説明

疾患の診断及び特徴付けのために自己抗体を検出する方法

対象における自己抗体のレベルを検出及び/又は定量化する方法を提供する。更に、自己抗体産生に関連する疾患を診断し及び/又は特徴付ける方法を提供する。或る実施形態では、診断され、及び又は特徴付けられる疾患はガン又は不妊症であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本明細書に開示の主題は、2007年1月26日出願の米国仮特許出願第60/897,641号(この開示は、参照により本明細書中にその全体が組み込まれる)の利益を主張する。
【0002】
政府の権益
本明細書に開示の主題は、一部、国立ガン研究所(National Cancer Institute)から授与された助成第CA104651号の下で米国政府の支援を受けてなされた。よって、米国政府は、本明細書に開示の主題に一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本明細書に開示の主題は、自己抗体の検出による、対象における疾患の診断及び特徴付けに関する。詳細には、本明細書に開示の主題は、対象におけるガン及び/又は不妊及び/又は他の疾患の診断又は特徴付けのために、抗原(或る実施形態では、細胞が産生するエキソソームから単離した抗原を含む)を利用して、対象において自己抗体を検出することに関する。
【背景技術】
【0004】
背景
多くの疾患は、早期ステージで診断されれば、より効果的に治療及び/又は予防することができる。このことは、特にガンに当てはまる。例えば、ステージIの卵巣ガンは、90%の症例で治癒が可能である一方、進行した疾患(ステージIII及びIV)を有する患者の5年生存率は21%未満である。よって、ガン生存率の顕著な改善の見込みは、早期診断にある。同様に、より高感度の早期診断試験が利用可能であれば、他の疾患を早期に診断し、及び/又は治療の予後をより良好に決定できる可能性がある。別の特別な例として、不妊症は、知られているように、生存能力のある妊娠を開始し又は出産まで維持することが困難であるとの報告より先に、診断及び確定することが困難である。より高感度で特異的な診断アッセイは、より良好な不妊症の診断及び不妊治療の予後を提供し得る。
【0005】
多くの疾患(例えばガンを含む)の現行の診断アッセイは、抗原ベースであり、疾患に関連する循環タンパク質の検出に依存する。これらアッセイは、細胞(例えば、腫瘍細胞)による特異タンパク質の発現、合成及び放出(能動的分泌若しくは脱粒(shedding)によるか又は細胞死(壊死又はアポトーシスのいずれか)の結果としてのいずれか)に依存する。これら抗原性タンパク質は、疾患の原発部位を「脱出」し、個体の免疫成分の抗原プロセシング能力を飽和させ、循環へのアクセスを得て、酵素ベース又は放射性標識ベースのイムノアッセイによる検出に十分な定常濃度に達しなければならない。これら事象は、通常、罹患初期(例えば、新生物形質転換事象及び腫瘍病巣発現)のかなり後に生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、現行の抗原ベースのアッセイは、目的の疾患の早期ステージを正確に検出することができない。目的の疾患の診断アッセイを顕著に改善するために、罹患初期での疾患マーカーの存在により高感度である新たな疾患検出アプローチに対する満たされていないニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
本要旨は、本明細書に開示の主題の幾つかの実施形態を列挙し、そして多くの場合、これら実施形態の変形及び入れ替えを列挙する。本要旨は、多くの種々の実施形態の単なる例示である。与えた実施形態の1又は複数の代表的特徴の言及も同様に例示である。典型的には、言及した特徴を有するか又は有しない実施形態が存在することもある;同様に、特徴は、本要旨に列挙されているかいないかにかかわらず、本明細書に開示の主題の他の実施形態に適用可能である。過剰な反復を回避するために、本要旨は、そのような特徴の可能な全ての組合せを列挙せず、示唆もしない。
【0008】
本明細書に開示の主題の或る実施形態では、対象において自己抗体のレベルを検出及び/又は定量する方法が提供される。この方法は、或る実施形態では、対象からの自己抗体を含むか又は含むと疑われる生物学的サンプルを用意し、抗原を該サンプルと接触させることを含んでなる。抗原は、エキソソームから単離した自己抗体免疫反応性ペプチドを含んでなり得る。この方法は、サンプル中の、抗原に免疫反応性の自己抗体のレベルを検出及び/又は定量することを更に含んでなる。或る実施形態では、自己抗体はガン又は不妊症に関連している。
【0009】
本明細書に開示の主題は、更に、或る実施形態では、対象における自己抗体産生に関連する疾患を診断する方法を提供する。この方法は、或る実施形態では、対象からの自己抗体を含むか又は含むと疑われる生物学的サンプルを用意し抗原を該サンプルと接触させることを含んでなる。抗原は、エキソソームから単離した自己抗体免疫反応性ペプチドを含んでなり得る。この方法は、サンプル中の、抗原に免疫反応性の自己抗体を検出し、抗原に免疫反応性の自己抗体のレベルを参照レベルと比較して対象における前記疾患を診断することを更に含んでなる。
【0010】
本明細書に開示の主題は、また更に、或る実施形態では、対象における自己抗体産生に関連する疾患を特徴付ける方法を提供する。この方法は、或る実施形態では、対象からの自己抗体を含む生物学的サンプルを用意し、抗原を該サンプルと接触させることを含んでなる。抗原は、エキソソームから単離した自己抗体免疫反応性ペプチドを含んでなり得る。この方法は、前記サンプル中の、前記抗原に免疫反応性の自己抗体を検出し、抗原に免疫反応性の自己抗体のレベルを定量して対象における前記疾患を特徴付けることを更に含んでなる。
【0011】
疾患を診断又は特徴付けする方法の或る実施形態では、疾患はガン又は不妊症である。本明細書に開示の方法の或る実施形態では、疾患は上皮ガン又は腺ガンである。更に、或る実施形態では、抗原は、p53、p63、p73、mdm-2、プロカテプシン-D、B23、C23、PLAP、cerB/HER2、NY-ESO-1、SCP1、SSX-1、SSX-2、SSX-4、HSP10、HSP27、HSP60、HSP90、GRP78、HoxA7、HoxB7、EpCAM、c-ras、メソテリン、サービビン、ムチン、EGFキナーゼ、c-myc、ヌクレオフォスミン(nucleophosmin)及びTAG 72からなる群より選択されるガン抗原ペプチドを含んでなる。この方法の或る実施形態では、疾患は、早発性卵巣機能不全(POF)、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、子宮内膜症、子癇前症、早産、胎内発育遅延及び再発性妊娠喪失からなる群より選択される不妊症である。
【0012】
この方法の或る実施形態では、生物学的サンプルは、乳、血液、血清、血漿、腹水、嚢胞液、胸膜液、涙、尿、唾液、組織又はこれらの組合せを含む。更に、或る実施形態では、対象は哺乳動物である。
【0013】
本明細書に開示の方法の或る実施形態では、エキソソームは細胞から単離され、該細胞は、或る実施形態では培養細胞であり得る。或る実施形態では、細胞は、例えば、卵巣ガン細胞、子宮頸ガン細胞、乳ガン細胞、子宮内膜ガン細胞、結腸ガン細胞、前立腺ガン細胞、肺ガン細胞、黒色腫細胞、膵臓ガン細胞又は絨毛上皮腫細胞のようなガン細胞である。幾つかの特別な実施形態では、細胞はUL-1細胞、UL-2、UL-3細胞又はUL-6細胞である。幾つかの特別な実施形態では、細胞は胎盤細胞である。
【0014】
本明細書に開示の方法の或る実施形態では、検出は、ELISA、RIA、多重イムノアッセイ、免疫沈降及びウェスタンブロッティングからなる群より選択される技法を含む。
【0015】
本明細書に開示の主題は、また更に、或る実施形態では、サンプル中の自己抗体を検出するキットを提供する。或る実施形態では、このキットは、自己抗体免疫反応性ペプチド抗原と、該抗原を含有するための容器とを含んでなる。抗原は、或る実施形態では、エキソソームから単離され得る。或る実施形態では、抗原は支持体に付着される。或る実施形態では、該支持体は、マイクロタイタープレート、メンブレン(ニトロセルロース、PVDF又は類似の材料)、ポリスチレンビーズ、試験管又はディップスティックである。或る実施形態では、このキットは、自己抗体に結合する抗体調製物を含んでなる。更に、或る実施形態では、抗体調製物は検出標識を含んでなる。また更に、或る実施形態では、検出標識は、放射性標識、酵素、ビオチン、色素、蛍光タグ標識、ハプテン又は発光標識を含んでなる。
【0016】
したがって、疾患の診断及び特徴付けのために自己抗体を検出する方法を提供することが、本明細書に開示の主題の目的である。この目的は、全体又は一部が本明細書に開示の主題により達成される。
【0017】
上記に述べた本明細書に開示の主題の目的及び全体又は一部が本明細書に開示の主題により達成される目的、他の目的及び利点は、本明細書に開示の主題についての以下の説明、図面及び非限定的実施例を熟読後に当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、ガン患者における腫瘍反応性イムノグロブリンと疾患のステージとの相関を、腫瘍を有さない正常コントロールと比較して示すグラフである。
【図2】図2A及び2Bは、代表的な卵巣ガン患者(2A = ステージII、2B = ステージIV)の血清中に存在するイムノグロブリンの、正常卵巣上皮(NO)細胞株及び3つの卵巣腫瘍細胞株(UL1、UL3及びUL6)に由来する細胞抗原との免疫反応性を示す写真である。囲みは、興味深い領域を示す。
【図3】図3A〜3Dは、シスプラチンに応答性の患者における認識パターンの相違の2次元電気泳動分析を示す一連の写真である。図3A〜3Dは、標的としてUL-6由来の抗原を使用し、IIIc卵巣嚢胞腺ガンを有する患者由来の卵巣を使用した2Dブロットの一部を示す。患者A及びB(それぞれ、図3A及び3B)はシスプラチンに応答したが、患者C及びD(それぞれ、図3C及び3D)は応答しなかった。
【図4】図4A及び4Bは、2人の卵巣ガン患者からのタンパク質アレイプロフィールを示すグラフである。UL-1卵巣腫瘍細胞株由来の免疫沈降細胞タンパク質をRP-HPLCにより分離し、MAGNAGRAPHメンブレンにタンパク質結合させた。免疫反応性タンパク質は、ウェルを卵巣ガン患者由来の血清と共にインキュベートすることにより同定し、デンシトメトリーにより決定したピクセルとして規定した。
【図5】図5は、患者由来の腫瘍反応性自己抗体による免疫反応性パターンの説明図である。
【図6】図6は、タンパク質アレイにおいて(表1に列挙した)抗原と反応性である自己抗体を示す、正常女性ボランティア(コントロール)、良性卵巣疾患を有する婦女子及び浸潤性卵巣ガンを有する婦女子由来の血清の割合を示すグラフである。
【図7】図7は、早期ステージ卵巣ガンを有する婦女子及び後期ステージ卵巣ガンを有する婦女子における反応性IgGを証明する生(raw)タンパク質マイクロアレイを示す一連の写真である。
【図8】図8Aは、子宮頸ガン患者抗血清の細胞抗原との反応性を示す一連の写真である。図8Bは、子宮頸ガン細胞株由来抗原の患者血清との反応性を示すグラフである。
【図9】図9は、子宮頸ガン細胞から放出された可溶性抗原の反応性に対するレチノイン酸の効果を示す一連の写真及びグラフである。
【図10】図10は、子宮頸ガン細胞から放出された細胞結合抗原の反応性に対するレチノイン酸の効果を示す一連の写真及びグラフである。
【図11−1】図11は、種々の自己抗体免疫反応性ペプチド抗原に対する、種々のステージのガン若しくは良性疾患を有する種々の患者又は正常コントロール由来の血清の免疫反応性を示す一連のグラフである。
【図11−2】図11は、種々の自己抗体免疫反応性ペプチド抗原に対する、種々のステージのガン若しくは良性疾患を有する種々の患者又は正常コントロール由来の血清の免疫反応性を示す一連のグラフである(図11-1のつづきである)。
【図12】図12は、種々の自己抗体免疫反応性ペプチド抗原に対する、コントロール対象及び種々の異なるタイプのガンを有する患者由来の血清の免疫反応性を示す一連のグラフである。
【図13】図13は、組換え抗原及び天然エキソソーム由来抗原における、種々のガン患者由来の血清に対する抗原性エピトープの相違を示す一連の写真である。
【図14】図14は、子宮内膜の細胞下区画(subcellular compartment)に由来する細胞抗原に対する、ステージI、II又はIIIの子宮内膜症と診断された患者血清の免疫反応性のELISA結果を正常コントロールと比較して示すグラフである。抗原は、子宮内膜細胞の膜画分、核画分及び細胞質画分から単離し、マイクロタイタープレートのウェルに結合させた。
【図15】図15は、自己反応性の液性応答により認識された子宮内膜及び卵巣由来の細胞抗原のウェスタンイムノブロットを示す一連の写真である。
【図16】図16A〜16Cは、二次元電気泳動によって分離した子宮内膜膜抗原の、ステージII及びIII子宮内膜症を有する患者血清による代表的な免疫認識の一部を示す一連の写真である。タンパク質はHec-1A(子宮内膜腫瘍細胞株)から単離した。可溶化膜タンパク質(100mg)をPH 3-10等電点電気泳動ストリップにロードし、泳動後にこのストリップを10〜20%アクリルアミドSDS-PAGEゲルの上部に当接させた。SDS-PAGE後、タンパク質をニトロセルロースに移してイムノブロットを行った。
【図17】図17は、子宮内膜に由来する細胞抗原に対する、不妊症と診断された婦女子から得た血清の血清学的反応性パターンを示す一連の写真である。
【図18】図18は、正常期出産及び再発性妊娠喪失により妊娠中に産生された自己抗体の存在を証明するウェスタンイムノブロットを示す一連の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
本明細書に開示の主題の1又はそれより多い実施形態の詳細を下記の説明に示す。本明細書に開示の主題の他の特徴、目的及び利点は、詳細な説明、実施例及び特許請求の範囲から明らかになる。本明細書中で引用した全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合には、本明細書(定義を含む)が支配する。
【0020】
長年の特許慣習に従い、本願(特許請求の範囲を含む)で使用するときには、用語「a」、「an」及び「the」は「1又はそれより多い」を意味する。
他に指摘しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用する成分、反応条件などの量を表す全ての数は、全ての場合において用語「約」で修飾されていると理解すべきである。したがって、反対の指摘がない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数的パラメータは、本明細書に開示の主題により得ることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「約」は、質量、重量、時間、容量、濃度又はパーセンテージの値又は量に言及するとき、指定された量から、或る実施形態では±20%、或る実施形態では±10%、或る実施形態では±5%、或る実施形態では±1%、或る実施形態では±0.5%、或る実施形態では±0.1%の変動を包含することを意味する。なぜならば、このような変動は開示された方法を実施するために適切であるからである。
【0022】
他に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本明細書に開示の主題が属する分野の当業者に通常理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似するか又は等価である任意の方法、デバイス及び材料が本明細書に開示の主題の実施又は試験に使用することができるが、代表的な方法、デバイス及び材料をここで記載する。
【0023】
或る種の疾患は、罹患した対象における自己抗体の産生によって特徴付けられることが分かっている。すなわち、対象の免疫系が刺激されて、(外来抗原(例えば侵入している微生物に独特な抗原)ではなく)自己抗原に対する抗体を産生する。自己抗体が免疫反応する抗原は、場合によっては、一次配列の変化又は翻訳後プロセシング(例えば、ガンで起こり得るような)に起因してエピトープを改変することがあるが、正常抗原と免疫学的に同一でもあり得る。いずれの場合にも、自己抗体産生を疾患の存在と相関させることができ、その疾患を特徴付けるための情報を提供することもできることが見出されている。本明細書に開示の主題は、対象における自己抗体のレベル(これは、その対象における疾患の存在及び/又は該疾患の特徴付けと相関させ得る)を検出及び/又は定量するための新規方法を提供する。例えば、本明細書に開示の主題の或る実施形態では、対象において、自己抗体産生に関連するガン又は不妊症の検出及び/又は特徴付けをする方法が提供される。
【0024】
I.自己抗体レベルを検出及び定量する方法
本明細書に開示の主題は、或る実施形態では、対象における自己抗体のレベルを検出及び/又は定量する方法を提供する。これら方法は、或る実施形態では、対象における自己抗体産生に関連する疾患の診断及び/特徴付けをするために利用することができる。
【0025】
或る実施形態では、この方法は、対象からの自己抗体を含むか又は含むと疑われる生物学的サンプルを用意し、次いで自己抗体免疫反応性ペプチドを含んでなる抗原を該サンプルと接触させることを含んでなる。次いで、この方法は、サンプル中の、前記抗原に免疫反応性である自己抗体のレベルを検出及び/又は定量することを含んでなる。或る実施形態では、生物学的サンプルは、例えば、乳、血液、血清、血漿、腹水、嚢胞液、胸膜液、唾液、涙、尿、組織又はこれらの組合せを含み得る。
【0026】
更に、本明細書に開示の主題の或る実施形態では、対象における自己抗体の検出に基づいて、対象における自己抗体産生に関連する疾患を診断する方法が提供される。或る実施形態では、この方法は、対象からの自己抗体を含むか又は含むと疑われる生物学的サンプルを用意し;自己抗体免疫反応性ペプチドを含んでなる抗原を該サンプルと接触させ;サンプル中の前記抗原に免疫反応性の自己抗体を検出し;抗原に免疫反応性の自己抗体のレベルを参照レベルと比較して対象における前記疾患を診断することを含んでなる。
【0027】
用語「診断する(こと)」及び「診断」は、本明細書で使用する場合、対象が所与の疾患又は病的状態を患っているか否かを当業者が推定し、決定さえできる方法をいう。当業者は、しばしば、その量(存否を含む)が、病的状態の存在、重篤度又は不在の指標である1又はそれより多い診断指標(例えば、自己抗体のような指標)に基づいて診断を下す。
【0028】
診断と共に、臨床予後もまた大いに関心及び興味のある領域である。最も効果的な治療を計画するために、疾患の重篤度(例えば、ガン細胞の攻撃性及び腫瘍再発の可能性)を知ることは重要である。自己抗体の測定は、更なる治療の必要がない良好な予後を有する対象を、更なる集中治療の利益を享受する可能性がより高い対象と分けるために有用であり得る。
【0029】
このように、「診断を下す(こと)」又は「診断する(こと)」は、本明細書で使用する場合、予後を判断することを更に含める。予後の判断は、診断用自己抗体の測定に基づいて、臨床転帰(内科療法を伴うか又は伴わない)の予測、適切な治療の選択(又は治療が有効か否か)又は現行治療のモニター及び場合によっては治療の変更を提供することができる。
【0030】
更に、本明細書に開示の主題の或る実施形態では、自己抗体の時間経過に伴う複数回の測定が、診断及び/又は予後を容易にし得る。自己抗体レベルの時間的変化は、臨床転帰の予測、疾患の進行及び/又は疾患に向けられた適切な治療の効力のモニターに使用することができる。このような実施形態では、例えば、有効な治療の過程で、時間の経過に伴う生物学的サンプル中の自己抗体(場合によっては、及び1又はそれより多い更なるバイオマーカー(モニターしている場合))の量の減少が観察されると期待できる。
【0031】
自己抗体のレベル(例えば増加したレベル)を参照レベル又は「正常レベル」と相関付けて疾患を診断し及び/又は特徴付けるとは、自己抗体レベルと疾患のない対象において期待されるレベル(自己抗体が検出されないことを含むがこれに限定されない)との比較(量的及び/又は存否)をいう。正常レベルに対する変化(例えば、増加)とは、サンプルを類似疾患のないサンプルとその他は匹敵する条件下で比較したときに、測定技法に固有な誤差のマージンを超えて変化した(例えば、増加した)結果をいう。或る実施形態では、試験対象における検出自己抗体の増加レベルは、ベースラインの「正常な」存在に対する約10%又はそれを超える差である。或る実施形態では、約20%又はそれを超えて増加した試験対象中の検出自己抗体レベル、或る実施形態では、約25%又はそれを超えて増加した試験対象中の検出自己抗体レベル、或る実施形態では、約50%又はそれを超えて増加した試験対象中の検出自己抗体レベルが、増加した自己抗体の存在であり、これらが、対象における疾患の存在と相関付けられ得る。
【0032】
更に、本明細書に開示の主題の或る実施形態では、対象における自己抗体産生に関連する疾患を特徴付ける方法が提供される。「特徴付ける(こと)」とは、本明細書で使用する場合、疾患の存在を検出すること又は(例えば、ガンのステージの決定のような)疾患の重篤度を決定することをいい得る。或る実施形態では、この方法は、対象からの自己抗体を含む生物学的サンプルを用意し;自己抗体免疫反応性ペプチドを含んでなる抗原を該サンプルと接触させ;サンプル中の前記抗原に免疫反応性の自己抗体を検出し;抗原に免疫反応性の自己抗体のレベルを定量して対象における疾患を特徴付けることを含んでなる。
【0033】
用語「免疫反応する」及び「免疫反応性(の)」とは、本明細書で使用する場合、抗体結合に関しては、抗原特異的エピトープへの、抗体の可変領域による特異的結合をいう。
【0034】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」(これらは、本明細書中で相互に交換可能に使用される)とは、サイズ、機能に関わらず、20タンパク質アミノ酸又はアミノ酸アナログのポリマーをいう。「タンパク質」は比較的大きなポリペプチドに言及して使用されることが多く、「ペプチド」は小さなポリペプチドに言及して使用されることが多いが、当該分野におけるこれら用語の用法は重複し、また変化する。用語「ペプチド」とは、本明細書で使用する場合、他に指摘しなければ、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質をいう。用語「タンパク質」、「ポリペプチド」及び「ペプチド」は、遺伝子産物に言及するときには、本明細書中で相互に交換可能に使用される。よって、例示的ポリペプチドとしては、遺伝子産物、天然に存在するタンパク質、ホモログ、オーソログ、パラログ、フラグメント並びに前記のものの他の等価物、変形物及びアナログが挙げられる。
【0035】
本明細書に開示の方法の或る実施形態では、サンプル中の自己抗体を検出することには、自己抗体を抗原に結合させ、次いで生物学的サンプルから単離した自己抗体の結合事象又は存在のいずれかを検出することが含まれ得る。自己抗体を検出する例示的技法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、多重イムノアッセイ、免疫沈降及びイムノブロッティング(例えば、ウェスタンブロッティング及びドットブロッティングを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
種々の有用な免疫検出法が、科学文献、例えば、Nakamuraら(Handbook of Experimental Immunology (第4版), Weirら(編). Vol. 1, Chapter 27, Blackwell Scientific Publ., Oxford, 1987中;参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されている。最も単純で直接的意味において、イムノアッセイは結合アッセイである。例示的イムノアッセイとしては、種々のタイプのELISA、RIA及び多重イムノアッセイが挙げられる。組織切片を使用する免疫組織学的検出もまた特に有用である。しかし、検出はこのような技法に限られず、ウェスタンブロッティング、ドットブロッティング、FACS分析、沈降反応などもまた本明細書に開示の主題に関連して使用し得ることが容易に理解できる。
【0037】
一般に、本方法に関して、免疫結合法には、抗体を含有していると疑われるサンプルを取得し、本主題に従って免疫複合体の形成を可能にするに有効な条件下でサンプルを抗原(例えば、自己抗体免疫反応性ペプチド)と接触させることが含まれる。
【0038】
選択した生物学的サンプルを抗原と免疫複合体(一次免疫複合体)の形成を可能にするに効果的な条件下で十分な時間接触させることは、一般には、サンプルに組成物を加え、提供された抗原と抗体が免疫複合体を形成するに十分長い時間混合物をインキュベートすることである。この後、抗原-抗体混合物を洗浄して非特異的に結合した抗体種を除去することにより、一次免疫複合体内で特異的に結合した抗体のみが検出されるようになる。
【0039】
一般に、免疫複合体形成の検出は、多くのアプローチの適用により達成することができる。これら方法は、一般には、標識又はマーカー(例えば、当該分野で標準的に使用される任意の放射性、蛍光性、生物学的若しくは酵素的タグ又は標識)の検出に基づく。このような標識の使用に関しては、米国特許第3,817,837号;同第3,850,752号;同第3,939,350号;同第3,996,345号;同第4,277,437号;同第4,275,149号;同第4,302,534号;同第4,366,241号;同第4,637,988号;同第4,786,594号;同第5,108,896号;同第5,229,302号;同第5,629,164号及び同第5,691,154号(各々参照により本明細書中に組み込まれる)が挙げられる。当然のことながら、当該分野で公知のように、二次結合性リガンド(例えば、第2の抗体又はビオチン/アビジンリガンド)結合アレンジメントの使用により更なる利点を見出し得る。
【0040】
或る実施形態では、一次免疫複合体は、抗原又はサンプル中に存在する抗体に結合親和性(特異的又は非特異的(例えば、自己抗体のFc領域に反応性)のいずれか)を有する第2の結合性リガンドにより検出することができる。これらの場合、第2の結合性リガンドは検出標識に連結し得る。第2の結合性リガンドはそれ自体が抗体であることが多く、このため「二次」抗体と呼ばれ得る。一次免疫複合体を、標識した二次結合性リガンド又は抗体と、二次免疫複合体の形成を可能にするに有効な条件下で十分な時間接触させる。次いで、二次免疫複合体を、一般には、洗浄して未結合の標識二次抗体又はリガンドを除去し、二次免疫複合体中の残っている標識を検出する。
【0041】
他の方法としては、2工程アプローチによる一次免疫複合体の検出が挙げられる。抗原又は自己抗体に対して結合親和性を有する第2の結合性リガンド(例えば、抗体)を使用して、上記のように二次免疫複合体を形成する。この第2の結合性リガンドは、基質を検出可能な産物に加工し得、よって時間経過につれてシグナルを増幅し得る酵素を含有する。洗浄後、この二次免疫複合体を基質と接触させることにより検出が可能となる。
【0042】
競合免疫検出もまた、試験抗原に特異的な自己抗体の存在を検出するために使用することができる。この技法では、先ず、標識した抗体を溶液中で抗原と共にインキュベートする。標識によって発せられたシグナルを測定する。続いてこの抗原/抗体複合体を、目的の抗体を含有するか又は含有すると疑われるサンプルと接触させる。このサンプルが抗原に特異的な抗体を有する場合、抗体は抗原に結合し、標識した抗体と競合的に置き換わる。これが、標識からのシグナル強度の低下として検出され得る。
【0043】
本明細書に開示の主題の幾つかの(全てではない)実施形態では、生物学的サンプルからの自己抗体を捕捉するために利用される抗原は、エキソソームから単離される。用語「単離した(された)」は、本明細書で使用する場合、ポリペプチドに適用するときには、該ポリペプチドが、天然状態で結合している他の細胞質成分又はエキソソーム成分を本質的に含まないことをいう。
【0044】
エキソソームは、原形質膜との後期エンドソーム多小胞体の融合後に、細胞外環境中に分泌されるエンドソーム起源の小胞(vesicle)である。種々の組織タイプの細胞(例えば樹状細胞、Bリンパ球、腫瘍細胞及びマスト細胞)が、エキソソームを分泌することが示されている。種々の起源からのエキソソームが、タンパク質と脂質部分との離散的なセット(discrete set)を示す。それらは、とりわけ、抗原提示及び免疫変調(immunomodulation)に関与するタンパク質を含有する。このことにより、エキソソームが免疫応答の変調に通じる細胞−細胞連絡(cell-cell communication)に或る役割を演じていることを示唆する。確かに、腫瘍抗原由来ペプチドでパルスした樹状細胞(DC)からのエキソソームは、適合する(matching)腫瘍を用いる動物モデルにおいて抗腫瘍応答を誘発する。しかし、ガン抗原を含むガン細胞に由来するエキソソームは、免疫抑制性ポリペプチドを含んでなることが示されている。このことによって、未改変の腫瘍由来エキソソームは所望のものではなく、ワクチンにおける直接使用に対して安全でない可能性がある。
【0045】
本明細書に開示の主題のエキソソームは、自己抗体と免疫反応して対象由来の生物学的サンプルから自己抗体を捕捉することができる抗原を産生するために大変好都合である。なぜなら、エキソソームは、人工的に合成されるというより、細胞によって産生され、したがって「天然」の抗原を提供するからである。すなわち、細胞により産生されエキソソーム中に見出される抗原は、対象において免疫細胞が経験した抗原と同様な程度に細胞によりプロセシング(例えば、グリコシル化)されフォールディングされた完全長ペプチドであり得る。このように、エキソソーム抗原は、疾患(例えば、ガン及び不妊症)を有する対象に存在し得る自己抗体を検出するアッセイで利用することができる。したがって、或る実施形態では、1又はそれより多い抗原は、各々、ガン細胞抗原及び/又は不妊症抗原を含んでなり得る。
【0046】
本明細書に開示の方法において使用する抗原を提供するために利用されるエキソソームは、エキソソーム産生細胞から単離することができる。或る実施形態では、細胞は、培養細胞、すなわち、培養培地中エキソビボで継代した細胞である。培養細胞は、連続継代を容易にするために不死化されていることがあるが、必ずというわけではない。或る実施形態では、細胞は、ガン細胞(例えば、当該分野において広く公知であるように、元々は腫瘍から単離し次いで培養で継代したガン細胞)である。或る実施形態では、ガン細胞は上皮ガン又は腺ガンであり得る。例えば、或る実施形態では、ガン細胞は、卵巣ガン細胞、子宮頸ガン細胞、乳ガン細胞、子宮内膜ガン細胞、結腸ガン細胞、前立腺ガン細胞、肺ガン細胞、黒色腫細胞、膵臓ガン細胞又は絨毛上皮腫細胞であり得る。或る実施形態では、細胞は、初代培養細胞(例えば、対象から単離した胎盤細胞)である。
【0047】
特定の実施形態では、細胞は、UL-1細胞、UL-2細胞、UL-3細胞及びUL-6を含むがこれらに限定されない群より選択される培養細胞株である。これら初代ヒト卵巣腫瘍細胞株は全て、発明者らの研究室において、卵巣のIIIc嚢胞腺ガンを有する婦女子から樹立された(UL-1、UL-2、UL-3及びUL-6と命名した)。UL-2及びUL-3は遺伝性卵巣ガンに由来した一方、UL-1及びUL-6は自然発生ガンに由来した。UL-1細胞は63歳女性患者に由来し、UL-2細胞は34歳女性患者に由来し、UL-3細胞は42歳女性患者に由来し、UL-6細胞は72歳女性患者に由来した。これら細胞株はヌードマウスにおいて腫瘍形成性であり、ヌードマウスで嚢胞腺ガンと一致する腫瘍を生じる。これら細胞株は全て、EpCAM、PLAP、FasL、PD-L1及びクラスII MHCについて陽性である。
【0048】
或る実施形態では、抗原は、本明細書に開示の方法における使用のために、細胞が培養されている培地を採集し、例えば遠心分離により該培地からエキソソームを選択的に取り出すことによって単離することができる。抗原は、所望であれば、当該分野において広く公知のように、タンパク質の単離及び精製のルーチン法により、抗原から更に単離することができる。
【0049】
更に、本明細書に開示の主題の診断方法に関して、好ましい対象は脊椎動物の対象である。好ましい脊椎動物は温血動物であり;好ましい温血脊椎動物は哺乳動物である。好ましい哺乳動物は最も好ましくはヒトである。本明細書で使用する場合、用語「対象」にはヒト対象及び動物対象の両方が含まれる。よって、獣医学上の治療的使用が本明細書に開示の主題に従って提供される。
【0050】
このように、本明細書に開示の主題は、哺乳動物(例えば、ヒト)及び絶滅危惧にあるため重要な哺乳動物(例えば、シベリアトラ);経済学的重要性を有する哺乳動物(例えば、ヒトが消費するために農場で飼育される動物);及び/又はヒトにとって社会的重要性を有する動物(例えば、ペットとして又は動物園で飼われる動物)の治療を提供する。このような動物の例としては、以下のもの挙げられるがそれらに限定されない:肉食動物(例えば、ネコ及びイヌ);ブタ(swine)(豚(pig)、去勢豚(hog)を含む)及びイノシシ;反芻動物及び/又は有蹄動物(例えば、ウシ(cattle)、去勢ウシ(ox)、ヒツジ、キリン、シカ、ヤギ、バイソン及びラクダ);及びウマ。トリ(bird)の治療もまた提供される。これには、絶滅危惧にあるもの及び/又は動物園で飼われているもの、並びに鳥(fowl)、より具体的には家禽(domestic fowl)、すなわち、食用家禽(poultry)(例えばシチメンチョウ、ニワトリ、アヒル、カモ、ホロホロチョウなど)の種類のトリの治療が含まれる。なぜなら、これらは、ヒトにとって経済的重要性を有するからである。よって、家畜化したブタ、反芻動物、有蹄動物、ウマ(競走馬を含む)、食用家禽などを含むがこれらに限定されない家畜の治療も提供される。
【0051】
II.ガンを診断する方法
本明細書に開示の主題は、対象におけるガンを診断する方法及び特徴付ける方法を更に提供する。ガンは、米国において第2位の死因である。1999年には、推定563,100人がガンで死亡し、毎年約1,222,000の新たなガン症例が診断される。なかでも、充実性腫瘍ガン(例えば、肺ガン、乳ガン、前立腺ガン及び結腸直腸ガン)が最も一般的である。ガンの診断及び分類は、腫瘍の起源の組織に基づいて該腫瘍を一般に受け容れられているカテゴリーに分類するために、目視による臨床的情報及び組織病理学的情報の両方の主観的解釈に頼っている。しかし、臨床情報は不完全であるか、又は誤誘導することがある。
【0052】
ガン用の現行の診断アッセイは、最も一般には、抗原ベースである。これらアッセイは、腫瘍細胞による特異タンパク質の発現、合成及び放出(能動的分泌若しくは脱粒によるか又は細胞死(壊死又はアポトーシスのいずれか)の結果としてのいずれか)に依存する。これら抗原性タンパク質は、原発部位を「脱出」し、個体の免疫成分の抗原プロセシング能力を飽和させ、循環へのアクセスを得て、酵素ベース又は放射性標識ベースのイムノアッセイによる検出に十分な定常濃度に達しなければならない。これら事象は、初期の新生物形質転換事象及び腫瘍病巣発現のかなり後に生じる。
【0053】
ガンをより早期に検出するための改善は、主として、高められた感受性及び高スループット能力に焦点が当てられてきた;しかし、これら診断アッセイは幾つかの基礎的な制限を示す。循環抗原は腫瘍が定着したかなり後まで出現せず、現行の抗原はガンに特異的でなく、ガンの症例の100%で発現される単一抗原はない。
【0054】
最近、早期検出方法として、患者血清のプロテオミックパターンの分析が研究されている(Liottaら,Gynecol Oncol 88:S25-S28, 2003)。不運にも、この質量分析(MS)ベースのアプローチは幾つかの欠点を有している。抗原ベースのアッセイ系に関連する循環抗原の遅延した出現に加えて、MSプロテオミック分析は、より高分子量のタンパク質で収率が減少する中程度の感受性を有し、これらマーカータンパク質を同定せず、高機能の分析デバイス(SELDI-TOF質量分析及びバイオインフォマティックツールの両方)の使用を必要とする。ガンに関連するタンパク質の相違に加えて、血清プロテオミックパターンは個体変動を示すことがあり、この「MS-診断フィンガープリンティング」の結果は、血清の「トレーニングセット」との比較及び続いて得られるパターン解釈に依存性である。よって、MSプロテオミック分析が臨床的に適用可能となる前に取り組む必要がある実行可能性、再現性及び標準化の問題が存在する。
【0055】
腫瘍が宿主免疫を損なわせているかどうかを決定するため、予後的重要性を有する特異的な免疫パラメータを同定するため及び免疫療法の評価のためのベースラインを提供するために、ガンを有する患者の免疫能力の評価が利用されてきた(Hellstromら,Biologic therapy of Cancer.(DeVita VT,Hellman S,及びRosenberg SA編) New York:Lippincott, 1991:35-52)。腫瘍根絶の失敗によって明確なように、多くのガン患者(例えば、卵巣ガンを含む)において免疫細胞機能は損傷している一方、研究により腫瘍抗原の免疫認識は無傷のままであることが示唆されている。腫瘍反応性自己抗体は、腫瘍の発生及び進行の早期に検出することができる。研究により、ガン患者(黒色腫(Merimskyら,Tumour Biol 15:188-202, 1994)、肺ガン(Niklinskaら,Folia Histochem Cytobiol 39:51-56, 2001;Brichoryら,Cancer Res 61:7908-7912, 2001)、乳ガン(Conroyら,Lancet 345:126, 1995;Barboucheら,Europ J Clin Chem Clin Biochem 32:511-514, 1994)、頭頸部ガン(Vlockら,Cancer Res 49:1361-1365, 1989)及び卵巣ガン(Kuttehら,J Soc Gynecol Invest 3:216-222, 1996;Taylorら,Am J Reprod Immunol 6:179-184, 1984;Voglら,Brit J Cancer 83:1338-1343, 2000)を有する患者を含む)における腫瘍反応性イムノグロブリンの存在が示されている。液性応答誘導の基礎をなす機序は、ガン患者において多面的であるようである。このような機序には、アミノ酸配列の変化を生じる点変異(Jung及びSchluesener,J Exp Med 173:273-276, 1991;Winterら,Cancer Res 52:4168-4174, 1992;Lubinら,Cancer Res 53:5872-5876, 1993)、増幅又はタンパク質安定性の増加に起因する過剰発現(Peoplesら,Proc Natl Amer Sci USA 92:432-436, 1995;Labrecqueら,Cancer Res 53:3468-3471, 1993)、翻訳後修飾の変化(Koteraら,Humoral immunity against a tandem repeat epitope of human mucin muc-1 in sera from breast, pancreatic and colon cancer, Cancer Research. 54(11):2856-60, 1994;Andersson E. Henderikx P. Krambovitis E. Hoogenboom HR. Borrebaeck CA. A tandem repeat of MUC1 core protein induces a weak in vitro immune response in human B cells. Cancer Immunology, Immunotherapy. 47(5):249-56, 1999;Chinniら,Clin Cancer Res 3:1557-1564, 1997)又はプロセシングにおけるエラーが含まれる。細胞内タンパク質の細胞外出現は、一般に、自己抗体の生成を生じる。異所性細胞抗原(例えば、c-myb、c-myc、p53及びp21ras)に対する自己抗体は、有意な割合のガン患者で、検出可能な循環抗原の非存在下でさえ見出されている(Canevariら,Annals Oncol 7:227-232, 1996;Yamamotoら,Oncology 56:129-133, 1999;Abu-Shakraら,Annals Rheum Dis 60:433-440, 2001)。診断時でのこれら細胞内タンパク質に対する抗体の検出は、不良な予後に関連しているようである。p53に対する自家抗体の誘導を分析した以前の研究では、タンパク質の過剰発現に関連する自己免疫応答は、アミノ末端及びカルボキシ末端を指向する傾向がある。対照的に、関連タンパク質p73に対する自己抗体は、内部の変異ホットスポットを指向するようである。化学的に誘導した腫瘍又は移植可能な自然発生腫瘍のいずれかを用いた実験動物研究では、腫瘍反応性循環IgGは、触知可能な腫瘍又は循環腫瘍抗原に十分に先立って証明することができる。
【0056】
本発明者ら及び共同研究者らは、以前に、診断ツールとして、腫瘍反応性IgGの存在を同定し、ガン患者の抗原認識パターンを規定するための「オートローガスタイピング(autologous typing)」を開発した(Taylor及びDoellgast,Analytical Biochemistry, 98:53-59, 1979)。しかし、最近まで、この液性応答を誘発する特異抗原の分子同定は、なかなか達成できないままであった。
【0057】
「オートローガスタイピング」の最近の改変法は、現在、腫瘍抗原を分析するために使用されている。この改変法(SEREXと名付けられている)は、腫瘍の組換えcDNA発現ライブラリの血清学的分析を用いる免疫認識の標的の同定である(Old,J Exp Med 187:1163-1167, 1998)。この技法は、幾つかの制限(細菌又はファージ成分との高い交差反応性、起源の腫瘍内に存在する正常組織(リンパ球様細胞を含む)に由来するcDNAの同時発現を含む)を有しており、そしてcDNAを細菌系で発現させるので、ガンに関連付けられる翻訳後修飾及び腫瘍細胞内で起こるプロセシングが存在しない。このことは、これら「操作された(engineered)」タンパク質標的の免疫反応性の喪失を生じ得る。
【0058】
血清学的分析技法は、ガン診断用の新たな標的抗原を規定するために使用されてきたが、その利用を制限する欠陥が存在する。自己抗体を検出するために使用される現行の抗原標的は、組換えの野生型タンパク質である。例えば、抗p53自己抗体の検出は、専ら野生型p53タンパク質を使用している。野生型タンパク質の使用は、変異ホットスポットに対する自己抗体の検出を排除する。p53の場合、ほとんどの研究が、自己抗体はアミノ末端又はカルボキシ末端に結合することを示唆している。組換えの野生型p53が変異部位を指向する自己抗体と反応できないことは、卵巣ガンにおいて、p53変異の頻度に比べてp53自己抗体の頻度が低いことを説明し得る。
【0059】
本明細書に開示の主題は、上記の先行技術の技法の制限に取り組むガン診断への新規アプローチを提供する。「天然」の腫瘍細胞由来タンパク質抗原(例えば、ガン細胞エキソソームに由来)を用いる、本明細書に開示するタンパク質アレイにおけるガン患者の腫瘍反応性液性応答の新規な適用は、対象におけるガンの発症及び進行に関連付けられる変化(例えば、変異、短縮化及び翻訳後修飾)の出現を同定するための革新的で迅速なアプローチを提供する。悪性疾患を有する患者は、種々の自己抗原(腫瘍性タンパク質、腫瘍サプレッサー遺伝子、増殖関連抗原及びガン/精巣抗原を含む)に対する自己抗体の発生の結果として、自己免疫様の現象を発現する。同じ腫瘍タイプを有する患者によって共有される特異タンパク質の異常は、必須の新生物経路を代表し、これら共有の変化は、ガンの診断及び特徴付け(腫瘍タイプ及びステージの決定を含む)に利用することができる。
【0060】
このように、本明細書に開示の主題は、或る実施形態では、対象においてガンを診断する方法を提供する。或る実施形態では、この方法は、対象からの自己抗体を含むか又は含むと疑われる生物学的サンプルを用意し;自己抗体免疫反応性ペプチドを含んでなる抗原を該サンプルと接触させ;サンプル中の、前記抗原に免疫反応性の自己抗体を検出し;抗原に免疫反応性の自己抗体のレベルを参照レベルと比較して対象におけるガンを診断することを含んでなる。
【0061】
更に、本明細書に開示の主題の或る実施形態では、対象において自己抗体産生に関連するガンを特徴付ける方法が提供される。例えば、ガンは、更に、対象からのサンプル中の自己抗体を検出及び/又は定量することにより、例えば、サンプル中に存在する特定の自己抗体のレベルの定量的測定に基づいてガンのステージを決定することによって、特徴付けることができる。或る実施形態では、この方法は、対象からの自己抗体を含む生物学的サンプルを用意し;自己抗体免疫反応性ペプチドを含んでなる抗原を該サンプルと接触させ;サンプル中の、前記抗原に免疫反応性の自己抗体を検出し;抗原に免疫反応性の自己抗体のレベルを定量して対象におけるガンを特徴付けることを含んでなる。実施例は、対象に存在するガンのステージを特徴付けるための例示的実施形態の更なる詳細を提供する。
【0062】
対象におけるガンを診断し及び/又は特徴付ける方法の或る実施形態では、自己抗体免疫反応性ペプチドは、エキソソームから単離することができる。
用語「ガン」とは、本明細書で使用する場合、動物において見出される全てのタイプのガン又は新生物又は悪性腫瘍をいい、これには、白血病、ガン腫及び肉腫が含まれる。ガンの例は、脳、膀胱、乳房、子宮頸、結腸、頭頸部、腎臓、肺、非小細胞肺、黒色腫、中皮腫、卵巣、前立腺、肉腫、胃、子宮のガン及び髄芽腫である。
【0063】
「白血病」とは、広く、血液生成器官の進行性の悪性疾患を意味し、一般には、血液及び骨髄における白血球及びその前駆体の歪められた増幅及び発生によって特徴付けられる。白血病疾患としては、例えば、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性顆粒球性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病、非白血性白血病、白血球性白血病、好塩基性白血病、芽細胞白血病、ウシ白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚白血病、胎生細胞性白血病、好酸球性白血病、グロス白血病、ヘアリーセル白血病、血芽球性白血病、血球始原細胞白血病、組織球白血病、幹細胞白血病、急性単球性白血病、白血球減少性白血病、リンパ性(lymphatic)白血病、リンパ芽球性白血病、リンパ性(lymphocytic)白血病、リンパ性(lymphogenous)白血病、リンパ性(lymphoid)白血病、リンパ肉腫細胞性白血病、肥満細胞性白血病、巨核球性白血病、小骨髄芽球性白血病、単球性白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄性白血病、骨髄顆粒球性白血病、骨髄単球性白血病、ネーゲリ白血病、形質細胞性(plasma cell)白血病、形質細胞性(plasmacytic)白血病、前骨髄球性白血病、リーダー細胞性白血病、シリング白血病、幹細胞白血病、亜白血性白血病及び未分化細胞白血病が挙げられる。
【0064】
用語「ガン腫」は、周囲組織へ浸潤し転移を生じる傾向がある上皮細胞からなる悪性の新成長物をいう。例示的なガン腫としては、例えば、小葉(acinar)ガン腫、小葉(acinous)ガン腫、腺嚢ガン腫、腺様嚢胞ガン腫、腺ガン腫(carcinoma adenomatosum)、副腎皮質のガン腫、肺胞腺ガン腫、肺胞細胞ガン腫、基底細胞ガン腫(basal cell carcinoma)、基底細胞ガン腫(carcinoma basocellulare)、類基底細胞ガン腫、基底有棘細胞ガン腫、気管支肺胞腺ガン腫、細気管支ガン腫、気管支原性ガン腫、脳状ガン腫(cerebriform carcinoma)、胆管細胞性ガン腫、絨毛ガン腫、膠様ガン腫(colloid carcinoma)、コメドガン腫、脳梁ガン腫(corpus carcinoma)、篩状ガン腫、鎧状ガン腫、皮膚ガン腫、円筒状ガン腫(cylindrical carcinoma)、円柱細胞ガン腫、腺管ガン腫、緻密ガン腫(carcinoma durum)、胎児性ガン腫、脳様ガン腫(encephaloid carcinoma)、類表皮ガン腫(epiennoid carcinoma)、上皮腺ガン腫(carcinoma epitheliale adenoides)、外方増殖性ガン腫、潰瘍ガン腫、線維ガン腫(carcinoma fibrosum)、ゼラチン状ガン腫、膠状ガン腫(gelatinous carcinoma)、巨細胞ガン腫(giant cell carcinoma)、巨細胞ガン腫(carcinoma gigantocellulare)、腺ガン腫(glandular carcinoma)、顆粒膜細胞ガン腫、毛母体ガン腫(hair-matrix carcinoma)、血性ガン腫(hematoid carcinoma)、肝細胞ガン腫、ヒュルトレ細胞ガン腫、硝子様ガン腫(hyaline carcinoma)、副腎様ガン腫(hypemephroid carcinoma)、乳児型胎児性ガン腫(infantile embryonal carcinoma)、上皮内ガン腫、表皮内ガン腫(carcinoma in situ)、表皮内ガン腫(intraepithelial carcinoma)、Krompecherガン腫、Kulchitzky細胞ガン腫、大細胞ガン腫、レンズ状ガン腫(lenticular carcinoma)、レンズ状ガン腫(carcinoma lenticulare)、脂肪腫性ガン腫、リンパ上皮ガン腫、髄様ガン腫(carcinoma medullare)、髄様ガン腫(medullary carcinoma)、黒色ガン腫、軟ガン腫(carcinoma molle)、粘液性ガン腫(mucinous carcinoma)、粘液性ガン腫(carcinoma muciparum)、粘液細胞ガン腫(carcinoma mucocellulare)、粘液性類表皮ガン腫(mucoepidermoid carcinoma)、粘液ガン腫(carcinoma mucosum)、粘液性ガン腫(mucous carcinoma)、粘液腫様、鼻咽頭ガン腫(naspharyngeal carcinoma)、えん麦細胞ガン腫、骨化性ガン腫(carcinoma ossificans)、類骨ガン腫(osteoid carcinoma)、乳頭状ガン腫、門脈周囲ガン腫、上皮内ガン腫(preinvasive carcinoma)、有棘細胞ガン腫、粥状ガン腫(pultaceous carcinoma)、腎臓の腎細胞ガン腫、補充ガン腫(reserve cell carcinoma)、肉腫様ガン腫(carcinoma sarcomatodes)、シュナイダーガン腫、硬性ガン腫、陰嚢ガン腫(carcinoma scroti)、印環細胞ガン腫、単純ガン腫、小細胞ガン腫、ソラノイドガン腫(solanoid carcinoma)、回転楕円面細胞ガン腫、紡錘体細胞ガン腫、海綿様ガン腫、扁平上皮ガン腫、扁平上皮細胞ガン腫、ストリングガン腫(string carcinoma)、毛細血管拡張性ガン腫(carcinoma telangiectaticum)、毛細血管拡張性ガン腫(carcinoma telangiectodes)、移行上皮ガン腫、結節ガン腫(carcinoma tuberosum)、結節ガン腫(tuberous carcinoma)、疣贅ガン腫及び絨毛ガン腫(carcinoma villosum)が挙げられる。
【0065】
用語「肉腫」とは、一般に、胚性結合組織のような物質からなる腫瘍をいい、一般に、線維性物質又は均質な物質中に埋め込まれた密にパックされた細胞から構成される。肉腫としては、例えば、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、Abemethy肉腫、脂肪肉腫(adipose sarcoma)、脂肪肉腫(liposarcoma)、胞状軟部肉腫、エナメル上皮肉腫、ブドウ状肉腫、緑色腫肉腫、絨毛ガン腫、胎児性肉腫、Wilns腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質性肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、特発性多発性色素性出血性肉腫(idiopathic multiple pigmented hemorrhagic sarcoma)、B細胞の免疫芽球性肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽球性肉腫、イエンセン肉腫、カポジ肉腫、クップファー細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉肉腫、傍骨性肉腫、細網肉腫、ラウス肉腫、漿液嚢胞性肉腫、滑膜肉腫及び毛細血管拡張性肉腫が挙げられる。
【0066】
用語「黒色腫」は、皮膚及び他の器官のメラニン細胞系から生じる腫瘍を意味することとする。黒色腫としては、例えば、末端部黒子黒色腫、メラニン欠乏性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91黒色腫、ハーディング‐パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子黒色腫、悪性黒色腫、結節性黒色腫、爪下黒色腫及び表在拡大型黒色腫が挙げられる。
【0067】
更なるガンとしては、例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、乳ガン、卵巣ガン、肺ガン、横紋筋肉腫、原発性血小板血症、原発性マクログロブリン血症、小細胞肺腫瘍、原発性脳腫瘍、胃ガン、結腸ガン、悪性膵臓インスリン腫、悪性カルチノイド、前悪性皮膚障害、睾丸ガン、リンパ腫、甲状腺ガン、神経芽細胞腫、食道ガン、泌尿生殖路ガン、悪性高カルシウム血症、子宮頸ガン、子宮内膜ガン及び副腎皮質ガンが挙げられる。
【0068】
或る実施形態では、ガンは上皮ガン又は腺ガンである。例えば、或る実施形態では、前記疾患は、上皮組織に由来する卵巣ガン又は子宮頸ガンであり得る。別の例として、或る実施形態では、疾患は、卵巣ガン、子宮頸ガン、乳ガン、子宮内膜ガン、結腸ガン、前立腺ガン、肺ガン、黒色腫及び膵臓ガンを含むがこれらに限定されない群より選択される腺ガンであり得る。
【0069】
或る実施形態では、1又はそれより多い抗原を、ガン(或る実施形態では、特定ステージのガン)と相関付けられた自己抗体の検出における使用のために選択することができる。ガンと関連する自己抗体が反応する抗原であって、本方法で使用することができる抗原の非限定的実施例を下記の表に列挙する。
【0070】
一例として、ガン抗原ペプチド、例えばアポトーシス阻害剤タンパク質(inhibitor-of-apoptosis proteins:IAP)ファミリー(例えば、サービビン)のメンバーを利用することができる。サービビンは膵臓腺ガンの大部分で発現する(Sarelaら,Expression of survivin, a novel inhibitor of apoptosis and cell cycle regulatory protein, in pancreatic adenocarcinoma. Br J Cancer 2002 Mar 18;86(6):886-92)。
【0071】
本方法で有用な更なる抗原としては、ムチン(例えば、CA125 (MUC-16)、TAG-72及びMUC-1)が挙げられる。増大したムチン産生が多くの腺ガン(膵臓ガン、肺ガン、乳ガン、卵巣ガン、結腸ガン及びその他のガンを含む)で生じる。腫瘍関連抗原MUC-1は、多様な起源(例えば、乳房、卵巣及び結腸)のヒト腺ガンにおいて過剰発現し、過少グリコシル化される(underglycosylated)(Henderikxら,Human single-chain Fv antibodies to MUC-1 core peptide selected from phage display libraries recognize unique epitopes and predominantly bind adenocarcinoma. Cancer Res. 1998 Oct 1;58(19):4324-32)。加えて、腫瘍関連糖タンパク質TAG-72は、ヒト腺ガンの大部分で発現するが、ほとんどの正常組織では発現することは稀である(Yoonら,Construction, affinity maturation, and biological characterization of an anti-tumor-associated glycoprotein-72 humanized antibody. J Biol Chem. 2006 Mar 17;281(11):6985-92)。
【0072】
本方法で有用な他の抗原としては、ガン-精巣抗原(例えば、NY-ESO-1、SSX-1、SSX-2、SSX-4及びSCP-1)が挙げられる。一例として、例えば、漿液性卵巣新生物におけるガン-精巣抗原の発現は、悪性度と直接関連付けることができると立証されている。
【0073】
本方法で有用な更なる抗原としては、熱ショックタンパク質(例えば、HSP27、HSP60、HSP90及びGRP78)が挙げられる。例えば、HSPの発現は肺腺ガンにおいてより高いことが証明されている。更に、HSP70及びHSP90の両方が、子宮内膜ガン腫の生起及び予後に関連し得る。例えば、Crouteら,Expression of stress-related genes in a cadmium-resistant A549 human cell line. Journal of Toxicology & Environmental Health Part A. 68(9):703-18, 2005;Liangら,Mislocalization of membrane proteins associated with multidrug resistance in cisplatin-resistant cancer cell lines. Cancer Research. 63(18):5909-16, 2003;Lee,GRP78 induction in cancer: therapeutic and prognostic implications. Cancer Research. 67(8):3496-9, 2007;及びLeeら,GRP78 as a novel predictor of responsiveness to chemotherapy in breast cancer. Cancer Research. 66(16):7849-53, 2006もまた参照。
【0074】
本発明で有用な抗原の別の例としては、メソテリンが挙げられる。メソテリンは、正常中皮細胞上に存在する分化抗原であり、幾つかのヒト腫瘍(中皮腫並びに卵巣及び膵臓腺ガンを含む)で過剰発現する(Hassanら,Mesothelin: a new taget for immunotherapy. Clin Cancer Res. 2004 Jun 15;10(12 Pt 1):3937-42;Baruchら,Immunocytochemical study of the expression of mesothelin in fine-needle aspiration biopsy specimens of pancreatic adenocarcinoma. Diagnostic Cytopathology. 35(3):143-7, 2007;Puら,Utility of WT-1, p63, MOC31, mesothelin, and cytokeratin (K903 and CK5/6) immunostains in differentiating adenocarcinoma, squamous cell carcinoma, and malignant mesothelioma in effusions. Diagnostic Cytopathology. 36(1):20-5, 2008;Arganiら,Mesothelin is overexpressed in the vast majority of ductal adenocarcinomas of the pancreas: identification of a new pancreatic cancer marker by serial analysis of gene expression (SAGE). Clinical Cancer Research. 7(12):3862-8, 2001;及びDennisら,Markers of adenocarcinoma characteristic of the site of origin: development of a diagnostic algorithm. Clinical Cancer Research. 11(10):3766-72, 2005)。
【0075】
【表1】

【0076】
III.不妊症を診断する方法
本明細書に開示の主題は更に、対象における不妊症を診断し特徴付ける方法を提供する。不妊症は、毎年約7.3百万のアメリカ人が患っている一般的な医学的状態である。妊娠を試みている夫婦の約10%〜15%が1年後に妊娠できないでいると推定される。不妊症としては女性不妊が挙げられる。女性不妊は、医療提供機関が、少なくとも1年後に妊娠することができない婦女子又は妊娠することはできるが、出産まで妊娠を維持できない婦女子に対して使用する用語である。女性不妊のほとんどの症例は、排卵に関する問題に起因する。生殖能力及び受胎能力が影響を受ける幾つかの不妊症としては、早発性卵巣機能不全(POF)(自然閉経前に卵巣が機能を停止する)、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)(卵巣が卵子を定期的に放出できないか、又は生存可能な健常な卵子を放出できない)及び子宮内膜症に起因する生殖に関する病理状態が挙げられる。他の不妊症としては、子宮内膜症、子癇前症、早産、胎内発育遅延及び再発性妊娠喪失が挙げられる。
【0077】
現在では、医療専門家は、排卵状態の評価及び子宮若しくはファローピウス管の病理又は他の原因因子を同定する検査からなる精密検査を行うことによって不妊を診断する。多くの症例で、臨床診断は、一般的な基礎病因の排除により、2回の月経周期後に成される。生殖障害(再発性自然流産及び他の不妊症を含む)は、複数の原因から生じることがある。
【0078】
自己免疫機序が不妊症(例えば、子宮内膜症及び卵巣不全)に関与しており、子癇前症又は自然流産の病態生理を担っている可能性がある。抗卵巣自己抗体は、不明の不妊を有する患者の33〜61%で検出されており、このことは、この病理が早期ステージの自己免疫卵巣不全を表している可能性を示唆する。他の自己免疫病理(例えば、タイプ1真性糖尿病及び甲状腺炎)と同様に、抗卵巣抗体は、臨床徴候の発現の数ヶ月前又は数年前に出現し得、このため不明の不妊を有する婦女子における将来の卵巣不全を予測し得る。
【0079】
子宮内膜症は、10%までの出産年齢の婦女子を悩ませる疾患であり、子宮外の子宮内膜組織のホルモンに調節された成長により特徴付けられる。子宮内膜症は、罹患婦女子の30〜50%で女性不妊症の原因であることが知られている。自己免疫機序がこれら患者に関与し、異なる候補自己抗原に対する抗体がこれら患者で立証されたと示唆されている。子宮内膜症における不妊の機序は十分に理解されていないが、子宮内膜症は、3分の2までの患者において、自己抗体及び/又は他の自己免疫疾患と関係することが示されている。子宮内膜症を有する患者の100%で抗子宮内膜抗体の存在が、62%で抗卵巣抗体の存在が報告されている。
【0080】
自己免疫の関与はまたPOFにおいて研究されており、自己免疫形態のPOFの全割合は20〜70%と推定されている。ヒト卵巣は、種々の状況(幾つかの器官特異的な又は全身性の自己免疫疾患を含む)において自己免疫攻撃の標的であり得る。臨床的には、続いて起こる卵巣機能不全はしばしばPOFを生じるが、卵巣が関与する他の病理(例えば、不明の不妊、PCOS及び子宮内膜症)が抗卵巣自己免疫に関係していた。これら病理における自己免疫機序の診断は、抗卵巣自己抗体の検出に依存するが、最近の特別な注意は、自己免疫応答の細胞成分に焦点が当てられている。しかし、自己免疫エフェクターの分子標的について知られていることはほとんどなく、非常に僅かな自己抗原が公式に同定されている。
【0081】
種々の卵巣標的を指向する自己抗体の検出は、POFの自己免疫病因論の仮説を支持する。抗卵巣抗体についての最初の報告は、主にPOF及び関連する副腎自己免疫疾患を有する患者を含んでいた。これら患者は、副腎皮質、精巣、胎盤及び卵巣の幾つかのタイプのステロイド産生細胞を認識し、ステロイド細胞抗体(SCA)と名付けられた抗体を有していた。SCAの罹患率は臨床特徴に依存していた:SCAはAPS-I患者の約60%及びAPS-II患者の25〜40%で検出することができるが、最も高い罹患率(78〜100%)はPOFを有する患者において示されている。また、多発性内分泌腺症及びSCAを有する正常周期の婦女子の33〜43%が8〜15年以内に卵巣不全を発症することが示されている。
【0082】
生殖障害の別の一般的原因は、多くの臨床徴候と関連する慢性高アンドロゲン性無排卵状態により特徴付けられ、出産年齢の婦女子の5〜10%が罹患するPCOSである。PCOS及び症状を有さない多嚢胞性卵巣はホルモン調節不全に関係するが、自己免疫障害が証明されている。抗卵巣血清抗体に関連する嚢胞状況を有する自己免疫性卵巣炎の組織病理学的特徴が報告されている。幾人かの研究者らは、器官非特異的及び器官特異的な自己抗体の罹患率に取り組んでおり、PCOS患者の50〜60%で抗卵巣抗体を証明している。Tungは、卵巣不全を生じるマウスモデルにおける卵母細胞自己抗体の産生を報告した。臨床的に無症状の患者における自己免疫機能不全もまた、再発性自然流産を導き得る。再発性に流産する女性の幾らかは、事実、1又はそれより多いタイプの異常自己抗体を有している。抗リン脂質抗体、抗DNA抗体及び抗核抗体が再発性流産に関わっている。自然流産における1つの機序は、β2-糖タンパク質I、プロトロンビン及び/又はアネクシンVに対する自己抗体の反応により引き起こされる胎盤血管系の血栓症及び胎盤梗塞であると考えられる。可能性のある別の原因は、栄養膜細胞層細胞への自己抗体の直接結合である。このことは、合胞体栄養細胞層への分化を防止することにより、母性脱落膜への栄養膜進入及び移植を損なう。
【0083】
免疫系は、早発性卵巣機能不全、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜症、再発性妊娠喪失及び他の不妊症の病原において或る顕著な役割を演じていることが示されている。本明細書に開示の主題は、不妊症(POF、PCOS、子宮内膜症、子癇前症、早産、胎内発育遅延及び再発性妊娠喪失を含むがこれらに限定されない)を診断する補助としての免疫反応性のマーカー(例えば、不妊症に関連する自己抗体)の使用を提供する。更に、生殖管についての特異的成分に対する自己免疫の評価は、本明細書に開示の主題により提供されるように、不妊治療の予後のツールである。
【0084】
このように、本明細書に開示の主題の或る実施形態では、対象において不妊症を診断する方法が提供される。或る実施形態では、この方法は、対象からの自己抗体を含むか又は含むと疑われる生物学的サンプルを用意し;自己抗体免疫反応性ペプチドを含んでなる抗原を該サンプルと接触させ;サンプル中の前記抗原に免疫反応性の自己抗体を検出し;抗原に免疫反応性の自己抗体のレベルを参照レベルと比較して対象における不妊症を診断することを含んでなる。
【0085】
更に、本明細書に開示の主題の或る実施形態では、対象において自己抗体産生に関連する不妊症を特徴付ける方法が提供される。或る実施形態では、この方法は、対象からの自己抗体を含む生物学的サンプルを用意し;自己抗体免疫反応性ペプチドを含んでなる抗原を該サンプルと接触させ;サンプル中の前記抗原に免疫反応性の自己抗体を検出し;抗原に免疫反応性の自己抗体のレベルを定量して対象における不妊症を特徴付けることを含んでなる。
【0086】
例えば、或る実施形態では、不妊症は、早発性卵巣機能不全(POF)、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、子宮内膜症、子癇前症、早産、胎内発育遅延及び再発性妊娠喪失(自然流産)を含むがこれらに限定されない群より選択される疾患である。更に、或る実施形態では、検出された自己抗体は、卵巣、子宮内膜、胎盤又はこれらの組合せに由来する抗原に対して免疫反応性である。
【0087】
対象において不妊症を診断し、及び/又は特徴付ける方法の或る実施形態では、自己抗体免疫反応性ペプチドはエキソソームから単離することができる。或る実施形態では、自己抗体免疫反応性ペプチドは、下記からなる群より選択されるペプチド抗原である:約50kD及び80kDの分子量を有する抗原並びに約10kD、30kD、45kD、90kD及び125kDの分子量を有する膜抗原。膜タンパク質認識は全ての不妊により共有される;しかし、核タンパク質認識は子宮内膜症に独特であるようである。
【0088】
IV.自己抗体を検出するキット
更なる実施形態では、本明細書に開示の主題は、生物学的サンプル中の自己抗体の検出で使用する免疫学的キットを提供する。このようなキットは、一般に、本明細書に開示される、試験する自己抗体と免疫反応することができる1又はそれより多い抗原を含んでなることができる。或る実施形態では、抗原は、本明細書に開示するように、エキソソームから単離することができる。よって、より詳細には、この免疫検出キットは、適切な容器に、1又はそれより多い自己抗体免疫反応性ペプチド抗原を含んでなる。或る実施形態では、このキットは、前記抗原に結合する抗体及び/又は他の抗体(例えば、目的の自己抗体)に例えばFc部分を介して結合する抗体を更に含んでなる。
【0089】
或る実施形態では、抗原は固相支持体、例えばカラムマトリクス又はマイクロタイタープレートのウェル、メンブレン(例えば、ニトロセルロース、PVDF又は類似の材料)、ビーズ又はディップスティックに結合して提供することができる。或いは、支持体は、このキットの別の要素として提供することができる。
【0090】
このキットの免疫検出試薬としては、所与の検出抗体又は前記抗原自体に会合するか又は連結される検出標識を挙げることができる。二次結合性リガンドと会合するか又は付着される検出標識もまた企図される。そのような検出標識としては、色素、ハプテン、化学発光又は蛍光分子(ローダミン、フルオレセイン、緑色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)、ビオチン、放射性標識(3H、35S、32P、14C、131I)又は酵素(アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)が挙げられる。
【0091】
このキットは、所定の量の適切な標準物(抗体及び抗原の両方を含む)を更に含んでなることができる。これらは、検出アッセイの標準曲線を作成するために使用することができる。
本明細書に開示の主題のキットは、タイプに関わらず、一般に、生物学的物質が配置され、適切に小分けされる1又はそれより多い容器を含んでなることができる。キットの成分は、水性媒体中に又は凍結乾燥形態でのいずれかでパッケージすることができる。
【0092】
本明細書に開示の主題の組成物は、有利には、活性試薬、適切な容器及び本キットの使用のための指示書さえも含んでなるキットにパッケージすることができる。本キットの試薬は、固相支持体に付着させてか、又は乾燥粉末として提供することができる。試薬が液体溶液で提供される場合、この液体溶液は水溶液であり得る。提供される試薬が固相支持体に付着されている場合、固相支持体はクロマトグラフィー媒体、複数のウェルを有する試験プレート又は顕微鏡スライドであり得る。提供される試薬が乾燥粉末である場合、粉末は、提供されていてもよい適切な溶媒の添加により再構成され得る。
【0093】
本キットの容器として、一般には、その中に抗原を配置し所望であれば適切に小分けする、少なくとも1つのマイクロタイタープレートウェル、スライド、バイアル、試験管、フラスコ、ボトル若しくはシリンジさえ、又は他の容器を挙げることができる。第2若しくは第3の結合リガンド又は更なる成分が提供される場合、本キットはまた、一般に、その中にこのリガンド又は成分が配置される第2、第3又は他の更なる容器を含有することができる。
【0094】
本主題のキットはまた、代表的には、商業スケール用に密接拘束状態で、抗原容器及び任意の他の試薬容器を含有するための機構を含むことができる。このような容器としては、その中に所望の容器を保持する射出成形又はブロー成形されたプラスチック容器を挙げることができる。
【実施例】
【0095】
実施例
以下の実施例は、本明細書に開示の主題の態様を説明するために含まれている。本開示及び当該分野における一般技術レベルに照らせば、当業者は、以下の実施例が例示を意図するに過ぎないこと及び本明細書に開示の主題の範囲から逸脱することなく多くの変更、改変及び修正を用いることができることを理解する。
【0096】
実施例1
反応性抗体とガンとの関連
自己反応性抗体は、試験した全てのガン患者において遍在的に証明された。腫瘍反応性自己抗体の出現は、卵巣ガン患者(n=28)及び年齢が適合する腫瘍を有さない女性ボランティア(n=32)において分析した。卵巣ガン患者血清内のIgGの存在及びその卵巣腫瘍に由来する細胞抗原との反応性をELISAにより定量した。
【0097】
対数増殖期のUL-1卵巣腫瘍細胞からの腫瘍由来細胞抗原を、100mM炭酸ナトリウム及び0.5M NaCl(pH8.3)からなるカップリング緩衝液で1:25希釈した。アリコートを96ウェルImmulon4マイクロタイタープレートのウェルに加え、一晩37℃にてインキュベートした。プレートを5%脱脂粉乳でブロックし、次いで1/200希釈した卵巣ガン患者及び年齢が適合する正常コントロールからの200μl血清と一晩4℃にてインキュベートした。プレートを洗浄し、ペルオキシダーゼ接合抗ヒトIgG(1/5000希釈)とインキュベートし、ウェルをOPD(0.4mg/ml)含有50mMクエン酸緩衝液溶液とインキュベートして490nmの吸光度を測定することによって結合抗体の存在を決定した。
【0098】
卵巣ガンを有する全ての患者が、ガンを有さない対照より有意に高いレベルの卵巣腫瘍由来タンパク質を認識する自己抗体を示した(p<0.0001)。コントロール集団からの血清で観察されたIgG結合のレベルは、バックグランドレベルを表す。ガン患者群とコントロール群との間で腫瘍抗原へのIgG結合にオーバーラップは観察されなかった。
【0099】
ガン患者が腫瘍反応性抗体レベルの上昇を示し、これら自己抗体レベルが有意な変動性を示したので、これら腫瘍反応性IgGの相対的吸光度と疾患のステージとの間で統計学的比較を行った。UL-1卵巣腫瘍細胞株からの細胞タンパク質と反応性であるイムノグロブリンのレベルに関するデータは、疾患のステージによって分けた(図1)。反応性IgGレベルは、疾患のステージと共に増加することが観察された。ステージIガン患者(n=8)の血清は、正常血清(n=32、p<0.001)又は良性卵巣疾患を有する婦女子の血清(n=8、p<0.01)のバックグランドを超える有意な増加を示した。ステージI卵巣ガンからの血清及び低い悪性能の卵巣腫瘍からの血清で検出された免疫反応性については有意差は観察されなかった。ステージII患者(n=10)に存在する免疫反応性のレベルは、ステージI患者(p<0.001)において観察されたレベルより有意に大きく、ステージIII患者(n=8、p<0.01)の血清において検出されたレベルより有意に小さかった。ステージIII患者において存在する免疫反応性のレベルは、ステージIV患者(n=8、p<0.001)において観察されたレベルより有意に小さかった。このように、卵巣ガン患者は、疾患のステージに相関する腫瘍反応性抗体を示す。
【0100】
実施例2
腫瘍反応性IgGによる特異的抗原性標的の認識
卵巣ガン患者血清から得られた自己抗体の卵巣腫瘍抗原に対する反応性の量的差は、疾患のステージに基づくことが証明できたので、次いで質的差をウェスタンイムノブロッティング及びデンシトメトリーを用いて調べた。対数増殖期の3つの卵巣腫瘍細胞株(UL-1、UL-3、UL-6)からの細胞タンパク質抗原を用いて、卵巣ガン患者の液性免疫応答と反応性である成分の存在をウェスタンイムノブロットにより評価した(図2、代表的ブロット)。ウェスタンイムノブロッティングは、一次抗体の供給源として患者血清(1:100希釈)を用いて行った。患者由来抗体の腫瘍細胞由来抗原への結合は、ペルオキシダーゼ接合抗ヒトIgGを用いて、続いてECLにより可視化した。免疫反応性はデンシトメトリーによって定量化した。認識される抗原の差及びその認識の強度を分析した。
【0101】
10のステージI血清、10のステージII血清、10のステージIII血清及び12のステージIV血清を分析した。全ての卵巣ガン患者に関して、ウェスタンイムノブロットにより分子量10〜140kDの範囲の複数のバンドが同定されたが、免疫相互作用の数及び強度は、患者間で変化した。イムノブロット上の変化するシグナル強度は、疾患のステージと相関する(レーンあたりの合計ピクセル、相関係数r=0.906)。
【0102】
一般には、後期ステージガン患者ではより強い強度でより多くのバンドが認められたが、ウェスタンイムノブロット上で卵巣ガン患者からのIgGにステージ特異的な差分的認識パターンが観察された。ステージに関連する量的差に加えて、早期ステージ患者は、100kDより大きい分子量を有する幾つかの抗原の独特で強い認識を示したが(パネルA中ボックスで示す)、後期ステージ患者は、40kDより小さい分子量を有する抗原の独特な認識を示した(パネルB中ボックスで示す)。コントロールとして、正常血清の反応性もまたこれらタンパク質に対して試験し、同様に正常卵巣上皮に対するガン患者血清の反応性も調べた。正常(腫瘍を有さない)女性コントロールの血清は、ウェスタンイムノブロットによりタンパク質を認識しなかったが、ガン患者血清は正常卵巣上皮中の僅かに2、3のバンドと反応性を示す。
【0103】
幾つかの抗原が早期ステージ血清により認識され、進行した患者の血清により認識され続けるので、このことは、これら抗原性タンパク質が早期に発現し、その発現は腫瘍の進行を通じて維持されることを証明している。幾つかのタンパク質は腫瘍進行の後期にのみ認識されるようである。このことは、より後期の該タンパク質の変更及び/又は出現を証明する。しかし、該タンパク質は、患者間で共通して認識されるので、これら患者に共通する変更を表している。幾つかの抗原性タンパク質は、早期に優先的に認識されるようであり、このことは、早期の腫瘍発現に必須の変更されたタンパク質の出現を証明する。これらステージ特異的な変更されたタンパク質の同定は、腫瘍の発現及び進行の各々のステージに必須の変更の追加の洞察を提供する。
【0104】
ウェスタンブロッティング又は腫瘍由来抗原ベースのELISAのいずれかを用いた他の研究者らの研究により、試験した全ての患者において腫瘍反応性抗体が検出されている:しかし、特異抗原性タンパク質の認識の評価により、100%の患者で単一成分は同定されておらず、ほとんどの単一タンパク質は、僅か10〜40%の患者で認識されている。この限定的な認識は、抗原性エピトープを修飾し得るガン関連翻訳後修飾を欠く(このことは、免疫反応性の実際のレベルを過小評価し得る)組換えタンパク質(多くの場合で、野生型タンパク質)を用いた腫瘍反応性自己抗体に関するほとんどの研究に起因している可能性がある。正常組織及びガン組織に広く発現する抗原に対する自己抗体応答は、腫瘍特異的変異又は翻訳後修飾の結果であるようである。腫瘍反応性自己抗体は全てのガンで検出することができるが、ガンを有さないボランティアからのこれら特異抗原を認識する腫瘍反応性IgGは稀な事象(<1%)であり、本明細書に開示のアッセイ系では検出されない。
【0105】
実施例3
治療反応性を同定するマーカー
反応性パターンの差異が進行した疾患を有する患者間で観察されたので、そのような差異と化学療法抵抗性との間の相関を調べた。2D電気泳動及び続くウェスタンイムノブロッティングによる細胞成分の分離により、これら差異の幾つかの評価が可能になった。シスプラチン療法に初期応答しなかった患者の血清及び12ヶ月より長く疾患がないままであった初期応答を示した患者の血清を用いて、シスプラチン抵抗性と関係する3つのスポットからなるスポット群の認識を同定した(図3)。本明細書に開示する診断アレイの一部としてのこれら細胞抗原の利用により、抵抗性腫瘍の早期同定が可能になる。
【0106】
実施例4
インビボで認識された抗原性タンパク質の同定
患者の液性応答が卵巣腫瘍と結合する特異ステージ関連タンパク質を指向したので、これら免疫反応性抗原の同定を、タンパク質アレイを開発することにより開始した。分析する総タンパク質の数を最小化するために、免疫反応性タンパク質を免疫沈降により単離した。
【0107】
IgGは、1mlのHITRAP PROTEIN G-SEPHAROSE(登録商標)カラム(GE Healthcare)を用いて進行した卵巣ガンを有する3人の婦女子の血清から単離した。結合したIgG画分を、280nmでモニターしながら、IMMUNPURE(登録商標)溶出緩衝液(GE Healthcare)で溶出させた。IgG含有画分をプールし、濃縮し、次いで製造業者の指示によりHITRAP NHSTMカラム(GE Healthcare)にカップリングさせた。UL-1卵巣腫瘍細胞の細胞タンパク質を可溶化し、明澄化した。固定化した患者IgGのアリコートを前記細胞タンパク質調製物と一晩4℃にてインキュベートし、次いで結合した複合体を溶出させた。これら免疫精製した細胞タンパク質を4.6×250mm C8(300μ)カラムでのRP-HPLCクロマトグラフィーにより分画した。得られる画分をspeed-vacにより乾燥させ、タンパク質アレイを開発するために使用した。タンパク質溶液(2.5μl)を単一スポット上に手操作でロードした。ペルオキシダーゼ接合Igサンプルを、ポジティブコントロールとして及びアレイの位置確認のために、各メンブレン上にスポット状に塗布した(図4A及び4B中レーンCとして示す)。進行したステージの卵巣ガン患者の血清(1:100希釈)をメンブレンと一晩4℃にてインキュベートし、次いでメンブレンをペルオキシダーゼ接合抗ヒトIgGとインキュベートし、ECLにより可視化した。得られるフィルムを画像化し、スポット認識及び定量化についてKodak分析ソフトウェアを用いて分析した。
【0108】
分析した各卵巣ガン患者は複数のタンパク質を認識した;しかし、全ての患者が幾つかのタンパク質を認識した。このアレイシステムを用いると、コントロール(非ガン患者)血清(n=10)はいずれのタンパク質標的も認識しなかった。この観察された患者自己抗体との免疫反応性を担う特異的タンパク質を同定するために、卵巣ガン患者の液性免疫応答により認識される部分に対応するタンパク質の部分を、トリプシン消化後にマトリクス支援レーザ脱離-飛行時間(MALDI-TOF)質量分析に供した。得られるペプチドを、溶融シリカマイクロキャピラリーカラム(75x200μm,Polymicro Technologies, Inc.)上でのHPLCにより分画し、0.1M酢酸(140 B溶媒送達システム)中の0〜80%アセトニトリルの線形勾配を用いて三連四重極質量分析計(TSQ 70, Finnigan MAT)のエレクトロスプレーイオン供給源中に直接溶出させた。各ピークについて質量スペクトルを獲得し、同定のために各タンパク質について得られる分子量フラグメントを他の公知タンパク質のデータベースと比較した。更なる共通ピーク(11、19、44及び49)もまた分析した;しかし、これら画分は複数のタンパク質からなり、配列決定を直接実行できなかった。
【0109】
本方法は、卵巣ガンを有する患者によってのみ認識される一群の抗原を同定することができる(図5)。本明細書中に開示のデータは、疾患の存在、ステージ及び化学療法抵抗性と関連付けられる反応性成分の存在を示す。幾つかのグループは、タンパク質がガン発症の早期に発現することを提案し、これらの多くは自己抗体を惹起することが示されている。Disisら(Global role of the imune system in identifying cancer initiation and limiting disease progression. Journal of Clinical Oncology. 23(35):8923-5, 2005 Dec.)は、ガン患者が疾患の早期ステージで腫瘍関連抗原に対する血清抗体応答を備えていることを証明した。p53に対する自己抗体は、早期ステージ卵巣ガン、直腸結腸ガン及び口腔ガンを有する患者において報告されている。この知見は、免疫反応性 対 ステージにおける有意な差を示し、早期ステージガンにおける認識でさえ、正常及び良性卵巣疾患とは異なる。これら差異は、質的差というよりは量的差(結合強度又は力価)である;しかし、本明細書に開示の診断アレイの設計により、自己抗体存在の同定及びその結合(強度)の定量化の両方が可能になる。よって、(存在することを本発明者らが既に証明した)腫瘍反応性抗体結合(強度)の量的差は、診断のためのガン状態及びステージの適切な識別を提供する。
【0110】
実施例5
確立されたタンパク質標的を有するタンパク質アレイの評価
本発明者らにより以前に同定された自己抗原性タンパク質(表1)に対する市販抗体を用いて、免疫沈降により可溶化UL-1卵巣ガン細胞からタンパク質を単離した。これら単離したタンパク質を用いて、本アプローチの効力を規定するためのタンパク質アレイを確立した。これら免疫精製した細胞タンパク質を用いて、合計サイズ1.5×2cmで12スポットからなるタンパク質アレイを開発した。12のタンパク質溶液(2.5μl)の各々を手作業で単一スポットにロードした。ペルオキシダーゼ接合IgGを、ポジティブコントロールとして及びアレイの位置確認用に、各メンブレン上にスポット状に塗布した。
【0111】
正常女性コントロール(n=20)、良性卵巣疾患を有する婦女子(n=20)及び浸潤性卵巣ガンを有する婦女子(n=20)の1:100希釈血清を、メンブレンと一晩4℃にてインキュベートした。次いで、メンブレンをペルオキシダーゼ接合抗ヒトIgGとインキュベートし、ECLにより可視化した。得られるフィルムを画像化し、スポット認識及び定量化についてKodak分析ソフトウェアを用いて分析した。900ピクセルより大きい吸光度をポジティブと設定し、免疫反応性についてポジティブである血清のパーセンテージを比較した。
【0112】
浸潤性卵巣ガンを有する全ての婦女子の血清は、12の試験した抗原のうち少なくとも2つを認識した;しかし、コントロール及び良性疾患を有する婦女子の血清もまた、少なくとも1つの抗原の有意な認識を示した。対照的に、これら抗原の4又はそれより多くの認識は、浸潤性卵巣ガンを有する婦女子の血清に限定される。4又はそれより多い抗原の認識をカットオフとして設定することにより、感受性 = 100%、特異性 = 76%及び積極予測(positive predictive)値 = 100%で、浸潤性卵巣ガンを有する患者と良性卵巣疾患を有する患者とを識別する能力を有するアッセイを作製した。図6を参照。
【0113】
【表2】

【0114】
良性卵巣塊と悪性卵巣塊との識別に優る更なるパラメータを規定するために、更なる腫瘍由来タンパク質を検査した。図7は、36タンパク質のアレイからの画像を表す。これら結果に基づけば、このアレイ形式は、早期ステージ卵巣ガンに関連する抗原認識と後期ステージ卵巣ガンに関連する抗原認識とを識別することができる。図7に示すデータは、単一卵巣ガン細胞株(UL-1)からの抗原に基づく。他の腫瘍細胞株からの或る抗原は、より強い反応性を示すことができる。異なる卵巣腫瘍株からの(全ての卵巣ガン患者の間で最大の交差反応を示す)最適な抗原は、早期ステージ疾患の診断で使用するために特異的に決定することができる。
【0115】
実施例6
異なるガンから単離したタンパク質のアレイの評価
下記の表は、アレイのレイアウトを示す。コントロールと比較してガン患者において自己抗体を検出する能力について評価した、4つの異なる卵巣ガンから単離した20抗原(合計80のAgが得られる)を示す。使用した4つの卵巣ガン細胞株は、A = UL-1、B = UL-2、C = UL-3及びD = UL-6であり、これらは詳細な説明において詳細に開示されている。
【0116】
【表3】

【0117】
子宮頸ガンについて、以下の16人の対象の各々の血清を評価して、子宮頸ガン細胞株から単離したタンパク質に対して応答する抗体の存在を検出した。これには、12人の子宮頸ガン(腺扁平上皮ガン、扁平上皮細胞ガン及び腺ガン)を有する対象及び4人のコントロール(子宮頸ガンを有さない対象)が含まれた。また、細胞培養物をレチノイン酸で処理した後の反応性も評価した。
【0118】
全ての細胞株(ME180、SiHa、CaSki及びC33A)の可溶性画分に最も大きな反応性が検出され、統計学的に有意であった(p<0.05)(図8A及び8B)。最も小さな反応性は全ての細胞株の膜画分で検出された。反応性をピクセルで定量化した。概して、CaSki(HPV 16及び18)は最も反応性であることが証明され、他の細胞株と比較したとき、エキソソーム及び可溶性画分で最も大きな反応性を示した(p<0.05)。C33A(HPVを有さない細胞株)は膜画分で最も反応性であることが証明された。Me180(HPV-39)は最も少ない量の反応性が証明された。
【0119】
同様な抗原認識が各細胞株間で検出された。異なる細胞株の間で異なる抗原認識が存在した。コントロール血清は反応性を示さなかった。
レチノイン酸で処理した血清では、全ての細胞株において、可溶性細胞関連抗原との反応性が減少した(p<0.05)(図9)。増加した反応性は前記細胞関連抗原で見出された。これは、全ての細胞株の膜画分(p<0.05)、C33A及びSiHa細胞株の核画分(p<0.05)及びSiHa細胞株の細胞質画分(p<0.05)で検出された(図10)。
【0120】
実施例7
複数の異なるガン間の診断アッセイ評価
実施例7の方法
腫瘍反応性IgGによる特異抗原性標的の認識。卵巣ガン患者血清から得られた自己抗体の卵巣腫瘍抗原に対する反応性の量的差が、疾患のステージに基づくことを示すことができたので、次いでELISAイムノブロッティングを用いて質的差を調べ、特異抗原との免疫反応性のレベルを定量化した。エキソソームは、対数増殖期の3つの卵巣腫瘍細胞株(UL-1、UL-3、UL-6)の馴化培地から単離した。
【0121】
特異的な反応性抗原の調製。アッセイ標的の反応性タンパク質は、免疫吸着クロマトグラフィーにより、精製したエキソソームから単離した。目的の各タンパク質についての市販の抗体を入手した。これら抗体を、製造業者の指示により1ml HITRAP NHSTMカラム(GE Healthcare)に固定化した。100,000×gでのエキソソームの遠心分離後、0.3%SDS、2mMオルトバナジン酸ナトリウム、200mM DTT、1mMフッ化ナトリウム、1mMピロリン酸ナトリウム、1μg/mlロイペプチン、1μg/mlアプロチニン、1μg/mlペプスタチン及び1mM PMSFを含む氷上の50mM Tris-HCl(pH7.5)でペレットを可溶化した。溶解物を超音波処理し、10,000×gで15分間遠心分離した。可溶化したタンパク質を、Gタンパク質-アガロース(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)との1時間のインキュベーションにより清澄化した。この清澄化した可溶化タンパク質材料を免疫吸着カラムに適用し、一晩4℃にてインキュベートした。結合した材料を、1% Triton X-100を含有するPBSで3回洗浄し、特異的な抗原性タンパク質を0.1Mグリシン-HCl(pH2.8)により遊離させ、1M Trisで中和させた。この抗原調製物を、TBS中で平衡化したMACROSPHERE GPCTM 150/60カラム(4.6×500)(Grace, Deerfield, IL)に適用し、定組成的(isocratically)に泳動させた。溶出物のアリコートをウェスタンイムノブロットにより評価して、適切な分子画分を確認した。適切な抗原画分を、4.6×250mm C8(300μ)カラム上でのRP-HPLCクロマトグラフィーにより更に分離した。タンパク質ピークを真空遠心分離により乾燥させ、TBS中に再懸濁し、タンパク質アッセイにより定量化した。
【0122】
ELISA規定自己抗体反応性。患者由来自己抗体の腫瘍由来エキソソームに対する反応性のレベルを規定するために、ELISAアッセイを行った。各免疫吸着調製物からの単離したタンパク質を、100mM炭酸ナトリウム及び0.5M NaCl(pH8.3)からなるカップリング緩衝液において1:25希釈した。アリコート(2μg/ウェル)を96ウェルIMMULON 4TMマイクロタイタープレート(Chantilly, VA)のウェルに加え、一晩37℃にてインキュベートした。プレートをPBS中5%の脱脂粉乳で1時間ブロックし、続いてPBS+0.2% Tween-20及び5%脱脂粉乳で3回洗浄した。次いで、プレートを患者及び正常コントロールからの200μlの1/100希釈血清と一晩4℃にてインキュベートした。プレートを洗浄し、ペルオキシダーゼ接合抗ヒトIgG(1/5000希釈)と1時間インキュベートした。洗浄後、o-フェニレンジアミンジヒドロクロリド(0.4mg/ml)(OPD, Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)を含有する50mMクエン酸緩衝液溶液とウェルをインキュベートし、490nmでの吸光度を測定することにより、結合した抗体の存在を決定した。
【0123】
実施例7の結果
免疫吸着精製抗原を用いて、各アッセイ用のマイクロタイタープレートを構築した。正常女性コントロール(n=10)、良性卵巣疾患を有する婦女子(n=10)及び卵巣ガンを有する婦女子(各ステージI〜IVについてn=10)の1:100希釈血清を、ウェルを用いて二連で一晩4℃にてインキュベートした。ウェルをTBSで3回洗浄し、次いでペルオキシダーゼ接合抗ヒトIgGとインキュベートした。各ウェルの吸光度を490nmで測定した。各患者の平均吸光度を決定し、プロットした。
【0124】
正常コントロール及び良性疾患を有する婦女子の両方の免疫反応性はベースラインにあり、試験した全ての抗原に対してネガティブであると考えられた(図11)。図11中のグラフの各点は、各患者についての平均を表す。全ての症例で、全体の群の平均は、コントロール及び良性症例とは統計学的に異なっていた。
【0125】
ガンの診断としての本明細書に開示の方法の使用を評価するために、進行した膵臓ガン、肺ガン、乳ガン及び結腸ガンを有する婦女子の血清を使用したことを除き、概して本研究を繰り返した。試験した全てのガン患者は、ヌクレオフォスミン、カテプシンD、p53及びSSX抗原を認識する自己抗体を生成するようである。卵巣ガンを有する婦女子のみが胎盤タイプアルカリホスファターゼ(PLAP)を認識した。肺ガン及び結腸ガンを有する患者は、サービビンをより強く認識した(図12)。
【0126】
実施例8
組換えタンパク質及び天然タンパク質上の抗原性エピトープの決定
特異的な天然抗原及びその組換え対応物の各々の一部(20μg)をドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分離した。電気泳動後、バンドをクーマシーブルー染色により可視化し、各バンドを切り出した。ゲルをSDSランニング緩衝液で平衡化した。特異的タンパク質を含むゲル片を20%アクリルアミドゲルのウェルに貼り付けた。ゲル片をより小さな片に刻み、SDS-PAGEのためにスタッキングゲルのサンプルウェルに入れた。100μlの電極溶液を乾燥させたゲル片に加えた。1時間のインキュベーション後、脱イオン化水中に10μlの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)V8プロテアーゼ(Pierce, Rockford, IL, USA)(0.1μg/mL)を含む20μlの希釈SDSサンプル緩衝液をサンプル溶液上に載せた。サンプル及びプロテアーゼが上方のゲル中でスタックするまで電気泳動を行い、1時間中断してタンパク質を消化した。次いで、電気泳動を続け、分離した消化物をPVDFメンブレン上にエレクトロブロッティングした。次いで、メンブレンを1:100希釈した患者血清と一晩インキュベートした。TBSで3回洗浄後、メンブレンを二次抗体としてのペルオキシダーゼ接合抗ヒトIgGと1時間インキュベートした。結合した免疫複合体を増強化学発光(ECL,Amersham Life Sciences,Arlington Heights,IL)により可視化した。
【0127】
p53について、患者1及び3は共に、腫瘍由来タンパク質中の中間のペプチドバンドを認識した。この中間ペプチドバンドは、組換えタンパク質のペプチドでは観察されなかった(図13)。GRP78については、全ての患者が、腫瘍由来タンパク質中の3〜5の更なるペプチドバンドを認識した。この更なるペプチドバンドは、組換えタンパク質のペプチドでは観察されなかった(図13)。ヌクレオフォスミンについては、全ての患者が、組換えタンパク質より腫瘍由来タンパク質に強い反応性を示した(図13)。患者2は、腫瘍由来のヌクレオフォスミン中の3つの更なるバンドを認識し、患者3は、組換えタンパク質との比較で、1つの低分子量バンドを認識した。これら結果は、エキソソームに由来する天然の腫瘍由来タンパク質が、組換えタンパク質と比較して、更なる抗原性エピトープを示すことを証明する。
【0128】
実施例9
不妊症の診断アッセイ
不妊症患者由来の自己抗体による免疫反応性のレベルを定量化するために、子宮内膜症を有する患者の血清内のIgGの存在及び子宮内膜の膜、核及び細胞質に由来する細胞抗原に対するその反応性を、ELISAにより定量化した。各細胞下画分からの単離したタンパク質を100mM炭酸ナトリウム及び0.5M NaCl(pH8.3)からなるカップリング緩衝液で1:25希釈した。アリコートを96ウェルImmulon4TMマイクロタイタープレート(Chantilly,VA)のウェルに加え、一晩37℃にてインキュベートした。プレートをPBS中5%の脱脂粉乳で1時間ブロックし、続いてPBS+0.2% Tween-20及び5%脱脂粉乳で3回洗浄した。次いで、プレートを1/100希釈した患者及び正常コントロールからの200μl血清と一晩4℃にてインキュベートした。プレートを洗浄し、ペルオキシダーゼ接合抗ヒトIgG(1/5000希釈)と1時間インキュベートした。洗浄後、o-フェニレンジアミンジヒドロクロリド(0.4mg/ml)(OPD, Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)を含有する50mMクエン酸緩衝液溶液とウェルをインキュベートし、490nmでの吸光度を測定することにより、結合した抗体の存在を決定した。
【0129】
血清サンプルを、子宮内膜症、早発性卵巣機能不全(POF)及び再発性妊娠喪失に起因する不妊と診断された21〜34歳の婦女子から得た。コントロール対象は、疼痛徴候がなく、骨盤の異常もなく、以前に骨盤の手術も受けていない年齢が適合する女性であった。子宮内膜症は、改訂米国生殖医学会(rASRM)分類に従ってステージを決定した。サンプルは、Greenville Health System及びUniversity of Louisvilleの生殖内分泌・不妊部門(Divisions of Reproductive Endocrinology and Infertility)から得た。25標本を、コントロール、ステージIIの子宮内膜症及びステージIIIの子宮内膜症を有する婦女子から各々25患者、再発性妊娠喪失を経験している18患者及び早発性卵巣機能不全を有する11患者から得た。サンプルは、GHS及びUniversity of Louisvilleにおいて、ヒト研究委員会(Human Studies Committee)が審査したインフォームドコンセントの下で集めた。静脈血サンプルをヘパリン添加チューブに得て、凝固後に血清を単離した。この血清を使用まで−70℃で保存した。
【0130】
変動は観察されたが、試験した不妊症を有する全ての患者は、正常コントロール患者に対して有意なレベルの自己抗体を示した(p<0.0001)。患者が自己抗体の上昇したレベルを示し、これら自己抗体のレベルが有意な変動を示したので、統計学的比較をこれらIgGの相対的吸光度と疾患のステージとの間で行った。反応性IgGのレベルは疾患のステージと共に増大して観察され、ステージII患者からの血清は正常血清に対して有意な増加を示した(p<0.001)(図14)。ステージIIIに存在する免疫反応性のレベルは、全ての抗原供給源について、ステージII患者の血清中で観察されるレベルより有意に大きかった(p<0.01)。
【0131】
子宮内膜からの抗原とのこれら自己抗体の反応性を特徴付けるために、正常コントロール及び子宮内膜症(ステージII及びIII)を有する婦女子からの血清サンプルを、ウェスタンイムノブロッティングにより更に分析した。患者群からの代表的なイムノブロットを図15に示す。コントロール患者(子宮内膜症を有さない)は、前記細胞抗原のいずれにも有意な認識を示さなかった。
【0132】
ステージIIの子宮内膜症を有する患者は、子宮内膜及び卵巣の両方からの細胞抗原と強い反応性を示した。これら組織のうち、最も強い反応は子宮内膜の膜画分からの抗原で観察され、続いて卵巣からの膜抗原であった。ステージIIIの子宮内膜症を有する患者の血清は、類似するパターンの反応性を示した;しかし、より強い反応は全ての供給源からの膜抗原で観察された。子宮内膜の膜抗原のうち、子宮内膜症を有する全ての患者が80及び140kDのタンパク質を認識したが、ステージIII疾患を有する患者は更に、10、28及び40kDのバンドを認識した。140kDの膜タンパク質の共通認識は、卵巣膜抗原で共有された。一般に、子宮内膜症を有する患者もまた、90及び100kDのタンパク質の強い共有される認識を示したが、ステージIII疾患を有する患者はまた更に、50及び78kDのバンドを認識した。細胞質ゾルに由来する抗原では反応性はほとんど観察されなかった。
【0133】
反応性の強度に起因して、子宮内膜の膜抗原を二次元電気泳動により分離することによって抗体結合を更に分析した(図16A及び16B)。このアプローチにより膜抗原の更なる分離が可能になった。ステージIIIの子宮内膜症を有する患者において観察される、ステージIIの子宮内膜症を有する患者に対して増加したレベルの反応性は、同じ成分との反応性及び更なる成分の認識の両方の結果であるようである。
【0134】
本研究の知見に基づいて、特異的な細胞タンパク質に対する子宮内膜自己抗体及び/又はNK活性化の抑制の評価は、子宮内膜症の診断の指標として役立ち得る。特異的子宮内膜膜抗原と反応性の自己抗体の存在は、子宮内膜症の発症に独特であるようであり、疾患のステージと相関付けられる。NK活性化のみの評価は、診断マーカーの使用に関して特異的でないかもしれないが、自己抗体の存在を併せると、それらは、子宮内膜症の確定診断に関して特異的で感受性を提供することができる。
【0135】
このアプローチが不妊の病因を識別するかを評価するために、タンパク質アレイテンプレートは34スポットからなり、幅方向に4スポット、長さ方向に80スポット、合計サイズが4×8cmであった。このテンプレートをMAGNAGRAPHメンブレン(MSI)上に溶液をスポット状に塗布するためのガイドとして使用した。メンブレン上に捕捉タンパク質をスポット状に塗布するために、テンプレートをライトボックス上に置き、MAGNAGRAPHメンブレンをテンプレートの上部に置いた。エキソソームはHec-1A子宮内膜細胞の培養物から単離した。単離したエキソソームを可溶化し、次いで0.25% SSAを用いて沈降させた。次いで、沈降したエキソソームタンパク質をTBS中に再懸濁し、超音波処理した。次いで、このタンパク質溶液を、C18逆相HPLCカラムを用いて分画し、0〜100%アセトニトリル勾配で溶出させた。得られる32のタンパク質ピークを濃縮し、溶媒を真空遠心分離により除去した。各タンパク質をTBS中に再懸濁し、タンパク質濃度を決定した。各タンパク質溶液(0.25μl)を手作業で単一スポットにロードした。各タンパク質溶液をブロモフェノールブルー(追跡用)中100μg/mlの初期濃度に希釈した。各タンパク質について、2ngのスポットを作製した。メンブレンを0.1M Tris-HCl(pH7.6)、0.15M NaCl(TBS)中5%のBSAで1時間室温でブロックした。次いで、このメンブレンをTBS+0.1% Tween-20で3回、TBSで2回洗浄した。次いで、メンブレンを密封バッグに保存し、使用まで冷蔵した。
【0136】
診断試験のために、血清を用いてアッセイを行った。既知の患者及び正常な妊娠可能な非妊娠コントロールからの血清の希釈物(1:100)を、本明細書に開示のタンパク質アレイを用いて試験し、標的タンパク質希釈物と組み合せて、病因特異的な不妊を有する患者を同定するために最適な血清希釈率を規定した。使用の前にアレイメンブレンをTBS-Tween-20で洗浄し、患者血清の10倍系列希釈物をTBS中に作製する。希釈血清をメンブレンと一晩4℃にてインキュベートする。このメンブレンをTBS+0.1% Tween-20で3回洗浄した。次いで、メンブレンをペルオキシダーゼ接合抗ヒトIgGとインキュベートし、TBSで3回洗浄し、ECLにより可視化した。得られるフィルムをKodak D290カメラで画像化し、スポット認識及び定量化についてKodak分析ソフトウェアを用いて分析した(図17)。異なるパターンの免疫反応性が観察された。子宮内膜タンパク質抗原のこの弁別的認識に基づいて、子宮内膜症に起因する不妊症と早発性卵巣機能不全に起因する不妊症とを識別して患者を診断することができる。
【0137】
同様なアプローチで、再発性妊娠喪失を経験した婦女子もまた、ウェスタンイムノブロッティングを用いて、胎盤由来抗原に対する自己抗体の存在について検査した(図18)。妊娠は自己抗体の産生を生じる。これは、Th1免疫応答からTh2免疫応答への正常なシフトに起因する。しかし、再発性妊娠喪失を経験した婦女子は、全体的な免疫反応性の増加及び独特な成分の認識の両方を示した。無症状患者(後に再発性妊娠喪失を経験する)は、45,000ダルトン未満の分子量及び130,000ダルトンより大きい分子量の更なる抗原を認識した。
【0138】
参考文献
本明細書に開示の主題の種々の詳細は、本明細書に開示の主題の範囲から逸脱することなく変更できることが理解される。更に、上記の説明は、例証を目的とするに過ぎず、制限を目的とするものではない。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)対象からの自己抗体を含むか又は含むと疑われる生物学的サンプルを用意し;
(b)エキソソームから単離した自己抗体免疫反応性ペプチドを含んでなる抗原を前記サンプルと接触させ;
(c)前記サンプル中の前記抗原に免疫反応性の自己抗体を検出し;そして
(d)前記抗原に免疫反応性の自己抗体のレベルを参照レベルと比較して前記対象における自己抗体産生に関連する疾患を診断することを含んでなる、対象において自己抗体産生に関連する疾患を診断する方法。
【請求項2】
前記疾患がガン又は不妊症である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疾患が上皮ガン又は腺ガンである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗原が、腫瘍サプレッサーファミリーペプチド、核酸結合性ペプチド、抗アポトーシスペプチド、ガン遺伝子ファミリーペプチド、ホメオボックスペプチド、ガン精巣抗原ペプチド、熱ショックタンパク質ファミリーペプチド、プロリソソーム酵素ファミリーペプチドの酵素前駆体、PLAP、接着分子ファミリーペプチド、接着関連ペプチド及びキナーゼファミリーペプチドからなる群より選択されるガン抗原ペプチドを含んでなる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記疾患が、早発性卵巣機能不全(POF)、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、子宮内膜症、子癇前症、早産、胎内発育遅延及び再発性妊娠喪失からなる群より選択される不妊症である請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的サンプルが、乳、血液、血清、血漿、腹水、嚢胞液、胸膜液、涙、尿、唾液、組織又はこれらの組合せを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記対象が哺乳動物である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記エキソソームが細胞から単離される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞が培養細胞である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞がガン細胞である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ガン細胞が、卵巣ガン細胞、子宮頸ガン細胞、乳ガン細胞、子宮内膜ガン細胞、結腸ガン細胞、前立腺ガン細胞、肺ガン細胞、黒色腫細胞、膵臓ガン細胞又は絨毛上皮腫細胞である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞が、UL-1細胞、UL-2、UL-3細胞又はUL-6細胞である請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞が胎盤細胞である請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記検出が、ELISA、RIA、多重イムノアッセイ、免疫沈降及びウェスタンブロッティングからなる群より選択される技法を含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
(a)対象からの自己抗体を含む生物学的サンプルを用意し;
(b)エキソソームから単離した自己抗体免疫反応性ペプチドを含んでなる抗原を前記サンプルと接触させ;
(c)前記サンプル中の前記抗原に免疫反応性の自己抗体を検出し;そして
(d)前記抗原に免疫反応性の自己抗体のレベルを定量して前記対象における自己抗体産生に関連する疾患を特徴付けることを含んでなる、対象において自己抗体産生に関連する疾患を特徴付ける方法。
【請求項16】
前記疾患がガン又は不妊症である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記疾患が上皮ガン又は腺ガンである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記抗原が、腫瘍サプレッサーファミリーペプチド、核酸結合性ペプチド、抗アポトーシスペプチド、ガン遺伝子ファミリーペプチド、ホメオボックスペプチド、ガン精巣抗原ペプチド、熱ショックタンパク質ファミリーペプチド、プロリソソーム酵素ファミリーペプチドの酵素前駆体、PLAP、接着分子ファミリーペプチド、接着関連ペプチド及びキナーゼファミリーペプチドからなる群より選択されるガン抗原ペプチドを含んでなる請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記疾患が、早発性卵巣機能不全(POF)、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、子宮内膜症、子癇前症、早産、胎内発育遅延及び再発性妊娠喪失からなる群より選択される不妊症である請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記生物学的サンプルが、乳、血液、血清、血漿、腹水、嚢胞液、胸膜液、涙、尿、唾液、組織又はこれらの組合せを含む請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が哺乳動物である請求項15に記載の方法。
【請求項22】
エキソソームが細胞から単離される請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞が培養細胞である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞がガン細胞である請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ガン細胞が、卵巣ガン細胞、子宮頸ガン細胞、乳ガン細胞、子宮内膜ガン細胞、結腸ガン細胞、前立腺ガン細胞、肺ガン細胞、黒色腫細胞、膵臓ガン細胞又は絨毛上皮腫細胞である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞が、UL-1細胞、UL-2、UL-3細胞又はUL-6細胞である請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞が胎盤細胞である請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記検出が、ELISA、RIA、多重イムノアッセイ、免疫沈降及びイムノブロッティングからなる群より選択される技法を含む請求項15に記載の方法。
【請求項29】
前記疾患がガンであり、前記疾患の特徴付けがガンのステージを決定することを含んでなる請求項16に記載の方法。
【請求項30】
(a)対象からの自己抗体を含むか又は含むと疑われる生物学的サンプルを用意し;
(b)エキソソームから単離した自己抗体免疫反応性ペプチドを含んでなる抗原を前記サンプルと接触させ;そして
(c)前記サンプル中の前記抗原に免疫反応性の自己抗体のレベルを検出及び/又は定量することを含んでなる、対象において自己抗体のレベルを検出及び/又は定量する方法。
【請求項31】
自己抗体がガン又は不妊症に関連している請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ガンが上皮ガン又は腺ガンである請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記抗原が、腫瘍サプレッサーファミリーペプチド、核酸結合性ペプチド、抗アポトーシスペプチド、ガン遺伝子ファミリーペプチド、ホメオボックスペプチド、ガン精巣抗原ペプチド、熱ショックタンパク質ファミリーペプチド、プロリソソーム酵素ファミリーペプチドの酵素前駆体、PLAP、接着分子ファミリーペプチド、接着関連ペプチド及びキナーゼファミリーペプチドからなる群より選択されるガン抗原ペプチドを含んでなる請求項32に記載の方法。
【請求項34】
不妊症が、早発性卵巣機能不全(POF)、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、子宮内膜症、子癇前症、早産、胎内発育遅延及び再発性妊娠喪失からなる群より選択される請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記生物学的サンプルが、乳、血液、血清、血漿、腹水、嚢胞液、胸膜液、涙、尿、唾液、組織又はこれらの組合せを含む請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記対象が哺乳動物である請求項30に記載の方法。
【請求項37】
エキソソームが細胞から単離される請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞が培養細胞である請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記細胞がガン細胞である請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ガン細胞が、卵巣ガン細胞、子宮頸ガン細胞、乳ガン細胞、子宮内膜ガン細胞、結腸ガン細胞、前立腺ガン細胞、肺ガン細胞、黒色腫細胞、膵臓ガン細胞又は絨毛上皮腫細胞である請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記細胞が、UL-1細胞、UL-2、UL-3細胞又はUL-6細胞である請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞が胎盤細胞である請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記検出が、ELISA、RIA、多重イムノアッセイ、免疫沈降及びウェスタンブロッティングからなる群より選択される技法を含む請求項30に記載の方法。
【請求項44】
自己抗体免疫反応性ペプチド抗原と該抗原を含有するための容器とを含んでなり、前記抗原がエキソソームから単離される、サンプル中の自己抗体を検出するキット。
【請求項45】
前記抗原が支持体に付着している請求項44に記載のキット。
【請求項46】
前記支持体が、マイクロタイタープレート、メンブレン、ポリスチレンビーズ、試験管又はディップスティックである請求項45に記載のキット。
【請求項47】
自己抗体に結合する抗体調製物を含んでなる請求項44に記載のキット。
【請求項48】
前記抗体調製物が検出標識を含んでなる請求項47に記載のキット。
【請求項49】
前記検出標識が、放射性標識、酵素、ビオチン、色素、蛍光タグ標識、ハプテン又は発光標識を含んでなる請求項48に記載のキット。
【請求項50】
(a)対象からの受胎能障害と関連する自己抗体を含むか又は含むと疑われる生物学的サンプルを用意し;
(b)受胎能障害と関連する自己抗体に結合するペプチド抗原を含んでなり、約50kD及び80kDの分子量を有する核抗原及び約10kD、30kD、45kD、90kD及び125kDの分子量を有する膜抗原からなる群より選択される少なくとも1つの抗原を前記サンプルと接触させ;
(c)前記サンプル中の前記抗原に免疫反応性の自己抗体を検出し;そして
(d)前記抗原に免疫反応性の自己抗体のレベルを参照レベルと比較して、前記対象における受胎能障害を診断し、及び/又は受胎能障害を発症するリスクを予測することを含んでなる、対象において受胎能障害を診断する方法。
【請求項51】
不妊症が、早発性卵巣機能不全(POF)、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、子宮内膜症、子癇前症、早産、胎内発育遅延及び再発性妊娠喪失からなる群より選択される請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記生物学的サンプルが、乳、血液、血清、血漿、腹水、嚢胞液、胸膜液、涙、尿、唾液、組織又はこれらの組合せを含む請求項50に記載の方法。
【請求項53】
自己抗体が、卵巣、子宮内膜、胎盤又はこれらの組合せに反応性である請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記対象が哺乳動物である請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記抗原が培養細胞から単離される請求項50に記載の方法。
【請求項56】
培養細胞が胎盤細胞である請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記抗原が、胎盤、卵巣、子宮内膜又はこれらの組合せから単離される請求項50に記載の方法。
【請求項58】
前記検出が、ELISA、RIA、多重イムノアッセイ、免疫沈降及びウェスタンブロッティングからなる群より選択される技法を含む請求項50に記載の方法。

【図1】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【図14】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2010−517048(P2010−517048A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547458(P2009−547458)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/052223
【国際公開番号】WO2008/092164
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(506217427)ユニバーシティー オブ ルイヴィル リサーチ ファウンデーション,インコーポレーテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF LOUISVILLE RESEARCH FOUNDATION,INC.
【住所又は居所原語表記】201 East Jefferson Street,Suite 215,MedCenter Three,Louisville,KY 40202,U.S.A.