および6サイクル(6週)短期間効力実験に暴露することによってできるだけ綿密にヒト処置療法をシミュレーションすることを試みた。マウスのライフサイクルが約2年巻であることを考慮し、短期間および長期間処置プロトコルを開始した(表7を参照)。
【0083】
表7
処置投与プロトコル
【表7】
【0084】
マウスを無作為に、短期間実験用には群当たり8動物の7群に分け、長期間実験用には8動物の5群に分けた(用量および処置投与計画に関しては表7を参照)。
【0085】
6月以上続く化学治療が一般により大きな効果に結び付かないことが示されていた(Harris et al, 1992)ので、処置は6月計画を越えて延長しなかった。
【0086】
長期間実験に関して処置適用の日に、動物の体重を量り、腫瘍容量を測定した。6週間実験では、毎日、動物の体重を量り、腫瘍容量を測定した。動物を個別に注射用ボックスに入れ、尾静脈を介して注射を投与した。ストレスが化学療法に応答する患者の主要な要因であり得ることが実験的に証明されていた(Shackney et al, 1978)ので、それぞれのおりに同数のマウスを入れ、実験の段階に応じており当たりの動物数が5〜8で変化するようにした。
【0087】
実験終了時点は、疾患進行程度のせいで動物を安楽死させなければならない時または6月(長期間)または6週(短期間)処置計画が完了した時であった。動物倫理ガイドラインに応じて、疾患進行の程度を評価する独立した動物倫理職員が動物を2週間に1回モニターした。以下の範疇を用いて、動物が死を必要とする実験終了時点の段階に達したかどうかを決定した:
1)動物が動けないほど腫瘍重量が大きくなった場合;
2)動物が飲食しなくなり、劇的な体重喪失を経験した場合;
3)腫瘍サイズが体重の10%以上になった場合。
【0088】
実験終了時点では、ネンブタール(60mg/mL)の0.1mL腹腔内注射によって動物を麻酔し、血液を集めた後、頸部脱臼によって動物を犠牲にした。
【0089】
マウスを犠牲にした後すぐに、腫瘍、肝臓、心臓、脾臓、膀胱、左および右腎臓、子宮、肺、胃、腸、脳およびリンパ節を切り出し、0.06Mホスフェート(pH7.5)で緩衝化された4%ホルマリンおよびセチルピリジニウムクロライド1.0%w/vに入れた。この組織を16〜24時間固定した後、組織学的に処理した。固定された組織を段階的に100%エタノールまで脱水し、パラフィンブロックに包埋し、ここから2〜4μmのセクションを顕微鏡スライドグラスに置いた。ヘマトキシリン核染色およびエオシン細胞質染色を用いてこの組織セクションを染色し、処置毒性を示し得るすべての病理学的特徴を強調した。
【0090】
9〜11のリンパ節を動物ごとに集め、腫瘍領域を排出するすべての節が確実に収集されるようにした。現在、リンパ節転移の検出に用いられる2つの方法が存在する:
i)総器官構造の慣用的ヘマトキシリンおよびエオシン染色;および、
ii)癌マーカー、例えば癌胎児性抗原を用いる免疫組織化学。
【0091】
転移検出の両方法をこの実験において用いた。すべての市販CEA抗体がヒト乳癌細胞と反応するわけではないため、5つの異なる抗体の反応性を試験した(DAKO, Amersham and KPL)。
【0092】
ヘマトキシリンおよびエオシン染色されたリンパ節は Dr P. Allen (免許を有する病理学者)が試験し、各節は顕微鏡下で腫瘍細胞の存在に関して試験された。CEA免疫染色されたリンパ節は顕微鏡下で試験し、すべての正に染色された節をカウントし、リンパ節転移に関して正のものを考慮した。
【0093】
腫瘍容量はキャピラリー測定によって毎日あるいは毎週モニターし、前記のように計算した。6週実験の最後に、腫瘍重量を測定した。ここでは、図6に示されるように、HA化学感作治療は食塩水群、HAおよび5−FU群より有意に小さい腫瘍を有した(p=0.005)。処置の最初の2週間は腫瘍応答に有意な差異は見られなかったが、その後、HA次いで5−FU腫瘍生育は他の処置群と比較して妨げられた。6週間の処置の間、腫瘍倍増サイクル数に興味深い差異が見られた。食塩水処置を受けたマウスは平均4腫瘍倍増を経験し、HAを処置計画に包含すると腫瘍倍増時間が有意に増加し、HA/5−FU動物は平均1腫瘍倍増サイクルを経験し、5−FU細胞毒性に対するHAの効果が再び強調される。
【0094】
すべての動物は、初期腫瘍に隣接するリンパ節におけるリンパ節転移を表した。リンパ節関与(動物当たりの転移性節数)のパーセンテージは、HA次いで5−FU、5−FUおよびHA処置によって大きく減少し、食塩水群はリンパ節関与量の6倍増加を示した。他の処置群は12.2〜14.3%の有意に少ないパーセンテージを示した(Dunnett's Multiple Comparison Test, p=<0.001)。
【0095】
HAを同時に投与すると、非リンパ系転移の有意な減少が生じた。HA治療を受けたマウスを除き、初期腫瘍に隣接する領域の頸または腕の下領域のまわりに新規腫瘍が観察された。
【0096】
胃腸管毒性:
5−FUの最も一般的な毒性作用の1つは胃腸管に対するものであり、出血性腸炎および出血性穿孔が生じ得る(Martindale, 1993)。動物をGI管不調、例えば下痢に関して毎日モニターし、より深刻な毒性現象、例えば体重喪失に関して毎週モニターした。体重喪失は、Shibamoto et al, 1996 に引用されるように1g×腫瘍容量(cm3)として計算された腫瘍重量を差し引くことによって見積もった正味の体重を計算することによってモニターした。すべての重量変化を示すために、以下のように動物の体重を処置開始の時点での体重に対して標準化した:
【数3】
。
【0097】
6週実験を通して処置毒性は見られなかった。5−FU処置群と比較して、HA治療を単独物質としてか、あるいは化学増感剤として受けたマウスは、高められた健康状態を示し、動物は体重を喪失せず、その体重を維持した(図4)。
【0098】
血液髄抑制
5−FU処置に付随する主要な毒性の1つとしては、骨髄の抑制およびそれに続く白血球細胞の低下であり、任意の処置関連の血液毒性を評価する必要があった。動物を麻酔した時点で、心臓または大血管から針およびシリンジで血液を収集した。マウステナシティー(tenacity)食塩水(M)中で血液を1/50希釈し、血球計算器でカウントすることによって白血球細胞数を見積もった。好中球、リンパ球、および赤血球をカウントすることによって示差血球カウントを行った。血球細胞サブ集団のトータルの見積もりを、マウス血液に関して公開されているデータと比較した。
【0099】
トータル白色細胞カウントおよびサブ集団差は処置にかかわらず、有意に異なっていなかった。
【0100】
器官重量に対する処置の効果
処置が器官萎縮症または肥大症を誘導しなかったことを確認するため、器官を取り出し、死後重量を測定した。各器官の重量は全体の正味の体重の%として計算し、食塩水のみの群(群1)の器官重量と比較した。
【0101】
全体の患者の生存時間は処置の開始後動物が生存した時間(日数または週数)として計算した。各処置群のすべての動物は6週処置プログラムを完了した。
【0102】
器官重量に関して、HA治療は劇的な毒性を全く生じなかった。5−FUを受けたマウスは肥大した脾臓(重量において61%増加)を示し、HAおよび5−FUを同時に投与すると、この肥大を31%まで有意に打ち消した(student t-test, p<0.001)。5−FU治療は子宮の縮小(22%)を生じ、HA/5−FU治療はこの毒性作用を再び10%まで減少させた(student t-test, p=0.04)。同時投与または処置日前に投与することによって処置計画にHAを加えると、食塩水処置群と比較して、初期腫瘍の重量が有意に減少することが明らかに示された(student t-test, p=0.006)。処置間に器官重量の他の差異は見られなかった。
【0103】
実施例4
5−FUのインビトロ効力に対するヒアルロナン濃度の効果
実施例2に記載のように、MDA−MB 468、MDA−MB 435およびMDA−MB 231細胞を培養した。この培養が70〜80%集密に達した時点で、これを37℃の1×HBSS中で洗浄し、0.25% トリプシン/0.05% EDTA10mL中で細胞が完全に剥がれるまでトリプシン処理した。1mL FCSを加えてトリプシンを中和した後、細胞をカウントし、1,200rpmで5分間遠心分離し、以下のように再懸濁した:
MDA−MB 231:12,000細胞/培地mL;
MDA−MB 468:25,000細胞/培地mL;および、
MDA−MB 435:12,000細胞/培地mL。
次いで細胞を48ウェルプレートにまき、供給元の指示書にしたがってインキュベートした。24時間後に培地を除去し、以下の試験培地で置換した:
MDA−MB 468:40nM アドリアマイシン;
MDA−MB 231:50nM アドリアマイシン;および、
MDA−MB 435:10nM アドリアマイシン。
40nM アドリアマイシン培地:450mL(ストックアドリアマイシンは1.7mMであり、したがって1,700,000/40=42,500;450,000/42500=10.6uLの1.7mM アドリアマイシン+培地450mL)。
ストックHAは14.3μMで700,000ダルトンであった。
【0104】
結論
この実験では、HAがインビトロおよびインビボ両方において抗癌薬物、5−FUおよびアドリアマイシンの細胞毒性を高めることができることが明確に示された。より詳細には:
1)単独物質として、HAは、インビトロおよびインビボの両方において癌細胞に対する細胞毒性作用を発揮する(図5);
2)HA単独治療または化学感作治療の治療効力を評価すると、これは正常組織に対して毒性ではなく、薬物の毒性プロファイルを高めなかったことが示された。実際、この治療を受けたマウスは6週間の処置期間にわたって有意な重量増加およびリンパ節転移の減少を示した。HAおよび5−FUの同時投与は、最初の腫瘍容量の減少に対して劇的な作用を有した;ならびに、
3)処置計画に組み込まれたHAを有するマウスは二次的な腫瘍の形成を全く示さなかった(図6)。
【0105】
将来の実験
乳癌のインビボ処置に関するHAの使用に対して現在実験が行われている。これらの実験はHA濃度および分子量の効果およびアドリアマイシンの細胞毒性に対して焦点が当てられている。これらの実験の目的はまた、薬物およびHA暴露時間および投与計画、ならびにHAの作用の機構、すなわち受容体媒介性輸送および/または細胞膜に対する作用を確立することである。また薬物耐性癌細胞の化学感作におけるHAの役割に対するさらなるデータを収集する。
【0106】
セクション1:
すべての実験は、種々のレベルのHA受容体、CD44およびRHAMMを発現する乳癌セルラインに対して行う。試験されるセルラインは、MDA−MB 435、MDA−MB 231、MDA−MB 468、ZRL−751およびいくつかのMDR−1発現乳癌セルラインである。
【0107】
薬物耐性および薬物感受性乳癌細胞に対するHA/アドリアマイシン暴露時間および濃度の作用を調査する。4 MDR−1ポジティブおよび4 MDR−1ネガティブセルラインを、1、2.5、5、10、20、40、60、80および100nMのアドリアマイシンに暴露し、以下の変化型を試験する:
1)1h 薬物±100nM HA暴露、次いで3日間の薬物を含まない培養;
2)一定の薬物暴露±100nM HA(3日間)、30分100nM HA暴露、次いで薬物(1h)、薬物を含まない細胞培養(3日間);および、
3)24時間100nM HA暴露、次いで薬物(1時間)、薬物を含まない細胞培養(3日間)。
【0108】
これらの実験は、最適なHA暴露時間および投与計画、HAと組み合わせた場合のアドリアマイシン細胞毒性増加の振り幅およびHAが乳癌細胞内の流出ポンプ耐性を克服可能であるかどうかを確立する。
【0109】
現在までのところ、アドリアマイシンのIC50は90nMと測定された。90nMのアドリアマイシンを用い、HA(700kD)濃度を1、3、10、30、100、300nM、1μM、3μM、10μM、30μMおよび100μMに変化させる。試験されるインキュベーションの変化型は以下である:
1)30分間HA暴露、次いで1h薬物暴露、薬物を含まない細胞培養(3日間);
2)24HA暴露、次いで1h薬物暴露、薬物を含まない細胞培養(3日間);および、
3)HA±薬物暴露(1hr)、薬物を含まない細胞培養(3日間)。
【0110】
HAが癌細胞剥離および移動において中枢の役割を果たすことができることが示唆されているため、すべての剥離細胞を細胞生存に関して試験する。剥離細胞が生存する場合、FACS表面エピトープ同定を用いてHA受容体状態を測定する。短いHAオリゴ糖、すなわち4糖、6糖、12糖、5600Da、50,000Da、100,000Da、250,000Daを用いて同様の実験を行う。
【0111】
これらの実験はインビトロでの最適なHA:薬物比、最適なHA暴露時間および投与計画、アドリアマイシン細胞毒性に対するHA分子量の効果を示す。
【0112】
最適なHA濃度を測定した後、一連の時間経過実験においてIC50のアドリアマイシンを用い、アドリアマイシン代謝に対するHAのすべての効果を観察する。
【0113】
[14C]アドリアマイシンを細胞に、30分間、1時間、2時間、4時間、8時間、16時間および24時間暴露する。実験条件は以下である:
1)細胞を30分間HA、次いで薬物に暴露;ならびに、
2)細胞を24間HA、次いで薬物に暴露、HA/アドリアマイシンの同時暴露。
【0114】
細胞を取り出し、低張溶解し、113,000gavで1時間遠心分離する。HPLCを用い、膜ペレットおよび上清を代謝産物に関してカウントし、分析する。
【0115】
細胞をガバーガラス上で培養し、ここで細胞はアドリアマイシン±HAに暴露され(上記暴露計画)、共焦点写真タイムコースを用いてサイトゾル摂取および薬物移動を追跡する。
【0116】
MDR−1ポジティブおよびネガティブ乳癌セルラインに対するHA受容体の同定、CD44s、CD44v6、CD44v10およびRHAMM受容体のFACS定量を行う。また、FITC/HAおよびFACS分析を用いるHA/受容体の結合および飽和キネティクスの定量を行う。
【0117】
細胞を以下に暴露することによる:
1)HA(30分間)、次いで薬物;
2)HA(24時間)、次いで薬物;ならびに、
3)HA/アドリアマイシン。
これらのうち任意のものがCD44sおよびRHAMM受容体をブロックすることを決定することができる。表面エピトープFACS分析を用いて任意の生存細胞のこの受容体の状態を定量する。HA受容体のブロッキングがアドリアマイシンおよびHA間の通常観察される相乗作用を減少させるならば、膜結合およびサイトゾル性アドリアマイシンを±HA受容体ブロッキングで定量する。
【0118】
セルラインによるHA分解は[3H]HAおよびゲルろ過クロマトグラフィー±受容体ブロッキングを用いて実験する。
【0119】
分子量4sacc、6sacc、12sacc、5600Da、50,000Da、100,000Da、250,000Da、750,000Daおよび1,500,000DaのHAを、あらかじめ決められた「効果が観察された」濃度で乳癌セルラインとインキュベートし、以下のパラメータを調査する:
細胞外および細胞内カルシウム流動(細胞プローブアッセイ)。細胞骨格成分の調節(細胞骨格遺伝子のマイクロアレイ)、細胞の容量に対する作用(細胞サイズ分析)および癌細胞移動度(Boyden Chamber matrigel アッセイ)を行った。
【0120】
HAのセルサイクルに対する作用は、分子量4sacc、6sacc、12sacc、5600Da、50,000Da、100,000Da、250,000Da、750,000Daおよび1,500,000DaのHAを、あらかじめ決められた「効果が観察された」濃度で乳癌セルラインとインキュベートすることによって行う。細胞をヨウ化カリウムでラベルし、FACS分析に付する。セルサイクルの各段階の細胞数を測定する。
【0121】
最適なHA/ドキソルビシン調製物およびリポソーム性ドキソルビシンの前臨床試験において Liposome Company によって用いられる用量範囲を用いてリポソーム性ドキソルビシンおよびHA/ドキソルビシン調製物のインビトロ効果を比較する。
【0122】
セクション2:
HA/アドリアマイシン抗癌治療が第一相ヒト乳癌細胞試験に進行する前に、予備毒性実験を行う必要がある。この実験は以下に焦点を当てる:
1)マウス体器官および体液へのアドリアマイシン取り込みに対するヒアルロナンの効果;
2)アドリアマイシンに関する予備用量範囲の確立
ヌードマウスにおいてHAがアドリアマイシンをヒト乳癌異種移植片に標的化するかどうかの測定;
3)市販のリポソーム性ドキソルビシンの、マウスにおけるHA/ドキソルビシン取り込みとの比較;ならびに、
4)リポソーム性ドキソルビシンおよびHA/ドキソルビシンの短期間効果の比較。
【0123】
Inaba et al, (1988) より、ヌードマウスにおけるアドリアマイシンの用量は、4mg/kgであり、これは60mg/m2のヒト用量と等しい。ヒト腫瘍を保持するヌードマウスにアドリアマイシン±HAを注射する。4mg/kg±12.5mg/kg HAのアドリアマイシン濃度を用いる。実験プロトコルは以下の処置群を含む:
1)4mg/kg アドリアマイシン;
2)4mg/kg アドリアマイシン+12.5mg/kg HA;ならびに、
3)4mg/kg リポソーム性ドキソルビシン。
【0124】
アドリアマイシン±HAを、マウスの尾部静脈に定量的に注射する。
【0125】
2、15、30、60分および1.5、2、4、8、24および48時間(4動物/時点)の時間間隔で、マウスにネンブタール0.1mLをIP注射して犠牲にした。全ての体器官、骨格筋、リンパ節、骨髄、尿および血液を取り出し、HPLCおよび蛍光を用いてアドリアマイシン含量を測定する。
【0126】
ヒト乳癌をヌードマウス(WEHI CBA 株)内に作成する。このマウスに以下を注射する:
1)マウスLD50 10mg/kg;
2)4mg/kg アドリアマイシン;
3)4mg/kg アドリアマイシン+12.5mg/kg HA;
4)8mg/kg アドリアマイシン;
5)8mg/kg アドリアマイシン+12.5mg/kg HA;
6)4mg/kg リポソーム性ドキソルビシン;
7)食塩水;ならびに、
8)12.5mg/HA。
【0127】
毎週のサイクルで2日目、4日目、6日目に、上記をマウス(8動物/群)の尾部静脈に定量的に注射する。
【0128】
マウスの腫瘍用量、体重、えさ摂取および機能を毎日モニターする。
【0129】
8週実験の完了時に、ネンブタール0.1mLをIP注射してマウスを犠牲にする。全ての体器官、腫瘍、骨格筋、リンパ節、骨髄、尿および血液を取り出し、病理学的評価用に処理する。
【0130】
セクション3:
大腸癌細胞に対するHA抗癌治療の効果についてのいくつかの基本的な疑問に答えるために、以下の実験を行うべきである。
HA/5−FU暴露時間および濃度の、薬物耐性および薬物感受性大腸癌細胞に対する効果を調査する。
3耐性および3感受性セルラインを、1、2.5、5、10、20、40、60、80および100nMの5−FUに暴露し、以下の変数を試験する:
1)1h 薬物±100nM HA 暴露、次いで薬物を含まない培養(3日間);
2)一定量薬物暴露±100nM HA(3日間);
3)30分 100nM HA 暴露、次いで薬物(1h)、薬物を含まない細胞培養(3日間);ならびに、
4)24h 100nM HA 暴露、次いで薬物(1h)、薬物を含まない細胞培養(3日間)。
【0131】
上記のように測定したIC50の5−FUを用いて、HA(700kD)濃度を、1、3、10、30、100、300nM、1μM、3μM、10μM、30μMおよび100μMに変化させる。試験するインキュベーション変数:
1)30分 HA 暴露、次いで1h 薬物暴露、薬物を含まない細胞培養(3日間);
2)24 HA 暴露、次いで1h 薬物暴露、薬物を含まない細胞培養(3日間);ならびに、
3)HA±薬物暴露(1hr)、薬物を含まない細胞培養(3日間)。
【0132】
任意の剥離細胞を細胞生存能に関して試験する。これはHAが癌細胞の剥離および移動に中心的役割を果たし得ることが示されているからである。剥離細胞が生存可能であれば、HA受容体状態をFACS表面エピトープ同定を用いて測定する。
【0133】
短いHAオリゴ糖、すなわち:4sacc、6sacc、12sacc、5600Da、50,000Da、100,000Da、250,000Daを用いて同様の実験を行う。
【0134】
最適HA濃度を測定後、一連のタイムコース実験でIC50の5−FUを用い、アドリアマイシン代謝に対するHAの任意の作用を観察する。
【0135】
30分、1h、2h、4h、8h、16h、および24hの間、[3H]5−FUを細胞に暴露する。実験条件は以下である:
1).細胞をHA(30分)、次いで薬物に暴露する;ならびに、
20.細胞をHA(24)次いで薬物に暴露、HA/5−FUの同時暴露。
【0136】
細胞を取り出し、低浸透圧下で溶解し、113,000gavで1時間遠心分離する。HPLCを用い、代謝産物に関して膜ペレットおよび上清をカウントし、分析する。
【0137】
また、細胞をカバーグラス上で培養し、これを5−FU±HAに暴露(上記暴露方法)し、共焦点写真タイムコースを用いて、薬物のサイトゾル摂取および移動を追跡する。
【0138】
耐性および感受性大腸癌セルラインに対するHA受容体の同定、CD44s、CD44v6、CD44v10およびRHAMM受容体のFACS定量、FITC/HAおよびFACS分析を用いる、HA/受容体の結合および飽和キネティクスの定量。
【0139】
CD44sおよびRHAMM受容体を阻害抗体でブロッキングし、以下のプロトコルにしたがって5−FU±HAを適用する:
1).細胞をHA(30分)、次いで薬物に暴露する;ならびに、
2).細胞をHA(24)、次いで薬物に暴露、HA/5−FUの同時暴露。
【0140】
細胞をカウントする。表面エピトープFACS分析を用いて任意の生存細胞の受容体状態を定量する。
【0141】
HA受容体のブロッキングが5−FUとHA間の通常観察される相乗作用を減少させるならば、膜結合およびサイトゾル性5−FUを±HA受容体ブロッキングで定量する。
【0142】
[3H]HAおよびゲルろ過クロマトグラフィー±受容体ブロッキングを用いるセルラインによるHA分解を実験する。
【0143】
原形質膜に対するHAの作用
分子量4sacc、6sacc、12sacc、5600Da、50,000Da、100,000Da、250,000Da、750,000Daおよび1,500,000Daのヒアルロナンを、あらかじめ決められた「効果が観察された」濃度で乳癌セルラインとインキュベートし、以下がパラメータを調査する:
1).細胞外および細胞内カルシウム流動(細胞プローブアッセイ);
2).細胞骨格成分の調節(細胞骨格遺伝子のマイクロアレイ);
3).細胞容量に対する作用( Coulter サイズ分析);
4).癌細胞の移動度(Boyden Chamber matrigel アッセイ);
5).HA受容体の定量(FACS);ならびに、
6).膜電位(決定すべき方法)。
【0144】
HAネオ−アジュバント治療の器官転移の阻害に対する役割を調査する。他の処置群と比較して、HA治療を受けたマウスは以下を示した:
1).他の処置群と比較したリンパ節転移の減少;
2).新規腫瘍形成の阻害;
3).体重増加;および、
4).健康の増大。
【0145】
これらの結果は、癌の拡大を減少させる効果的な手段としてのHA抗癌治療の可能性ある役割を強調する。前臨床モデルの環境選択を通じて、制限が存在し、これにより二次的な癌の拡大は通常リンパ節の周りで生じる。各器官および骨への癌の拡大を試験可能なモデルを用いることは有益であろう。BAGベクター転移モデルとして既知のモデルを用いることによって、各器官および骨への癌の拡大をモニターできるだろう。
【0146】
簡単には、BAGベクターはネオマイシン耐性LacZ遺伝子から構成され、これはヒト乳癌細胞内に安定にトランスフェクトできる。ヌードマウスへの心臓内注射、次いで6週間処置計画の後、任意の転移細胞/器官におけるLacZ遺伝子をPCR検出することが可能である。骨損傷の検出を伴う Faxitron スキャニングによりすべての骨転移が検出されるだろう。
【0147】
6週間の間、週サイクルの第1日目、第2日目に以下の処置を行う。処置群(5動物/群)は以下から構成される:
1.食塩水
2.30mg/kg 5−FU(第1日目、第2日目);
3.12.5mg/kg HA(第1日目、第2日目);
4.30mg/kg 5−FU + 12.5mg/kg HA(第1日目、第2日目に同時投与);
5.12.5mg/kg HA(第1日目)、30mg/kg 5−FU(第2日目)、12.5mg/kg HA(第3日目)、30mg/kg 5−FU(第4日目);
6.12.5mg/kg HA(第1日目、第3日目);
7.30mg/kg 5−FU(第2日目、第4日目);
8.15mg/kg MTX(第1日目、第2日目);
9.15mg/kg MTX + 12.5mg/kg HA(第1日目、第2日目に同時投与);
10.12.5mg/kg HA(第1日目)、15mg/kg MTX(第2日目)、12.5mg/kg HA(第3日目)、15mg/kg MTX(第4日目);
11.15mg/kg MTX(第2日目、第4日目);
12.15mg/kg MTX、30mg/kg 5−FU、30mg/kg シクロホサミド(cyclophosamide)(第1日目、第2日目);ならびに、
13.15mg/kg MTX、30mg/kg 5−FU、30mg/kg シクロホサミド + 12.5mg/kg HA(第1日目、第2日目);
12.5mg/kg HA(第1日目)、(15mg/kg MTX、30mg/kg 5−FU、30mg/kg シクロホサミド)(第2日目)、12.5mg/kg HA(第3日目)、(15mg/kg MTX、30mg/kg 5−FU、30mg/kg シクロホサミド)(第4日目)。
【0148】
ネオアジュバント治療:
心臓内注射直前に以下を投与する:
1).12.5mg/kg HA;
2).15mg/kg MTX;
3).15mg/kg MTX、12.5mg/kg HA;
4).30mg/kg 5−FU;
5).30mg/kg 5−FU、12.5mg/kg HA;
6).15mg/kg MTX、30mg/kg 5−FU、30mg/kg シクロホサミド;ならびに、
7).15mg/kg MTX、30mg/kg 5−FU、30mg/kg シクロホサミド + 12.5mg/kg HA。
【0149】
マウスの体重および健康状態を6週間毎日モニターする。処置サイクルの完了時に、各マウスを骨損傷に関してスキャンする。スキャンした後、各器官および体液を採り出す。器官の十分なクロスセクションを可能な将来の病理学的分析用に保存し、残りの組織をホモジナイズし、LacZ遺伝子の検出のために拮抗PCRに付する。
【0150】
転移を示したすべての器官を組織学的に処理し、LacZ遺伝子のガラクトシダーゼ染色を用いて癌細胞のコロニー形成のパターンを示す。
【0151】
参考文献
【表8】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞増殖性疾患の転移を予防する方法であって、それを必要としている被検体に治療有効量のヒアルロナンを、場合により医薬的担体、アジュバントまたはビヒクルとともに投与する工程を含む方法。
【請求項2】
細胞増殖性疾患の処置方法であって、それを必要としている被検体に、ヒアルロナンおよび化学治療剤を含む組成物の治療有効量を、場合により医薬的担体、アジュバントまたはビヒクルとともに投与し、ここに該組成物が相乗的な化学治療効果を達成する工程を含む方法。
【請求項3】
薬物耐性疾患の処置方法であって、その処置を必要としている被検体に、治療有効量のヒアルロナンを化学治療剤と組み合わせて投与し、ここに該化学治療剤が単独で投与される場合よりも有効である工程を含む方法。
【請求項4】
薬物耐性疾患が細胞増殖性障害である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
細胞増殖性障害が乳癌、肺癌、前立腺癌、腎臓癌、皮膚癌、神経癌、卵巣癌、子宮癌、肝臓癌、膵癌、上皮癌、胃癌、腸癌、外分泌腺癌、内分泌腺癌、リンパ性癌、造血系の癌または頭部および頚部組織の癌からなる群から選択されるものである、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項6】
被検体が哺乳類である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
哺乳類がウシ、イヌ、ウマ、ネコ、ブタおよびヒトからなる群から選択されるものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ヒアルロナンの投与が化学治療剤の投与前であるか、あるいは投与後である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項9】
さらに化学治療剤を投与する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
化学治療剤がカルムスチン(BCNU)、クロラムブシル(ロイケラン)、シスプラチン(プラチノール)、シタラビン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、フルオロウラシル(5−FU)、メトトレキセート(メクサート)、CPT111、エトポシド、プリアマイシン(ミトラシン)およびタキサンからなる群から選択されるものである、請求項2〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
化学治療剤がフルオロウラシル(5−FU)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
投与が経口、局所、または非経口である、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項1】
細胞増殖性疾患の転移を予防する方法であって、それを必要としている被検体に治療有効量のヒアルロナンを、場合により医薬的担体、アジュバントまたはビヒクルとともに投与する工程を含む方法。
【請求項2】
細胞増殖性疾患の処置方法であって、それを必要としている被検体に、ヒアルロナンおよび化学治療剤を含む組成物の治療有効量を、場合により医薬的担体、アジュバントまたはビヒクルとともに投与し、ここに該組成物が相乗的な化学治療効果を達成する工程を含む方法。
【請求項3】
薬物耐性疾患の処置方法であって、その処置を必要としている被検体に、治療有効量のヒアルロナンを化学治療剤と組み合わせて投与し、ここに該化学治療剤が単独で投与される場合よりも有効である工程を含む方法。
【請求項4】
薬物耐性疾患が細胞増殖性障害である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
細胞増殖性障害が乳癌、肺癌、前立腺癌、腎臓癌、皮膚癌、神経癌、卵巣癌、子宮癌、肝臓癌、膵癌、上皮癌、胃癌、腸癌、外分泌腺癌、内分泌腺癌、リンパ性癌、造血系の癌または頭部および頚部組織の癌からなる群から選択されるものである、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項6】
被検体が哺乳類である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
哺乳類がウシ、イヌ、ウマ、ネコ、ブタおよびヒトからなる群から選択されるものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ヒアルロナンの投与が化学治療剤の投与前であるか、あるいは投与後である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項9】
さらに化学治療剤を投与する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
化学治療剤がカルムスチン(BCNU)、クロラムブシル(ロイケラン)、シスプラチン(プラチノール)、シタラビン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、フルオロウラシル(5−FU)、メトトレキセート(メクサート)、CPT111、エトポシド、プリアマイシン(ミトラシン)およびタキサンからなる群から選択されるものである、請求項2〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
化学治療剤がフルオロウラシル(5−FU)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
投与が経口、局所、または非経口である、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図2f】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図2f】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2012−162569(P2012−162569A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−123354(P2012−123354)
【出願日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【分割の表示】特願2002−511783(P2002−511783)の分割
【原出願日】平成13年7月13日(2001.7.13)
【出願人】(501274654)アルケミア オンコロジー ピーティワイ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−123354(P2012−123354)
【出願日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【分割の表示】特願2002−511783(P2002−511783)の分割
【原出願日】平成13年7月13日(2001.7.13)
【出願人】(501274654)アルケミア オンコロジー ピーティワイ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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